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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20220304BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20220304BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H01L27/06 102A
H01L27/088 331A
H01L27/092 F
H01L25/04 Z
H01L21/76 L
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018144797
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020021835
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 愼一
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】桑島 照弘
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/140297(WO,A1)
【文献】特開2013-098238(JP,A)
【文献】特開2018-078169(JP,A)
【文献】特開2014-022484(JP,A)
【文献】特開2010-016142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 27/092
H01L 21/8238
H01L 25/04
H01L 25/18
H01L 21/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板を覆うように形成された多層配線構造と、
第1電圧で駆動する第1回路と、
前記第1電圧よりも高い第2電圧で駆動する第2回路と、
前記第1回路に電気的に接続された第1インダクタと、
前記第2回路に電気的に接続された第2インダクタと
を備え、
前記多層配線構造は、
複数の配線と、
複数の前記配線を互いに電気的に絶縁する複数の層間絶縁膜と
を含み、
前記第1インダクタは、複数の前記層間絶縁膜のうち、第1層間絶縁膜内に形成され、
前記第2インダクタは、複数の前記層間絶縁膜のうち、前記第1層間絶縁膜とは異なる第2層間絶縁膜内に形成され、
平面視において、前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに重ならないように配置されているとともに、互いに沿うように配置されている、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板は、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタの下方に配置され
平面視において、前記第1インダクタと重なるように、前記半導体基板に形成された第1絶縁体と、
平面視において、前記第2インダクタと重なるように、前記半導体基板に形成された第2絶縁体と
を備えた、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板に形成された、前記第1回路が形成された第1素子領域を規定する素子分離絶縁膜を含み、
前記第1絶縁体および前記第2絶縁体は、前記半導体基板の表面から、前記素子分離絶縁膜の底よりも深い位置にわたり形成された、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタの下方に配置され
複数の前記層間絶縁膜のうち一の層間絶縁膜の表面に接するように、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタのうちの少なくともいずれか一方が形成された、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2インダクタよりも外側に位置する前記一の層間絶縁膜の第3部分の表面は、前記第2インダクタが位置する前記一の層間絶縁膜の第4部分の表面よりも、前記半導体基板の表面に近い、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記多層配線構造では、
前記一の層間絶縁膜の表面に接するように前記第2インダクタが形成され、
複数の前記層間絶縁膜のうち、前記一の層間絶縁膜に対して、前記半導体基板側に位置する他の層間絶縁膜の表面に接するように、前記第1インダクタが形成された、請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタの形状は、平面視において、環形状である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板は、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタの下方に配置され
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、平面視において、前記半導体基板の外縁部に沿うように延在している、請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体基板を用意する工程と、
前記半導体基板の主面に、第1素子領域および第2素子領域をそれぞれ規定する工程と、
前記第1素子領域に第1電圧で駆動する第1回路を形成し、前記第2素子領域に前記第1電圧よりも高い第2電圧で駆動する第2回路を形成する工程と、
前記第1回路および前記第2回路を覆うように、前記半導体基板上に複数の配線および複数の前記配線のそれぞれを電気的に絶縁する複数の層間絶縁膜を順次形成して多層配線構造を形成することにより、前記第1回路を含む第1半導体チップと、前記第2回路を含む第2半導体チップとを形成する工程と
を備え、
前記多層配線構造を形成する工程は、
前記第1半導体チップとなる領域に、前記第1回路に電気的に接続される第1インダクタを形成する工程と、
前記第1半導体チップとなる領域に、前記第2回路に電気的に接続される第2インダクタを形成する工程と
を含み、
前記第1インダクタを形成する工程および前記第2インダクタを形成する工程では、平面視において、前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに重ならないように形成されるとともに、互いに沿うように形成され
前記多層配線構造を形成する工程は、
前記半導体基板を覆うように、複数の前記層間絶縁膜のうち一の層間絶縁膜を形成する工程と、
前記一の層間絶縁膜の表面に、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタの少なくともいずれか一方を形成する工程と
を含み、
前記多層配線構造を形成する工程は、
前記一の層間絶縁膜を形成する前に、前記半導体基板を覆うように、複数の前記層間絶縁膜のうち他の層間絶縁膜を形成する工程と、
前記他の層間絶縁膜の表面に接するように前記第1インダクタを形成する工程と
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1インダクタの直下に位置することになる前記半導体基板の部分に、第1絶縁体を形成する工程と、
前記第2インダクタの直下に位置することになる前記半導体基板の部分に、第2絶縁体を形成する工程と
を含む、請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1素子領域および前記第2素子領域をそれぞれ規定する工程は、前記半導体基板に素子分離絶縁膜を形成する工程を含み、
前記第1絶縁体および前記第2絶縁体を形成する工程は、前記第1絶縁体および前記第2絶縁体を、前記半導体基板の前記主面から、前記素子分離絶縁膜の底よりも深い位置にわたり形成する工程を含む、請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記多層配線構造を形成する工程は、前記第2インダクタよりも外周側に位置する前記一の層間絶縁膜の第3部分に加工を施すことにより、前記一の層間絶縁膜の前記第3部分の表面を、前記第2インダクタが位置する前記一の層間絶縁膜の第4部分の表面に対して、前記半導体基板の側に後退させる部分を形成する工程を含む、請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記多層配線構造を形成する工程は、複数の前記配線のうち最上層に位置することになる最上層配線を、前記一の層間絶縁膜の表面に接するように形成する工程を含む、請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記半導体基板を用意する工程では、第1半導体基板と第2半導体基板とが用意され、
前記第1素子領域および前記第2素子領域をそれぞれ規定する工程では、
前記第1素子領域は、前記主面として前記第1半導体基板の第1主面に規定され、
前記第2素子領域は、前記主面として前記第2半導体基板の第2主面に規定され、
