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特許7034072薬物応答のバイオマーカーとしてのEB1の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】薬物応答のバイオマーカーとしてのEB1の使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220304BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20220304BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220304BHJP
   C07K 14/46 20060101ALN20220304BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220304BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALN20220304BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALN20220304BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20220304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220304BHJP
   A61K 47/54 20170101ALN20220304BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/574 A ZNA
C12Q1/02
C12Q1/04
C12Q1/68 100Z
C12Q1/6886 Z
C07K16/18
C07K14/46
C12N15/12
A61K31/4245
A61K31/4439
A61P25/00
A61P35/00
A61K47/54
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2018520180
(86)(22)【出願日】2016-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2016075542
(87)【国際公開番号】W WO2017068182
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】15191127.8
(32)【優先日】2015-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517279920
【氏名又は名称】バジリア・ファルマスーチカ・インターナショナル・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】BASILEA PHARMACEUTICA INTERNATIONAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブラゲール,ディアヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】オノレ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ラーネ,ハイディ
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,フェリクス
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512001(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147915(WO,A1)
【文献】RAPHAEL BERGES、外8名,End-binding 1 protein overexpression correlates with glioblastoma progression and sensitizes to Vinca-alkaloids in vitro and in vivo,Oncotarget,2014年11月28日,Vol.5, No.24,Page.12769-12787
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00- 1/44
C12Q 1/04
C12Q 1/68
C12Q 1/6886
C07K 16/18
C07K 14/46
C12N 15/12
A61K 31/4245
A61K 31/4439
A61P 25/00
A61P 35/00
A61K 47/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

(式中、
Rは、フェニルまたはピリジニルを表し;
フェニルは、非置換であるか、または、低級アルキル、低級アルコキシ、アミノ、アセチルアミノ、ハロゲンおよびニトロから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されており;かつ
ピリジニルは、非置換であるか、あるいは、アミノまたはハロゲンによって置換されており
は、水素またはシアノ低級アルキルを表し、
低級という接頭語が、最大で4個までの炭素原子を有する基を意味する)
または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の応答を予測するための、バイオマーカーとしてのEB1の使用。
【請求項2】
標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のEB1レベルが高いことによって、前記式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する前記脳腫瘍の感受性が予測される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中の癌幹細胞(CSC)におけるEB1レベルが高いことによって、前記式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する前記脳腫瘍の感受性が予測される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記応答が、前記式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、前記脳腫瘍の癌幹細胞(CSC)の応答である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記脳腫瘍が、多形性膠芽腫である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記癌幹細胞(CSC)が、ALDH1、CD24、CD44、CD90、CD133、Hedgehog-Gli活性、α6-インテグリン、ABCB5、β-カテニン活性、CD26、CD29、CD166、LGR5、CD15、ネスチン、CD13、ABCG2、CD117、CD20、CD271、c-Met、CXCR4、Nodal-アクチビン、α2β1-インテグリンおよびTrop2からなる群から選択される少なくとも1種類の癌幹細胞マーカーを発現する、請求項3もしくは請求項4に記載のまたは請求項5が請求項3もしくは請求項4を引用する場合の請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記癌幹細胞(CSC)が、CD15、CD90、CD133、α6-インテグリン、ネスチン、およびA2B5からなる群から選択される少なくとも1種類の癌幹細胞マーカーを発現する、請求項3もしくは請求項4に記載のまたは請求項5が請求項3もしくは請求項4を引用する場合の請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記癌幹細胞(CSC)が、癌幹細胞マーカーCD133および/またはA2B5を発現する、請求項3もしくは請求項4に記載のまたは請求項5が請求項3もしくは請求項4を引用する場合の請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記バイオマーカーEB1が、被験体から採取された1つまたは複数の試料において生体外(ex vivo)で測定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記被験体がヒトである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記試料が、正常な組織、腫瘍組織、細胞系、血液、脳脊髄液、循環腫瘍細胞または癌幹細胞(CSC)に由来する、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記試料が、腫瘍組織に由来する、請求項9または10に記載の使用。
【請求項13】
前記試料が、体液に由来する、請求項9または10に記載の使用。
【請求項14】
前記試料が、血液に由来する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記試料が、血清に由来する、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記癌幹細胞(CSC)が前記試料中で同定され、かつ前記EB1レベルが、前記癌幹細胞(CSC)において測定される、請求項9~15が直接的または間接的に(i)請求項2または請求項3を引用しかつ(ii)請求項3または請求項4または請求項11を引用する場合の請求項9~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
i)同じ腫瘍組織型を有する被験体からの標準値または標準値のセットに対する;または
ii)治療開始後に採取され、かつ治療開始前に同じ被験体から採取された試料と比較される;または
iii)正常細胞、組織または体液からの標準値または標準値のセットに対する;
前記試料中のEB1レベルが高いことによって、前記脳腫瘍の感受性が予測される、請求項9~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記感受性が、式Iの前記化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、前記脳腫瘍の癌幹細胞(CSC)の感受性である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
より高いEB1レベルの決定が、EB1タンパク質レベルまたはEB1核酸レベルを測定することによって行われる、請求項9~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記脳腫瘍が、グリアおよび非グリア腫瘍、星状細胞腫、乏突起細胞腫、上衣細胞腫、髄膜腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、原発性中枢神経系リンパ腫、胚細胞腫瘍、下垂体腫瘍、松果体部腫瘍、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、髄芽腫、血管外皮細胞腫、髄膜腫、脊索腫を含む脊髄腫瘍、および神経線維腫症、末梢神経鞘腫瘍および結節性硬化症を含む遺伝子に駆動される脳腫瘍からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記脳腫瘍が、多形性膠芽腫である、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
式Iの前記化合物、または薬剤として許容されるその誘導体における、RおよびRが以下:
【表1】

の通りに定義される、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
式Iの前記化合物が、BAL27862
【化2】

または薬剤として許容されるその誘導体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記薬剤として許容される誘導体が、式Iの化合物の塩、溶媒和化合物、プロドラッグ、プロドラッグの塩からなる群から選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤として許容される誘導体がプロドラッグであり、かつ前記プロドラッグが、式Iの前記化合物のR基内に存在するアミノ基およびグリシン、アラニンまたはリジンのカルボキシ基から形成されるアミドである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
式Iの前記化合物が、BAL101553
【化3】

または薬剤として許容されるその塩である、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記薬剤として許容される塩が、その塩酸塩である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記薬剤として許容される塩が、その二塩酸塩である、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の使用と組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項1および22~28のいずれか一項で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を含む医薬組成物。
【請求項30】
請求項1および22~28のいずれか一項で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の応答を予測するためのキットであって、試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤を備える、キット。
【請求項31】
前記試料中のEB1の前記レベルに対して比較される標準値または標準値のセットを含むコンパレーターモジュールをさらに備える、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記脳腫瘍が、多形性膠芽腫である、請求項30または31に記載のキット。
【請求項33】
前記試剤が、EB1の検出体を含む捕捉剤と、検出剤と、を含む、請求項30~32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
前記捕捉剤が、抗体である、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤と、癌幹細胞(CSC)を同定かつ/または捕捉するのに必要な試剤と、を含む、請求項30~34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
BAL101553
【化4】

または薬剤として許容されるその塩を備える、請求項30~35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
BAL101553の二塩酸塩を備える、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
請求項1および22~28のいずれか一項で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を投与することによる、被験体における脳腫瘍の治療に対する応答を予測する方法であって:
a)前記被験体から採取された試料中のEB1のレベルを測定して、このレベルを表す1つもしくは複数の値を得る工程;および
b)工程a)から得られた前記レベルの前記1つもしくは複数の値を標準値または標準値のセットと比較し、その比較から、式Iの前記化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する応答性が予測される、工程;
を含む、方法。
【請求項39】
標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のEB1のレベルが高いことによって、前記式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する前記脳腫瘍の感受性が予測される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記脳腫瘍が、多形性膠芽腫である、請求項38または39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-(4-{1-[2-(4-アミノ-フェニル)-2-オキソ-エチル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル}-フラザン-3-イルアミノ)-プロピオニトリル(BAL27862)およびその誘導体など、以下に記載の式Iの化合物に対する癌、特に脳腫瘍の応答を予測するためのバイオマーカーとしてのEB1の使用に関する。他の態様において、本発明は、方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
微小管は、細胞骨格の構成要素の一つであり、αおよびβチューブリンのヘテロ二量体で構成される。微小管標的化剤(MTA)は中でも、広域の活性を有する最も有効な細胞毒性化学療法薬である。それらは、例えば、血液悪性疾患および固形腫瘍、例えば肺癌、乳癌および前立腺癌などの治療に使用される。しかしながら、血液脳関門が臨床的に関連するMTAの大部分を、腫瘍が位置する脳へと通過させないため、膠芽腫治療に対する使用は制限されている。
【0003】
かかる薬剤に暴露した後に、MTAに対する耐性は、本来備わっているか、または獲得され得る。したがって、かかる耐性は、患者の生存率、ならびに治療様式の選択に影響を及ぼす。耐性のいくつかの潜在的なメカニズムが同定されている。これは、微小管標的自体の欠損、またはその生物学的性質を変化させる、従ってMTAに対する奏効性を変化させる、公知の微小管付属タンパク質の欠損を含み得る。さらに、他の細胞タンパク質の欠損は、腫瘍細胞から薬物を能動的に押し出す排出トランスポーター(efflux transporter)の過剰発現など、特定の微小管標的化剤に対する耐性と関連することが示唆されている。標準腫瘍学治療では、効果は不完全かつ一時的であることが多く、バルキー(bulky)腫瘍が縮小されるだけであり、残りの腫瘍は、主に癌幹細胞(CSC)の小分集団に存在する複数の耐性メカニズムのために、再発する傾向がある。CSCは、長寿命であり、広範囲の自己再生、および腫瘍形成および転移再増殖の能力を有する。
【0004】
