(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞、造血幹細胞及びマクロファージへの強化された遺伝子送達
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20220304BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220304BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220304BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20220304BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220304BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220304BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220304BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220304BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220304BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N5/10
C12N5/0783
A61K31/365
A61K35/76
A61K35/17 Z
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/16
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2018517137
(86)(22)【出願日】2016-09-30
(86)【国際出願番号】 US2016054618
(87)【国際公開番号】W WO2017059177
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-26
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106249
【氏名又は名称】ヴィセリックス・インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン・アリシ
(72)【発明者】
【氏名】アディル・ドゥル
(72)【発明者】
【氏名】トルガ・ストル
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/151960(WO,A2)
【文献】特表2003-509374(JP,A)
【文献】特表2002-522513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0071414(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243403(US,A1)
【文献】国際公開第2015/052714(WO,A1)
【文献】Science, 2013, Vol.341, No.6148, 1233151
【文献】Hum. Gene Ther., 2012, Vol.23, pp.1090-1100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(5Z)-7-オキソゼアエノールとRNAウイルスベクターを栄養培地中の細胞へ同時投与することを含むことを特徴とする、細胞への遺伝子送達を強化する方法。
【請求項2】
前記RNAウイルスベクターが、レトロウイルス及びレンチウイルスベクターから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベクターはレトロウイルスベクターであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクターはレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、ナチュラルキラー細胞、幹細胞及びマクロファージから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、ナチュラルキラー細胞であり、NK92細胞であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記(5Z)-7-オキソゼアノールは、前記細胞の細胞内防御メカニズムを阻害することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
RIG-I及び/又はIRF3の発現が、有効量の(5Z)-7-オキソゼアエノールを投与することによって阻害されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞内防御メカニズムは、RIG-I及び/又はIRF3のダウンストリームであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記(5Z)-7-オキソゼアエノールは、前記栄養培地中で0.5μM乃至6μMの濃度を達成するのに十分な量で投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
栄養培地中のナチュラルキラー細胞に(5Z)-7-オキソゼアエノールとRNAウイルスベクターを同時投与することを含むことを特徴とする、RNAウイルスベクターを介してナチュラルキラー細胞における遺伝子導入を強化する方法。
【請求項12】
