(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】触媒コーティング、その製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/889 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B01J23/889 M
(21)【出願番号】P 2019504769
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2017054583
(87)【国際公開番号】W WO2018020464
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-27
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315006609
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ キューテック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BASF Qtech Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Milverton Drive, 5th Floor, Mississauga, ON L5R 4H1, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サビノ スティーヴン アンソニー ペトローン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート レスリー デュイス
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジョン ウォールドビリッグ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピロン
(72)【発明者】
【氏名】フーウィン コン
(72)【発明者】
【氏名】ショーマ シンハ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525265(JP,A)
【文献】特表2007-505210(JP,A)
【文献】特表2000-509105(JP,A)
【文献】Catalyst-Assisted Manufacture of Olefins from Naural Gas liquids: Prototype Development and Full-Scale Testing,Final Technical Report (URL: https://www.osti.gov/servlets/purl/1357597),2015年09月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C09D 1/00-10/00,101/00-201/00
C23C
C10G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングが基材の表面上に設けられている、表面を有する基材であって、
前記コーティングは、
マンガン酸化物、クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせ、およびCaWO
4、Ba
3Y
2WO
9、またはそれらの組み合わせを含む、第1の厚さを有する第1の領域と、
X
6W
6Z、XWZ、またはそれらの組み合わせを含み、ここでXは独立してNiまたはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは独立してSi、C、またはそれらの組み合わせである、第2の厚さを有する第2の領域と、
希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせと、
を含
み、
前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、Ce、La、またはそれらの組み合わせを含み、
前記第1の領域は、前記基材に対するコーティングの最外領域であり、前記第2の領域は前記第1の領域の下にあり基材と直に隣接している領域である、前記基材。
【請求項2】
前記第2の領域は、Mnを該第2の領域の全質量に対して3質量%~15質量%の量で含む、請求項1記載の
基材。
【請求項3】
前記第2の領域は、Siを該第2の領域の全質量に対して1質量%~10質量%の量で含む、請求項1または2記載の
基材。
【請求項4】
前記希土類酸化物は、CeO
2、
La
2
O
3
、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
1から3までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを、該第1の領域の全質量に対して0.1質量%~3質量%の量で含む、請求項
1から4までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを、該第2の領域の全質量に対して1.5質量%~3質量%の量で含む、請求項
5記載の
基材。
【請求項7】
前記第1の領域の厚さは、2ミクロン~20ミクロンである、請求項1から
6までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項8】
前記第2の領域は、200ミクロン~1200ミクロンの厚さを有する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項9】
前記マンガン酸化物は、MnO、Mn
2O
3、Mn
3O
4、MnO
2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から
8までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項10】
前記クロム-マンガン酸化物は、スピネル型クロム-マンガン酸化物、逆スピネル型クロム-マンガン酸化物、非化学量論型クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1から
9までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項11】
前記クロム-マンガン酸化物は、MnCr
2O
4を含む、請求項1から
10までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項12】
前記第1の領域は、CaWO
4、Ba
3Y
2WO
9、またはそれらの組み合わせの表面負荷を、該第1の領域の表面積に対して10%~90%の量で含む、請求項1から
11までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項13】
前記第2の領域は、該第2の領域の全質量に対して、Niを15質量%~45質量%の量で含み、Wを10質量%~50質量%の量で含み、Crを2質量%~8質量%の量で含み、Feを1質量%~10質量%の量で含み、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、Siを5質量%~10質量%の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%の量で含み、かつ前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを0.1質量%~3質量%の量で含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項14】
