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特許7034017光波長変換モジュール及び照明モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】光波長変換モジュール及び照明モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220304BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220304BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20220304BHJP
   F21V 9/20 20180101ALI20220304BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G02B5/20
F21S2/00 355
F21V9/40 200
F21V9/20
C09K11/80
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018120354
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2019015962
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201710536575.9
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】500093133
【氏名又は名称】中強光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】謝 ▲啓▼堂
(72)【発明者】
【氏名】徐 若涵
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-011098(JP,A)
【文献】特開2016-084376(JP,A)
【文献】特表2014-507013(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146568(WO,A1)
【文献】特開2015-118139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
F21S 2/00
F21V 9/40
F21V 9/20
C09K 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波長変換モジュールであって、
基板、駆動装置及び第一蛍光材料層を含み、
前記駆動装置は前記基板に接続され、前記光波長変換モジュールの操作状態において、前記駆動装置が前記基板を駆動して作動させ、
前記第一蛍光材料層が前記基板の第一光学区上に配置され、前記第一蛍光材料層の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、前記第一蛍光材料層は放出スペクトルのピーク値が542ナノメートルから547ナノメートルの範囲内の黄緑色光を発し、かつ、前記第一蛍光材料層の前記受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時、前記第一蛍光材料層は放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内の黄色光を発し、
前記光波長変換モジュールの前記操作状態において、前記第一光学区が前記黄色光を発する、光波長変換モジュール。
【請求項2】
前記予定温度が約摂氏150度であり、前記環境温度が約摂氏25度であることを特徴とする、請求項1に記載の光波長変換モジュール。
【請求項3】
光波長変換モジュールであって、
基板、駆動装置、第一蛍光材料層及び第二蛍光材料層を含み、
前記駆動装置は前記基板に接続され、前記光波長変換モジュールの操作状態において、前記駆動装置が前記基板を駆動して作動させ、
前記第一蛍光材料層が前記基板の第一光学区上に配置され、前記第一蛍光材料層の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、前記第一蛍光材料層で発生する変換光束が黄緑色光であり、かつ、前記第一蛍光材料層の前記受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時、前記第一蛍光材料層で発生する変換光束が黄色光であり、
前記第二蛍光材料層が前記基板の第二光学区上に配置され、前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記環境温度に近いまたは同じである場合、前記第二蛍光材料層で発生する変換光束が黄色光であり、かつ、前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記予定温度に近いまたは超えた時、前記第二蛍光材料層で発生する変換光束が赤黄色光であり、