前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップを形成する工程では、
前記第1半導体チップは前記第1半導体基板に形成され、
前記第2半導体チップは前記第2半導体基板に形成される、請求項記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、たとえば、アイソレータを備えた半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
環境保全のために、たとえば、自動車の分野では、動力としてガソリンエンジンからモータへの転換が図られている。モータの回転数は、電力用のパワー半導体素子を搭載したパワー半導体装置によって制御される。そのパワー半導体装置はマイクロコンピュータを備えた半導体装置によって制御される。
【0003】
電力用のパワー半導体素子を搭載した半導体装置では、数百V程度の電圧が扱われる。一方、マイクロコンピュータを備えた半導体装置は、数V程度の電圧によって駆動する。電力用のパワー半導体素子を搭載した半導体装置を、マイクロコンピュータによって制御するには、パワー半導体素子を含む回路と、マイクロコンピュータを含む回路との間で、信号のやり取り(送受信)を行う必要がある。
【0004】
基準とされる電圧が互いに異なる半導体装置の信号の送受信を仲介する半導体装置として、アイソレータと呼ばれる半導体装置が使用されている。アイソレータでは、パワー半導体素子を含む回路に接続されたインダクタと、マイクロコンピュータを含む回路に接続されたインダクタとの間で電気信号を伝達させる。一方のインダクタと他方のインダクタとは、一方のインダクタと他方のインダクタとの間に、絶縁膜を介在させて配置されている。このようなアイソレータを開示した特許文献の一例として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-219122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力用のパワー半導体素子を搭載した半導体装置で扱う電圧と、マイクロコンピュータを備えた半導体装置で扱う電圧との電圧差が大きくなると、耐圧を確保するために、一方のインダクタと他方のインダクタとの距離をより拡げる必要がある。そのために、一方のインダクタと他方のインダクタとの間に介在する絶縁膜(層間絶縁膜)の膜厚を厚くする必要がある。
【0007】
しかしながら、絶縁膜の厚さが厚くなると、絶縁膜が有する膜応力によって、半導体基板が反ってしまうことが想定される。半導体基板が反ってしまうと、半導体製造装置において、たとえば、半導体基板の搬送に支障をきたし、半導体基板に処理を良好に行うことが阻害されることになる。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置は、半導体基板と多層配線構造と第1回路と第2回路と第1インダクタと第2インダクタとを備えている。多層配線構造は、半導体基板を覆うように形成されている。第1回路は、第1電圧で駆動する。第2回路は、第1電圧よりも高い第2電圧で駆動する。第1インダクタは、第1回路に電気的に接続されている。第2インダクタは、第2回路に電気的に接続されている。多層配線構造は、複数の配線と、複数の配線を互いに電気的に絶縁する複数の層間絶縁膜とを含む。第1インダクタは、複数の層間絶縁膜のうち、第1層間絶縁膜内に形成されている。第2インダクタは、複数の層間絶縁膜のうち、第1層間絶縁膜とは異なる第2層間絶縁膜内に形成されている。平面視において、第1インダクタと第2インダクタとは、互いに重ならないように配置されているとともに、互いに沿うように配置されている。
【0010】
他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。半導体基板を用意する。半導体基板の主面に、第1素子領域および第2素子領域をそれぞれ規定する。第1素子領域に第1電圧で駆動する第1回路を形成し、第2素子領域に第1電圧よりも高い第2電圧で駆動する第2回路を形成する。第1回路および第2回路を覆うように、半導体基板上に複数の配線および複数の配線のそれぞれを電気的に絶縁する複数の層間絶縁膜を順次形成して多層配線構造を形成することにより、第1回路を含む第1半導体チップと、第2回路を含む第2半導体チップとを形成する。多層配線構造を形成する工程は、以下の工程を含む。第1半導体チップとなる領域に、第1回路に電気的に接続される第1インダクタを形成する。第1半導体チップとなる領域に、第2回路に電気的に接続される第2インダクタを形成する。第1インダクタを形成する工程および第2インダクタを形成する工程では、平面視において、第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに重ならないように形成されるとともに、互いに沿うように形成される。多層配線構造を形成する工程は、半導体基板を覆うように、複数の層間絶縁膜のうち一の層間絶縁膜を形成する工程と、一の層間絶縁膜の表面に、第1インダクタおよび第2インダクタの少なくともいずれか一方を形成する工程とを含む。さらに、多層配線構造を形成する工程は、一の層間絶縁膜を形成する前に、半導体基板を覆うように、複数の層間絶縁膜のうち他の層間絶縁膜を形成する工程と、他の層間絶縁膜の表面に接するように第1インダクタを形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態に係る半導体装置によれば、絶縁膜を厚くすることなく第1インダクタと第2インダクタとの間の耐圧を確保することができる。
【0012】
他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、絶縁膜を厚くすることなく第1インダクタと第2インダクタとの間の耐圧を確保することができる半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図2】同実施の形態において、半導体装置の構造を説明するための斜視図である。
図3】同実施の形態において、第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図4】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図5】同実施の形態において、図4に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図16】同実施の形態において、図15に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図17】同実施の形態において、図16に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図18】同実施の形態において、図17に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図19】同実施の形態において、図18に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図20】同実施の形態において、図19に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図21】同実施の形態において、インダクタの配線長比と結合係数比との関係を示すグラフである。
図22】実施の形態2に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図23】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図24】同実施の形態において、図23に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図25】同実施の形態において、図24に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図26】同実施の形態において、図25に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図27】同実施の形態において、図26に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図28】同実施の形態において、図27に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図29】実施の形態3に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図30】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図31】同実施の形態において、図30に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図32】同実施の形態において、図31に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図33】実施の形態4に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