(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ステントの形成に使用するための管を製造する方法及びこのような管
(51)【国際特許分類】
A61F 2/82 20130101AFI20220304BHJP
【FI】
A61F2/82
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019001338
(22)【出願日】2019-01-08
(62)【分割の表示】P 2015532511の分割
【原出願日】2013-09-24
【審査請求日】2019-01-09
(32)【優先日】2012-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2012-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515080238
【氏名又は名称】アルテリウス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アル-ラミー,カデム
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】コアテス,フィリップ ディー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,グレン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ケイトン-ローズ,フィル
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0207186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062638(US,A1)
【文献】特開昭60-236724(JP,A)
【文献】特開2000-167922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントの形成に使用するための管を製造する方法であって、
前記管は、ステントとなるためのものであり、前記方法は、
固相の配向可能な熱可塑性ポリマーの
管をマンドレル上で延伸することによって前記
管を変形させるステップであって、前記マンドレルが先端部及び出口端部を有する、前記
管を変形させるステップと、
延伸機構が前記マンドレルの前記出口端部から前記
管に延伸張力を付与し、前記張力は前記
管の引張破壊を引き起こすには不十分であるが前記
管を変形させるには十分であることによって、固相の前記
管を前記マンドレル上で延伸して前記熱可塑性ポリマーの一軸又は二軸配向を誘導する、ステップと、
変形させた前記
管を前記マンドレルの前記出口端部から回収するステップと、を含み、
前記
管が0.5mm~4.0mmの内径及び0.9mm~15mmの外径を有し、
前記マンドレルの最も広い箇所における直径が0.01~15mmである、方法。
【請求項2】
前記マンドレル上で前記
管を延伸することによる前記
管の変形中、前記
管が、前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度超かつ融解温度未満の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた
管の壁厚が75~150マイクロメートルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記管のバルク断面積を、前記マンドレル上で前記
管を延伸することによって低減する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記
管が生吸収性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、アルブミン;コラーゲン;ヒアルロン酸及びその誘導体;アルギン酸ナトリウム及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、ゼラチン、デンプン、セルロースポリマー、カゼイン、デキストラン及びその誘導体、多糖類、フィブリノーゲン、ポリ(バレロラクトン)、ポリジオキサノン、ラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマー、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(無水物)、ポリ(エステル-アミド)、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB)、ポリジオキサノン、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート)、ポリオルトエステル、ポリ(エステルアミド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ酸無水物、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(プロピレンフマラート)、擬似ポリ(アミノ酸)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリホスファゼン、又は、ポリホスホエステルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記マンドレルの前記先端部がテーパ状である及び/又は前記マンドレルの前記出口端部がテーパ状である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記マンドレルが拡張円錐マンドレルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、ダイ及び前記マンドレルの両方の使用を含み、前記方法は、
ダイを通して前記
管を延伸するステップであって、前記ダイは入口側及び出口側を有する、延伸するステップを含む、及び/又は、
前記延伸機構が、前記ダイの前記出口側から前記
管に延伸張力を付与し、前記張力は前記
管の引張破壊を引き起こすには不十分であるが前記管を変形させるには十分であることによって、固相の前記
管を前記ダイを通して延伸して前記熱可塑性ポリマーの一軸又は二軸配向を誘導する、ステップを含む、及び/又は、
変形させた前記
管を前記ダイの前記出口側から回収するステップ、を含む、及び/又は、
前記
管のバルク断面積を、前記ダイを通して前記
管を延伸することによって低減する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ダイが、円錐ダイ、先細(絞り)ダイ、末広(拡張)ダイ及び平行(サイジング)ダイから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
内部フープ延伸比が少なくとも1.5である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記
管の冷却が、前記マンドレルに接触中に、又は、前記
管が前記マンドレル上で延伸された直後に開始される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
得られた
管の結晶化度が30%~70%である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記
ステップが連続的である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法が施された
管からステントを準備するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
75マイクロメートル~150マイクロメートルの壁厚を有する
、高分子材料を含むステント
となる管であって、前記高分子材料が前記
管の軸方向及び半径方向に配向されており、前記
管に、マンドレル及び/又はダイを用いたダイ延伸によって配向が施され、前記
管が2,500~6,000MPaの引張係数及び90~600MPaの引張降伏強度を有する、管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントとしての使用に適した高分子材料を含む管及びこれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書内での明らかな先行公開文書の記載又は説明は、当該文書が従来技術の一部又は一般常識であることを認めるものと必ずしも解釈すべきではない。
【0003】
天然の血管又は通路の狭窄を防止又は抑制するために患者内へのステントの植え込みが必要である又は望まれる多くの医学的状況がある。この状況において、「ステント」は、血管又は通路の開存性を維持し、前記血管又は通路内に流体を流すため、患者の血管又は通路に半径方向外側の力を付与することができる人工管状構造である。
【0004】
ステントの主な用途の1つは心血管疾患の治療である。心血管疾患は先進国内の主な死亡原因である。冠動脈疾患は最も重大であり、このような疾患の患者は通常1つ以上の冠動脈の狭窄を有する。治療法の1つは、急性動脈閉塞の部位へのステントの留置を含む冠動脈ステント留置術である。この種の処置は血管開存性を復元し、心筋虚血を減少させるのに有効であることが証明されている。
【0005】
また、ステントは、血管系の狭窄に起因する他の状態、例えば、末梢動脈疾患及び腎血管性高血圧症の治療に一般的に使用されている。
【0006】
現在のステント技術は、316Lステンレス鋼などの耐食性金属又はコバルトクロム又はニチノールなどの金属合金から作製された永久ステント(permanent stent)の使用に基づくものである。金属の固有の強度は、そのような金属管から作製されたステントが細径(low profile)をとることができる一方で、細径を保持しつつ血管開存性を維持する(すなわち、血管を、開いた、塞がれていない状態に維持する)のに必要な半径方向強度を示すことを意味する。ステントの外形はその物理的寸法、特に、その壁厚及び直径に関連するものと理解すべきである。
【0007】
しかしながら、それらの細径及び半径方向強度特性にもかかわらず、永久金属インプラントの使用に伴ういくつかの欠点がある。特に、現在使用されている金属ステントを血流に曝露させると、血栓形成、平滑筋増殖及びステントの急性血栓性閉塞に至る可能性がある。さらに、金属ステントには全身での広範な使用を制限する特定の欠点がある。これら制限には、長期内皮機能不全、再内皮化の遅延、血栓形成性、永久的物理的刺激、慢性炎症性局所反応、ステント留置血管領域と非ステント留置血管領域との間の機械的挙動の不一致、若年患者の成長への適応不能、及び重要なことには、後の外科的血管再生への非許容又は不利な特性が挙げられる。
【0008】
ステント植え込みの主な効果はその足場効果によりもたらされる。足場効果は6~12か月間継続することが求められるが、その間、血管開存性はほぼ正常レベルまで再生され得る。この期間の後、血管内のステントの存在は通常長期的に何ら薬効を提供せず、その機能は支持構造としてみなされる。
【0009】
永久金属ステントに付随する欠点に鑑み、永久ステントの使用から離れ、非永久生分解性ステント(non-permanent biodegradable stent)を使用したいというのが、近年、医師の一般的見解となっている。
【0010】
臨床的環境で生分解性ステントの使用を実現するには、生分解性ステントが以下を保持していなければならない。(1)機械強度-生分解性ステントは、生分解性ステントが細径を保持しつつ同時に血管環境内でそれに作用する半径方向圧力に耐えることができるように金属ステントの機械強度に近い機械強度を示す必要がある。(2)最適な分解プロファイル-ステントは、所定の位置にとどまり、かつ、血管開存性が再生されるほど十分に長期間その構造保全性を維持する必要がある。しかしながら、血管を支持するタスクが達成されると、任意の不要な副作用の発現を防止するためにステントの分解が適度に速やかであることが求められる。このバランスをとる作業は当初考えていたほど容易なものではないことを特筆すべきである。(3)生体適合性-多くの生体吸収性化合物の分解生成物は炎症性反応を誘発し得る。従って、ステントに含まれる材料及びそれらの分解生成物はそれらがそのような反応を誘発しないという点で生体適合性でなければならない。
【0011】
多くの生分解性ステントが開発されており、多くの完全生分解性ステントが多くの臨床試験で現在検査されているところである。血管内において純粋に支持機能をとることに加え、多くの生分解性ステントは薬剤溶出性となるようにも設計されている。このようなステントは臨床試験において評価されており、AbbotのBVSステント(Ormiston J.A., et al. Lancet, 2008, 371, p899-907)及びBiotronicのマグネシウムステント(Erbel R.,et al.Lancet, 2007, 369, p1869-1875)を含む。特定の例としては、AbbottのBVSステントは乳酸(ポリ-L-乳酸、PLLA)由来の生分解性ポリエステルから作製され、薬剤エベロリムスの溶出を制御して拒絶反応及び再狭窄を防止するコーティングを備える。非薬剤溶出性生分解性ステントの一例はIgaki MedicalのIgaki-Tamaiのステント(Tamai H., et al. Circulation,2000,102,p399-404)であり、これもまたPLLAから作製されている。
【0012】
ステントが有効に機能するためには、ステントは血管の管腔壁によって作用される半径方向圧縮力に耐えることができる半径方向強度を有している必要がある。さらに、ステントは、蛇行した血管網内における留置部位までの移動のため、及び前記留置部位での展開のためバルーンカテーテル上にクリンプすることができるほど十分な可撓性を示す必要がある。
【0013】
生分解性金属チューブから一時的ステント(temporary stent)が作製されており、例えば、Biotronicのマグネシウムステントがある。このステントは生分解性マグネシウム合金の管からレーザ-によって形作られた管状溝付きステントである。永久ステンレス鋼ステントと同様に、このステントは弾性反跳が低く、拡張後の短縮が最小である。これら特性を有するにもかかわらず、臨床試験では限られた成功しか見られていない。これは60~90日という比較的急速な分解速度に一部起因するものである。
【0014】
このような生分解性金属ステントの急速な分解に関連する問題を考えると、生分解性高分子チューブから作製されるステントには魅力がある。第1に、実質的にマグネシウム及び鉄の使用に限定される生分解性金属材料と比べて無数の高分子材料がすでに当技術分野において公知である。
【0015】
第2に、生分解性ポリマーの分解速度は数か月から数年の範囲であるため、概して、一般に数週間とされる生分解性金属材料の分解速度よりも遅い。さらに、使用されるポリマー又はポリマーブレンドの組成を調整することにより高分子材料の分解速度を特定の要求に合うように変更することが可能である。しかしながら、これら利点にもかかわらず、生分解性ポリマーから成形されるステントを金属ステントの実施可能な代替とするためには克服することが必要な多くの課題がある。
【0016】
金属材料の固有の特性は、血管の内腔を開存状態に維持するために必要な半径方向強度を示す細径ステントの作製にそれらが理想的であることを意味する。金属及び金属合金と比較するとポリマーは比強度に劣る。従って、高分子ステントを同様のスロット/メッシュサイズ及び支柱/壁厚を有する金属ステントと比較した場合、高分子ステントには血管壁が高分子ステントに作用する半径方向力に耐えるために必要な機械強度が不足している。この強度差を補償するための様々な解決策があるが、どれも理想的なものではない。
【0017】
高分子ステントの半径方向強度はメッシュの目のサイズを小さくすることによって増加することができる。しかしながら、目のサイズを小さくすることによる課題はステントの柔軟性が低下することである。血管は完全な円筒形ではないため、ステントが植え込まれた際に血管の天然立体構造(natural conformation)が失われる可能性があることから、ステントの植え込みが困難になる可能性がある。
【0018】
半径方向強度はステント壁支柱の厚みを増加することによっても向上させることができる。しかしながら、これによりステントの径(profile)が増す。メッシュステントの支柱が太いほどステントの植え込み後の再狭窄の可能性が高くなることを示唆するエビデンスがある。
【0019】
従って、診療所で現在使用されている永久金属ステントにおいて一般的な、同様の支柱及びメッシュサイズを有するステントに成形できるような機械強度特性を備えた生分解性材料から作製したチューブを製造することが非常に望ましい。
【0020】
例えば、一軸又は二軸押出機から高分子溶融体を押出すことにより形成される高分子チューブはポリマー分子の最小限の配列を示す。半径方向及び軸方向両方におけるこれら分子の配列はチューブの全体的な特性を向上させる。ブロー成形及びダイ延伸などのいくつかの技術では、一軸式又は二軸式のいずれかにおいてポリマー分子の分子配向を誘起することにより前記チューブを強化するよう高分子チューブを変形させることができる。