前記光波長変換モジュールの前記操作状態において、前記第一光学区が前記黄色光を発し、前記第二光学区が前記赤黄色光を発する、光波長変換モジュール
【請求項4】
前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記環境温度に近いまたは同じである場合、前記第二蛍光材料層の放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内にあることを特徴とする、請求項に記載の光波長変換モジュール。
【請求項5】
前記第一蛍光材料層及び前記第二蛍光材料層はそれぞれイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層であることを特徴とする、請求項に記載の光波長変換モジュール。
【請求項6】
照明モジュールであって、
励起光源及び光波長変換モジュールを含み、
前記励起光源は励起光束を提供し、
前記光波長変換モジュールは前記励起光束の伝達経路上に配置され、かつ、基板、駆動装置及び第一蛍光材料層を含み、
前記駆動装置は前記基板に接続され、前記光波長変換モジュールの操作状態において、前記駆動装置が前記基板を駆動して作動させることに適しており、
前記第一蛍光材料層は前記基板の第一光学区上に配置され、前記第一蛍光材料層の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、前記第一蛍光材料層は放出スペクトルのピーク値が542ナノメートルから547ナノメートルの範囲内の黄緑色光を発し、かつ、前記第一蛍光材料層の前記受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、前記第一蛍光材料層は放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内の黄色光を発し、
前記光波長変換モジュールの前記操作状態において、前記励起光束が前記第一蛍光材料層に入射して、前記第一光学区が前記黄色光を発する、照明モジュール。
【請求項7】
前記予定温度が約摂氏150度であり、前記環境温度が約摂氏25度であることを特徴とする、請求項に記載の照明モジュール。
【請求項8】
照明モジュールであって、
励起光源及び光波長変換モジュールを含み、
前記励起光源は励起光束を提供し、
前記光波長変換モジュールは前記励起光束の伝達経路上に配置され、かつ、基板、駆動装置、第一蛍光材料層及び第二蛍光材料層を含み、
前記駆動装置は前記基板に接続され、前記光波長変換モジュールの操作状態において、前記駆動装置が前記基板を駆動して作動させることに適しており、
前記第一蛍光材料層は前記基板の第一光学区上に配置され、前記第一蛍光材料層の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、前記第一蛍光材料層で発生する変換光束が黄緑色光であり、かつ、前記第一蛍光材料層の前記受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、前記第一蛍光材料層で発生する変換光束が黄色光であり、
前記第二蛍光材料層は前記基板の第二光学区上に配置され、前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記環境温度に近いまたは同じである場合、前記第二蛍光材料層で発生する変換光束が黄色光であり、前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記予定温度に近いまたは超えた場合、前記第二蛍光材料層で発生する変換光束が赤黄色光であり、
前記基板の前記第一光学区と前記第二光学区が順番に前記励起光束の伝達経路上に入り込み、
前記光波長変換モジュールの前記操作状態において、前記励起光束が前記第一蛍光材料層に入射して、前記第一光学区が前記黄色光を発し、
前記光波長変換モジュールの前記操作状態において、かつ前記第二光学区が前記励起光束の伝達経路上に入り込んだ場合、前記第二光学区が前記赤黄色光を発する、照明モジュール。
【請求項9】
前記第二蛍光材料層の前記受熱温度が前記環境温度に近いまたは同じである場合、前記第二蛍光材料層の放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内にあることを特徴とする、請求項に記載の照明モジュール。
【請求項10】
前記第一蛍光材料層及び前記第二蛍光材料層はそれぞれイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層であることを特徴とする、請求項に記載の照明モジュール。
【請求項11】
