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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ペン先
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/02 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B43K1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019070766
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020168782
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】394021513
【氏名又は名称】山中 和江
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 鎮雄
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136009(JP,A)
【文献】特開2016-130028(JP,A)
【文献】特開2008-114390(JP,A)
【文献】特開平10-035173(JP,A)
【文献】特開平07-001881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の基部、及びその一端側に連続して断面円弧状に突出され、軸心の円周上に等間隔に相互の間にスリット状の溝を設けて形成される複数の櫛歯状片からなり、各櫛歯状片の先端に全体として半球形状を構成する半球分割部を有するペン先部片と、前記ペン先部片の外周面に嵌合可能に筒形に形成され、前記ペン先部片の外周面に嵌め込まれて前記複数の櫛歯状片を前記各櫛歯状片の外周面から内周面に向けて押圧し収束する収束部材とを備え、前記ペン先部片に前記複数の櫛歯状片側から前記収束部材を嵌め込むことにより、前記ペン先部片の前記複数の櫛歯状片がその先端方向に向けて漸次縮径する円錐形に収束され、その先端に半球状の筆端部を構成されるとともに、前記各櫛歯状片間にインキ導出路が形成されるペン先であって、
前記ペン先部片の前記複数の櫛歯状片の最先端部から所定の長さの位置に対応する前記各櫛歯状片の内周面内の先端側の位置と前記ペン先部片の外周面に嵌め込まれる前記収束部材の略先端位置に対応する前記櫛歯状片の内周面内の中間の位置との間の適宜の位置で、前記各櫛歯状片を内周面から外周面に向けて押圧可能な収束調整部材を備え、
前記収束調整部材は、ペン先部片の基部内に嵌合可能な基部筒と、前記基部筒に連続し、前記ペン先部片の内周面の中間の位置又はそれよりも少し前記基部側で前記中間の位置に近接する中間近接位置まで延びる中間筒と、前記中間筒に連続し、前記ペン先部片の軸心と同心的に前記各櫛歯状片との間に中空部を介して前記ペン先部片の内周面の適宜の位置まで延び、当該適宜の位置で先端部が前記各櫛歯状片を内周面から外周面に向けて押圧可能な先端筒と、からなり、
前記ペン先部片の外周面で前記収束部材による前記複数の櫛歯状片の外周面から内周面に向けての押圧と、前記ペン先部片の内周面の前記適宜の位置での前記収束調整部材による前記複数の櫛歯状片の内周面から外周面に向けての押圧と、により、前記各櫛歯状片の最先端部から所定の長さまでの前記各櫛歯状片間を所定の間隔に押し広げて調整する、
ことを特徴とするペン先。
【請求項2】
ペン先部片の複数の櫛歯状片は最先端部から所定の長さまでの範囲が前記各櫛歯状片間に隙間なく収束可能に形成される請求項1に記載のペン先。
【請求項3】
ペン先部片の複数の櫛歯状片の最先端部から所定の長さを略2mmとし、前記各櫛歯状片の最先端部から略2mmの長さまでの前記各櫛歯状片間の所定の間隔を100分の4mm乃至100分の5mmとする請求項1又は2に記載のペン先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン先に関し、特にペン先の各部が高精度に組み立てられるペン先に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のペン先を備えた筆記具が特許文献1、2に記載されている。この文献1、2の筆記具において、ペン先は、ペン先部片と、収束部材とを備える。ペン先部片は、円筒形の基部と、その一端側に連続して断面円弧状に突出され、軸心の円周上に等間隔に相互の間にスリット状の溝を設けて形成され、先端に半球分割部が形成された5本乃至8本の櫛歯状片とにより構成される。