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特許7034103ナノフィラメントを含むペーパー製品を製造するためのプロセス
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  • 特許-ナノフィラメントを含むペーパー製品を製造するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ナノフィラメントを含むペーパー製品を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20220304BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20220304BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
D21H27/00 F
D21H11/18
A47K10/16 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018569034
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 US2017040294
(87)【国際公開番号】W WO2018005971
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】62/357,452
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518460509
【氏名又は名称】マーサー インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲンベイン,トビアス
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526657(JP,A)
【文献】特表2016-503465(JP,A)
【文献】特表平11-513083(JP,A)
【文献】特開2008-088612(JP,A)
【文献】特開平10-077595(JP,A)
【文献】特開平07-118303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 27/00
D21H 11/18
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性タオルペーパーウェブを製造するためのプロセスであって、
(a)製紙用完成紙料を提供するステップであって、
i)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、45重量%~90重量%の針葉樹パルプ繊維混合物であって、
u)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、20.0重量%~89.9重量%の針葉樹パルプ繊維、および
v)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、0.05重量%~5.0重量%の紙力増強添加剤、により特徴付けられる針葉樹パルプ繊維混合物と、
ii)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、10重量%~55重量%の広葉樹パルプ繊維混合物であって、
y)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、9.9重量%~54.9重量%の広葉樹パルプ繊維、および
z)前記吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、0.05重量%~20.0重量%のセルロースナノフィラメントであって、
30nm~500nmの範囲の平均幅および200~5000の範囲のアスペクト比を有する、セルロースナノフィラメントにより特徴付けられる広葉樹パルプ繊維混合物と
を特徴とする製紙用完成紙料を提供するステップと、
(b)前記製紙用完成紙料から湿潤繊維ウェブを形成するステップと、
(c)前記湿潤繊維ウェブが10重量%以下の水分を含むまで前記湿潤繊維ウェブを乾燥させるステップとを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
柔らかい衛生ティッシュペーパーウェブを製造するためのプロセスであって、
(a)製紙用完成紙料を提供するステップであって、
i)製紙用バージン完成紙料の2重量%~56.5重量%の針葉樹パルプ繊維混合物であって、
u)前記ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、0重量%超~56.4重量%の針葉樹パルプ繊維、および
v)前記ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、0.05重量%~3.0重量%の紙力増強添加剤、により特徴付けられる針葉樹パルプ繊維混合物と、
ii)前記ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、43.5重量%~99.9重量%の広葉樹パルプ繊維混合物であって、
y)前記ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、43.4重量%~99.9重量%の広葉樹パルプ繊維、および
z)前記ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、0.05重量%~20.0重量%のセルロースナノフィラメントであって、
30nm~500nmの範囲の平均幅および200~5000の範囲のアスペクト比を有する、セルロースナノフィラメントにより特徴付けられる広葉樹パルプ繊維混合物と、
を特徴とする製紙用完成紙料を提供するステップと、
(b)前記製紙用完成紙料から湿潤繊維ウェブを形成するステップと、
(c)前記湿潤繊維ウェブが10重量%以下の水分を含むまで前記湿潤繊維ウェブを乾燥させるステップとを特徴とする、プロセス
【請求項3】
前記ステップ(c)が、前記湿潤繊維ウェブが6重量%以下の水分を含むまで前記湿潤繊維ウェブを乾燥させることによってさらに特徴付けられる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記針葉樹パルプ繊維が、前記針葉樹パルプ繊維混合物に添加される前に叩解されることによってさらに特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記製紙用完成紙料が、
w)1.0重量%を超える、デボンダ、シリコーン、柔軟化添加剤、吸収性添加剤、審美的添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的製紙添加剤によってさらに特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記製紙用完成紙料が、0重量%超~3.0重量%のデボンダ、または0重量%超~3.0重量%のシリコーンによってさらに特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記セルロースナノフィラメントが、ミクロセルロースフィラメントおよびナノセルロースフィラメントのブレンドによってさらに特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ミクロセルロースフィラメントおよびナノセルロースフィラメントのブレンドが、
(A)前記ブレンドの少なくとも40重量%であるナノセルロースフィラメント、
(B)前記ブレンドの少なくとも10重量%である未処理のフィブリル化繊維、および
(C)前記ブレンドの少なくとも10重量%であるセルロース系微粉、によってさらに特徴付けられる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップ(a)が、最大で20重量%のフィブリル化人工セルロースを提供するステップによってさらに特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ステップ(a)が、最大で20重量%の非木材天然繊維を提供するステップによってさらに特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ステップ(a)が、最大で20重量%の非セルロース系繊維を提供するステップによってさらに特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記セルロースナノフィラメントを前記針葉樹パルプ繊維混合物および前記広葉樹パルプ繊維混合物に添加することによってさらに特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記吸収性タオルペーパーウェブまたは前記柔らかい衛生ティッシュペーパーウェブに異なる密度を提供するステップによってさらに特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ステップc)の後に、前記乾燥させた繊維ウェブから吸収性タオルペーパー製品を形成するステップであって、1、2、3、4、または5プライを特徴とする、吸収性タオルペーパー製品を形成するステップによってさらに特徴付けられる、請求項1または3~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ステップc)の後に、前記乾燥させた繊維ウェブから柔らかい衛生ティッシュペーパー製品を形成するステップであって、1、2、3、4、または5プライを特徴とする、柔らかい衛生ティッシュペーパー製品を形成するステップによってさらに特徴付けられる、請求項2~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月1日出願の米国仮特許出願第62/357,452号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本発明は、セルロースナノフィラメントを含むティッシュまたはタオルペーパーウェブ製品を製造するためのプロセス、より詳細にはセルロースナノフィラメントをティッシュまたはタオルペーパーウェブ製品に組み込むためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ティッシュペーパー、ペーパータオル、トイレットペーパー、ナプキンおよび他の同様の製品などのティッシュおよびタオル製品は、いくつかの重要な特性を含むように設計されている。例えば、製品は、良好な嵩、良好な吸収性、柔らかい感触を有するものとし、かつ良好な紙力および耐久性を有するものとする。残念ながら、製品の1つの特性を向上させるためのステップを講じると、製品の他の特徴が多くの場合悪影響を受ける。
【0004】
配合者は長年、ペーパー構造体中の針葉樹繊維の高レベルのバランスを取り、これらの構造体の適切な紙力を確保するように試みると同時に、一般に高レベルの針葉樹繊維から生じる柔らかさ、耐久性または吸収性への負の影響を最小限に抑えるようにした。問題の一例は、トイレットペーパー製品の配合業者が、許容できる繊維状構造体、例えば、所望のレベルの紙力および/もしくは信頼性を達成するために(製造および/もしくは加工中のシート破損を回避するために)、針葉樹繊維の過度の叩解かつ/または過度の化学増強剤の添加を必要とせず、通気乾燥(「TAD」)プロセスによって製造される、乾燥繊維を基準として、20重量%未満の針葉樹繊維を有する多密度構造体を確実に製造することができなかったことである。
【0005】
同様に、ペーパータオル製品の場合、配合業者は、より低いまたは等しい乾燥紙力でより高い使用紙力を有する新製品を開発するように努力している。しかし、配合業者が製品の使用紙力または湿潤紙力を増大させるために典型的な製紙プロセスの変数を使用する場合、吸収性および/または柔らかさなどの、消費者が所望する他の属性は典型的に低下する。配合業者が、ペーパータオルの加工のために取り組んでいる典型的な問題は、タオルの柔らかさおよび/もしくは吸収性を維持または改善しながらも、使用紙力もしくは湿潤紙力を向上させる方法、または製品全体の紙力および/もしくはシートの柔らかさを維持しながらも針葉樹の含有を減少させる方法である。紙力を増大させるために製紙業者が利用可能な通常の製紙プロセスの変数はすべて、通常、シートの感触および製品の吸収性に負の影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
