(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/16 20060101AFI20220304BHJP
C08G 18/24 20060101ALI20220304BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220304BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220304BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220304BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220304BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20220304BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220304BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20220304BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20220304BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C08G18/16
C08G18/24
C08G18/42 008
C08G18/08 038
C08G18/00 L
C08G18/00 K
C08L75/04
C08K5/521
C08K3/22
C08G18/18
C08G18/22
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2018126535
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112394(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057670(WO,A1)
【文献】国際公開第99/048979(WO,A1)
【文献】特開2004-193214(JP,A)
【文献】特開2001-247778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物にして、
前記組成物Aに、触媒として少なくとも三量化触媒を含有せしめると共に、赤リンとスズ酸金属塩とが併用されて、それらが、共に又は別個に、前記組成物A及び前記組成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめられてなることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記スズ酸金属塩が、スズ酸亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記赤リンが、前記組成物A中のポリオールの100質量部に対して、5~60質量部の割合において用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記スズ酸金属塩が、前記組成物A中のポリオールの100質量部に対して、5~60質量部の割合において用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記三量化触媒として、カルボン酸アルカリ金属塩と第四級アンモニウム塩とが併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項7】
前記ポリオールが、芳香族系ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項8】
前記芳香族系ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項7に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項9】
リン酸エステルが、更に、前記組成物A又は前記組成物Bに含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項10】
金属水酸化物が、更に、前記組成物A又は前記組成物Bに含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項11】
ISO-5660の試験法に準拠して測定して得られた総発熱量が、8MJ/m
2 以下であるポリウレタンフォームを与えることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物に係り、特に、優れた難燃性を有するポリウレタンフォームを形成するための発泡性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性、軽量性等の特性を利用して、主に断熱材料として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いられ、更には、土木工事において発生する空隙を埋める裏込材や、土木工事に際しての補強材等としても、実用されている。また、そのようなポリウレタンフォームは、一般に、ポリオールに発泡剤、更に必要に応じて、触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなる組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の方式により、発泡させて、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
ところで、上記のようにして形成されるポリウレタンフォームには、その用途上から難燃性が要求され、そのために、特表2014-524954号公報(特許文献1)においては、改善された難燃特性を有する吹付け可能な弾性ポリウレタンコーティングを製造するための反応性処方物として、イソシアネートプレポリマー及び任意の難燃性化合物を含むポリイソシアネート成分と、芳香族ポリエステルポリオール、赤リン及び触媒、そして更なる難燃剤等の成分を含むポリオール成分とからなる反応性処方物が提案され、これによって、改善された燃焼性特性を有する弾性ポリウレタンコーティングが形成され得ることが、明らかにされている。なお、そこでは、更に添加、含有せしめられる難燃性添加物として、ハロゲン含有化合物、フォスフェート類、無機フィラー、アンチモンオキシド、スズ酸亜鉛等が、例示されている。
【0004】
