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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 51/20 20060101AFI20220304BHJP
   H01H 1/54 20060101ALI20220304BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01H51/20 F
H01H1/54
H01H50/54 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018094979
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019200924
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 清和
(72)【発明者】
【氏名】左右木 高広
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 政直
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167825(WO,A1)
【文献】特許第5838920(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 51/20
H01H 1/54
H01H 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチ(2A)と第2スイッチ(2B)との、少なくとも2個のスイッチ(2)と、電磁コイル(3)とを備える電磁継電器(1)であって、
個々の上記スイッチは、
所定位置に固定された固定子(4)と、
上記電磁コイルへの通電の有無により進退動作する可動子(5)と、
上記固定子に設けられた固定接点(6)と、
上記可動子に設けられ上記固定接点に接離する可動接点(7)とを有し、
上記第1スイッチの上記可動子は、上記第2スイッチの上記可動子又は上記固定子に隣り合う位置に配され、
上記2個のスイッチをオンしたときに、上記第1スイッチの上記可動子に流れた電流(I)と、上記第2スイッチのうち上記第1スイッチの上記可動子に隣接する部位に流れた電流とによって生じた電磁力(F)により、上記第1スイッチの上記可動子を、上記第1スイッチの上記固定接点側に付勢するよう構成されている、電磁継電器。
【請求項2】
上記第1スイッチの上記可動子と、上記第2スイッチの上記可動子との2個の上記可動子は、互いに隣り合う位置に配されており、上記2個の可動子にそれぞれ流れた電流によって生じた上記電磁力により、上記第1スイッチの上記可動子を上記第1スイッチの上記固定接点側に付勢すると共に、上記第2スイッチの上記可動子を上記第2スイッチの上記固定接点側に付勢するよう構成されている、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
上記2個の可動子は、該可動子の進退方向(Z)から見たときに互いに重なり合い、上記2個の可動子の間に、絶縁材料からなるスペーサ(51)が配されている、請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
上記2個の可動子は、該可動子の進退方向に直交する配列方向(X)に互いに隣り合っており、2個の上記スイッチをオンしたときに、個々の上記可動子に互いに逆向きの電流が流れ、該電流により、上記電磁力が、上記2個の可動子を上記配列方向へ互いに離隔する向きに発生し、個々の上記可動子には、上記可動接点を設けた可動接点配置面(S1)が形成され、個々の上記固定子には、上記固定接点を設けた固定接点配置面(S2)が形成され、上記可動接点配置面と上記固定接点配置面との2つの配置面は、上記配列方向に対して傾斜しており、上記電磁力の、上記配置面の法線方向における成分(FN)によって、上記可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されている、請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項5】
個々の上記可動子には、相手側の上記可動子に対向する面(S3)に、絶縁材料からなる絶縁被膜(53)が形成されている、請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