前記励起光源が提供する前記励起光束が200W以上のパワーを有することを特徴とする、請求項に記載の照明モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光波長変換モジュール及び照明モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の光波長変換モジュールは、一般的に発光素子を利用し、蛍光粉層と組み合わせて、照明用光束を生成する。しかし、蛍光粉層は外部からのエネルギーを吸収する。エネルギーの高い光束(例えば、レーザー光束)を照射した場合、蛍光粉層の温度が上昇し、蛍光強度(または発光効率)の低減を引き起こす。熱消光効果(thermal quenching effect)とは、受熱で温度が上昇するにつれて、蛍光粉層の蛍光強度が低減する現象を言う。
【0003】
蛍光粉材料の中、イットリウムアルミニウムガーネット(Yttrium Aluminum Garnet、YAG)蛍光粉層の熱消光効果が比較的に重大である。図1は異なる受熱温度におけるイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層の波長‐蛍光強度の関係図である。図2はイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層の受熱温度‐蛍光強度の関係図である。図1及び図2からわかるように、受熱温度の上昇に伴い、蛍光粉層の蛍光強度が明らかに低減している。また、受熱温度の上昇に伴い、蛍光粉層の放出スペクトル(emission spectrum)が赤色光領域へ偏移する現象が起こる(即ち、放出スペクトルが長波長側へ偏移する)。
【0004】
人間の目が照明モジュールに対し感知できる輝度は、蛍光粉層の放出スペクトルと人間の目の視覚関数を積分した数値である。人間の目の視覚関数は、人間の目が異なる波長の光に対する感度を示す。人間の目は緑色光に対して赤色光よりも敏感であるため、放出スペクトルが赤色帯域へ偏移する現象によって、人間の目が感知する輝度が低減し、かつ、放出スペクトルの偏移量の増加に従って、人間の目が感知する輝度の減衰量が増していく。つまり、蛍光粉層の受熱温度の上昇に伴い、人間の目が照明モジュールに対して感知する輝度は、蛍光強度自体の低下に起因して低下するほか、放出スペクトルが赤色帯域へ偏移する現象によって一層低下する。黄色光を例にすると、本来なら黄色光を出力する領域が熱消光効果によって赤黄色光を出力するようになった場合、色収差(放出スペクトルのピーク値が赤色光へ偏移)を起こすだけではなく、人間の目が感知する輝度を低減させ、これにより照明品質に影響を及ぼす。
【0005】
この「背景技術」部分は、本発明の内容の理解を促すためにあり、「背景技術」部分で開示された内容には、当業者が既知の従来技術を構成しないものも含まれている可能性がある。「背景技術」部分で開示された内容は、当該内容または本発明の一つ若しくは複数の実施例で解決しようとする課題を示すものではなく、また本発明が出願前に既に当業者に把握され、または認識されていることを意味するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱消光効果による色収差及び感知輝度低減の問題の改善に有利な光波長変換モジュールを提供する。
【0007】
本発明はさらに、照明品質の優れた照明モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のその他の目的と利点について、本発明が開示する技術特徴から更に理解を深めることができる。
【0009】
前記一つ若しくは一部若しく全ての目的、またはその他の目的を達成するめに、本発明の一実施例は、基板、駆動装置及び第一蛍光材料層を含む光波長変換モジュールを提供する。駆動装置は基板に接続される。光波長変換モジュールの操作状態において、駆動装置は基板を駆動して作動させることに適している。第一蛍光材料層は基板の第一光学区上に配置される。第一蛍光材料層の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、第一蛍光材料層で発生する変換光束は黄緑色光である。第一蛍光材料層の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、第一蛍光材料層で発生する変換光束が黄色光である。光波長変換モジュールの操作状態において、第一光学区が黄色光を発する。
【0010】
前記一つ若しくは一部若しくはすべての目的、またはその他の目的を達成するめに、本発明の一実施例は、励起光源及び前記光波長変換モジュールを含む照明モジュールを提供する。励起光源は励起光束を提供する。光波長変換モジュールは励起光束の伝達経路上に配置されている。
【0011】