前記ベクターは、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターから選択されることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターはレトロウイルスベクターであることを特徴とする請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターはレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記栄養培地に0.5μM乃至6μMの濃度を達成するように前記(5Z)-7-オキソゼアエノールが添加されることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
(5Z)-7-オキソゼアエノールとRNAウイルスベクターからなり、
投与されることによって細胞をトランスフェクトし、
前記細胞は癌を治療するために投与されることを特徴とする組み合わせ物。
【請求項17】
前記癌が、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、及び芽細胞腫、急性リンパ芽球性白血病(全て)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、エイズ関連癌、肛門癌、星細胞腫、基底細胞癌、肝外胆管癌(胆管癌)、膀胱癌、骨腫瘍、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、脳癌、大脳星細胞腫/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、軟骨肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、皮膚t-細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外、性腺外又は卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹のグリオーマ、小児大脳星細胞腫神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄芽球性白血病(急性骨髄性白血病)、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、ヘアリーセル白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、マクログロブリン血症、ワルデンストローム、男性の乳癌、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫(骨髄癌)、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、乏突起膠腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体芽細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂尿管移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、メラノーマ及び非メラノーマ皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、t細胞リンパ腫(菌状息肉腫及びセザリー症候群)、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、栄養膜腫瘍、尿管及び腎盂移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路グリオーマ及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍(腎臓癌)から選択されることを特徴とする請求項
16に記載の組み合わせ物。
【請求項18】
前記癌が、肝臓癌、多発性骨髄腫又は肉腫から選択されることを特徴とする請求項
17に記載の組み合わせ物。
【請求項19】
前記癌が肝臓癌であることを特徴とする請求項
18に記載の組み合わせ物。
【請求項20】
前記癌が多発性骨髄腫であることを特徴とする請求項
18に記載の組み合わせ物。
【請求項21】
前記癌が肉腫であることを特徴とする請求項
18に記載の組み合わせ物。
【請求項22】
前記ベクターがレトロウイルスベクターであることを特徴とする請求項
16に記載の組み合わせ物。
【請求項23】
前記ベクターがレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項
16に記載の組み合わせ物。
【請求項24】
(5Z)-7-オキソゼアエノールとRNAウイルスベクターからなり、
投与されることによって細胞をトランスフェクトし、
前記細胞は遺伝子突然変異によって引き起こされる疾患を治療するために投与されることを特徴とする組み合わせ物。
【請求項25】
前記疾患は、21-ヒドロキシラーゼ欠損症、軟骨無形成症、急性間欠性ポルフィリン症、アデニロコハク酸リアーゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、アラジール症候群、アレクサンダー病、アルストレーム症候群、遺伝性エナメル質形成不全症、ビオチニダーゼ欠損症、CGD慢性肉芽腫性疾患、ディジョージ症候群、ファンコニ貧血、G6PD欠損、リポ蛋白リパーゼ欠損症、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型、シデリアスX連鎖性精神遅滞症候群(PHF8遺伝子の変異によって引き起こされる)、X連鎖重症複合免疫不全(X-SCID)、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)から選択されることを特徴とする請求項
24に記載の組み合わせ物。
【請求項26】
前記疾患はX連鎖重症複合免疫不全疾患であることを特徴とする請求項
25に記載の組み合わせ物。
【請求項27】
前記ベクターはレトロウイルスベクターであることを特徴とする請求項