上記電磁コイルには、該電磁コイルへの通電の有無により進退動作するプランジャ(31)が設けられ、個々の上記可動子には、該可動子から延出する延出部(52)が設けられ、上記プランジャから上記延出部を介して上記可動子に力を加えることにより、該可動子を進退動作させるよう構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項7】
上記第1スイッチの上記可動子は、上記第2スイッチの上記固定子と隣り合う位置に配されている、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項8】
上記2個のスイッチをオンしたときに、上記第1スイッチの上記可動子と、上記第2スイッチの上記固定子とに、互いに逆向きの電流が流れ、該電流により、上記電磁力が、上記第1スイッチの上記可動子を上記第2スイッチの上記固定子から離隔させる向きに発生し、上記第1スイッチの上記可動子には、上記可動接点を設けた可動接点配置面(S1)が形成され、上記第1スイッチの上記固定子には、上記固定接点を設けた固定接点配置面(S2)が形成され、上記可動接点配置面と上記固定接点配置面との2つの配置面は、上記電磁力の発生方向に対して傾斜しており、該電磁力の、上記配置面の法線方向における成分(FN)によって、上記第1スイッチの可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されている、請求項7に記載の電磁継電器。
【請求項9】
第1スイッチ(2A)と第2スイッチ(2B)との、少なくとも2個のスイッチ(2)と、電磁コイル(3)とを備える電磁継電器(1)であって、
個々の上記スイッチは、
所定位置に固定された固定子(4)と、
上記電磁コイルへの通電の有無により進退動作する可動子(5)と、
上記固定子に設けられた固定接点(6)と、
上記可動子に設けられ上記固定接点に接離する可動接点(7)とを有し、
上記2個のスイッチのうち一方の該スイッチに接続したバスバー(8)を備え、
個々の上記可動子は、上記バスバーに隣り合う位置に配され、上記2個のスイッチをオンしたときに、上記可動子および上記バスバーに流れた電流によって生じた電磁力により、個々の上記可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されており、
上記2個のスイッチをオンしたときに、個々の該スイッチの上記可動子に、上記バスバーに流れる電流とは逆向きの電流が流れ、該電流により、上記電磁力が、個々の上記可動子を上記バスバーから離隔させる向きに発生し、個々の上記可動子には、上記可動接点を設けた可動接点配置面(S 1 )が形成され、個々の上記固定子には、上記固定接点を設けた固定接点配置面(S 2 )が形成され、上記可動接点配置面と上記固定接点配置面との2つの配置面は、上記電磁力の発生方向に対して傾斜しており、上記電磁力の、上記配置面の法線方向における成分(F N )によって、上記可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されている、電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスイッチを備えた電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁コイルと、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチとを備える電磁継電器が知られている(下記特許文献1参照)。上記スイッチは、固定子および可動子と、上記固定子に設けられた固定接点と、上記可動子に設けられた可動接点とを備える。電磁コイルに通電すると可動子が進退動作し、可動接点が固定接点に接触する。これにより、スイッチがオンになり、電流が流れるよう構成されている。
【0003】
上記スイッチには、何らかの原因で大電流が流れることがある。このとき、いわゆる電磁反発が生じて、可動接点が固定接点から離隔することが知られている。大電流が流れたときに2つの接点が離隔すると、アークが生じ、接点が溶損等する可能性が考えられる。
【0004】
この問題を解決するため、上記電磁継電器では、固定子および可動子を引き回し、可動子の進退方向から見たときに固定子と可動子が互いに重なり合うよう構成している。そして、固定子と可動子に同じ向きに電流が流れるようにしてある。このようにすると、電流が流れたときに、可動子に、該可動子を固定子側に付勢する電磁力が発生する。そのため、電磁反発が発生しても、2つの接点が離隔しにくくなり、接点に大きなアークが生じにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5838920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電磁継電器では、一つのスイッチ内で、固定子と可動子を引き回し、これらを重ね合わせてある。そのため、固定子および可動子の形状が複雑になり、電磁継電器の製造コストが上昇しやすい。また、電磁継電器が大型化しやすいという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、接点の電磁反発を抑制でき、固定子および可動子の構造をより簡素にできる電磁継電器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、第1スイッチ(2A)と第2スイッチ(2B)との、少なくとも2個のスイッチ(2)と、電磁コイル(3)とを備える電磁継電器(1)であって、