前記第2の領域は、該第2の領域の全質量に対して、Niを15質量%~45質量%の量で含み、Wを10質量%~50質量%の量で含み、Crを2質量%~8質量%の量で含み、Feを1質量%~10質量%の量で含み、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、Siを5質量%~10質量%の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%の量で含み、かつCeを0.1質量%~3質量%の量で含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項15】
前記第2の領域は、X
6W
6Zを、該X
6W
6ZおよびXWZの全質量に対して50質量%以上の量で含む、請求項1から
14までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項16】
前記コーティングは、炭素ガス化を触媒する、請求項1から
15までのいずれか1項記載の
基材。
【請求項17】
前記基材は耐熱合金(HTA)からできている、
請求項1から16までのいずれか1項記載の前記基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月29日に出願された米国仮出願第62/368,279号に対する優先権の利益を主張し、その米国仮出願は参照によりその全体が本明細書で援用される。
【0002】
背景
材料の観点から、炭化水素の水蒸気熱分解によるオレフィンの製造は、より高い作業温度でより高い全体的なクラッキングの度合いで作業が進行することを除き、工業化された当初からあまり変わっていない。プロセス格納容器または炉コイルは、より高い温度およびより低い原料滞留時間を維持するために、過去60数年にわたり合金組成および特性において進化している。これにより、コイル表面での不所望または不利な触媒反応およびその他の炭素系汚損機構の増加だけでなく、クラッキング法のラジカル連鎖反応により生ずるアモルファスコークスまたは気相コークスの量、例えば表面触媒による「繊維状」コークス製造による炭素またはコークスの堆積および気相反応からのアモルファスコークスの蓄積の増加がもたらされた。総じて、これらの汚損機構は、炉およびプラントの効率を低下させ、炉の保全費用を大幅に増大させる。
【0003】
概要
本明細書ではコーティングが記載される。幾つかの例においては、該コーティングは、マンガン酸化物、クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含むとともに、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせを含み得る、第1の厚さを有する第1の領域と、X6W6Z、XWZ、またはそれらの組み合わせを含み、ここでXは独立してNiまたはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは独立してSi、C、またはそれらの組み合わせである、第2の厚さを有する第2の領域と、希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせとを含む。遷移金属は、例えばFe、Nb、Cr、Co、Mn、Ti、Mo、V、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記第2の領域は、Mnを3質量%~15質量%(例えば、7質量%~15質量%)の量で含む。幾つかの例において、前記第2の領域は、Siを1質量%~10質量%(例えば、3質量%~10質量%、5質量%~10質量%)の量で含む。前記コーティングは、例えば炭素ガス化を触媒し得る。
【0004】
また本明細書では、マンガン酸化物、クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含むとともに、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせを含み得る、第1の厚さを有する第1の領域と、X6W6Z、XWZ、またはそれらの組み合わせを含み、ここでXは独立してNiまたはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは独立してSi、C、またはそれらの組み合わせである、第2の厚さを有する第2の領域とを含み、前記第2の領域が、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、かつSiを5質量%~10質量%の量で含むコーティングが記載される。遷移金属は、例えばFe、Nb、Cr、Co、Mn、Ti、Mo、V、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記コーティングはさらに、希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記コーティングは、例えば炭素ガス化を触媒し得る。
【0005】
前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、例えばCe、La、Y、Pr、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記希土類元素は、Yを含む。幾つかの例においては、前記希土類酸化物は、CeO2、La2O3、Y2O3、Pr2O3、またはそれらの組み合わせを含む。前記第1の領域は、例えば前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを0.1質量%~3質量%(例えば、1質量%~3質量%、1.5質量%~3質量%、または0.3質量%~1.5質量%)の量で含み得る。
【0006】
幾つかの例においては、前記第2の領域は、Siを6質量%~8質量%の量で含む。幾つかの例においては、前記第2の領域は、Mnを9質量%~15質量%(例えば、12質量%~15質量%)の量で含む。
【0007】
前記第1の領域の厚さは、例えば2ミクロン~20ミクロン(例えば、4ミクロン~15ミクロン、5ミクロン~12ミクロン、6ミクロン~10ミクロン、または7ミクロン~9ミクロン)であり得る。前記第2の領域の厚さは、例えば200ミクロン~1200ミクロン(例えば、200ミクロン~1000ミクロン、300ミクロン~700ミクロン、200ミクロン~500ミクロン、または350ミクロン~500ミクロン)であり得る。
【0008】
前記マンガン酸化物は、MnO、Mn2O3、Mn3O4、MnO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。幾つかの例においては、前記マンガン酸化物は、Mn3O4を含む。
【0009】
前記クロム-マンガン酸化物は、スピネル型クロム-マンガン酸化物、逆スピネル型クロム-マンガン酸化物、非化学量論型クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記クロム-マンガン酸化物は、MnCr2O4を含む。
【0010】
幾つかの例においては、前記第1の領域は、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷を10%~90%(例えば、10%~60%、10%~40%、15%~35%、または20%~30%)の量で含み得る。
【0011】
幾つかの例においては、前記第2の領域は、Niを15質量%~45質量%の量で含み、Wを10質量%~50質量%の量で含み、Crを2質量%~8質量%の量で含み、Feを1質量%~10質量%の量で含み、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、Siを5質量%~10質量%の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%の量で含み、かつ前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを0.1質量%~3質量%(例えば、1質量%~3質量%)の量で含む。