収束部材はペン先部片の外周面上に嵌合可能な金属製の筒からなり、これをペン先部片上に嵌め込むことにより、各櫛歯状片がその先端方向に向けて漸次縮径する円錐形に収束されて、その先端に半球状の筆端部が形成されるとともに、各櫛歯状片間にインク導出路が形成される。そして、ペン先(ペン先部片)の中空内にその先端まで毛管力を有するインク中継芯が挿着されて、これがペン軸の先端に一体的に固定され、ペン軸内部でインク中継芯がインクタンクに接続される。このようにして構成されたペン先は、紙面に対し多方向へ筆記でき、ペン軸を中心に回動しても、どの位置、どの角度からでも書けるのに加え、筆記圧の強弱に応じ、太線、細線など線の幅を変えて種々の態様の文字を筆記することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-156279号公報
【文献】特開2012-136009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のペン先では、複数に分割された各櫛歯状片を集合させる、つまり、各櫛歯状片を円錐形に寄せる場合、各櫛歯状片の最先端部から2mm程度の範囲の各櫛歯状片間に100分の4mm乃至100分の5mm程度の隙間を設けていないと、インクの吐出ができない。通常、このような隙間を確保するために、ペン先各部の製造設計がなされ、櫛歯状片の寄せが各櫛歯状片の曲げ位置の角度の調整と収束部材で行われているが、ペン先部片がステンレス製のためそのスプリングバックにより櫛歯状片の先端にズレが生じたり、櫛歯状片の一つの先端部が半径方向内側へ倒れ込んで成形されたり、ペン先部片の成形型の摩耗により各櫛歯状片にバラツキが生じたりすることがあり、一つ一つのペン先についてこの櫛歯状片の寄せに一定の精度を保ちながら、ペン先の量産を行っていくことは至難の業である。この寄せの工程は、円錐形のペン先を作り上げる上で、技術的難易度の最も高いものとなっている。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、この種のペン先において、複数に分割された各櫛歯状片を円錐形に寄せる場合に、各櫛歯状片の最先端部から2mm程度の範囲の各櫛歯状片間に100分の4mm乃至100分の5mm程度の隙間を簡易かつ安定的に精度良く形成して、品質の高いペン先を大量生産できるようにすること、併せて、ペン先部片の強度の向上を図ること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
筒形状の基部、及びその一端側に連続して断面円弧状に突出され、軸心の円周上に等間隔に相互の間にスリット状の溝を設けて形成される複数の櫛歯状片からなり、各櫛歯状片の先端に全体として半球形状を構成する半球分割部を有するペン先部片と、前記ペン先部片の外周面に嵌合可能に筒形に形成され、前記ペン先部片の外周面に嵌め込まれて前記複数の櫛歯状片を前記各櫛歯状片の外周面から内周面に向けて押圧し収束する収束部材とを備え、前記ペン先部片に前記複数の櫛歯状片側から前記収束部材を嵌め込むことにより、前記ペン先部片の前記複数の櫛歯状片がその先端方向に向けて漸次縮径する円錐形に収束され、その先端に半球状の筆端部を構成されるとともに、前記各櫛歯状片間にインキ導出路が形成されるペン先であって、
前記ペン先部片の前記複数の櫛歯状片の最先端部から所定の長さの位置に対応する前記各櫛歯状片の内周面内の先端側の位置と前記ペン先部片の外周面に嵌め込まれる前記収束部材の略先端位置に対応する前記櫛歯状片の内周面内の中間の位置との間の適宜の位置で、前記各櫛歯状片を内周面から外周面に向けて押圧可能な収束調整部材を備え、
前記ペン先部片の外周面で前記収束部材による前記複数の櫛歯状片の外周面から内周面に向けての押圧と前記ペン先部片の内周面の前記適宜の位置での前記収束調整部材による前記複数の櫛歯状片の内周面から外周面に向けての押圧とにより、前記各櫛歯状片の最先端部から所定の長さまでの前記各櫛歯状片間を所定の間隔に押し広げて調整する、
ことを要旨とする。
【0007】
また、このペン先は各部に次のような構成を備えることが好ましい。
(1)ペン先部片の複数の櫛歯状片は最先端部から所定の長さまでの範囲が前記各櫛歯状片間に隙間なく収束可能に形成される。
(2)収束調整部材は、ペン先部片の基部内に嵌合可能な基部筒と、前記基部筒に連続し、前記ペン先部片の内周面の中間の位置又はそれよりも少し前記基部側で前記中間の位置に近接する中間近接位置まで延びる中間筒と、前記中間筒に連続し、前記ペン先部片の軸心と同心的に前記各櫛歯状片との間に中空部を介して前記ペン先部片の内周面の適宜の位置まで延び、当該適宜の位置で先端部が前記各櫛歯状片を内周面から外周面に向けて押圧可能な先端筒とからなる。