個々の上記スイッチは、
所定位置に固定された固定子(4)と、
上記電磁コイルへの通電の有無により進退動作する可動子(5)と、
上記固定子に設けられた固定接点(6)と、
上記可動子に設けられ上記固定接点に接離する可動接点(7)とを有し、
上記第1スイッチの上記可動子は、上記第2スイッチの上記可動子又は上記固定子に隣り合う位置に配され、
上記2個のスイッチをオンしたときに、上記第1スイッチの上記可動子に流れた電流(I)と、上記第2スイッチのうち上記第1スイッチの上記可動子に隣接する部位に流れた電流とによって生じた電磁力(F)により、上記第1スイッチの上記可動子を、上記第1スイッチの上記固定接点側に付勢するよう構成されている、電磁継電器にある。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1スイッチ(2A)と第2スイッチ(2B)との、少なくとも2個のスイッチ(2)と、電磁コイル(3)とを備える電磁継電器(1)であって、
個々の上記スイッチは、
所定位置に固定された固定子(4)と、
上記電磁コイルへの通電の有無により進退動作する可動子(5)と、
上記固定子に設けられた固定接点(6)と、
上記可動子に設けられ上記固定接点に接離する可動接点(7)とを有し、
上記2個のスイッチのうち一方の該スイッチに接続したバスバー(8)を備え、
個々の上記可動子は、上記バスバーに隣り合う位置に配され、上記2個のスイッチをオンしたときに、上記可動子および上記バスバーに流れた電流によって生じた電磁力により、個々の上記可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されており、
上記2個のスイッチをオンしたときに、個々の該スイッチの上記可動子に、上記バスバーに流れる電流とは逆向きの電流が流れ、該電流により、上記電磁力が、個々の上記可動子を上記バスバーから離隔させる向きに発生し、個々の上記可動子には、上記可動接点を設けた可動接点配置面(S 1 )が形成され、個々の上記固定子には、上記固定接点を設けた固定接点配置面(S 2 )が形成され、上記可動接点配置面と上記固定接点配置面との2つの配置面は、上記電磁力の発生方向に対して傾斜しており、上記電磁力の、上記配置面の法線方向における成分(F N )によって、上記可動子を上記固定接点側に付勢するよう構成されている、電磁継電器にある。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の態様においては、少なくとも2個のスイッチを設けてある。また、第1スイッチの可動子を、第2スイッチの固定子又は可動子に隣り合う位置に配置してある。そして、2個のスイッチをオンしたときに、第1スイッチの可動子に流れた電流と、第2スイッチに流れた電流とによって生じた電磁力により、第1スイッチの可動子を、第1スイッチの固定接点側に付勢するよう構成してある。
このようにすると、上記電磁力によって、第1スイッチの可動子が固定接点側に付勢されるため、大電流が流れて電磁反発が生じても、2つの接点が離隔することを抑制できる。
また、上記構成にすると、上記第2スイッチに流れる電流を利用して、第1スイッチの可動子に上記電磁力を発生させることができる。そのため、一つのスイッチの中で固定子や可動子を引き回して互いに重ね合わせる必要がなくなり、固定子および可動子の構造を簡素にすることができる。したがって、電磁継電器の製造コストを低減できる。
【0011】
また、上記第2の態様においては、可動子に隣り合う位置に、上記バスバーを設けてある。そして、2個のスイッチをオンしたときに、可動子とバスバーとに流れた電流によって生じた電磁力によって、個々の可動子を固定接点側に押圧するよう構成してある。
