(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】物質移動のためのデバイスおよび作製方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20220304BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61M1/18 500
A61M1/18 525
B01D63/02
(21)【出願番号】P 2019502142
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2017000377
(87)【国際公開番号】W WO2017167443
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-09-30
(31)【優先権主張番号】102016003611.7
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518346373
【氏名又は名称】エモーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ボルヒャルト,ラルフ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-236502(JP,A)
【文献】国際公開第2008/007608(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/030375(WO,A1)
【文献】特開平05-309239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0243653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
B01D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液と移動媒体
との間の物質移動のためのデバイスであって、血液がそれを通って流れることができるとともに、物質透過性ホロー・ファイバ(9)がワープ糸によって間隔を開けてその中に保持されている少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットの複数の前記ホロー・ファイバが、巻回または折返しされたホロー・ファイバ・パッケージの形でその中に配設されている、チャンバ(2)を備え、移動媒体が前記ホロー・ファイバ(9)を通って流れることができ、血液が前記ホロー・ファイバ(9)の周りを流れることができる、デバイスにおいて、ホロー・ファイバ(9)の密度が、前記ホロー・ファイバ・パッケージ内で、
ホロー・ファイバ延在範囲に垂直な断面において局所的に変化し、より低いファイバ密度を有する領域が、
a.前記ホロー・ファイバ・パッケージに少なくとも軸方向端部のところで挿入されるとともに、ワープ糸によって接続されたホロー・ファイバ(9)の2層によって取り囲まれ、
ホロー・ファイバ(9)より大きな断面を有する、少なくとも1つのプレースホルダ(13)
によって生み出されることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
より低いファイバ密度を有する領域が、更に
b.ホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回または折返しされる、前記ホロー・ファイバがワープ糸によって間隔を開けてその中に保持されている少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットであって、個々のホロー・ファイバ(10、11、12)が除去されている、少なくとも1つのホロー・ファイバ・マット、および/または
c.ホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回または折返しされる、前記ホロー・ファイバがワープ糸によって間隔を開けてその中に保持されている少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットであって、隣接するホロー・ファイバ間の前記間隔が、前記ホロー・ファイバ間の圧倒的多数を占める等距離間隔に比べて局所的に広がっている、少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットによって達成されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
周囲領域のファイバ密度に比べて低いファイバ密度を有する少なくとも1つの領域(7、8、10、11、12、14)が、前記ホロー・ファイバ・パッケージ内に配設されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
より低いファイバ密度を有する領域(7、8、10、11、12、14)が、前記ホロー・ファイバ・パッケージの周囲領域内のファイバ密度より、または前記ホロー・ファイバ・パッケージ内の最高ファイバ密度より、少なくとも5%低いファイバ密度を有することを特徴とする、請求項
3に記載のデバイス。
【請求項5】
ファイバ密度が、前記ホロー・ファイバ・パッケージの断面表面積のわずかな部分において、ファイバ密度が一貫してより高いかまたは少なくともある区間内でより高い断面表面積の大部分に比べて低減されることを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
低減したファイバ密度を有する少なくとも1つの領域(7、8)が、前記チャンバ(2)の血液入口領域(4)および/または血液出口領域(6)から距離を隔てたところに、
それと対向する側に、
それと径方向に対向する側に、配設されることを特徴とする、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
プレースホルダ自体も、残りの物質透過性ホロー・ファイバの多数派より大きな直径を有する、物質透過性ホロー・ファイバによって形成されることを特徴とする、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
血液と移動媒体
との間の物質移動のためのデバイスの、ホロー・ファイバ・パッケージを作製する方法であって、ワープ糸によって互いに隔置されてその中に保持されている複数の物質透過性ホロー・ファイバ(9)を備える少なくとも1つのマットが、前記ホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回される、
コア(3)上に巻回されるかまたは複数回折返しされる、方法において、巻回/折返し前または巻回/折返し中にホロー・ファイバ(9)間の間隔に影響を及ぼすことによって、ホロー・ファイバ延在範囲に垂直な断面において、前記ホロー・ファイバ(9)の異なる密度を有する領域(7、8、10、11、12、14)が生み出され、前記ホロー・ファイバ(9)間の間隔が、
a.