【0021】
ポリマーチューブという状況においては、ブロー成形は、何らかの形態のグリップによって両端を固定し、円筒状の金型内に保持した管をそのガラス転移温度と融解温度との間の温度まで加熱するプロセスである。目標直径を得るため、その後、加熱されたチューブ内にガスを吹き込み、金型により形成された境界にチューブの壁を押し付ける。
【0022】
ブロー成形は、従来、生分解性ステントに使用するための高分子チューブの製造に使用されてきた。ブロー成形技術の例としては、米国特許出願公開第2010/00258894A1号、米国特許出願公開第2010/0198331A1号、米国特許第7,971,333B2号及び米国特許出願公開第2011/0062638A1号を参照のこと。これらブロー成形技術の性質を考えると、この技術はステントに要求されるサイズのチューブを連続的に作製することはできない。さらに、固定手段に大量の廃棄材料が保持される。
【0023】
ダイ延伸は、高分子材料をそのガラス転移温度と融解温度との間の温度まで加熱してダイ内に引き込み、その断面積を変化させるプロセスである。この断面積の変化時における変形がポリマー分子の配向及び配列を引き起こし、強度及び剛性の点において改良を施す。ブロー成形技術とは異なり、ダイ延伸でもチューブを連続的手法で作製することができるが、これは、このプロセスではチューブの両端を固定する必要がないことが理由である。しかしながら、ダイ延伸はステントに使用することができる管の作製に使用されたことはない。
【0024】
米国特許第4,801,419号では、ダイ延伸プロセスを使用して配向高分子チューブを作製している。一例においては、32mmの内径及び42mmの外径を有するある長さの無可塑PVC厚壁チューブをマンドレルの拡張円錐部上及びダイ内に延伸し、3.7mmの壁厚を有するダイ延伸管を得た。同様に、米国特許第5,650,114号では、拡張するフォーマ(マンドレル)上において管を変形することにより0.225mmの壁厚を有するチューブが作製された。これら方法により作製される、結果として得られる管は、ガス配管等の分野において有用ではあるが、その大きなサイズのためステントの製造への使用には適していない。
【0025】
ダイ延伸は熱的プロセスである。従って、関与する体積、表面積及び伝熱係数の相違のため、そのようなプロセスのスケーリング、特に、ダウンスケーリングは自明ではない。生吸収性ステントに使用される高分子材料は温度及び湿度感受性が高く、このためステントへの使用に好適なチューブをダイ延伸により作製することはさらに困難になる。これは上述のダイ延伸プロセスに使用されている従来のパイプグレードプラスチックとは対照的である。
【0026】
一般に、ステントは、高分子管から、レーザ-を使用して管の壁を切り取り必要とされるステントのメッシュ状の足場構造を作成することによって製造される。レーザ-切断は管壁の厚みの変動に特に敏感となり得るため、プロセスの成功のためには、管はその長手方向に均一な形状及び一定な壁厚を有している必要がある。ブロー成形では要求される均一な寸法を特に問題なく実現することができるが、ダイ延伸技術では均一性を実現することは難しい。
【0027】
上記観点から、ステントへの使用に好適な寸法、すなわち壁厚150マイクロメートル未満及び外径1~3mmを有するチューブを一貫して作製するダイ延伸プロセスは、このような技術が未だ開示されていないことから有用である。
【0028】
従って、上述の課題に対処するため、本発明者はステントに使用するための高分子チューブを作製するためのダイ延伸法を考案した。前記チューブは最適な又はそうでなければ向上した機械強度及び形状特性を有する。
【0029】
上記説明では冠動脈ステント、末梢血管ステント、心胸郭血管ステント及び神経血管ステントに使用されるチューブに焦点を当てたが、本発明はそれらに限定されないことは理解すべきである。尿管、尿道、十二指腸、大腸及び胆管ステント用チューブなどの、血管ステント以外のステント用のチューブも本発明に関連する。
【発明の概要】
【0030】
疑義の回避のため、本明細書中で使用する場合、示される任意の範囲には終点を含む。
【0031】
本発明によれば、75マイクロメートル~150マイクロメートルの壁厚を有する高分子材料を含むステントに使用される管が提供される。任意選択的に、管は2,500~6,000MPaの引張係数及び90~600MPa(例えば90~300MPa)の引張降伏強度を有する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「管(tube)」又は「チューブ(tubing)」は中空かつ実質的に円筒状の物体に関する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「引張係数(tensile modulus)」は、この比率が一定な範囲における引張応力と引張ひずみの比率を意味する。本明細書中において述べる場合、この用語は、同様に、用語「弾性係数(elastic modulus)」、「弾性率(modulus of elasticity)」及び「ヤング率(Young's modulus)」と区別なく使用され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「引張降伏強度(tensile yield strength)」は、材料が可塑的に変形し始める応力の尺度である。本明細書中で使用される場合、この用語は、同様に、用語「降伏強度(yield strength)」及び「降伏点(yield point)」と区別なく使用され得る。
【0035】
本発明の実施形態は、高分子材料が生吸収性であり、分解生成物が生体適合性であるものを含む。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「生吸収性(bioresorbable)」は、血液などの体液に曝露されると完全に又は部分的に劣化及び/又は浸食され得るものであり、かつ、体によって徐々に再吸収、吸着及び/又は排除され得るポリマーを意味する。本明細書中で使用される場合、この用語は、用語「生分解性(biodegradable)」、「生浸食性(bioerodable)」、「生体吸収性(bioabsorbable)」と区別なく使用され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「生体適合性(biocompatible)」は、ポリマー及びポリマー分解生成物が哺乳動物の生体に有毒でなく、かつ、生体システムに対して炎症などの有害な作用を引き起こさないことを意味する。
【0038】
他の実施形態においては、高分子材料は管の軸方向及び半径方向に配向されている。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「配向される(oriented)」はポリマー分子の分子配列があることを意味する。
【0040】
本発明の更なる実施形態においては、管の極限引張強さは90~800MPa(例えば90MPa~800MPa、例えば120MPa~600MPa、150MPa~400MPa又は200MPa~300MPa)である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「極限引張強さ(ultimate tensile strength)」は、印加荷重により伸展又は引張られている際に材料が耐え得る最大応力を意味する。
【0042】
本発明の実施形態においては、管の曲げ強度は、50MPa~1000MPa(例えば50MPa~500MPa、例えば80MPa~400MPa、100MPa~300MPa又は120MPa~250MPa)である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「曲げ強度(flexural strength)」は、曲げ変形時に特定断面の材料が耐え得る最大曲げ応力と定義される。
【0044】
本発明の実施形態においては、管の曲げ弾性率は2000MPa~10000MPa(例えば2000MPa~8000MPa、例えば2500MPa~7000MPa、3000MPa~6500MPa又は3500MPa~6000MPa)である。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「曲げ弾性率(flexural modulus)」はその弾性限度内の曲げ変形下でのひずみに対する応力の率と定義される。換言すると、曲げ荷重下における材料の剛性の尺度である。
【0046】
本発明の特定実施形態においては、管のフープ降伏強度は、50~800MPa(例えば50MPa~500MPa、例えば80MPa~300MPa、80MPa~160MPa又は100MPa~160MPa)である。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「フープ降伏強度(hoop yield strength)」は、前記材料に周方向力(circumferential force)を作用する印加荷重によって伸展される又は引張られる際に管状材料が可塑的に変形し始める応力の尺度を意味する。
【0048】
本発明の更なる実施形態においては、管の極限フープ強度は、90~800MPa(例えば90MPa~500MPa、例えば100MPa~300MPa、100MPa~180MPa又は110MPa~160MPa)である。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「極限フープ強度(ultimate hoop strength)」は、前記材料に周方向力を作用する印加荷重によって伸展される又は引張られる際に材料が耐え得る最大応力を意味する。
【0050】
本発明の別の実施形態においては、管は、内径0.5~4.0mm及び外径0.9mm~15mm、例えば内径1.70~2.10mm又は1.2~1.8mm及び外径1.5mm~2.5mm又は2.00~2.30mmを有する。
【0051】
さらに別の実施形態においては、本発明の管は75マイクロメートル、100マイクロメートル及び150マイクロメートルの壁厚を有する。
【0052】
他の実施形態においては、チューブは高分子材料を含み、高分子材料は、アルブミン;コラーゲン;ヒアルロン酸及びその誘導体;アルギン酸ナトリウム及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;ゼラチン;デンプン;セルロースポリマー;カゼイン;デキストラン及びその誘導体;多糖類;フィブリノーゲン;ポリ(バレロラクトン);ポリジオキサノン;ラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマー;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレラート);ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー;ポリ(アルキルカーボネート);ポリ(オルトエステル);チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート;ポリ(エチレンテレフタラート);ポリ(無水物);ポリ(エステル-アミド);ポリホスファゼン;ポリ(アミノ酸);ポリ-L-乳酸(PLLA);ポリ-D,L-乳酸(PDLLA);ポリグリコール酸(PGA);ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA);ポリカプロラクトン;ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB);ポリジオキサノン;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート);ポリオルトエステル;ポリ(エステルアミド);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(無水物-コ-イミド);ポリ(プロピレンフマラート);擬似ポリ(アミノ酸);ポリ(アルキルシアノアクリレート);ポリホスファゼン;並びにポリホスホエステル、例えば、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(グリコリド)又はそれらのコポリマー及び/又はブレンド(例えばポリ(L-ラクチド))である。
【0053】
特定の実施形態においては、高分子材料は、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)もしくはポリ(グリコリド)、又はそれらのコポリマー及び/又はブレンド、例えば、ポリ(L-ラクチド)である。
【0054】
別の実施形態においては、チューブは高分子材料を含み、高分子材料は、5%以上、例えば、10%~90%、20%~80%、30%~70%、40%~60%又は30%~50%(例えば45%)の結晶化度を有する。
【0055】
他の実施形態においては、チューブは、10,000~10,000,000g/mol、例えば10,000~5,000,000g/mol、40,000~3,000,000g/mol、43,000~2,600,000g/mol、100,000~1,000,000g/mol、200,000~600,000g/mol、225,000~500,000g/mol、250,000~450,000g/mol及び400,000~450,000g/mol(例えば425,000g/mol)の平均分子量(Mw)を有する。
【0056】
本発明の更なる態様は本発明のチューブから形成されるステントに関する。
【0057】
特定の実施形態においては、ステントは血管ステント、尿管ステント、尿道ステント、十二指腸ステント、大腸ステント又は胆管ステントとして使用される。特に、ステントは冠動脈ステント又は末梢血管ステント(例えば、ステントは冠動脈ステント)である。
【0058】
別の実施形態においては、ステントは拡張可能である。
【0059】
本発明の実施形態においては、ステント内径は、冠動脈ステント用に拡張される場合は0.5~4.5mm、例えば、又は末梢血管ステント用に拡張される場合は2.0~4.5mm,又は4.0~10.0mm(例えば5.0~8.0mm)である。
【0060】
他の実施形態においては、ステントは生体内への植え込み後6か月~36か月の期間にわたって生分解する(例えば8か月~18か月、例えば10か月~12か月)。
【0061】
更なる実施形態においては、ステントは5~20バール(500~2000kPa)の拡張圧力(例えば7~15バール(700~1500kPa)、例えば10~12バール(1000~1200kPa))に耐えることが可能である。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態においては、ステントは、白金、タンタル、タングステン、炭酸バリウム、ビスマスオキシド、硫酸バリウム、メトラジミド(metrazimide)、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、アセトリゾン酸誘導体、ジアトリゾ酸誘導体、イオタラム酸誘導体、イオキシタラム酸誘導体、メトリゾ酸誘導体、ヨードテオフィリン誘導体、ヨード-ジピリダモル(iodo-dipyridamol)誘導体、ヨードモプダモル(iodo mopdamol)誘導体、ヨーダミド、脂溶性剤(lypophylic agents)、ヨージパミド及びイオグリカミン酸、又は音響インターフェースを示すマイクロスフェア又はバブルの添加によるもののうち1つ又は複数から選択される放射線不透性マーカーを含む。
【0063】
さらに別の実施形態においては、ステントは生物学的活性物質をさらに含む。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的活性物質(biologically active agent)」は生体に薬効を発揮する化学物質及び天然物質を含む。本明細書中で使用される場合、この用語は用語「医薬活性剤(pharmaceutically active agent)」と区別なく使用され得る。
【0065】
本発明の実施形態においては、生物学的活性物質は、増殖抑制薬、凝固阻止剤、冠状血管拡張薬、抗炎症薬、細胞毒性薬、抗生物質、及び局所放射線治療用の放射性薬剤又はその標的から選択される1つ又は複数の薬剤から選択される。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「抗増殖薬(antiproliferative agent)」は、体内の細胞増殖を阻害する薬剤を含む。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「冠血管拡張薬(coronary vasodilator)」は、冠血管の拡張を引き起こすことにより冠動脈疾患に関連する冠血流量低下の症状を軽減する薬剤を含む。
【0068】
他の実施形態においては、ステントは酸捕捉剤をさらに含む。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「酸捕捉剤(acid scavenging agent)」は、体内で、ステントを含むポリマーの酸性分解生成物を中和するよう機能し得る薬剤を含む。