(3)ペン先部片の複数の櫛歯状片の最先端部から所定の長さを略2mmとし、前記各櫛歯状片の最先端部から略2mmの長さまでの前記各櫛歯状片間の所定の間隔を100分の4mm乃至100分の5mmとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペン先によれば、上記の構成により、ペン先部片の外周面で収束部材による複数の櫛歯状片の外周面から内周面に向けての押圧とペン先部片の内周面の適宜の位置での収束調整部材による複数の櫛歯状片の内周面から外周面に向けての押圧とにより、各櫛歯状片の最先端部から所定の長さまでの各櫛歯状片間を所定の間隔に押し広げて調整するので、ペン先部片の複数の櫛歯状片の最先端部から所定の長さを略2mmとし、各櫛歯状片の最先端部から略2mmの長さまでの各櫛歯状片間の所定の間隔を100分の4mm乃至100分の5mmとして、ペン先部片の内周面の適宜の位置及び当該適宜の位置での収束調整部材に必要とされる押圧量、言い換えれば、収束調整部材の外径を求めることにより、複数に分割された各櫛歯状片を円錐形に寄せる場合に、各櫛歯状片の最先端部から2mm程度の範囲の各櫛歯状片間に100分の4乃至100分の5mm程度の隙間を簡易かつ安定的に精度良く形成することができ、品質の高いペン先を大量生産することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態におけるペン先の外部構成を示す拡大斜視図
図2】同ペン先の特にペン先部片の構成(各櫛歯状片が円錐形に収束された状態)を示す拡大斜視図
図3】同ペン先のペン先部片の構成(各櫛歯状片が円錐形に収束されていない開いた状態)を示す拡大斜視図
図4】同ペン先の特に収束部材の構成を示す拡大斜視図
図5】同ペン先の特に収束調整部材の構成を示す一部断面側面図
図6】同ペン先の特にプレス加工により金属製の平板から打抜かれたペン先部片の原形を示す平面図
図7】同ペン先のペン先部片の内周面内に収束調整部材が嵌挿された状態を示す一部断面側面図
図8】同ペン先のペン先部片の内周面内に収束調整部材が嵌挿され、ペン先部片の外周面に収束部材が嵌合された状態を示す一部断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にペン先の全体構成を示し、図2乃至図5にこのペン先の各部の構成を示している。
【0011】
図1に示すように、ペン先Nは、筒形状の基部32、及びその一端側に連続して断面円弧状に突出され、軸心の円周上に等間隔に相互の間にスリット状の溝350を設けて形成される複数の櫛歯状片31からなり(図2参照)、各櫛歯状片31の先端に全体として半球形状を構成する半球分割部34を有するペン先部片3と、ペン先部片3の外周面に嵌合可能に筒形に形成され、ペン先部片3の外周面に嵌め込まれて複数の櫛歯状片31を各櫛歯状片31の外周面から内周面に向けて押圧し収束する収束部材33とを備え、ペン先部片3に複数の櫛歯状片31側から収束部材33を嵌め込むことにより、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31がその先端方向に向けて漸次縮径する円錐形に収束され、その先端に半球状の筆端部34を構成されるとともに、各櫛歯状片31間にインキ導出路35が形成されるようになっている。
【0012】
そして、このペン先Nでは、図8を参照すると、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31の最先端部から所定の長さの位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の先端側の位置P1とペン先部片3の外周面に嵌め込まれる収束部材33の略先端位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の中間の位置P2との間の適宜の位置P3で、各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧可能な収束調整部材37を備え、ペン先部片3の外周面での収束部材33による複数の櫛歯状片31の外周面から内周面に向けての押圧とペン先部片3の内周面の適宜の位置P3での収束調整部材37による各櫛歯状片31の内周面から外周面に向けての押圧とにより、各櫛歯状片31の最先端部から所定の長さまでの各櫛歯状片31間を所定の間隔に押し広げて調整するものとした。
【0013】