以上により、本発明の実施例は少なくとも以下の一つの利点または効果を有する。前置補償のメカニズムを利用して、放出スペクトルのピーク値が所望の放出スペクトルのピーク値より小さい蛍光材料層を選択することで、受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合に放出スペクトルが短波長側へ偏移する効果が得られる。前記短波長側へ偏移する偏移量を、蛍光材料層の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に長波長側へ偏移する偏移量に近いまたは同じものにすることによって、受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に蛍光材料層で発生する変換光束の色を所望の出力色に近いまたは同じものにして、かつ、人間の目が感知する変換光束の輝度が異なる温度においても(例えば、環境温度と予定温度の時)一致するようにできる。これにより、本発明の実施例の光波長変換モジュールは、熱消光効果による色収差及び感知輝度低下の問題の改善に有利であり、かつ、前記光波長変換モジュールを応用した照明モジュールは優れた照明品質が得られる。
【0012】
本発明の前記特徴及び利点をより解りやすく、明確に示すべく、以下は実施例に基づき、かつ図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】異なる受熱温度におけるイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層の波長‐蛍光強度の関係図である。
図2】イットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層の受熱温度‐蛍光強度の関係図である。
図3】本発明の一実施例による光波長変換モジュールの上面概略図である。
図4図3における断面線A‐A’に沿った断面概略図である。
図5図3における断面線B‐B’に沿った断面概略図である。
図6】本発明の一実施例による照明モジュールの投影装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の前記およびその他の技術内容、特徴および効果は、以下の図面を参照しながら行う好ましい実施例の詳細な説明において明確に示されている。以下の実施例において言及される方向用語、例えば、上、下、左、右、前または後などは図面を参照する方向のみである。従って、これらの方向用語は説明を目的とするものであり、本発明を制限するものではない。
【0015】
図3は本発明の一実施例による光波長変換モジュールの上面概略図である。図4及び図5はそれぞれ図3における断面線A-A‘及び断面線B-B’に沿った断面概略図である。図3から図5を参照すると、本発明の一実施例の光波長変換モジュール100は、基板110、駆動装置D、及び第一蛍光材料層120を含む。
【0016】
基板110に第一蛍光材料層120が搭載される。基板110は透明基板または反射基板であってもよい。反射基板は金属板、白板、または光を受ける表面に光反射膜層がコーティングされた透明基板であってもよいが、これらに限定されない。
【0017】
駆動装置Dは基板110に接続され、かつ、光波長変換モジュール100の操作状態において、駆動装置Dが駆動基板110を駆動して作動させることに適している。例を挙げると、基板110が円形載置板であって、かつ回転軸心RCを有する構造である場合、励起光束(図示せず)が光波長変換モジュール100に照射した時、駆動装置Dは基板110をその回転軸心RCを軸にして回転させるように駆動できる回転装置であって、基板110上に配置された第一蛍光材料層120が励起光束の伝達経路に入り込み、かつ励起光束に励起されて変換光束(図示せず)を生成する。なお、基板110の作動方法は必要に応じて変更可能であり、これらに限定されない。
【0018】
第一蛍光材料層120は基板110の第一光学区R1上に配置され、短波長の光束(例えば、励起光束)を吸収し、かつ長波長の光束を励起することに適している。例を挙げると、第一蛍光材料層120はイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層であるが、これに限定されない。
【0019】
第一蛍光材料層120の受熱温度が環境温度(約摂氏25度)に近いまたは同じである場合、第一蛍光材料層120で生成される変換光束が黄緑色光である。第一蛍光材料層120の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、第一蛍光材料層120で生成された変換光束が黄色光である。ここで、予定温度とは、第一蛍光材料層120にエネルギーが高くて、集中した励起光束が照射された場合、通常達する温度を意味する。200W以上のパワーを有する励起光束を例にすると、予定温度が約摂氏150度である。光波長変換モジュール100の操作状態において、例えば、第一蛍光材料層120がエネルギーが高くて、集中した励起光束の伝達経路上に入り込んだ場合、第一蛍光材料層120の受熱温度は、環境温度から直ちに予定温度に変換し、基板110の第一光学区R1上に配置された第一蛍光材料層120が黄色光を励起する。