また、特表2014-532098号公報(特許文献2)においては、ポリウレタンフォームの煙抑制剤として、リン酸トリアルキルを用いることが提案され、これによって、燃やした場合に煙の発生が著しく少ない、即ち、改善された発煙抑制特性を有するポリウレタンフォームが得られることが、明らかにされている。そして、そこでは、ポリウレタンフォームの形成のために、ウレタン触媒やイソシアネートの三量化触媒が用いられることや、加工容易性のための金属系無機充填剤、例えば、金属水和物やホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛塩等を含有せしめることが出来ることを、明らかにしている。
【0005】
しかしながら、それら特許文献において得られた難燃性ポリウレタンコーティングや発煙抑制性能が改善されたポリウレタンフォームにあっては、その難燃特性において、近年における厳しい難燃化要請に充分に応え得るものではなかったのである。例えば、特許文献1において得られる難燃性ポリウレタンコーティングは、弾性を有する被覆層についての特性を明らかにしているに過ぎないものであって、ポリウレタンフォーム(発泡体)に要求される厳しい難燃特性を充分に満たすものではなかったのであり、また、特許文献2に開示のポリウレタンフォームにあっても、単に、発煙抑制性能の改善を目的としているに過ぎないものであって、より厳しい難燃性能に係る要請に充分に応え得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2014-524954号公報
【文献】特表2014-532098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、難燃性を相乗的に高めてなる高難燃性のポリウレタンフォームを有利に形成することの出来る発泡性組成物を提供することにあり、また、発熱量が低く且つ残炭率の高いポリウレタンフォームを有利に形成し得る発泡性組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載から把握され得る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され 、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて 、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物にして、前記組成物Aに、触媒とし て少なくとも三量化触媒を含有せしめると共に、赤リンとスズ酸金属塩とが併用さ れて、それらが、共に又は別個に、前記組成物A及び前記組成物Bの少なくとも何 れか一方に含有せしめられてなることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム用 発泡性組成物。
(2) 前記スズ酸金属塩が、スズ酸亜鉛であることを特徴とする前記態様(1)に記載 の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(3) 前記赤リンが、前記組成物A中のポリオールの100質量部に対して、5~60 質量部の割合において用いられることを特徴とする前記態様(1)又は前記態様(
2)に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(4) 前記スズ酸金属塩が、前記組成物A中のポリオールの100質量部に対して、5 ~60質量部の割合において用いられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記 態様(3)の何れか1つに記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(5)前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩であることを特徴とする前記態様(1) 乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組 成物。
(6) 前記三量化触媒として、カルボン酸アルカリ金属塩と第四級アンモニウム塩とが 併用されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記 載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(7) 前記ポリオールが、芳香族系ポリエステルポリオールであることを特徴とする前 記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の難燃性ポリウレタンフォー ム用発泡性組成物。
(8) 前記芳香族系ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールで あることを特徴とする前記態様(7)に記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡 性組成物。
(9) リン酸エステルが、更に、前記組成物A又は前記組成物Bに含有せしめられるこ とを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の難燃性ポ リウレタンフォーム用発泡性組成物。
(10) 金属水酸化物が、更に、前記組成物A又は前記組成物Bに含有せしめられるこ とを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の難燃性ポ リウレタンフォーム用発泡性組成物。
(11) ISO-5660の試験法に準拠して測定して得られた総発熱量が、8MJ/ m2 以下であるポリウレタンフォームを与えることを特徴とする前記態様(1)乃
至前記態様(10)の何れか1つに記載の難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組
成物。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従う難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応触媒として、少なくとも三量化触媒が用いられると共に、難燃剤として、赤リンとスズ酸金属塩とが併用されて、ポリオール含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bのうちの少なくとも何れか一方に添加、含有せしめられているところから、かかる三量化触媒によって導入されるイソシアヌレート構造の存在下において、赤リンとスズ酸金属塩の両者による相乗的な難燃化作用が効果的に発現され得ることとなるのであり、これによって、得られるポリウレタンフォームの難燃性がより一層高められ得ることとなったのである。
【0011】