ファイバ端部の領域内でのみ、巻回または折返し中に少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットの2層(L)間に少なくとも1つの
ホロー・ファイバ(9)より大きな断面を有する、プレースホルダ(13)を組み込むこと、
によって影響を受けることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記ホロー・ファイバ(9)間の間隔が、
b.巻回/折返し前または巻回/折返し後に、個々のホロー・ファイバ(10、11、12)を、互いに隔置されている、互いに等距離離れて間隔の開けられているホロー・ファイバ(9)を備えるホロー・ファイバ・マットから、選択された位置において除去すること、または
c.まだホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回/折返しされていないホロー・ファイバ・マットにおいて、前記ホロー・ファイバ(9)を、少なくとも領域内に、非等距離相互間隔を開けて、領域内に、圧倒的多数を占める等距離相互間隔に比べて広がった間隔を開けて取り付けること
によって影響を受けることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液とガス/ガス混合物との間の物質移動のためのデバイスであって、血液がそれを通って流れることができるとともに、複数の物質透過性ホロー・ファイバが、巻回または折返しされたホロー・ファイバ・パッケージの形でその中に配設されている、チャンバを備え、移動媒体、特にガス/ガス混合物が、ホロー・ファイバを通って流れることができ、血液がホロー・ファイバの周りを流れることができる、デバイスに関する。
【0002】
本発明は、そのようなデバイスのホロー・ファイバ・パッケージを作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプのデバイスは、従来技術において公知であり、例えば酸素供給器として使用されている。そのようなデバイスは、例えば透析中に、有害物質を除去するように血液を浄化するという目的で使用することもできる。
【0004】
酸素供給器では、そのようなデバイスは、デバイスを通って流れる血液中の酸素を豊富にさせるとともに二酸化炭素を除去するために使用される。この過程は、血液とガス/ガス混合物との間で交換すべき物質(O2およびCO2)の濃度勾配を、ガス/ガス混合物を物質透過性ホロー・ファイバを通って流れる移動媒体として使用して生み出し、その結果、浸透過程により、ガス/ガス混合物からの酸素が、ホロー・ファイバ壁部を通って血液中に移動し、血液からの二酸化炭素が、ホロー・ファイバ壁部を通ってガス/ガス混合物に移動することによって起こる。そのような酸素供給器は、例えば人工心肺において使用することができる。
【0005】
用途に応じて、有害物質を除去するように血液の浄化を達成し、必要な場合は、浸透を通じて他の所望の物質を豊富にさせるために、適切な交換媒体が使用される。
【0006】
このタイプの典型的なデバイスは、以前は、前後に位置する等距離間隔の空けられた複数の物質透過性ホロー・ファイバを備える少なくとも1つのマットが、複数層を成して巻回される、特に、後に血液の流入または流出がそれを通って行われ得るコア上に巻回されるように、または少なくとも1つのそのようなマットが複数回折返しされて、層を成すように、作製されていた。そのようなマット内では、ホロー・ファイバは、好ましくは、いずれも互いに平行に配設されており、その際、それぞれのホロー・ファイバの端部がマットの両側に位置する。折返しまたは巻回は、例えば、ファイバ・マットの長手方向延在方向に平行なそれぞれの線の周りで行われ得る。
【0007】
ファイバは、巻回または折返しされたパッケージの隣接する層のファイバ同士が、0°以外または180°以外の角度を成すように向けられることもある。例えば、重なり合って位置する2つ以上のマットを巻回または折返しすることができ、その際、別々のマットのファイバ同士が、互いに対して0°以外または180°以外の角度を有する。
【0008】
それぞれのマット内で、ファイバは、保持用ワープ糸(warp thread)の延在方向に対して90度以外の角度を成して配設されることもある。
【0009】
前述の作製方法は、好ましくはそれぞれが、本発明によるデバイスでも使用することができ、特に、本発明に従って改良することができる。
【0010】