図34】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図35】同実施の形態において、図34に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図36】同実施の形態において、図35に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図37】同実施の形態において、図36に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図38】同実施の形態において、図37に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図39】実施の形態5に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図40】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図41】同実施の形態において、図40に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図42】同実施の形態において、図41に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図43】同実施の形態において、図42に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図44】同実施の形態において、図43に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図45】同実施の形態において、図44に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図46】同実施の形態において、図45に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図47】実施の形態6に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
図48】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図49】同実施の形態において、図48に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図50】同実施の形態において、図49に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図51】同実施の形態において、図50に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図52】同実施の形態において、図51に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図53】同実施の形態において、図52に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図54】同実施の形態において、図53に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図55】各実施の形態において、変形例に係る半導体装置における第1半導体チップおよび第2半導体チップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
実施の形態1に係る半導体装置について説明する。図1および図2に示すように、半導体装置SDVは、第1半導体チップSCP1および第2半導体チップSCP2を備えている。第1半導体チップSCP1および第2半導体チップSCP2のそれぞれは、リードフレームLFMに搭載されて、封止樹脂RENによって封止されている。
【0015】
第1半導体チップSCP1には、たとえば、変調処理部および送信側ドライバ回路を含む第1回路FCTが形成されている。第1半導体チップSCP1では、たとえば、数V程度の電圧が扱われる。第2半導体チップSCP2には、たとえば、受信回路および受信側ドライバ回路を含む第2回路SCTが形成されている。第2半導体チップSCP2では、たとえば、数百V程度の電圧が扱われる。
【0016】
第1半導体チップSCP1には、送信側の第1インダクタFIDと受信側の第2インダクタSIDとが形成されている。第1インダクタFIDは、第1回路FCTに電気的に接続されている。第2インダクタSIDは、ボンディングワイヤBWを介して第2回路SCTに電気的に接続されている。第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは、相互に誘導結合することによって信号が伝達される。
【0017】
半導体装置SDV(第1半導体チップSCP1)の平面視において、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは、互いに重ならないように配置されているとともに、互いに沿うように環状に配置されている。第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは、第1半導体チップSCP1の外周部分に沿って環状に配置されている。ここでは、第2インダクタSIDは、第1インダクタFIDよりも外側に配置されている。なお、「環状」とは、第1半導体チップSCP1の外周部分に沿うように形成されていることをいい、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDは、閉じていなくてもよい。
【0018】
次に、第1半導体チップSCP1と第2半導体チップSCP2とについて、詳しく説明する。図3に示すように、第1半導体チップSCP1では、第1半導体基板FSUB(半導体基板SUB)に形成された第1素子分離絶縁膜FSTIによって、第1素子領域FERが規定されている。第1素子分離絶縁膜FSTIは、第1半導体基板FSUBの表面から所定の深さにわたり形成されている。第1素子領域FERには、第1回路FCTの一部を構成する、たとえば、nチャネル型の第1トランジスタFNTとpチャネル型の第1トランジスタFPTとが形成されている。
【0019】
nチャネル型の第1トランジスタFNTは、p型第1ウェルFPWに形成されている。p型第1ウェルFPWには、ソース・ドレインとしての一対のn型第1不純物領域FNRが形成されている。一対のn型第1不純物領域FNRによって挟まれたp型第1ウェルFPWの部分の表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極FNGが形成されている。
【0020】
pチャネル型の第1トランジスタFPTは、n型第1ウェルFNWに形成されている。n型第1ウェルFNWには、ソース・ドレインとしての一対のp型第1不純物領域FPRが形成されている。一対のp型第1不純物領域FPRによって挟まれたn型第1ウェルFNWの部分の表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極FPGが形成されている。
【0021】
nチャネル型の第1トランジスタFNTおよびpチャネル型の第1トランジスタFPTを覆うように、第1半導体基板FSUB(半導体基板SUB)上に層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1を覆うように層間絶縁膜IL2が形成され、その層間絶縁膜IL2の配線溝に配線FM1が形成されている。配線FM1を覆うように、層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3が形成されている。
【0022】
層間絶縁膜IL3を覆うように層間絶縁膜IL4が形成され、その層間絶縁膜IL4の配線溝に配線FM2が形成されている。配線FM2を覆うように、層間絶縁膜IL4上に層間絶縁膜IL5が形成されている。層間絶縁膜IL5を覆うように層間絶縁膜IL6が形成され、その層間絶縁膜IL6の配線溝に配線FM3が形成されている。配線FM3を覆うように、層間絶縁膜IL6上に層間絶縁膜IL7が形成されている。
【0023】
層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが形成されている。平面視的に、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDは、第1素子領域FERを取り囲むように配置されている(図2参照)。配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれの側方を充填するように、層間絶縁膜IL8が形成されている。
【0024】
第1インダクタFID、第2インダクタSIDおよび配線FM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成されている。配線FM1~FM4および層間絶縁膜ILL(IL1~IL8)により、多層配線構造FMLが形成されている。配線FM1~FM4は、対応する層間絶縁膜ILLを貫通するヴィアによって、互いに電気的に接続されている。
【0025】