24に記載の組み合わせ物。
【請求項28】
前記ベクターはレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項
24に記載の組み合わせ物。
【請求項29】
(5Z)-7-オキソゼアエノールとRNAウイルスベクターからなり、
投与されることによって細胞をトランスフェクトし、
前記細胞は既知の遺伝子変異によって引き起こされる代謝障害を治療するために投与されることを特徴とする組み合わせ物。
【請求項30】
前記ベクターはレトロウイルスベクターであることを特徴とする請求項
29に記載の組み合わせ物。
【請求項31】
前記ベクターはレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項
29に記載の組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権と参照による結合)
本出願は、2015年9月30日に提出された仮出願62/235,427号に対する優先権を主張する。ここで引用された全ての参考文献は、参照により明示的に結合される。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫系のリンパ球である。それらはサイトカイン産生であり、ウイルス感染又は腫瘍細胞の両方を殺す細胞傷害性を有する。このため、NK細胞を用いる養子免疫療法は、癌治療の有望なアプローチである。過去10年間に、幾つかのNK細胞ベースの抗癌製品が有望な臨床結果で臨床試験段階に採用された。しかしながら、より効率的なNK細胞治療製品を製造するためには、NK細胞の遺伝子改変のような新規戦略を開発することが不可欠である。更に、活性化又はキメラ抗原受容体のいずれかの導入を介して腫瘍標的に向け直された遺伝子改変NK細胞を使用すれば、更なる臨床用途のための魅力的な見込みが得られる(非特許文献5)。養子移入されたNK細胞のインビボ生存及び細胞傷害性を強化するために様々なサイトカインを発現する遺伝子導入も様々なアプローチの1つである。強化された増殖と小分子阻害剤による標的細胞内ウイルス防御メカニズムを通じてNK細胞への強化されたレトロウイルス及びレンチウイルス遺伝子送達が開示されているが(非特許文献6)、NK細胞が本質的にレトロウイルス感染に耐性があるという問題は依然として残っている(非特許文献1、2、4、6)。ウイルスベクターを介してマクロファージ及び幹細胞に遺伝物質を送達することも問題である。当該分野には、細胞、特に、NK、造血幹細胞及びマクロファージの、より効率的なトランスフェクションの必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Alici, E., Sutlu, T., and Sirac Dilber, M. (2009). Retroviral gene transfer into primary human natural killer cells. Methods Mol Biol 506, 127-137
【文献】Brandstadter, J.D., and Yang, Y. (2011). Natural killer cell responses to viral infection. J Innate Immun 3, 274-279
【文献】Clark, K., Plater, L., Peggie, M., and Cohen, P. (2009). Use of the pharmacological inhibitor BX795 to study the regulation and physiological roles of TBK1 and IkappaB kinase epsilon: a distinct upstream kinase mediates Ser-172 phosphorylation and activation. J Biol Chem 284, 14136-14146
【文献】Lanier, L.L. (2008). Evolutionary struggles between NK cells and viruses. Nat Rev Immunol 8, 259-268
【文献】Pegram, H.J., Kershaw, M.H., and Darcy, P.K. (2009). Genetic modification of natural killer cells for adoptive cellular immunotherapy. Immunotherapy 1, 623-630
【文献】Sutlu, T., Nystrom, S., Gilljam, M., Stellan, B., Applequist, S.E., and Alici, E. (2012). Inhibition of intracellular antiviral defense mechanisms augments lentiviral transduction of human natural killer cells: implications for gene therapy. Hum Gene Ther 23, 1090-1100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアエノールとウイルスベクターを同時投与することによって細胞のトランスフェクションを改善することである。
【0006】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアエノールを細胞に投与することによって養子細胞移入治療を改善することである。
【0007】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアノールをウイルスベクターと共にナチュラルキラー細胞、マクロファージ及び幹細胞に投与することにより、このような細胞のトランスフェクションを改善することである。