【0012】
幾つかの例においては、前記第2の領域は、Niを15質量%~45質量%の量で含み、Wを10質量%~50質量%の量で含み、Crを2質量%~8質量%の量で含み、Feを1質量%~10質量%の量で含み、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、Siを5質量%~10質量%の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%の量で含み、かつCeを0.1質量%~3質量%(例えば、1質量%~3質量%)の量で含む。
【0013】
第2の領域は、幾つかの例においては、X6W6ZをX6W6ZおよびXWZの全質量に対して50質量%以上(例えば、80質量%以上)の量で含む。
【0014】
また本明細書では、本明細書に記載されるいずれかのコーティングが基材の表面上にコーティングとして設けられ得る表面を有する基材が記載される。前記基材は、例えば耐熱合金(HTA)からできていてよい。幾つかの例においては、前記HTAは、ニッケル-クロム基合金(例えば、オーステナイト鋼)、ニッケル-コバルト基超合金、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0015】
開示される組成物および方法の追加の利点は、部分的に以下の詳細な説明中に示され、部分的に明細書から明らかである。開示される組成物の利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘される構成要素および組み合わせにより実現および達成される。上記の一般的な記載および下記の詳細な説明の両者とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に開示される組成物を限定するものではないと理解されるべきである。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の詳細な説明に示される。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0017】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本開示の幾つかの態様を説明し、詳細な説明と一緒になって本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、0.5質量%のCeO
2を粉末混合の間に添加して形成された固結されたコーティングの断面の反射電子像である。
【
図2】
図2は、
図1に示される0.5質量%のCeO
2を粉末混合の間に添加して形成された固結されたコーティングの断面のより高倍率の反射電子像である。
【
図3】
図3は、0.5質量%のCeO
2を粉末混合の間に添加して形成されたコーティングの断面の反射電子像である。
【
図4】
図4は、0.5質量%のCeO
2を粉末混合の間に添加して形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図5】
図5は、CeO
2を固結されたコーティング上に添加して形成されたコーティングの断面の反射電子像である。
【
図6】
図6は、CeO
2を固結されたコーティング上に添加して形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図7】
図7は、La
2O
3を固結されたコーティング上に添加して形成されたコーティングの断面の反射電子像である。
【
図8】
図8は、La
2O
3を固結されたコーティング上に添加して形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図9】
図9は、CeO
2を用いて形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図10】
図10は、La
2O
3を用いて形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図11】
図11は、ミッシュメタル(75質量%のCeO
2、25質量%のLa
2O
3)を用いて形成されたコーティングの断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図12】
図12は、3回の水中急冷後の参照コーティング試料の表面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図13】
図13は、3回の水中急冷後の参照コーティング試料の断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図14】
図14は、3回の水中急冷後に前記希土類元素および/または希土類酸化物が固結されたコーティングに添加されたコーティング試料の断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【
図15】
図15は、3回の水中急冷後に前記希土類元素および/または希土類酸化物が添加されたコーティング試料の断面のエネルギー分散型X線分光法マップである。
【0019】
詳細な説明
本明細書に記載される組成物および方法は、開示される発明主題の具体的な態様の下記の詳細な説明およびそこに含まれる実施例を参照することでより簡単に理解され得る。
【0020】
本発明の組成物および方法が開示および記載される前に、以下に記載される態様は、具体的な合成法または具体的な試薬に限定されず、それ自体が当然ながら変動し得ると理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを記載することを目的としており、限定するものと解釈されないものと理解されるべきである。
【0021】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、数多くの用語が参照されるが、それらは以下の意味を有すると定義されるものとする。
【0022】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲の全体にわたり、語句「含む(comprise)」ならびにその語句のその他の形態、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「限定されるものではないが包含する(including but not limited to)」を意味し、例えばその他の添加剤、成分、整数、または工程を除外すると解釈されない。
【0023】
詳細な説明および添付の特許請求の範囲で使用される場合に、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で特に明確な指図がない限りは、複数の指示対象を含む。このように、例えば「組成物(a composition)」への参照は、2種以上のそのような組成物の混合物を含み、「剤(an agent)」への参照は、2種以上のそのような剤の混合物を含み、「成分(the component)」への参照は、2種以上のそのような成分の混合物を含む等である。
【0024】
「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」は、続いて記載される事象または状況が起こり得るか、または起こり得ないこと、かつその記載が、その事象または状況が起こる場合とそれが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0025】
本明細書全体を通して、識別子「第1の」および「第2の」は、開示された発明主題の様々な成分および工程の判別の補助のためだけに使用されるものと理解される。識別子「第1の」および「第2の」は、これらの用語により修飾された成分または工程に何らかの特定の順序、量、優先度、または重要性を含意するものと解釈されない。