したがって、多くの柔らかさ、吸収性および製紙の信頼性を犠牲にすることなく湿潤および乾燥紙力を増大させるティッシュおよびタオル製品の物理的製品性能をさらに最適化する新しい繊維紙構造体に対する必要性が依然として存在する。このような構造体は、多密度製紙構造体にとって特に有用であり、通気乾燥されたこのような構造体の非限定的な例がFabric Crepe.NTT、ATMOSおよびUCTADプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吸収性タオルペーパーウェブを製造するためのプロセスであって、(a)製紙用完成紙料を提供するステップであって、i)ティッシュタオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約45重量%~約90重量%の叩解針葉樹パルプ繊維混合物であって、u.)吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約20.0重量%~約88.5重量%の針葉樹パルプ繊維であって、混合物に添加される前に任意により叩解される、針葉樹パルプ繊維、v.)吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約5.0重量%の紙力増強添加剤を含む叩解針葉樹パルプ繊維混合物と、ii)吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約10重量%~約55重量%の広葉樹パルプ繊維混合物であって、y.)吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約9.9重量%~約54.9重量%の広葉樹パルプ繊維、およびz.)吸収性タオルペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20.0重量%のセルロースナノフィラメントを含む広葉樹パルプ繊維混合物と、iii)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%のフィブリル化人工セルロースと、iv)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%の非木材天然繊維と、v)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%の非セルロース系繊維とを含む、製紙用完成紙料を提供するステップと、(b)製紙用完成紙料から湿潤繊維ウェブを形成するステップと、(c)ウェブが約10重量%以下の水分を含むまでウェブを乾燥させるステップとを含む、プロセスに関する。
【0008】
本発明はまた、柔らかい衛生ティッシュペーパーウェブを製造するためのプロセスであって、(a)製紙用完成紙料を提供するステップであって、i)製紙用バージン完成紙料の約2重量%~約56.5重量%の叩解針葉樹パルプ繊維混合物であって、u.)ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、約0重量%~約56.4重量%の針葉樹パルプ繊維であって、混合物に添加される前に任意により叩解される、針葉樹パルプ繊維、v.)ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約3.0重量%の紙力増強添加剤を含む叩解針葉樹パルプ繊維混合物と、ii)ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、約43.5重量%~約99.9重量%の広葉樹パルプ繊維混合物であって、y.)ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、約43.4重量%~約99.8重量%の広葉樹パルプ繊維、およびz.)ティッシュペーパーの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20.0重量%のセルロースナノフィラメントを含む広葉樹パルプ繊維混合物と、iii)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%のフィブリル化人工セルロースと、iv)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%の非木材天然繊維と、v)任意により、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、最大で約20重量%の非セルロース系繊維とを含む、製紙用完成紙料を提供するステップと、(b)製紙用完成紙料から湿潤繊維ウェブを形成するステップと、(c)ウェブが約10重量%以下の水分を含むまでウェブを乾燥させるステップとを含む、プロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示において使用するための吸収性通気乾燥ティッシュウェブ製品を製造するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、吸収性ティッシュペーパーウェブまたはタオルペーパーウェブを製造するためのプロセスに関する。本発明のプロセスは、天然および/または人工繊維、ならびにセルロースフィラメントを含む、繊維構造体を製造し、これにより、抄紙機の運転性能、シートの紙力および/または他の所望のシート属性に負の影響を及ぼすことなく、向上された特性および/または針葉樹含有量を大幅に減少させる能力が可能になる。より具体的には、本発明は、針葉樹および広葉樹の天然及び/又は人工(再生セルロース)繊維を含む繊維構造体を製造するプロセスに関し、これにより、セルロースナノフィラメントは、シートの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20.0重量%の範囲で広葉樹ストリームに添加される。本発明は、針葉樹ストリーム、広葉樹ストリーム、およびセルロースナノフィラメントを別々に添加する、繊維構造体を製造するためのプロセスにも関する。
【0011】
非層状製品の場合、この混合水性広葉樹ストリームは、他の天然繊維ストリーム、合成繊維ストリームおよび他の人工(再生セルロース)繊維材料などの他の水性ストリームと混合され、ペーパーウェブを製造するために抄紙機に供給される。あるいは、層状製品の場合、広葉樹繊維/セルロースフィラメントストリームは、針葉樹またはシートの表面層から分離しているヘッドボックスの1つ以上の層に供給される。次いで、形成された水性繊維シートをペーパーウェブの製造のために抄紙機上で脱水し、乾燥させる。
本発明の詳細な説明-定義
【0012】
本明細書で使用されるとき、「ペーパー製品」とは、伝統的には、セルロース繊維を含むが、必ずしもそうとは限らない、任意の形成された繊維構造体製品を指す。一実施形態では、本発明のペーパー製品は、吸収性タオル製品を含む。代替的実施形態では、本発明のペーパー製品は、柔らかい衛生ティッシュ製品を含む。
【0013】
本開示のペーパー製品は、ペーパーティッシュ製品またはペーパータオル製品を含むペーパー製品を指す。開示されたペーパー技術は、一般に、限定されないが、従来のフェルトプレスティッシュペーパーまたは従来の湿式プレスティッシュペーパー、パターン高密度ティッシュペーパー、湿式クレープティッシュペーパー製品、クレープ加工または非クレープ加工の通気乾燥ティッシュペーパー製品が挙げられる。例えば、本開示の製紙プロセスは、接着剤クレーピング、湿式クレーピング、二重クレーピング、エンボス加工、湿式加圧、空気圧縮、通気乾燥、クレープ通気乾燥、非クレープ通気乾燥、ならびにペーパーウェブを形成するにあたっての他のステップも利用することができる。このような技術のいくつかの例は、米国特許第4,529,480号、同第5,048,589号、同第5,399,412号、同第5,129,988号、同第5,494,554号、同第5,607,551号、同第6,398,916号、同第7,744,726号、および同第8,388,803号に開示されている。多プライティッシュ製品を形成するとき、別々のプライは、所望により、同じプロセスからまたは異なるプロセスから製造することができる。例えば、一実施形態では、ティッシュウェブまたはタオルウェブは、当技術分野で公知のプロセスを使用して形成された通気乾燥ウェブをクレープ加工されてもよい。
【0014】
このようなウェブを形成するために、ロールによって好適に支持され、かつ駆動されるエンドレスの走行成形布が、ヘッドボックスから出てくる層状または非層状のペーパー製造原料を受け取る。真空ボックスは、成形布の下に配置され、繊維完成紙料から水を除去して、ウェブの形成を補助するように適合されている。形成ウェブは、形成ワイヤ/布から、真空アシストを用いるか、または機械的手段によって、第2の布に移送され、この第2のテンプレートは、このテンプレートの構造において、所望のトポグラフィが形成される限り、ワイヤ、フェルト、または織布のいずれであってもよい。局所的な坪量がより高い複数の繊維富化領域が、局所的な坪量がより低い複数の領域と相互接続されている製紙構造体を作り出すシート形成テンプレートの使用。布は、複数のガイドロールによって連続経路の周りを移動するように支持されている。布間のウェブの移送を容易にするように設計されたピックアップロールが、ウェブを移送するために含まれてもよい。
【0015】
好ましくは、形成されたウェブは、好ましくは形成されたウェブを通して加熱された空気を吹き付けることによって、次いでヤンキードライヤーなどの回転式加熱ドライヤードラムの表面に移送することによって乾燥される。乾燥シリンダは、任意により、樹脂接着剤コーティング組成物の下に樹脂保護コーティング層を備える。樹脂接着剤コーティング組成物は、好ましくは再湿潤性である。このプロセスは、乾燥中にウェブを固定するためにウェブを乾燥循環に移送する際に、十分な湿潤粘着力を提供するように接着剤コーティングが維持されるように操作される。接着剤樹脂コーティング組成物はまた、乾燥時に接着剤コーティング組成物がしなやかになるように維持され、乾燥が達成されたときにシートに大きな損傷を与えることなく、ウェブを乾燥シリンダから取り外すことができる。ウェブは、乾燥布がトポグラフィを有する場合、通気乾燥布から直接ヤンキーに移送されるか、または、好ましくは、その後ヤンキードライヤーにウェブを移送するために使用されるインプレッション布に移してもよい。その後、ウェブはクレーピングブレードによってドライヤードラムから取り除かれる。ウェブのクレーピングは、ウェブ内の内部結合をさらに減少させ、かつ柔らかさおよび吸収性を増加させる。
【0016】
他の実施形態では、ベースウェブは、非クレープ加工通気乾燥プロセスによって形成される。関連する非クレープ加工通気乾燥ティッシュプロセスは、例えば、米国特許第5,656,132号および同第6,017,417号に記載されている。
【0017】
本発明による繊維構造体は、米国特許第3,301,746号、同第3,974,025号、同第4,191,609号、同第4,637,859号、同第6,398,906号、および同第8,388,803号に例示されているように、当該技術分野において周知の通気乾燥繊維構造体、密度差のある繊維構造体、坪量差のある繊維構造体、ウェットレイド繊維構造体、エアレイド繊維構造体、クレープ加工または非クレープ加工繊維構造体、パターン緻密化または非パターン緻密化繊維構造体、圧縮または非圧縮繊維構造体、ダブルリクレープ繊維構造体の形態であり得る。
【0018】
本明細書で使用されるとき、語句「製紙用完成紙料」は、セルロース系または非セルロース系繊維のいずれかの水性混合物、製紙機能助剤(紙力、吸収性または柔らかさの向上)、増量剤および製紙ウェブを形成するために使用される他の製紙プロセス材料を指す。
【0019】