特に、そのような本発明に従う発泡性組成物から形成されるポリウレタンフォームにあっては、その燃焼に際しての発熱量が効果的に低下せしめられ得ると共に、着火しても燃え続けることなく、高い残炭率を与え得るものとなるのであり、これによって、極めて燃焼し難く、また自己消火性の高められたポリウレタンフォームが、有利に提供され得ることとなったのである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従う難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物について詳細に説明して、その具体的構成を、更に明らかにすることとする。
【0013】
先ず、本発明に従う難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、ポリオールを主体として含む組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとから構成され、それらポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる発泡性組成物であるが、そこで用いられる組成物Aを構成する主たる成分であるポリオールには、ポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生じる、公知の各種のポリオール化合物が、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられるところである。そして、そこでは、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等が、好適に用いられることとなる。勿論、それらポリオールの他にも、公知の各種のポリオール化合物、例えば、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリマーポリオール等も、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられ得ることは、言うまでもないところである。
【0014】
具体的には、そのようなポリオールの中で、ポリエーテルポリオールは、多価アルコール、糖類、脂肪族アミン、芳香族アミン、フェノール類、マンニッヒ縮合物等の少なくとも1種の開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて、得られるものである。なお、そこで、アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エチレンオキシド等を挙げることが出来る。また、開始剤としての多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があり、また糖類としては、シュクロース、デキストロース、ソルビトール等があり、更に脂肪族アミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、エチレンジアミン等のポリアミン等があり、そして芳香族アミンとしては、トリレンジアミンと総称されるフェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基にメチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられ、更にまたフェノール類としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また、マンニッヒ縮合物としては、フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類をマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物を挙げることが出来る。
【0015】
また、ポリエステルポリオールとしては、多価アルコール-多価カルボン酸縮合系のポリオールや、環状エステル開環重合体系のポリオール等を挙げることが出来る。そこにおいて、多価アルコールとしては、上記したものを用いることが出来、特に、2価アルコールが好ましく用いられることとなる。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの無水物等を挙げることが出来、更に環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等が用いられることとなる。
【0016】
中でも、ポリエステルポリオールとしては、難燃性や相溶性の観点から、芳香族系のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、具体的には、フタル酸系ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、更にそのようなポリエステルポリオールの2種類以上を組み合わせることも有効である。なお、フタル酸系ポリエステルポリオールには、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物等と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとの縮合物からなるフタル酸系ポリエステルポリオールが、好ましく用いられることとなる。このようなフタル酸系ポリエステルポリオールを使用すると、低温(-10℃~5℃程度)下において、現場発泡を実施した場合でも、生じたフォームの建築躯体等からの剥離が惹起され難く、更に現場発泡後のフォーム端部の処理が比較的容易な程度の柔軟性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが出来る利点がある。特に、ハイドロフルオロオレフィン系発泡剤又はハイドロクロロフルオロオレフィン系発泡剤を含有せしめた際に、組成物としての保存安定性に優れたものを与える特徴がある。
【0017】
一方、組成物Bにおけるポリイソシアネートは、組成物Aに対して配合せしめられて、かかる組成物A中のポリオールと反応して、ポリウレタン(樹脂)を生成するものであって、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。一般的には、反応性や経済性、取り扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0018】
なお、かかる組成物B中のポリイソシアネートと前記した組成物A中のポリオールとの使用割合は、形成されるフォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)とポリオールの水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9~2.5程度の範囲内となるように、適宜に決定されることとなる。