【0026】
炭化水素の水蒸気クラッキングによるオレフィン製造は、非常にエネルギーおよび資本を消費するものである。該クラッキング法の1つの不利益な結果は、コークスの形成である。クラッキングコイル、急冷熱交換器、およびその他の下流装置におけるコークス堆積は、熱伝達および熱効率の損失、コイルおよび部品の炭化、高い保全費用、および炉の利用可能性の低下、高い圧力降下、および炉の処理量の低下、ならびに生産収率の低下をもたらし得る。
【0027】
従来のコーティングのないクラッキングコイルにおいては、バルクの管金属(一般的にオーステナイト鋼)中のニッケルおよび鉄は、コークス形成のための触媒として作用する。コークス形成の初期段階では、コークスは、先端に活性ニッケルまたは鉄粒子を有する毛髪様の繊維として成長する。成長の後期段階では、その繊維は互いに側方に成長し、伸び続ける。結果として、厚い多孔質の炭素コーティングとなる。この表面プロセスが鋼表面で進行するにつれ、気相コークスまたはアモルファスコークスとして知られるコークス製造の第2の起源が、ラジカル連鎖を基礎とするクラッキング法の副生成物として生成され、そのようなアモルファスコークスは、鋼表面上で成長する繊維上に集まり、内管壁に複雑かつ緻密なコークス層をもたらす。
【0028】
本明細書ではコーティングおよびコーティング方法が記載される。幾つかの例においては、本明細書に記載されるコーティングおよびコーティング方法は、繊維状のコークス製造を減少または排除することができ、炭素ガス化反応を触媒することができ、それによりクラッキングコイル、急冷熱交換器、および/またはその他の下流装置におけるコークスの全体の堆積を減らすことができる。本明細書に記載されるコーティングは、幾つかの例においては、コークスの形成が望ましくないその他のオレフィン以外の製造方法のための配管および装置を保護するために使用することができる。一般的に、ステンレス鋼表面は、繊維状(触媒性)炭素またはコークスの形成、およびアモルファス(または気相)コークスの蓄積を受けやすく、その際、全コークス製造に対する相対的寄与は、石油化学的製造方法、供給原料、および作業条件によって規定される。繊維状のコークス形成は十分に文献に記載されており、遷移金属表面化学種、それらの酸化物、およびそれらの化合物により触媒されることが示されており、その際、鉄およびニッケルを基礎とする化学種は、ステンレス鋼に存在する主要な触媒である。
【0029】
本明細書に記載されるコーティングは、基材上に堆積され、2つの領域を有する。第1の領域は、基材に対するコーティングの最外領域であり、この領域は加工雰囲気に曝される。該第1の領域の下にあり、基材と直に隣接している領域は、第2の領域である。
【0030】
コーティングの第1の領域は、マンガン酸化物、クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記第1の領域は、例えば石油化学炉の環境(例えば、クラッキング環境の範囲内)における商業的利用のために前記コーティングに化学的安定性を与え得る。幾つかの例においては、前記コーティング、特に第1の領域は、炭素ガス化を触媒し得る。
【0031】
前記マンガン酸化物は、例えば、MnO、Mn2O3、Mn3O4、MnO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0032】
前記クロム-マンガン酸化物は、例えばスピネル型構造または逆スピネル型構造を有し得る。幾つかの例においては、前記クロム-マンガン酸化物は、非化学量論型であり得る。幾つかの例においては、前記クロム-マンガン酸化物は、MnaCr3-aO4(式中、0.5≦a<3)を含み得る。MnaCr3-aO4の幾つかの例においては、aは、0.5以上(例えば、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、または2.8以上)であり得る。MnaCr3-aO4の幾つかの例においては、aは、3.0未満(例えば、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、または0.6以下)であり得る。特定の例においては、前記クロム-マンガン酸化物は、MnCr2O4を含み得る。
【0033】
前記第1の領域は、第1の厚さを有し得る。該第1の領域の厚さは、例えば過酷な石油化学炉の環境での作業との適合性のためのコーティングの製品寿命を高めるように選択され得る。幾つかの例においては、前記第1の領域の厚さは、2マイクロメートル(ミクロン)以上(例えば、3ミクロン以上、4ミクロン以上、5ミクロン以上、6ミクロン以上、7ミクロン以上、8ミクロン以上、9ミクロン以上、10ミクロン以上、11ミクロン以上、12ミクロン以上、13ミクロン以上、14ミクロン以上、15ミクロン以上、16ミクロン以上、17ミクロン以上、または18ミクロン以上)であり得る。幾つかの例においては、前記第1の領域の厚さは、20ミクロン以下(例えば、19ミクロン以下、18ミクロン以下、17ミクロン以下、16ミクロン以下、15ミクロン以下、14ミクロン以下、13ミクロン以下、12ミクロン以下、11ミクロン以下、10ミクロン以下、9ミクロン以下、8ミクロン以下、7ミクロン以下、6ミクロン以下、または5ミクロン以下)であり得る。前記第1の領域の厚さは、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第1の領域の厚さは、2ミクロン~20ミクロン(例えば、4ミクロン~15ミクロン、5ミクロン~12ミクロン、6ミクロン~10ミクロン、または7ミクロン~9ミクロン)であり得る。
【0034】
前記第1の領域はさらに、幾つかの例においては、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記第1の領域は表面を有し、かつCaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせは、例えば前記第1の領域のその表面上に負荷され得る。幾つかの例においては、前記第1の領域は、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷を、10%以上(例えば、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上)の量で含み得る。幾つかの例においては、前記第1の領域は、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷を、100%未満(例えば、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、または15%以下)の量で含み得る。前記第1の領域におけるCaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷は、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第1の領域は、CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷を10%~100%未満(例えば、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、15%~35%、または20%~30%)の量で有し得る。CaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせの表面負荷は、走査型電子顕微鏡法およびエネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)を使用して測定される。
【0035】