第1インダクタFIDの直下に位置する第1半導体基板FSUBの部分には、第1絶縁体DTI1が形成されている。第1絶縁体DTI1は、第1半導体基板FSUBの表面から第1素子分離絶縁膜FSTI1の底よりも深い位置にわたり形成されている。なお、第1半導体基板FSUBと第1インダクタFIDとが、互いに同電位の場合には、第1絶縁体DTI1は、形成されていなくてもよい。第2インダクタSIDの直下に位置する第1半導体基板FSUBの部分には、第2絶縁体DTI2が形成されている。第2絶縁体DTI2は、第1半導体基板FSUBの表面から第1素子分離絶縁膜FSTI1の底よりも深い位置にわたり形成されている。
【0026】
第2半導体チップSCP2では、第2半導体基板SSUB(半導体基板SUB)に形成された第2素子分離絶縁膜SSTIによって、第2素子領域SERが規定されている。第2素子分離絶縁膜SSTIは、第2半導体基板SSUBの表面から所定の深さにわたり形成されている。第2素子領域SERには、第2回路の一部を構成する、たとえば、nチャネル型の第2トランジスタSNTとpチャネル型の第2トランジスタSPTとが形成されている。
【0027】
nチャネル型の第2トランジスタSNTは、p型第2ウェルSPWに形成されている。p型第2ウェルSPWには、ソース・ドレインとしての一対のn型第2不純物領域SNRが形成されている。一対のn型第2不純物領域SNRによって挟まれたp型第2ウェルSPWの部分の表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極SNGが形成されている。
【0028】
pチャネル型の第2トランジスタSPTは、n型第2ウェルSNWに形成されている。n型第2ウェルSNWには、ソース・ドレインとしての一対のp型第2不純物領域SPRが形成されている。一対のp型第2不純物領域SPRによって挟まれたn型第2ウェルSNWの部分の表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極SPGが形成されている。
【0029】
nチャネル型の第2トランジスタSNTおよびpチャネル型の第2トランジスタSPTを覆うように、第2半導体基板SSUB(半導体基板SUB)上に層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1を覆うように層間絶縁膜IL2が形成され、その層間絶縁膜IL2の配線溝に配線SM1が形成されている。配線SM1を覆うように、層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3が形成されている。層間絶縁膜IL3を覆うように層間絶縁膜IL4が形成され、その層間絶縁膜IL4の配線溝に配線SM2が形成されている。
【0030】
配線SM2を覆うように層間絶縁膜IL5が形成されている。層間絶縁膜IL5を覆うように層間絶縁膜IL6が形成され、その層間絶縁膜IL6の配線溝に配線SM3が形成されている。配線SM3を覆うように層間絶縁膜IL7が形成されている。層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成されている。配線SM4の側方を充填するように、層間絶縁膜IL8が形成されている。
【0031】
配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成されている。配線SM1~SM4および層間絶縁膜ILL(IL1~IL8)により、多層配線構造SMLが形成されている。配線SM4と第2インダクタSIDとが、ボンディングワイヤBWによって電気的に接続されている。配線SM1~SM4は、対応する層間絶縁膜ILLを貫通するヴィアによって、互いに電気的に接続されている。第1半導体チップSCP1と第2半導体チップSCP2とは、上記のように構成される。
【0032】
上述した半導体装置SDVでは、第1回路FCTに電気的に接続された第1インダクタFIDと第2回路に電気的に接続された第2インダクタSIDとが相互に誘導結合することによって、扱う電圧が互いに異なる第1半導体チップSCP1と第2半導体チップSCP2との間で信号が伝達される。
【0033】
次に、上述した半導体装置SDVの製造方法の一例について説明する。ここでは、第1半導体チップSCP1の製造工程と第2半導体チップSCP2の製造工程とは、共通する製造工程が多いため、説明の便宜上、並行して説明する。
【0034】
図4に示すように、まず、第1インダクタFIDの直下に位置することになる第1半導体基板FSUB(半導体基板SUB)の部分に、比較的深いトレンチを形成し、そのトレンチに絶縁膜を充填することによって、第1絶縁体DTI1が形成される。また、第2インダクタSIDの直下に位置することになる第1半導体基板FSUB(半導体基板SUB)の部分に、比較的深いトレンチを形成し、そのトレンチに絶縁膜を充填することによって、第2絶縁体DTI2が形成される。第1絶縁体DTI1と第2絶縁体DTI2とは、同時に形成される。
【0035】
第1絶縁体DTI1および第2絶縁体DTI2のそれぞれの幅W1は、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれの幅W2よりも広く設定される。また、第1絶縁体DTI1および第2絶縁体DTI2のそれぞれは、半導体基板SUBの表面から、後述する第1素子分離絶縁膜FSTIおよび第2素子分離絶縁膜SSTIの底よりも深い位置にわたり形成される(図5参照)。
【0036】
次に、図5に示すように、第1半導体基板FSUB(半導体基板SUB)に、比較的浅いトレンチを形成し、そのトレンチに絶縁膜を充填することによって、第1素子分離絶縁膜FSTIが形成される。第2半導体基板SSUB(半導体基板SUB)に、比較的浅いトレンチを形成し、そのトレンチに絶縁膜を充填することによって、第2素子分離絶縁膜SSTIが形成される。第1素子分離絶縁膜FSTIによって第1素子領域FERが規定される(図3参照)。第2素子分離絶縁膜SSTIによって第2素子領域SERが規定される(図3参照)。
【0037】
次に、所定の写真製版処理および所定の導電型の不純物の注入処理がそれぞれ行われる。これにより、図6に示すように、第1素子領域FERには、p型第1ウェルFPWとn型第1ウェルFNWとがそれぞれ形成される。第2素子領域SERには、p型第2ウェルSPWとn型第2ウェルSNWとがそれぞれ形成される。
【0038】
次に、所定の写真製版処理および所定の導電型の不純物の注入処理がそれぞれ行われる。これにより、図7に示すように、第1素子領域FERには、n型第1不純物領域FNRとp型第1不純物領域FPRとがそれぞれ形成される。第2素子領域SERには、n型第2不純物領域SNRとp型第2不純物領域SPRとがそれぞれ形成される。
【0039】
次に、熱酸化法によってシリコン酸化膜(図示せず)が形成される。そのシリコン酸化膜を覆うように、たとえば、ポリシリコン膜(図示せず)等が形成される。次に、所定の写真製版処理および所定のエッチング処理が行われる。これにより、図8に示すように、第1素子領域FERでは、p型第1ウェルFPWの表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極FNGが形成される。n型第1ウェルFNRの表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極FPGが形成される。第2素子領域SERでは、p型第2ウェルSPWの表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極SNGが形成される。n型第2ウェルSNWの表面上に、ゲート絶縁膜を介在させてゲート電極SPGが形成される。
【0040】
次に、図9に示すように、ゲート電極FNG、FPGを覆うように、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、層間絶縁膜IL1が形成される。ゲート電極SNG、SPGを覆うように、層間絶縁膜IL1が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理が行われる。これにより、図10に示すように、第1素子領域FERでは、コンタクトホールFCHが形成される。第2素子領域SERでは、コンタクトホールSCHが形成される。
【0041】
次に、コンタクトホールFCHを埋め込むように、層間絶縁膜IL1上に導電性膜(図示せず)が形成される。コンタクトホールSCHを埋め込むように、層間絶縁膜IL1上に導電性膜(図示せず)が形成される。次に、導電性膜に化学的機械研磨処理が行われる。これにより、図11に示すように、コンタクトホールFCH内に、コンタクトプラグFPG1が形成される。コンタクトホールSCH内に、コンタクトプラグSPG1が形成される。
【0042】
次に、層間絶縁膜IL1を覆うように、層間絶縁膜IL2が形成される。次に、ダマシン法により、層間絶縁膜IL2に配線溝が形成される。次に、図12に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL2の配線溝内に配線FM1が形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL2の配線溝内に配線SM1が形成される。