膠芽腫(GBM)は、成人における神経膠腫の中で最も一般的かつ最も進行性の脳腫瘍である。進行にかかわらず、特に再発セッティングでは有効な治療法は限られている。GBM腫瘍は、脳全体で急速に増殖し、かつ非常に浸潤性の挙動のために、死に至らせる。自己再生能力および化学療法および放射線治療に対する耐性があるために、腫瘍を維持し、かつ増殖させることができるCSCから、悪性細胞の大部分が発生するという抵抗し難い証拠がある(Reya T.,Stem cells,cancer,and cancer stem cells,Nature.2001;414:105-111;Pardal R.,Applying the principles of stem-cell biology to cancer,Nat.Rev.Cancer.2002;3:895-902)。
【0005】
脳腫瘍におけるCSCの同定は、悪性神経またはグリア由来腫瘍細胞の発生を調査し、かつこれらの細胞を標的化する治療法を開発する、強力なツールを提供する。腫瘍の進行、維持および再発を担うCSCの認識されている顕著な特徴は、その移行能力である(Ortensi B.,Cancer stem cell contribution to glioblastoma invasiveness,Stem Cell Research & Therapy.2013;4(1):18)。これは、その浸潤性および転移性挙動の本質的な性質であり、臨床的には、完全な腫瘍の切除はほぼ不可能である。最近の実験データから、GBM CSCは、GBM浸潤性の原因であることがはっきりと示されている(Ortensi B.,Cancer stem cell contribution to glioblastoma invasiveness,Stem Cell Research & Therapy.2013;4(1):18)。ヒト原発性GBM、GBM異種移植片またはGBM細胞系のいずれかに由来する幹細胞マーカーCD133に対して強化されたGBM細胞は、対応CD133ネガティブGBM腫瘍細胞と比較して、生体外(in vitro)および生体内(in vivo)で高い移行性および浸潤性の可能性を示す(Yu S.,Enhanced invasion in vitro and the distribution patterns in vivo of CD133+ glioma stem cells.Chin Med J.2011;124:2599-2604;Annabi B.,Modulation of invasive properties of CD133+ glioblastoma stem cells:a role for MT1-MMP in bioactive lysophospholipid signaling.Mol Carcinog.2009;48:910-919)。さらに、前浸潤性遺伝子がCSCにおいてアップレギュレートされ、したがって、移動および浸潤のプロセスに関与するタンパク質が過剰発現されることが実証されている(例えば、ディスインテグリン、メタロプロテイナーゼ)(Ortensi B.,Cancer stem cell contribution to glioblastoma invasiveness.Stem Cell Research & Therapy.2013;4(1):18)。
【0006】
微小管末端結合タンパク質1(EB1)は最初に、APC(腺腫性結腸ポリポーシス)腫瘍サプレッサーの結合パートナーとして発見された。EB1はMAPRE1遺伝子によってコードされ、微小管動態、細胞極性および有糸分裂中の染色体安定性の調節に関与するRP/EBファミリーのメンバーである(Dong X.,Oncogenic function of microtubule end-binding protein 1 in breast cancer.J Pathol.2010;220(3):361-9;Wang Y.,Overexpression of EB1 in human esophageal squamous cell carcinoma:promoting cellular growth probably by activating beta-catenin/TCF pathway.Cancer Res.2005;65:1304-1310)。EB1/MAPRE1は、Human Gene Nomenclature Committee(HGNC)識別番号HGNC ID:6890およびEntrez Gene ID22919に割り当てられている。ヒトEB1タンパク質および核酸に相当する配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)を介して参照番号NM_012325(図10,配列番号1&2,NM_012325)で入手可能である。APCの重要な結合パートナーであるにもかかわらず、腫瘍形成におけるEB1の一般的な役割は十分に確立されていない。しかしながら、最近のレポートから、EB1自体が発癌機能を有することが示唆されている。発現の研究によって、乳癌(Dong X.,Oncogenic function of microtubule end-binding protein 1 in breast cancer,J Path.2010;220(3):361-9)、胃癌、肝細胞癌、食道扁平上皮癌(Wang Y.,Overexpression of EB1 in human esophageal squamous cell carcinoma:promoting cellular growth probably by activating beta-catenin/TCF pathway,Cancer Res.2005;65:1304-1310)においてEB1が過剰発現されており、その発現レベルは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の低下など、悪い結果と相関することが実証されている。原発性GBM患者109名のコホートにおけるごく最近に実施された研究でも、このことが実証されている(Berges R.,End-binding 1 protein overexpression correlates with glioblastoma progression and sensitizes to Vinca-alkaloids in vitro and in vivo.Oncotarget.2014;Vol.5(24):12769-87)。高いEB1発現は、調査されたGBM患者における低いOS(p<0.001)および低いPFS(p<0.001)と相関した。
【0007】
BAL27862が、腫瘍性疾患および自己免疫疾患の治療に関して、国際公開第2004103994号パンフレットに記載されている。そのプロドラッグ(例えば、BAL101553)は、国際公開第2011012577号パンフレットに記載されている。
【0008】
驚くべきことに、EB1の存在が、BAL101553治療に対するGBM CSCの感受性の増加と関連することが判明した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、式I
【化1】

(式中、Rは、フェニルまたはピリジニルを表し;
フェニルは、低級アルキル、低級アルコキシ、アミノ、アセチルアミノ、ハロゲンおよびニトロから独立して選択される1個または2個の置換基によって任意選択的に置換されており;かつ
ピリジニルは、アミノまたはハロゲンによって任意選択的に置換されており;
は、水素またはシアノ-低級アルキルを表し、かつ
低級という接頭語は、最大で4個までの炭素原子を有する基を意味する)
の化合物、または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の応答を予想するための、バイオマーカーとしてのEB1の使用を提供する。
【0010】
式Iの化合物は微小管の不安定化剤(destabiliser)であるが、それらは、他の微小管標的化剤、例えば他の微小管不安定化剤と比べて、細胞の表現型に対して異なる作用を有する。さらに、それらは、従来の微小管標的化剤と異なる様式で微小管生物学に影響を及ぼし、その結果、従来の微小管標的化剤に対して耐性である腫瘍モデルにおいて強力な活性を有する。国際公開第2012098208号パンフレット、国際公開第2012098207号パンフレット、国際公開第2012098203号パンフレット、国際公開第2012113802号パンフレットおよび国際公開第2012130887号パンフレットの実施例を参照のこと。したがって、特定の遺伝子の発現が式Iの化合物の作用に関与するのかどうか、またはどのように関与するのかに関して、従来の微小管標的化剤についての情報から予想することはできない。
【0011】
好ましくは、その応答は、治療に対する、つまり式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を使用した治療に対する応答である。
【0012】
好ましくは、その応答は、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍のCSCの応答である。
【0013】
一実施形態において、標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のEB1レベルが高いことによって、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の感受性、特に脳腫瘍におけるCSCの感受性が予測される。
【0014】
更なる実施形態において、標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のCSCにおけるEB1レベルが高いことによって、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の感受性、特に脳腫瘍におけるCSCの感受性が予測される。
【0015】
更なる実施形態において、標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のEB1レベルが低いことによって、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の耐性、特に脳腫瘍におけるCSCの耐性が予測される。
【0016】
更なる実施形態において、標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のCSCにおけるEB1レベルが低いことによって、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の耐性、特に脳腫瘍におけるCSCの耐性が予測される。
【0017】
EB1は、被験体から採取された試料において生体外(ex vivo)で測定される。
【0018】
好ましくは、脳腫瘍は膠芽腫多形である。
【0019】
好ましくは、式Iの化合物は、BAL27862またはそのプロドラッグBAL10153である。
【0020】
更なる実施形態において、本発明は、BAL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の応答を予測するためのバイオマーカーとしてのEB1の使用を提供し、
バイオマーカーEB1は、被験体から採取された試料中で生体外にて測定され;
標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のEB1レベルが高いことによって、BAL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の感受性が予測される。
【0021】
更なる実施形態において、本発明は、AL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の応答を予測するためのバイオマーカーとしてのEB1の使用を提供し、
バイオマーカーEB1は、被験体から採取された試料中で生体外にて測定され;
EB1のレベルが、その試料中のCSCにおいて、好ましくはCD133および/またはA2B5を発現するCSCにおいて測定され;
標準値または標準値のセットに対して、被験体から採取された試料中のCSCにおけるEB1レベルが高いことによって、BAL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の感受性が予測される。
【0022】
本発明の更なる態様において、本発明は、式Iの化合物の投与によって、被験体における脳腫瘍の治療に対する応答を予測する方法であって:
a)被験体から採取された試料中のEB1のレベルを測定して、このレベルを表す値を得る工程;
b)工程a)からのレベルの値を標準値または標準値のセットと比較し、その比較から式Iの化合物に対する奏効性を予測する、工程;
を含む方法を提供する。
【0023】
上記の実施形態は、本発明のこの態様にあてはまる。特に、一実施形態において、本発明は、BAL27862またはBAL10153の投与によって、ヒト被験体における膠芽腫多形の治療に対する応答を予測する方法であって:
a)ヒト被験体から採取された試料中のEB1のレベルを生体外で測定して、このレベルを表す値が得られる工程;
b)工程a)からのレベルの値を標準値または標準値のセットと比較し、その比較からBAL27862またはBAL10153に対する奏効性を予測する工程であって、
標準値または標準値のセットに対して、ヒト被験体から採取された試料中のEB1レベルが高いことによって、BAL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の感受性が予測される、工程;
を含む方法を提供する。
【0024】
更なる実施形態において、本発明は、BAL27862またはBAL10153の投与によって、ヒト被験体における膠芽腫多形の治療に対する応答を予測する方法であって:
a)ヒト被験体から採取された試料中の、CSCにおける、好ましくはCD133および/またはA2B5を発現するCSCにおけるEB1のレベルを生体外で測定して、このレベルを表す値が得られる工程;
b)工程a)からのレベルの値を標準値または標準値のセットと比較し、その比較からBAL27862またはBAL10153に対する奏効性を予測する工程であって、
標準値または標準値のセットに対して、ヒト被験体からの試料中のCSCにおけるEB1レベルが高いことによって、BAL27862またはBAL10153に対する膠芽腫多形の感受性が予測される、工程;
を含む方法を提供する。
【0025】
更なる態様において、本発明は、被験体からの試料中のEB1のレベルを測定して、このレベルを表す値を得ることと、EB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、被験体を式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体で治療することと、を含む、脳腫瘍の治療において使用される、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を提供する。
【0026】
上記の実施形態は、本発明のこの態様にあてはまる。特に、一実施形態において、本発明は、ヒト被験体から採取された試料中のEB1レベルを生体外で測定して、このレベルを表す値を得ることと、EB1レベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療することと、を含む、膠芽腫多形の治療において使用される、BAL27862またはBAL10153を提供する。
【0027】
更なる実施形態において、ヒト被験体から採取された試料中のCSCにおける、好ましくはCD133および/またはA2B5を発現するCSCにおけるEB1のレベルを生体外で測定して、このレベルを表す値を得ることと、試料中のCSCにおけるEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療することと、を含む、膠芽腫多形の治療において使用される、BAL27862またはBAL10153を提供する。
【0028】
更なる態様において、本発明は、被験体からの試料中のEB1のレベルを測定して、このレベルを表す値を得ることと、EB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、被験体を式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体で治療することと、を含む、脳腫瘍の治療のための薬物の製造における式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体の使用を提供する。
【0029】
上記の実施形態は、本発明のこの態様にあてはまる。特に、一実施形態において、本発明は、ヒト被験体から採取された試料中のEB1のレベルを生体外で測定して、このレベルを表す値を得ることと、EB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療することと、を含む、膠芽腫多形の治療のための薬物の製造におけるBAL27862またはBAL10153の使用を提供する。
【0030】
更なる実施形態において、本発明は、ヒト被験体から採取された試料中のCSCにおける、好ましくはCD133および/またはA2B5を発現するCSCにおけるEB1のレベルを生体外で測定して、このレベルを表す値を得ることと、試料中のCSCにおけるEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療することと、を含む、膠芽腫多形の治療のための薬物の製造におけるBAL27862またはBAL10153の使用を提供する。
【0031】
更なる態様において、本発明は、その必要がある被験体において脳腫瘍を治療する方法であって、
a)前記被験体の体から生体材料の試料を採取する工程;
b)前記試料中のEB1のレベルを決定する工程;
c)前記試料中のEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、被験体を式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体で治療する工程;
を含む方法を提供する。
【0032】
上記の実施形態は、本発明のこの態様にあてはまる。特に、一実施形態において、本発明は、その必要があるヒト被験体において膠芽腫多形を治療する方法であって、
a)前記ヒト被験体の体から生体材料の試料を採取する工程;
b)前記試料中のEB1のレベルを決定する工程;
c)前記試料中のEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療する工程;
を含む方法を提供する。
【0033】
更なる実施形態において、本発明は、その必要があるヒト被験体において膠芽腫多形を治療する方法であって、
a)前記ヒト被験体の体から生体材料の試料を採取する工程;
b)前記試料中のCSCにおける、好ましくはCD133および/またはA2B5を発現するCSCにおけるEB1のレベルを決定する工程;