そのような作製の様式は、ハウジング内に収容することのできる、少なくとも実質的に軸方向に延在するホロー・ファイバを有するホロー・ファイバ・パッケージをもたらすことができる。(ファイバ延在範囲に垂直な、またはパッケージ延在範囲に垂直な)断面において見ると、ホロー・ファイバ・パッケージのホロー・ファイバ密度は、マット内でホロー・ファイバが等距離であるため、どこでも基本的に同じである。
【0011】
当業者の間で公知の樹脂充填過程は、特に、この目的に使用される遠心機または樹脂充填システムにおいて、充填用樹脂によって、ホロー・ファイバの軸方向端部を互いに対して、かつハウジングに対して密閉するものである。
【0012】
次いで、移動媒体、例えばガス/ガス混合物を、露出されたままの、または樹脂充填後にそこから充填用樹脂が除去された、ホロー・ファイバの軸方向端部を介して、ホロー・ファイバの中に導くことができ、また血液を、ハウジング内の軸方向端部に位置する樹脂充填サイト間に設けられた供給ポートおよび排出ポートを通じて、ホロー・ファイバ間に導くことができる。ハウジング壁部と樹脂充填サイトがチャンバを形成し、ホロー・ファイバがチャンバ内に配設されるとともに、血液がチャンバを通って、特に移動媒体、特にガス/ガス混合物と血液が直接接触することなく、流れることができる。
【0013】
このタイプの典型的な円筒形デバイスには、少なくとも1つのマットが上に巻回されている中空コアを通じた、血液の流入または流出がある。中空流路を成すコアは、チャンバ内側に向かう軸方向端部の領域内で開いており、特に、径方向外側に開いており、このように、血液がそこで、コアとチャンバ内側との間を移動することができる。チャンバ内側と、好ましくは円周方向に配設される空間との間の血液の交差路も、対向する軸方向端部のところの、好ましくは径方向外側で起こる。前述の、チャンバに対するそれぞれの交差路のうちのどちらが供給ポートとして使用され、どれが血液の排出ポートとして使用されるかは、基本的に重要ではない。
【0014】
本発明は、好ましくは、軸方向端部のうちの一方のところに径方向外側血液排出ポートを、また軸方向端部のうちの他方のところに巻回コアによって形成される径方向内側血液供給ポートを好ましくは備える、前述のデバイス設計に関する。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0015】
チャンバ内で、血液は一般にチャンバの中を、実質的には、血液供給ポートと血液排出ポートとの間で直接流れる。直接経路から逸れた、流れのより少ない通過領域があり、このように、ホロー・ファイバ・パッケージの軸方向に垂直な断面にわたって見ると、流れは不規則である。しかし、これは不利であり、より少ない流れに遭遇するこれらの領域では、この結果、物質移動が劣り、場合によっては血栓が形成する。
【0016】
前述のデバイス設計の場合、血液はこのように、実質的には、軸方向端部領域間を径方向内側から軸方向に対して斜めに径方向外側まで流れる。ホロー・ファイバ・パッケージの軸方向に垂直な断面にわたって見ると、この結果、流れが不規則になっている。径方向に見て径方向内側から径方向外側にシフトする環状領域内に、最大流が存在する。
【0017】
一般に、流れは、血液の入口または出口とそれぞれに対応する軸方向位置において対向する側に位置する、ハウジング内のエリア全体にわたって最も乏しい。説明した特定の設計に基づいて、劣った貫流はこのように、チャンバに対する交差路が中空コア上に径方向内向きに位置するところの軸方向端部、すなわちチャンバの径方向外向き円周領域のところで、またチャンバに対する交差路が径方向外向きに位置するところの軸方向端部、すなわち、この軸方向端部のところで閉じられているコアを取り囲む径方向内向き円周領域のところで、生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、チャンバ内の、ホロー・ファイバ・パッケージの(軸方向延在範囲に垂直な)断面にわたる血液の流れを等化する、つまり、既存の設計では不利な流れ領域内の流れを増大させることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、特に、ホロー・ファイバ延在範囲に垂直な、またはパッケージ延在範囲に垂直な断面において見ると、ホロー・ファイバ・パッケージ内でホロー・ファイバの密度が局所的に変化するという点で達成される。断面におけるホロー・ファイバ密度のそのような局所的に変化する実装形態は、例えばパッケージの隣接するホロー・ファイバ同士の間隔を広げることによってホロー・ファイバ密度が低減されるところでの流動抵抗が、故意に低減されることを可能にする。従来技術における、流れという点で以前は不利であった領域には、このように、本発明によれば、そこでのホロー・ファイバ密度を故意に低減させることによって、より強い流れを与えることができる。