【0070】
好適な実施形態においては、酸捕捉剤は、テオフィリン、ジピリダモール、モピダモール、又はそれら化合物の誘導体もしくはヨード誘導体である。モピダモール(及び同様のピリミド-ピリミジン構造を有する誘導体)は酸捕捉作用及び抗増殖作用の両方を有する。
【0071】
本発明によれば、ステントの形成に使用される管を製造する方法が提供される。
前記方法は、
固相の配向可能な熱可塑性ポリマーチューブをマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸することによって変形するステップであって、マンドレルが先端部及び出口端部を有し、ダイが入口側及び出口側を有し、
延伸機構がマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側からチューブに延伸張力を印加し、前記張力はチューブの引張破壊を引き起こすには不十分であるがチューブを変形させるには十分であるため、固相のチューブをマンドレル上及び/又はダイ内に延伸してポリマーの一軸又は二軸配向を誘導する、ステップと、
変形されたチューブをマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側から回収するステップと、
を含む。
【0072】
本明細書中で使用される場合、用語「熱可塑性プラスチック(thermoplastic)」は、特定温度(例えばそのガラス融解温度)を超えると柔軟になるか成形可能になり、その特定温度未満まで冷却すると固体に戻るポリマーを意味する。
【0073】
特定の実施形態においては、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブの分子量(Mw)は、10,000~10,000,000g/mol、例えば10,000~5,000,000g/mol、40,000~3,000,000g/mol、43,000~2,600,000g/mol、100,000~1,000,000g/mol、200,000~600,000g/mol、225,000~500,000g/mol、250,000~450,000g/mol及び400,000~450,000g/mol(例えば425,000g/mol)である。
【0074】
本発明の他の実施形態においては、本明細書中に開示される方法に使用される場合、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)超かつ融解温度(Tm)未満の温度である。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「ガラス転移温度(glass transition temperature)」は、ポリマーがその硬い状態から柔軟な又はゴムのような状態に転移する温度を意味する。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「融解温度(melting temperature)」は、ポリマーが溶融状態に液化する温度を意味する。
【0077】
代替的又は付加的に、本明細書中で使用される場合、Tmはポリマーの結晶融点である。ポリマーの結晶融点は、結晶が融解し、結晶性ポリマーが短距離秩序を有しない非晶質ポリマーに類似する温度である。
【0078】
更なる実施形態においては、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、40℃~150℃、例えば60℃~120℃、70℃~100℃又は75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)の温度である。
【0079】
他の実施形態においては、得られた管の壁厚は、75~150マイクロメートル、例えば90~110マイクロメートル(例えば100マイクロメートル)又は110~150マイクロメートルである。他の実施形態においては、得られた壁厚は75~300マイクロメートルである。
【0080】
本発明の実施形態においては、高分子チューブのバルク断面積は高分子チューブをマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸することによって減少する。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「バルク断面積(bulk cross-sectional area)」は、チューブのバルクの、その長手方向の軸線に実質的に垂直な面積を意味する。
【0082】
更なる実施形態は、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブが変形前に実質的に非配向とされる方法を含む。
【0083】
本発明のさらに別の実施形態においては、当該方法に使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブがタグ部を有し、延伸機構がタグ部を把持する把持機構を含む引張部(haul-off)を含む。
【0084】
本発明の一実施形態においては、熱可塑性ポリマーチューブは高分子溶融体から押出される。
【0085】
別の実施形態においては、本発明の方法で使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、0.5~4.0mmの内径及び0.9mm~15mmの外径、例えば1.0~1.8mm(例えば1.2mm)の内径及び1.5mm~3.0mm(例えば2.4mm)の外径を有する。
【0086】
更なる実施形態においては、本発明の方法で使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、0.1mm~4.5mm、例えば0.1mm~1.0mm、0.2mm~0.8mm、0.3mm~0.8mm又は0.4~0.8mmの壁厚を有する。
【0087】
別の実施形態においては、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは生吸収性である。
【0088】
他の実施形態においては、熱可塑性ポリマーチューブは高分子材料を含み、高分子材料は、アルブミン;コラーゲン;ヒアルロン酸及びその誘導体;アルギン酸ナトリウム及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;ゼラチン;デンプン;セルロースポリマー;カゼイン;デキストラン及びその誘導体;多糖類;フィブリノーゲン;ポリ(バレロラクトン);ポリジオキサノン;ラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマー;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレラート);ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー;ポリ(アルキルカーボネート);ポリ(オルトエステル);チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート;ポリ(エチレンテレフタラート);ポリ(無水物);ポリ(エステル-アミド);ポリホスファゼン;ポリ(アミノ酸);ポリ-L-乳酸(PLLA);ポリ-D,L-乳酸(PDLLA);ポリグリコール酸(PGA);ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA);ポリカプロラクトン;ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB);ポリジオキサノン;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート);ポリオルトエステル;ポリ(エステルアミド);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(無水物-コ-イミド);ポリ(プロピレンフマラート);擬似ポリ(アミノ酸);ポリ(アルキルシアノアクリレート);ポリホスファゼン;並びにポリホスホエステル、例えば、ポリ(D,L-ラクチド),ポリ(グリコリド)又はそれらのコポリマー及び/又はブレンド(例えばポリ(L-ラクチド))である。
【0089】
更なる実施形態においては、熱可塑性ポリマーは、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、もしくはポリ(グリコリド)又はそれらのコポリマー及び/又はブレンド、例えば、ポリ(L-ラクチド)である。
【0090】
別の実施形態においては、マンドレルの最も広い箇所における直径は0.01mm~15mm、例えば0.1mm~10mm、1mm~5mm又は2mm~3mm(例えば2.2mm)とされ得る。
【0091】
他の実施形態においては、マンドレルの最も広い箇所における直径は、0.01mm~15mm、例えば0.1mm~10mm、1mm~5mm、1mm~4mm、1.50mm~3.00mm、1.80mm~2.60mm(例えば1.84mm又は1.85mm)又は2.00mm~2.60mm(例えば2.01mm、2.18mm又は2.20mm)とされ得る。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「マンドレル(mandrel)」は用語「マンドレルヘッド(mandrel head)」と交換可能であると解釈すべきである。
【0093】
他の実施形態においては、マンドレルの先(前)端部はテーパ状である、及び/又はマンドレルの出口(後)端部はテーパ状である。
【0094】
さらに別の実施形態においては、マンドレルの先端部及び/又は出口端部のテーパの傾斜角度は5~60度、例えば10~30度及び10~20度(例えば15度)である。
【0095】
本明細書中で使用される場合、用語「傾斜角度(angle of inclination)」はマンドレルの長手方向の軸線に対するものである。従って、これはマンドレル外部表面の面とマンドレルの長手方向の軸線との間の角度を意味する。
【0096】
特定の実施形態においては、マンドレルは円錐拡張マンドレルである。
【0097】
更なる実施形態においては、円錐のテーパの傾斜角度は5~60度、例えば10~30度及び10~20度(例えば15度)である。
【0098】
特定の実施形態においては、マンドレルは支持手段に取り付けられる。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「支持手段(supporting means)」は、マンドレルを軸位置に保持し得る任意のデバイスを意味する。このようなデバイスはマンドレルシャフトとすることも拘束ケーブルとすることもできる。
【0100】
マンドレルの文脈で使用される場合、用語「断面積(cross-sectional area)」は、マンドレルの最も広い箇所の断面積に関する。
【0101】
本明細書中で使用される場合、用語「内部断面積(internal cross-sectional area)」は、管の内壁により示される管の中空コアの断面積である。
【0102】
本発明の実施形態においては、ダイの入口側は0.4~8.0mm(例えば0.8~6.0mm、例えば1.5~3.5mm)の直径を有する、及び/又はダイの出口側は0.8~15mm(例えば1.0~10.0mm、例えば2.0~5.0mm)の直径を有する。
【0103】
本発明の他の実施形態においては、ダイは、円錐ダイ、先細(絞り)ダイ、末広(拡張)ダイ及び平行(サイジング)ダイ(例えば円錐ダイ)から選択される。
【0104】
本明細書中で使用される場合、用語「先細(converging)」は、ダイにより、ダイ内に延伸されたチューブの外径が低減することを意味する。従って、この用語は「絞り(reducing)」と区別なく使用され得る。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「末広(diverging)」は、適切なマンドレルとともに使用した場合、ダイにより、ダイ内に延伸されたチューブの外径が増加することを意味する。従って、この用語は「拡張(expanding)」と区別なく使用され得る。
【0106】
特定の実施形態においては、ダイ半角は0~50度、例えば20~40度及び25~35度(例えば30度)である。
【0107】
本明細書中で使用される場合、用語「半角(semi-angle)」はダイ半角を意味し、ダイの長手方向の軸線とダイの内壁との間の角度である。
【0108】
特定の実施形態においては、ダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は1:1~10:1(例えば1:1~5:1、例えば1:1~3:1、例えば1:1)の範囲である。
【0109】
特定の実施形態においては、マンドレル及び/又はダイは、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブに使用されるポリマーのガラス転移温度と融解温度との間の温度に維持される。
【0110】
更なる実施形態においては、マンドレル及び/又はダイは、10℃~150℃、例えば40℃~150℃、60℃~120℃、70℃~100℃又は75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)の温度に維持される。
【0111】
特定の実施形態においては、延伸速度は、0.00001~15000mm/分、例えば0.01~15000mm/分、1~15000mm/分、10~10000mm/分、500~10000mm/分又は700~9000mm/分である。
【0112】
他の実施形態においては、延伸速度は、0.00001~15000mm/分、例えば0.01~15000mm/分、1~15000mm/分、10~10000mm/分、10~1000mm/分、10~500mm/分、50~500mm/分、100~500mm/分又は100~300mm/分、例えば100,200又は300mm/分である。
【0113】
特定の実施形態においては、延伸チューブの内部フープ延伸比は少なくとも1.5である。
【0114】
特定の他の実施形態においては、延伸チューブの内部フープ延伸比は少なくとも1.2である。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「内部フープ延伸比(inner hoop draw ratio)」は排出チューブの内径と投入チューブの内径との比率である。
【0116】
特定の実施形態においては、軸方向延伸比は1.5:1~15:1、例えば2:1~10:1又は2.5:1~4:1である。
【0117】
本明細書中で使用される場合、用語「軸方向延伸比(axial draw ratio)」は延伸プロセス時にチューブに施される伸びの程度について示す。
【0118】
特定の実施形態においては、軸方向延伸比と内部フープ延伸比の比率は0.5:1~10:1(例えば0.75:1~5:1,例えば1:1~2:1)の範囲である。
【0119】
特定の実施形態においては、本発明の方法は、任意選択的に押出チューブを冷却するステップをさらに含む、変形ステップの前に熱可塑性プラスチック高分子チューブを上流側押出機(例えば一軸又は二軸押出機)から押出すステップを含む更なるステップを含む。
【0120】
本発明の更なる実施形態においては、押出チューブの内径は、0.5~4.0mm、例えば1.0mm~3.0mm、1.0mm~2.0mm、1.0mm~1.8mm又は1.1mm~1.3mm(例えば1.2mm)であり、押出チューブの外径は、0.9mm及び15mm、例えば0.9mm~8.0mm、1.5mm~5.0mm、1.5mm~3.0mm又は2.2mm~2.8mm(例えば2.4mm)である。
【0121】
特定の実施形態においては、方法は、温度調節ポリマーチューブ(thermostatic polymer tubing)をポリマーのガラス転移温度と融解温度との間の温度に予熱するステップを含む更なるステップを含み、チューブは変形前に1~60分間、例えば2~10分間前記温度に維持される。
【0122】
更なる実施形態においては、熱可塑性ポリマーチューブは変形前に40℃~150℃、例えば60℃~120℃、70℃~100℃又は75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)の温度に予熱される。
【0123】
特定の実施形態においては、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブの冷却は、ダイ及び/又はマンドレルに接触中に、又は前記チューブがマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸された直後に開始される。
【0124】
特定の実施形態においては、当該方法はマンドレルの使用を含む。
【0125】
特定の実施形態においては、当該方法はダイの使用を含む。
【0126】
特定の実施形態においては、当該方法はダイ及びマンドレル両方の使用を含む。
【0127】
特定の実施形態においては、当該方法は連続的である。
【0128】
特定の実施形態においては、延伸温度は40℃~150℃、例えば60℃~120℃、70℃~100℃又は75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)である。