c)前記試料中のCSCにおけるEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高い場合に、ヒト被験体をBAL27862またはBAL10153で治療する工程;
を含む方法を提供する。
【0034】
更なる態様において、本発明は、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の応答を予測するキットであって、試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤を備え、好ましくは、試料中のEB1レベルがそれに対して比較される標準値または標準値のセットを含むコンパレーターモジュールをさらに備える、キットを提供する。好ましい実施形態において、そのキットはBAL27862および/またはBAL10153を備える。
【0035】
更なる態様において、本発明は、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する脳腫瘍の応答を予測するデバイスであって、試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤を備え、好ましくは、試料中のEB1のレベルがそれに対して比較される標準値または標準値のセットを含むコンパレーターモジュールをさらに備える、デバイスを提供する。好ましい実施形態において、そのデバイスはBAL27862および/またはBAL10153を備える。
【0036】
好ましい実施形態において、キットまたはデバイスにおける試剤は、EB1の検出体(ditector)を含む捕捉剤(capture reagent)と、検出剤(detector reagent)と、を含む。特に好ましくは、捕捉剤は抗体である。
【0037】
更なる好ましい実施形態において、キットまたはデバイスは、試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤と、CSCを同定し、かつ/または捕捉するのに必要な試剤と、を備える。
【0038】
また好ましくは、脳腫瘍は、EB1のレベルが標準値または標準値のセットに対して高い場合に前記化合物での治療に対して感受性があると予測される。好ましい実施形態において、コンパレーターモジュールは、キットまたはデバイスそれぞれの使用説明書を意味する。代替の実施形態において、コンパレーターモジュールはディスプレイ装置の形をとる。
【0039】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して一例として説明される。しかしながら、本発明は、これらの実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】GBM6およびGBM9 GBM CSCにおけるEB1発現レベルを示す。
図2】GBM6およびGBM9 CSCにおける生体外での細胞移動の抑制を示す。定量化は、GBM6およびGBM9それぞれに関して、対照細胞の100%に対する移動細胞のパーセンテージとして表される。少なくとも3つの独立した実験から、結果を示す。アスタリスクは、**:p<0.005,***:p<0.001と示されるように、群の間での統計学的に有意な差を示す。
図3】shRNAによって抑制されたEB1発現レベルを用いた、安定なGFP発現GBM6CSCの分析を示す。
図4】非細胞毒性濃度6nMでのBAL27862の抗移動(anti-migratory)作用に対するGBM6 CSCにおけるEB1ダウンレギュレーションの作用を示す。少なくとも3つの独立した実験から、結果を示す。アスタリスクは、対照に対する、または群の間での統計学的に有意な差:p<0.05を示す。
図5】EB1発現依存型手法においてGBM6CSCのクローン原性能力に対するBAL27862の作用を示す。コロニー形成のパーセンテージは、接種された細胞の本来の数で形成されたコロニー数を割り、それに100を掛けることによって計算された。少なくとも3つの独立した実験の平均値およびSEMが示される。アスタリスクは、:p<0.05,**:p<0.005と示される、対照に対する、または群の間での統計学的に有意な差を示す。
図6】EB1発現依存型手法においてGBM6 CSCの生体外での分化に対するBAL27862の作用を示す。A2B5ポジティブ細胞のパーセンテージは、対照群の細胞数に対して計算された。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均値およびSEMを表す。アスタリスクは、未処置対照に対する統計学的に有意な差を示し(p<0.005),ns:有意ではない。
図7】EB1発現依存型手法において生体外でのCSC分化に対するBAL27862の作用を示す。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均値およびSEMを表す。アスタリスクは、未処置対照に対する統計学的に有意な差を示し(p<0.005),ns:有意ではない。
図8】45日目の生体内での同所性GBM6腫瘍に対するBAL101553活性を示す。黒色の陰影は腫瘍位置およびサイズを示す。
図9】同所性GBM6における未分化CSCの割合に対するBAL101553処置の効果を示す。
図10A】ヒトEB1のアミノ酸配列(図10A)(GenBank AAC09471-配列番号:1)および核酸配列(図10B)(GenBank U24166-配列番号:2)を示す。
図10B】ヒトEB1のアミノ酸配列(図10A)(GenBank AAC09471-配列番号:1)および核酸配列(図10B)(GenBank U24166-配列番号:2)を示す。
図11】GBM10腫瘍由来の3つの腫瘍におけるEB1タンパク質の発現を示す。腫瘍抽出物の免疫ブロットは、ローディング対照としてのアクチン、およびEB1抗体の特異性を裏付ける、非標的化対照(NTC)siRNAまたはEB1 siRNAで処理された細胞に由来するHeLa抽出物と共に示される。
図12】GBM10腫瘍保持マウスの血清に由来する細胞外小胞(エキソソームを含む)におけるEB1の発現を示す。免疫ブロットは、EB1抗体の特異性を裏付ける、非標的化対照(NTC)siRNAまたはEB1 siRNAで処理された細胞に由来するHeLa抽出物を含む。CD9免疫ブロットは、細胞外小胞(EV)のマーカーとして作用し、健康なドナー(Hu)からのヒト血清に由来するエキソソームおよび非標的化対照(NTC)siRNAで処理された細胞に由来するHeLa抽出物が、CD9ポジティブコントロールおよびCD9ネガティブコントロールとしてそれぞれ含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
式Iの化合物
式Iの好ましい化合物としては、式中、R、YおよびRが以下:
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】

のとおりに定義される、化合物、または薬剤として許容されるその誘導体が挙げられる。
【0048】
特に好ましいのは、式中、R、YおよびRが以下:
【0049】
【表7】

のとおりに定義される、化合物、または薬剤として許容されるその誘導体である。
【0050】
特に好ましい化合物はBAL27862である:
【化2】
【0051】
式Iの化合物の「薬剤として許容される誘導体」というフレーズにおける誘導体という用語は、その塩、溶媒和化合物および錯体、およびその塩の溶媒和化合物および錯体、ならびにそのプロドラッグ、多形、および異性体(光学、幾何、および互変異性体など)およびそのプロドラッグの塩にも関する。さらに好ましい実施形態において、それは、塩およびプロドラッグ、ならびにそのプロドラッグの塩に関する。
【0052】
塩は好ましくは酸付加塩である。塩は、塩基性窒素原子を有する式(I)の化合物から、好ましくは有機酸または無機酸で形成され、特に薬剤として許容される塩である。適切な無機酸は、塩酸、硫酸、またはリン酸などのハロゲン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、リン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、メタン-またはエタン-スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-二スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレン-二スルホン酸、2-、3-または4-メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸、N-メチル-、N-エチル-またはn-プロピル-スルファミン酸、またはアスコルビン酸などの他の有機プロトン酸である。
【0053】
本発明による化合物は、プロドラッグの形態で投与することができ、それはヒトまたは動物の体内で分解され、式Iの化合物が形成される。プロドラッグの例としては、式Iの化合物の生体内加水分解性エステルおよびアミドが挙げられる。考えられる特定のプロドラッグは、天然アミノ酸のエステルおよびアミドおよび小ペプチドのエステルまたはアミド、特に5個まで、好ましくは2個または3個のアミノン酸からなる小ペプチド、ならびにペグ化ヒドロキシ酸、好ましくはヒドロキシ酢酸および乳酸のエステルおよびアミドである。プロドラッグエステルは、アミノ酸の酸官能基またはペプチドのC末端および式Iの化合物における適切なヒドロキシ基から形成される。プロドラッグアミドは、アミノ酸の酸官能基またはペプチドのN末端および式Iの化合物における適切なカルボキシ基から形成されるか、あるいはアミノ酸の酸官能基またはペプチドのC末端および式Iの化合物における適切なアミノ基から形成される。特に好ましくは、プロドラッグアミドは、式IのR基内に存在するアミノ基から形成される。
【0054】
さらに好ましくは、プロドラッグは、上記で定義される式Iの化合物のR基内に存在するアミノ基、およびグリシン、アラニンまたはリジンのカルボキシ基から形成されるアミドである。
【0055】
またさらに好ましくは、式Iの化合物は、次式:
【化3】

の化合物から選択されるプロドラッグの形をとる。
【0056】
特に好ましい実施形態において、本発明による式Iの化合物または薬剤として許容されるその塩、好ましくはその塩酸塩、最も好ましくはその二塩酸塩は、プロドラッグBAL101553:
【化4】

の形をとる。
【0057】
本発明のプロドラッグは、参照により本明細書に組み込まれる、例えば国際公開第2012/098207号パンフレットの37~39ページに記載のように製造することができる。
【0058】
疾患
脳新生物、例えば、脳腫瘍としては、限定されないが、グリアおよび非グリア腫瘍、星状細胞腫(膠芽腫多形および不特定の神経膠腫を含む)、乏突起細胞腫、上衣細胞腫、髄膜腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、原発性中枢神経系リンパ腫、胚細胞腫瘍、下垂体腫瘍、松果体部腫瘍、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、髄芽腫、血管外皮細胞腫、脊髄腫瘍、例えば髄膜腫、脊索腫および遺伝的に由来する脳腫瘍、例えば神経線維腫症、末梢神経鞘腫瘍および結節性脳硬化症が挙げられる。好ましくは、脳新生物は、膠芽腫(膠芽腫多形とも呼ばれる)を意味する。
【0059】
試料
EB1のレベルの測定は、被験体由来の生体組織の試料に関して生体外で行われる。その試料は、例えば、正常組織、腫瘍組織、細胞系、末梢血(循環腫瘍細胞またはCSCなど)、脳脊髄液(CSCなど)、リンパ液、細胞溶解物、組織ライセート、尿および吸引液などの体から分離されたいずれかの生体材料であることができる。好ましくは、試料は、正常組織、腫瘍組織、細胞系、末梢血(循環腫瘍細胞またはCSCなど)、脳脊髄液(CSCなど)に由来する。さらに好ましくは、試料は、末梢血または脳脊髄液由来の腫瘍細胞または癌幹細胞に由来する。またさらに好ましくは、試料は、末梢血由来の腫瘍組織またはCSCに由来する。特に好ましい一実施形態において、試料は、腫瘍組織に由来する。例えば、癌細胞および/またはCSCにおけるEB1のレベルは、新鮮な、凍結された、またはホルマリン固定/パラフィンパラフィン包埋された腫瘍組織試料において測定され得る。代替方法として、試料が体液、例えば血液(例えば、末梢血)、血清および血漿、尿、脳脊髄液または唾液に由来する場合、EB1のレベルは、試料中の細胞外小胞において測定され得る。
【0060】
バイオマーカーのレベルを測定することを含む方法工程に試料をかける前に、試料は被験体から予め採取される。被験体から試料を採取する方法は当技術分野でよく知られている。腫瘍から試料を取り出す方法は、例えば、パンチ生検、コア生検または細針吸引生検、内視鏡生検、または擦過生検による、例えば腫瘍切除または生検を含み得る。
【0061】
脳CSCは脳の様々な部位に頻繁に広がり、二次病変および転移が形成される。そのため、脳CSCは、その周囲に浸潤し、それによって血液脳関門を支える構造も破壊し得る。浸潤プロセスの結果として、血液循環システムへのアクセスを獲得し、したがって末梢血から同定/精製することができる(Watkins,S.Disruption of astrocytes-vascular coupling and the blood-brain barrier by invading glioma cells,Nature Communications 5.2014;Article number:4196;Diaz,M.,Transmigration of Neural Stem Cells across the blood-brain barrier induced by glioma cells.PLoS One.2013;8(4);Beauchesne P.,Extra-Neural Metastases of Malignant Gliomas:Myth or Reality.Cancers.2011;3:461-477)。血液試料は、静脈穿刺によって採取され、さらに標準技術に従って処理される。循環腫瘍細胞および/または循環CSCは、例えば、サイズ(例えば、ISET-Isolation by Size of Epithelial Tumor cells;by Cluster-chip based on the size of preformed cell clusters)または免疫磁気細胞濃縮(例えば、CellSearch(登録商標),Veridex,Raritan,NJ;MACS(登録商標),Miltenyi Biotec,Germany;RosetteSep(商標),EasySep(商標)およびRoboSep(商標),STEMCELL Technologies,France)または蛍光活性化細胞選別(FACS)(例えば、BD Stemflow Kit,BD-Biosciences,USA)または誘電性ベースとする細胞分離(ApoStream(登録商標),APOCELL,USA)に基づいて、血液または脳脊髄液からも得ることができる。
【0062】
脳腫瘍材料、例えばGBM材料は、外科手術または腫瘍生検を受ける患者から得られる。次いで、限定されないが、抗生物質10~15%(ペニシリン/ストレプトマイシン)が補充された神経幹細胞(NSC)基礎培地を含有する、氷上のチューブ内に腫瘍材料を入れる方法など、当技術分野で公知の方法によって、切除されたGBM腫瘍材料をさらに処理することができる。以下の手順は例として示される。GBM腫瘍試料を滅菌PBS/NSC基礎培地で2~3回洗浄し、血液および壊死組織片を除去する。滅菌ペトリ皿において、洗浄された腫瘍組織は、小片に切断され、メスで刻まれて、それをFalconチューブに移し、水浴中で37℃にて、予め温められた0.05%トリプシン-EDTA数mL中で10~15分間トリプシン処理する。インキュベーション期間後、等容積のダイズトリプシン阻害剤を添加して、トリプシン酵素反応を停止する。800rpmで5分間遠心分離(110g)することによって、腫瘍細胞浮遊液をペレット化する。上清を廃棄し、ペレットを滅菌NSC基礎培地1mLに再懸濁する。上下に穏やかにピペッティングすることによって、凝集塊を解離させ、細胞浮遊液を40μm細胞濾過器に通して、小さな壊死組織片を除去する(Azari,H.,Isolation and Expansion of Human Glioblastoma Multiforme Tumor Cells Using the Neurosphere Assay.J.Vis.Exp.2011;Oct 30(56):e3633)。
【0063】
代替のアプローチとして、限定されないが、Miltenyi Biotec Inc.,Auburn,CA95602,USA.から市販の「The Brain Tumor Dissociation Kits」などの市販のキットを使用して、腫瘍細胞浮遊液中への腫瘍組織の分離も行われ得る。
【0064】
GBMと関連する腫瘍などの脳腫瘍は、血液中に細胞外小胞を放出し、次いでそれは体中を循環し得ることが知られている(Arscott et al.,Ionizing Radiation and Glioblastoma Exosomes:Implications in Tumor Biology and Cell Migration,Translational Oncology,2006;6:638-648)。細胞外小胞としては、微小胞およびエキソソームが挙げられ、一般にナノメートルサイズの膜由来小胞である。細胞外小胞は、腫瘍生物学の顕著な特徴を含む起源の細胞を反映する、分子情報(タンパク質およびRNAなど)を含有し(Redzik et al.,Glioblastoma extracellular vesicles:reservoirs of potential biomarkers.Pharmgenomics Pers. Med.,2014;7:65-77;Capello et sl.,Exosome levels in human body fluids:A tumor marker by themselves? Eur.J.Pharm.Sci.,2016;96:93-98)、血液、例えば血清および血漿、尿、脳脊髄液および唾液などの体液においてアクセス可能である。これは、EB1がGBM腫瘍中に存在するかどうかを決定する代替方法を提供する。
【0065】