【0020】
このために、好ましくは、周囲領域のファイバ密度に比べて低いファイバ密度を有する少なくとも1つの領域を、ホロー・ファイバ・パッケージ内に配設することができる。好ましくは、軸方向延在範囲に垂直な断面において、全体がファイバ・バンドル内にそれぞれ位置する領域が比較され、特にこれには、ファイバ・バンドルの縁部領域を越えて広がる領域は除外される。
【0021】
低減したファイバ密度を有する少なくとも1つのそのような領域は、チャンバの血液入口領域および/または血液出口領域から距離を隔てたところに、例えば、好ましくはそれと対向する側に、特にそれと径方向に対向する側に、配設されてよい。
【0022】
システムは、断面において見ると、低減したファイバ密度を有する領域から血液入口および/または血液出口の方向に向いた密度勾配が形成されるように、つまり、入口または出口の方向の密度が、好ましくは、軸方向端部側の断面平面内で増大するように、設計することができる。説明した好ましい設計に基づいて、径方向の密度の増大はこのように、少なくとも1つの軸方向端部のところで起こる。
【0023】
より高いファイバ密度を有する領域に対する密度低減領域の配置は、ホロー・ファイバ・パッケージの軸方向延在範囲にわたって同じままでよく、つまり、密度プロファイルが、全ての軸方向断面平面内で同じままでよい。しかし、特に前述の好ましい設計の場合、密度プロファイルが、異なる軸方向断面平面内で変化することが好ましい。特に、軸方向位置が上がるにつれて、好ましくは環状領域である、低減した密度を有する領域が、径方向外側から径方向内側にシフトしてよい。これは、例えば、軸方向中央位置において、低減したファイバ密度を有するリングが径方向に、より高いファイバ密度を有する環状領域間に、特にその環状領域間の中央に、位置することを意味する。
【0024】
本発明によれば、より低いファイバ密度を有する領域は、ホロー・ファイバ・パッケージの周囲領域内のファイバ密度より、またはホロー・ファイバ・パッケージ内の最高ファイバ密度より、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも15%低いファイバ密度を有してよい。
【0025】
本発明によれば、ファイバ密度は、ホロー・ファイバ・パッケージの断面表面積のわずかな部分において、ファイバ密度が一貫してより高いかまたは少なくともある区間内でより高い断面表面積の大部分に比べて、特に少なくとも前述の程度だけ低減されてよい。そのような区間は、好ましくは、互いに5%を超えて偏位しない値を有する区間境界を有する。
【0026】
本発明によるホロー・ファイバ・パッケージは、互いに隔置されるようにマットに取り付けられている、特に、ワープ糸によって互いに隔置されるように取り付けられている、複数の物質透過性ホロー・ファイバを備える少なくとも1つのマットから、巻回または折返しによって形成されてよく、その際、ホロー・ファイバ・パッケージ内および/または少なくとも1つのマット内のホロー・ファイバ間の間隔が局所的に異なるものとなるように、巻回/折返し前または巻回/折返し中にその間隔に影響を及ぼす、特にその間隔を確立することによって、ホロー・ファイバ延在範囲に垂直な断面において、ホロー・ファイバの異なる密度を有する領域が生み出され得る。
【0027】
本発明は、より低いファイバ密度を有する領域が、ホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回または折返しされる、特に、ホロー・ファイバがワープ糸によって間隔を空けてその中に保持されている少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットであって、個々のホロー・ファイバが除去されている、かつ/または隣接するホロー・ファイバ間の間隔が、特にホロー・ファイバ間の圧倒的多数を占める等距離間隔に比べて局所的に広がっている、少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットによって生み出されることを実現することができる。特に、個々のファイバが除去されたホロー・ファイバ・マット内には、このように、空になったワープ糸ループまたはステッチが、除去された各ファイバの長手方向延在範囲に沿って存在する。
【0028】
最も単純なケースでは、互いに隔置されている、特に互いに等距離離れて間隔の空けられているホロー・ファイバを備える、従来技術のホロー・ファイバ・マットを、個々のホロー・ファイバをそこから除去することによって、本発明に利用することができる。