【0043】
次に、図13に示すように、配線FM1を覆うように層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3が形成される。配線SM1を覆うように層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3が形成される。次に、層間絶縁膜IL3を貫通するプラグが形成される。次に、層間絶縁膜IL3を覆うように層間絶縁膜IL4が形成される。次に、ダマシン法により、層間絶縁膜IL4に配線溝が形成される。第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL4の配線溝内に配線FM2が形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL4の配線溝内に配線SM2が形成される。
【0044】
次に、配線FM2を覆うように層間絶縁膜IL4上に層間絶縁膜IL5が形成される。配線SM2を覆うように層間絶縁膜IL4上に層間絶縁膜IL5が形成される。次に、その層間絶縁膜IL5を貫通するプラグが形成される。次に、層間絶縁膜IL5を覆うように層間絶縁膜IL6が形成される。
【0045】
次に、ダマシン法により、層間絶縁膜IL6に配線溝が形成される。第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL6の配線溝内に配線FM3が形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL6の配線溝内に配線SM3が形成される。次に、配線FM3を覆うように層間絶縁膜IL6上に層間絶縁膜IL7が形成される。配線SM3を覆うように層間絶縁膜IL6上に層間絶縁膜IL7が形成される。次に、その層間絶縁膜IL7を貫通するプラグが形成される。
【0046】
次に、層間絶縁膜IL7を覆うように、たとえば、スパッタ法により導電性膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理が行われる。これにより、図14に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。第1インダクタFIDは、第1半導体基板FSUBに形成された第1絶縁体DTI1の直上に配置される。第2インダクタSIDは、第1半導体基板FSUBに形成された第2絶縁体DTI2の直上に配置される。
【0047】
次に、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL7上に層間絶縁膜(図示せず)が形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL7上に層間絶縁膜(図示せず)が形成される。次に、層間絶縁膜に化学的機械研磨処理が行われる。
【0048】
これにより、図15に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL8の表面に、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれの表面が露出する。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL8の表面に、配線SM4の表面が露出する。
【0049】
配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれの側方に、層間絶縁膜IL8が充填されることになる。配線SM4の側方に、層間絶縁膜IL8が充填されることになる。こうして、第1半導体基板FSUBを覆うように、多層配線構造FMLが形成される。第2半導体基板SSUBを覆うように、多層配線構造SMLが形成される。
【0050】
次に、図16に示すように、たとえば、CVD法によって、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理がそれぞれ行われる。
【0051】
これにより、図17に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。こうして、第1半導体チップSCP1の主要部分が完成する。第2半導体チップSCP2の主要部分が完成する。
【0052】
次に、図18に示すように、第1半導体チップSCP1と第2半導体チップSCP2とが、リードフレームLFMにおける所定の位置にそれぞれ搭載される。次に、図19に示すように、第1半導体チップSCPに露出している第2インダクタSID(図17参照)と、第2半導体チップSCP2に露出している配線SM4(図17参照)とが、ボンディングワイヤBWによって電気的に接続される。
【0053】
次に、図20に示すように、たとえば、モールド法によって、第1半導体チップSCP1、第2半導体チップSCP2およびリードフレームLFMが、封止樹脂RENによって封止される。その後、封止樹脂RENから突出しているリードフレームLFMの部分を屈曲させることによって、図1等に示す半導体装置SDVが完成する。
【0054】
上述した半導体装置SDVでは、図3に示すように、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとが横方向に距離LLを隔てて配置されており、平面視的に、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは互いに重ならないように、しかも、互いに沿うように配置されている(図2参照)。距離LLは、耐圧に応じて、たとえば、数μm~数十μmとされる。
【0055】
これにより、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとを上下方向に配置し、その間に層間絶縁膜を介在せた比較例に係る半導体装置と比べると、層間絶縁膜の厚さを厚くすることなく、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性を確保しながら、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0056】
発明者らは、上述した半導体装置SDVと比較例に係る半導体装置とについて、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとによる誘導結合の機能として、シミュレーションによって結合係数を算出した。その結果をグラフとして図21に示す。横軸は、内側に配置されている第1インダクタの配線長比であり、比較例に係る半導体装置の第1インダクタの配線長を1としている。縦軸は結合係数比であり、比較例に係る半導体装置の結合係数を1としている。
【0057】
図21に示すように、配線長比が1の場合では、実施の形態に係る半導体装置SDVの結合係数は、比較例に係る半導体装置の結合係数よりも少し下がっていることがわかるが、基本的には問題のないレベルあることが確認された。
【0058】
また、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとを横方向に配置させた実施の形態1に係る半導体装置SDVでは、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDの長さを十分に長く設定することができる。これにより、実施の形態1に係る半導体装置SDVでは、第1インダクタFIDの配線長が、比較例の場合の配線長の2倍程度の長さで、結合係数は比較例の場合の結合係数と同等になっていることが確認された。
【0059】
そして、第1インダクタFIDの配線長をさらに長く設定すると、結合係数は、比較例の場合の結合係数よりも高くなることが確認された。この評価結果から、上述した半導体装置SDVでは、アイソレータとしての特性を確保できることが確認された。
【0060】
また、上述した半導体装置SDVでは、第1インダクタFIDの直下に位置する半導体基板SUBの部分に、第1絶縁体DTI1が形成されている。第2インダクタSIDの直下に位置する半導体基板SUBの部分に、第2絶縁体DTI2が形成されている。これにより、第1インダクタFIDと半導体基板SUBとの間の絶縁耐性を向上させることができるとともに、第2インダクタSIDと半導体基板SUBとの間の絶縁耐性を向上させることができる。
【0061】
実施の形態2
ここでは、第2インダクタSIDに対する第1インダクタFIDの配置のバリエーションの一例について説明する。
【0062】
図22に示すように、第1半導体チップSCP1では、第2インダクタSIDは、層間絶縁膜IL7の表面に接するように形成されている。第1インダクタFIDは、層間絶縁膜IL5の表面に接するように形成されている。第2インダクタSIDと第1インダクタFIDとの横方向の距離は、たとえば、距離LLに設定されている。
【0063】
なお、これ以外の構成については、図3に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。また、半導体装置SDVとしては、図1に示されるのと同様に、第1半導体チップSCP1および第2半導体チップSCP2は、封止樹脂RENによって封止されている。