細胞外小胞は、a)分画遠心(Thery et al.,Isolation and characterization of exosomes from cell culture supernatants and biological fluids.Curr.Prot.Cell Biol.,2006;3.22.1-3.22.29);b)化学沈殿(例えば、Total Exosome Isolation Kits from Invitrogen,ThermoFischer,Waltham,MA USA;ExoQuickTM Exosome Precipitation Solution from SBI System Biosciences,Palo Alto,USA;Exo-Prep from HansaBioMed,Tallinn,Estonia);およびc)例えば、ELISAイムノプレート(例えば、HansaBioMedから市販されている)、イムノビーズ(例えば、HansaBioMed)およびJSR Life Sciences,Leuven,Belgiumから市販のExoCap(商標)を使用した、イムノアフィニティー捕捉(Zarovni et al.,Integrated isolation and quantitative analysis of exosome shuttled proteins and nucleic acids using immunocapture approaches.Methods,2015;87:46-58)を含む、様々なプロトコルおよび市販のキットを使用して単離することができる。以下に記述するように標準技術によって、細胞外小胞中のEB1核酸(好ましくは、RNA)および/またはタンパク質のレベルを測定することができる。
【0066】
癌幹細胞(CSC)
試料中のCSCは、例えば、免疫組織化学またはフローサイトメトリーを使用したCSCマーカーの同定に基づく方法、および分化癌細胞によって保有されないが、CSCに特有の特性に対する選択に基づく方法、例えば多能性を有し、かつ/または生体外培養条件下にて増殖することができる細胞に対する選択に基づく方法など、当技術分野で公知の方法によって同定することができる。
【0067】
CSCを同定するために使用され得るCSCマーカーは、ALDH1、CD24、CD44、CD90、CD133、Hedgehog-Gli活性、α6-インテグリン、ABCB5、β-カテニン活性、CD26、CD29、CD166、LGR5、CD15、ネスチン、CD13、ABCG2、CD117、CD20、CD271、c-Met、CXCR4、Nodal-アクチビン、α2β1-インテグリンおよびTrop2と同時にCD15、CD90、CD133、α6-インテグリン、ネスチンであり、A2B5は膠芽腫多形におけるCSCに対して特異的であり得る(Medema JP.,Cancer stem cells:The challenges ahead,Nature Cell Biology.2013;15:338-344)。本発明では、CD133および/またはA2B5が特に興味深い。(Tchoghandjian A et al.,A2B5 cells from human glioblastoma have cancer stem cell properties.Brain Pathol.2010;1:211-21)。
【0068】
以下の手順は、被験体から採取された試料中の脳CSCを同定する例として示される。
【0069】
予めポリ-DL-オルニチンでコートされた6-ウェルプレートに、幹細胞許容培地(5mg/mLインスリン、0.1mMプトレシン、100mg/mLトランスフェリン、2.10-8Mプロゲステロン(Sigma-Aldrich,Paris,France)、50mg/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen Life Technologies,Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA USA)および10ng/mL塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF,Sigma-Aldrich)、20ng/mL上皮成長因子(EGF,R&D systems,Minneapolis,MN,USA)およびB27(Invitrogen Life Technologies)などの成長因子)中の瘍細胞浮遊液を300’000細胞/ウェルでシーディングする。4日後、細胞をトリプシン処理し、HBSS緩衝剤含有ブロッキング溶液(Miltenyi Biotec,Paris,France)中に懸濁し、A2B5-APCおよびCD133-PE抗体(Miltenyi Biotec)と共に10分間インキュベートする。次いで、細胞を10%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、フローサイトメトリー(FACS Calibur(商標),BD Biosciences,San Jose,CA,USA)を使用して分析した。1試料につき合計100’000のイベントがCellQuest Pro Software(BD Biosciences)で獲得され、FlowJo(商標)softwareおよびDean-Jet-Foxモデル解析を用いて、データを分析した。代替方法としては、CSCは生体外で増殖し、スフィアを形成する能力を有することから、スフィア形成アッセイを用いて、CSCを同定することもできる、これに関して、CSC許容培地3.5mL中で密度30,000細胞/25cmフラスコにて細胞をプレーティングし、CO5%/O95%雰囲気中で維持する。倍率10倍および較正マイクロメーター標線を用いて、スフィアの数およびサイズを2回評価する。
【0070】
代替方法としては、DMEM-FCS 10%中に脳腫瘍細胞を再懸濁し、抗A2B5マウスIgM抗体(細胞上清1/2希釈,ATCC,Manassas,VA,USA)と共に4℃で30分間インキュベートし、続いて洗浄し、磁気マイクロビーズ標識化マウス特異的IgMラット抗体と共に4℃で30分間インキュベートすることによって、脳CSCを試料中で同定することができる。A2B5対照免疫染色によって評価される平均純度93%(85~98%の範囲)を有するMACSカラムを使用して、ポジティブ磁気細胞分離(MACS Miltenyi Biotec,Paris,France)を行うことができる。
【0071】
代替方法としては、脳CSCは、商業的に利用可能な供給元からのFACS(蛍光活性化細胞選別装置(fluorescence-activated cell sorter))(例えば、Bio-Rad[Hercules,CA,USA]Benchtop S3(商標)細胞選別装置;Beckman Coulter[Brea,CA,USA]MoFlo(商標)細胞選別装置;BD Biosciences FACSDiva(商標)細胞選別装置)を使用して、細胞上での、蛍光標識化抗体の、例えば抗A2B5および抗CD133抗体の、CSCマーカーへの結合に基づいて試料から分離することができる。
【0072】
試料の比較
本発明による対照は、治療が必要なヒトまたは動物であり得る。好ましくは、被験体はヒトである。
【0073】
バイオマーカーEB1は、試料またはヒトもしくは動物の体から、好ましくはヒトの体から採取された試料中で生体外にて測定される。バイオマーカーのレベルを測定することを含む方法工程に試料をかける前に、試料は、ヒトもしくは動物の体から予め採取され、好ましくはヒトの体から予め採取される。
【0074】
バイオマーカーは一般に、生物学的応答の指標として、好ましくは所定の治療に対する感受性の指標として使用される物質であり、その治療は、本発明の用途において、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体での治療である。
【0075】
CSCにおけるEB1レベルが高いほど、本発明の化合物に対する奏効性が予想され、または言い換えれば、CSCのレベルが低いほど、本発明の化合物に対する耐性が予想されることが本明細書において判明している。
【0076】
好ましい一実施形態において、標準値または標準値のセットに対する試料中のEB1のレベルが高いほど、奏効性が予想される。本明細書で使用される、標準レベルまたは標準レベルのセットに対する増加または比較的高い、または高い、またはより高いレベルとは、試料中のバイオマーカーの量または濃度が、標準レベルまたは標準レベルのセットに対して試料中で検出可能な程度に多いことを意味する。これは、標準に対して少なくとも約1%の増加、またはそれより高いレベル、好ましくは、標準に対して少なくとも約5%の増加を包含する。さらに好ましくは、それは、標準に対して少なくとも約10%の増加、またはそれより高いレベルである。さらに詳しくは好ましくは、それは、標準に対して少なくとも約20%の増加、またはそれより高いレベルである。例えば、かかる増加またはより高いレベルは、限定されないが、標準に対して少なくとも約1%、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、約80%、約90%または約100%または100%を超える増加を含む。
【0077】
好ましい一実施形態において、標準値または標準値のセットに対する試料中のEB1のレベルが低いほど、耐性が予想される。本明細書で使用される、標準レベルまたは標準レベルのセットに対する減少または比較的低い、または低い、またはより低いレベルとは、試料中のバイオマーカーの量または濃度が、標準レベルまたは標準レベルのセットに対して試料中で検出可能な程度に少ないことを意味する。これは、標準に対して少なくとも約1%の減少、またはそれより低いレベル、好ましくは、標準に対して少なくとも約5%の減少を包含する。さらに好ましくは、それは、標準に対して少なくとも約10%の減少、またはそれより低いレベルである。さらに詳しくは好ましくは、それは、標準に対して少なくとも約20%の減少、またはそれより低いレベルである。例えば、かかる減少またはより低いレベルは、限定されないが、標準に対しても約1%、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、約80%、約90%または約100%の減少を含む。したがって、減少とは、試料中の検出可能なEB1が存在しないことも含む。
【0078】
好ましくは、
i)同じ腫瘍組織型を有する被験体からの標準値または標準値のセットに対する;または
ii)治療開始後に採取され、治療開始前に、同じ被験体から採取された試料と比較される;または
iii)正常細胞、組織または体液からの標準値または標準値のセットに対する;
試料中のEB1のレベルが高いほど、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、脳腫瘍の感受性、好ましくは脳腫瘍のCSCの感受性が予想される。
【0079】
さらに好ましくは、
i)同じ腫瘍組織型を有する被験体からの標準値または標準値のセットに対する;または
ii)治療開始後に採取され、治療開始前に、同じ被験体から採取された試料と比較される;
試料中のEB1レベルが高いほど、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、脳腫瘍の感受性、好ましくは脳腫瘍のCSCの感受性が予想される。
【0080】
特に好ましくは、同じ腫瘍組織型を有する被験体からの標準値または標準値のセットに対する試料におけるEB1レベルが高いほど、感受性が予測される。
【0081】
好ましい一実施形態において、i)それが比較されるべき試料と同じ腫瘍組織型を有する被験体からの試料から得られる標準値または標準値のセットに対して、試料において測定が行われるケースでは、その標準値または標準値のセットは、その癌タイプを有する被験体の母集団から得られた試料から確立される。試料の起源が、標準と、比較される試料との間で一致している限り、これらの標準被験体から採取される試料は、例えば腫瘍組織、または循環腫瘍細胞、またはCSCに由来し得る。
【0082】
他の好ましい実施形態において、ii)測定が、治療開始後に採取された試料において比較され、治療開始前に同じ被験体から採取された試料と比較されるケースii)では、好ましくは、獲得された耐性を予測するために測定される。その試料は、同じ生物起源に由来する細胞または組織と比較される。次いで、獲得された耐性の予測から、その化合物での治療が中止されるべきであることが示される。したがって、バイオマーカーを使用して、その化合物での更なる治療によって、必要な応答(例えば、異常細胞の減少)が得られる可能性があるかどうか、あるいはかかる治療に対して細胞が非応答性または耐性となっているかどうかがモニターされる。
【0083】
さらに他の好ましい実施形態において、iii)正常細胞、組織または体液から得られた標準値または標準値のセットに対して、試料において測定が比較される場合では、標準値または標準値のセットは、正常な(例えば、非腫瘍)細胞、組織または体液の試料から確立され得る。かかるデータは、標準値または標準値のセットを発展させるために、被験体の集団から収集され得る。
【0084】
標準値または標準値のセットは、細胞系または動物腫瘍モデル、または好ましくは少なくとも1人のヒト被験体、さらに好ましくは被験体の平均(例えば、n=2~1000またはそれ以上)からの生体物質に由来し得る、予め入手された試料から生体外で確立される。
【0085】
次いで、標準値または標準値のセットを式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を用いた治療に対する、同じ細胞系または同じ被験体の応答データと相関させる。この相関性から、カットオフまたは閾値を任意選択的に含む、例えば相対的スケールまたはスコアリングシステムの形でコンパレーターモジュールを確立することができ、それによって、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する応答レベルの範囲と関連するバイオマーカーのレベルが示される。応答レベルの範囲は、その化合物の治療的活性に対する相対的感受性(例えば、高い感受性~低い感受性)、ならびに治療的活性に対する耐性を含み得る。好ましい実施形態において、このコンパレーターモジュールは、カットオフ値または治療に対する感受性を予測する値のセットを含む。
【0086】
例えば、免疫組織化学的方法を用いて、試料におけるEB1のレベルを測定する場合、標準値は、スコアリングシステムの形をとり得る。かかるシステムは、EB1に対する染色が存在する、細胞のパーセンテージを計算に入れ得る。そのシステムは、個々の細胞における染色の相対強度も計算に入れ得る。次いで、EB1のレベルの標準値または標準値のセットが、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、被験体または組織または細胞系の応答、特に感受性を示すデータと相関され得る。次いで、かかるデータは、コンパレーターモジュールの一部を形成し得る。
【0087】
応答は、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体の活性、好ましくは治療的活性に対する、細胞系の、または好ましくは被験体の反応、またはさらに好ましくは被験体における疾患の反応である。応答レベルの範囲は、その化合物の活性、好ましくは治療的活性に対する相対的感受性(例えば、高い感受性~低い感受性)、ならびに活性、好ましくは治療的活性に対する耐性を含み得る。その応答データは例えば、目標の応答率、疾患進行までの時間、無増悪生存期間、および全生存期間についてモニターされ得る。
【0088】
癌性疾患の応答は、癌治療分野の当業者によく知られた基準、限定されないが、例えば、
固形癌効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)ガイドライン,
引用:Eisenhauer EA,Therasse P,Bogaerts J,Schwartz LH,Sargent D,Ford R,Dancey J,Arbuck S,Gwyther S,Mooney M,Rubinstein L,Shankar L,Dodd L,Kaplan R,Lacombe D,Verweij J.New Response Evaluation Criteria in solid tumors:改訂RECISTガイドライン(version 1.1).Eur J Cancer.2009;45:228-47;
ハイグレード神経膠腫に対するRANO基準(RANO Criteria for High-Grade Gliomas),引用:Wen PY,Macdonald DR,Reardon DA,Cloughesy TF,Sorensen AG,Galanis E,Degroot J,Wick W,Gilbert MR,Lassman AB,Tsien C,Mikkelsen T,Wong ET,Chamberlain MC,Stupp R,Lamborn KR,Vogelbaum MA,van den Bent MJ,Chang SM.Updated response assessment criteria for high-grade gliomas:response assessment in neuro-oncology working group.J Clin Oncol.2010;28(11):1963-72;
卵巣癌の応答に対するCA-125 Rustin基準(CA-125 Rustin Criteria for Ovarian Cancer Response),引用:Rustin GJ,Quinn M,Thigpen T,du Bois A,Pujade-Lauraine E,Jakobsen A,Eisenhauer E,Sagae S,Greven K,Vergote I,Cervantes A,Vermorken J.Re:New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors(ovarian cancer).J Natl Cancer Inst.2004;96(6):487-8;および
前立腺癌の応答に対するPSAワーキンググループ2基準(PSA Working Group 2 Criteria for Prostate Cancer Response),引用:Scher HI,Halabi S,Tannock I,Morris M,Sternberg CN,Carducci MA,Eisenberger MA,Higano C,Bubley GJ,Dreicer R,Petrylak D,Kantoff P,Basch E,Kelly WK,Figg WD,Small EJ,Beer TM,WildingG,Martin A,Hussain M;Prostate Cancer Clinical Trials Working Group.Design and endpoints of Clinical Trials for patients with progressive prostate cancer and castrate levels of testosterone:recommendations of the Prostate Cancer Clinical Trials Working Group.JClinOncol.2008;26(7):1148-59.