【0129】
本明細書中で使用される場合、用語「延伸温度(draw temperature)」は、ダイ延伸プロセス時のポリマーの温度を意味する。
【0130】
特定の実施形態においては、当該方法は、本発明の前記方法のプロセスが施されたチューブからステントを準備するステップをさらに含む。
【0131】
別の態様は、本発明の方法により作製される管である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】第1実施形態のダイ延伸装置の断面図を示す概略図である。
【
図2a】第2実施形態のダイ延伸装置の断面図を示す概略図である。
【
図2b】第2実施形態の別配置のダイ延伸装置の断面図を示す概略図である。
【
図3】ダイ延伸を実施するために使用される装置を示す概略図である。
【
図4】実施例1のダイ延伸(A)PLLA管と押出(B)PLLA管を比較した引張試験データである。
【
図5】ダイ延伸管(A)(外径:2.0mm、内径:1.8mm)とZeus押出管(B)(外径1.6mm、内径1.0mm)を比較した曲げ試験結果である。
【
図6】実施例2のダイ延伸(A)PLLA管と押出(B)PLLA管を比較した引張試験データである。
【
図7】実施例2のダイ延伸(A)PLLA管と押出(B)PLLA管を比較した曲げ試験データである。
【
図8】異なる延伸速度におけるダイ延伸チューブの内径及び外径とマンドレル直径との間の関係を示すプロットである。目標内径=1.8mm;目標外径=2.0mm。
【
図9】ダイ延伸非商用押出チューブ(実施例4a~4c)とダイ延伸商用(Zeus)押出チューブ(実施例4d及び実施例4e)とを比較した引張試験データである。
【
図10】ダイ延伸非商用押出チューブ(実施例4a~4c)及びダイ延伸商用(Zeus)押出チューブ(実施例4d及び実施例4e)とを比較した曲げ試験データである。
【
図11】実施例4a~4cのダイ延伸管のフープ試験データである。
【発明を実施するための形態】
【0133】
一実施形態においては、本発明の高分子管は、金属ステントにおいて一般に使用される範囲内である150マイクロメートル以下の壁厚を有する。好ましくは、壁厚は75マイクロメートル~150マイクロメートル、より好ましくは90マイクロメートル~110マイクロメートルであり、最も好ましくは、チューブは約100マイクロメートルの壁厚を有する。
【0134】
好適な実施形態においては、高分子管は2,500~6,000MPa、より好ましくは3,000~6,000MPa、最も好ましくは4000~5500MPaの引張係数を有する。引張係数は剛性プラスチック材料の引張特性の標準試験法であるASTM D638などの任意の公知の方法によって測定され得る。引張係数は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0135】
他の好適な実施形態においては、高分子管は90~600MPa(例えば90~300MPa)、より好ましくは120~250MPaの引張降伏強度を有する。特定の他の好適な実施形態においては、高分子管は90~150MPa、より好ましくは110~130MPaの引張降伏強度を有する。降伏強度は剛性プラスチック材料の引張特性の標準試験法であるASTM D638などの任意の公知の方法によって測定され得る。降伏強度は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0136】
本発明の高分子管は、0.5~4.0mm、好ましくは1.0mm~1.5mm又は1.20mm~1.80mm又は1.70mm~2.10mmの内径、及び0.9mm~15mm、好ましくは1.5mm~3.5mm、より好ましくは1.5mm~2.5mm、さらにより好ましくは2.00mm~2.30mmの外径を有する。管寸法は任意の公知の方法によって測定され得る。例えば、外径はマイクロメータを使用して測定することができ、内径はピンゲージを使用して測定することができる。チューブの同心性及び壁厚は高解像フラットベッド型スキャナの使用などによる公知の方法を使用して確認することができる。
【0137】
本発明の実施形態においては、チューブは90MPa~800MPa(例えば120MPa~600MPa)の極限引張強さを有する。好ましくは、極限引張強さは120MPa~400MPa、又はより好ましくは150MPa~400MPa(例えば120MPa~200MPa又は200MPa~300MPa)である。本発明の文脈においては「極限引張強さ(ultimate tensile strength)」はポリマーチューブが引張応力に耐える能力の尺度である。極限引張強さは剛性プラスチック材料の引張特性の標準試験法であるASTM D638などの任意の公知の方法によって測定され得る。極限引張強さは23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0138】
本発明の実施形態においては、管の曲げ強度は50MPa~1000MPa、好ましくは50MPa~500MPa、より好ましくは80MPa~400MPa、より好ましくは100MPa~300MPa、最も好ましくは120MPa~250MPaであってもよい。曲げ強度は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0139】
本発明の実施形態においては、管の曲げ弾性率は、2000MPa~10000MPa、好ましくは2000MPa~8000MPa、より好ましくは2500MPa~7000MPa、より好ましくは3000MPa~6500MPa、最も好ましくは3500MPa~6000MPa)であってもよい。曲げ弾性率は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0140】
本発明の特定実施形態においては、チューブは、50MPa~800MPa、好ましくは50MPa~500MPa、より好ましくは80MPa~300MPa、より好ましくは80MPa~160MPaのフープ降伏強度を有してもよい。最も好ましくは、フープ降伏強度は100MPa~160MPaである。フープ降伏強度は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0141】
本発明の他の実施形態においては、チューブは、90~800MPa、好ましくは90MPa~500MPa、より好ましくは100MPa~300MPa、より好ましくは100MPa~160MPaの極限フープ強度を有してもよい。最も好ましくは、極限フープ強度は110MPa~160MPaである。極限フープ強度は23±2℃及び湿度50±5%で測定される。
【0142】
フープ降伏強度及び極限フープ強度は、例えば、米国特許出願公開第2010/0025894A1号に記載されている方法によって測定され得る。
【0143】
一実施形態においては、本発明の管は生吸収性であり、その分解生成物は生体適合性である。本発明のチューブに使用されるポリマーの例は天然由来ポリマー又は合成生分解性ポリマー及びコポリマーである。生分解性ポリマーは加水分解的に分解可能なポリマー又は酵素的に分解可能なポリマーである。
【0144】
天然由来ポリマーの代表例としては、アルブミン、コラーゲン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギン酸ナトリウム及び誘導体、キトサン及び誘導体、ゼラチン、デンプン、セルロースポリマー(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタラート、セルロースアセテートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート)、カゼイン、デキストラン及び誘導体、多糖類、並びにフィブリノーゲンが挙げられる。
【0145】
合成生分解性ポリマー及びコポリマーは、1つ又は複数の環状モノマー(例えば、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-ラクチド、メソ-ラクチド、グリコリド、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート(TMC)、p-ジオキサノン(例えば、1,4-ジオキサン-2-オン又は1,5-ジオキセパン-2-オン)又はモルホリンジオン)から形成される。特定の実施形態においては、チューブは、複数のグリコリド及びラクチド(例えば、L-ラクチド、D-ラクチド、又はD,L-ラクチドとも呼ばれるそれらの混合物)残基又はメソ-ラクチドを含むポリマー繊維を含む。当該コポリマー中のグリコリド残基とラクチド残基との比率は所望の繊維特性に応じて変化する。例えば、このポリマーは、グリコリド残基のモル比が約80超、又は約85超、又は約90超、約95超である。この繊維は、ラクチド(例えば、D,L-ラクチド)とグリコリドとのモル比が3:97、又はラクチドとグリコリドとのモル比が5:95、又はラクチドとグリコリドとのモル比が10:90であるポリマーから形成されている。
【0146】
他の好適なポリマーとしては、カプロラクトン及び/又はラクチド及び/又はグリコリド及び/又はポリエチレングリコール(例えば、ε-カプロラクトンとラクチドとのコポリマー及びグリコリドとε-カプロラクトンとのコポリマー)から調製されたコポリマー、ポリ(バレロラクトン)、ポリジオキサノン、並びにラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマーが挙げられる。生分解性材料の他の例としては、ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレラート);ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー;ポリ(アルキルカーボネート);ポリ(オルトエステル);チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート;ポリ(エチレンテレフタラート);ポリ(無水物);ポリ(エステル-アミド);ポリホスファゼン又はポリ(アミノ酸)が挙げられる。
【0147】
ステントの調製には以下の加水分解的に分解可能なポリマーが特に好適である:ポリ-L-乳酸(PLLA)及びポリ-D,L-乳酸(PDLLA)を含むポリ乳酸、ポリグリコール酸(PGA);ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA);ポリカプロラクトン(PCL);ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB);ポリジオキサノン;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート);ポリオルトエステル;ポリ(エステルアミド);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(無水物-コ-イミド);ポリ(プロピレンフマラート);擬似ポリ(アミノ酸);ポリ(アルキルシアノアクリレート);ポリホスファゼン;ポリホスホエステル。これら材料の多くはポリマーの構造及びそれらがどのように供給又は調製され得るかを含め、Nair et al(2007)Progress in Polymer Science 32,762-798に記載されている。
【0148】
好ましくは、チューブは、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、又はそれらのコポリマー及び/又はブレンドを含む。より好ましくは、チューブは、(Purac、www.purac.comによる)市販グレードのPLLA、例えばPurasorb(商標)PL18、Purasorb(商標)PL24、Purasorb(商標)P32、Purasorb(商標)PL38、Purasorb(商標)PL49及びPurasorb(商標)PL65を含む。さらにより好ましくは、チューブはPurasorb(商標)PL38を含む。PL38は押出グレードの半結晶性PLLAであり、当技術分野においては医療グレードチューブの作製にこのグレードのポリマーが使用されている。
【0149】
それらのステントへの最終的な形成を補助するため、このようなポリマーチューブには生分解性添加剤が含まれる。例えば、可撓性を増加するため、及びPLGAの脆い機械的性質を低減するため、ポリ(エチレングリコール)(PEG、MW2000)を可塑剤として使用することができる。
【0150】
生分解性チューブは1種より多い生分解性材料を含み得る。例えば、ステントはPDLLAなどの別の生分解性材料でコーティングされたPLLAなどの1種類の材料の骨格を有する。このステントはPLLA/PLGA構造などの多層マトリックス(multi-layered matrix)を有する。材料は、また、1種より多いポリマーのブレンド、例えば、PLLAとP4HBのブレンド又はPLLAとPCLのブレンドとされ得る。
【0151】
上述のように、PLGAはL-ラクチド/グリコリドのコポリマーである。種々の異なる比率のL-ラクチドとグリコリドモノマーをPLGAとして調製することができる。好ましくは、この比率は85/15 L-ラクチド/グリコリドである。PLGA及びPLLAの調製は当技術分野において周知であり、多くの日常実験手順は当業者が様々な分子量のPLGA又はPLLAを本発明の投入(inventive input)なく容易に調製できるほど周知である。さらに、PLGA及びPLLA生分解性ポリマー材料は、例えば、それぞれ製品リファレンスPurasorb(商標)PLG8523及びPurasorb(商標)PL38としてPurac(www.purac.com)から商業的に得ることができ、かつ、FDA認可されている。
【0152】
本発明の好適な実施形態においては、高分子材料は管の軸方向及び半径方向の両方において配向される。別の実施形態においては、ポリマーは管の軸方向又は半径方向の1つのみにおいて配列される。分子配列/配向の量は任意の公知の方法を使用して測定され得る。例えば、Ward I.M.,et al. J. Polym. Sci. Pol. Sym., 1977,58,p1-21及びVan Horn B.L.,et al. Macromolecules,2003,36,p8513-8521に記載されている測定方法を参照のこと。
【0153】
ポリマーチューブの結晶化度は、5%~90%、好ましくは20%~80%、より好ましくは30%~70%、さらにより好ましくは40%~60%、最も好ましくは40%~50%(例えば45%)であってもよい。チューブの結晶化度は示差走査熱量測定(DSC)などの当技術分野において公知の任意の適切な方法によって測定してもよい。
【0154】
好適な実施形態においては、本発明の管は1.80mm~2.30mmの外径、1.70mm~2.10mmの内径及び0.10mm~0.15mmの壁厚を有する。
【0155】
本発明の実施形態においては、ステントは本発明のチューブから準備される。ステントの準備にはレーザ-切断又は化学エッチングなどの任意の公知の方法を使用することができる。好ましくは、ステントはチューブをレーザ-切断し、メッシュ又は溝付き管ステント、好ましくはメッシュステントを作製することにより準備される。得られた切断ステントは当技術分野において公知の任意のパターンを有し得る。好ましくは、このパターンは、
図1~
図10及び国際出願PCT/英国特許出願公開第2012/050882号の付帯的記載に開示されるもの又は国際出願PCT/英国特許出願公開第2012/050882号の請求項1に記載の範囲内のもののいずれか1つである。ステントとは、人体の内腔に植え込み可能な略管状の医療デバイスを含む。ステントは一般に内腔における疾患起因性の局所的な流れの狭窄を防止する又は相殺するために使用される。本発明のチューブから提供されるステントは好ましくは血管内腔、例えば血管内において使用される。好ましくは、ステントは冠動脈ステント又は末梢血管ステントである。
【0156】
特定の実施形態においては、ステントは自己拡張可能であるか、好ましくはバルーン拡張可能であるかのいずれかである。ステントは5~20バール(500~2000kPa)の圧力、好ましくは6~16バール(600~1600kPa)の圧力で拡張できるべきであるとともに、また、その圧力に耐えられるべきである。
【0157】
冠動脈での使用を意図する場合、拡張したステントの内径は0.8~4.5mmであり、末梢動脈での使用を意図する場合、拡張したステントの内径は2.0~10.0mmである。
【0158】
本発明の他の実施形態においては、高分子チューブから作製されたステントは1種又は複数種の医薬活性剤をさらに含む。これら活性剤はステントの表面にコーティングされ得るか、ステントに含まれる高分子材料に組み込まれる。すなわち、ポリマー中に溶解するか、ポリマーマトリックス中に均一に又は不均一に分配される。後者の例では、薬剤はステントが生分解する際に人体内に導入される。
【0159】
「ポリマー中に溶解する(dissolved in the polymer)」とは、薬剤が生分解性材料と混和可能となりかつ均一に混合及び溶解するように、生分解性材料と薬剤の配合物が加熱されることを意味する。