【0064】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。実施の形態に1において説明した図4図12に示す工程と同様の工程を経た後、図13に示す工程において、配線FM3とともに、第1インダクタFIDが形成される。図23に示すように、ダマシン法により、層間絶縁膜IL5を覆う層間絶縁膜IL6に配線溝が形成される。第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL6の配線溝内に、配線FM3と第1インダクタFIDとが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL6の配線溝内に配線SM3が形成される。
【0065】
次に、図24に示すように、第1インダクタFIDおよび配線FM3を覆うように、層間絶縁膜IL6上に層間絶縁膜IL7が形成される。配線SM3を覆うように層間絶縁膜IL6上に層間絶縁膜IL7が形成される。次に、その層間絶縁膜IL7を貫通するプラグが形成される。次に、図14に示す工程と同様の工程を経て、図25に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4および第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。
【0066】
次に、図15に示す工程と同様の工程を経て、図26に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL8の表面に、配線FM4および第2インダクタSIDのそれぞれの表面が露出する。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL8の表面に、配線SM4の表面が露出する。次に、図16に示す工程と同様の工程を経て、図27に示すように、配線FM4および第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。
【0067】
次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理がそれぞれ行われる。これにより、図28に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。こうして、第1半導体チップSCP1の主要部分が完成する。第2半導体チップSCP2の主要部分が完成する。その後、図18図20に示す工程と同様の工程を経て、図22に示す半導体装置SDVが完成する。
【0068】
上述した半導体装置SDVでは、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。図22に示すように、半導体装置SDVでは、平面視的に、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは互いに重ならないように、しかも、互いに沿うように配置されている。また、第1インダクタFIDは、第2インダクタSIDに対して、層間絶縁膜IL7の厚さ分だけ、半導体基板SUBの側に配置されている。
【0069】
これにより、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの横方向の距離を距離LLに設定した場合には、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの実質的な距離LLGは、距離LLよりも長くなる。その結果、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性をより確実に確保しながら、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0070】
一方、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの実質的な距離LLGを、距離LLと同じ距離に設定した場合には、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの横方向の距離は、当初の距離LLよりも短くなる。したがって、この場合には、半導体装置の小型化に寄与することができる。
【0071】
実施の形態3
ここでは、第2インダクタSIDに対する第1インダクタFIDの配置のバリエーションの他の例について説明する。
【0072】
図29に示すように、第1半導体チップSCP1では、第2インダクタSIDは、層間絶縁膜IL7の表面に接するように形成されている。第1インダクタFIDは、層間絶縁膜IL4の表面に接するように形成されている。第2インダクタSIDと第1インダクタFIDとの横方向の距離は、たとえば、距離LLに設定されている。
【0073】
なお、これ以外の構成については、図3に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。また、半導体装置SDVとしては、図1に示されるのと同様に、第1半導体チップSCP1および第2半導体チップSCP2は、封止樹脂RENによって封止されている。
【0074】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。実施の形態に1において説明した図4図12に示す工程と同様の工程を経た後、図13に示す工程において、配線FM2とともに、第1インダクタFIDが形成される。図30に示すように、ダマシン法により、層間絶縁膜IL3を覆う層間絶縁膜IL4に配線溝が形成される。第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL4の配線溝内に、配線FM2と第1インダクタFIDとが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL4の配線溝内に配線SM2が形成される。
【0075】
次に、図14に示す工程と同様の工程を経て、図31に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4および第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。
【0076】
次に、図15図17に示す工程と同様の工程を経て、図32に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。こうして、第1半導体チップSCP1の主要部分が完成する。第2半導体チップSCP2の主要部分が完成する。その後、図18図20に示す工程と同様の工程を経て、図29に示す半導体装置SDVが完成する。
【0077】
上述した半導体装置SDVでは、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。図29に示すように、半導体装置SDVでは、平面視的に、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとは互いに重ならないように、しかも、互いに沿うように配置されている。また、第1インダクタFIDは、第2インダクタSIDに対して、層間絶縁膜IL5、IL6、IL7の厚さ分だけ、半導体基板SUBの側に配置されている。
【0078】
これにより、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの横方向の距離を距離LLに設定した場合には、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの実質的な距離LLGは、距離LLよりも長くなる。その結果、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性をさらに確実に確保しながら、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0079】
一方、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの実質的な距離を、距離LLと同じ距離に設定した場合には、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの横方向の距離は、当初の距離LLよりもさらに短くなる。したがって、この場合には、半導体装置のさらなる小型化に寄与することができる。
【0080】
なお、上述した半導体装置SDVでは、第1インダクタFIDを層間絶縁膜IL3の表面に接するように配置した場合について説明したが、第1インダクタFIDを層間絶縁膜IL1に接するように配置してもよい。これの場合には、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性をさらに向上させることができるか、または、半導体装置のさらなる小型化に寄与することができる。
【0081】
実施の形態4
ここでは、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの沿面距離を確保することができる構造の一例について説明する。
【0082】
図33に示すように、半導体装置SDVの第1半導体チップSCP1では、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、半導体基板SUBの側に後退している。