を用いて評価することができる。
【0089】
感受性は、以下の:異常細胞、好ましくは癌性細胞の数の減少または異常細胞、好ましくは癌性細胞の非存在;癌性疾患については:腫瘍サイズの減少;抑制(つまり、更なる腫瘍成長がある程度まで遅くなる、好ましくは止まる);PSAおよびCA-125などの腫瘍マーカーレベルの減少、他の臓器への癌細胞浸潤(軟部組織および骨への癌の広がり)の抑制(つまり、ある程度まで遅くなる、好ましくは止まる);腫瘍拡散転移の抑制(つまり、ある程度まで遅くなる、好ましくは止まる);特定の癌に伴う症状の1つまたは複数の緩和;および罹患率および死亡率の低減;のうちの1つまたは複数における、観察可能な、かつ/または測定可能な減少、またはそのうちの1つまたは複数の存在と関連する。
【0090】
好ましい実施形態において感受性とは、以下の基準:腫瘍サイズの減少;更なる腫瘍成長の抑制:他の臓器への癌細胞浸潤の抑制;および腫瘍拡散転移の抑制;のうちの1つまたは複数の観察可能な、かつ/または測定可能な減少がある、または無いことを意味する。
【0091】
さらに好ましい実施形態において、感受性は、以下の基準:腫瘍サイズの減少;更なる腫瘍成長の抑制:他の臓器への癌細胞浸潤の抑制;および腫瘍拡散転移の抑制;のうちの1つまたは複数を意味する。
【0092】
前述の感受性基準の測定は、癌性疾患の応答の測定について上記に示すガイドラインなど、癌治療分野の当業者にはよく知られている臨床ガイドラインに準拠している。
【0093】
応答は、細胞増殖および/または細胞死を評価することによって生体外で確立することもできる。例えば、細胞死または増殖に対する作用は、以下の十分に確立されたアッセイのうちの1つまたは複数によって生体外で評価され得る:A)アポトーシスの顕著な特徴である、細胞核モフォロジーおよびDNA断片化についての情報を提供する、Hoechst33342色素での細胞核染色。B)原形質膜の外部脂質二重層のホスファチジルセリン含有量を反映するAnnexinV結合アッセイ。この現象は、アポトーシスの早期の顕著な特徴とみなされる。C)TUNELアッセイ(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTP Nick End標識化アッセイ)、核酸の末端を標識することによってDNAの断片化を測定することによる、アポトーシスまたは壊死を受けた細胞を評価する蛍光法。D)細胞の代謝活性を測定するMTS増殖アッセイ。生細胞は代謝的に活性であるのに対して、呼吸鎖が損なわれた細胞は、この試験で活性の減少を示す。E)細胞数に対する作用が、細胞成分の直接染色によってモニターされる、クリスタルバイオレット染色アッセイ。F)ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みによってDAN合成をモニターする増殖アッセイ。成長/増殖に対する抑制効果を直接決定することができる。G)膜不透過性、蛍光、単一シアニン、核酸染色を含むYO-PROアッセイであって、細胞生存率に干渉することなく瀕死細胞(例えば、アポトーシス性)の分析を可能にする、アッセイ。細胞の透過処理後に、細胞数に対する全体的な作用も分析することができる。H)細胞周期の異なる相の間の分布の変化を示す、細胞周期分布に関するヨウ化プロピジウム染色。細胞周期拘束ポイントを決定することができる。I)軟寒天においてコロニーに増殖する単一細胞浮遊液の能力を評価する、コロニー増殖アッセイなどの足場非依存性増殖アッセイ。
【0094】
生体外での決定に関係する好ましい一実施形態において、感受性は、異常細胞の増殖速度の減少および/または異常細胞数の減少があることを意味する。さらに好ましくは、感受性とは、癌性細胞の増殖速度の減少および/または癌性細胞数の減少があることを意味する。異常な細胞、好ましくは癌性細胞の数の減少は、様々なプログラム細胞死および非プログラム細胞死メカニズムを介して起こり得る。アポトーシス、カスパーゼ非依存性プログラム細胞死および自己貪食細胞死は、プログラム細胞死の例である。しかしながら、本発明の実施形態に含まれる細胞死基準は、いずれか一つの細胞死メカニズムに限定されると解釈されない。
【0095】
生体外での耐性の決定に関係する好ましい実施形態において、耐性とは、増殖速度の減少および/または異常細胞数の減少がないことを意味する。さらに好ましくは、耐性とは、癌性細胞の増殖速度の減少および/または癌性細胞数の減少がないことを意味する。異常な細胞、好ましくは癌性細胞の数の減少は、様々なプログラム細胞死および非プログラム細胞死メカニズムを介して起こり得る。アポトーシス、カスパーゼ非依存性プログラム細胞死および自己貪食細胞死は、プログラム細胞死の例である。しかしながら、本発明の実施形態に含まれる細胞死基準は、いずれか一つの細胞死メカニズムに限定されると解釈されない。
【0096】
EB1
本明細書で使用されるEB1という用語は、先に記載の同義語すべてを包含し、かつ核酸レベルとタンパク質レベルの両方で適宜、この実態を意味する。核酸レベルは、例えばmRNA、cDNAまたはDNAを意味し、タンパク質という用語は、翻訳ポリペプチドまたはタンパク質配列および翻訳後に修飾されたその形態を含む。
【0097】
EB1(ヒトEB1)のタンパク質配列の好ましい例は、配列番号:1に示される。しかしながら、EB1という用語は、この配列の相同体、変異形態、突然変異体、アイソタイプ、スプライスバリアントおよび等価物も包含する。好ましくは、それは、この配列のヒト相同体、変異体形態、突然変異体、アイソタイプ、スプライスバリアントおよび等価物も包含する。さらに好ましくは、それは、前記配列と少なくとも約75%の同一性、特に好ましくは少なくとも約85%の同一性、特に好ましくは少なくとも約95%の同一性、およびさらに詳しくは好ましくは約99%の同一性を有する配列を包含する。
【0098】
特に好ましい実施形態において、EB1は、配列番号:1によって、またはこの配列と少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性を有する配列によってタンパク質レベルで表される、核酸またはタンパク質レベルでの実体である。特に好ましい実施形態において、EB1は、配列番号:1によって表される。
【0099】
EB1(ヒトEB1)のcDNA核酸配列の好ましい例は、配列番号:2によって表されるNCBI参照配列U24166を介してアクセス可能である。しかしながら、EB1という用語は、前記配列の修飾形態、より縮重された変異体、前記配列の補体、および前記配列の一つとハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドも包含する。かかる修飾としては、限定されないが、1つまたは複数のヌクレオチドの変異、挿入、欠失、および置換が挙げられる。さらに好ましくは、それは、前記配列と少なくとも約75%の同一性、特に好ましくは少なくとも約85%の同一性、特に好ましくは少なくとも約95%の同一性およびさらに詳しくは好ましくは約99%の同一性を有する配列を包含する。
【0100】
さらに他の好ましい実施形態において、EB1は、配列番号2またはこの配列と少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性を有する配列によって、核酸レベルで表される、核酸またはタンパク質レベルでの実体である。特に好ましい実施形態において、EB1は、配列番号2によって表される。
【0101】
EB1のレベル
EB1のレベルは、タンパク質レベルで、または核酸レベルで、例えばRNAまたはcDNAで検出することができる。EB1のレベルは、当業者によく知られる技術的手段によって試料中でアッセイすることができる。それは、転写または翻訳レベルでアッセイされ得る。
【0102】
好ましい一実施形態において、試料中のEB1核酸のレベル、好ましくはEB1 mRNAが測定される。核酸レベルでのEB1のレベルの測定に適している、当技術分野で公知の遺伝子発現分析の方法の例としては、限定されないが、i)mRNAとハイブリッド形成することができる標識プローブ使用する方法;ii)EB1遺伝子配列をベースとする1つまたは複数のプライマーを含むPCRを使用する方法、例えば標識プローブ、例えば、蛍光プローブを用いた定量的PCR法、定量的リアルタイムPCRなどを使用する方法;iii)マイクロアレイ;IV)ノーザンブロット法;V)網羅的遺伝子発現解析(SAGE)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅)、ディファレンシャルディスプレイおよびミクロRNAの測定が挙げられる。
【0103】
好ましい実施形態において、タンパク質レベルでのEB1のレベルが測定される。タンパク質レベルでのEB1のレベルを測定するのに適している、当技術分野で公知のタンパク質発現解析の方法の例としては、限定されないが、i)免疫組織化学(IHC)分析、ii)ウエスタンブロット法iii)免疫沈降法iv)酵素免疫測定法(ELISA);v)ラジオイムノアッセイ;vi)蛍光活性化細胞選別(FACS);vii)質量分析法、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI、例えばMALDI-TOF)および表面エンハンス型レーザー脱離/イオン化(SELDI、例えばSELDI-TOF)が挙げられる。
【0104】
上記の方法の一部に含まれる抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、抗体断片、および/または合成抗体の種々のタイプ、例えばキメラ抗体、DARPS(設計アンキリンリピートタンパク質)またはDNA/RNAアプタマーであり得る。検出することができるように、抗体を標識化することもできるし、あるいは例えば、標識化された二次抗体、または検出可能な結果を生むことができる二次抗体を使用して、1種または複数種の更なる種との反応後に検出することができる。EB1に特異的な抗体は、例えばBD Biosciences and Cell Signaling Technology,Inc.から市販されており、あるいは、当業者によく知られた従来の抗体産生法によって製造することができる。
【0105】
タンパク質分析の好ましい方法は、フローサイトメトリー(FACS)、ELISA、蛍光顕微鏡検査法、質量分析技術、免疫組織化学およびウエスタンブロット法、さらに好ましくは、FACS、ウエスタンブロット法および免疫組織化学である。FACSにおいて、蛍光標識抗体またはプローブが使用され、懸濁液中の全細胞(固定または天然)上の特異的な細胞タンパク質または抗原に結合させ、細胞抗原に結合された検出可能な標識からのシグナル強度は、その単細胞で発現されるタンパク質の量に相当し、定量化することができる。蛍光顕微鏡検査法において、蛍光標識抗体またはプローブが使用され、特異的な細胞タンパク質(抗原)に結合させ、そのタンパク質量および位置を検出可能な標識によって検出かつ測定することができる。免疫ブロット法としても知られるウエスタンブロット法において、標識抗体を使用して、タンパク質のレベルをアッセイすることができ、検出可能な標識からのシグナル強度はタンパク質の量に相当し、かつ例えばデンシトメトリーによって定量化することができる。
【0106】
免疫組織化学では再び、バイオマーカーの存在および相対量を検出するために標識抗体またはプローブが使用される。それを使用して、バイオマーカーが存在する、細胞のパーセンテージを評価することができる。それを使用して、個々の細胞におけるバイオマーカーの局在または相対量も評価することができ;後者は、染色の強度の関数として確かめられる。
【0107】
特異的なタンパク質を検出するために抗体または抗原に結合された酵素を使用することから、ELISAは、酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay)を表す。ELISAは一般に、以下のように行われる(方法論における他の変形形態が存在するが):96ウェルプレートなどの固体基材を一次抗体でコーティングし、その抗体はバイオマーカーを認識する。次いで、結合したバイオマーカーは、そのバイオマーカーに対して特異的な二次抗体によって認識される。これは、酵素に直接結合するか、または第3の抗免疫グロブリン抗体を使用して、それが酵素に結合される。基質を添加し、酵素が反応を触媒し、特定の色が生じる。この色の光学濃度を測定することによって、バイオマーカーの存在および量を測定することができる。
【0108】
EB1のレベルはCSCにおいて測定されることが好ましい。これは、試料中のCSCにおいてEB1レベルを直接確認することによって、あるいはEB1のレベルを測定する前に、CSCに対して試料を濃縮することによって、行われ得る。例えば、EB1のレベルは、CSCおよびEB1を同時に特異的に可視化する試剤で染色することによって、あるいは、CSCを可視化する試剤で最初に染色し、次にEB1を可視化する試剤で染色することによって、免疫組織化学、FACSまたは免疫蛍光法を用いて、CSCにおいて直接測定することができる。
【0109】
バイオマーカーの使用
好ましい一実施形態において、バイオマーカーを使用して、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、被験体における疾患の固有の感受性を予測する。