本明細書で使用されるとき、語句「乾燥繊維を基準とした重量パーセント(%)」は、製紙ウェブから全ての水および他の揮発性材料が除去された、完全に乾燥した「絶乾」繊維および他の材料に対して言及される関連材料の百分率を指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「繊維」は、見かけの直径を大きく超える見かけの長さ、すなわち少なくとも約10~200未満である長さ対直径の比を有する細長い物理的構造体を意味する。非円形断面および/または管状形状を有する繊維が一般的であり、この場合の「直径」は、繊維の断面積に等しい断面積を有する円の直径であると考えられ得る。より具体的には、本明細書で使用されるとき、「繊維」とは、繊維状構造体形成繊維を指す。本発明は、例えば、セルロースナノフィラメントおよび/または木材パルプ繊維などの天然繊維、非木材繊維または任意の好適な繊維、およびこれらの任意の組み合わせなどの様々な繊維状構造体形成繊維の使用を企図する。
【0021】
多くの場合木材パルプと呼ばれる木材繊維は、クラフト(硫酸塩)、亜硫酸塩、ポリスルフィド、ソーダパルプ化などを含む、当業者が熟知している複数の化学パルプ化法のうちのいずれか1つによってそれらの源から遊離される。さらに、繊維は、機械的および半化学的プロセスを使用して、それらの供給源から遊離され得、例えば、ラウンドウッド、サーモメカニカルパルプ、ケモメカニカルパルプ(CMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、アルカリ性過酸化物メカニカルパルプ(APMP)、中性セミケミカル亜硫酸パルプ(NSCS)なども企図される。パルプは、所望の場合、二酸化塩素、酸素、過酸化アルカリなどの使用など、当業者が熟知しているプロセスのうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせによって白色化することができる。しかし、化学パルプは、優れた触感および/または所望のティッシュシート特性を付与するため、好ましいと考えられる。落葉樹(以下、「広葉樹」と称する)および針葉樹(coniferous tree)(以下、「針葉樹(softwood)」と称する)の両方に由来するパルプが利用されてもよく、かつ/または繊維は、非木質植物、ならびに人工繊維由来であってもよい。広葉樹、針葉樹、および/または非木材繊維をブレンドすることができ、代替的には積層および/または層状ウェブをもたらすために層状に堆積させることができる。米国特許第4,300,981号および同第3,994,771号は、針葉樹および広葉樹繊維の層化について開示している。また、本発明に適用可能なのは、再生紙由来の繊維、ならびに元の製紙および紙加工を容易にするために使用される接着剤などの他の非繊維材料である。
【0022】
木材パルプ繊維は、短くても(典型的には広葉樹繊維)、長くても(典型的には針葉樹繊維およびいくつかの非木材繊維)よい。クラフト法から誘導され、より北部の気候に由来する針葉樹繊維が好ましい場合がある。これらは、多くの場合北部漂白針葉樹クラフト(NBSK)パルプと称される。針葉樹は典型的には、所望の製品および製品の特徴に応じて様々なレベルでペーパーウェブに含まれる。例えば、配合業者は、タオル製品の乾燥繊維を基準として、約20重量%~約89.9重量%、好ましくは約30重量%~約70重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の量で、針葉樹繊維を吸収性タオル製品に含む。さらに、配合業者は、ティッシュ製品の乾燥繊維を基準として、56.4重量%未満、好ましくは約2重量%~約45重量%、より好ましくは約10重量%~約35重量%、さらにより好ましくは約20重量%~約30重量%の量で、針葉樹繊維を柔らかい衛生ティッシュ製品に含む。
【0023】
広葉樹短繊維の非限定的な例としては、アカシア、ユーカリ、カエデ、オーク、アスペン、カバノキ、ハコヤナギ、ハンノキ、アッシュ、チェリー、ニレ、ヒッコリー、ポプラ、ガム、クルミ、バッタ、スズカケノキ、ブナ、キササゲ、サッサフラス、グメリン、ネムノキ、およびモクレンからなる群から選択される繊維源に由来する繊維が挙げられる。針葉樹繊維の非限定的例としては、パイン、スプルース、モミ、タマラック、ヘムロック、サイプレス、およびシダーから取り出された繊維が挙げられる。配合業者は、タオル製品の乾燥繊維を基準として、約10重量%~約55重量%、好ましくは約20重量%~約50重量%、より好ましくは約30重量%~約40重量%の量で、広葉樹繊維を吸収性タオル製品に含むことができる。さらに、配合業者は、ティッシュ製品の乾燥繊維を基準として、約43.5重量%~約99.9重量%、好ましくは約50重量%~約80重量%、より好ましくは約60重量%~約70重量%の量で、広葉樹繊維を柔らかい衛生ティッシュ製品に含む。
【0024】
本発明の範囲内で企図される別の製紙材料は、米国特許第8298374号に教示されているように微細藻類を含めることである。ティッシュおよびタオルの場合、微細藻類は、海洋または淡水の微細藻類であってもよい。微細藻類は、非運動性単細胞藻類、鞭毛藻類、珪藻類および藍藻類から選択され得るが、これらに限定されない。微細藻類は、シオヒゲムシ、クロレラ、テトラセルミス、ボトリコッカス、ヘマトコッカス、フェオダクチラム、スケレトネマ、キートセロス、イソクリシス、ナンノクロロプシス、ナンノクロリス、パブロバ、ニッチア、プレウロクリシス、クラミドーマ(Chlamydomas)、またはシネコシスティスのファミリーから選択され得るが、これらに限定されない。微細藻類は、望ましくは最長寸法で約500μm未満、好ましくは300μm未満、さらにより好ましくは200μm未満のサイズを有する。セルロースナノフィラメントの高い保持特性に加えて、小さいサイズの微細藻類は、独特の相乗効果および製紙用途/構造体を作り出す。
【0025】
再生繊維は、任意の量で完成紙料に加えてもよい。任意の好適な再生繊維を使用することができるが、多くの場合、比較的低量の砕木を有する再生繊維が好ましく、例えば、用いられる完成紙料混合物およびその用途に応じて、15重量%未満のリグニン含有量、または10重量%未満のリグニン含有量を有する再生繊維が好ましい場合がある。
【0026】
おそらくペーパー製品に使用され、本発明で企図される「フィブリル化人工非セルロース系繊維」は、当業者に公知である複数の溶媒を介して調製されたセルロースドープを使用することによって形成される。このドープは、使用することができるか、またはさらにフィブリル化して吸収シートに組み込むことができる繊維に紡糸される。理論に限定されるものではないが、リヨセルなどの合成セルロースは、叩解および他の方法によってサイズが縮小された改質リヨセルと共に、より小さい繊維および繊維セグメントを作り出すために考慮される。米国特許第7,718,036号は、様々な検討されている溶媒と、ティッシュおよびタオル構造体中にフィブリル化されたルズル(losel)を含むこととを示している。フィブリル化された人工非セルロース系繊維は、タオルまたはティッシュペーパーウェブに、最大で約20%の量まで、好ましくは最大で約10%の量まで、より好ましくは最大で約5%の量まで、より好ましくは最大で約2.5%の量まで、任意により含まれてもよい。
【0027】
「非木材、天然繊維」構造形成繊維もまた、本発明において有用であり得、かつ動物繊維、鉱物繊維、植物繊維、人工紡糸繊維、およびセルロースナノフィラメントなどの加工繊維要素を含んでもよい。動物繊維は、例えば、羊毛、絹、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。植物繊維は、例えば、木材、綿、コットンリンター、亜麻、サイザル麻、アバカ、大麻、ヘスペラロエ、黄麻、竹、バガス、エスパルトグラス、藁、黄麻、大麻、トウワタフロス、クズ、トウモロコシ、モロコシ、ヒョウタン、アガベ、毛状体、ヘチマおよびこれらの混合物からなる群から選択される植物に由来し得る。非木材天然繊維は、タオルまたはティッシュペーパーウェブに、最大で約20%の量まで、好ましくは最大で約10%の量まで、より好ましくは最大で約5%の量まで、より好ましくは最大で約2.5%の量まで、任意により含まれてもよい。
【0028】
本開示はまた、ペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、より高量の、非木材天然繊維、例えば約10%超、好ましくは約20%超、より好ましくは約50%超、さらにより好ましくは約75重量%超の非木材繊維からなる本発明のプロセスから製造されるペーパーウェブ製品を企図する。結果として、ペーパーウェブは、ウェブを効率的に製造し、かつ消費者製品の要求を満たすために、他の繊維成分および/または必要な化学製品と混合された主に非木材繊維から構成することができる。企図された非木材繊維は、所望の製品を得るために、短い9、すなわち約1.2ミリメートル未満の長さ)または長い(すなわち、1.2ミリメートル超の長さ)のいずれであってもよく、又は異なる長さの繊維を組み合わせて使用してもよい。これらの構造体では、セルロースナノフィラメントは、目的とする製品特性を達成するために所望のとおり長繊維または短繊維セグメントのいずれかに添加することができる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、語句「非セルロース系繊維」は、セルロース以外の材料から構成される天然繊維または人工繊維のいずれかから構成される製紙用繊維の群を意味する。非セルロース系繊維としては、人工紡糸繊維、動物源由来の繊維、および/または微細藻類が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明の製品を形成する繊維は、メルトブローおよび/または紡糸結合などの好適な紡糸操作によってポリマー溶融組成物から紡糸することができ、かつ/またはそれらは天然源から得ることができる。このような繊維は、一成分および/または多成分であり得る。例えば、繊維状要素は、二成分繊維および/またはフィラメントを含み得る。二成分繊維および/またはフィラメントは、並列、コアおよびシース、海島型などの任意の形態であり得る。フィラメントの非限定的な例としては、メルトブローフィラメントおよび/またはスパンボンドフィラメントが挙げられる。フィラメントに紡糸することができるポリマーの非限定的な例としては、デンプンなどの天然ポリマー、デンプン誘導体、レーヨンおよび/またはリヨセルなどのセルロース、ならびにセルロース誘導体、ヘミセルロース、ヘミセルロース誘導体、およびこれらに限定されないが、ポリエステル、ナイロンなどの熱可塑性ポリマーフィラメント、ポリプロピレンフィラメントなどのポリオレフィン、ポリエチレンフィラメント、およびポリ乳酸フィラメント、ポリヒドロキシアルカノエートフィラメント、ポリエステルアミドフィラメントおよびポリカプロラクトンフィラメントなどの生分解性熱可塑性繊維などの合成ポリマーが挙げられる。繊維の非限定的な例としては、木材パルプ繊維などのパルプ繊維、ならびにポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、それらのコポリマー、レーヨン、ガラス繊維およびポリビニルアルコール繊維などの合成ステープルファイバーが挙げられる。ステープルファイバーは、フィラメントトウを紡糸し、次いでその2つを5.08cm(2インチ)未満のセグメントに切断して繊維を製造することによって製造することができる。非セルロース系繊維は、タオルまたはティッシュペーパーウェブに、最大で約20%の量まで、好ましくは最大で約10%の量まで、より好ましくは最大で約5%の量まで、より好ましくは最大で約2.5%の量まで、任意により含まれてもよい。
【0030】