【0083】
つまり、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分と層間絶縁膜IL8との界面(表面H2)の位置が、第1インダクタFIDまたは第2インダクタSIDと層間絶縁膜IL7の部分との界面(表面H1)の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。なお、これ以外の構成については、図3に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0084】
次に、上述した半導体装置SDVの製造方法の一例について説明する。図4図14に示す工程と同様の工程を経て、図34に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。このとき、さらに、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7にオーバーエッチング処理が行われる。
【0085】
これにより、図35に示すように、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退する。
【0086】
次に、図36に示すように、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間等を充填するように、層間絶縁膜IL8が形成される。次に、図16に示す工程と同様の工程を経て、図37に示すように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理がそれぞれ行われる。
【0087】
これにより、図38に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。その後、図18図20に示す工程と同様の工程を経て、図33に示す半導体装置SDVが完成する。
【0088】
上述した半導体装置SDVでは、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0089】
図33に示すように、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。
【0090】
これにより、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間の沿面距離が、表面H2の位置が表面H1の位置と同じ位置(高さ)にある場合と比較すると、より長くなる。その結果、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性を向上させることができるとともに、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0091】
実施の形態5
ここでは、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの沿面距離に加えて、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との沿面距離を確保することができる構造の一例について説明する。
【0092】
図39に示すように、半導体装置SDVの第1半導体チップSCP1では、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、半導体基板SUBの側に後退している。
【0093】
さらに、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H3の位置が、半導体基板SUBの側に後退している。
【0094】
つまり、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分と層間絶縁膜IL8との界面(表面H2)の位置が、第1インダクタFIDまたは第2インダクタSIDと層間絶縁膜IL7の部分との界面(表面H1)の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。
【0095】
また、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分と層間絶縁膜IL8との界面(表面H3)の位置が、第2インダクタSIDと層間絶縁膜IL7の部分との界面(表面H1)の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。なお、これ以外の構成については、図3に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0096】
次に、上述した半導体装置SDVの製造方法の一例について説明する。図4図14に示す工程と同様の工程を経て、図40に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。
【0097】
次に、図41に示すように、所定の写真製版処理を行うことにより、フォトレジストパターンPR1が形成される。次に、図42に示すように、フォトレジストパターンPR1をエッチングマスクとして、層間絶縁膜IL7にエッチング処理が行われる。次に、図43に示すように、フォトレジストパターンPR1が除去される。
【0098】
こうして、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退する。第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H3の位置が、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退する。
【0099】
次に、図44に示すように、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間等を充填するように、層間絶縁膜IL8が形成される。次に、図16に示す工程と同様の工程を経て、図45に示すように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理がそれぞれ行われる。
【0100】
これにより、図46に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。その後、図18図20に示す工程と同様の工程を経て、図39に示す半導体装置SDVが完成する。
【0101】
上述した半導体装置SDVでは、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0102】
図39に示すように、まず、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H2の位置が、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。
【0103】
これにより、実施の形態4に係る半導体装置SDVと同様に、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間の沿面距離が、表面H2の位置が表面H1の位置と同じ位置(高さ)にある場合と比較すると、より長くなる。その結果、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性を向上させることができるとともに、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0104】
さらに、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H3の位置が、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。
【0105】
ここで、半導体装置SDVでは、絶縁破壊を起こす場合には、第1半導体チップSCP1の端と封止樹脂RENとの界面を通して破壊される場合が多いことがわかっている。そこで、表面H3の位置を、表面H1の位置に対して半導体基板SUBの側に後退させることで、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との沿面距離は、表面H3の位置が表面H1の位置と同じ位置(高さ)にある場合と比較すると、より長くなる。その結果、第1半導体チップSCP1の端と封止樹脂RENとの界面を通して絶縁破壊されるのを抑制することができる。
【0106】
また、フォトレジストパターンPR1をエッチングマスクとして、層間絶縁膜IL7にエッチング処理を行うことで、表面H1の位置に対して半導体基板SUBの側に後退させる表面H3の領域を選択することができる。
【0107】
実施の形態6
ここでは、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの沿面距離に加えて、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との沿面距離を確保することができる構造の他の例について説明する。
【0108】
図47に示すように、半導体装置SDVの第1半導体チップSCP1では、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H2の位置が半導体基板SUBの側に後退している。