【0020】
さらに、第一光学区R1は黄色光、例えば、放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内にある黄色光を出力するように設計されている。放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内にある蛍光材料で第一蛍光材料層を形成した場合、エネルギーが高くて、集中した励起光束を照射した時、第一蛍光材料層の放出スペクトルのピーク値が熱消光効果によって長波長側(例えば、赤色帯域)へ偏移するめ、第一光学区R1から出力される変換光束が偏移して、予期した黄色光ではなく、赤黄色光になる。
【0021】
上記問題に鑑み、本実施例は前置補償のメカニズムを利用して、放出スペクトルのピーク値が所望の放出スペクトルのピーク値(例えば、548ナノメートルから550ナノメートル)より小さい第一蛍光材料層120を選択し、例えば、蛍光材料中のガドリニウムイオン(Gd3+)の濃度を調整することにより、放出スペクトルのピーク値を制御して(ガドリニウムイオンの濃度が高い程、ピーク値波長が長くなり、ガドリニウムイオンの濃度が低い程、ピーク値波長が短くなる)、受熱温度が環境温度に近いまたは同じ場合において放出スペクトルが短波長側(例えば、青色帯域)へ偏移する効果が得られる。短波長側へ偏移した前記偏移量を、第一蛍光材料層120の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に長波長側(例えば、赤色帯域)へ偏移した偏移量に近いまたは同じものにすることによって、受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に第一蛍光材料層120で生成される変換光束の色を所望の出力色(黄色)に近いまたは同じものにすることができる。本実施例において、第一蛍光材料層120の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、第一蛍光材料層120の放出スペクトルのピーク値が542ナノメートルから547ナノメートルの範囲内になり、即ち、この時第一蛍光材料層120で生成される変換光束が黄緑色光であり、第一蛍光材料層120の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、第一蛍光材料層120の放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内になり、即ち、この時第一蛍光材料層120で生成される変換光束が黄色光である。
【0022】
なお、熱消光効果によって色収差及び蛍光強度の低減(感知輝度の低減)の問題が生じるが、上記前置補償メカニズムによって、熱消光効果による色収差問題を補うことができる。また、黄色光と赤黄色光に比べて、人間の目は黄緑色光と緑色光に対する感度が略一致する。そのため、放出スペクトルと人間の目の視覚関数を積分した後、前記前置補償のメカニズムによれば、異なる温度において(例えば、環境温度と予定温度の時)人間の目が感知する変換光束の輝度を一致させることにも有利である。従って、本発明の実施例の光波長変換モジュール100は、熱消光効果によって生じる色収差及び感知輝度低下の問題の改善に有利である。
【0023】
異なるニーズに応じて、基板110はさらに別の光学区を有し、かつ光波長変換モジュール100がさらに別の蛍光材料層を備えてもよい。例を挙げると、第一光学区R1のほか、基板110はさらに第二光学区R2、第三光学区R3及び第四光学区R4を備えてもよい。第一蛍光材料層120のほか、光波長変換モジュール100はさらに第二蛍光材料層130及び第三蛍光材料層140を有し、かつ第一蛍光材料層120、第二蛍光材料層130及び第三蛍光材料層140の放出スペクトルのピーク値が互いに異なってもよい。なお、光学区及び蛍光材料層の数は必要に応じて変更可能であり、これに限定されない。
【0024】
第一光学区R1、第二光学区R2、第三光学区R3及び第四光学区R4は基板110の回転軸心RCの傍に配置され、かつ、例えば、基板110の円周に沿って順に配列される。このように、光波長変換モジュール100の操作状態において、駆動装置Dは基板110を駆動して回転軸心RCを軸に回転させることに適しており、例えば、励起光束が光波長変換モジュール100に照射した時、第一光学区R1、第二光学区R2、第三光学区R3及び第四光学区R4が順番に励起光束の伝達経路上に入り込んでもよい。
【0025】
第二蛍光材料層130は基板110の第二光学区R2上に配置され、短波長の光束(例えば、励起光束)を吸収し、かつ長波長の光束を励起することに適している。例を挙げると、第二蛍光材料層130はイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層であるが、これに限定されない。
【0026】