【0019】
そして、本発明にあっては、上述の如き組成物Aと組成物Bとが混合され、触媒の存在下において反応せしめられると共に、発泡剤により発泡させて、硬化せしめられることにより、硬質のポリウレタンフォームが形成されることとなるのであるが、そこで用いられる触媒として、少なくとも三量化触媒、換言すればポリイソシアネートの有するイソシアネート基を反応させて、三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒(イソシアヌレート化触媒)が、組成物Aに含有せしめられることとなる。この三量化触媒としては、公知の各種のものを適宜に選択して、用いることが可能であるが、好ましくは、第四級アンモニウム塩や、オクチル酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等の含窒素芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩等を挙げることが出来る。これらのうち、第四級アンモニウム塩を用いることが、難燃性の向上の点から、、好ましく、中でも第四級アンモニウム塩とカルボン酸アルカリ金属塩とを併用することが、難燃性の更なる向上の点から、特に好ましい。
【0020】
ここで有利に用いられる第四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等のヒドロキシアンモニウム化合物、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0021】
また、かくの如き第四級アンモニウム塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0022】
さらに、このような第四級アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT 18X、U-CAT 2313(サンアプロ株式会社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0023】
なお、このように、触媒の一つとして用いられる三量化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1~8質量部、好ましくは1~6質量部の範囲内において、選択されることとなる。この三量化触媒の使用量が、0.1質量部よりも少なくなると、ポリイソシアネートの三量化が充分に実現され得ず、そのために難燃性の向上効果を充分に達成することが困難となる等の問題があり、一方8質量部よりも多くなると、反応が進み過ぎて、固化が早くなるため、吹付け施工が困難となる。
【0024】
そして、本発明にあっては、かかる三量化触媒と共に、樹脂化触媒であるウレタン化触媒を併用することも可能である。このウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸ビスマス(2-エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛等の公知のものを挙げることが出来る。
【0025】
また、かかる樹脂化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、この樹脂化触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題があり、一方5質量部よりも多くなると、樹脂化反応時に発熱が高くなり、フォームの黄変等、外観に異常をきたし、発泡中に発生する飛沫に含まれる第四級アンモニウム塩を含む触媒により、吹付け施工を行なっている作業現場の作業環境を悪化せしめる恐れがある。
【0026】
さらに、上述の如き三量化触媒や樹脂化触媒に加えて、更に必要に応じて、従来からポリウレタンフォームの製造に際して用いられている公知の触媒が、適宜に選択されて、ポリオールを主体として含む組成物A中に含有せしめられることとなる。例えば、アミン系触媒は、ポリウレタンの初期発泡性を有利に向上せしめ得るものであり、またスキン層とコア層との密度差を変えることなく、フォームの密度を全体的に下げる作用があり、更にフォームのべたつきを改善して、ゴミ等の付着による外観の悪化を有利に阻止し得ると共に、スプレー発泡法においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性の悪化等を改善する特徴を発揮するものである。そして、そのようなアミン系触媒としては、化学構造内にOH基やNH基を有する反応性アミン化合物や、環状構造を有する環式アミン化合物を用いることが推奨され、中でも、反応性アミン化合物を触媒として用いることによって、より一層臭気の低減を図ることが出来る。
【0027】
なお、そのようなアミン系触媒として用いられる反応性アミン化合物や環式アミン化合物は、公知のウレタン化触媒の中から適宜に選択され得るところであって、例えば、反応性アミン化合物としては、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、エトキシ化ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)、2-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン等を挙げることが出来る。また、環式アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルフォリン、4,4’-オキシジエチレンジモルフォリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、1,8-ジアゾビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等を挙げることが出来る。
【0028】
そして、かかる触媒の一つとして用いられるアミン系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るべく、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1~7質量部、好ましくは0.2~3質量部、より好ましくは0.3~1質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、このアミン系触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、触媒としての機能を充分に発揮せしめ難くなると共に、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる等の問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題を惹起する。また、かかるアミン系触媒の使用量が7質量部よりも多くなると、得られるポリウレタンフォームの臭気が顕著となり、また発泡中に揮発するアミン系触媒により、吹付け作業環境が悪化する問題を惹起するようになる。このため、臭気の点から、かかるアミン系触媒は、その添加量が少ないことが好ましいのである。