「合成ポリマー繊維」および同様の用語はまた、ポリエステル、ナイロンおよびポリオレフィンなどの合成ポリマーから作られた非セルロース系繊維も指す。ポリエステルは一般に、脂肪族または芳香族ジカルボン酸と、飽和脂肪族または芳香族ジオールとから、既知の重合技術によって得られる。好ましい芳香族二酸モノマーは、テレフタル酸またはイソフタル酸のジメチルエステルなどの低級アルキルエステルである。典型的な脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。好ましい芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステルもしくは無水物は、エステル化されるか、またはエステル交換され、飽和脂肪族もしくは芳香族ジオールと重縮合される。典型的な飽和脂肪族ジオールとしては、好ましくは、エチレングリコールなどの低級アルカンジオールが挙げられる。典型的な脂環式ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。典型的な芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシノールおよびナフタレンジオールの異性体(1,5-、2,6-、および2,7-)などの芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族および芳香族ジカルボン酸と飽和脂肪族および芳香族ジオールとの種々の混合物もまた使用してもよい。最も典型的には、芳香族ジカルボン酸を脂肪族ジオールと重合させて、ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸+エチレングリコール)などのポリエステルを製造する。さらに、芳香族ジカルボン酸を芳香族ジオールと重合させて、ポリフェニレンテレフタレート(テレフタル酸+ヒドロキノン)などの全芳香族ポリエステルを製造することができる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート;ポリ(1,4-ブチレン)テレフタレート;1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、およびイソフタル酸、ビ安息香酸などの、芳香族ジカルボン酸から誘導された他の直鎖ホモポリマーエステル(ナフタレンジカルボン酸(1,5-、2,6-、および2,7-ナフタレン-ジカルボン酸、4,4,-ジフェニレン-ジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸、エチレン-ビス-p-安息香酸、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香)酸、エチレンビス(p-テトラメチレン酸;1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香)酸;および1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香)酸など)、および一般式HO(CH2)OH(式中、nは2から10までの整数である)の2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび脂肪族グリコールからなる群から選択されるジオール、例えば、エチレングリコール;1,4-テトラメチレングリコール;1,6-ヘキサメチレングリコール;1,8-オクタメチレングリコール;1,10-デカメチレングリコール;および1,3-プロピレングリコール;一般式HO(CH2CH2O)H(式中、nは2から10,000までの整数である)のポリエチレングリコール、およびハイドロキノンレゾルシノール、ナフタレンジオールの異性体(1,5-;2,6-;および2,7)などの芳香族ジオールが挙げられる。アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの1種以上の脂肪族ジカルボン酸も存在し得る。
【0031】
好適なポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1,4-メチルペンタ-1-エンなどのオレフィンを従来の様式で重合することによって製造された材料が挙げられる。繊維用の有用なポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)およびポリプロピレンである。他のポリオレフィンのホモポリマーおよびエチレンのコポリマーが、本発明の実施において利用することができる。このような他のポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリブチレン(PB)が挙げられる。しかし、これらの他のポリオレフィンは、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレン(HDPE)などの他のポリオレフィンとブレンドされてもよい。
【0032】
本発明の実施に有用なナイロンまたはポリアミド樹脂は、当技術分野において周知であり、半結晶性および非晶性樹脂が挙げられる。これらは、例えば、4~12個の炭素原子を含有する等モル量の飽和ジカルボン酸の、ジアミンとの縮合重合により、ラクタムの開環重合により、または他の成分とのポリアミドの共重合により、製造され得、例えばポリエーテルポリアミドブロックコポリマーを形成する。ポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ナイロン612)、ポリドデカメチレンドデカノアミド(ナイロン1212)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリラウリンラクタム、ポリ-11-アミノウンデカン酸、ならびにアジピン酸、イソフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンのコポリマーが挙げられる。
【0033】
合成ポリマー繊維は、セルロースと比較して一般的に疎水性であり、湿潤紙力増強樹脂に結合するためのアニオン部位、またはパルプ由来繊維に効果的に水素結合するのに十分なヒドロキシル基を欠いている。本発明に関連して使用される好適な繊維は、溶融紡糸繊維、メルトブロー繊維、複数のセグメントを有するスプリット繊維、特にディスクリファイナーで叩解することによってそれらのセグメントに分割可能な分割複合繊維を含む。Fiber Innovation Technologyから入手可能な1つの好適な繊維は、後述する0.125デニールの特徴的繊度を有する16セグメント、2デニールのナイロン/ポリエステル複合繊維である。
【0034】
分割可能な繊維を製造するためのセグメント化繊維の調製は、熱可塑性繊維に関して一般に公知であり、繊維は異なるポリマーから形成されたセグメントを有する。例えば、米国特許第5,759,926号(Pikeら)、ならびに米国特許第5,895,710号(Sasseら)、および米国特許出願公開第2003/0203695号(Polancoら)(米国特許出願第10/135,650号)を参照されたい。
【0035】
本発明に関連して製造され、かつ利用される分割可能な繊維は、セグメント化されたパイ形状、海島型の構成、並列の構成、中空の構成などを有してもよい。米国特許第4,735,849号(Murakamiら)の図6A図6D、ならびに米国特許出願公開第2002/0168912号(米国特許出願第09/852,888号)図2図9を参照されたい。分割可能な繊維は、後述するように完成紙料に組み込む前に好適に砕解される。
【0036】
製紙操作のための繊維の調製中に、針葉樹繊維パルプおよびいくつかの広葉樹繊維パルプは、機械的または化学的処理を受け、これにより繊維は圧縮されるか、高剪断を受けるか、かつ/または化学的処理されるかのいずれかであり、繊維をより柔軟にし、かつ、繊維のフィブリル化、繊維の膨潤および繊維の柔軟性の向上により、増大した繊維対繊維の結合領域を作り出す。当業者は、パルプ繊維を叩解している、以下の3つの主な製品があることを認識するであろう。1)叩解強度および濃度に依存して、ある割合の繊維が全く影響を受けていない、2)かなりの割合の繊維がフィブリル化され、これによって繊維細胞壁が剥離し、依然として元の繊維に結合しているミクロフィブリルが露出されている、3)ある割合の繊維およびミクロフィブリルが、非常に小さい片(長さ<200ミクロン)に切断されるか、または機械的に破砕され、この画分は微粉画分と呼ばれる。これらの微粉は、一次的(天然木材源に存在するもの)または二次的(精製の処置の間に作り出されたもの)のいずれかであり得る。発見されたことは、叩解強度、濃度および他の加工条件を変えることによって、本明細書で「セルロースナノフィラメント」と呼ばれる新しい繊維構成要素を作り出すことができることである。加工段階およびユニット操作を最適化することにより、40%を超える個別化セルロースナノフィラメントを含む合成パルプ繊維ストリームを製造することができる。
【0037】
本発明で使用される「セルロースナノフィラメント」は、針葉樹および/または広葉樹のいずれかから誘導することができ、そのため、針葉樹または広葉樹の繊維状要素を含み得る。セルロースナノフィラメントは、製紙用完成紙料の叩解パルプ繊維混合物に加えて、吸収性タオルまたは柔らかい衛生ティッシュを製造するプロセスにおいて使用される。セルロースナノフィラメントは、所望のペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20.0重量%、好ましくは約0.1重量%~約10.0重量%、より好ましくは約0.2重量%~約5重量%、さらにより好ましくは約0.5~約2重量%の量で添加される。
【0038】
本発明で企図されるプロセスでは、セルロースナノフィラメントは、好ましくは、針葉樹パルプ繊維および紙力増強添加剤と共に、叩解針葉樹パルプ繊維混合物に添加される。一実施形態では、セルロースナノフィラメントは、紙力増強添加剤の前に針葉樹パルプ繊維混合物に添加される。別の実施形態では、セルロースナノフィラメントは、紙力増強添加剤の後に針葉樹パルプ繊維混合物に添加される。
【0039】
セルロースナノフィラメントのサイズおよび高アスペクト比により、この材料は独特の繊維クラスとして区別されており、針葉樹または広葉樹材料のいずれとしても特徴付けられていない。高アスペクト比とは、少なくとも200~約5000、好ましくは約600~約1000より大きい繊維長を繊維幅で割った値を意味する。セルロースナノフィラメントは、ナノメートル範囲の平均幅、例えば約30nm~約500nmの平均幅、およびマイクロメートル範囲以上の平均長、例えば約100μm、好ましくは約200μm~約2mmの平均長さを有する。セルロースナノフィラメントは、約20nm~約60nm、好ましくは約30nm~約50nm、より好ましくは約35nm~約45nmの平均厚さを有する。このようなセルロースナノフィラメントは、例えば、機械的手段のみを使用するプロセス、例えば、2012年1月19日出願の米国特許出願公開第2013/0017394号に開示されている方法から得ることができる。さらに、セルロースナノフィラメントは、特定の幾何学的形状が維持される限り、様々なプロセスから製造することができる。セルロースナノフィラメントを作り出すために使用されるプロセスには、これに限定されるものではないが、改良叩解装置、ホモジナイザー、音波繊維処理、および酵素繊維修飾などの化学繊維処理を挙げられる。
【0040】
論文「Nanocellulose Patent Trends:A Comprehensive Review on Patents on Cellulose Nanocrystals,Microfibrillated and Bacterial Cellulose」(Charreau et al,Nanotechnology,2013 7,56-80)では、著者は、長年にわたり、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)に言及するために様々な用語を検討し、「セルロースナノフィラメント」がこれらの一般的な用語に適合するものとした。本開示の「セルロースナノフィラメント」材料は、具体的には、「Cellulose nanofilaments and method for their production」と題する国際特許出願公開第20130017394(A1)号(Hua,X.,ら)に開示されているプロセスの結果である。このプロセスによって製造された材料は、開示されたプロセスが先に開示された材料よりも著しく高いアスペクト比(長さ/幅)を有するセルロースナノフィラメントを製造するという点で独特である。
【0041】