【0008】
本発明の目的は、ウイルスベクター及び(5Z)-7-オキソゼアノールからなり、ヒト疾患を治療するために使用される細胞をトランスフェクトするために該細胞に投与される組み合わせ物を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、レンチウイルス又はレトロウイルスベースのベクターを用いて細胞を形質導入することである。
【0010】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアエノール及びRNAウイルスベクターからなり、癌及び増殖性疾患を治療するために用いられる細胞をトランスフェクトするために該細胞に投与される組み合わせ物を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアエノール及びRNAウイルスベクターからなり、遺伝子突然変異によって引き起こされる疾患を治療するために用いられる細胞をトランスフェクトするために該細胞に投与される組み合わせ物を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、(5Z)-7-オキソゼアエノール及びRNAウイルスベクターからなり、代謝障害を治療するために用いられる細胞をトランスフェクトするために該細胞に投与される組み合わせ物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、トランスフェクションを改善し、それによりNK、幹細胞及びマクロファージの増殖を強化するためにRNAウイルスベクターを用いてインビトロで(5Z)-7-オキソゼアエノール(iX)を細胞に投与することを含む。いかなる理論によっても制限されることを望まないが、観察された遺伝子改変の増加は、RIG-Iによって媒介される細胞内防御メカニズムのダウンレギュレーションによるものと考えられる。このように処理された細胞は、癌、既知の遺伝子突然変異によって引き起こされる疾患、及び既知の遺伝子突然変異によって引き起こされる代謝障害を使用するのに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】iXによる先天性免疫シグナル伝達の阻害がNK細胞におけるレンチウイルス形質導入効率を高めることを示す2つの棒グラフを含む。健康なドナーPBMCから単離された初代ヒトNK細胞及びNK92細胞は、6μMBX795又はiXの存在下で6時間レンチウイルス形質導入を受けた。72時間後にGFP発現が獲得される。陽性細胞パーセンテージをグラフ上に示す。
【
図2A】iXがNK細胞に対して最小の毒性で用量依存効果を有することを示すチャートである。初代ヒトNK細胞及びK-92細胞は、様々な用量のBX795又はiXの存在下で6時間、LeGO-G2ウイルスで形質導入される。GFP発現は、形質導入の72時間後にフローサイトメトリーによって分析される。GFP陽性細胞パーセンテージをグラフ上に示す。三つの独立した実験からのデータで、それぞれ三組行われる。
【
図2B】アポトーシス細胞と死細胞をアネキシン-V
+/PF
-細胞で比較する2つの棒グラフを含む。
【
図3】レンチウイルス形質導入中のiX処理がRIG-I及びIRF-3を減少させることを示すゲルの写真を含む。
【
図4】iX処理が抗ウイルスサイトカインIFNγ及びTNF分泌を妨害することを示す2つの棒グラフを含む。
【
図5A】iX処理がBX795と比較してユニークなトランスクリプトームシグネチャーを有することを示すグラフである。
【
図5B】iX処理がBX795と比較してユニークなトランスクリプトームシグネチャーを有することを示すグラフである。
【
図6A】BXx795の影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6B】BXx795の影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6C】BXx795の影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6D】BXx795の影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6E】iXの影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6F】iXの影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6G】iXの影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図6H】iXの影響を受けたとされるシグナル伝達経路を示す。
【
図7】iXの投与が遺伝子編集を増加させることを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
細胞治療は、哺乳類の疾患治療のための実行可能な手段に急速になっている。残念なことに、多くの治療用途は、遺伝子が標的細胞に送達可能な低効率によって制限される。以下の方法と共にiXを使用すると、予期せぬ結果が得られる。これらの実験の前に、小分子がRIG-Iを標的とし、細胞内防御メカニズムをダウンレギュレートできることは知られていなかった。本発明を用いると、所望の遺伝子を標的細胞により容易に導入することができる。iXの類似体、誘導体又は模倣物も有効であろうと考えられる。
【実施例1】
【0017】
(材料及び方法)
(細胞株)