【0110】
他の好ましい実施形態において、バイオマーカーを使用して、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、被験体における疾患の獲得された耐性を予測する。
【0111】
バイオマーカーを使用して、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を用いた治療のために、疾患、好ましくは癌に罹患している被験体、また罹りやすい被験体を選択することができる。かかるバイオマーカーのレベルを用いて、かかる薬剤での治療に応答しそうな、または応答しそうにない、または応答を続けそうな、または応答を続けそうにない患者を同定することができる。不必要な治療法を避けるために、患者の層化が行われ得る。特に、バイオマーカーを用いて、その被験体からの試料が、標準レベルまたは標準レベルのセットに対して高いEB1のレベルを示す被験体を同定することができ、次いで、かかる被験体は、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体を用いた治療に選択される。
【0112】
バイオマーカーを使用して、投与量および投与スケジュールに関して、治療計画の決定を補助することもできる。さらに、バイオマーカーを使用して、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体、および他の化学療法(細胞毒性)剤など、被験体に投与される薬物の組み合わせの選択を補助することができる。さらに、バイオマーカーを使用して、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体が、標的療法、内分泌療法、生物製剤、放射線治療、免疫療法または外科的介入、またはこれらの組み合わせと併せて投与されるかどうかなど、被験体における治療方針の決定を補助することができる。
【0113】
EB1を他のバイオマーカーと併せて使用して、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する応答を予測し、治療方法を決定することもできる。さらに、それを化学感受性試験と併せて使用して、化学感受性を決定し、かつ治療方法を決定することができる。化学感受性試験は、被験体から採取された、例えば、血液悪性疾患または接触可能な固形腫瘍、例えば限定されないが、乳癌および頭頚部癌または黒色腫などを有する被験体から採取された細胞に式Iの化合物を直接適用して、化合物に対する細胞の応答を決定することを含む。
【0114】
治療の方法
本発明は、一部の態様において治療方法および治療方法で使用されるEB1も含み、そのEB1レベルが最初に、標準レベルまたは標準レベルのセットまたは予備処理開始レベルに対して確立され、次いで、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体が、前記試料中のEB1のレベルが標準値または標準値のセットよりも高いか、または予備処理開始レベルに対して減少していない場合に投与される。当業者によく知られているように、式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体は、医薬組成物の形で投与され得る。適切な組成および投薬量は、例えば国際公開第2004/103994A1号パンフレットの35~39ページに開示されており、本明細書により明確に組み込まれる。温血動物、特にヒトへの、経腸投与、経鼻投与、口腔投与、直腸投与など、または特に経口投与、および静脈内、筋肉内または皮下投与などの非経口投与用の組成物が特に好ましい。さらに詳しくは、静脈内または経口投与用の組成物が好ましい。一実施形態において、経口投与用の組成物が特に好ましい。
【0115】
その組成物は、活性成分と、薬剤として許容される担体とを含む。組成物の一例としては、限定されないが、活性成分1mg、マンニトール98mgおよびステアリン酸マグネシウム1mg、または活性成分5mg、マンニトール94mgおよびステアリン酸マグネシウム1mgを含有するハードカプセルが挙げられる。
【0116】
本発明は、一態様において、標準レベルまたは標準レベルのセット、または予備処理開始レベルと比較して、EB1レベルの低い試料を有する被験体におけるEB1のレベルを最初に増加し、次いで上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体で被験体を治療することによって、腫瘍性疾患または自己免疫疾患、好ましくは癌を治療する方法に関する。EB1のレベルは、直接的もしくは間接的、化学的もしくは遺伝的手段によって増加され得る。かかる方法の例は、ウイルス、プラスミドまたはペプチド構築物、または抗体またはsiRNAもしくはアンチセンスのEB1発現および標的化送達の増加が得られ、EB1のレベルがアップレギュレートされる、薬物を用いた治療である。例えば、ウイルスまたはプラスミド構築物を使用して、細胞におけるEB1の発現を増加することができる。次いで、被験体は式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体で治療され得る。
【0117】
式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体は、単独で、または1種または複数種の他の治療薬と併せて投与することができる。可能性のある併用療法は、固定されたコンビネーション、または本発明の化合物と、交互にされるか、または互いに無関係に与えられる1種または複数種の他の治療薬との投与、または固定されたコンビネーションと1種または複数種の他の治療薬との併用投与の形をとり得る。
【0118】
式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体は、それに加えて、またはさらに、化学療法(細胞毒性療法)、標的療法、内分泌療法、生物製剤、放射線治療、免疫療法、外科的介入、またはこれらの組み合わせと併せて、特に腫瘍治療のために投与される。上述のように、他の治療方法の文脈におけるアジュバント療法のように、長期間の治療法が等しく可能である。他の可能な治療は、例えばリスクのある患者において、腫瘍退縮後または化学予防療法後の患者の状態を維持する療法である。
【0119】
キットおよびデバイス
一態様において、本発明は、上記で定義される式Iの化合物または薬剤として許容されるその誘導体に対する、被験体における好ましくは疾患の応答を予測するための、試料中のEB1のレベルを測定するのに必要な試剤を備えるキットに関し、他の態様では、デバイスに関する。好ましくは、その試剤は、EB1の検出体を含む捕捉剤と、検出剤と、を含む。
【0120】
キットおよびデバイスは好ましくは、試料中のEB1のレベルがそれに対して比較される標準値または標準値のセットを含む、コンパレーターモジュールも備え得る。好ましい実施形態において、コンパレーターモジュールはキットの使用説明書に含まれる。他の好ましい実施形態において、コンパレーターモジュールは、ディスプレイ装置の形、例えば、耐性レベルを示すために、試料測定の読み取りの次に置かれるように設計された、色または数字でコード化された材料のストリップの形をとる。標準値または標準値のセットは上述のように決定され得る。
【0121】
EB1に関して、試剤は好ましくは、EB1に選択的に結合する、抗体または抗体断片である。適切な試料は、組織、腫瘍組織またはCSC試料、固定およびパラフィン包埋または凍結組織のセクション、腫瘍組織またはCSC標本、および血液、脳脊髄液および他の体液由来の試料(循環腫瘍細胞およびCSCなど)である。好ましくは、試剤は、EB1に結合する1つの特異的な一次抗体の形態およびその一次抗体に結合し、かつ検出のためにそれ自体が標識化される二次抗体の形態をとる。一次抗体も、直接検出するために標識化してもよい。キットまたはデバイスは任意選択的に、洗浄後に他のバイオマーカーと比較して捕捉剤に対して結合したバイオマーカーの保持を選択的に可能にする、洗浄溶液も含有し得る。次いで、かかるキットをELISA、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー(FACS)、免疫蛍光顕微鏡検査、免疫組織化学法または他の免疫化学法で使用して、バイオマーカーのレベルを検出することができる。EB1のレベルを検出するために、非抗体ベースの特異的プローブ、例えば、薬物親和性反応性標的安定性(DARTS)またはアプタマーも使用することができる。
【0122】
他の好ましい実施形態において、試剤は、試料中のEB1のレベルを測定することができる試剤でもあり得る。適切な試料は、組織、腫瘍組織またはCSC試料、固定およびパラフィン包埋または凍結組織のセクション、腫瘍組織またはCSC標本および血液、脳脊髄液および他の体液由来の試料(循環腫瘍細胞およびCSCなど)である。好ましくは、試剤は、試料中のEB1核酸とハイブリダイゼーションするための標識プローブまたはプライマーを含む。PCR増幅技術または標識プローブの検出をベースとする適切な検出システムによって、試料中のEB1核酸を定量化することが可能となる。これは、i)原位置での標本自体で、好ましくはパラフィン包埋または凍結標本のセクションで、ii)腫瘍、組織および脳脊髄液由来の標本(循環腫瘍細胞およびCSCなど)からの抽出物(適切な試剤が核酸に対して選択的に濃縮する)で行うことができる。そのキットまたはデバイスによって、プローブ自体またはプライマーに結合されたレポーターの特異的な物理化学的性質に基づく方法によって、i)標本とハイブリダイズされた標識プローブの原位置での量、またはii)プライマーベースの増幅産物の量の測定および定量化が可能となる。
【0123】
同様に、そのキットおよびデバイスは、CSSに選択的に結合する試剤を含有し得る。かかる試剤は、上述のようにCSCマーカーを標的化し得る。
【0124】
さらに、デバイスは、測定されたシグナルをさらに処理し、コンパレーターモジュールにおいてあるスケールへと移行する、イメージング装置または測定装置(例えば、限定されないが、蛍光の測定)を含み得る。
【0125】
本明細書において、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」という用語は、指定のアイテムまたはアイテムのグループの包含を意味すると理解されるが、他のいずれかのアイテムまたはアイテムのグループを排除するものではない。
【0126】
実験方法論
患者からの腫瘍試料
手術前に化学療法または放射線治療を受けていない患者からの膠芽腫(GBM)試料(世界保健機関,IVグレード)をインフォームド・コンセント後に入手した。新鮮な原発性GBM試料を術後に、0.5%ウシ胎児血清(FCS)(Gibco-Invitrogen,CergyPontoise)、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco-Invitrogen)で補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Life technologies,SaintAubin,France)に回収した。4時間以内に、腫瘍を洗浄し、切開し、Mcllwain組織チョッパーを使用して自動的に切片にし、トリプシン(Sigma-Aldrich,Paris,France)5mg/mLとDNAse(Sigma-Aldrich)200U/mLの両方で37℃にて10分間、酵素的に分離した。DMEM 10%FCSを添加することによって、反応を停止した。懸濁液を濾過し、回収された細胞を遠心分離した。次いで、細胞をカウントし、トリパンブルー染色(Sigma-Aldrich)によって、80%を超える細胞生存率が確認された。次いで、A2B5+抗原発現に基づくその分離まで、細胞をDMEM-FCS10%に再懸濁した。
【0127】
A2B5+抗原発現に基づくGBM CSCの分離
腫瘍から単離された細胞を、リン酸緩衝生理食塩水、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、2mM EDTA(Sigma-Aldrich)に再懸濁し、ブロッキング剤(MiltenyiBiotec,Paris,France)と共に4℃で10分間インキュベートした。次いで、抗A2B5ミクロビーズを添加し、4℃で15分間インキュベートした。細胞を洗浄し、ポジティブ磁気細胞分離(MACS MiltenyiBiotec,Paris,France)を、MACSカラムを使用して行った。蛍光顕微鏡検査法によるA2B5対照-免疫染色によって評価された平均純度は、約93%(85~98%の範囲)であった。脳室下領域(GBM6)および皮質(GBM9)から生じる、2つの膠芽腫多形腫瘍からA2B5+細胞を単離した。
【0128】
GBM6およびGBM9細胞の培養