【0029】
しかも、本発明にあっては、上述の如き三量化触媒を、少なくとも触媒の一つとして、組成物Aに含有せしめて、組成物A中のポリオールと組成物B中のポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタンを生成せしめることに加えて、難燃剤として赤リンとスズ酸金属塩とを併用し、それら二つの難燃剤を、共に又は別個に、組成物A及び組成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめることにより、生成するポリウレタンフォームの難燃性を相乗的に高め得たのであり、これによって、高度の難燃性を有するポリウレタンフォームが、有利に提供され得たのである。
【0030】
そして、ここで用いられる赤リンには、公知のものが何れも対象とされ、通常、市販品の中から適宜に選択して用いられることとなる。なお、この赤リンの使用量としては、組成物A中のポリオールの100質量部に対して、一般に5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲内において決定される。この赤リンの添加量が少なくなり過ぎると、難燃性の相乗効果を充分に奏し難くなるからであり、また、その添加量が多くなり過ぎると、それが添加された組成物の粘度が上昇し、撹拌不良等の問題を惹起する他、作業性が低下する等の問題も生じるようになる。
【0031】
また、スズ酸金属塩としては、例えば、スズ酸亜鉛、スズ酸バリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、スズ酸コバルト、スズ酸マグネシウム等を挙げることが出来、それらの中でも、スズ酸亜鉛が好ましく用いられることとなる。なお、このスズ酸金属塩の添加量としては、組成物A中のポリオールの100質量部に対して、一般に、5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲内において、適宜に決定されることとなる。なお、このスズ酸金属塩の添加量が少なくなり過ぎると、難燃性の向上に係る相乗効果が充分に発揮され難くなるからであり、またその添加量が多くなり過ぎると、上記した赤リンの場合と同様に、それが添加された組成物の粘度を上昇せしめて、作業性が悪化する等の問題が惹起されるようになる。
【0032】
また、本発明にあっては、上述の如き赤リン及びスズ酸金属塩の併用に加えて、難燃剤として、更に、リン酸エステル及び金属水酸化物のうちの少なくとも何れか一方を、組成物A又は組成物Bに配合して、含有せしめることが有利に採用され、これによって、形成されるポリウレタンフォームの難燃性が、より一層有利に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0033】
なお、ここで用いられるリン酸エステルとしては、特に限定されるものではなく、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等の公知のものを、単独で又は組み合わせて、用いることが出来る。このリン酸エステルは、薬液(組成物Aや組成物B)の粘度を効果的に低下せしめ得て、吹付け等の作業性を向上せしめ得る減粘剤としても、作用するものである。
【0034】
具体的には、それらリン酸エステルの中で、モノリン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナントレン、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート等を挙げることが出来る。
【0035】
また、縮合リン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート、並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
【0036】
さらに、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(株式会社ADEKA製アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェ-ト(FP-600、FP-700)等を挙げることが出来る。
【0037】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度を低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いため、モノリン酸エステルを使用することが好ましく、特にトリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。
【0038】
そして、このようなリン酸エステルの使用量としては、組成物A中のポリオールの100質量部に対して5~160質量部、好ましくは、20~140質量部程度の範囲内であることが、好ましい。なお、このリン酸エステルの使用量が少なくなり過ぎると、その添加効果が充分に奏され難くなるからであり、またその添加量が多くなり過ぎると、ポリウレタンフォームを形成するための触媒効果を低下させ、発泡阻害等の問題が惹起されるようになる。
【0039】
また、金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等を挙げることが出来、これらが単独で若しくは2種以上の組み合わせにおいて、組成物A及び/又は組成物Bに配合せしめられることとなるのである。その中でも、特に、水酸化アルミニウムが好適に用いられることとなる。また、かかる金属水酸化物の添加量としては、組成物A中のポリオールの100質量部に対して、一般に、5~50質量部程度、好ましくは10~40質量部の範囲内であることが好ましい。この金属水酸化物の添加量が少なくなり過ぎると、その添加効果が充分に奏され得なくなるからであり、また、その添加量が多くなり過ぎると、ポリイソシアネートのイソシアヌレート化反応が進行し難くなり、形成される発泡体が変形したり、難燃性が低下したりする等という問題が惹起されるようになる。
【0040】