第二光学区R2は、例えば、赤色光または赤黄色光を出力するように設計されている。これに対応して、第二光学区R2上に配置される第二蛍光材料層130は、既知の赤色蛍光材料層を用いることができる。または、前記補償のメカニズムに基づき、放出スペクトルのピーク値が所望の放出スペクトルのピーク値より小さい蛍光材料層を選択することができる。例を挙げると、第二蛍光材料層130の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、第二蛍光材料層130で生成される変換光束が黄色光であり、かつ、第二蛍光材料層130の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた場合、第二蛍光材料層130で生成される変換光束が赤黄色光である。光波長変換モジュール100の操作状態において、例えば、第二光学区R2に配置された第二蛍光材料層130が励起光束の伝達経路上に入り込んだ時、第二蛍光材料層130の受熱温度が環境温度から予定温度に変わり、第二光学区R2が赤黄色光を発する。本実施例において、第二蛍光材料層130の受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合、第二蛍光材料層130の放出スペクトルのピーク値が548ナノメートルから550ナノメートルの範囲内になり、即ち、この時第二蛍光材料層130で生成される変換光束は黄色光である。
【0027】
第三蛍光材料層140は基板110の第三光学区R3上に配置され、短波長の光束(例えば、励起光束)を吸収し、かつ長波長の光束を励起することに適している。例を挙げると、第三蛍光材料層140はイットリウムアルミニウムガーネット蛍光粉層であるが、これに限定されない。第三光学区R3は例えば緑色光を出力するように設計されている。これに対応して、第三光学区R3上に配置された第三蛍光材料層140は、既知の緑色蛍光材料層を用いることができる。または、前記補償のメカニズムに基づいて、放出スペクトルのピーク値が所望の放出スペクトルのピーク値より小さい蛍光材料層を選択することができるが、ここで省略する。
【0028】
第四光学区R4には蛍光材料層を設置せず、かつ第四光学区R4は励起光束を通過させる。基板110が反射基板である場合、基板110には第四光学区R4と重なる開口が形成され、第四光学区R4が励起光束の伝達経路上に入り込んだ時、励起光束が基板110の開口を通過できる。一方、図5が示すように、基板110が透明基板である場合、開口を形成せず、励起光束が直接基板110の第四光学区R4を通過してもよい。
【0029】
光波長変換モジュール100は、多様な色光を必要とする任意の照明モジュールに応用可能である。例を挙げると、光波長変換モジュール100を投影装置の照明モジュール中に組み込むことができるが、これに限定されない。図6は本発明の一実施例による照明モジュールの投影装置の概略図である。図6を参照すると、本発明の一実施例の照明モジュール10は、励起光源12及び光波長変換モジュール100を含む。励起光源12は励起光束Bを提供する。例を挙げると、励起光源12が提供する励起光束Bは、200W以上のパワー有する青色レーザー光束である。光波長変換モジュール100は励起光束Bの伝達経路上に配置され、かつ図3中の第一蛍光材料層120、第二蛍光材料層130及び第三蛍光材料層140が基板110の受光表面上に配置されている。光波長変換モジュール100の操作状態において、駆動装置Dは基板110を駆動して作動させることに適しており、第一光学区R1、第二光学区R2、第三光学区R3及び第四光学区R4を順番に励起光束Bの伝達経路上に入れ込む。
【0030】
励起光束Bが200W以上のパワーを有する場合、蛍光材料層は熱消光効果によって色収差及び感知輝度低下の問題が発生しやすいため、照明モジュールの照明品質が影響される。しかし、上記の通り、光波長変換モジュール100は熱消光効果による色収差及び感知輝度低下の問題の改善に有利であるため、光波長変換モジュール100を応用した照明モジュール10では優れた照明品質が得られる。
【0031】
照明モジュール10は投影装置1中に応用可能であり、かつ投影装置1がライトバルブ20及び投影レンズグループ30を有する。照明モジュール10から出力された光束(多様な色の変換光束及び励起光束を含む)は順にライトバルブ20及び投影レンズグループ30まで伝達される。ライトバルブ20は照明モジュール10から出力された光束を影像光束(図示せず)に変換することが可能であり、ライトバルブ20は例えばデジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro-mirror Device、DMD)、反射型液晶パネル(Liquid Crystal on Silicon、LCOS)など、または透過型空間光変調器、例えば、透過液晶パネル(Transparent Liquid Crystal Panel)であってもよいが、本発明はこれに限定されない。投影レンズグループ30は、ライトバルブ20からの影像光束を投影装置1から投射する。