本発明の基礎となるセルロースナノフィラメントは、木材パルプ繊維を機械的に崩壊するための他の方法を用いて調製されるミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはナノフィブリル化セルロース(NFC)などの他のセルロースフィブリルとは、フィラメントの、少なくとも40重量%、好ましくは75重量%、より好ましくは90重量%のフィブリル化セルロース材料を有し、また、最大で300~350μmのフィラメントの長さ、約100~500nmの直径を有するという点で、構造的に非常に異なる。MFC中のフィブリル化セルロース材料は、典型的には、100μmより短い長さを有するが、NFC中のフィブリル化セルロース材料は、典型的には、1μmより短い長さを有する。しかし、機械的手段を使用して製造される他のフィブリル化セルロース材料などのセルロースナノフィラメント材料の製造においては、単一の寸法値を有する均質材料ではないことが当業者によって認識されているものとする。好ましい実施形態におけるセルロースナノフィラメントは、最大で300~350μmの長さおよび約100~500nmの直径を有し、複数の木材または植物繊維の高濃度叩解によって製造され、そのセルロースナノフィラメントは、50重量%以上であり、最大で300~350μmの長さ、および約100~500nmの直径を有する。最大で300~350μmの長さおよび約100~500nmの直径を有するセルロースナノフィラメント材料の正確な割合は、総エネルギー入力、叩解パス数、叩解強度および他の叩解操作条件に依存する。上記のセルロースナノフィラメント材料、および叩解パルプストリーム中に50%を超えるセルロースナノフィラメントを含む叩解パルプストリームの好ましいブレンドが、本発明の基礎である。
【0042】
本発明において企図されるセルロースナノフィラメントの他の想定される用途は、製紙現場に出荷される前に、純粋なセルロースナノフィラメントおよび/またはセルロースナノフィラメントと他の叩解製品との混合物のいずれかをわずかな割合で、バージンまたは再生パルプストリームに含めることである。このようにしてセルロースナノフィラメントを添加することによって、バージン繊維源を増強することができ、次いで、新しい繊維投入ストリームを導入することなく、セルロースナノフィラメントを製紙プロセスに添加することができる。パルプ生産施設でセルロースナノフィラメントを有するセルロースを投入することによって、セルロースナノフィラメントを含めることによってのみ可能な特徴を有する「スーパーパルプ」と称され得るもの製造することができる。従って、セルロースモノフィラメントを添加するための多くの異なる方法が本発明において考慮され、これらの方法としては、セルロースナノフィラメントと50%超の好ましいナノセルロース含有量を有する他の叩解副産物の混合物を含む、直接的な純粋セルロースナノフィラメントを含めることが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、セルロースナノフィラメントは、製紙工場で含まれる前に、バージン繊維または再生繊維へ含めることにより添加される。
【0043】
本明細書に記載の製紙プロセス、およびそれらのプロセスによって製造されたペーパー製品の代替的実施形態では、ナノフィラメントは、ミクロサイズおよびナノサイズのセルロースフィラメントの乾燥ブレンドにおいて、プロセス、およびこれによりペーパーに渡される。ブレンドは、セルロースナノフィラメント、未処置のフィブリル化繊維およびセルロース系微粉のブレンドを含んでもよい。
【0044】
本明細書で使用されるとき、語句「未処置フィブリル化セルロース繊維」または「未処置フィブリル化繊維」は、個々のまたは束のセルロースフィラメントが繊維本体から遊離されるが、依然として繊維に接合されており、一方の端部では、より多くの結合領域を作り出し、繊維同士の接触を増大させている間に、機械的または化学処理を受けるセルロース繊維である。処理の程度により、繊維から放出されたセルロースナノフィラメントの数を決定する。
【0045】
本明細書で使用されるとき、語句「セルロース微粉」は、約200ミクロン超の長さを有する繊維材料の分類を意味する。これらの材料は、木の中の一次材料、または天然材料を含むことができるか、またはパルプ繊維のパルプ化および/もしくは処置のいずれかによって作り出される二次材料として分類することができ、したがって繊維部分および/またはセルロースナノフィラメント部分を含み得る。微粉は、均質材料ではなく、定義された長さ制限を有する材料の分類を表すためにのみ使用される。
【0046】
ミクロサイズおよびナノサイズのセルロースフィラメントのブレンドが使用される場合、ブレンドは、ブレンドの少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、より好ましくは少なくとも約75重量%のセルロースナノフィラメント、ブレンドの少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約30重量%の未処置のフィブリル化繊維、ブレンドの少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約20重量%のセルロース微粉を含んでもよい。
【0047】
本発明の繊維構造体は、均質であってもよいし、または層状であってもよい。層状である場合、繊維構造体は少なくとも2層および/または少なくとも3層および/または少なくとも4層および/または少なくとも5層を含み得る。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「坪量はlbs/3000ftまたはg/mで報告されたサンプルの単位面積当たりの重量である。本発明の繊維状タオル構造体および/または衛生ティッシュ製品は、10g/m2~約120g/m2、および/または約14g/m2~約80g/m2、および/または約20g/m2~約60g/m2の坪量を呈してもよい。
【0049】
坪量は、ある面積(m)の1つ以上のサンプルを調製し、本発明による繊維構造体のサンプル(複数可)、および/またはそのような繊維構造体を含むペーパー製品を、最小分解能0.01gを有するトップローディング天びんで秤量することによって測定される。天びんは、風防を用いて、気流および他の妨害から保護する。重量は、天びんの読み取り値が一定になったときに、記録される。平均重量(g)およびサンプルの平均面積(m)を算出する。坪量(g/m)は、サンプルの平均重量(g)を平均面積(m)で割ることによって算出される。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「柔らかい衛生ティッシュ製品」は、柔らかい低密度(すなわち、約0.15g/cm3未満)ウェブを意味し、これらは、排尿後及び排便後の洗浄用(トイレットペーパー)、耳鼻咽喉科での排泄物用(ティッシュペーパー)の拭き取り用具、ならびに多機能の吸収剤および洗浄剤(吸収性タオル)としての使用に有用である。本開示に従って調製された衛生ティッシュ製品は、これらに限定されないが、印刷、エンボス加工、カレンダー加工、スリット加工、折り畳み、他の繊維構造体との組み合わせ、および/または巻き取りなど、任意の好適な後処理に供してもよい。
【0051】
本発明の柔らかいティッシュ製品の一例では、繊維構造体は、約2重量%~56.5重量%の叩解針葉樹パルプ繊維混合物を含む。叩解針葉樹繊維混合物は、柔らかいティッシュ製品の乾燥繊維を基準として、約0重量%~約56.4重量%の柔らかい木材パルプを含む。針葉樹パルプは、紙力増強添加剤と組み合わせる前に、任意により叩解されるか、または叩解されない。紙力増強添加剤は、柔らかいティッシュの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約3.0重量%の紙力増強添加剤を製紙用完成紙料に追加することができる様式で、水性ストリームに添加される。本発明のこの実施形態では、次に、針葉樹繊維/紙力増強添加剤ストリームを、柔らかいティッシュ製品の乾燥繊維を基準として、約43.5重量%~約99.9重量%の広葉樹パルプ繊維混合物であって、柔らかいティッシュの乾燥繊維を基準として、約43.4重量%~約99.4重量%の広葉樹パルプ繊維、およびティッシュペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20重量%のセルロースナノフィラメントを含む、広葉樹パルプ繊維混合物とブレンドする。針葉樹パルプ繊維混合物および広葉樹パルプ繊維混合物の各々を作製後、ストリームをブレンドするか、または個々に製紙機に運搬し、上記のプロセスのいずれかによって繊維シートに形成する。本発明の別の実施形態では、針葉樹パルプ繊維混合物ストリームは、製紙システムの別々の層(複数)に供給され、広葉樹パルプ繊維混合物ストリームから分離させる。このプロセス実施形態では、より高い紙力の吸収性ティッシュウェブ製品を製造する。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「吸収性タオル製品」は、柔らかい手触りと共に液体吸収および湿式スクラビングに対する消費者のニーズを満たすように設計され、製造されている製紙製品の分類である。吸収性製品は、衛生ティッシュおよびティッシュペーパーと同じ製紙技術で作られているが、原材料、製紙プロセスの設定、坪量、および他の原材料は、所望する消費者属性となるように最適化される。
【0053】
本発明の吸収性タオル製品を製造するためのプロセスの別の例では、繊維構造体は、約45重量%~90重量%の叩解針葉樹パルプ繊維混合物を含む。針葉樹パルプ繊維混合物は、タオル製品の乾燥繊維を基準として、約20重量%~約88.5重量%の長繊維針葉樹パルプを含み、針葉樹パルプは、紙力増強添加剤と組み合わせる前に、任意により叩解されるか、または叩解されない。紙力増強添加剤は、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約5.0重量%の紙力増強添加剤を製紙用完成紙料に追加することができる様式で、水性ストリームに添加される。本発明のこの実施態様では、次いで、針葉樹繊維およびカチオン性ストリームは、タオル製品の乾燥繊維を基準として、10重量%~55重量%の広葉樹パルプ繊維混合物とブレンドされ、この混合物は、吸収性タオルの乾燥繊維を基準として、約9.9重量%~約54.9重量%の広葉樹パルプ繊維、およびティッシュペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約20重量%のセルロースナノフィラメントを含む。針葉樹パルプ繊維混合物および広葉樹パルプ繊維混合物の各々を作製後、ストリームをブレンドするか、または個々に製紙機に運搬し、上記のプロセスのいずれかによって繊維シートに形成する。本発明の別の実施形態では、針葉樹パルプ繊維混合物ストリームは、製紙システムの別々の層(複数)に供給され、広葉樹パルプ繊維混合物ストリームから分離させる。このプロセス実施形態では、より高い紙力の吸収性ティッシュウェブ製品を製造する。
【0054】
増強添加剤-本願のプロセスは、紙力増強添加剤を製紙用完成紙料に添加することも含む。一般に、紙力増強添加剤は、ウェブの所望の特徴に応じて、様々な量で適用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、添加される全湿潤紙力増強剤は、約0.5~50kg/Tであり得、いくつかの実施形態では、2~約15kg/T、いくつかの実施形態では、約3~約5kg/Tであり得る。紙力ポリマーは、多層ティッシュウェブの任意の層に組み込むことができる。
【0055】