【0029】
個々のホロー・ファイバのそのような除去は、例えばマットが巻回または折返しされる前に、つまり、ホロー・ファイバ・パッケージが作り出される前に、ホロー・ファイバ・マットから、選択された位置において行われ得る。その位置は、好ましくは、パッケージ内の密度が所望の位置において、つまり特に、特に血液の出口または入口と対向する、好ましくは径方向に対向する前述の位置において、実質的に局所的に低減されるように決定される。
【0030】
本発明は、初めにホロー・ファイバ・パッケージが、少なくとも1つのマットから、特に、互いに隔置されている、特に互いに等距離離れて間隔の空けられている、ホロー・ファイバを備える少なくとも1つのマットから、巻回または折返しされること、およびパッケージが形成されて初めて、個々のまたは複数のファイバが、所望の位置において、特に前述の位置において、パッケージから軸方向に故意に引き抜かれることを実現することもできる。特に、空になったワープ糸ループまたはステッチが、パッケージ内に、除去された各ファイバの長手方向延在範囲に沿って存在することが、この場合も該当する。
【0031】
ホロー・ファイバが、単にワープ糸によって隔置されて保持されているが、軸方向に取り付けられていない場合、完成したパッケージから、または予めマットから、ホロー・ファイバ全体を難なく除去することが基本的に可能である。このようにして、ホロー・ファイバを、くくっているワープ糸から引き抜くことが可能である。
【0032】
しかし、本発明は、まだホロー・ファイバ・パッケージを形成するように巻回/折返しされていないホロー・ファイバ・マットにおいて、ホロー・ファイバが、少なくとも領域内に、非等距離相互間隔を空けて取り付けられる、特に、圧倒的多数を占める等距離相互間隔に比べて広がった相互間隔を空けて局部的に取り付けられる、という点で、形成されたパッケージ内で密度変化が生み出されることを実現することもできる。
【0033】
巻回されていないマットにおいては、例えば異なる非巻回位置にあるホロー・ファイバ間に、広がった、特にそれ以外の圧倒的多数を占める等距離のより狭い間隔に比べて広がった、間隔を設けることが可能である。ホロー・ファイバ間の間隔が、まだ巻回/折返しされていないマット、つまり巻回されていないマットの、開始領域および/または端部領域内で、間に挟まれた領域より大きくなることも可能である。したがって、巻回することにより、径方向内側および径方向外側でファイバ密度が低減されているパッケージが生み出される。
【0034】
上述した措置は、基本的にパッケージの軸方向延在範囲全体にわたるファイバ密度に、同じように影響を及ぼす。
【0035】
本発明は、巻回または折返し中に少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットの2層間に少なくとも1つのプレースホルダを組み込むことによって、完成したホロー・ファイバ・パッケージ内のホロー・ファイバ間の間隔に影響を及ぼすことを実現することもできる。そのようなプレースホルダは、例えば、全く同一のマットの2層間で、または2つの異なるマットによって形成される2層間で、巻回または折返しされてよい。
【0036】
そのようなプレースホルダは、このように、プレースホルダのサイトで、プレースホルダの前後の領域に比べて層間の距離を広げる。層またはそのホロー・ファイバは、好ましくは、プレースホルダと、プレースホルダのサイトで接触する。円形断面を有するプレースホルダの場合、2層は、好ましくは、それぞれがプレースホルダの周りに円周方向に180度に満たないだけ配置され、特に、想定上の側断面図では、1層がプレースホルダの周りに上部で、1層が底部で、配置される。
【0037】
ホロー・ファイバの/プレースホルダの軸方向に垂直な対向する領域内で、2層は再び一緒になり、特に、間隔なしで、かつ特に両層または両層のホロー・ファイバが再び組み合わされた後に接触するように、一緒になる。説明した対向する領域内で、2層はこのように、それらがそれぞれプレースホルダと接触する状態から、それらが互いに接触する状態に移行する。これらの領域間に空き空間が囲まれ、それが密度の低減を生じさせ、特にそれは、前述の2つの対向する領域の接続方向において、プレースホルダ表面と、初めて両層が再び一緒になる地点との間に位置する。
【0038】
プレースホルダが、ホロー・ファイバの軸方向長さ全体にわたって延在する場合、ファイバ密度はこの場合も、軸方向長さ全体にわたって影響を受ける。
【0039】