このようにすると、バスバーに流れる電流を利用して、可動子に上記電磁力を発生させることができる。したがって、一つのスイッチの中で固定子や可動子を引き回して互いに重ね合わせる必要がなくなり、固定子および可動子の構造を簡素にすることができる。そのため、電磁継電器の製造コストを低減できる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、接点の電磁反発を抑制でき、固定子および可動子の構造をより簡素にできる電磁継電器を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1における、スイッチをオフしているときの電磁継電器の断面図。
図2】実施形態1における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図であって、図3のII-II断面図。
図3図2のIII-III断面図。
図4図2の要部拡大図。
図5】実施形態1における、リレーシステムの回路図。
図6】実施形態2における、スイッチをオフしているときの電磁継電器の断面図。
図7】実施形態2における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図であって、図8のVII-VII断面図。
図8図7のVIII-VIII断面図。
図9図7の要部拡大図。
図10】実施形態3における、スイッチをオフしているときの電磁継電器の断面図。
図11】実施形態3における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図であって、図12のXI-XI断面図。
図12図11のXII-XII断面図。
図13図11の要部拡大図。
図14】実施形態4における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図。
図15図14の要部拡大図。
図16】実施形態5における、スイッチをオフしているときの電磁継電器の断面図。
図17】実施形態5における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図であって、図18のXVII-XVII断面図。
図18図17のXVIII-XVIII断面図。
図19図17の要部拡大図。
図20】実施形態5における、リレーシステムの回路図。
図21】実施形態6における、スイッチをオンしているときの電磁継電器の断面図。
図22図21の要部拡大図。
図23】実施形態7における、電磁継電器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
上記電磁継電器に係る実施形態について、図1図5を参照して説明する。図1に示すごとく、本形態の電磁継電器1は、第1スイッチ2Aと第2スイッチ2Bとの、2個のスイッチ2と、電磁コイル3とを備える。
【0015】
個々のスイッチ2は、固定子4と、可動子5と、固定接点6と、可動接点7とを有する。固定子4及び可動子5は、それぞれ導電性材料からなる。固定子4は、所定位置に固定されている。可動子5は、電磁コイル3への通電の有無により進退動作する。固定接点6は、固定子4に設けられている。また、可動接点7は、可動子5に設けられており、可動子5の進退動作に伴って固定接点6に接離する。
【0016】
また、本形態の電磁継電器1は、2個の電磁コイル3(3A,3B)を備える。個々の電磁コイル3A,3Bを用いて、各スイッチ2A,2Bをオンオフ動作させている。
【0017】
第1スイッチ2Aの可動子5Aは、第2スイッチ2Bの可動子5Bに隣り合う位置に配されている。図4に示すごとく、2個のスイッチ2をオンしたときに、第1スイッチ2Aの可動子5Aに流れた電流Iと、第2スイッチ2Bのうち第1スイッチ2Aの可動子5Aに隣接する部位(すなわち、第2スイッチ2Bの可動子5B)に流れた電流Iとによって生じた電磁力Fにより、第1スイッチ2Aの可動子5Aを、第1スイッチ2Aの固定接点6A側に付勢するよう構成されている。
【0018】
本形態の電磁継電器1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電磁継電器である。図5に示すごとく、電磁継電器1は、直流電源81と電気機器82との間に設けられている。2個のスイッチ2をオンすることにより、直流電源81から電気機器82へ直流電力を供給し、電気機器82を駆動するよう構成されている。
【0019】
また、図1に示すごとく、本形態の電磁継電器1は、電磁コイル3、スイッチ2等を収容するケース13を備える。該ケース13内には、上記電磁コイル3等の他に、固定コア11、可動コア12、プランジャ31、延出部52、コイル側ばね部材14、スイッチ側ばね部材15が収容されている。
【0020】
図1図3に示すごとく、延出部52は、可動子5から、該可動子5の進退方向(Z方向)に直交する方向に延出している。プランジャ31の先端は、延出部52に当接する。図1に示すごとく、電磁コイル3への通電を停止すると、コイル側ばね部材14の加圧力により、プランジャ31はケース13の上板131側に加圧される。そのため、可動子5が固定子4から離隔し、スイッチ2がオフになる。