本発明において有用な紙力増強添加剤としては、これらに限定されないが、カチオン性水溶性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、ペーパーシートに湿潤紙力を付与するものであり、これらは、製紙技術において周知である。こうした樹脂としては、ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ジアルデヒドデンプン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ティッシュ製品の紙力をさらに向上させるために、他の紙力増強剤を利用してもよい。本明細書で使用されるとき、「湿潤紙力増強剤」は、パルプ繊維に添加されたときに、結果として、約0.1を超える湿潤幾何学的引張紙力対乾燥幾何学的引張紙力の比を有するウェブまたはシートをもたらすことができる任意の材料である。典型的には、これらは「永久的」湿潤紙力増強剤または「一時的」湿潤紙力増強剤のいずれかと呼ばれる。当技術分野において周知であるように、一時的および永久的湿潤紙力増強剤はまた、乾燥時のティッシュ製品の紙力を向上するための乾燥紙力増強剤としても機能し得る場合がある。任意の化学成分の列挙は、本質的に例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。他の材料も、それらが本発明の利点を妨げないまたは打ち消さない限り含まれてもよい。
【0057】
湿潤紙力増強剤は、ウェブの所望の特徴に応じて様々な量で塗布することができる。例えば、いくつかの実施形態では、添加される全湿潤紙力増強剤は、約0.5~50kg/T、いくつかの実施形態では2~約15kg/T、およびいくつかの実施形態では、約3~約5kg/Tの紙力増強剤を、多層ティッシュウェブの任意の層に組み込むことができる。本発明において有用なカチオン性湿潤紙力増強樹脂としては、これらに限定されないが、カチオン性水溶性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、ペーパーシートに湿潤紙力を付与するものであり、これらは、製紙技術において周知である。この樹脂は、繊維シートに対して、一時的であるか、または永久的である、いずれかの湿潤紙力を付与し得る。こうした樹脂としては、ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ジアルデヒドデンプン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
紙力増強添加剤は、永久的湿潤紙力増強樹脂、一時的湿潤紙力増強樹脂、乾燥紙力増強添加剤、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。永久的湿潤紙力が望まれる場合、化学的製紙添加剤は、次の群の化学物質から選択され得る:ポリアミドピクロロヒドリン(polyamidpichlorohydrin)、ポリアクリルアミド、不溶化ポリビニルアルコール、尿素ホルムアルデヒド(ureaormaldehyde)、ポリエチレンイミン、およびキトサンポリマー。ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂は、特に有用であることが分かっているカチオン性湿潤紙力増強樹脂である。このような樹脂の好適な種類は、1972年10月24日発行の米国特許第3,700,623号、および1973年11月13日発行の米国特許第3,772,076号(両方ともKeim)に記載されている。有用なポリアミドエピクロロヒドリン樹脂の1つの商業的供給源は、Hercules,Inc(Wilmington,Del.)であり、このような樹脂をKYMENE(登録商標)557Hの商標で販売している。
【0059】
また、ポリアクリルアミド樹脂も、湿潤紙力増強樹脂として有用であることがわかった。これらの樹脂は、1971年1月19日にCosciaらに発行された米国特許第3,556,932号、および1971年1月19日にWilliamsらに発行された米国特許第3,556,933号に記載されている。ポリアクリルアミド樹脂の1つの商業的供給源は、American Cyanamid Co.(Stanford,Conn.)であり、このような樹脂をPAREZ(登録商標)631NCの商標で販売している。
【0060】
本発明において有用性が見出されているさらに他の水溶性カチオン樹脂は、尿素ホルムアルデヒド樹脂およびメラミンホルムアルデヒド樹脂である。これらの多官能樹脂のより一般的な官能基は、窒素に付着したアミノ基およびメチロール基などの窒素含有基である。ポリエチレンイミン型樹脂も、本発明において有用性を見出すことができる。
【0061】
一時的な湿潤紙力が所望される場合、化学的製紙添加剤は、以下の化学物質群から選択され得る:カチオン性ジアルデヒドデンプン系樹脂(Caldas(Japan Carlet製)、National Starch 78-0080またはCobond 1000(いずれもNational Starch and Chemical Corporation製))およびジアルデヒドデンプン。修飾デンプン一時的湿潤紙力増強樹脂もまた、1987年6月23日発行の米国特許第4,675,394号(Solarekら)に記載されている。好ましい一時的湿潤紙力増強樹脂としては、1991年1月1日発行の米国特許第4,981,557号(Bjorkquist)に記載されているものが挙げられる。好ましい一時的湿潤紙力増強樹脂の別の例は、CyTecによって製造されている市販の変性ポリアクリルアミド樹脂であるPAREZ(登録商標)750Bである。乾燥紙力が所望される場合、化学的製紙添加剤は、以下の群の化学物質から選択することができる。ポリアクリルアミド(例えば、Cypro514とACCOSTRENGTH711との組み合わせ(American Cyanamid of Wayne(N.J.)製)、デンプン(コーンデンプン、バレイショデンプンなど)、ポリビニルアルコール(例えば、AIRVOL540(Air Products Inc(Allentown,Pa.)製)など)、グアーまたはローカストビーンガム、および/またはカルボキシメチルセルロース(AQUALON CMC-Tなど(Aqualon Co.,(Wilmington,Del.))。一般に、本発明を実施するのに好適であるデンプンは、水溶性および親水性によって特徴付けられる。例示的デンプン材料としては、コーンデンプンおよびバレイショデンプンが挙げられるが、これによって好適なデンプン材料の範囲を限定することを意図するものではない。工業的にはアミオカデンプンとして公知であるワキシーコーンスターチが特に好ましい。アミオカデンプンは、それが完全にアミロペクチンであるという点で一般的なコーンデンプンとは異なるが、一般的なコーンデンプンは、アンプロペクチン(amplopectin)およびアミロースの両方を含む。アミオカデンプンの様々な独特の特徴は、「Amioca-The Starch From Waxy Corn」1945年12月、106-108頁(Vol.pp.1476-1478)にさらに記載されている。デンプンは、粒状または分散形態であり得るが、粒状形態が好ましい。デンプンは、顆粒の膨潤を引き起こすのに十分に蒸解されていることが好ましい。より好ましくは、デンプン顆粒は、蒸解などによって、デンプン顆粒の分散直前のある時点まで膨潤する。このような高度に膨潤したデンプン顆粒は、「完全に蒸解された」と称されるものとする。分散のための条件は一般に、デンプン顆粒の大きさ、顆粒の結晶化度、および存在するアミロースの量に応じて変化し得る。例えば、完全に蒸解されたアミオカデンプンは、約4%濃度のデンプン顆粒の水性スラリーを約190°F(約88℃)で約30~約40分間加熱することによって調製され得る。使用され得る他の例示的なデンプン材料としては、National Starch and Chemical Company(Bridgewater、NJ)から入手可能な、窒素に付着したアミノ基およびメチロール基などの窒素含有基を有するように修飾されたものなどの修飾カチオンデンプンが挙げられる。このような修飾デンプン材料は、これまで、湿潤紙力および/または乾燥紙力を増大するためのパルプ完成紙料添加剤として主に使用されてきた。しかし、ティッシュペーパーウェブへ適用することにより本発明に従って適用される場合、同じ修飾デンプン材料のウェットエンド添加と比較して、湿潤紙力への影響が減少しているとも考えられる。このような修飾デンプン材料が非修飾デンプンよりも高価であることを考慮すると、非修飾デンプンが一般的に好まれてきた。これらの湿潤および乾燥紙力増強樹脂は、本発明に記載されたプロセスによって添加されることに加えて、パルプ完成紙料に添加されてもよい。パルプ完成紙料への上述の湿潤紙力および一時的湿潤紙力増強樹脂などの化合物の添加は任意であり、本開発の実施には必要ではないことを理解すべきである。
【0062】
本発明のプロセスの好ましい実施態様では、紙力増強添加剤は、製造される吸収性タオルまたは衛生ティッシュ製品の乾燥繊維を基準として、約0.05重量%~約5.0重量%、好ましくは約0.05重量%~約3.0重量%、より好ましくは約0.1重量%~約1.5重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%~約1.5重量%の範囲の量で、完成紙料に添加される。一般に、吸収性タオル製品を製造するプロセスでは、ポリマーが最大で約5.0%まで、好ましくは最大で約3.0%まで、さらに好ましくは最大で約1.5%まで添加される、より高量のポリマーが添加される。逆に、衛生ティッシュ製品を製造するためのプロセスでは、ポリマーが最大で約3.0%まで、好ましくは最大で約1.5%まで添加される場合、わずかに低量の紙力増強ポリマーが添加される。
任意成分-化学製紙用添加剤:
【0063】
所望であれば、柔らかさ、低リント、吸収性、シートの柔軟性、ならびに一時的および/または永久的な湿潤紙力など、消費者の所望の利点をさらに向上するために、様々な化学添加剤組成物が任意により使用されてもよい。化学添加剤は、デボンダ、シリコーン軟化添加剤、非シリコーン軟化添加剤、吸収性添加剤、および審美的添加剤からなる群から選択される。
デボンダ
【0064】
化学的デボンダも、ウェブを柔らかくするために適用することができる。具体的には、化学的デボンダは、ウェブの1つ以上の層内の水素結合の量を減らすことができ、これにより、さらに柔らかい製品となる。得られたティッシュ製品の所望の特徴に応じて、ペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、0重量%~約3.0重量%、好ましくは約0.1~約2.0重量%、より好ましくは約0.5~約1.0重量%の量のデボンダが適用され得る。デボンダは、単層または多層ティッシュウェブの任意の層に組み込むことができる。
【0065】
本発明において柔軟剤添加剤として使用するのに好適であるデボンダとしては、カチオン性界面活性剤および非カチオン性界面活性剤の両方が挙げられ、カチオン性界面活性剤が好ましい。非カチオン性界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、両性、および双性イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、そうでなければ界面活性剤を含めることから生じ得るティッシュペーパーの特性における製造後の変化を実質的に回避するために、ティッシュペーパーが製造された後、界面活性剤はその場で実質的に非移動性である。これは、例えば、本発明のティッシュペーパー製品の実施形態の保管中、出荷中、商品化中、および使用中によく遭遇する温度よりも高い溶融温度、例えば約50℃またはそれ以上の溶融温度を有する界面活性剤を使用することにより、達成することができる。
【0066】