【0032】
照明モジュール10から出力された光束の色純度を高め、または投影装置1から出力された影像画面の色が必要な規格を満たすよう、照明モジュール10はさらにフィルターモジュール14を含んでもよい。光波長変換モジュール100と同じように、フィルターモジュール14は搭載基板(図示せず)、駆動装置(図示せず)及び複数の光学区に対応して設置された複数のフィルター材料層(図示せず)を備えてもよい。駆動装置は搭載基板に接続され、かつ、フィルターモジュール14の操作状態において、駆動装置は搭載基板を駆動して作動させることに適しており、例えば、搭載基板をその回転軸心を軸に回転させ、フィルターモジュール14の搭載基板が光波長変換モジュール100の基板110と同期して回転する。
【0033】
複数のフィルター材料層は搭載基板の受光面上に配置されて、光波長変換モジュール100からの光束を受ける。複数のフィルター材料層は、図3の第一光学区R1に対応する第一フィルター層、図3の第二光学区R2に対応する第二フィルター層、及び図3の第三光学区R3に対応する第三フィルター層を含むことができる。第一フィルター層は、例えば黄色光以外の色光束をフィルタリングするものであり、第一光学区R1と同期して光束の伝達経路上に入り込むことで、照明モジュール10から出力された黄色光の色純度を高める。第二フィルター層は、例えば赤色光以外の色光束をフィルタリングするものであり、第二光学区R2と同期して光束の伝達経路上に入り込むことで、照明モジュール10から出力される赤色光の色純度を高める。第三フィルター層は、例えば、緑色光以外の色光束をフィルタリングするものであり、第三光学区R3と同期して光束の伝達経路上に入り込むことで、照明モジュール10から出力された緑色光の色純度を高める。搭載基板が反射基板である場合、励起光束を通過させるため、搭載基板に第四光学区R4に対応する開口が形成することが可能で、搭載基板の開口に第四光学区R4に対応する透光拡散シートを配置してもよい。また、搭載基板が透明基板である場合、開口を形成しなくてもよい。また、一実施例において、複数のフィルター材料層はさらに、図3の第四光学区R4に対応して設置された第四フィルター層を含むことが可能であり、青色光以外の色光束をフィルタリングして、照明モジュール10から出力された青色光の色純度を高める。別の実施例において、前記複数のフィルター材料層が光波長変換モジュールと統合されてもよい。
【0034】
以上をまとめると、本発明の実施例は少なくとも以下の一つの利点または効果を有する。前置補償のメカニズムを利用して、放出スペクトルのピーク値が所望の放出スペクトルのピーク値より小さい蛍光材料層を選択して、受熱温度が環境温度に近いまたは同じである場合に放出スペクトルが短波長側(例えば、青色帯域)へ偏移する効果が得られる。短波長側へ偏移する前記偏移量を、蛍光材料層の受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に長波長側へ偏移する偏移量に近いまたは同じものにすることによって、受熱温度が予定温度に近いまたは超えた時に、蛍光材料層で発生する変換光束の色が所望の出力色に近いまたは同じになるようにして、かつ人間の目が感知する変換光束の輝度が異なる温度の時に(例えば、環境温度と予定温度の時)一致するようにする。これにより、本発明の実施例の光波長変換モジュールは、熱消光効果による色収差及び感知輝度低下の問題の改善に有利であり、かつ、前記光波長変換モジュールを応用した照明モジュールは優れた照明品質が得られる。
【0035】
以上に記載したのは本発明の好ましい実施例であり、本発明の実施範囲がこれに限定されるべきではない。即ち、本発明の請求の範囲および発明の詳細な説明を基に行った簡単な等価変更および修正も本発明の請求範囲内に属する。また、本発明の実施例または請求項のいずれかが必ずしも本発明の開示した目的または利点または特徴を全て満たすとは限らない。その他、要約書と発明の名称は特許文献の検索のために用いられるものであり、本発明の権利範囲を制限するものではない。また、明細書または請求の範囲に言及された「第一」、「第二」などの用語は、素子(element)を命名するめの名称または異なる実施例若しくは範囲を区別するめのものであり、素子の数量の上限または下限を制限するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 投影装置
10 照明モジュール
12 励起光源
14 フィルターモジュール
20 ライトバルブ
30 投影レンズグループ
100 光波長変換モジュール
110 基板
120 第一蛍光材料層
130 第二蛍光材料層
140 第三蛍光材料層
B 励起光束
D 駆動装置
R1 第一光学区
R2 第二光学区
R3 第三光学区
R4 第四光学区
RC 回転軸心
A-A’、B-B’ 断面線
図1
図2
図3
図4
図5
図6