ところで、本発明に従う難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成する組成物A又は組成物Bには、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に、生成するポリウレタンを発泡させるための発泡剤が配合され、加えて、必要に応じて、公知の整泡剤や、更なる他の難燃剤等の、従来から知られている各種の助剤を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0041】
そして、ここで用いられる発泡剤としては、公知の各種の発泡剤が、適宜に選択され得るものであるが、特に、本発明にあっては、非フロン系発泡剤(及び/又はその発生源)が有利に用いられ、具体的には、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロカーボン(HC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等の有機の発泡剤が、含有せしめられる。なお、それら有機の発泡剤としては、公知の各種のものの中から適宜に選択されて用いられ、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等を挙げることが出来、更にハイドロカーボン(HC)としては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等を挙げることが出来る。
【0042】
また、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来、更にハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等を挙げることが出来る。特に、これらハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、好適に用いられ得るのである。そして、これらハイドロフルオロオレフィン(HFO)又はハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と共に、後述する水が、発泡剤として有利に用いられることとなる。
【0043】
さらに、本発明にあっては、発泡剤としての水が、上記した有機の発泡剤と共に、或いはそれに代えて、有利に用いられることとなる。そのような水がポリオールを含む組成物A中に存在することによって、かかる組成物Aと組成物B中のポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、二酸化炭素を生じる際に、反応熱が発生することとなるため、その熱によって、ウレタン化反応やイソシアヌレート化反応が、効果的に進行せしめられ得て、得られるポリウレタンフォームの圧縮強度が、更に高められ得るようになるのである。そして、そのような組成物A中の水の存在によって、組成物Aと組成物B中のポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられると、かかる水とポリイソシアネートとの反応によって二酸化炭素が発生し、この二酸化炭素も、ポリウレタンの発泡に寄与することとなる。なお、かかる水の使用量としては、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に、0.5~5質量部、好ましくは1~3質量部の割合となるように組成物A中に含有せしめられる。この水の使用量が5質量部より多くなると、かえって生成するポリウレタンフォームの強度の低下を招くようになる。それは、水とポリイソシアネートとの反応によって生じる尿素結合が樹脂中に多くなること、またイソシアヌレート化反応に用いられるポリイソシアネートが水との反応で消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなるためである。また、その使用量が0.5質量部よりも少なくなると、水を用いたことによる発泡剤としての効果が充分に得られなくなる。
【0044】
また、整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーン系のものや非イオン系界面活性剤が、好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは1~8質量部の範囲で選択される。
【0045】
そして、上述の如くして得られた、ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとを用いて、少なくとも三量化触媒の存在下で反応させて、発泡・硬化せしめるに際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が、適宜に採用され得るところであって、例えば、それら組成物Aと組成物Bとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内、土木工事において発生する空隙内等に注入、充填して、発泡・硬化を行なう注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とする、高度の難燃性を有するポリウレタンフォームが形成されることとなるのである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0047】
また、以下の実施例や比較例において求められたポリウレタンフォームの密度や最大発熱速度、総発熱量、残炭率及び残渣の状態については、それぞれ、以下の如くして評価乃至は測定した。
【0048】
(1)最大発熱速度及び総発熱量の測定
測定対象である発熱体から、100mm×100mm×50mmのサイズのコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に規定される燃焼試験法に準拠して、放射熱強度50kW/m2 にて、10分間加熱したときの最大発熱速度及び総発熱量、並びに20分間加熱したときの総発熱量(最大発熱量は10分間のときと同じ値)を、それぞれ、測定した。そして、かかる最大発熱速度が80kW/m2 以下である場合及び総発熱量が8MJ/m2 以下である場合を合格とした。なお、この試験において、発泡体サンプルが膨張して、その膨張した発泡体サンプルに、着火源であるスパークプラグの先端が接触して、スパークが発生せず、正常な測定が出来なくなった場合には、測定中止とした。
【0049】
(2)密度の測定
発泡体から切り出された前記コーンカロリーメーター試験用サンプルについて、その寸法を、ノギスを使用して計測する一方、電子天秤を用いて、その質量を計測して、それら得られた計測値から、かかるサンプル(発泡体)の密度を算出した。
【0050】
(3)残炭率の測定
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施した際における、20分間の加熱後のサンプルの質量を測定して、下式に従って、残炭率を算出した。なお、この残炭率は、60%以上である場合を合格とした。