前述の柔らかさ/引張り利益をもたらすために、ティッシュペーパーウェブに適用される非カチオン性界面活性剤の量は、最終製品に対する一定の引張り基準でこうした利益を付与するのに必要な最小有効レベルから、約2%、好ましくは約0.01%~約2%の範囲であり、非カチオン性界面活性剤は、より好ましくは、約0.05%~約1.0%、最も好ましくは、約0.05%~約0.3%の範囲で、ウェブによって保持されている。界面活性剤は、好ましくは8個以上の炭素原子を有するアルキル鎖を有する。例示的なアニオン性界面活性剤は、線状アルキルスルホネートおよびアルキルベンゼンスルホネートである。例示的な非イオン性界面活性剤は、Croda,Inc.(New York,N.Y.)から入手可能なCRODESTA(登録商標)SL-40、などのアルキルグリコシドエステル、1977年3月8日発行の米国特許第4,011,389号(W.K.Langdonら)に記載のアルキルグリコシドエステル、などのアルキルグリコシド、PEGOSPERSE(登録商標)200MLなどのアルキルポリエトキシル化エステル(Glyco Chemicals,Inc.(Greenwich,Conn.))、NEODOLR25-12(Shell Chemical Coより入手可能)などのアルキルポリエトキシル化エーテルおよびエステル、SPAN60(ICI America,Inc)などのソルビタンエステル、エトキシル化ソルビタンエステル、プロポキシル化ソルビタンエステル、混合エトキシル化プロポキシル化ソルビタンエステル、およびTWEEN60(ICI America,Inc.)などのポリエトキシ化ソルビタンアルコールである。アルキルポリグリコシドが、本発明での使用に特に好ましい。例示的な界面活性剤の上記の列挙は、本質的に単に例示的であることを意図しており、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
シリコーン
【0067】
滑らかな感触を付与することによって主に機能する化学的柔軟剤が望まれる場合、ポリシロキサンまたは「シリコーン」を使用することができる。得られるティッシュ製品の所望の特徴に応じて、ペーパーウェブの乾燥繊維を基準として、シリコーンは、0重量%~約3.0重量%、好ましくは約0.1~約2.0重量%、より好ましくは約0.5~約1.0重量%の量で、適用され得る。シリコーンは、単層または多層ティッシュウェブの任意の層に組み込むことができる。本発明での使用に好適であるシリコーン化合物は、以下に詳細に記載する。
【0068】
ポリシロキサン化合物は、好ましくは、以下の構造:
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立したシロキサンモノマー単位について、それぞれ独立して水素または任意のアルキル、アリール、アルケニル、アルカリール、アラキル(arakyl)、シクロアルキル、ハロゲン化炭化水素、または他の基であり得る)のモノマーシロキサン単位を有する。このような基のいずれも、置換または非置換であり得る。任意の特定のモノマー単位のR1およびR2基は、隣接する次のモノマー単位の対応する官能基とは異なってもよい。また、ポリシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状のいずれかであるか、または環状構造を有してもよい。基R1およびR2は、さらに独立して、これに限定するものではないが、シロキサン、ポリシロキサン、シランおよびポリシランなど、などの他のシラン官能基であってもよい。基R1およびR2は、例えばアルコール、カルボン酸、アルデヒド、ケトンおよびアミン、アミド官能基など、種々の有機官能基のいずれかを含むことができ、アミノ官能性シリコーン化合物が好ましい。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、オクタデシルなどである。例示的なアルケニル基は、ビニル、アリルなどである。例示的なアリール基は、フェニル、ジフェニル、ナフチルなどである。例示的なアルカリール基は、トイル、キシリル、エチルフェニルなどである。例示的なアラキル基は、ベンジル、アルファ-フェニルエチル、ベータ-フェニルエチル、アルファ-フェニルブチルなどである。例示的なシクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどである。例示的なハロゲン化炭化水素基は、クロロメチル、ブロモエチル、テトラフルオロエチル、フルオロエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロトリル、ヘキサフルオロオキシイルなどである。ポリシロキサンを開示している参考文献としては、1958年3月11日発行の米国特許第2,826,551号(Geen)、1976年6月22日発行の米国特許第3,964,500号(Drakoff)、1982年12月21日発行の米国特許第4,364,837号(Pader)、1991年10月22日発行の米国特許第5,059,282号(Ampulskiら)、および1960年9月28日に公開の英国特許第849,433号(Woolston)が挙げられる。また、1984年にPetrarch Systems,Inc.によって配布されているSilicon Compounds、181~217頁には、一般にポリシロキサンの広範なリストおよび説明が含まれている。
柔軟剤
【0069】
化学的製紙添加剤である乳化界面活性剤材料以外の任意の界面活性剤を、以下「界面活性剤」と呼び、乳化化学製紙添加剤の乳化成分として存在する任意の界面活性剤を以下「乳化剤」と呼ぶ。界面活性剤は、単独で、または他の化学製紙用添加剤と同時に、後に、または前にティッシュペーパーに適用されてもよい。典型的なプロセスでは、別の添加剤が存在する場合、界面活性剤は、他の添加剤(複数可)と同時にセルロース基材に適用される。リントを制御するために、および/または引張紙力を増大するために、デボンダ含有ティッシュペーパーを比較的低量のバインダーで処理することも望ましい場合がある。
【0070】
滑らかな感触を付与することによって主に機能する化学的柔軟剤が望まれる場合、これらは、以下の群の化学物質から選択することができる。有機材料(鉱物油、パラフィンもしくはカルヌバなどのワックス、またはラノリンなど)、およびポリシロキサン(米国特許第5,059,282号(Ampulskiに発行)に記載されている化合物など)。本発明での使用に好適であるポリシロキサン化合物は、以下に詳細に記載する。
【0071】
構造体を可塑化することによって主に機能する化学的柔軟剤が望まれる場合、ポリエチレングリコール(PEG400など)、ジメチルアミン、および/またはグリセリンの化学物質群から選択することができる。
【0072】
剥離によって主に機能するカチオン性化学柔軟剤が望まれる場合、これらは以下の化学物質群から選択することができる。カチオン性四級アンモニウム化合物(ジヒドロ添加獣脂ジメチルアンモニウムメチルサルフェート(DTDMAMS)またはジヒドロ添加獣脂ジメチルアンモニウムクロリド(DTDMAC)(双方とも、Witco Corporation(Greenwich,Conn.)製))、Berocel 579(Eka Nobel(Stennungsund,Sweden))、米国特許第4,351,699号および同第4,447,294号(Osbornに発行)に記載の材料;および/またはDTDMAMSまたはDTDMACのジエステル誘導体。
特に、式:
(R4-m-N-[R2]
(式中、mは1~3であり、
各Rは、C-Cアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロカルビル基もしくは置換ヒドロカルビル基、アルコキシル化基、ベンジル基、またはこれらの混合物であり、各Rは、C~C41アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロカルビル基もしくは置換ヒドロカルビル基、アルコキシル基、ベンジル基、またはこれらの混合物であり、Xは、本発明における使用に好適である任意の柔軟剤適合性アニオンである)を有する四級アンモニウム化合物である。好ましくは、各Rは、C16-C18アルキルであり、最も好ましくは各Rは、直鎖C18アルキルである。好ましくは、各Rは、メチルであり、Xは、塩化物または硫酸メチルである。任意により、R置換基は、植物油源由来であってもよい。式:
(R4-m-N-[(CH-Y-R
各Y=-O-(O)C-、または-C(O)-O-、
m=1~3であり、好ましくは、m=2であり、
各n=1~4であり、好ましくは、n=2であり、
各R置換基は、短鎖C-C、好ましくはC-Cアルキル基、例えば、メチル(最も好ましい)、エチル、プロピルなど、ヒドロキシアルキル基、ヒドロカルビル基、ベンジル基またはこれらの混合物であり、各Rは、長鎖、少なくとも部分的に不飽和である(約5超~約100未満、好ましくは約10~約85のIV)、C11~C23ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビル置換基であり、対イオン、Xは、任意の柔軟剤適合性アニオンであり得、例えば、酢酸塩、塩化物、臭化物、メチル硫酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、硝酸塩なども本発明において使用され得る)を有する生分解性エステル官能性四級アンモニウム化合物。好ましくは、Rの大部分は、少なくとも90%のC18-C24鎖長を有する脂肪アシルを含む。より好ましくは、Rの大部分は、少なくとも90%のC18、C22およびこれらの混合物を含む脂肪アシルからなる群から選択される。
【0073】
他の種類の好適な四級アンモニウム化合物は、1995年12月12日に公開された、Kimberly-Clark Corporationに譲渡された欧州特許第0688901(A2)号に記載されている。
【0074】
第三級アミン軟化化合物もまた、本発明において使用することができる。好適な第三級アミン柔軟剤の例は、1995年3月21日発行のJames River Corporationに譲渡された米国特許第5,399,241号に記載されている。
吸収性添加剤
【0075】
吸収性の向上が望まれる場合には、界面活性剤を使用して本発明のペーパーウェブを処理することができる。使用される場合、一実施形態では、界面活性剤の量は、ティッシュウェブの乾燥繊維重量を基準として、約0.01%~約2%であり得る。一実施形態では、界面活性剤は、8個以上の炭素原子を有するアルキル鎖を有する。代替的には、高度の不飽和(モノおよび/もしくはポリ)ならびに/または分岐鎖アルキル基を有するカチオン性柔軟剤活性成分は、吸収性を大幅に向上することができる。
【0076】
吸収速度を向上する吸収助剤が望まれる場合、以下の群の化学物質から選択することができる。ポリエトキシレート(EG 400など)、アルキルエトキシル化エステル(PEGOSPERSE 200ML(Lonza Inc.)など)、アルキルエトキシル化アルコール(Neodolなど)、アルキルポリエトキシル化ノニルフェノール(IGEPAL CO(Rhone-Poulenc/GAF製))、エトキシル化トリメチルペンタンジオール、および/または米国特許第4,959,125号および同第4,940,513号(Spendelに発行)に記載の材料。界面活性剤デボンダ柔軟剤が濡れ性を低下させる場合には、湿潤剤、例えば第2の界面活性剤を塗布溶液に添加してもよい。例えば、ソルビタンステアレートエステルをアルキルポリエトキシル化アルコールと混合して、柔らかい湿潤ペーパーを製造することができる。
【0077】
水溶性ポリヒドロキシ化合物も、吸収性助剤および/または湿潤剤として使用することができる。本発明での使用に好適である水溶性ポリヒドロキシ化合物の例としては、グリセロール、約150~約800の重量平均分子量を有するポリグリセロール、ならびに約200~約4000、好ましくは約200~約1000、最も好ましくは約200~約600の重量平均分子量を有するポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンが挙げられる。約200~約600の重量平均分子量を有するポリオキシエチレンが特に好ましい。上記のポリヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。例えば、グリセロールおよびポリグリセロールの混合物、グリセロールおよびポリオキシエチレンの混合物、ポリグリセロールおよびポリオキシエチレンの混合物などが本発明において有用である。特に好ましいポリヒドロキシ化合物は、約400の重量平均分子量を有するポリオキシエチレンである。この材料は、Union Carbide Company(Danbury,Conn.)から「PEG-400」の商品名で市販されている。
【0078】
吸収速度を低下させる吸収助剤が望ましい場合、これらは以下の群の化学物質から選択することができる。アルキルケテンダイマー(AQUAPELR 360XCエマルジョン(Hercules Inc.,製(Wilmington,Del.))、フルオロカーボン(Scotch Guardなど(3M(Minneapolis,Minn.))、疎水性シリコーン(PDMS DC-200など(Dow Corning(Midland,Mich.)))、フルオロテロマー(ZONYL 7040など(Dupont(Wilmington,Del.)))など。