【0021】
また、図2に示すごとく、電磁コイル3に通電すると、磁束φが発生し、固定コア11及び可動コア12が磁化する。そのため、可動コア12が吸引され、プランジャ31が電磁コイル3側に引き寄せられる。その結果、スイッチ側ばね部材15の加圧力によって可動子5が固定子4側に押圧され、スイッチ2がオンになる。
【0022】
図3に示すごとく、個々のスイッチ2は、2本の固定子4と、1本の可動子5とを備える。可動子5の長手方向(Y方向)における、可動子5の両端部に、可動接点7が形成されている。また、2個の可動子5(5A,5B)は、該可動子5の配列方向(X方向)において互いに隣り合っている。
【0023】
2個のスイッチ2をオンすると、個々の可動子5に、互いに逆向きの電流Iが流れる。そのため図4に示すごとく、この電流Iによって、各可動子5に、X方向へ互いに離隔する向きに電磁力Fが生じる。
【0024】
図4に示すごとく、可動子5には、可動接点7を設けた可動接点配置面S1が形成されている。また、固定子4には、固定接点6を設けた固定接点配置面S2が形成されている。これらの配置面S1,S2は、互いに平行であり、それぞれX方向に対して傾斜している。上記電磁力Fは、配置面S1,S2の法線方向における成分FNと、配置面S1,S2に平行な成分FPとに分解することができる。電磁力Fの、上記法線方向における成分FNによって、可動子5を、固定接点6側に付勢するよう構成されている。
【0025】
次に、本形態の作用効果について説明する。図1図2に示すごとく、本形態の電磁継電器1は、2個のスイッチ2A,2Bを有する。また、本形態では、第1スイッチ2Aの可動子5Aを、第2スイッチ2Bに隣り合う位置に配置してある。そして、図4に示すごとく、2個のスイッチ2A,2Bがオンしたときに、第1スイッチ2Aの可動子5Aに流れた電流Iと、第2スイッチ2Bに流れた電流Iとにより生じた電磁力Fによって、第1スイッチ2Aの可動子5Aを、第1スイッチ2Aの固定接点6A側に付勢するよう構成してある。
このようにすると、電磁力Fによって、可動子5Aが固定接点6A側に付勢されるため、スイッチ2Aに大電流が流れて電磁反発が生じても、2つの接点6A,7Aが離隔することを抑制できる。
また、上記構成にすると、第2スイッチ2Bに流れた電流Iを利用して、第1スイッチ2Aの可動子5Aに電磁力Fを発生させることができる。そのため、従来のように、一つのスイッチ2の中で固定子4や可動子5を引き回して互いに重ね合わせる必要がなくなり、固定子4および可動子5の構造を簡素にすることができる。したがって、電磁継電器1の製造コストを低減できる。
【0026】
また、図3図4に示すごとく、本形態では、第1スイッチ2Aの可動子5Aと、第2スイッチ2Bの可動子5Bとを、互いに隣り合う位置に配置してある。そして、2個の可動子5A,5Bにそれぞれ流れた電流Iによって生じた電磁力Fによって、第1スイッチ2Aの可動子5Aを第1スイッチ2Aの固定接点6A側に付勢すると共に、第2スイッチ2Bの可動子5Bを第2スイッチ2Bの固定接点6B側に付勢するよう構成してある。
そのため、2つの可動子5A,5Bを両方とも固定接点6側に付勢することができる。したがって、大電流が流れたときに、どちらの可動子5A,5Bも、固定接点6から離隔することを抑制できる。
【0027】
また、図3図4に示すごとく、本形態では、2個のスイッチ2A,2Bをオンしたときに、個々の可動子5A,5Bに互いに逆向きの電流Iが流れる。この電流Iにより、図4に示すごとく、2個の可動子5A,5BをX方向へ互いに離隔する向きに電磁力Fが発生するよう構成してある。そして、この電磁力Fの、上記配置面S1,S2の法線方向における成分FNによって、可動子5を固定接点6側に付勢するよう構成してある。
このようにすると、簡素な構成で、各可動子5を固定接点6側に付勢することができる。そのため、スイッチ2の構成をより簡素にすることができ、電磁継電器1の製造コストを低減することができる。
【0028】
また、図4に示すごとく、本形態では、個々の可動子5の、相手側の可動子5に対向する面S3に、絶縁材料からなる絶縁被膜53を形成してある。
このようにすると、2個の可動子5A,5Bを絶縁することができる。そのため、2個の可動子5A,5Bをより接近させることができ、より強い電磁力Fを発生させることができる。したがって、各可動子5A,5Bを、固定接点6側へ、より強く押し付けることができ、電磁反発をより効果的に抑制できる。