前記コーティングの第2の領域は、X6W6Z(すなわち、「661」相とも呼ばれ得るX6W6Z1)を含み得、式中、Xは、Ni、またはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは、Si、C、またはそれらの組み合わせである。前記第2の領域はさらに、例えばXWZ(すなわち、「111」相とも呼ばれ得るX1W1Z1)を含み得、式中、Xは、Ni、またはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは、Si、C、またはそれらの組み合わせである。前記遷移金属は、例えば、Fe、Nb、Cr、Co、Mn、Ti、Mo、V、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記第2の領域は、幾つかの例においては、X6W6ZをX6W6ZおよびXWZの全質量に対して50質量%以上(例えば、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、または95質量%以上)の量で含み得る。
【0036】
前記コーティングの第2の領域は、Mnを、例えば3質量%以上(例えば、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、または14質量%以上)の量で含み得る。幾つかの例においては、前記コーティングの第2の領域は、Mnを、15質量%以下(例えば、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、または5質量%以下)の量で含み得る。前記第2の領域中のMnの量は、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第2の領域は、Mnを、3質量%~15質量%(例えば、9質量%~15質量%、6質量%~9質量%、9質量%~12質量%、12質量%~15質量%、6質量%~15質量%、または7質量%~15質量%)の量で含み得る。
【0037】
前記コーティングの第2の領域は、Siを、例えば1質量%以上(例えば、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、または9質量%以上)の量で含み得る。幾つかの例においては、前記コーティングの第2の領域は、Siを、10質量%以下(例えば、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、または2質量%以下)の量で含み得る。前記第2の領域中のSiの量は、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第2の領域は、Siを、1質量%~10質量%(例えば、3質量%~6質量%、3質量%~10質量%、5質量%~10質量%、6質量%~10質量%、または6質量%~8質量%)の量で含み得る。
【0038】
幾つかの例においては、本明細書に記載されるコーティングは、マンガン酸化物、クロム-マンガン酸化物、またはそれらの組み合わせを含む、第1の厚さを有する第1の領域と、X6W6Z、XWZ、またはそれらの組み合わせを含み、ここでXは独立してNiまたはNiおよび1種以上の遷移金属の混合物であり、かつZは独立してSi、C、またはそれらの組み合わせである、第2の厚さを有する第2の領域とを含み得、その際、前記第2の領域は、Mnを7質量%~15質量%の量で含み、かつSiを5質量%~10質量%の量で含む。
【0039】
前記第2の領域は、第2の厚さを有し得る。該第2の領域の厚さは、例えば過酷な石油化学炉の環境での作業との適合性のためのコーティングの製品寿命を高めるように選択され得る。幾つかの例においては、前記第2の領域は、200ミクロン以上(例えば、250ミクロン以上、300ミクロン以上、350ミクロン以上、400ミクロン以上、450ミクロン以上、500ミクロン以上、550ミクロン以上、600ミクロン以上、650ミクロン以上、700ミクロン以上、750ミクロン以上、800ミクロン以上、850ミクロン以上、900ミクロン以上、1000ミクロン以上、1050ミクロン以上、1100ミクロン以上、または1150ミクロン以上)の厚さを有し得る。幾つかの例においては、前記第2の領域は、1200ミクロン以下(例えば、1150ミクロン以下、1100ミクロン以下、1050ミクロン以下、1000ミクロン以下、950ミクロン以下、900ミクロン以下、850ミクロン以下、800ミクロン以下、750ミクロン以下、700ミクロン以下、650ミクロン以下、600ミクロン以下、550ミクロン以下、500ミクロン以下、450ミクロン以下、400ミクロン以下、350ミクロン以下、300ミクロン以下、または250ミクロン以下)の厚さを有し得る。
【0040】
前記第2の領域の厚さは、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第2の領域は、200ミクロン~1200ミクロン(例えば、200ミクロン~1000ミクロン、200ミクロン~800ミクロン、300ミクロン~700ミクロン、200ミクロン~500ミクロン、または350ミクロン~500ミクロン)の厚さを有し得る。
【0041】
前記コーティングはさらに、希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記コーティング(例えば、第1の領域および/または第2の領域)中での希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせの存在は、例えば、過酷な石油化学炉の環境における商業的利用のために、第1の領域の熱機械的堅牢性を改善し得る。
【0042】
前記希土類元素、および/または希土類酸化物は、例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、Ce、La、Y、Pr、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、前記希土類元素は、Y金属を含み得る。幾つかの例においては、前記希土類酸化物は、CeO2、La2O3、Y2O3、Pr2O3、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記希土類酸化物は、CeO2、La2O3、またはそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例においては、前記希土類酸化物は、ミッシュメタルを含み得る。幾つかの例においては、前記ミッシュメタルは、75質量%のCeO2および25質量%のLa2O3を含み得る。
【0043】
前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、前記第1の領域、前記第2の領域、またはそれらの組み合わせ中に存在し得る。幾つかの例においては、前記第1の領域は、前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを、0.1質量%以上(例えば、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.7質量%以上、1.8質量%以上、1.9質量%以上、2.0質量%以上、2.1質量%以上、2.2質量%以上、2.3質量%以上、2.4質量%以上、2.5質量%以上、2.6質量%以上、2.7質量%以上、または2.8質量%以上)の量で含み得る。幾つかの例においては、前記第1の領域は、前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを、3質量%以下(例えば、2.9質量%以下、2.8質量%以下、2.7質量%以下、2.6質量%以下、2.5質量%以下、2.4質量%以下、2.3質量%以下、2.2質量%以下、2.1質量%以下、2.0質量%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、または0.3質量%以下)の量で含み得る。
【0044】