【0160】
そのような医薬品の例としては、以下のクラスの薬物が挙げられる:抗増殖薬、例えば、免疫抑制薬(例えばラパマイシン)、抗癌剤(例えばパクリタキセル)、成長因子拮抗薬、遊走阻害剤、ソマトスタチンアナログ、ACE阻害薬及び脂質低下薬;凝固阻止剤、例えば、凝固カスケードを阻害する直接的抗凝血薬、凝固因子の合成を抑制する間接的抗凝血薬、抗血小板(凝集)薬、例えば、トロンボキサンA2阻害薬又は拮抗薬、アデノシン阻害薬、糖蛋白質受容体IIb/IIIa拮抗薬、トロンビン阻害薬;血管収縮拮抗薬を含む血管拡張薬、例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、セロトニン受容体拮抗薬及びトロンボキサンA2合成酵素阻害薬並びに他の血管拡張薬;抗炎症薬;細胞毒性薬、例えば、抗腫瘍薬、アルキル化薬、抗代謝薬、有糸分裂阻害剤及び抗生物質抗腫瘍薬;並びに局所放射線治療用の放射性薬剤又はその標的。
【0161】
ステントは、また、超音波、蛍光透視及び/又はMRI下でデバイスの可視化を補助するための放射線不透性マーカー、エコー源性材料及び/又は磁気共鳴イメージング(MRI)応答性材料(すなわちMRI造影剤)を含み得る。例えば、ステントは、内部に放射線不透過性材料を含有するか、エコー源性又は放射線不透過性の組成物で被覆された生分解性ポリマーブレンドで作製することができ、例えば、粉末タンタル、タングステン、炭酸バリウム、ビスマスオキシド、硫酸バリウム、メトラジミド(metrazimide)、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、アセトリゾン酸誘導体、ジアトリゾ酸誘導体、イオタラム酸誘導体、イオキシタラム酸誘導体、メトリゾ酸誘導体、ヨーダミド、脂溶性剤(lypophylic agents)、ヨージパミド及びイオグリカミン酸などの材料によりエコー源性又は放射線不透過性で作製されるか、音響インターフェースを示すマイクロスフェア又はバブルを添加することにより作製される。エコー源性コーティングの使用により超音波イメージングによるデバイスの可視化が実現される。エコー源性コーティングは当技術分野において周知である。MRI下での可視化のため、造影剤(例えば、ガドリニウム(III)キレート剤又は酸化鉄化合物)が、例えば、コーティングの成分などとしてデバイス内又は上に組み込まれるか、デバイスの空隙容量内(例えば、内腔、リザーバ内又はデバイスの形成に使用される構造材料内)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、植え込み処置時にデバイスを配向及び案内するために使用される放射線不透過性又はMRI可視マーカー(例えば、バンド)を含む。別の実施形態においては、これら物質は化合物と同じコーティング層内に含有され得るか、化合物の組み合わせを含有する層の前又は後に塗布されるコーティング層(上述の)に含有される。
【0162】
別の実施形態においては、ステントはステントの構造内に酸捕捉剤を含むか、酸捕捉剤でコーティングされている。「酸捕捉剤(acid scavenging agent)」とは、本明細書中に開示される高分子ステントの酸性分解生成物を体内で中和するよう機能する薬剤を含む。
【0163】
この効果を有する多くの化合物が公知であり、かつ、酸捕捉剤として使用することができる。以下はこのような薬剤の例である。例えば、ジピリダモール(2,6-ビス(ジチオエタノールアミノ)-4,8-ジピペリジノピリミド(5,4-d)ピリミジン)及びモピダモール(2,2',2'',2'''-((4-(1-)ピペリジニル)ピリミド(5,4-d)ピリミジン-2,6-ジイル)ジニトリロ)テトラキスエタノール)などのピリミド-ピリミジン化合物及びその誘導体、並びに同じピリミド-ピリミジン構造を有する誘導体又はジピリダモール及びモピダモール。ピリミド-ピリミジン化合物にはJ Clin Pathol(1972)vol.25,427-432に記載されているVK744及びVK774も含まれる。ピリミド-ピリミジン誘導体には、ピリミド[5,4-d]ピリミジン,テトラクロロ(2,4,6,8-テトラクロロピリミド[5,4-d]ピリミジン(Bepharm Ltd(www.bepharm.com)から入手可能)が含まれる。また、ピリミドピリミジン環の窒素のピリミド環の全位置に同じ置換基を持つRA25も含まれる。さらに好適な薬剤には、Schenone et al (2008) Current Drug Therapy vol.3, 158-176;Walland,(1979)Pharmaceutisch Weekblad, 913-917;及び米国特許第7,799,772号に開示されているピリミド-ピリミジン化合物及び誘導体が含まれる。
【0164】
更なる酸捕捉剤としては、第3級アミノ基を有する冠血管拡張薬又は抗増殖薬;テオフィリン及びその誘導体などのアミノ基を有する気管支拡張薬が挙げられる。
【0165】
ジピリダモール(Persantine)及びモピダモールは商業的に又は標準的な合成法を用いて容易に入手可能な周知の化合物である。好ましくは、酸捕捉剤はジピリダモール及び/又はモピダモールである。
【0166】
他の態様においては、本発明のチューブから作製されたステントは心血管疾患などの疾患に罹患しているヒト又は動物被験者に、前記疾患を治療する目的で植え込まれる。
【0167】
別の態様においては、本発明はステントに使用される高分子チューブを製造する方法に関する。当該方法は、固相の配向可能な熱可塑性ポリマーチューブをマンドレル(マンドレルは先端部及び出口端部を有する)上及び/又はダイ(ダイは入口側及び出口側を有する)内に延伸することによって変形するステップであって、延伸機構がマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側からチューブに延伸張力を印加し、前記張力はチューブの引張破壊を引き起こすには不十分であるがチューブを変形させるには十分であるため、固相のチューブをマンドレル上及び/又はダイ内に延伸してポリマーの一軸又は二軸配向を誘導する、ステップと、変形されたチューブをマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側から回収するステップと、を含む。
【0168】
当該方法のいくつかの実施形態では、配向可能な熱可塑性ポリマーは押出高分子チューブである。高分子材料を押出して押出管を形成するプロセスは当業者に公知であり、任意の押出方法を使用できるが、一軸押出法又は二軸押出法が好適である。一般に、ポリマーは溶融状態で押出される。
【0169】
変形前、押出高分子チューブは実質的に非配向である。用語「実質的に非配向(essentially unoriented)」は、本明細書で使用される場合、押出高分子チューブ内の高分子分子が押出プロセスから生じる量以外は配向を生じていないことを意味する。
【0170】
本発明の特定実施形態においては、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、10,000~10,000,000g/mol、好ましくは10,000~5,000,000g/mol、より好ましくは40,000~3,000,000g/mol、より好ましくは43,000~2,600,000g/mol、より好ましくは100,000~1,000,000g/mol、より好ましくは200,000~600,000g/mol、より好ましくは250,000~450,000g/mol、さらにより好ましくは400,000~450,000g/mol、最も好ましくは約425,000g/molの平均分子量を有してもよい。
【0171】
本発明の実施形態においては、本発明の方法で使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、0.5mm~4.0mm、好ましくは1.0mm~3.0mm、より好ましくは1.0mm~2.0mm、より好ましくは1.0mm~1.8mm、最も好ましくは1.1mm~1.3mm(例えば1.2mm)の内径と、0.9mm及び15mm、好ましくは0.9mm~8.0mm、より好ましくは1.5mm~5.0mm、さらにより好ましくは1.5mm~3.0mm、最も好ましくは2.2mm~2.8mm(例えば2.4mm)の外径と、を有してもよい。
【0172】
特定の好適な実施形態においては、本発明の方法で使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、1.1~1.3mm(例えば1.2mm)の内径と、2.2mm~2.8mm(例えば2.4mm)の外径と、を有してもよい。
【0173】
他の実施形態においては、本発明の方法で使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブは、0.1mm~4.5mm、例えば0.1mm~1.0mm、例えば0.2mm~0.8mm、0.3mm~0.8mm又は0.4mm~0.8mm(例えば0.6mm)の壁厚を有してもよい。
【0174】
延伸装置がマンドレルを含む方法の実施形態においては、マンドレルは当技術分野において公知の任意のものであってもよい。いくつかの実施形態では、マンドレルの最も広い箇所における直径は、0.01~15mm、好ましくは1.5~4.0mmであってもよい。他の実施形態においては、直径は0.01mm~15mm、好ましくは1.50mm~3.00mm、より好ましくは1.80mm~2.60mm、さらにより好ましくは2.00mm~2.60mmであってもよい。
【0175】
ダイが使用される本発明の実施形態においては、マンドレルはダイ内に同軸上に配置され、通常の延伸プロセス時、マンドレルはダイ内において自動調心する。延伸装置内のマンドレルの位置は軸方向に調節可能であってもよい。いくつかの実施形態では、マンドレルは頂端部又は先端部(マンドレルが拡張円錐であるか否かに応じて)がダイキャビティの外側かつダイ入口アパーチャの上流側にあるように配置されている。本明細書中で使用される場合、用語「頂端部(apical end)」は、マンドレルの、円錐頂点に近接した部分を意味する。他の実施形態においては、マンドレルはマンドレルの基底端部又は出口端部がダイキャビティの外側かつダイ出口アパーチャの下流側にあるように配置されている。本明細書中で使用される場合、用語「基底端部(basal end)」は、マンドレルの、円錐基部に近接した部分を意味する。さらに他の実施形態においては、マンドレルは完全にダイのキャビティ内にある。ダイ内のマンドレルの位置は使用者が選択してもよい。所望の管幾何学的形状を実現するためダイに対するマンドレルの位置は日常の実験により変更してもよい。
【0176】
マンドレルは支持手段に取り付けてもよく、この例としては、マンドレルシャフト又は拘束ケーブルが挙げられる。好適な実施形態においては、装置が動作モードにある(すなわち管が延伸されている)場合、支持手段はマンドレルを軸方向に拘束できるような状態である。
【0177】
特定の好適な実施形態においては、マンドレルは先(前)端部及び出口(後)端部(
図1を参照)を有する。好ましくはマンドレルの先端部及び/又はマンドレルの出口端部はテーパ状である。テーパの傾斜角度は5~60度、好ましくは7~40度、最も好ましくは10~40度である。
【0178】
他の好適な実施形態においては、マンドレルは円錐拡張マンドレル、すなわち、円錐マンドレル(
図2a及び
図2bを参照)である。円錐マンドレルは頂端部及び基底端部を有する。円錐のテーパの傾斜角度は5~60度、好ましくは7~40度、最も好ましくは10~40度であってもよい。
【0179】
延伸装置がダイを含む方法の実施形態においては、ダイはフラットダイ又は円錐ダイなどの当技術分野において公知の任意のダイであってもよい。
【0180】
本発明の実施形態においては、ダイは入口側及び出口側を有し、入口側の直径は0.4~8.0mm、好ましくは2.0~4.0mm、及び/又は出口側の直径は0.8~15mm、好ましくは2.0~6mmである。
【0181】
特定の好適な実施形態においては、ダイは円錐ダイである。円錐ダイとは、ダイが円錐形のキャビティを含み、前記キャビティの壁がテーパ状であることを意味する。円錐ダイは0~50度、好ましくは5~40度、最も好ましくは10~40度の半角を有してもよい。
【0182】
装置がマンドレルをさらに含む本発明の実施形態においては、円錐ダイも好適である。円錐ダイは先細(絞り)ダイであってもよく、別法として、円錐ダイは末広(拡張)ダイであってもよい。好適な実施形態においては、円錐ダイは末広ダイである。
【0183】
ダイが末広である本発明の実施形態においては、入口側の直径の直径は0.4~8.0mm、好ましくは2.0~4.0mm、より好ましくは2.0~3.0mm、さらに及び最も好ましくは2.5~3.0mmである。
【0184】
ダイが末広である本発明の更なる実施形態においては、拡張円錐マンドレルの使用が最も好適である。
【0185】
好ましくは、ダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は1:1~10:1(例えば1:1~5:1)の範囲である。より好ましくはこの比率は約1:1である。
【0186】
本発明の好適な実施形態においては、非配向チューブは、マンドレルの最も広い箇所に、少なくとも管の内部断面積である断面積を有するマンドレル上に延伸される。従って、管はプロセス開始前にマンドレル(及びもしあればマンドレル支持手段)上に供給される。これを実現するため、管の端部はタグ、好ましくはベル状タグ(belled tag)を有する。タグはチューブの一部を、ガラス転移温度を超えて加熱することにより作製される。その後、管の中空に空気又はガス(例えば不活性ガス)が吹き込まれ拡張部分が形成される。冷却後、管は、その後、拡張部分において切断されベル状タグ部を呈する。
【0187】
ダイ及びマンドレルの両方がある実施形態では、管のタグ部は、ダイの出口側から突出し、ダイの出口側から適用された張力付与手段に固定されるようにマンドレル上に供給され得る。他の実施形態においては、ダイがない場合、管が張力付与手段に固定される位置に管を前進させることのみを必要とする。
【0188】
張力付与手段に関して、好適な配置には、タグを把持する一対の鋸歯状の顎を含む引張部と、高張力ケーブルと、を含み、このケーブルの一端は顎に取り付けられ、他端は回転モーメント又は質量が印加されるウィンチ又はローディングステーションに取り付けられ、それによって、延伸張力としても公知の軸方向引張力をタグに印加する。別法として、ケーブルの代わりに、引張部は、延伸技術で使用されるチェーン、ラックピニオン機構、スクリュー機構及び油圧動作式延伸機構を含む任意の張力伝達手段を含む。引張部は、任意選択的に、一般に「Caterpillar(商標)」として公知の一対の連続的な二重反転(contra-rotating)摩擦ベルトをさらに含む。
【0189】
延伸張力はダイ内に管を延伸するのに十分なものとすべきだが、管の引張破壊を引き起こすには不十分とすべきである。つまり、延伸張力は製品の任意の箇所における真応力が製品のその箇所における破壊応力を超えないようにすべきである。
【0190】
本発明の方法の実施形態においては、張力付与手段によってチューブが延伸される速度は0.00001~15000mm/分、好ましくは0.01~15000mm/分、より好ましくは1~15000mm/分、より好ましくは10~10000mm/分、さらにより好ましくは500~10000mm/分、又は最も好ましくは700~9000mm/分である。
【0191】
本発明の方法の他の実施形態においては、張力付与手段によってチューブが延伸される速度は0.00001~15000mm/分、好ましくは0.01~15000mm/分、より好ましくは1~15000mm/分、より好ましくは10~10000mm/分、より好ましくは10~1000mm/分、より好ましくは10~500mm/分、さらにより好ましくは50~500mm/分、さらにより好ましくは100~500mm/分、又は最も好ましくは100~300mm/分(例えば100mm/分、200mm/分又は300mm/分)である。
【0192】
本発明の方法の特定実施形態においては、押出チューブをマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸する前にそのガラス転移温度とその融解温度との間の温度で均熱することが望ましい。本明細書中で使用される場合、用語「均熱(soaking)」は、周囲温度を超える温度に一定時間管を曝露し、管の温度を上昇させることを意味する。均熱によりチューブが要求される変形温度であることを確実とする。変形温度は管が変形される温度を意味する。好ましくは、変形温度は変形される管の融解温度を2~50℃下回る。ホモポリマー及びコポリマーのガラス転移温度及び融解温度は当業者に周知である。
【0193】
他の好適な実施形態においては、変形温度は40℃~150℃、より好ましくは60℃~120℃、より好ましくは70℃~100℃、又は最も好ましくは75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)である。
【0194】