幹細胞許容培地として、ホルモン(5mg/mLインスリン,0.1mMプトレシン,100mg/mLトランスフェリン,2.10-8Mプロゲステロン;すべてSigma-Aldrich)、50mg/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies)および10ng/mL塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF,Sigma-Aldrich)を含む成長因子、20ng/mL上皮成長因子(EGF)、(R&D systems,Lille,France)およびB27(Life technologies)で補充された、DMEM/F12培地(Life technologies)3.5mL中のGBM6またはGBM9細胞を30,000細胞/25cmフラスコの密度でプレーティングし、CO5%/O95%に維持した。培養物に週2回フィードし、スフィアを2週毎に分離した。
【0129】
細胞トランスフェクション
ヒトEB1(NM_012325)を特異的にノックダウンするshRNAプラスミドおよびネガティブshRNA対照プラスミド(Mission(登録商標)非標的shRNA対照ベクター)をSigma-Aldrichから入手した。lipofectamine(商標)2000 system(Life technologies)を使用して、細胞をトランスフェクトした。安定なクローンを確立するために、トランスフェクトから24時間後に、2μg/mLピューロマイシン(Sigma-Aldrich)を含有する培地中でshRNA-トランスフェクト細胞および関連する対照クローンが選択された。
【0130】
lipofectamine(商標)2000システム(Invitrogen)および0.6mg/mLジェネテシン(Life technologies)での選択を用いて、peGFP-N3ベクター(Clonetech,Saint Germain en Laye,France)をトランスフェクトした後に、安定なGFP細胞系が得られた。
【0131】
EB1免疫ブロット分析
GBM CSCを溶解バッファー(トリス50mM(pH8.0),NaCl 250mM、Triton×100 1%、SDS0.1%およびプロテアーゼとホスファターゼ阻害剤とのカクテル(すべてSigma-Aldrich))に溶解した。タンパク質ライセート全体の30μgを12%SDS-PAGEゲル上にローディングした。ニトロセルロース膜(Bio-Rad,Marnesla Coquette,France)を、0.1%Tween(pH7.4)(Sigma-Aldrich)を含有するPBS(Life technologies)中の5%ミルク(粉末)で1時間ブックし、次いでマウス抗EB1抗体(クローン5,BD Biosciences,Le pont deClaix,France)(1/1000)およびマウスα-チューブリン抗体(クローンDM1A,Sigma Aldrich)と共に同じ溶液中でインキュベートした。次いで、PBS-5%ミルク中で膜を15分間3回洗浄し、次いで抗マウスペルオキシダーゼ結合型二次抗体(Jackson Immuno research,Baltimore,USA)と共に1時間インキュベートし、続いてPBS中で3回、15分間洗浄した。次いで、化学発光検出キット(Millipore,Saint Quentinen Yvelines,France)を使用して、結合した抗体を検出した。シグナルをG:BOX(Syngene/Ozyme,Saint Quentin en Yvelines,France)で記録し、定量化にはImage Jソフトウェアを使用した。
【0132】
細胞毒性アッセイ
予めポリ-DL-オルニチンでコートされたウェルプレートに、細胞(5000細胞/ウェル)をシーディングし(10μg/mL)、BAL27862で処理する前に24時間増殖させた。72時間後に、スルホロダミンBアッセイキット(Sigma-Aldrich)を使用して、細胞の増殖抑制を測定した。マイクロプレートリーダー(Labsystems Multiscan,Thermo,Villebon sur Yvette,France)を使用して、細胞密度を分析し、EC50の分析をGraphPad 5.0統計ソフトウェア(GraphPad Software,LaJolla,USA)で行った。少なくとも3つの独立した実験を行った。
【0133】
クローン原性生存率アッセイ
予めポリ-DL-オルニチンでコートされた6ウェルプレートで、細胞(1000細胞/ウェル)を増殖させ、BAL27862で72時間処理した後に、5日までの間インキュベートした。20%メタノール(Sigma-Aldrich)中の1%クリスタルバイオレット溶液でコロニーを染色した。50個を超える細胞を有するコロニーをカウントした。少なくとも3つの独立した実験を行った。
【0134】
細胞移動アッセイ
DMEM中の幹細胞(50,000)をtranswell移動チャンバの上側(0.8μmフィルター,BD)に注いだ。チャンバの下側をDMEMで満たし、10%FCSを補充した。細胞を5時間移動させ、次いでチャンバを除去した。移動しなかった細胞は、フィルターの上部に留まり、綿棒でそれを除去し;フィルターの下側の細胞を1%グルタルアルデヒド(Sigma,Aldrich)で固定し、20%メタノール(Sigma-Aldrich)中の1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。洗浄し、乾燥させた後に、倍率10倍で1条件につき6つの領域の写真を画像化し、移動細胞をカウントした。
【0135】
GBM6脳腫瘍CSCのFACS分析
幹細胞許容培地(5mg/mLインスリン,0.1mMプトレシン,100mg/mLトランスフェリン,2.10-8Mプロゲステロン,50mg/mLペニシリン-ストレプトマイシンおよび成長因子、例えば10ng/mL塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),20ng/mL上皮成長因子(EGF)およびB27)中のGBM6細胞を300,000細胞/ウェルにて、ポリ-DL-オルニチンでコートされた6ウェルプレートにシーディングした(10μg/mL)(Sigma-Aldrich)。1日後、細胞をBAL27862で72時間処理した。次いで、細胞をトリプシン処理し、ブロッキング溶液(Miltenyi Biotec)を含有するハンクス液(HBSS)緩衝液(Life technologies)に懸濁し、A2B5-APC(クローン105HB29,参照130-093-582)およびCD133-PE(クローン293C3,参照130-090-853)抗体(Miltenyi Biotec)と共に10分間インキュベートした。次いで、細胞を10%パラホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich)で20分間固定し、フローサイトメトリー(FACS Calibur(商標),BD Biosciences)を使用して分析した。各試料に対して合計100,000のイベントがカウントされ、データをCellQuest Pro Software(BDBiosciences)で記録し、FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.,San Carlos,CA)およびDean-Jet-Foxモデル分析を用いて分析した。
【0136】
自己再生能力の決定
予めポリ-DL-オルニチン(Sigma-Aldrich)でコートされた6ウェルプレートに、GBM6細胞をシーディングした(150,000細胞/ウェル)。24時間後、細胞をBAL27862で72時間処理するか、または処理しなかった。処理の最後に、上清を除去し、細胞を収集し、単細胞へと分離し、96ウェルプレートにプレーティングした(1~5細胞/ウェル)。8日後、倒立光学顕微鏡(Leica DMI 4000B)(Leica,Saint Jorioz,France)下にてスフィアをカウントした。少なくとも3つの独立した実験を行った。
【0137】
同所性GBM6異種移植片
GBM6 GFP sh0またはshEB1細胞のおよそ100,000細胞を、6週齢無胸腺ヌードマウスの脳室下域内(ブレグマより前方0.5mm、後方-1mm、および皮質表面より深度-2.1mm)に注入した。移植されたマウスに、25mg/kg BAL101553(神経膠腫移植から30、33および36日後の時点で3回)または賦形剤(対照)を静脈内投与して処置した。移植から45日後に、腫瘍体積(三次元脳再構成)の解析のために、またはFACS分析のために、各群の動物3匹を屠殺した。
【0138】
三次元脳再構成
腫瘍体積を解析するために、マウスを4%パラホルムアルデヒドで麻酔し、灌流した。脳を取り出し、4℃にて4%パラホルムアルデヒド中で2日間固定し、次いで、すすいで、解剖するまでPBS中で保存した。ビブラトーム(Leica)を使用して、矢状軸に沿って厚さ50~100μm切片へと脳を全体的に切断した。合計60切片/脳が得られた。Leica DMLB蛍光顕微鏡、Leica DC300Fデジタルカメラ、およびLeica FW4000イメージングソフトウェア(Leica)を使用して、GFP注入細胞および腫瘍のマッピングおよび分析を行った。FreeDソフトウェア(Andrey P.,Free-D:an integrated environment for three-dimensional reconstruction from serial sections.Journal of Neuroscience Methods.2005;145(1-2):233-244)を使用して、三次元脳再構成が得られた。簡潔には、Franklin and Paxinos atlasに基づく、脳室および脳梁を含むデジタル化された脳切片を取り付けて、これらの切片内の細胞を局在化した。デジタル化矢状切片60枚を用いて、マウスの脳全体を構築した。
【0139】
同所性GBM6腫瘍からの脳腫瘍癌幹細胞のFACS分析
麻酔した後、動物をPBSで灌流し、脳を除去し、2%FBSを含有するHBSS緩衝液で保存した。Gentle MACS dissociator(Miltenyi Biotech)を用いて、酵素のカクテル(DNaseI(Roche,Rotkreuz,Switzerland)、コラゲナーゼD(Roche)およびコラゲナーゼV(Sigma-Aldrich))中で細胞を分離させた。10%FCSを含有するDMEMを添加して、反応を停止した。懸濁液を濾過し、細胞を40%Percoll(Sigma-Aldrich)に再懸濁した。遠心分離後、ミエリンを除去し、2%FCSを含有するHBSS緩衝液に細胞を再懸濁した。2%FCSを含有するHBSS中の細胞をA2B5-APCおよびCD133-PE抗体と共に10分間インキュベートした。次いで、細胞を10%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、フローサイトメトリーを使用して分析した。各試料に関して、合計100,000のイベントがカウントされ、データをCellQuest Pro Softwareで記録し、Dean-Jet-Foxモデル分析を選択するFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.,SanCarlos,CA)用いて分析した。
【0140】
GBM10 flank腫瘍抽出、および腫瘍保持マウスに由来する血清からの細胞外小胞(エキソソームを含む)単離
大きな(250~420mg)GBM10 flank腫瘍を保持するメス無胸腺ヌードマウス(無胸腺Ncr-nu/nu)を標準手順に従って安楽死させ、心臓穿刺によって、シリコーンコートBD Microtainer(登録商標)血液採取チューブ(BD Diagnostics,Sparks,MD,USA)に最大量の血液を引き抜いた。以下の製造元の説明書に従って、血液から血清を分離し、使用するまで、-80℃にて保存した。
【0141】
血清試料を25℃の水浴中で解凍し、次いで遠心(30分,2000×g,4℃(マイクロリットルローター45°を備えたHeraeus Primo R遠心機;Thermo Scientific,Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAUSA)にかけ、細胞および壊死組織片を除去した。2匹のマウスからの清澄血清をプールし、製造元の説明書に従ってTotal Exosome Isolation Kit(Invitrogen)を使用して、細胞外小胞の単離のために使用した。ペレットを50μL 2×SDS試料緩衝液(0.125MトリスpH6.8,4%SDS,20%グリセロール)に懸濁し、造元の説明書に従って、Pierce(商標)660nmタンパク質アッセイ(Thermo Scientific)によってタンパク質濃度を決定した。使用するまで、試料を-80℃で保存した。屠殺した直後に、同じマウスからのGBM 10flank腫瘍を標準手順を用いて切開し、液体窒素で急速凍結し、使用するまで-80℃で保存した。腫瘍45mgにつき抽出緩衝液1mL(50mM Hepes(pH7.4),150mM NaCl,5mM EGTA,1mM EDTA,1%NP-40,1mM DTT,1mM PMSFおよび2×プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル[Thermo Scientific])を含有するgentleMACSMチューブ(Miltenyi Biotec)に、凍結された腫瘍を入れた。gentleMACS Dissociator(MiltenyiBiotec)において勾配速度プログラムを用いて、腫瘍を40秒間分離した。腫瘍抽出物を氷上で30分間インキュベートし、続いて10,000rpm(マイクロリットルローター45°を備えたHeraeus PrimoR遠心機;Thermo Scientific)にて4℃で30分間遠心した。上清を保持し、タンパク質濃度を上述のように決定した。使用するまで、試料を-80℃で保存した。