しかし、1つまたは複数のプレースホルダが単に、ファイバ端部の領域内で折返しまたは巻回されたマットの2層間に配設されることも可能である。このようにして、特に、低減した密度に向かうファイバ密度の変化が、軸方向端部に位置する血液の入口領域または出口領域の領域内でのみ起こることが可能である。
【0040】
プレースホルダが単に、ファイバの軸方向端部間の領域内、特に樹脂充填領域内で、2層間に配設され、プレースホルダがこのように、ファイバの端部領域内に延在しないことも可能である。
【0041】
一般に、少なくとも1つのマットを巻回/折返しするときに、ホロー・ファイバの軸方向長さ未満の長さを有するプレースホルダが、ホロー・ファイバの軸方向端部上の、またはホロー・ファイバの軸方向端部間の領域内で、2層間に配設されることが実現され得る。このようにして、ホロー・ファイバ・パッケージ内の基本的に任意の位置において、密度低減が起こることが可能である。特に、密度低減は、軸方向に、プレースホルダによって画定される長さに基本的にわたって起こる。
【0042】
この場合、そのようなプレースホルダは、ホロー・ファイバ・パッケージ内に残ることが実現され得る。軸方向端部のところでアクセス可能であるプレースホルダは、ホロー・ファイバが樹脂充填される前に、形成されたパッケージから引き抜かれてもよく、その際、ホロー・ファイバは、以前に呈したその位置を互いに対して基本的に維持する。このことがさらに、以前はプレースホルダによって占められていた空間を解放し、局所的なホロー・ファイバ密度低減に寄与する。円形断面を有するプレースホルダがパッケージから引き抜かれると、パッケージ内に、以前はプレースホルダによって占められていた自由空間が残る。この自由空間は、少なくとも1つのホロー・ファイバ・マットの2層によって弓形に取り囲まれ、というのも、これらの層は、以前はプレースホルダの外面に接して定置されていたためである。一般に、特にプレースホルダが円形ではない場合、2層の外形も、除去されたプレースホルダの外面の形状に共形になる。
【0043】
ホロー・ファイバ・パッケージ内に残るプレースホルダは、例えば、特に穿孔外面を有する管などの中空輪郭からこれらが形成されるという点で、血液がそれを通って流れることができるように設計することができる。外面が穿孔されている場合、穿孔は、フィルタ面を形成するように設計されてよい。
【0044】
少なくとも1つのプレースホルダを中空輪郭として、特に管として、好ましくは非穿孔管として設計すると、そのようなプレースホルダを通る温度制御媒体流を有するというオプションも得られる。そのようなプレースホルダは、特に、動作中に血液の温度を制御するための、熱交換器として働くことができる。これを達成するように、そのような中空プレースホルダは、そのそれぞれの端部のところで、別個の流体回路に接続されてよい。
【0045】
プレースホルダを中空になるように設計するというオプションに加えて、本発明は、中実断面をもつプレースホルダを構成することを実現することもできる。そのようなプレースホルダはこのように、バンドル内で、プレースホルダ機能を超すさらなるどんな機能も負うことができない。
【0046】
プレースホルダ、特にパッケージ内に残るものは、好ましくは、ホロー・ファイバの断面より大きな断面を有する。
【0047】
好ましくは、その断面、特に直径は、それぞれのホロー・ファイバの断面の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍の大きさとすることができる。
【0048】
この結果、プレースホルダとホロー・ファイバとの間の自由空間がもたらされ、その結果、特に、プレースホルダが間に配設されるマットの層が互いに接する、プレースホルダの対向する外側領域内に、密度の低減がもたらされる。
【0049】
別の可能な実施形態では、本発明は、プレースホルダが、特に残りのホロー・ファイバと同じように物質移動に参加する物質透過性ホロー・ファイバによって形成されることを実現することもできる。そのようなプレースホルダ・ホロー・ファイバはこのように、中空設計を有し、通って流れる移動媒体(特にガス)を有し、このように特に、端部のところでやはり樹脂充填され、少なくとも1つのマットのそれぞれのホロー・ファイバより大きな、特にその少なくとも2倍の大きさの、好ましくはその少なくとも3倍の大きさの、断面、好ましくは直径を有する。そのようなホロー・ファイバは、マットのホロー・ファイバとは別個のものであってよい。
【0050】
一般に、マットのホロー・ファイバは、この後説明する実施形態は別として、いずれも同じ断面を有することができる。
【0051】