残炭率(%)=(20分間の加熱後に残ったサンプルの質量/前のサンプルの質量) ×100
【0051】
(4)残渣状態の評価
-膨張状態の判定-
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施した際において、加熱された前記試験用サンプルが、点火器(スパークプラグ)に接触した場合には「×」とし、接触しなかった場合には「○」として、評価した。
【0052】
-変形状態の判定-
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときに、前記試験用サンプルの裏面まで到達する変形やひび割れが観察された場合には「×」とし、裏面まで到達する変形が認められなかった場合には「○」として、評価した。
【0053】
-収縮状態の判定-
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときに、前記試験用サンプルの横方向に10mm以上且つ厚み方向に5mm以上の変形が観察された場合には「×」とし、そのような変形が認められなかった場合には「○」として、評価した。
【0054】
まず、以下の実施例及び比較例において用いられる成分として、以下の各種原料を準備した。
ポリオール化合物:フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RF K505)
三量化触媒:オクチル酸カリウム(エボニック・ジャパン株式会社製Dabco K- 15)
:第四級アンモニウム塩(花王株式会社製カオーライザーNo.420)
樹脂化触媒:オクチル酸ビスマス(日本化学産業株式会社製プキャット25)
:N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(エボニック・ジャパン株式会社 製Polycat 12)
難燃剤:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140)
:スズ酸金属塩(スズ酸亜鉛:日本軽金属株式会社製フラムタードS)
:スズ酸金属塩(スズ酸カルシウム:三津和化学薬品株式会社製メタスズ酸カル シウム)
:スズ酸金属塩(スズ酸マグネシウム:三津和化学薬品株式会社製メタスズ酸マ グネシウム)
:リン酸エステル[TCPP:トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェー ト]
:リン酸エステル(ポリリン酸エステル:株式会社ADEKA製アデカスタブP FR)
:金属水酸化物(水酸化アルミニウム:日本軽金属株式会社製B-1403)
:金属水酸化物(水酸化マグネシウム:協和化学株式会社製キスマ-5)
発泡剤:HCFO-1233zd(Honeywell社製1-クロロ-3,3,3- トリフルオロプロペン)
:HFO-1336mzz(Chemours社製1,1,1,4,4,4-ヘ キサフルオロ-2-ブテン)
:HFC245fa(セントラル硝子株式会社製1,1,1,3,3-ペンタフ ルオロプロパン)
:水
【0055】
-ポリオール組成物(組成物A)の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち、ポリオール、三量化触媒、樹脂化触媒、難燃剤及び発泡剤を、下記表1及び表2に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~14及び比較例1~6に係る各種のポリオール組成物を、それぞれ、調製した。
【0056】
-ポリイソシアネート組成物(組成物B)の調製-
ポリイソシアネートとしてポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM-200)を準備して、このポリイソシアネートのみによって、組成物Bを構成した。
【0057】
-ポリウレタンフォームの製造-
上記で得られた各種のポリオール組成物(組成物A)の80部とポリイソシアネートのみからなる組成物Bの120部(質量比1:1.5)とを、それぞれ液温20℃に調節した後、300容量部のポリプロピレン製容器に収容して、撹拌機:TKホモディスパー(プライミクス株式会社製)を用いて、10秒間混合した。その後、その混合した液を2000容量部のポリプロピレン製容器に注ぎ、発泡・硬化せしめて、目的とする発泡体を得た。なお、比較例6の場合にあっては、常温下での反応では、比較例5と同様に硬化不良となるところから、混合した液を注いだ容器を、50℃の恒温槽中に24時間保持させることで、硬化させたものを、使用した。
【0058】
そして、かくして得られた各種のポリウレタンフォームを用いて、その密度、最大発熱速度、総発熱量、残炭率及び残渣の状態について、それぞれ測定乃至は評価して、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1乃至表3にまとめて示した。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~14において採用された、ポリオール組成物(組成物A)とポリイソシアネート(組成物B)との組み合わせからなる発泡性組成物にあっては、ISO-5660に準拠した燃焼試験法において、優れた総発熱量や残炭率を発揮すると共に、残渣状態も良好である、高度の難燃性を有するポリウレタンフォームを得ることが出来ることが認められる。
【0063】
これに対して、表3に示される結果から明らかな如く、難燃剤として赤リンのみを配合せしめてなるポリオール組成物を用いた比較例1にあっては、発泡体サンプルが、測定時に膨張して測定不能となる問題があり、また、難燃剤としての赤リン使用量を多くした比較例2にあっては、最大発熱速度が極めて高く、また総発熱量が多くなり、残炭率が低下する結果となり、これによって、難燃性に問題があることが、明らかとなった。更に、難燃剤として、スズ酸金属塩のみを使用して、赤リンの配合されていないポリオール組成物を用いた比較例3及び4にあっては、何れも、総発熱量が高く、また残炭率が低い発泡体であるために、その難燃性が充分でないことが理解される。加えて、ポリウレタンフォームの形成に際して、三量化触媒を用いることなく、樹脂化触媒のみを用いてなる比較例5の場合にあっては、発泡体の硬化が充分に進行せず、そのために、ISO-5660に準拠した試験に供し得るサンプルを得ることが出来ない結果となった。更にまた、比較例6の場合にあっては、最大発熱速度、総発熱量及び残炭率の何れにおいても、問題を内在していることが明らかとなった。従って、これら比較例1~6の結果より、三量化触媒及び二つの特定の難燃剤を使用して、初めて、優れた難燃性を付与し得ることが理解され得るのである。