【0142】
GBM10 flank腫瘍および細胞外小胞(エキソソームなど)の分析
EB1免疫ブロット法対照を以下のようにsiRNAトランスフェクションによって調製した:1.2×10ヒーラ細胞(ATCC,Manassas,VA,USA;参照CCL-2)をトランスフェクション前に7時間、75cm組織培養フラスコにプレーティングした。製造元の説明書に従って、opti-MEM(Gibco)1000μLおよびHiperFect(登録商標)トランスフェクション試剤(QIAGEN,Venlo,Netherlands)60μLを使用して、非標的化対照(NTC)siRNA(Dharmacon GE Healthcare,Lafayette,CO,USA;参照D-001810-10-20)またはEB1 siRNA(Dharmacon GE Healthcare;参照L-006824-00-0005)20nMを細胞に一過的にトランスフェクトした。2×SDS試料緩衝液中に回収する前に、5%COの加湿雰囲気中で、細胞を37℃でさらに72時間培養した。
【0143】
2×SDS試料緩衝液中に調製された、GBM10腫瘍保持マウスの血清由来の細胞外小胞、健康なドナーからのヒト血清に由来する対照エキソソーム(Hansa BioMed;参照HBM-PES-30/2)およびHeLa細胞溶解物に、還元条件のために0.2M DTTおよび0.02%ブロモフェノールブルー、1×プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific)を補充した。非還元条件のために(CD9免疫ブロット法のみで必要とされる)、DTTを省いた。腫瘍ライセート3つ分を4×Laemmli試料緩衝液(Bio-Rad)の1つ分および最終濃度355mMの2-メルカプトエタノール(Sigma)と混合して、腫瘍抽出物を調製した。すべての試料を95℃で5分間沸騰させた。
【0144】
タンパク質(腫瘍抽出物20μg,ヒーラ細胞抽出物10μg、およびEB1またはCD9免疫ブロット法にそれぞれ用いられる、健康なドナーからのヒト血清に由来する細胞外小胞または対照エキソソーム30μgまたは10μg)をSDS/PAGEによって分離し、PVDF膜(Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標),Bio-Rad)に移した。PBS/0.1%(v/v)Tween-20中の5%ミルクで室温にて1時間ブロッキングした後、以下の一次抗体:抗EB1(Sigma;参照E3406)、抗CD9(BioVision,Milpitas,CA,USA;参照A1500-50)または抗アクチン(Millipore,MerckKGaA,Darmstadt Germany;参照MAB1501)で4℃にて一晩、膜をプローブした。膜をヤギ抗rabbit-IgG-HRP二次抗体(Jackson ImmunoResearch,WestGrove,PA,USA;参照111-035-144)またはヤギ抗マウスIgG-HRP二次抗体(Jackson ImmunoResearch;参照115-035-146)と共に室温にて1時間インキュベートし、ECL Primeウエスタンブロット検出試剤(GE Healthcare,Chicago,IL,USA)を使用して、ラベル(decorated)タンパク質を可視化した。FUSIONSOLOS装置およびFUSION-CAPTソフトウェア(Vilber Lourmat,MArne-la-Valee,France)を使用して、シグナルを記録した。
【0145】
詳細な実験
実施例1:GBM6およびGBM9CSCに対するBAL27862の細胞障害活性の比較
GBM6およびGBM9 CSCに対するBAL27862の細胞毒性活性の濃度反応曲線から、BAL27862が、EC50約20nMで両方の細胞系に対する同等の細胞毒性活性を有することが分かる(表1参照)。
【0146】
【表8】
【0147】
実施例2:GBM6およびGBM9 GBM CSCにおけるEB1タンパク質発現レベル
GBM6対GBM9 CSCにおけるEB1発現レベルの免疫ブロット法による決定から、GBM6細胞がGBM9よりも高いレベルのEB1タンパク質を発現することが実証された(図1参照)。αチューブリンレベルに対して正規化すると、GBM6は、GBM9細胞よりも17.9倍多い量のEB1タンパク質を発現した。
【0148】
実施例3:BAL27862は、GBM9 CSCよりもGBM6において、より効率的に生体外での細胞移動を抑制する
GBM6およびGBM9細胞のTranswell移動アッセイは、非細胞毒性(6nM)および細胞毒性(20nM)として定義される、2種類の異なるBAL27862濃度で行われた(実施例1参照)。予想されるように、この細胞毒性濃度(20nM)によって劇的に、両方の細胞系の移動が同様な程度まで抑制され、この濃度での細胞に対する一般的な細胞毒性が示されている。しかしながら、6nMの非細胞毒性濃度で、GBM6細胞は、細胞移動の統計学的に有意な抑制を示したのに対して、GBM9細胞は応答しなかった(図2参照)。これは、BAL27862の低い非細胞毒性濃度、GBM9と比べて高いEB1レベルを伴う現象によって、GBM6の移動を特異的に抑制することができることを示す。
【0149】
実施例4:shRNAトランスフェクションによって抑制されたEB1発現レベルを有する、安定なGFP発現性GBM6 CSCの分析
shRNA(shEB1)、非標的化対照shRNA(sh0)をトランスフェクトされた安定なGFP発現性GBM6細胞、および非処理GBM6を、免疫ブロット法によってEB1発現について試験した(図3参照)。測定されたシグナルは、α-チューブリン発現に対して正規化された。shEB1を安定にトランスフェクトされたGBM6細胞は、対照GBM6細胞と比較してEB1発現レベルの69%の減少を示す。
【0150】
実施例5:EB1ダウンレギュレーションによって、非細胞毒性BAL27862濃度の抗移動作用に対してGBM6 CSCが脱感作される
BAL27862濃度6nMで測定された細胞移動は、対照EB1発現細胞おいて、細胞移動の統計学的に有意な抑制を示したのに対し、EB1ダウンレギュレートGBM6細胞では、BAL27862処理の抑制作用は劇的に減少した(図4参照)。これによって、EB1タンパク質が、GBM CSCにおけるBAL27862の抗移動作用に関与することが実証されている。
【0151】
実施例6:BAL27862は、EB1発現依存的にGBM6 CSCのクローン原性能力を抑制する
DMSO対照または3、6および10nM BAL27862(非細胞毒性濃度)と共に72時間インキュベートした後に、GBM6 GFP sh0(正常なEB1レベル)およびGBM6 GFP shEB1(ダウンレギュレートされたEB1レベル)のコロニー形成能力を評価した(図5参照)。BAL27862は、EB1発現細胞のみで統計学的に有意な手法で準毒性用量6および10nMにて、GBM6 CSCのクローン原性能力を著しく損なった。これは、クローン原性アッセイにおいてBAL27862の活性にEB1が必要であることを示す。
【0152】
実施例7:BAL27862は、EB1発現依存的に生体外で幹細胞分化を促進する。
BAL27862処理後のA2B5ポジティブGMB6細胞数のFAC分析から、EB1が発現された場合のみ(GBM6 GFP sh0細胞)、6nM BAL27862処理によって有意な抑制が示された(図6参照)。それと対照的に、A2B5に対してポジティブなGBM6細胞およびEB1発現に対してネガティブなGBM6細胞(GBM6 GFP shEB1,EB1ダウンレギュレート細胞)は、6nM BAL27862に対して感受性が低かった。A2B5発現の減少は分化と関連することから、これは、BAL27862がEB1発現依存的にGBM6 CSCの分化を誘導することを示す。
【0153】
実施例8:BAL27862は、EB1発現依存的に生体外で幹細胞分化を促進する。
BAL27862(6nM)処理は、GBM6野生型およびGBM6 GFP sh0細胞(正常なEB1レベルを有する)において用量依存的にスフィアの形成を統計学的に優位に妨げる(図7参照)。しかしながら、EB1ダウンレギュレーション(GBM6 GFP shEB1細胞)によって、GBM6 CSCにおけるBAL27862の阻害活性が抑制される。スフィアを形成する能力の低下は分化と関連することから、これは、BAL27862が、EB1発現依存的にGBM6 CSCの分化を誘導することを示す。
【0154】
実施例9:BAL101553(BAL27862のプロドラッグ)は、EB1発現同所性GBM6腫瘍に対して増加した活性を有する
0日目に脳室下領域内に定位的に移植されたGBM6 GFP sh0(正常なEB1発現レベル)またはGBM6 GFP shEB1(EB1ダウンレギュレートされた)細胞を受けたマウスを30/33/36日目に、25mg/kg BAL101553で静脈内投与にて、または賦形剤対照で処理し、脳を取り出すために45日目に屠殺した。マウスの脳を連続矢状切片に処理し、次いで蛍光顕微鏡を使用して、それを分析かつ記録した。単一セクションから撮影された写真を三次元再構成に使用した。EB1発現腫瘍において賦形剤処理と比較して、BAL101553処理した結果、腫瘍量(サイズ)および腫瘍の広がりが明らかに減少し、生体内での腫瘍成長および腫瘍細胞移動に対するBAL101553の抑制作用が示されている(図8参照)。しかしながら、BAL101553のこの作用は、EB1ネガティブ腫瘍において最小であり、CSCに対するBAL27862活性とEB1発現がポジティブに相関する場合の生体外データと一致する。
【0155】
実施例10:BAL101553処理は、同所性GBM6腫瘍における未分化CSCの割合を低減する
0日目に脳室下領域内に定位的に移植されたGBM6 GFP sh0(正常なEB1発現レベル)またはGBM6 GFP shEB1(EB1ダウンレギュレートされた)細胞を受けたマウスを30/33/36日目に、25mg/kg BAL101553で静脈内投与にて、または賦形剤対照で処理し、脳を取り出すために45日目に屠殺した。マウスの脳を単一の細胞浮遊液中に分離し、抗A2B5抗体を使用して、A2B5ポジティブGBMCSCを染色し、FACSによって分析した。A2B5ポジティブGBM6細胞に対するA2B5ネガティブ細胞の割合を計算した。EB1発現GBM6腫瘍のBAL101553処理によって、腫瘍細胞の割合がA2B5ネガティブ細胞の方に強くシフトし(ポジティブ20%に対してネガティブ80%)、それは対照と比較して明確なシフトである(ポジティブ60%に対してネガティブ40%)(図9参照)。それと対照的に、EB1ダウンレギュレートGBM6腫瘍では、BAL101553処理によって、A2B5ポジティブ細胞の割合がむしろ増加し(およそ60%から80%へ)、EB1発現腫瘍と比較して、EB1ダウンレギュレート脳腫瘍において未分化GBM6 CSCの含有率が高いことが示されている。
【0156】
実施例11:EB1発現GBM10腫瘍保持マウスに由来する細胞外小胞(エキソソームを含む)は、EB1タンパク質に対してポジティブである
大きなGBM10 flank腫瘍を保持するマウスから単離された腫瘍および細胞外小胞を免疫ブロット法によって、EB1発現について分析した。健康なドナーからのヒト血清に由来する対照エキソソームおよび細胞外小胞(エキソソーム)マーカーとしてCD9を使用して、細胞外小胞(エキソソームなど)の効率的な単離が確認された(Zarovni et al.,Integrated isolation and quantitative analysis of exosome shuttled proteins and nucleic acids usingimmunocapture approaches.Methods,2015;87:46-58;Thery et al.,Molecular Characterization of Dendritic Cell-derived Exoxomes:Selective Accumulation of the Heat Shock Proteinhsc73.The Journal of Cell Biology,1999:3:599-610)。EB1発現に関する抽出腫瘍の免疫ブロット法から、3つの個々の腫瘍における一貫した発現が示された。EB1 siRNAで処理された細胞に由来するHeLa抽出物を用いて、EB1に対する抗体の特性が確認され、非標的化siRNA対照(NTC)抽出物と比較して、EB1の劇的な減少が示された(図11)。さらに、腫瘍保持マウスの血清から得られた細胞外小胞(エキソソームを含む)もまた、EB1タンパク質を含有することが分かり、これは、GBM腫瘍EB1発現分析の有用な代替源であり得ることを表す(図12)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
【配列表】
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