293FT細胞をInvitrogen(アメリカ合衆国ニューヨーク州グランドアイランド、Life Technologies)から購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)(GIBCO)、0.1mM非必須アミノ酸(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス、Sigma-Aldrich)、6mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)及び20mM HEPES(Sigma-Aldrich)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(GIBCO、アメリカ合衆国ニューヨーク州グランドアイランド、Life Technologies)で維持された。NK92細胞を、20%FBS及び1000U/ml rhIL-2(Proleukin、Chiron Corporation)が添加されたCellGro SCGM(Cellgenix)培地で維持された。
(レンチウイルスベクターの作製)
VSV-Gシュードタイプのレンチウイルスベクターを作製するために、14×106個の293FT細胞をポリ-D-リジンでコートされた150mmディッシュ(アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ、BD Biosciences)にプレーティングされた。翌日、細胞は、25μMクロロキン(Sigma-Aldrich)の存在下で、リン酸カルシウムトランスフェクションキット(Sigma-Aldrich)を用いて、30μgのLeGO-G2プラスミド(ドイツ、ハンブルグ、ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのボリス・フェッセ教授の好意)、15μgのpMDLg/pRRE(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ、Addgene)、10μgのpRSV-REV(Addgene)及び5μgのphCMV-VSV-G(Addgene)でトランスフェクトされた。トランスフェクションの10時間後、培地を交換し、その後、上清を含むウイルスを2~3日間24時間毎に収集し、その後の使用まで-80℃で保存した。各産物からの少量のアリコートが、293FT細胞を連続希釈した量のウイルス上清で形質導入することによってウイルス力価を決定するのに使用された。
(初代ナチュラルキラー細胞の単離及び培養)
バフィーコートは、フッディンゲのカロリンスカ大学病院の血液バンクを介して健康なドナーから得られた。実験プロトコルは、地元の研究倫理委員会によって承認された。
【0018】
末梢血単核細胞(PBMC)を、Lymphoprep(ノルウェー、オスロ、Nyegaard)を用いた勾配遠心分離によって単離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)(アメリカ合衆国ニューヨーク州グランドアイランド、GIBCO)で2回洗浄した。細胞数及び生存率は、ターク及びトリパンブルー色素排除によって評価した。NK細胞単離キット(ドイツ、ケルン、Miltenyi Biotec)及びAutoMACS装置(Miltenyi Biotec)を使用し、製造者の指示に従って、NK細胞を得た。単離後、NK細胞を、10%ヒトAB血清(スイス、バーゼル、Lonza)及び1000U/ml rhIL-2(Proleukin、Chiron Corporation)が添加されたCellGro SCGM(Cellgenix)において、1×10
6細胞/mlの濃度で培養した。形質導入(
図1)前のサイトカイン刺激の初期試験のために、IL-12(アメリカ合衆国ニュージャージー州ロッキーヒルPeprotech)、IL-15(Peprotech)及びIL-21(Peprotech)を、20ng/mlの濃度で使用した。残りの実験では、1000U/ml rhIL-2及び20ng/ml IL-21のみを使用した。
(ナチュラルキラー細胞のレンチウイルス形質導入)
各レンチウイルス形質導入のために、24ウェルプレート(BD Biosciences)にウェルあたり0.25×10
6個のNK細胞を播種し、最終容量を1ml以下で、8μg/mlの硫酸プロタミン(Sigma-Aldrich)又はポリブレン(Sigma-Aldrich)下で、適量のウイルス上清と混合した。サイトカインが添加され、プレートが室温で1時間1000Gで遠心分離した。遠心分離後、ウイルス上清を除去せずに、プレートを37℃、5%CO
2で4~6時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、室温で1時間1000Gで2回目の遠心分離を行い、その後、上清をウェルから除去し、ウェル毎に1mlの新鮮なNK細胞増殖培地(10%ヒトAB血清が添加されたCellGro SCGM)が添加された。細胞が毎日添加するサイトカインで(IL-2:1000U/ml及びIL-21:20ng/ml、
図1に示すように、サイトカインの組み合わせを使用した。残りの実験ではIL-2及びIL-21のみを使用した)、eGFP発現の獲得を行う前少なくとも3日間、この培地で維持された。表示された実験では、BX795(Invivogen)及び(5Z)-7-オキソゼアエノール(iX)(Tocris)の阻害剤が形質導入中に存在した。
(NK92細胞株のレンチウイルス形質導入)
細胞株の形質導入のために、ウェルあたり2×10
5個の細胞を24ウェルプレートに播種した。6μM BX795及び(5Z)-7-オキソゼアエノール(iX)を用いた処理を、形質導入プロセスと同時に開始した。適量のウイルス上清を硫酸プロタミン(NK92、細胞)と共にウェルに添加し、総量が500μlに調整された。プレートが1000Gで1時間遠心分離され、37℃、5%CO
2で4~6時間インキュベートされた後、上清を含むウイルスが除去され、新鮮な増殖培地が添加された。eGFP発現の獲得が行われる前の3日間、細胞が少なくとも増殖された。
(遺伝子編集)