前記第1の領域における前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせの量は、前記の最低値のいずれかから前記の最高値のいずれかまでの範囲であり得る。例えば、前記第1の領域は、前記希土類元素、前記希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを、0.1質量%~3質量%(例えば、0.1質量%~1.5質量%、1.5質量%~3質量%、0.1質量%~1.0質量%、1質量%~2質量%、2質量%~3質量%、1質量%~3質量%、0.8質量%~3質量%、0.3質量%~1.5質量%、0.5質量%~1.4質量%、または0.6質量%~0.9質量%、2.0質量%~2.5質量%、または2.5質量%~3.0質量%)の量で含み得る。
【0045】
幾つかの例においては、前記コーティングの第2の領域は、Niを15質量%~45質量%(例えば、25質量%~45質量%、または30質量%~45質量%)の量で含み、Wを10質量%~50質量%(例えば、25質量%~50質量%、または30質量%~50質量%)の量で含み、Crを2質量%~8質量%(例えば、3.8質量%~8質量%、または5.2質量%~8質量%)の量で含み、Feを1質量%~10質量%(例えば、3質量%~10質量%、または5質量%~10質量%)の量で含み、Mnを3質量%~15質量%(例えば、6質量%~15質量%、または9質量%~15質量%)の量で含み、Siを1質量%~10質量%(例えば、3質量%~10質量%、または5質量%~10質量%)の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%以下の量で含み、かつ前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを0.1質量%~3質量%(例えば、1質量%~3質量%)の量で含み得る。
【0046】
幾つかの例においては、前記コーティングの第2の領域は、Niを15質量%~45質量%(例えば、25質量%~45質量%、または30質量%~45質量%)の量で含み、Wを10質量%~50質量%(例えば、25質量%~50質量%、または30質量%~50質量%)の量で含み、Crを2質量%~8質量%(例えば、3.8質量%~8質量%、または5.2質量%~8質量%)の量で含み、Feを1質量%~10質量%(例えば、3質量%~10質量%、または5質量%~10質量%)の量で含み、Mnを3質量%~15質量%(例えば、6質量%~15質量%、または9質量%~15質量%)の量で含み、Siを1質量%~10質量%(例えば、3質量%~10質量%、または5質量%~10質量%)の量で含み、Nbを0質量%~2質量%の量で含み、Moを0質量%~2質量%の量で含み、Tiを0質量%~2質量%の量で含み、Zrを0質量%~2質量%以下の量で含み、かつCeを0.1質量%~3質量%(例えば、1質量%~3質量%)の量で含み得る。
【0047】
また本明細書では、本明細書に記載されるいずれかのコーティングが基材の表面上にコーティングとして設けられる表面を有する基材が開示される。前記基材は、前記コーティングがそこに結合する任意の材料であり得る。例えば、前記基材は、クラッキングコイル、急冷熱交換器、またはオレフィン製造もしくは水蒸気熱分解のために使用されるその他の下流装置であり得る。幾つかの例においては、前記基材は、石油化学プロセス、例えば炭化水素のクラッキング、特にエタン、プロパン、ブタン、ナフサ、およびガス油、またはそれらの混合物のクラッキングにおいて使用され得る管および/または配管を含み得る。
【0048】
前記基材は、例えば内表面にコーティングが適用された反応器または容器の形であり得る。前記基材は、例えば内表面および/または外表面のいずれかまたは両方にコーティングが適用された熱交換器の形であり得る。そのような熱交換器は、熱交換器中または熱交換器上を通過する流体のエンタルピーの制御のために使用され得る。
【0049】
石油化学物質の製造における炭化水素処理は、広範な形状および合金組成の管、配管、装備品、および容器を含み、それらのいずれかが基材として使用され得る処理装置中で行われる。これらの構成要素は一般的に、プロセス格納容器、および一連の材料分解過程への耐久性のための適切な化学的特性、機械的特性、および物理的特性を与えるように設計された鉄基合金でできている。500℃超で作業する商業的利用においては、しばしば、300シリーズの合金から35Cr-45Ni-Fe合金までの範囲のオーステナイト系ステンレス鋼が使用され、その際、該合金中のニッケルおよびクロムの濃度は、一般的に作業温度とともに高まる。800℃を超えると、これらのオーステナイト鋼の亜群が使用され、それらはまとめて耐熱合金(HTA)または熱耐久性合金として知られている。これらのHTA鋼の範囲は、25Cr-20Ni-Fe(HK40)から35Cr-45Ni-Fe(またはそれより高い)までであり、鋳型中に合金添加剤が加えられ、鍛錬形で同様の組成である。そのような鋼の分類および組成は、当業者に公知である。
【0050】
幾つかの例においては、前記コーティングおよび/または基材は、アルカン(例えば、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ、およびガス油、またはそれらの混合物)のオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等)へのクラッキングのために使用される炉の管および/または配管において使用され得る。一般的にそのような作業において、供給原料(例えば、エタン)は、気体形で管、配管、またはコイルへと供給される。前記管または配管は炉内に通っており、一般的に900℃~1150℃の温度で維持され、出口ガスは、一般的に800℃~900℃の温度を有する。供給原料が炉内を通過すると、水素(およびその他の副生成物)が放出され、不飽和となる(例えば、エチレン)。典型的な作業条件、例えばそのようなプロセスのための温度、圧力、および流速は、当業者に良く知られている。
【0051】
作業環境と適合性であるとともに、標的となる微細構造を生成するためのコーティング配合物とも適合性である基材の選択が考慮される。幾つかの例においては、前記基材は、耐熱合金(HTA)からできていてよい。前記HTAは、幾つかの例においては、ニッケル-クロム基合金(例えば、オーステナイト鋼)、ニッケル-コバルト基超合金、またはそれらの組み合わせを含み得る。HTAの例には、限定されるものではないが、HK40、800-シリーズ(例えば、800、800H、800HT)、25Cr-35Ni-Fe、35Cr-45Ni-Fe、40Cr-50Ni-Fe、超合金等が含まれ、そのいずれも、マイクロアロイ元素をさらに含み得る。
【0052】
幾つかの例においては、前記基材は、前記コーティングが基材の表面上のコーティングとして設けられた後に4%以上(例えば、5%以上、または6%以上)の伸びを有し得る。
【0053】
本明細書に記載されるコーティングは、例えば高められた温度での炭化水素処理において炭素系汚損(コークス化)、腐食、および侵食を受けやすい金属合金成分を含む基材上で使用され得る。前記コーティングは、炭質物を触媒的にガス化し得る表面を生成および維持することができ、繊維状コークス形成に対して不活性であり得、そして炭化水素製造法に対して差し引きでプラスの経済的インパクトをもたらし得る。さらに、前記コーティングは、基材に対して高温酸化、炭化、および侵食を含む様々な形の材料分解からの保護をもたらし得る。前記コーティングは、それらが必要とされる最外表面の触媒特性と、炭化水素処理、特に800℃を超過し得る石油化学物質製造の過酷な作業条件に耐えるために必要とされる広範な化学的特性、物理的特性、および熱的機械的特性との両方を達成し得るように機能傾斜化され得る。
【0054】
そのようなコーティングおよび/または被覆された基材の商業的用途には、主要な石油化学物質、例えばオレフィンを温度が1100℃を超過し得る炭化水素の水蒸気熱分解により製造するために使用される炉の構成要素が含まれる。これらのコーティングおよび表面は、炭素質堆積物のガス化により作業効率を高め、繊維状コークスの形成を減らし、かつ熱分解過程全体および生成物流に好ましい影響を及ぼし得る。