【0079】
吸収性添加剤は、単独でまたは紙力増強添加剤と組み合わせて使用することができる。デンプンベースの紙力増強添加剤が本発明における使用のための好ましいバインダーであることが見出された。好ましくは、ティッシュペーパーはデンプン水溶液で処理される。完成したティッシュペーパー製品のリントを減少させることに加えて、低量のデンプンはまた、高量のデンプンの添加によりもたらされるボーディネス(boardiness)(すなわち、剛性)を付与することなく、ティッシュペーパーの引張強度におけるわずかな改善を付与する。また、これは、引張紙力を増大させる従来の方法によって紙力増強されたティッシュペーパーと比較して、改善された紙力/柔らかさの関係を有するティッシュペーパー、例えば、パルプの叩解の増加により、または他の乾燥紙力増強添加剤を添加することにより、増大した引張紙力を有するシートを提供する。柔らかさが重要な特徴ではない用途、例えば板紙において柔らかさを犠牲にして強度を構築するためにデンプンが伝統的に使用されてきたので、この結果は特に驚異的である。また、さらに、デンプンは、表面の印刷適性を改善するために、印刷用紙および筆記用紙の充填剤として使用されてきた。
審美的添加剤
【0080】
審美的添加剤が所望される場合、これらは以下の群の化学物質から選択することができる:インキ、染料、香料、乳白剤(TiO2または炭酸カルシウムなど)、蛍光増白剤、およびこれらの混合物。本発明に記載のプロセスを利用して、ペーパーの審美性も改善することができる。インキ、染料、および/または香料は、好ましくは、ティッシュペーパーウェブに引き続き適用される水性組成物に添加される。審美用添加剤は、単独で、または湿潤剤、軟化剤、および/または紙力増強添加剤と組み合わせて適用することができる。
製造するためのプロセス
【0081】
図1では、製紙用ヘッドボックス1を有するツインワイヤ形成機は、製紙用繊維の水性懸濁液の完成紙料を外側成形布5および内側成形布3などの複数の成形布に注入または堆積し、これによってウェットティッシュウェブ6を形成する。本開示の形成プロセスは、製紙業界で公知の任意の従来の形成方法であり得る。このような形成プロセスとしては、長網抄紙機、サクションブレストロールフォーマなどのルーフフォーマー、ならびにツインワイヤーフォーマーおよびクレセントフォーマーなどのギャップフォーマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
内側成形布3がフォーミングロール4の周りを回転すると、ウェットティッシュウェブ6が内側成形布3上に形成される。ウェットティッシュウェブ6が繊維の乾燥重量に基づいて約10重量%の濃度になるまで部分的に脱水されるので、内側成形布3は、新たに形成されたウェットティッシュウェブ6をプロセス内の下流で支持して運ぶのに役立つ。ウェットティッシュウェブ6のさらなる脱水は、真空吸引ボックスなどの既知の製紙技術によって実施されてもよく、その間、内側成形布3はウェットティッシュウェブ6を支持する。ウェットティッシュウェブ6は、少なくとも約20パーセント、より具体的には約20~約40パーセント、より具体的には約20~約30パーセントの濃度までさらに脱水されてもよい。
【0083】
成形布3は、一般に、金属ワイヤまたはポリマーフィラメントなどの任意の好適な多孔質材料から製造することができる。例えば、いくつかの好適な布としては、Albany International(Albany,N.Y.)から入手可能なAlbany 84Mおよび94M、Asten 856、866、867、892、934、939,959、または937;Asten Synweve Design 274(これらのすべては、Asten Forming Fabrics,Inc.(Appleton,Wis.)から入手可能である);およびVoith 2164(Voith Fabrics(Appleton,Wis.)から入手可能である)を挙げることができるが、これらに限定されない。Spectraシリーズなど、押出ポリウレタンフォームで製造されたScapa Corporationのものなど、不織ベース層を含む布またはフェルトを形成することも有用であり得る。
【0084】
次いで、ウェットウェブ6は、約10~約40パーセント、特に約20~約30パーセントの固形分濃度で、成形布3から移送布8に移送される。本明細書で使用されるとき、「移送布」は、ウェブ製造プロセスの形成部と乾燥部との間に位置決めされる布である。
【0085】
移送布8への移送は、正圧および/または負圧の補助を用いて実施してもよい。例えば、一実施形態では、真空シュー9は、成形布3および移送布8が真空スロットの前縁で同時に収束および発散するように負圧を加えることができる。典型的には、真空シュー9は、約10~約25水銀柱インチのレベルで圧力を供給する。上述のように、真空移送シュー9(負圧)は、ウェブの反対側からの正圧を使用して、次の布にウェブを吹き付けることによって補完または置換することができる。いくつかの実施形態では、他の真空シューを使用して、繊維ウェブ6を移送布8の表面上に引っ張るのを補助することもできる。
【0086】
典型的には、移送布8は成形布3よりも遅い速度で移動し、ウェブのMDおよびCDの延伸を向上させる。これは一般にウェブの横方向(CD)または機械方向(MD)方向の延伸を指す(サンプルの欠損時には伸び率として表す)。例えば、2つの布の相対速度差は、約1~約30パーセント、いくつかの実施形態では約5~約20パーセント、いくつかの実施形態では約10~約15パーセントであり得る。これは一般に、「急速移送」と呼ばれる。「急速移送」の間、ウェブの結合の多くは破壊され、これによってシートが移送布8の表面上のくぼみ内に曲げられ、かつ折り畳まれるようになると考えられる。移送布8の表面の輪郭へのこうした成形により、ウェブのMDおよびCDの延伸を増大させてもよい。ある布から別の布への急速移送は、以下の特許のいずれか1つに教示されている原理に従うことができる。米国特許第5,667,636号、同第5,830,321号、同第4,440,597号、同第4,551,199号、同第4,849,054号。
【0087】
ウェットティッシュウェブ6は、その後、移送布8から通気乾燥布11に移送される。典型的には、移送布8は通気乾燥布11とほぼ同じ速度で移動する。しかし、ウェブが移送布8から通気乾燥布11に移送されるときに、第2の急速移送が行われ得ることが現在発見されている。この急速移送は、本明細書では第2の位置で起こると言及されており、移送布8よりも遅い速度で通気乾燥布11を操作することによって達成される。2つの異なる位置、すなわち第1および第2の位置で急速移送を実行することによって、増大したCDの延伸を有するティッシュ製品を製造することができる。
【0088】
移送布8から通気乾燥布11にウェットティッシュウェブを急速移送することに加えて、ウェットティッシュウェブ6は、真空移送ロール12または真空シュー9などの真空移送シューの補助により、肉眼で通気乾燥布11の表面に適合するように再配置されてもよい。所望であれば、通気乾燥布11を移送布8の速度よりも遅い速度で走行させることで、得られる吸収性ティッシュ製品のMDの延伸をさらに大きくことができる。移送は、ウェットティッシュウェブ6を通気乾燥布11のトポグラフィに確実に一致させるために真空アシストを用いて実行されてもよい。
【0089】
本開示のプロセスは、ウェブが約10重量%以下、好ましくは約8重量%以下、より好ましくは約6重量%以下の水分を含むまで、それぞれのウェブを乾燥するステップを含む。
【0090】
ウェットティッシュウェブ6は、通気乾燥布11によって支持されている間、通気乾燥機13によって約94%以上の最終濃度まで乾燥される。次に、ウェブ15は、リールドラム22とリール23との間の巻き取りニップを通過し、スリット加工カッティング、折り畳み、および包装などのその後の加工のためにティッシュロール25に巻き取られる。
【0091】
ウェブは、所望の嵩および外観となるように、肉眼によるウェブの再配置を確実に行うため、好ましくは真空の補助を用いて、最終乾燥のために通気乾燥布に移送される。別々の移送布および通気乾燥布を使用することで、重要な製品要件に独立して対処するように2つの布を特に設計できるようにするため、様々な利点を提供することができる。例えば、移送布は一般に、超急速移送レベルの高MD延伸への効率的な加工を可能にするように最適化され、通気乾燥布は、バルクおよびCDの延伸をもたらすように設計されている。したがって、適度に粗く、かつ適度に立体的な移送布および通気乾燥布を有することが有用であり、最適な構成ではかなり粗く立体的である。その結果、比較的滑らかなシートが移送部を離れ、次いで肉眼により(真空アシストを用いて)再配置されて、通気乾燥布の高バルク、高CD延伸表面トポロジーが得られる。シートトポロジーは、移送布から通気乾燥布において、完全に変更され、繊維は肉眼により再配置される。これには、著しい繊維間の移動を含む。
【0092】
乾燥プロセスは、ウェットウェブの嵩または厚さを保存する傾向がある任意の非圧縮または圧縮乾燥方法であり得、これに限定するものではないが、通気乾燥、赤外線放射、マイクロ波乾燥、Valmet NTT、Voith ATMOSなどが挙げられる。通気乾燥は、その商業的入手可能性および実用性の理由から、周知であり、本発明の目的のためにウェブを非圧縮乾燥するために一般的に使用される手段の一つである。好適な通気乾燥布としては、これに限定されるものではないが、実質的に連続した機械方向隆起部を有する布が挙げられ、これによって隆起部は、米国特許第6,998,024号に開示されているものなど、まとめられた複数の縦糸ストランドで構成されている。他の好適な通気乾燥布としては、米国特許第7,611,607号に開示されているもの、特にFred(t1207-77)、Jeston(t1207-6)およびJack(t1207-12)として示される布が挙げられる。ウェブは、好ましくは、ヤンキードライヤーの表面に押し付けられることなく、引き続いてクレーピングすることなく、通気乾燥布上で最終乾き度まで乾燥される。
【0093】
ウェットティッシュウェブ6が非圧縮乾燥され、これによって乾燥されたティッシュウェブ15が形成されると、巻き取りの前に乾燥ティッシュウェブ15をヤンキードライヤーに移送することによって、または米国特許第4,919,877号に開示されている、マイクロクレーピングなどの代替的短縮化方法を用いて、乾燥ティッシュウェブ15をクレープ加工することができる。
【0094】
巻き製品では、最も柔らかい側を消費者に向けて製品を巻くことが多くの場合有利であり、したがってこの側の柔らかさを増すような剪断プロセスが好ましい。しかし、布側ではなくウェブの空気側を処理することも可能であり、これらの実施形態では、布側よりも高いレベルまで空気側の柔らかさを増大させることが可能である。
【0095】
本開示のプロセスは、多プライティッシュ製品を形成するのに非常に適している。多プライティッシュ製品は、2プライ、3プライ、またはより多くの数のプライを含むことができる。1つの特定の実施形態では、本開示に従って2プライロールティッシュ製品が形成され、両方のプライは、例えば、クレープ加工されておらず、通気乾燥させるなどの同一の製紙プロセスを使用して製造される。しかし、他の実施形態では、プライは2つの異なるプロセスによって形成されてもよい。一般に、ロールに巻き取られる前に、第1のプライと第2のプライとが一緒に付着される。ウェブを一緒に積層するための任意の好適な様式を使用することができる。例えば、このプロセスは、プライを繊維の絡み合いによって一緒に機械的に接着させる圧着装置を含む。しかし、代替的実施形態では、プライを一緒に接着させるために接着剤を使用してもよい。
【0096】
さらに、本開示に従って調製されたウェブは、印刷、エンボス加工、カレンダー加工、スリット加工、折り畳み、他の繊維構造体との組み合わせなどを含むがこれらに限定されない、任意の好適な後処理に供されてもよい。

図1