特定の実施形態においては、延伸温度は40℃~150℃、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは70℃~100℃、又はさらにより好ましくは75℃~95℃であってもよい。配向可能な熱可塑性ポリマーがポリ-L-乳酸を含む本発明の実施形態においては、延伸温度は、好ましくは75℃~95℃、より好ましくは80℃~90℃、さらにより好ましくは82℃~88℃、さらにより好ましくは84℃~86℃(例えば85℃)である。
【0195】
均熱時間に関しては、好適な時間は1分~60分、好ましくは2~10分である。当業者には理解されるように、本発明の全実施形態に均熱時間を含める必要はない。つまり、均熱時間は0分とすることができる。
【0196】
他の実施形態においては、プロセスの温度は加熱マンドレル及び/又は加熱ダイを用いることによってさらに制御される。これらは要求される管の変形温度まで加熱される。
【0197】
好適な実施形態においては、延伸装置の温度は例えばサーモスタットによって±1℃の精度に制御される。
【0198】
チューブに変形が施されると、本発明の特定実施形態においては、更なる変形が起こることを防止するため延伸チューブを冷却することが望ましい。一般に、チューブの冷却は、ダイ及び/又はマンドレルに接触中に(すなわちこれら構成要素が加熱されていないとき)又はこれら構成要素が加熱されている場合は前記チューブをマンドレル及び/又はダイ上に延伸させた直後に開始される。
【0199】
不連続バッチプロセスで作製したチューブは張力下で冷却することが望ましい。冷却は能動的であっても受動的であってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「能動的冷却(active cooling)」は、例えばダイの下流側に位置する空気冷却リングなどの冷却手段の使用によって管を周囲温度未満の状態に曝露することにより管を冷却することを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「受動的冷却(passive cooling)」は、管を周囲温度と平衡させることによって管を冷却することを意味する。連続プロセスによって作製されたダイ延伸チューブは任意の公知の方法によって能動的に冷却されても受動的に冷却されてもよい。
【0200】
高分子チューブのバルク断面積は高分子チューブをマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸することによって減少する。
【0201】
延伸チューブの結晶化度は5%以上、好ましくは5%~90%、より好ましくは20%~80%、さらにより好ましくは30%~70%、最も好ましくは40%~60%(例えば40%~50%、例えば45%)であってもよい。
【0202】
本明細書中に開示される方法によって作製されるダイ延伸チューブは従来の押出チューブの結晶化率よりも高い結晶化率を有する。理論により拘束されることを望むものではないが、本発明のダイ延伸チューブから作製されるステントは高分子ステントにおいて一般に起こるバルク侵食(bulk erosion)プロセスではなくむしろ表面侵食プロセスによって生分解する。本発明のプロセスにより作製される管及びステントでは、分解は表面でのみ起こり、予測可能な状態で内部に近づく。これに対し、バルク分解は制御されない状態で起こり、この種の分解は植え込み部位の周囲組織に炎症性反応を誘発する可能性がある。
【0203】
別の実施形態においては、延伸チューブの内部フープ延伸比は少なくとも1.5、好ましくは1.5~10.0(例えば1.5~8.0)であってもよい。
【0204】
別の更なる実施形態においては、延伸チューブの内部フープ延伸比は少なくとも1.2、好ましくは1.2~10.0、より好ましくは1.2~8.0、より好ましくは1.2~5.0、より好ましくは1.2~3.0、最も好ましくは1.2~2.0であってもよい。
【0205】
更なる実施形態においては、軸方向延伸比は1.5:1及び15:1(例えば1.5~10:1、例えば2:1~7:1)であってもよく、好ましくは、軸方向延伸比は2.5:1~4:1である。
【0206】
さらに別の実施形態においては、軸方向延伸比と内部フープ延伸比の比率は0.5:1~10:1の範囲であってもよい(例えば0.5:1~6:1、例えば0.5:1~2:1)。マンドレル、ダイ及びチューブの幾何学的形状は延伸プロセス中チューブに作用する圧縮(半径方向)力及び引張(軸方向)力のバランスに影響する。従って、軸方向延伸比と内部フープ(半径方向)延伸比の比率は日常の実験によってマンドレル及び/又はダイ及び/又は押出チューブの幾何学的形状;及び/又は延伸温度;及び/又は延伸速度を変更することにより容易に変更できる。
【0207】
他の実施形態においては、本発明の方法は連続的である。一般に、引張部は一対の連続的な二重反転摩擦ベルトを含むが、他の類似デバイスも想定され得る。連続プロセスを実現するため延伸装置と同一線上に押出機をセットする。いくつかの実施形態では、好ましくはそのガラス転移温度と融解温度との間にある新たに押出された管は押出機バレルを出てダイ延伸装置に直接供給される。他の実施形態においては、押出機により作製されたチューブは再加熱チャンバに供給される前に(例えば冷却浴によって)冷却される。前記チャンバでは押出チューブを高分子材料のガラス転移温度と融解温度との間の温度まで加熱する。この加熱されたチューブはその後ダイ延伸装置に供給される。押出機のない更なる実施形態においては、押出チューブは他の手法で、例えば電動式スプールから延伸装置に供給される。
【0208】
本発明の方法の好適な実施形態においては、方法に使用される配向可能な熱可塑性プラスチックチューブは1.0mm~1.5mmの内径及び2.0mm~3.0mmの外径を有し、延伸温度は70℃~100℃、延伸速度は100~300mm/分、並びにマンドレル直径は1.80mm~2.40mmである。この好適な実施形態においては、マンドレルテーパの傾斜角度及びダイ半角はそれぞれ個々に15~50度であってもよい。
【0209】
当該方法のより好適な実施形態においては、方法に使用される配向可能な熱可塑性プラスチックチューブは1.1mm~1.3mm(例えば1.2mm)の内径及び2.2mm~2.8mmの外径(例えば2.4mm)を有し、延伸温度は80℃~90℃(例えば85℃)、延伸速度は100~300mm/分、並びにマンドレル直径は1.80mm~2.40mmである。このより好適な実施形態においては、マンドレルテーパの傾斜角度及びダイ半角はそれぞれ個々に20~40度(例えば30度)であってもよい及び/又はダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は1:1であってもよい。好ましくは、ダイ入口直径は2.0mm~8.0mm、より好ましくは2.0mm~6.0mm、より好ましくは2.0mm~4.0mm、さらにより好ましくは2.0mm~3.0mmである。
【0210】
当該方法のさらに好適な実施形態においては、方法に使用される配向可能な熱可塑性プラスチックチューブは1.1mm~1.3mmの内径、2.2mm~2.8mmの外径及び0.50~0.60mm(例えば0.55~0.60mm)の壁厚を有し、延伸温度は80℃~90℃、延伸速度は100~300mm/分、マンドレル直径は1.80mm~2.40mm、ダイ入口直径は2.50mm~3.00mmである。このさらに好適な実施形態においては、マンドレルテーパの傾斜角度及びダイ半角はそれぞれ個々に20~40度であってもよい及び/又はダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は1:1であってもよい。
【0211】
特定の好適な実施形態においては、本発明の方法により作製されるチューブは1.80mm~2.30mmの外径、1.70mm~2.10mmの内径及び0.10mm~0.15mmの壁厚を有する。
【0212】
本発明の更なる実施形態においては、ステントは本発明の方法によって製作されるチューブから準備される。ステントを準備するためにレーザ-切断又は化学エッチングなどの任意の公知の方法が使用され得る。好ましくは、ステントはレーザ-切断によって用意される。ステントとは、人体の内腔に植え込み可能な略管状医療デバイスを含む。ステントは一般に内腔における疾患起因性の局所的な流れの狭窄を防止する又は相殺するために使用される。本発明のチューブから提供されるステントは好ましくは血管内腔、例えば血管内において使用される。好ましくは、ステントは冠動脈ステント又は末梢、心胸郭及び神経血管ステントである。
【0213】
図1に示すのは本発明の方法を実施するのに適した装置である。当該装置は、第1加熱領域(1)と、第2加熱領域(2)と、マンドレル(3)と、マンドレルシャフト(4)と、ダイ(5)と、引張デバイス(6)と、を含む。ダイ(4)は第2加熱領域(2)内に収容されており、マンドレルシャフトは第1加熱領域(1)及び第2加熱領域(2)内に収容されている。
【0214】
第2加熱領域(2)は第1加熱領域(1)の上に配置され、かつ、部分的に第1加熱領域(1)内に収容されている。しかしながら、別の実施形態においては、第2加熱領域は第2加熱領域が第1加熱領域の真上に位置するように第1加熱領域の上に配置されてもよい。更なる実施形態においては、1つの加熱領域のみがあってもよい。加熱領域はそれぞれ個々に40℃~150℃、より好ましくは60℃~120℃、より好ましくは70℃~100℃、又は最も好ましくは75℃~95℃(例えば85℃又は90℃)の温度まで加熱してもよい。さらに別の実施形態においては、加熱領域がなくてもよい。
【0215】
図1に示すように、マンドレル(3)はダイ(5)に近接する端部においてマンドレルシャフト(4)に連結されている。マンドレルシャフトの基部は張力付与手段(不図示)の基部に固定されてもよい。マンドレル(3)はテーパ状の先(前)縁及び出口端部(後)縁(それぞれ3a及び3b)を有する。テーパの傾斜角度は5~60度、好ましくは10~40度、より好ましくは10~20度であってもよい。
【0216】
図1に示される円錐ダイ(5)は末広(拡張)ダイである。つまり、ダイ出口の直径がダイ入口の直径よりも大きい。ダイ入口直径は0.4~8.0mmであってもよく、ダイ出口直径は1.0~15mmであってもよい。ダイの半角は0~50度、好ましくは10~40度、より好ましくは10~20度であってもよい。別法として、ダイは先細(絞り)ダイ(不図示)とすることができる。つまり、ダイ入口の直径がダイ出口の直径よりも大きい。この別実施形態においては、ダイ出口直径は0.4~8.0mm、好ましくはからであってもよく、ダイ入口直径は1.0~15mmであってもよい。ダイの半角は0~50度、好ましくは10~40度、より好ましくは10~20度であってもよい。
【0217】
マンドレル(3)はダイ内で同軸になるように取り付けられる。ダイ内においてマンドレルヘッドの位置を変えるためマンドレルはその軸方向において調整できる。例えば、別の実施形態においては、マンドレルはその出口縁がダイの出口側を通過しそこから突出するようにダイ内に取り付けることができる。使用においては、しかしながら、マンドレルが軸方向に動けないように固定されることが好ましい。マンドレルの最も広い箇所における直径は0.01mm~15mm、好ましくは1.5mm~4.0mmであってもよい。別法として、直径は0.01mm~15mm、好ましくは1.50mm~3.00mm、より好ましくは1.80mm~2.60mm、さらにより好ましくは2.00mm~2.60mmであってもよい。
【0218】
引張デバイス(6)はダイの下流側に配置されている。引張デバイスは本明細書内で述べた任意のデバイスであっても、当業者に公知の任意の別の方法であってもよい。
【0219】
図1に示される装置を用いた一般的方法では、ベル状タグを有する高分子チューブがマンドレルシャフト及びマンドレルヘッド上に供給され、ベル状タグは引張デバイス(6)の顎に把持される。延伸プロセスを開始するため、張力付与手段(不図示)は力を印加して、引張破壊を引き起こすことなくポリマーチューブの塑性ひずみが増加するように引張デバイスをダイ出口から離れるよう軸方向に初めはゆっくりと動かす。延伸速度はその後一定の延伸速度になるまで徐々に増加される。日常の実験によって張力付与手段の延伸速度を変更することにより適切な延伸張力が決定される。延伸速度に関しては、0.00001~15000mm
/分、好ましくは0.01~15000mm
/分、より好ましくは1~15000mm
/分、より好ましくは10~10000mm
/分、さらにより好ましくは500~10000mm
/分、又は最も好ましくは700~9000mm
/分であってもよい。別法として、延伸速度は0.00001~15000mm
/分、好ましくは0.01~15000mm
/分、より好ましくは1~15000mm
/分、より好ましくは10~10000mm
/分、より好ましくは10~1000mm
/分、さらにより好ましくは10~500mm
/分、さらにより好ましくは50~500mm
/分、さらにより好ましくは100~500mm
/分、又は最も好ましくは100~300mm
/分であってもよい。非常に最も好適な実施形態においては、延伸速度は100,200又は300mm
/分であってもよい。管はダイから出ると前述のように冷却されてもよい。
【0220】
図2aは、本発明の方法を実施するのに適したマンドレル及びダイ配置の第2実施形態を示す。
図2aでは別のダイ及びマンドレル構成に焦点を当てるため、明確さを確保するために
図1に示される第1及び第2加熱領域並びに引張デバイスは省略されている。
【0221】
図2aに示される装置は、マンドレル(1)と、マンドレルシャフト(2)と、ダイ(3)と、を含む。この実施形態の別の配置を
図2bに示す。マンドレルヘッド(1)は円錐状に拡張している。
図2aに示される円錐のテーパは約13度であるが、5~60度、好ましくは10~40度、より好ましくは10~30度であってもよい。マンドレルヘッドはダイ(2)の壁によって形成されたキャビティ内に全体的に又は部分的に配置されている。マンドレルヘッドは、マンドレルを軸方向に拘束しかつ、位置決めする機能を果たすマンドレルシャフト(2)によって支持されている。マンドレルシャフトはマンドレルヘッドから取り外し可能であってもよい。マンドレルヘッド(1)はダイ(3)内において同軸になるように配置されている。
【0222】
示されるように、ダイ(3)は、円錐状に拡張したマンドレルヘッドのテーパの角度に相補的な半角を備えた円錐ダイである。すなわち、ダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は約1:1である。他の実施形態においては、ダイ半角とマンドレルテーパの傾斜角度の比率は1:1~5:1(例えば1:1~3:1)であってもよい。
図2aに示されるダイ(3)は末広(拡張)ダイである。つまり、ダイ出口直径はダイ入口直径よりも大きい。ダイ入口直径は0.4~8.0mmであってもよく、ダイ出口直径は1.0~15mmであってもよい。他の実施形態においては、ダイは先細(絞り)ダイであってもよい。
【0223】
図2aでは、ダイ(3)は上領域及び下領域を有する。上領域(3a)はダイ出口に近接し、円錐形である。従って、このダイは円錐ダイである。下領域(3b)はダイ入口に近接し、円筒形である。換言すると、ダイの下領域の半角は事実上0度である。他の類似の実施形態においては、ダイの上領域は円筒形であってもよく、下領域は円錐形であってもよい。
【0224】
図2aは、また、装置内を延伸されているある長さのチューブ(4)を示す。前述のように押出管をマンドレル上に装填してもよい。チューブ(そのガラス転移温度と融解温度との間の温度であってもよい)は引張デバイス(不図示)によってマンドレルシャフト上に、ダイ内に及びマンドレルヘッド上に引張られる。引張デバイスの張力付与手段により作用される軸力により、チューブが軸方向に変形される。マンドレルヘッドの拡張円錐部に達すると、チューブの高分子材料をフープ(半径)方向に強制的に拡張させる。この半径方向変形はマンドレルヘッドの表面とダイの下領域の内壁との間の領域が徐々に狭まることに起因する。半径方向変形の量はチューブがダイの円筒形下領域と円錐形上領域との間の境界に到達するまで増加し続ける。チューブがこの境界を越えると半径方向変形の量は急速に減少するが、チューブは軸方向に変形し続ける。チューブがダイを出ると変形は終了し、そのガラス転移温度未満に冷却される。
【実施例】
【0225】
本発明の方法により要求特性を示す高分子チューブが作製されることを実証するため
図3に示される装置を使用して数回の実験を実施した。
【0226】
図3の装置は、加熱可能な第1領域(1)及び第2領域(2)と、マンドレル(3)と、ダイ(4)と、マンドレルシャフト(5)と、引張試験機械の基部に装置を取り付けるための取付具(6)と、を含む。
【0227】
これら実験では、市販グレードのPLLA(Purasorb(商標)PL38)から作製された押出チューブを選択した。このグレードのポリマーは高分子ステントなどの用途の医療グレードチューブを作製するために使用される。PL38は188℃の融解温度を有する不均一なペレットの形態で供給される押出グレードの半結晶性PLAである。これら実験のため、本発明者はZeus Inc.,USAにより供給されている市販の押出チューブを得た。本発明者は、また、実験室規模の一軸押出機(Dr Collin Teachline、スクリュー径16mm)を用いてPurasorb(商標)PL38ペレットから製造された非商用押出チューブを使用した。ここでこの押出プロセスについてより詳細に説明する。