遺伝子編集のための、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR:クリスパー)システムの最近の出現は、これらの限界を克服する可能性がある。クリスパー技術は、ヌクレアーゼを特定DNA配列に標的化するショートガイドRNA(gRNA)と組み合わされて、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来の固定されたヌクレアーゼ、しばしばクリスパー関連タンパク質9(Cas9)を利用する。我々は、iX阻害剤の導入により、gRNA認識及び編集有効性が増加し得ることを確認した。ヒト初代マクロファージ、CD34陽性HSC及びNK92細胞株は、グループの半分に、我々が製造者のトランスフェクション試薬にluM iXを添加したことを除いて、製造者の指示に従って、それぞれAmaxaキット及びNucleofector II装置(CD34陽性HSC用のVAPA-1003、マクロファージ細胞用のVAPA-1008、及びNK92細胞用のVVPA-1005)を用いた細胞特異プログラム用いて、プラスミドをコードするCas9-2A-及びgRNAでトランスフェクトされた。
【0019】
Origene Technologiesから以下の市販ガイドRNAがベータ2ミクログロブリンに対して試験された。GATGTCTCGCTCCGTGGCCT (配列番号1)、CTCGCGCTACTCTCTCTTTC(配列番号2)、GACTCACGCTGGATAGCCTC(配列番号3)、CAGAAAGAGAGAGTAGCGC (配列番号4)、CACAGCTAAGGCCACGGAGC(配列番号5)、GGCCGAGATGTCTCGCTCCG(配列番号6)、TTGCGGGAGCGCATGCCTTT (配列番号7)、CCACCTCTTGATGGGGCTAG(配列番号8)、ATACCTTGGGTTGATCCACT(配列番号9)、CGTGAGTAAACCTGAATCTT (配列番号10)、AAGTCAACTTCAATGTCGGA(配列番号11)、CATAGATCGAGACATGTAAG(配列番号12)、GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号13)、ACCCAAACCAAGCCTTTCTA(配列番号14)、及びTATAAGTGGAGGCGTCGCGC (配列番号15)。トランスフェクション後48時間、抗B2M抗体(クローン:2M2、Biolegend)で細胞が染色され、β2m発現の消失を比較した。次に、後述するように、フローサイトメトリーを用いて細胞を分析した。
(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーのための全ての抗体染色は、以下のプロトコルに従って行った。即ち、表面染色のために、細胞をPBSで1回洗浄し、4℃で30分間適量の抗体でインキュベートした。次いで、ラベルされた細胞をPBSで洗浄し、データ取得前に1%PFAに固定した。データ収集は、FACSCalibur(BD Biosciences)、CyFlow ML(ドイツ、マンスター、Partec GmbH)及びLSRII-Fortessa(BD Biosciences)で標準フィルターを用いて行った。FlowJoソフトウェア(TreeStar Inc.)を用いてデータを解析した。NK細胞に使用される抗体は、BD Biosciences由来のCD56(NCAM16.2)、CD56(B159)、CD3(SK7)、CD3(SP34-2)であった。
(結果と考察)
(細胞内先天性免疫センサー経路の阻害は、NK細胞におけるレンチウイルス遺伝子送達効率を高める。)
我々は、ウイルスベクター成分の先天性免疫センサー媒介検出が、NK細胞における抗ウイルス応答を活性化し、レンチウイルス形質導入の効率に悪影響を及ぼすことを示した。我々は、成功裏にレンチウイルス形質導入中の先天性免疫シグナル伝達の小分子阻害剤を、抗ウイルス応答を不活性化又は減少させるために使用した。
【0020】
以前に報告したように(非特許文献6)、BX795の使用は、NK細胞の形質導入効率を劇的に増加させる。BX795は、RIG-I、MDA-5及びTLR3のシグナル伝達経路において共通のメディエーターとして作用するΤBΚI/IKΚε複合体の阻害剤である(非特許文献3)。このため、レンチウイルスRNAがこれらの受容体の一以上によって認識され、抗ウイルス応答が誘発され、BX795の使用によって阻害され得ることを述べることが可能であろう。
【0021】
ここで我々は、TAK1阻害剤iXの使用が、BX795と比較した範囲までNK細胞へのレンチウイルス遺伝子送達を強化することを示す。レンチウイルス形質導入中に6μM濃度で使用されると、iXは、初代ヒトNK細胞及びヒトNK細胞株NK-92の両方への遺伝子送達において統計的に有意な改善を与える(
図1)。
【0022】
つまり、これらの結果は、形質導入中、細胞内抗ウイルス防御メカニズムが活性化され、レンチウイルス遺伝子改変に対するNK細胞の耐性に有意に寄与するという仮説を支持する。小分子阻害剤を用いたこの応答阻害は、遺伝子送達効率を有意に高める。
【0023】
我々は、iXが、造血幹細胞、マクロファージ及びNK細胞における遺伝子編集有効性を増加させることを示した。短期間で1μMレベルでiXを試験することは、3つの細胞種類の全てにおいてβ
2M編集を有意に増加させた。結果を
図7(n=4)にまとめる。
(iXは、NK細胞に対して最小の毒性で用量依存効果を示す。)
異なる濃度のiXを試験することにより、以前にBX795について示されたように、阻害剤がNK細胞において増加する遺伝子改変効率に対する用量依存効果を有することが示された(
図2A)。iXに対して、既に0.5μMの濃度で有意な効果が見られるが、この効果は更に1.5μMまで増加し、その後安定するように見える。BX795と比較して、iXはより低用量でより良く機能し、レンチウイルス遺伝子送達効率をかなり高い程度まで高める。
【0024】
注目すべきことに、最適濃度でiXを使用すると、BX795処理後のアネキシン-V/PI染色によって決定されるように、NK細胞に直接的な毒性効果を示さない(