本発明は、ワープ糸によって接続されたホロー・ファイバを備え、第1の直径を有するホロー・ファイバの圧倒的多数を占める部分を含む、ホロー・ファイバ・マットであって、第2のより大きな直径を有する1つまたは複数のホロー・ファイバが、マット内で、同様にワープ糸によってくくられて、第1の直径を有するそのような2つのホロー・ファイバ間に局部的に配設される、ホロー・ファイバ・マットにも関することができる。そのようなマットを巻回または折返しする結果として、第2のより大きな直径を有するそれぞれのホロー・ファイバが、その周りを第1のより小さな直径を有するホロー・ファイバの層が延在するプレースホルダを成す。しかし、巻回または折返し中に、これらの2層は互いに一緒になるのではなく、第2の直径を有するそのようなホロー・ファイバに直接隣接して位置する第1の直径のタイプのホロー・ファイバ上に一緒になる。この場合も、第2の直径を有するホロー・ファイバは、好ましくは、第1の直径を有するホロー・ファイバの、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍の大きさの直径を有することができる。
【0052】
例示的実施形態について、図に基づいて、この後詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明によるデバイスの好ましい設計を示す。ハウジング1が、円形断面を有する円筒を成し、内側チャンバ2を備え、図示していない物質透過性ホロー・ファイバがその中に、軸に平行に配設されている。軸方向端部のところで、ホロー・ファイバに、ホロー・ファイバを通って流れる移動媒体、例えばガスまたはガス混合物が供給される。
【0055】
ホロー・ファイバは中空流路形成コア3の周りに、そのようなホロー・ファイバで作成した少なくとも1つのマットがコアに巻き付けられて、配設される。コア3は、この場合は下端に開口4を有し、開口4はこのように、ハウジング1に対して径方向内側に位置する。コア3の上端は、この場合は血液入口を成す。
【0056】
矢印5の方向に、コアの上端のところで入れられた血液が初めに下方にコアを通り、開口4から出てチャンバ2に入り、そこでホロー・ファイバ間を、基本的には円周方向に形成されており、かつハウジング1に対して径方向外側に位置する、血液出口6の方向に流れる。
【0057】
(軸Aに垂直な断面において見て)ホロー・ファイバ密度が少なくとも実質的に一定である場合、流れは主として、底部内側から上部外側に起こる。下側領域では、径方向外側領域7、つまり、チャンバへの血液の入口として働く開口4と径方向に対向する側に位置する領域を通る流れが、このように劣る。上側軸方向端では、同じことが径方向内側領域8に当てはまる。
【0058】
本発明は、確実に、入口および出口と対向する側に位置するこれらの領域7および8におけるホロー・ファイバ密度の局所的低減により、ファイバ密度が断面にわたって一定のままである場合に比べて流動抵抗が低減するようにするものである。このようにして、そうでない場合は不利な領域7および8内でも、流れが増大する。
【0059】
図2は、所望の領域内のファイバ密度を故意に低減させるための第1のオプションを示す。左側で、
図2は従来技術のホロー・ファイバ・パッケージを示しており、この場合、いくつかの層L1からLnを成す等距離間隔の空けられたホロー・ファイバ9を備えるマットが、パッケージを形成するように巻回または折返しされている。ファイバ延在範囲に垂直な断面にわたって見ると、少なくとも、全体がファイバによって満たされている画定された領域内でファイバ密度が決定される程度まで、全体的に一定のファイバ密度がパッケージ内で達成されている。
【0060】
対照的に、
図2の右側は、本発明による、個々のホロー・ファイバが除去されたホロー・ファイバ・パッケージの設計を示す。これは、巻回されていない/折返しされていないファイバ・マットにおいて予め、または完成したパッケージにおいて、所望のファイバを軸方向に引き抜くことによって行うことができる。後者は、ファイバの位置が予め決定されなくてよいという利点がある。特に、除去されたホロー・ファイバのワープ糸ループが、パッケージ内に空のまま残る。
【0061】
右側のファイバ・パッケージはこのように、ファイバ間隙10、11、および12を含む。これらのファイバ間隙内の領域またはその周りの領域では、ファイバ密度がこのように、周囲領域に比べて低減されていることを見ることができ、つまり、流動抵抗も低減され、したがって、流速または体積流量が増大されている。ここでは本発明の核となるアイデアを示すために概略的に示されているにすぎない、低減したファイバ密度を有するそのような領域は、従来の、つまり、そうしない場合は全体にわたって同じ密度を有するファイバ・パッケージ内で流れが低減されるところに、つまり、特に血液の入口または出口領域と対向する側にあるそれぞれの所定の軸方向位置に、配設されてよい。