このペン先Nの場合、ペン先部片3はステンレス等の耐蝕性を有する金属材からなる。図2図3に示すように、このペン先部片3は、基端部側に基部32が円筒状に形成され、その長手方向中間部分から先端にかけては漸次縮径せしめられて内部が中空の円錐形に形成され、さらにその先端に筆端部34が半球体状に形成される。円錐形の部分は、複数(例えば4乃至8個、図1に示す実施の形態では6個)に分割された先細形状の櫛歯状片31が切り割り形成され、その周面に、筆端部34より後方へ延び、軸心と同じ方向に且つ円錐の母線に沿って延びる複数の細隙からなるインク導出路35が等角度間隔に設けられる。これらの櫛歯状片31の基端側部分は円筒状の基部32に一体的に連接される。このペン先部片3は金属製の平板材料を円筒状に曲げ成形加工(カーリングともいう)し、さらに先端側の部分は、上述したように中間部分から先端にかけて漸次縮径させる加工を施して製作される。この場合、平板材料の基部32側を筒形に成形したときの接合部には図2中符号15で示すような鉤形縁部が形成される。鉤形縁部15は基部32について基端から先端側へ延び、途中で、一方の接合縁に矩形状の凸部15aが設けられ、他方の接合縁に凸部15aに補合する矩形状の凹部15bが設けられて形成され、インク導出路35の基端(基部32から見れば先端側の部分)に到達される。この場合、凸部15aと凹部15bは、凸部15aが鉤形縁部15の一方の縁部側から他方の縁部側へ突出して形成される一方、凹部15bは他方の縁部側において凸部15aを受け入れるように窪んだ形に形成される。これにより、ペン先部片3が出来上がったときは、鉤形縁部15を境にして一側と他側とはペン先部片3の長手方向に互いに係合関係にあるから、上記一側と他側との間でずれが生じることがない。したがって、ペン先部片3の先端部分、すなわち、櫛歯状片31の先端合わせ部分の製作精度を向上させることができる。また、この場合、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31は最先端部から軸心方向を基部32に向けて所定の長さまでの範囲が各櫛歯状片31間に隙間なく収束可能に形成される。すなわち、平板材料の複数の櫛歯状片を略筒形に成形した後の、各櫛歯状片31を収束部材33により収束することにより円錐形に成形したときの複数の櫛歯状片31は先端側の所定の範囲(最先端部から所定の長さまでの範囲)が各櫛歯状31間に隙間がないように、平板材料の各櫛歯状片31は所定幅の略剣形に形成される(図6参照)。ここで、複数の櫛歯状片31の最先端部から基部32方向に向けて所定の長さの範囲は、複数の櫛歯状片31の最先端部から基部32方向に向けて略2mmの範囲とする。
【0014】
各櫛歯状片31の先端部は互いに集合して球状の筆端部34を形成され、隣接する櫛歯状片31同士は互いに弾性的に接触される。ペン先部片3の筆端部34は、個々の櫛歯状片31の先端部が分割された球状構造(後出の半球分割部341)を有し、これらが集合することにより形成され、また、各櫛歯状片31の両側縁部の合わせ部、すなわち隣り合った櫛歯状片31の間にインク導出路35が形成される。さらに、筆端部34を構成する各櫛歯状片31の先端部のすべての外面角部には丸みが付けられる。
【0015】
ペン先部片3はこのように形成され、このペン先部片3において、特に重要な点は、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31は最先端部から(軸心方向に)基部に向けて略2mmの範囲が各櫛歯状片31間に隙間なく収束可能になっていることにある。
【0016】
図4に示すように、収束部材33はステンレスなどの金属材料又は樹脂材料又はこれらの組み合わせにより形成され、略円筒形の固定部331と、固定部331から先方へ漸次縮径して延びる円錐台形状の筒形の絞り部332とを有する。固定部331は、基部32の外径と略同じ外径を有し、基部32からこの基部32の一端円周上に配列された複数の櫛歯状片31の基端部側の部分の一部にかけてを外側から内側に向けて加圧して拘束保持可能な内径を有し、円筒状の基部32から各櫛歯状片31の基端部側の部分の一部にかけての外周面上に嵌合可能に円筒状に形成される。絞り部332は固定部331の外径及び内径が徐々に縮径され、複数の櫛歯状片31の基端側の部分の残部から各櫛歯状片31の長さ方向中間部までを外側から内側に向けて加圧してこれら櫛歯状片31を略円錐形に、且つ各半球分割部341を略半球状に収束可能な内径及び長さを有する。なお、この収束部材33はペン先3をペン軸の軸筒に装着するためのマウスピースと一体化して形成することもできる。
【0017】