【0228】
Purasorb(商標)PL38はその高い加工温度(200℃超)及び高粘性のため加工が比較的困難なポリマーである。従って、標準的な手順を使用してペレットの押出機スクリューに供給すると問題があることが判明した。本発明者は押出プロセスを、1)ペレットを押出前に一晩乾燥させること、2)窒素ガスを押出機のホッパーに供給し、窒素ガスのブランケットでペレットをカバーすることにより酸素による分解の可能性を低下させること、及び3)押出チューブを好適な長さの切片に切断し、それらを窒素環境中において乾燥させること、によって改良できることを見出した。
【0229】
押出管の寸法を測定した。具体的には、マイクロメータを使用して外径(OD)を測定し、ピンゲージを使用して内径(ID)を測定した。高解像フラットベッド型スキャナを使用して同心性及び壁厚を確認した。
【0230】
以下、好適な特性を備えた押出チューブを作製するための典型的な押出条件を表1~3に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
様々な管を押出した。管寸法は押出機スクリュー速度、融解長さ及び引張速度のわずかな変さらにより制御することができた。作製した管の詳細を表4に示す(OD=外径;ID=内径;WT=壁厚)。
【0235】
【0236】
例1~3の押出管及びダイ延伸管の評価
引張試験
押出管とダイ延伸管の機械的特性を比較するため、100Nロードセルを備えたInstron張力計を使用した引張試験によりサンプルを検査した。試験手順は商用医療チューブ押出加工会社であるZeus Inc.により使用されているものに従った。長さ70mmの押出管を、グリップ向上のため管端部の周りに巻いた研磨紙の層を使用して張力計クランプの顎の間に端部を直に挟むことによりクランプした。伸張速度50mm/分、グリップ長さ50mmで試験を実施した。管寸法、変形率及び測定荷重を用いて各試験から応力ひずみ曲線を得、以下のパラメータを算出した:引張強さ、弾性係数、降伏強度及び、破断までの伸度(extension to break)。
【0237】
曲げ試験
曲げ特性についても3点曲げモード(3-point bend mode)を備えた同じ張力計を使用して検査した。各試験では、管のサンプルを2点で支持し、中央に荷重をかけて管を変形させた。荷重対伸びのデータを記録し、曲げ応力及びひずみを記録データ及びサンプルの断面積から算出した。
【0238】
結晶化度試験
結晶化度を特定するため、40℃~170℃の温度範囲間において変調DSCを実施した。変調振幅は0.7℃、加熱速度は5℃/分、変調時間は1分に設定した。可逆及び不可逆熱流曲線を得た。正規化した冷結晶化及び再結晶化エンタルピーを不可逆的熱流曲線上に見られる発熱から算出し、正規化した融解エンタルピーを可逆熱流曲線上の吸熱の積分から得た。以下の式を用いて結晶化率を算出した。
【数1】
【0239】
100%結晶PLAの融解エンタルピーは93J/gである。
【0240】
本発明者は開示した装置設定を使用して以下のダイ延伸法を実施した。
【0241】
実施例1
この例では
図2aに示されるマンドレル/ダイ配置を使用した。マンドレルは一部が第2ヒータ領域内にある。
【0242】
市販の押出管(Zeus Inc.から入手)は外径3.00mm、内径1.20mm及び壁厚0.90mmの寸法であった。この一連の実験で使用したパラメータを、以下、表5に示す。
【0243】
【0244】
実験手順は以下の通り。
1.上述のように押出管の一部に拡張部分を作製する。
2.固化時、管を拡張部分の位置で切断してタグを形成する。
3.膨張したタグがマンドレルヘッド上に配置されるように長さ180mmの管をマンドレルシャフト上に供給する。その後、マンドレルヘッドがダイ内において同軸上に配置され、かつ、膨張したタグがマンドレルヘッドとダイとの間に通されるようにマンドレル及びマンドレルシャフトを温度制御されたオーブン内の張力計内に配置する。
4.その後、膨張したタグを張力計クロスヘッド(引張部)のクランプに保持する。
5.管のサンプルを密閉された第1及び第2加熱領域内において均熱時間10分間で予熱する。
6.均熱時間後、サンプルを一定速度で伸ばすように張力計クロスヘッドを設定する。
7.管の全長をマンドレル上に延伸させて500mmの最終伸張長さにする。
8.延伸管を張力下で20分間冷却する。
【0245】
実施例1の結果
引張試験
延伸PLLA管及び押出PLLA管の引張試験による典型的結果を
図4に示す(A=ダイ延伸チューブ;B=押出チューブ)。延伸管の応力-ひずみ挙動と押出管の応力-ひずみ挙動との間の大きな違いは明らかある。押出管は約4%の伸びで約50MPaのピーク引張応力まで弾性的に変形し、その後、30MPaの一定レベルに低下した。サンプルが約40%の伸びで破壊する前にひずみ硬化共鳴効果(strain hardening resonance effect)が発生した。ダイ延伸材料は約160MPaの初期ピーク(降伏)応力に達する前に弾性領域においてより高いモジュラス(勾配)を示した。20%の伸びを超える高いひずみにおいて、約17%の伸びで破壊するまで応力は約195MPaまで直線的に増加した。
【0246】
表6に示すように、ダイ延伸後、引張降伏強度は約190%増加した。極限(最大)引張強さは押出管の値よりも250%増加した。ダイ延伸後、引張係数は約61%低下することが判明した。
【0247】
【0248】
曲げ結果
延伸PLLA管及び押出PLLA管の曲げ試験による典型的結果を
図5に示す(A=ダイ延伸チューブ;B=押出チューブ)。
【0249】
結論として、実施例1のバッチダイ延伸法により、配向された小口径PLLAチューブを約3:1の延伸比、60~80℃の温度で作製した。ダイ延伸管の引張降伏強度は押出管の引張降伏強度よりも約190%高く、最大引張強さは約250%高くなった。引張係数は押出管の引張係数と比較して約61%増加した。この研究は、ステントの形成に使用できる高分子管にダイ延伸プロセスを用いることによりPLLA管の機械的特性の大幅な向上が実現できることを示している。
【0250】
実施例2
市販の押出管(Zeus Inc.から入手)は外径1.6mm、内径1.0mm及び壁厚0.3mmの寸法であった。この一連の実験で使用したパラメータを、以下、表7に示す。
【0251】
【0252】
実験手順は以下の通り。
1.管の小部分を加熱し、その全体に空気を吹き込むことにより押出管の端部部分にタグを作製する。
2.固化時、バブルの位置で管を切断し、タグを形成する。
3.膨張したタグがマンドレルヘッド上に配置されるように長さ180mmの管をマンドレルシャフト上に供給する。その後、マンドレルヘッドがダイ内において同軸上に配置され、かつ、膨張したタグがマンドレルヘッドとダイとの間に通されるようにマンドレル及びマンドレルシャフトを温度制御されたオーブン(第1及び第2加熱領域)内の張力計内に配置する。
4.その後、膨張したタグを張力計クロスヘッド(引張部)のクランプに保持する。
5.管のサンプルを密閉された第1及び第2加熱領域内において均熱時間5分間で予熱する。
6.均熱時間後、サンプルを一定速度で伸ばすように張力計クロスヘッドを設定する。
7.管の全長をマンドレル上に延伸させて500mmの最終伸張長さにする。
8.延伸管を張力下で10分間冷却する。
【0253】
実施例2の結果
引張試験
実施例2のダイ延伸管及び押出PLLA管の引張試験による典型的結果を
図6に示す(A=ダイ延伸チューブ;B=押出チューブ)。2つの管の応力-ひずみ挙動の顕著な違いは明らかである。押出管は約4%の伸びで約50MPaのピーク引張応力まで弾性的に変形し、その後、30MPaの一定レベルに低下した。40%~85%の伸張でサンプルが破壊する前にひずみ硬化共鳴効果が発生した。ダイ延伸材料は約95MPaの初期ピーク(降伏)応力に達する前に弾性領域においてより高いモジュラス(勾配)値を示した。15%の伸びを超える高いひずみにおいては、30%以下の伸びで破壊するまで応力は約125MPaまで直線的に増加する。
【0254】
各管の3つのサンプルの平均結果を表8にまとめる。ダイ延伸後、引張降伏強度は71%増加した。極限(最大)引張強さは押出管の値よりも136%増加した。ダイ延伸後、引張係数は約23%増加することが判明した。ダイ延伸後、破断点伸度は約60%低下した。
【0255】
【0256】
弾性係数及び引張強さの値はこのプロジェクトでダイ延伸管に関して前に報告した値のいくつかよりも低い。この理由は、ここで使用した延伸管の寸法が内径2.33mm及び外径1.66mm、壁厚0.335mmであったためである。
【0257】
曲げ試験
曲げ(3点曲げ)試験データによる結果を
図7に示す(A=ダイ延伸チューブ;B=押出チューブ)。実施例2のダイ延伸管は押出管の曲げ弾性率よりも79%高い曲げ弾性率を示した。曲げ応力の平坦域により画定される曲げ強度もまた延伸管において34%高かった。これら結果を表9にまとめる。
【0258】
【0259】
結晶化度試験
変調DSC実験の結果から、押出管の結晶化度の値は13.75±1.94(平均値±標準誤差)であるが、ダイ延伸管ではこの値は40.94±4.83に増加することが判明した。この結晶化度の大幅な増加は試験中に管が曝露される昇温とダイ延伸プロセス中のひずみによる結晶化に起因するものと考えられる。
【0260】
実施例3
市販の押出管(Zeus Inc.から入手)は外径3.0mm、内径1.2mm及び壁厚0.9mmの寸法であった。この一連の実験で使用したパラメータを、以下、表10に示す。
【0261】
【0262】
実験手順は以下の通り。
1.空気圧を印加し、管の小部分を加熱することにより押出管の一部にタグを作製する。
2.固化時、バブルの位置で管を切断し、タグを形成する。
3.膨張したタグがマンドレルヘッド上に配置されるように長さ180mmの管をマンドレルシャフト上に供給する。その後、マンドレルヘッドがダイ内において同軸上に配置され、かつ、膨張したタグがマンドレルヘッドとダイとの間に通されるように、マンドレル及びマンドレルシャフトを温度制御されたオーブン(第1及び第2加熱領域)内の張力計内に配置する。
4.その後、膨張したタグを張力計クロスヘッド(引張部)のクランプに保持する。
5.管のサンプルを密閉された第1及び第2加熱領域内において80℃、均熱時間10分間で予熱する。
6.均熱時間後、張力計クロスヘッドの延伸速度を900mm/分の速度まで徐々に増加する。
7.管の全長をマンドレル上に延伸させて500mmの最終伸張長さにする。
8.延伸管を張力下で冷却する。
【0263】
ダイ延伸実験
ステントを作製するためにダイ延伸チューブを使用する場合、延伸管の外径が約2.0mm及び内径が約1.8mmであり、ゆえに、約0.1mm(100マイクロメートル)の壁厚を付与することが好ましい。好適な管寸法を実現する目的で、特定の延伸パラメータと最終延伸管寸法との間の関係を調べるため、選択した範囲のマンドレル幾何学的形状、延伸速度及び設定温度を使用して一連のダイ延伸実験を実施した。これら実験で使用した押出管は本発明者が上述の一軸押出法を使用して作製したものである。押出管は2.65mmの外径及び1.20mmの内径を有するものであった。
【0264】
これら実験を
図3に示すダイ延伸リグを使用して実施し、全ての実験において85℃の延伸温度を使用した。全般的な実験手順は以下の通り。
1.空気圧を印加し、管の小部分を加熱することにより押出管の一部にバブルを形成する。
2.固化時、バブルの位置で管を切断し、タグを形成する。
3.長さ180mmの管を温度制御されたオーブン内の張力計内に入れ、膨張したタグをマンドレル上に配置する。
4.5分の均熱時間の後、サンプルを一定速度で伸ばすように張力計クロスヘッドを設定する。
5.管の全長をマンドレル上に延伸させて500mmの最終伸張長さにする。
6.延伸管を張力下で10分間冷却する。
【0265】
ダイ延伸実験の結果
図8は、延伸管の内径及び外径がマンドレルの直径及び延伸速度に応じてどのように変化するかを示すものであり、この結果を表11にまとめる。この結果は外径2.0mm及び内径1.8mmの目標管寸法を実現するためには1.8mm~2.6mmのマンドレル直径及び100mm/分~300mm/分の延伸速度が好ましいことを示唆している。
【0266】
【0267】
以下の例は、ダイ延伸実験において特定された好適な範囲のマンドレル直径及び延伸速度を使用して実施した。
【0268】
実施例4
この例では
図2bに示されるマンドレル/ダイ配置を使用した。85℃の延伸温度を付与するためマンドレルの一部は第2ヒータ領域内にある。実験手順は以下の通り。
1)上述のように押出管の一部に拡張部分を作製する。
2)固化時、管を拡張部分の位置で切断してタグを形成する。
3)膨張したタグがマンドレルヘッド上に配置されるように長さ180mmの管をマンドレルシャフト上に供給する。その後、マンドレルヘッドがダイ内において同軸上に配置され、かつ、膨張したタグがマンドレルヘッドとダイとの間に通されるようにマンドレル及びマンドレルシャフトを温度制御されたオーブン内の張力計内に配置する。
4)その後、膨張したタグを張力計クロスヘッド(引張部)のクランプに保持する。
5)管のサンプルを密閉された第1及び第2加熱領域内において均熱時間10分間で予熱する。
6)均熱時間後、サンプルを一定速度で伸ばすように張力計クロスヘッドを設定する。
7)管の全長をマンドレル上に延伸させて500mmの最終伸張長さにする。
8)延伸管を張力下で20分間冷却する。
【0269】
この一連の実験で使用したパラメータ及び得られた延伸管寸法を、以下、表12に示す。
【0270】
実施例4a、4b及び4cのダイ延伸チューブは非商用押出PLLAチューブから作製し、一方で、実施例4d及び実施例4eのダイ延伸チューブはZeus Inc., USAにより供給された商用押出PLLAチューブから作製した。
【0271】
【0272】
実施例4のダイ延伸管の評価
引張試験
押出管及び延伸管のサンプルを、100Nロードセルを備えたInstron張力計を使用した引張試験により検査した。試験手法は商用医療チューブ押出加工会社であるZeus Inc.により使用されているものに従ったが、延伸管がグリップというよりむしろゲージ長において滑って破壊しないようにするためクランプ法を開発する必要があった。90mmの管長さを使用し、2つの密に嵌合するピンゲージをそれらが中央で接するように管の各端部に挿入した。管の半径に組み込むため特別に修正したクランプを作製した。5mm/分の伸張速度、30mmのゲージ長で試験を実施した。管寸法、変形率及び測定荷重を用いて各試験から応力ひずみ曲線を得、以下のパラメータを算出した:引張強さ、弾性係数、降伏強度及び破断までの伸度。この方法は押出管及び延伸管の両方に適していることが判明した。
【0273】
曲げ試験
同じ張力計を3点曲げモードで使用し、曲げ特性も検査した。各試験において、管のサンプルを25mm離れた2点で支持し、圧縮荷重を中央に印加し、管を1mm/分の速度で変形させた。荷重対伸張のデータを記録し、記録データ及び管寸法から曲げ応力及びひずみを算出した。
【0274】
フープ試験
押出管及びダイ延伸管のフープ強度を試験するためにジグを設計及び製造した。試験片はフープ強度試験用の4つの切り欠きを有するチューブの輪であり、ダイ延伸管から切片として切断したものである。この試験片は2mmの幅及び2つの両面切り欠きを有し、切り欠き間の距離は1.0mmである(米国特許出願公開第2010/0025894A1号で使用されている試験片に類似する)。試験は5mm/分の伸張速度で実施した。
【0275】
結晶化度試験
実施例1~3のチューブの結晶化度を試験するのに使用した試験と同じ試験を使用した。
【0276】
実施例4の結果
引張試験
実施例4の延伸管の引張試験の結果を
図9に示し、かつ、表13にまとめる。全サンプルが変形の線形(弾性)領域において類似の挙動を示した。全サンプルで110~130MPaの引張応力において降伏が起こり、200~250MPaの引張応力範囲内で破壊が起こった。
【0277】
破断点ひずみは実施例4d及び実施例4e(ダイ延伸商用チューブ)のサンプルの方が実施例4a及び実施例4c(ダイ延伸非商用チューブ)のサンプルよりも低かった。0.14mm及び0.15mmの壁厚をそれぞれ有する実施例4a及び実施例4bのサンプルにおいて最大破断点ひずみを測定した。
【0278】
全サンプルの引張特性は同等であった。実施例4b及び実施例4cにおいて最大引張係数及び引張強さ(UTS)を測定し、その一方で、実施例4d及び実施例4eにおいて最大降伏強度を認めた。
【0279】
【0280】
曲げ試験
3点曲げ試験の結果を
図10に示し、かつ、表14にまとめる。全サンプルは曲げにおいて類似の挙動を示したが、曲げ強度には顕著な差異があった。曲げ強度は主として壁厚に依拠することが判明している。曲げ弾性率は3965~5999MPaの範囲であった。実施例4dの延伸チューブが最大曲げ強度及び最大曲げ弾性率を示した。
【0281】
【0282】
フープ強度試験