なお、本形態では、上記面S3のみに絶縁被膜53を形成したが、本発明はこれに限るものではなく、可動子5の他の面(例えば面S1,S4)にも絶縁被膜53を形成してもよい。
【0029】
また、図1図2に示すごとく、本形態では個々の可動子5A,5Bに、上記延出部52を設けてある。そして、上記プランジャ31から延出部52を介して可動子5に力を加えることにより、可動子5を進退動作させている。
このようにすると、プランジャ31を可動子5に当接させる必要がなくなり、Z方向から見たときに(図3参照)、可動子5を、プランジャ31から離れた位置に配置することができる。そのため、可動子5A,5Bの配置位置の自由度を高めることができ、2個の可動子5A,5Bをより接近させることができる。
【0030】
以上のごとく、本形態によれば、接点の電磁反発を抑制でき、固定子および可動子の構造をより簡素にできる電磁継電器を提供することができる。
【0031】
なお、本形態の電磁継電器1は、2個のスイッチ2を備えるが、本発明はこれに限るものではなく、3個以上のスイッチ2を設けても良い。
【0032】
以下の実施形態においては、図面に用いた符号のうち、実施形態1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施形態1と同様の構成要素等を表す。
【0033】
(実施形態2)
本形態は、スイッチ2の構成を変更した例である。図6図8に示すごとく、本形態では、第1スイッチ2Aの可動子5Aを、第2スイッチ2Bの固定子4Bに隣り合う位置に配置してある。
【0034】
図8に示すごとく、2個のスイッチ2A,2Bをオンすると、各スイッチ2に電流Iが流れる。第1スイッチ2Aの可動子5Aと、第2スイッチ2Bの固定子4Bとには、互いに逆向きに電流Iが流れる。したがって図9に示すごとく、可動子5Aには、X方向において固定子4Bから離隔する向きに、電磁力Fが発生する。
【0035】
図9に示すごとく、第1スイッチ2Aの可動子5Aには、可動接点7Aを設けた可動接点配置面S1を形成してある。また、第1スイッチ2Aの固定子4Aには、固定接点6Aを設けた固定接点配置面S2を形成してある。これらの配置面S1,S2は互いに平行であり、電磁力Fの発生方向(X方向)に対して傾斜している。上記電磁力Fの、配置面S1,S2の法線方向における成分FNによって、第1スイッチ2Aの可動子5Aを固定接点6A側に付勢するよう構成してある。
【0036】
本形態の作用効果について説明する。本形態では、図7図9に示すごとく、第1スイッチ2Aの可動子5Aを、第2スイッチ2Bの固定子4Bに隣り合う位置に配置してある。
このようにすると、可動子5Aを固定子4Bに隣り合わせているため、可動子5Aに安定して電磁力Fを発生させることができる。そのため、第1スイッチ2Aの可動子5Aを安定的に固定接点6A側に付勢することができる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0037】
(実施形態3)
本形態は、スイッチ2の構造等を変更した例である。図10図11に示すごとく、本形態では、2個の電磁コイル3A,3Bを、互いに逆向きに配置してある。そして、第1スイッチ2Aの可動子5Aと、第2スイッチ2Bの可動子5Bとを、Z方向において互いに逆向きに進退動作するよう構成してある。より詳しくは、図11に示すごとく、第1スイッチ2Aの可動子5Aは、電磁コイル3Aに通電すると、図の下側に付勢される。また、第2スイッチ2Bの可動子5Bは、電磁コイル3Bに通電すると、図の上側に付勢される。
【0038】
また、図12に示すごとく、これらの可動子5A,5Bは、Z方向から見たときに、互いに重なり合うよう構成されている。2個のスイッチ2A,2Bをオンすると、個々の可動子5A,5Bに、それぞれ同じ向きに電流Iが流れる。そのため、図13に示すごとく、これらの可動子5A,5Bに、Z方向において互いに接近する向きに電磁力Fが発生する。この電磁力Fによって、各可動子5A,5Bを、固定接点6側に付勢するよう構成してある。
【0039】
また、図13に示すごとく、2個の可動子5A,5Bの間には、絶縁材料からなるスペーサ51が配されている。
このようにすると、2個の可動子5A,5Bが短絡することを抑制できる。また、スペーサ51は薄く形成できるため、2個の可動子5A,5Bをより接近させることができる。したがって、2個の可動子5A,5Bに強い電磁力Fを発生させることができ、各可動子5A,5Bを固定接点6側に、強い力で付勢することができる。そのため、電磁反発をより効果的に抑制できる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0040】
(実施形態4)