図5に示すように、収束調整部材37は、プラスチックなどの合成樹脂材により形成され、ペン先部片3の基部32内に嵌合可能な基部筒373と、基部筒373に連続し、ペン先部片3の内周面の中間の位置P2又はそれよりも少し基部32側で中間の位置P2に近接する中間近接位置P4まで延びる中間筒372と、中間筒372に連続し、ペン先部片3の軸心と同心的に各櫛歯状片31との間に中空部370を介してペン先部片3の内周面の適宜の位置P3まで延び、当該適宜の位置P3で先端部371tが各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧可能な先端筒371とからなる。
【0018】
この場合、基部筒373はペン先部片3の筒部32の内径と略同径で略同じ長さ又は少し長い円筒状に形成され、中間筒372とは反対側の端部にフランジ373fが軸心に対して直角に外周方向に向けてペン先部片3の基部32の肉厚と同じ寸法だけ少し張り出されて形成される。中間筒372は基部筒373の先端に連続して、収束部材33により円錐形に収束された後の複数の櫛歯状片31の基部側半部の内周面に沿ってペン先部片3の内周面の中間の位置P2に近接する中間近接位置P4まで嵌合可能に略円錐台形の筒状に形成される。ここで中間筒372の外周面は収束部材33により円錐形に収束された後の複数の櫛歯状片31の内面に当接されても当接されなくてもどちらでもかまわない。なお、この場合、中間筒372の外周面と各櫛歯状片31の内面は当接可能としてある。先端筒371は中間筒372の先端にテーパ筒371Tを介して連続して、収束部材33により円錐形に収束された後の複数の櫛歯状片31の先端側半部の内周面内に挿通可能でこれらの櫛歯状片31の内周面内において既述の先端側の位置P1と中間の位置P2との中央地点よりも先端側の位置側に寄った適宜の位置P3に干渉し、この位置P3で各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧可能に、略円筒状に形成される。したがって、この先端筒371は先端部371tを除く先端筒371の略全体の外周面と各櫛歯状片31の先端側半部の内周面は離間されて、その間は中空部370になっていて、先端部371tのみが基部32の先端から収束部材33により円錐形に収束された後の複数の櫛歯状片31の先端側半部の内周面適宜の位置P3に干渉し、この位置P3で各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧する。この場合、複数の櫛歯状片31の内周面内の適宜の位置P3、及び当該適宜の位置P3での収束調整部材37による適宜の押圧量、すなわち先端筒371の外径は、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31の最先端部から所定の長さが略2mmで、各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの長さまでの各櫛歯状片31間の所定の間隔を100分の4mm乃至100分の5mmとするので、これらの寸法値から求められ、収束調整部材37が収束部材33に収束される前のペン先部片3の内周面内に嵌挿されて、先端筒371の先端部371tが複数の櫛歯状片31の最先端部から略2mmの位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の先端側の位置P1と中間の位置P2との間で先端側の位置P1に近い適宜の位置P3に配置され、この位置P3で収束部材33により収束された後の各櫛歯状片31に干渉し、各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧し、各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの範囲の各櫛歯状片31間が100分の4mm乃至100分の5mmの間隔に押し広げられる。
【0019】
収束調整部材37はこのように形成され、この収束調整部材37において、特に重要な点は、収束調整部材37が、ペン先部片3の基部32内に嵌合可能な基部筒373と、基部筒373に連続し、ペン先部片3の内周面の中間の位置P2に近接する中間近接位置P4まで延びる中間筒372と、中間筒372に連続し、ペン先部片3の軸心と同心的に各櫛歯状片31との間に中空部370を介してペン先部片3の内周面の適宜の位置P3まで延び、当該適宜の位置P3で先端部371tが各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧可能な先端筒371とからなり、収束部材33に収束される前のペン先部片3の内周面内に嵌挿されて、ペン先部片3の基部32内に嵌め込まれる基部筒373により固定され、収束部材33に収束された後のペン先部片3の内周面内で先端筒371の先端部371tが各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の先端側の位置P1と中間の位置P2との間で先端側の位置P1に近い適宜の位置P3に干渉し、この位置P3で各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧し、各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの範囲の各櫛歯状片31間を100分の4mm乃至100分の5mmの間隔に調整することにある。