【0109】
さらに、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H3の位置が半導体基板SUBの側に後退している。
【0110】
つまり、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分と層間絶縁膜IL8との界面(表面H2)の位置が、少なくとも2ヶ所において、第1インダクタFIDまたは第2インダクタSIDと層間絶縁膜IL7の部分との界面(表面H1)の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。
【0111】
また、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分と層間絶縁膜IL8との界面(表面H3)の位置が、少なくとも2ヶ所において、第2インダクタSIDと層間絶縁膜IL7の部分との界面(表面H1)の位置に対して、半導体基板SUBの側に後退している。なお、これ以外の構成については、図3に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0112】
次に、上述した半導体装置SDVの製造方法の一例について説明する。図4図14に示す工程と同様の工程を経て、図48に示すように、第1半導体基板FSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが形成される。第2半導体基板SSUBの層間絶縁膜IL7の表面に接するように、配線SM4が形成される。
【0113】
次に、図49に示すように、所定の写真製版処理を行うことにより、フォトレジストパターンPR2が形成される。次に、図50に示すように、フォトレジストパターンPR2をエッチングマスクとして、層間絶縁膜IL7にエッチング処理が行われる。次に、図51に示すように、フォトレジストパターンPR1が除去される。
【0114】
こうして、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H2の位置が半導体基板SUBの側に後退する。
【0115】
さらに、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H3の位置が半導体基板SUBの側に後退する。
【0116】
次に、図52に示すように、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間等を充填するように、層間絶縁膜IL8が形成される。次に、図16に示す工程と同様の工程を経て、図53に示すように、配線FM4、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDを覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。配線SM4を覆うように、層間絶縁膜IL8上にカバー膜CVFが形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理がそれぞれ行われる。
【0117】
これにより、図54に示すように、第1半導体基板FSUBのカバー膜CVFには、第2インダクタSIDの表面を露出する開口部VH1が形成される。第2半導体基板SSUBのカバー膜CVFには、配線SM4の表面を露出する開口部VH2が形成される。その後、図18図20に示す工程と同様の工程を経て、図47に示す半導体装置SDVが完成する。
【0118】
上述した半導体装置SDVでは、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0119】
図47に示すように、まず、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDのそれぞれが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H2の位置が半導体基板SUBの側に後退している。
【0120】
これにより、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDとの間の沿面距離が、実施の形態5において説明した半導体装置SDVにおける対応する沿面距離よりも長くなる。その結果、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの電気的な絶縁性をさらに向上させることができるとともに、誘導結合によって信号を伝達させることができる。
【0121】
さらに、第2インダクタSIDが位置する層間絶縁膜IL7の部分の表面H1の位置に対して、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との間に位置する層間絶縁膜IL7の部分における少なくとも2ヶ所において、表面H3の位置が半導体基板SUBの側に後退している。
【0122】
これにより、第2インダクタSIDと第1半導体チップSCP1の端との沿面距離は、実施の形態5において説明した半導体装置SDVにおける対応する沿面距離よりも長くなる。その結果、第1半導体チップSCP1の端と封止樹脂RENとの界面を通して絶縁破壊されるのを確実に抑制することができる。
【0123】
変形例
各実施の形態に係る半導体装置の変形例について説明する。上述した各実施の形態に係る半導体装置SDVでは、第1絶縁体DTI1の幅と第2絶縁体DTI2の幅とが同じ幅W1の場合を例に挙げて説明した。第1絶縁体DTI1の幅と第2絶縁体DTI2の幅とは、必ずしも同じ幅である必要はなく、異なっていてもよい。
【0124】
図55に示すように、たとえば、多層配線構造FMLの配線の層数が比較的少なく、多層配線構造FML(層間絶縁膜ILL)の厚さが薄い場合には、第2インダクタSIDと第2絶縁体DTI2との距離LLSが、第1インダクタFIDと第2インダクタSIDとの距離LLよりも短い場合がある。このような場合には、半導体装置SDVの絶縁耐圧を高める観点から、第2絶縁体DTI2の幅は、第1絶縁体DTI1の幅W1よりも大きい幅W3を有していることが好ましい。
【0125】
第2絶縁体DTI2の幅を幅W1よりも大きい幅W3とすることで、第2絶縁体DTI2の幅が幅W1である場合と比べて、第2インダクタSIDと第2絶縁体DTI2との距離LLSを長くすることができる。その結果、半導体装置SDVの絶縁耐圧を向上させることができる。距離LLSを確実に確保するためには、第2絶縁体DTI2は、第2インダクタSIDの直下に位置する部分から、平面視的に、第2インダクタSIDが延在する方向と交差する方向に拡がる態様で、幅W1よりも広い幅W3を有していることが好ましい。
【0126】
なお、各実施の形態において説明した半導体装置SDVでは、第1半導体チップSCP1と第2半導体チップSCP2との2チップ型を例に挙げて説明した。半導体装置SDVとしては、第1回路FCT、第2回路SCT、第1インダクタFIDおよび第2インダクタSIDが、一つの半導体基板SUBに形成された1チップ型でもよい。
【0127】
また、各実施の形態において説明した半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0128】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0129】
SDV 半導体装置、SCP1 第1半導体チップ、SCP2 第2半導体チップ、SUB 半導体基板、FSUB 第1半導体基板、SSUB 第2半導体基板、LFM リードフレーム、BW ボンディングワイヤ、REN 封止樹脂、FSTI 第1素子分離絶縁膜、FER 第1素子領域、FCT 第1回路、DTI1、DTI2 絶縁体、FPW p型第1ウェル、FNT 第1トランジスタ、FNG ゲート電極、FNR n型第1不純物領域、FNW n型第1ウェル、FPT 第1トランジスタ、FPG ゲート電極、FPR p型第1不純物領域、ILL、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8 層間絶縁膜、CVF カバー膜、FM1、FM2、FM3、FM4 配線、FML 多層配線構造、FID 第1インダクタ、SSTI 第2素子分離絶縁膜、SER 第2素子領域、SCT 第2回路、SPW p型第2ウェル、SNT 第2トランジスタ、SNG ゲート電極、SNR n型第2不純物領域、SNW n型第2ウェル、SPT 第2トランジスタ、SPG ゲート電極、SPR p型第2不純物領域、SM1、SM2、SM3、SM4 配線、SML 多層配線構造、SID 第2インダクタ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8 絶縁膜、FCH、SCH コンタクトホール、FPG1、SPG1 コンタクトプラグ、VH1、VH2 開口部、H1、H2、H3 表面、PR1、PR2 フォトレジストパターン。
図1
図2
図3
図4
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図6
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