図2b)。1.5μMの最適用量では、DMSO制御と比較すると、iXはNK細胞にあまり毒性を示さない。1.5μMでは、BX795も同様に毒性を示さないが、6μMの最適用量では、培養物中のアポトーシス細胞及び死細胞で、非常に小さいが統計的に有意な増加が観察される。逆に、6μMの濃度でも、iXに対してNK細胞への即時毒性の徴候は観察されなかった。
【0025】
つまり、これらの結果は、iXがレンチウイルス遺伝子送達効率を高める際にBX795よりも効率的であるだけでなく、細胞に対して有意に毒性が低いことを示している。
(レンチウイルス遺伝子伝達中のiX処理は、RIG-1及びIRF3をダウンレギュレートする。)
レンチウイルス形質導入中の先天性免疫シグナル伝達に対する阻害剤の効果をより良く特徴付けるために、我々は、ウイルスRNAセンサー分子RIG-I及びRIG-Iのダウンストリームで作用する転写ファクターIRF3の発現を解析した。これらの遺伝子の変化発現は、6時間の形質導入期間後にタンパク質レベルで検出できなかったが、BX795及びiXの使用に起因するRIG-1及びIRF3発現の両方で有意な減少が24時間で観察された(
図3)。
【0026】
更に、我々は、BX795の使用と比較して、iXを使用した場合、RIG-I及びIRF3におけるダウンレギュレーションの程度が有意に大きかったことを観察した。これは、レンチウイルスの遺伝子送達を強化する上で、iXがBX795よりも優れた性能を示す根拠となり得る。
(レンチウイルス遺伝子送達中のiX処理は、IFNγ及びTNF応答を抑制する。)
iXによって誘発される優れたレンチウイルス遺伝子送達を支持するメカニズムを更に特徴付けるために、BX795及びiXの存在下で、レンチウイルス粒子に曝した際のサイトカイン媒介応答を試験した。レンチウイルス遺伝子送達中にiXで処理されたNK92細胞は、既に6時間で抗ウイルス性サイトカインIFNγの分泌を有意に減少させたが、BX795はレンチウイルス粒子に曝した24時間後に同様の効果を有意に誘発するだけであった。(
図4)。更に、他の抗ウイルスサイトカインTNFについても同一設定において同様の傾向が観察された。(
図4)。全体として、レンチウイルス遺伝子送達中にiXを使用することは、BX795よりも優れており、これは、RIG-I経路及びダウンストリームシグナル伝達分子IRF-3の不活性化のためであり、危険なシグナル、抗ウイルスサイトカインの分泌を低下させる。(
図4)。
(iX及びBX795は、差次的遺伝子発現プロファイルを有する。)
小分子阻害剤の非存在下及び存在下におけるレンチウイルス侵入によって誘発される経路を同定するために、RNAseqによる遺伝子発現プロファイリングが評価される。NK-92細胞は、前述のように形質導入される。6時間の形質導入プロトコルの終わりに、細胞由来のRNAがHiSeq2500装置で抽出、配列決定される。品質管理後、STARアライナーを用いて読み取りがヒトゲノムにマッピングされ、遺伝子存在量をHT-Seqで推定される。差次的発現は、DeSeqソフトウェアを用いて解析される。簡潔には、iX及びBX795の前処理は、異なるmRNAプロファイルをもたらした。(
図5)。更に、以前のインビトロ実験に沿って、レンチウイルス遺伝子送達中のiX処理は、TNF、IFN及びパターン認識経路(
図6E~H)等の抗ウイルス応答に関連する経路に影響を与えたが、BX795は同様の抗ウイルス応答をmRNAレベルで十分抑制できなかった(
図6A~D)。
【実施例2】
【0027】
(インビボ投与)
細胞内RNA認識経路に対するiXの固有の抑制効果及び制御不能なウイルス感染に対する感受性の増加のために推奨されていないが、iXは、0.2~6mMの血清濃度でインビボ遺伝子送達に使用できる。iXは、当該分野で既知の技術を使用して、注射、経口、経鼻又は粘膜送達によって投与可能である。iXの潜在的治療用途は、腫瘍再標的化遺伝子に加えて、癌、肝臓遺伝子治療、単一遺伝子障害、記憶障害が挙げられる。
【0028】
本発明で治療可能な癌は、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、及び芽細胞腫、即ち、急性リンパ芽球性白血病(全て)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、エイズ関連癌、肛門癌、星細胞腫、基底細胞癌、肝外胆管癌(胆管癌)、膀胱癌、骨腫瘍、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、脳癌、大脳星細胞腫/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、軟骨肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、皮膚t-細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外、性腺外又は卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹のグリオーマ、小児大脳星細胞腫神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄芽球性白血病(急性骨髄性白血病)、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、ヘアリーセル白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、マクログロブリン血症、ワルデンストローム、男性の乳癌、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫(骨髄癌)、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、乏突起膠腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