【0020】
このようにしてこのペン先Nでは、ペン先部片3の外周面で収束部材33による複数の櫛歯状片31の外周面から内周面に向けての押圧とペン先部片3の内周面で複数の櫛歯状片31の先端側適宜の位置P3での収束調整部材37による複数の櫛歯状片31の内周面から外周面に向けての押圧とにより、各櫛歯状片31の最先端部から基部32方向に向けて略2mm程の範囲の各櫛歯状片31間の溝350の間隔が100分の4mm乃至100分の5mmの寸法に調整される。
【0021】
このペン先Nを製造工程で見ると、このペン先Nの構造、特に収束調整部材37の利点が顕著である。まず、図6に示すように、ステンレス製の開板からプレス打抜きによって、基部32側を帯状に、先端部側に複数(例えば4乃至8個、図6に示す例では6枚)の櫛歯状片31を形成した打抜き板3aを作る。この打抜き板3aは、プレス打抜きした時点では櫛歯状片31はまだ先端が広がった構造であり、側面形状は平坦な板状である。打抜き板3aの両側縁において、一方の側縁には矩形状の凸部15aが設けられる一方、他方の側縁には上記凸部15aに補合(或いは嵌合)可能な矩形状の凹部15bが設けられる。
【0022】
続いて、プレス成型により、櫛歯状片31をそれぞれの中心線に対して円弧状に湾曲するように折曲するとともに、その付け根の部分から「くの字」形に折り曲げ、さらに各櫛歯状片31の先端部を「くの字」形に折り曲げられた側に丸める。
【0023】
ここで、次の工程に入る前にこの打抜き板3aの櫛歯状片31の切断面である周縁部並びに表面をブラスト加工による砥粒の吹き付け又はバレル研摩によるみがき等、適宜な方法で軽度の研摩を行い、櫛歯状片31の周縁部の角を丸め、また表面を滑らかにする。
【0024】
特に、このペン先部片3の製造では、複数の櫛歯状片31の最先端部から(軸心方向に)基部32に向けて略2mmの範囲を各櫛歯状片31間に隙間なく収束可能に製造すればよいので、ペン先部片3の製造がしやすい。この製造の段階で、各櫛歯状片31の最先端部から基部32に向けて略2mmの範囲の各櫛歯状片31間に100分の4mm乃至100分の5mmの隙間を確保する場合に比べて、その生産性は極めて高く、一定の精度を維持しながらの大量生産が可能となる。
【0025】
次に、この打抜き板3aを、図6中に示す左右方向に延びる中心軸C-Cの周りに、かつ先端部側の櫛歯状片31の湾曲凹部が内側に向くように、カーリング加工により円筒状に折曲し、その両側縁を突き合わせてペン先部片3を成形する。このとき、カーリング加工による加圧力を解除すると、少量であるが、円筒状に成形された打抜き板3aにスプリングバックが生じて突き合わせられた両側縁に隙間が生じる。これをなくすため、先ず第1段階として、図7に示すように、円筒状に成形されたペン先部片3の内周面内に収束調整部材37を嵌挿し、基部32内に収束調整部材37の基部筒373を固定する(なお、この図7では、ペン先部片3が収束部材33により収束された状態と同じ状態に図示されている。実際には、ペン先部片3の各櫛歯状片31は収束されず開いた状態になっている(図3参照)。)。次に第2段階として、図8に示すように、ペン先部3の先端側から当該ペン先部片3の外周面に沿って収束部材33を嵌合させる。収束部材33は、プレス操作により、固定部331がペン先部片3の基部32の端部から外周方向に突出される収束調整部材37のフランジ373fに突き当たるまで圧挿される。この収束部材33の圧挿に際して、収束調整部材37はペン先部片3の基部32を内側から支え、筒状の基部32に整合して収容される。打抜き板3aの折曲及び収束調整部材37と収束部材33の装着が完了すると、ペン先部片3の側縁同士は突き合わせられ、また、凸部15a及び凹部15bは嵌合し合って鉤形縁部15を形成する。これにより、鉤形縁部15を境にして一側と他側とはペン先部片3の長手方向(上記軸C-Cの方向)にずれが生じることがなく、各櫛歯状片31の先端部を合わせた部位、すなわち、筆端部34の製作精度を向上させることができる。収束調整部材37は打抜き板3aの折曲作業が完了した後も、ペン先部片3の内部に残される。