フープ強度の測定はダイ延伸非商用押出PLLAチューブ(実施例4a、4b及び4c)についてのみ可能であったが、この理由は、これらが要求される幾何学的形状にレーザ-切断された唯一の管であったためである。これら試験の結果を
図11に示し、かつ、表15にまとめる。この試験に使用した延伸チューブサンプルのサイズ(2つの半円状の切り抜きを有する0.5mmの輪)のため、試験中、サンプルに予め張力をかけなかった。これは、
図11に示すいくつかのサンプルにおいて応力が上昇し始めるまでに遅れがある理由を説明するものである。全サンプルがピークに達する前に応力の線形上昇を示した。試験片の狭い部分の丸形の幾何学的形状のため、モジュラスを算定することはできなかった。
【0283】
表15の結果は延伸管の壁厚が減少するにつれてフープ強度(降伏強度及び極限強度の両方)が増加したことを示す。これは、フープ強度は管に付与される延伸比に比例することを示唆する。
【0284】
【0285】
これらフープ強度の測定値は、Abbott Cardiovascular Inc.により開発された拡管プロセスについて詳述する米国特許出願公開第2010/0025894A1号に示される測定値と直接比較することができる。本発明の方法により作製されるダイ延伸チューブの極限フープ強度(117~156MPa)は米国特許出願公開第2010/0025894A1号の半径方向拡張チューブの極限フープ強度(75~116MPa)よりも高い。
【0286】
結晶化度試験
変調DSC試験の結果を表16に示す。結晶化度値は37~47%の範囲であった。実施例4d及び実施例4eのダイ延伸チューブは実施例4a及び実施例4bのダイ延伸チューブよりもそれぞれ約5%高い結晶化度を示した。
【0287】
【0288】
ダイ延伸チューブと押出チューブとの比較
実施例4a~4eのダイ延伸チューブの物性を、A)非商用押出PLLAチューブ(比較実施例1)及びB)商用(Zeus)押出PLLAチューブ(比較実施例2)の物性と比較した。比較実施例1のチューブは0.575mmの壁厚(外径:2.35mm;内径1.2mm)を有するものであり、比較実施例2のチューブは0.59mmの壁厚(外径:2.38mm;内径1.2mm)を有するものであった。結果を表17にまとめる。
【0289】
【0290】
引張係数には大幅な増加があった。最も顕著な変化は引張強さにおいて発生し、引張強さはダイ延伸後に3~4倍増加した。比較実施例1及び比較実施例2についてはフープ強度を測定しなかった。
【0291】
本発明を上記例のみに限定する意図はなく、当業者には添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく他の実施形態も容易に明らかとなることは理解されよう。
【0292】
本発明の他の態様には以下を含む。
態様
態様1. ステントの形成に使用される管を製造する方法であって、
固相の配向可能な熱可塑性ポリマーチューブをマンドレル上に及び/又はダイ内に延伸することによってチューブを変形させるステップであって、マンドレルが先端部及び出口端部を有し、ダイが入口側及び出口側を有し、
延伸機構がマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側からチューブに延伸張力を付与し、前記張力がチューブの引張破壊を引き起こすには不十分であるがチューブを変形させるには十分であることによって、固相のチューブをマンドレル上及び/又はダイを通して延伸してポリマーの一軸又は二軸配向を誘導する、ステップと、
変形されたチューブをマンドレルの出口端部及び/又はダイの出口側から回収するステップと、
を含む、方法。
態様2. 配向可能な熱可塑性ポリマーチューブが熱可塑性ポリマーのガラス転移温度超かつ融解温度未満の温度である、態様1に記載の方法。
態様3. 得られた管の壁厚が75~150マイクロメートルである、態様1又は2に記載の方法。
態様4. 高分子チューブのバルク断面積を、前記チューブをマンドレル上に及び/又はダイを通して延伸することによって低減する、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
態様5. 配向可能な熱可塑性ポリマーチューブがタグ部を有し、延伸機構が、タグ部を把持する把持機構を含む引張部を含む、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
態様6. 熱可塑性ポリマーチューブが高分子溶融体から押し出される、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
態様7. 熱可塑性ポリマーチューブが生吸収性である、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
態様8. 熱可塑性ポリマーが、アルブミン;コラーゲン;ヒアルロン酸及びその誘導体;アルギン酸ナトリウム及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;ゼラチン;デンプン;セルロースポリマー;カゼイン;デキストラン及びその誘導体;多糖類;フィブリノーゲン;ポリ(バレロラクトン);ポリジオキサノン;ラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマー;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレラート);ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー;ポリ(アルキルカーボネート);ポリ(オルトエステル);チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート;ポリ(エチレンテレフタラート);ポリ(無水物);ポリ(エステル-アミド);ポリホスファゼン;ポリ(アミノ酸);ポリ-L-乳酸(PLLA);ポリ-D,L-乳酸(PDLLA);ポリグリコール酸(PGA);ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA);ポリカプロラクトン;ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB);ポリジオキサノン;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート);ポリオルトエステル;ポリ(エステルアミド);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(無水物-コ-イミド);ポリ(プロピレンフマラート);擬似ポリ(アミノ酸);ポリ(アルキルシアノアクリレート);ポリホスファゼン;並びにポリホスホエステルである、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
態様9. 熱可塑性ポリマーがポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、又はポリ(グリコリド)である、態様8に記載の方法。
態様10. マンドレルの最も広い箇所における直径が0.01~15mmである、態様1~9のいずれかに記載の方法。
態様11. マンドレルの先端部がテーパ状である及び/又はマンドレルの出口端部がテーパ状である、態様9に記載の方法。
態様12. マンドレルが拡張円錐マンドレルである、態様9に記載の方法。
態様13. テーパの傾斜角度が5~60度であり、任意選択的にテーパの傾斜角度が20~40度である、態様11又は12に記載の方法。
態様14. ダイの入口側が0.4~8.0mmの直径を有し、及び/又はダイの出口側が1.0~15mmの直径を有し、任意選択的にダイの入口側が2.0~4.0mmの直径を有する、態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
態様15. ダイが円錐ダイ、先細(絞り)ダイ、末広(拡張)ダイ及び平行(サイジング)ダイから選択され、任意選択的にダイが末広ダイである、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
態様16. ダイ入口及び/又は出口の半角が0~50度であり、任意選択的に半角が20~40度である、態様1~15のいずれか1つに記載の方法。
態様17. ダイ入口又は出口角度とマンドレルテーパの傾斜角度との比率が1:1~10:1の範囲、任意選択的に1:1~5:1の範囲である、態様10~16のいずれか1つに記載の方法。
態様18. マンドレル及び/又はダイが、配向可能な熱可塑性ポリマーチューブに使用されるポリマーのガラス転移温度と融解温度との間の温度に維持される、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。
態様19. 延伸速度が0.00001~15000mm/分である、態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
態様20. 内部フープ延伸比が少なくとも1.5である、態様1~19のいずれか1つに記載の方法。
態様21. 軸方向延伸比が1.5:1~15:1である、態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
態様22. 軸方向延伸比が2.5:1~4:1である、態様21に記載の方法。
態様23. 軸方向延伸比と内部フープ延伸比の比率が0.5:1~10:1の範囲である、態様1~22のいずれか1つに記載の方法。
態様24. 変形ステップの前に温度調節高分子チューブを上流側押出機から押し出すステップをさらに含む、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。
態様25. 温度調節ポリマーチューブをポリマーのガラス転移温度と融解温度との間の温度に予熱するステップをさらに含み、チューブが変形前に1~60分間前記温度に維持される、態様1~24のいずれか1つに記載の方法。
態様26. 温度が2~10分間維持される、態様25に記載の方法。
態様27. 配向可能な熱可塑性ポリマーチューブの冷却がダイ及び/又はマンドレルに接触中に、又は、前記チューブがマンドレル上に及び/又はダイを通して延伸された直後に開始される、態様1~26のいずれか1つに記載の方法。
態様28. 当該方法がダイ及びマンドレル両方の使用を含む、態様1~27のいずれか1つに記載の方法。
態様29. 得られたチューブの結晶化度が5%~90%、任意選択的に30%~70%である、態様1~28のいずれか1つに記載の方法。
態様30. 当該方法が連続的である、態様1~29のいずれか1つに記載の方法。
態様31. 当該方法に使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブが0.5mm~4.0mmの内径及び0.9mm~15mmの外径を有する、態様1~30のいずれか1つに記載の方法。
態様32. 前記方法に使用される配向可能な熱可塑性ポリマーチューブが0.1mm~1.0mmの壁厚を有する、態様1~31のいずれか1つに記載の方法。
態様33. 温度が約75℃~約95℃であり、任意選択的に温度が約85℃である、態様2~32のいずれか1つに記載の方法。
態様34. 前記態様のプロセスが施されたチューブからステントを準備するステップをさらに含む、態様1~33のいずれか1つに記載の方法。
態様35. 75マイクロメートル~150マイクロメートルの壁厚を有する高分子材料を含むステントに使用される管であって、任意選択的に当該管が2,500~6,000MPaの引張係数及び90~600MPaの引張降伏強度を有する管。
態様36. 高分子材料が生吸収性であり、分解生成物が生体適合性である、態様35に記載の管。
態様37. 高分子材料が管の軸方向及び半径方向に配向されている、態様35又は態様36に記載の管。
態様38. チューブに、マンドレル及び/又はダイを用いたダイ延伸によって配向が施される、態様37に記載の管。
態様39. 引張強さが120~800MPaである、態様35~38のいずれか1つに記載の管。
態様40. 当該管が0.5~4.0mmの内径及び1.5mm~15mmの外径を有する、態様35~39のいずれか1つに記載の管。
態様41. 壁厚が100マイクロメートルである、態様35~40のいずれか1つに記載の管。
態様42. 高分子材料が、アルブミン;コラーゲン;ヒアルロン酸及びその誘導体;アルギン酸ナトリウム及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;ゼラチン;デンプン;セルロースポリマー;カゼイン;デキストラン及びその誘導体;多糖類;フィブリノーゲン;カプロラクトン及び/又はラクチド及び/又はグリコリド及び/又はポリエチレングリコール、ポリ(バレロラクトン)、ポリジオキサノン及びラクチドから調製されたコポリマー;ラクチドと1,4-ジオキサン-2-オンとのコポリマー;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレラート);ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレラート)コポリマー;ポリ(アルキルカーボネート);ポリ(オルトエステル);チロシンベースのポリカーボネート及びポリアリレート;ポリ(エチレンテレフタラート);ポリ(無水物);ポリ(エステル-アミド);ポリホスファゼン;ポリ(アミノ酸);ポリ-L-乳酸(PLLA);ポリ-D,L-乳酸(PDLLA);ポリグリコール酸(PGA);ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー(PLGA);ポリカプロラクトン;ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB);ポリジオキサノン;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレラート);ポリオルトエステル;ポリ(エステルアミド);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(無水物-コ-イミド);ポリ(プロピレンフマラート);擬似ポリ(アミノ酸);ポリ(アルキルシアノアクリレート);ポリホスファゼン;並びにポリホスホエステルである、態様35~41のいずれか1つに記載のチューブ。
態様43. 高分子材料がポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(グリコリド)、又はそれらのコポリマー及び/又はブレンドである、態様42のチューブ。
態様44.高分子材料がポリ(L-ラクチド)である、態様43のチューブ。
態様45.高分子材料が5~90%、好ましくは30~70%の結晶化度を有する、態様35~44のいずれか1つに記載のチューブ。
態様46. 態様1~33のいずれか1つに記載の方法によって作製される管。
態様47. 当該管が態様35~45のいずれか1つに記載のように定義される、態様46に記載の管。
態様48. 態様35~47のいずれか1つに記載のチューブから形成されたステントであって、任意選択的にステントが血管ステント、尿管ステント、尿道ステント、十二指腸ステント、大腸ステント又は胆管ステントである、ステント。
態様49. ステントが冠動脈ステント又は末梢、心胸郭もしくは神経血管ステントであり、任意選択的にステントが拡張可能である、態様48に記載のステント。
態様50. ステントが表面侵食プロセスを受ける、態様48又は態様49に記載のステント。
態様51. 内径が、冠動脈ステント用に拡張される場合は0.5~4.5mm、又は末梢血管ステント用に拡張される場合は2.0~10.0mmである、態様48~50のいずれか1つに記載のステント。
態様52. ステントが生体内への植え込み後6か月~36か月の期間にわたって生分解する、態様48~51のいずれか1つに記載のステント。
態様53. 5~20バール(500~2000kPa)の拡張圧力に耐えることができる、態様48~52のいずれか1つに記載のステント。
態様54. 放射線不透性マーカーをさらに含む、態様48~53のいずれか1つに記載のステント。
態様55. 放射線不透性マーカーが、白金、タンタル、タングステン,炭酸バリウム、ビスマスオキシド、硫酸バリウム、メトラジミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、アセトリゾン酸誘導体、ジアトリゾ酸誘導体、ヨード-ピリミド-ピリミジン(pyrimidne)誘導体、ヨード-テオフィリン誘導体、イオタラム酸誘導体、イオキシタラム酸誘導体、メトリゾ酸誘導体、ヨーダミド、脂溶性剤(lypophylic agents)、ヨージパミド及びイオグリカミン酸、又は音響インターフェースを示すマイクロスフェアもしくはバブルの添加によるもののうち1つ又は複数から選択される、態様54に記載のステント。
態様56. 生物学的活性物質をさらに含む、態様48~55のいずれか1つに記載のステント。
態様57. 生物学的活性物質が、1つの増殖抑制薬、凝固阻止剤、血管拡張薬、抗炎症薬、細胞毒性薬、抗生物質及び局所放射線治療用の放射性薬剤又はその標的から選択される、態様56に記載のステント。
態様58. 酸捕捉剤をさらに含み、任意選択的に酸捕捉剤がモピダモール又はその誘導体である、態様48~57のいずれか1つに記載のステント。