【0055】
本明細書ではまた、前記コーティングの製造方法および本明細書に記載される被覆された基材が開示される。
【0056】
前記コーティングの製造方法は、粉末の混合物、例えば金属粉末の混合物、メタロイド粉末の混合物、またはそれらの組み合わせを形成することを含み得る。前記粉末の混合物は、例えばNi、Fe、Mn、Si、W、希土類元素、希土類酸化物、もしくはそれらの組み合わせ(例えば、CeO2)、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の例においては、前記粉末の混合物は、60質量%~70質量%の量のNiと、5質量%~10質量%の量のFeと、5質量%~15質量%の量のMnと、10質量%~20質量%の量のSiとの第1の混合物を含み得る。特定の例においては、前記粉末の混合物は、50質量%~55質量%の量の前記第1の混合物と組み合わせて、さらに45質量%~50質量%の量のWと、0.1質量%~1.5質量%の量の希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせ(例えば、CeO2)とを含み得る。前記粉末の混合物は、例えば2種以上の粉末の混合により形成され得る。混合は、機械的かき混ぜ、例えば機械的撹拌、振盪(例えば、3次元シェイカーミキサー)、ボルテックス処理、超音波処理(例えば、浴超音波処理、プローブ超音波処理)、グラインディング、ミリング(例えば、空気摩擦ミリング(ジェットミリング)またはボールミリング)等により達成され得る。前記粉末は、例えば元素形であり得る。幾つかの例においては、前記粉末は、10ミクロン以下(例えば、9ミクロン以下、8ミクロン以下、7ミクロン以下、6ミクロン以下、5ミクロン以下、4ミクロン以下、3ミクロン以下、2ミクロン以下、または1ミクロン以下)のd50を有するサイズ分布を有するように処理(例えば、篩別)され得る。
【0057】
幾つかの例においては、前記粉末および/または前記粉末混合物は、該粉末および/または粉末混合物が反応性となるように前処理され得る。個々の粉末は、混合前に前処理され得る。あるいは前記粉末の幾らかまたはすべてを混合した後に、前処理に供され得る(例えば、前記粉末混合物が前処理され得る)。例えば、前記粉末および/または粉末混合物を還元剤に曝すことにより、該粉末の表面から酸化物を除去することができる。前記酸化物の還元は、前記粉末および/または粉末混合物を加熱された水素に曝すことにより、または当該技術分野で公知の任意のその他の方法により実施され得る。幾つかの例においては、前記粉末および/または粉末混合物のすべてが反応性にされる。その他の例においては、前記粉末のそれぞれの一部だけおよび/または前記粉末混合物の一部だけが反応性にされる。
【0058】
前記方法はまた、幾つかの例においては、前記粉末の混合物を第1の熱処理にかけることを含み得る。前記第1の熱処理は、前記粉末混合物を少なくとも部分的に安定化し、それにより、例えば部分的に安定化された粉末混合物が形成され得る。前記第1の熱処理は、例えば250℃以上(例えば、350℃以上、または400℃以上)の第1の温度で行われ得る。前記第1の熱処理は、第1の時間量にわたり、例えば1時間~6時間にわたり行われ得る。前記第1の熱処理が行われる時間量は、温度により変動し得る。熱処理の温度が高いほど、その熱処理のために使用される時間は短くなる。前記第1の熱処理は、例えば真空中、または不活性雰囲気中で行われ得る。不活性雰囲気の例には、限定されるものではないが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0059】
前記コーティングが基材上に形成されるべきであれば、前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物が、被覆されるべき対象物(例えば、基材)に適用され得る。前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物の適用は、粉末ベースの配合物を基材の表面に与えることができる一連の技術により行われ得る。そのような技術には、限定されるものではないが、吹き付け塗布、および浸漬塗布が含まれる。選択される適用方法に応じて、前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物は、当業者に公知のおよび上記の組成配合物に適切な水性成分および/または有機成分が添加されて液体形、噴霧形、スラリー形、または準固体形であり得る。幾つかの例においては、前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物が基材に適用された後に、該粉末混合物および/または該部分的に安定化された粉末混合物が適用された基材を乾燥させる。
【0060】
次いで、前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物で被覆された基材に対して熱処理が行われる。前記熱処理は、そのコーディングを固結させ、それにより、例えば固結されたコーティングが形成される。前記固結過程において、前記粉末混合物は、定義された微細構造へと相互拡散する(例えば、定義された領域を有する)。固結の温度は、例えば900℃~1200℃(例えば、1000℃~1200℃、または1050℃~1150℃)の範囲であり得る。固結の熱処理を行う時間は、例えば1時間~6時間(例えば、2時間~4時間、または2.5時間~3.5時間)の範囲であり得る。固結の温度および/または時間は、基礎材料または鋼合金組成(例えば、存在するのであれば基材の性質)、コーティング配合物、および目的とするコーティングの微細構造に基づいて選択され得る。
【0061】
前記第2の熱処理は、例えば真空中、および/または不活性雰囲気中で行われ得る。不活性雰囲気の例には、限定されるものではないが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、またはそれらの組み合わせが含まれる。第2の熱処理の間の雰囲気中の反応性ガス、例えば酸素および窒素の濃度は、低く保たれるべきである。特定の例においては、まず最初に真空が引かれ、1torr~2torrのアルゴンが、前記第2の熱処理が行われる真空チャンバ中に導入される。
【0062】
熱処理固結の後に、固結されたコーティングが製造され、最終表面が生成される。表面の清浄度および表面仕上げの所望の水準を達成するために標準的な清浄化法が使用され得る。最初の水素処理は、幾つかの例においては、表面の酸化物種を低減させ、有機切削液等の炭素質汚染物を除去するために使用され得る。表面生成は、固結されたコーティング上での制御された酸化を行うことにより達成され、それにより前記コーティングが形成され得る。制御された酸化においては、前記固結されたコーティングは、酸素の存在下で加熱される。制御された酸化の間の酸素濃度、制御された酸化が行われる温度、および該制御された酸化が行われる時間に応じて、種々の酸化物組成、結晶構造、ならびに結晶形態が生成され得る。
【0063】
幾つかの例においては、前記方法はさらに、前記コーティングの第1の領域にCaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせをドーピングすることを含む。CaWO4によるドーピングは、例えば制御された酸化の間に、例えばCaOおよびWO3を含有するゾルを導入することにより実施され得る。ドーピングは、高められた温度で、例えば800℃未満の温度で行われ得る。1つの実施形態においては、前記ゾルは、制御された酸化の間にガス流中に導入され得る。前記コーティングの第1の領域をCaWO4、Ba3Y2WO9、またはそれらの組み合わせによりドーピングする、例えば微粉末を使用するその他の方法を使用してもよい。
【0064】