図1に関して、これは、例えば領域7および8内である。
【0062】
図3は、局所的ファイバ密度低減を生み出すための一代替方法を示す。本発明に従って形成されたホロー・ファイバ・パッケージの、巻回または折返しされた複数の層L1からL4を備える部分が示されている。
【0063】
プレースホルダ13が層L2とL3との間に配設され、プレースホルダ13は、ホロー・ファイバの軸方向長さ全体にわたって延在してもよく、それぞれのホロー・ファイバより短い長さを有してもよく、その場合は、例えば、ホロー・ファイバの軸方向端部間のどこかに、例えば軸方向端部の領域内に配設されてよい。
【0064】
この実施形態では、プレースホルダ13は、各ファイバ9の断面より大きな断面を有する。層L2およびL3がプレースホルダから持ち上がって再び一緒にされるところである、プレースホルダ13の対向する領域14内に、自由空間が生み出され、その結果、所望の密度低減がもたらされる。プレースホルダ自体も、それ自体の体積を通じて、密度低減に寄与することができ、血液がそれを通って流れることができるとき、その目的のために、プレースホルダは、穿孔管として設計することができる。しかし、プレースホルダを、中実断面を有するように設計して、領域14のみが密度低減効果を有するようにすることもできる。しかし、上記の実施形態によれば、このプレースホルダ13自体が、物質移動に参加する物質透過性ホロー・ファイバを成すこともできる。
【0065】
そのようなプレースホルダは、例えば、
図1に基づいて、領域8内に、つまり上部かつ径方向内側に、および領域7内に、つまり底部かつ径方向外側に、そこでの流れに局所的に有利に働くように配設することができる。
【0066】
プレースホルダに、巻回/折返しされたパッケージ内の軸方向端部のところでアクセス可能である場合、ファイバが樹脂充填される前に、これらがパッケージから除去されてよい。プレースホルダが残る場合、それらは、好ましくは、やはり充填用樹脂によって取り囲まれる。
【0067】
図4は、ホロー・ファイバ・マットによって密度低減を生じさせるためのオプションのうちの1つを示す。ホロー・ファイバ9を備えるマットの一部分が示されており、この場合、ホロー・ファイバ9はいずれも等距離であり、ワープ糸15によって間隔を空けて維持されている。ワープ糸は、この場合はマットの安定した接合を達成している。この例では、例として、ホロー・ファイバのうちの1つがそのようなマットから引き抜かれており、それにより、ワープ糸15の空になったループ/ステッチ16がこのサイトに残っている。巻回または折返し中、このループが、基本的に
図2に示されているのと同様に、密度の低減を生じさせる。言うまでもなく、ホロー・ファイバが、そのようなマット内で、連続する位置を含むいくつかの位置において除去されることも可能である。
【0068】
図5は、本発明による、そのようなホロー・ファイバ9から成るマットの別の実施形態を示しており、ホロー・ファイバ9は、圧倒的多数が、ワープ糸15によって等距離間隔Aを空けてマット内に保持されている。対照的に、ホロー・ファイバの少数派、およびこの場合はこの部分内のただ1つのホロー・ファイバ9aが、マット内に広がった間隔を、特に隣接するホロー・ファイバに対して広がった間隔を有する。この広がった間隔Bは、このホロー・ファイバ9aのワープ糸対のループ/ステッチ中央間の、残りのホロー・ファイバ9のワープ糸対のループ/ステッチ中央間の間隔に比べて広がった間隔によって、実施される。
【0069】
図6は、この場合はこの部分内の1つの物質透過性ホロー・ファイバ9bによって構成されるホロー・ファイバの少数派が、マット内の全てのホロー・ファイバの多数派を構成する残りのホロー・ファイバ9より大きな直径を有する、一実施形態を示す。ワープ糸15によってくくられる結果として、このホロー・ファイバ9bは、残りの全てのホロー・ファイバ9と同じようにマットの一部となっている。巻回/折返し中、
図1のプレースホルダ13について説明した様式と同様の様式で、ホロー・ファイバ9aの周囲エリア内で所望の密度低減が達成され、違いは、折返し/巻回中にホロー・ファイバ9bの周りに配置される層(ここでは図示せず)が、このホロー・ファイバ9bの隣の、側方に対向する位置において重なり合って配置されるのではなく、ホロー・ファイバ9bの隣の、左右のホロー・ファイバ9上に配置される、という点である。