本形態は、スイッチ2の構成等を変更した例である。図14に示すごとく、本形態では、2個のスイッチを、それぞれ傾斜させて配置してある。各スイッチ2の固定子4および可動子5は、平板状に形成されている。
【0041】
図15に示すごとく、個々の可動子5には、可動接点7を設けた可動接点配置面S1が形成されている。また、個々の固定子4には、固定接点6を設けた固定接点配置面S2が形成されている。本形態では、2個のスイッチ2を傾斜して配置することにより、各配置面S1,S2を、2個の可動子5A,5Bの配列方向(X方向)に対して傾斜させている。
【0042】
2個のスイッチ2A,2Bをオンすると、各可動子5A,5Bに、互いに逆向きに電流Iが流れる。この電流Iによって、個々の可動子5A,5Bに、X方向において互いに離隔する向きに電磁力Fが発生する。この電磁力Fの、配置面S1,S2の法線方向における成分FNによって、可動子5を固定接点6側に付勢している。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0043】
(実施形態5)
本形態は、可動子5とバスバー8とを隣接させた例である。図16図18に示すごとく、本形態の電磁継電器1は、バスバー8を備える。図20に示すごとく、バスバー8は、2個のスイッチ2のうち一方のスイッチ2(本形態では第2スイッチ2B)に接続している。図16図18に示すごとく、本形態では、個々の可動子5を、バスバー8に隣り合う位置に配置してある。バスバー8は、ケース13の外側に配されている。
【0044】
図18図19に示すごとく、2個のスイッチ2をオンすると、個々の可動子5に、バスバー8とは逆向きの電流Iが流れる。この電流Iにより、図19に示すごとく、各可動子5に、バスバー8から離隔する向きに電磁力Fが発生する。また、本形態では実施形態1と同様に、可動子5に可動接点配置面S1を形成し、固定子4に固定接点配置面S2を形成してある。これらの配置面S1,S2は、電磁力Fの発生方向(X方向)に対して傾斜している。上記電磁力Fの、配置面S1,S2の法線方向における成分FNによって、可動子5を固定接点6側に付勢するよう構成してある。
【0045】
本形態の作用効果について説明する。上記構成にすると、バスバー8に流れた電流Iを利用して、可動子5に電磁力Fを発生させることができる。したがって、従来のように、一つのスイッチ2の中で固定子4や可動子5を引き回して互いに重ね合わせる必要がなくなり、固定子4および可動子5の構造を簡素にすることができる。そのため、電磁継電器1の製造コストを低減できる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0046】
(実施形態6)
本形態は、バスバー8の配置位置等を変更した例である。図21図22に示すごとく、本形態では、個々の可動子5A,5Bは、スイッチ2をオンしたときに、バスバー8に対して斜め方向に隣接する位置に配される。また、可動子5および固定子4は、平板状に形成されている。
【0047】
図22に示すごとく、スイッチ2をオンしたときに、バスバー8と、各可動子5とに、逆向きの電流Iが流れる。この電流Iにより、個々の可動子5に、バスバー8から離隔する向きに、電磁力Fが発生する。この電磁力Fの、配置面S1,S2の法線方向における成分FNによって、可動子5を固定接点6側に付勢するよう構成してある。
【0048】
本形態の効果について説明する。上記構成にすると、実施形態5のように、固定子4を折り曲げたり(図19参照)、可動子5に、X方向に対して傾斜した可動接点配置面S1を形成したりする必要がなくなる。そのため、固定子4及び可動子5の形状をより簡素にすることができ、電磁継電器1の製造コストをより低減することができる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0049】
(実施形態7)
本形態は、電磁コイル3の数、及びプランジャ31の形状を変更した例である。図23に示すごとく、本形態の電磁継電器1は、1個の電磁コイル3を備える。また、プランジャ31は第1分岐部311と第2分岐部312とを有する。これらの分岐部311,312は、延出部52に当接する。これにより、1個の電磁コイル3を用いて、2個のスイッチ2をオンオフ動作させるよう構成されている。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0050】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 電磁継電器
2 スイッチ
3 電磁コイル
4 固定子
5 可動子
6 固定接点
7 可動接点
F 電磁力
I 電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23