このように、打抜き板3aを曲げ加工した後にペン先部片3の内周面内に収束調整部材37を介在させて外周面に収束部材33を圧挿することで、一般的によく行われている板材を単に円筒状に折曲する成形方法よりも複数の櫛歯状片31の真円度が高くしかも精密な構造を持つ筒体を成形することができる。この場合、収束部材33に収束された後のペン先部片3の内周面内で収束調整部材37の先端筒371の先端部371tが各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の先端側の位置P1と中間の位置P2との間で先端側の位置P1に近い適宜の位置P3に干渉し、この位置P3で先端筒371の適宜の径の先端部371tにより各櫛歯状片31が内周面から外周面に向けて押圧されることで、複数の櫛歯状片31の真円度が極めて高くなり、各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの範囲の各櫛歯状片31間が所期の間隔、すなわち、100分の4mm乃至100分の5mmの間隔に押し広げられて調整される。そして、この収束調整部材37は成形後のペン先部片3の内部に設置されることで、ペン先部片3の補強部材としても機能する。
【0026】
このようにして帯状の基部32はそのままペン先部片3の円筒状の基部32をなすとともに、先端部側の各櫛歯状片31は円錐形に集合されて、その先端部分では隣接する櫛歯状片31同士が弾性的に接触し、その円錐形の先端縁は半球形状の頂点となし、櫛歯状片31の合わせ部の溝350がインク導出路35として、半球形状の頂点が筆端部34として構成される(図1参照)。
【0027】
以上説明したように、このペン先Nでは、図8に示すように、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31の最先端部から所定の長さの位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の先端側の位置P1とペン先部片3の外周面に嵌め込まれる収束部材33の略先端位置に対応する各櫛歯状片31の内周面内の中間の位置P2との間の適宜の位置P3で、各櫛歯状片31を内周面から外周面に向けて押圧可能な収束調整部材37を備え、ペン先部片3の外周面で収束部材33による複数の櫛歯状片31の外周面から内周面に向けての押圧とペン先部片3の内周面の適宜の位置P3での収束調整部材37による複数の櫛歯状片31の内周面から外周面に向けての押圧とにより、各櫛歯状片31の最先端部から所定の長さまでの各櫛歯状片31間を所定の間隔に押し広げて調整するので、ペン先部片3の複数の櫛歯状片31の最先端部から所定の長さを略2mmとし、各櫛歯状片31の最先端部から略2mmの長さまでの各櫛歯状片31間の所定の間隔を100分の4mm乃至100分の5mmとして、ペン先部片3の内周面の適宜の位置P3及び当該適宜の位置P3での収束調整部材37に必要とされる押圧量、言い換えれば、収束調整部材37(先端筒371)の外径を求めることにより、複数に分割された各櫛歯状片31を円錐形に寄せる場合に、各櫛歯状片31の最先端部から2mm程度の範囲の各櫛歯状片31間に100分の4mm乃至100分の5mm程度の隙間を簡易かつ安定的に精度良く形成することができ、品質の高いペン先を大量生産することができる。また、このペン先Nの収束調整部材37は、ペン先部片3の内部に設置されることで、ペン先部片3を補強することができ、そして、この収束調整部材37(先端筒371の先端部371t)でペン先部片3の先端側の真円度を高く維持してペン先部片3先端の隙間を良好、且つ確実に保持することができるので、櫛歯状片の一つの先端部が半径方向内側へ倒れ込んで成形されるということはなくなり、従来(特許文献1、2)のペン先の有する「ペン先は、紙面に対し多方向へ筆記でき、ペン軸を中心に回動しても、どの位置、どの角度からでも書けるのに加え、筆記圧の強弱に応じ、太線、細線など線の幅を変えて種々な態様の文字を筆記することができる」という効果をより高め、より長く維持することができる。
【符号の説明】
【0028】
N ペン先
3 ペン先部片
3a 打抜き板
15 鉤形縁部
15a 凸部
15b 凹部
31 櫛歯状片
P1 先端側の位置
P2 中間の位置
P3 適宜の位置
P4 中間近接位置
32 基部
33 収束部材
331 固定部
332 絞り部
34 筆端部
341 半球分割部
35 インキ導出路
350 溝
37 収束調整部材
370 中空部
371 先端筒
371t 先端部
371T 先端テーパ筒
372 中間筒
373 基部筒
373f フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8