体芽細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂尿管移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、メラノーマ及び非メラノーマ皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、t細胞リンパ腫(菌状息肉腫及びセザリー症候群)、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、栄養膜腫瘍、尿管及び腎盂移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路グリオーマ及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍(腎臓癌)を含む。
【0029】
本発明は、21-ヒドロキシラーゼ欠損症、軟骨無形成症、急性間欠性ポルフィリン症、アデニロコハク酸リアーゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、アラジール症候群、アレクサンダー病、アルストレーム症候群、遺伝性エナメル質形成不全症、ビオチニダーゼ欠損症、CGD慢性肉芽腫性疾患、ディジョージ症候群、ファンコニ貧血、G6PD欠損、リポ蛋白リパーゼ欠損症、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型、シデリアスX連鎖性精神遅滞症候群(PHF8遺伝子の変異によって引き起こされる)、X連鎖重症複合免疫不全(X-SCID)、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)等の遺伝性疾患の治療にも有効である。
【0030】
本発明で治療可能な代謝性疾患は、ニーマン・ピック病、テイ・サックス病、ゴーシェ病、ファブリー病を含む。
【実施例3】
【0031】
(養子細胞移動)
最も好ましい使用において、iXは、患者への養子細胞移動前に細胞を処理するために使用される。上記プロトコルを使用すると、エクスビボ操作中にいつでもiXを使用することができる。培養範囲におけるiXの好ましい濃度は、約0.4mM~約10mMである。最も好ましくは、0.5mM~6mMである。これらの細胞は、それにより、当技術分野で周知のプロトコルを使用して、後の注入時間点で直ちに注入又は凍結可能である。iX投与は、インビボ及びエクスビボの両方で、単回用量として又は用量ウィンドウを用いて繰り返しなされることができ、阻害剤の血清濃度は0.4乃至6μM、優先的により低い用量であってもよい。そのような養子細胞移入を用いて、上記の実施例2に記載の状態を治療することができる。
【実施例4】
【0032】
(ウイルス性炎症の治療)
本発明は、筋炎、心筋炎、ウイルス性関節炎、ウイルス性脳炎及び髄膜炎等のウイルス感染によって引き起こされる炎症を患っている患者を治療するために使用することもできる。このような疾患において、免疫系によるウイルスの認識を低減又は停止し、それによって炎症を軽減、予防又は排除するために、iXを抗ウイルス療法と同時投与することができる。これは、免疫応答に依存しない又は完全に利用しない抗ウイルス療法と共に使用可能である。そのような抗ウイルス剤は、アマンダチン及びリマンチジン等のアダマンタン抗ウイルス剤、リトナビル及びコビシスタット等の抗ウイルスブースター、マラビロク等のケモカイン受容体アンタゴニスト、マラビロク、ドルテグラビル及びエルビテグラビル等のインテグラーゼ鎖転移阻害剤、ソホスブビル、エンフビルチド、ホスカルネット、ホミビルセン等のその他の抗ウイルス剤、ペルミビル、オセルタミビル及びザナミビル等のノイラミニダーゼ阻害剤、ネビラピン、デラビルジン、エトラビリン及びリルピビリン等の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、ダクラタビル等のNS5a阻害剤、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン及びエンテカビル等のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(RTIS)、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホサンプレナビル、チプラナビル及びダルナビル等のプロテアーゼ阻害剤、リバビリンバラシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル及びシドフォビル等のプリンヌクレオシドを含む。これらの薬物の単独又は組み合わせの用量指示は、当該技術分野において周知である。
【実施例5】
【0033】
(RNAウイルス療法のインビボ効力の増加)
本発明は、インビボ投与されると、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、セネカウイルス、ECHOウイルス、例えば、膀胱癌、脳腫瘍、婦人科腫瘍、肝細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、前立腺癌、軟部組織肉腫及び固形腫瘍のような適応症のためのRIGVIR等のRNAウイルスベースの腫瘍溶解性ウイルス療法のインビボ有効性を増加させるのにも有用である。iXは、細胞内抗ウイルス防御メカニズムを阻害し、腫瘍内の腫瘍溶解性ウイルスの分布有効性を高めるのに役立つであろう。iXのインビボ投与のための標的血清レベルは、0.2乃至6mMである。
【0034】
このように、本発明の好ましい実施形態であると現在考えられていることが記載されているが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、他のそして更なる実施形態が可能であり、本明細書に記載された特許請求の範囲の真の範囲内にあるそのような更なる改変及び変更の全てを含む。
【配列表】