前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、前記方法の様々な段階の間で添加され得る。幾つかの例においては、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、前記粉末の混合物の形成の間に粉末として添加され得る。幾つかの例においては、前記方法はさらに、基材への適用前に、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物に添加することを含み得る。
【0065】
幾つかの例においては、前記方法はさらに、前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物の基材への適用後に、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物に適用することを含み得る。前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせの適用は、例えば吹き付け塗布、浸漬塗布、または任意のその他の被覆法によって行われ得る。選択された適用法に応じて、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、液体形、噴霧形、または準固体形であり得る。幾つかの例においては、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを前記基材上の前記粉末混合物および/または前記部分的に安定化された粉末混合物に添加した後に、基材上の該粉末混合物および/または該部分的に安定化された粉末混合物を、そこに適用された希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせと一緒に乾燥させる。
【0066】
幾つかの例においては、前記方法はさらに、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを前記固結されたコーティングに適用することを含み得る。前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせの適用は、例えば吹き付け塗布、浸漬塗布、または任意のその他の被覆法によって行われ得る。選択された適用法に応じて、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせは、液体形、噴霧形、または準固体形であり得る。幾つかの例においては、前記希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせを前記固結されたコーティングに適用した後に、該固結されたコーティングを、そこに適用された希土類元素、希土類酸化物、またはそれらの組み合わせと一緒に乾燥させる。
【0067】
数多くの本発明の実施形態が記載されている。それでもやはり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ると理解されるであろう。したがって、その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0068】
以下の実施例は、本明細書に記載されるシステムおよび方法の特定の態様をさらに例示することを目的とするものであって、特許請求の範囲の範囲を制限することを目的とするものではない。
【0069】
実施例
以下の実施例は、開示される発明主題による方法および結果を例示するために以下に示される。これらの実施例は、本明細書に開示される発明主題のすべての態様を含むことを意図するものではなく、むしろ代表的な方法および結果を例示することを意図するものである。これらの実施例は、当業者に明らかな本発明の等価物および変形形態を排除することを意図するものではない。
【0070】
数値(例えば、量、温度等)に関して精度を保証するように努力がなされているが、幾らかの誤差および偏差は考慮されるべきである。特段の記載がない限り、部は質量部であり、温度は℃である。測定条件、例えば成分濃度、温度、圧力、およびその他の測定範囲、ならびに記載された方法を最適化するために使用され得る条件の数多くの選択肢および組み合わせがある。
【0071】
実施例1:
5種の希土類元素および/または希土類酸化物種(CeO2、La2O3、Pr2O3、Y2O3、およびY金属)の2種の負荷量(0.05質量%および0.5質量%)でのコーティング堅牢性に対する効果を、該希土類元素および/または希土類酸化物を前記コーティングに、粉末処理の間に(例えば、粉末の混合物の形成の間に)添加することにより評価した。
【0072】
固結熱処理の後に、希土類元素および/または希土類酸化物種は、固結されたコーティング内に存在するその他の酸素含有相と結合された。0.5質量%のCeO
2を添加して形成された固結されたコーティングの反射電子像は、
図1および
図2に示されている。
【0073】
前記表面生成の後に、該希土類元素および/または希土類酸化物種の一部は第1の領域に移行したが、残りの部分は、第2の領域内に残った。0.5質量%のCeO
2を添加して形成されたコーティングの反射電子像は、
図3に示されており、かつ0.5質量%のCeO
2を添加して形成されたコーティングのエネルギー分散型X線分光法マップは、
図4に示されている。
【0074】
希土類元素および/または希土類酸化物種のコーティング堅牢性に対する効果をまた、該希土類元素および/または希土類酸化物を前記固結されたコーティングの表面に添加することにより評価した。例えば、CeおよびLaの酢酸塩を水中に溶解させ、固結されたコーティング表面上に堆積させた。該酢酸塩種を次いで熱処理することで、所望の酸化物を形成させ、その後に該コーティングに表面生成を施した。CeO
2を添加して形成されたコーティングの反射電子像は、
図5に示されており、かつCeO
2を添加して形成されたコーティングのエネルギー分散型X線分光法マップは、
図6に示されている。La
2O
3を添加して形成されたコーティングの反射電子像は、
図7に示されており、かつLa
2O
3を添加して形成されたコーティングのエネルギー分散型X線分光法マップは、
図8に示されている。
【0075】
希土類元素および/または希土類酸化物種の第1の領域の堅牢性に対する効果をまた、該希土類元素および/または希土類酸化物を前記コーティングの形成の間に添加することにより評価した。例えば、3種の希土類元素および/または希土類酸化物種、つまりCeO
2、La
2O
3、およびミッシュメタルの組み合わせ(75質量%のCeO
2、25質量%のLa
2O
3)を2種の負荷量(1.5質量%および3.0質量%)で評価した。固結熱処理の後に、希土類元素および/または希土類酸化物種は、固結されたコーティング内に存在するその他の酸素含有相と結合された。前記表面生成の後に、該希土類元素および/または希土類酸化物種の一部は第1の領域に移行し、第1の領域と第2の領域との間の界面に「杭」を形成したが、残りの部分は、第2の領域内に残った。CeO
2、La
2O
3、および前記ミッシュメタルを用いて形成されたコーティングのエネルギー分散型X線分光法マップは、それぞれ
図9、
図10、および
図11に示されている。
【0076】
様々な試料の熱的機械的堅牢性を、該試料を1000℃に加熱し、次いで該試料を水中急冷することにより調査した。3回の水中急冷後の参照試料(例えば、希土類元素および/または希土類酸化物を有しないコーティング)は、第1の領域の層間剥離を示し、幾つかの場合には、第1の領域の範囲の完全な除去により、第2の領域が露出している(
図12および
図13)。前記希土類元素および/または希土類酸化物が固結されたコーティングに添加された試料は、層間剥離および亀裂の範囲は殆どなく、3回の水中急冷後に殆どが無傷のままであった(
図14)。前記希土類元素および/または希土類酸化物が添加された試料は、第1の領域の一定の範囲で部分的な層間剥離の範囲を有していたが、第2の領域には層間剥離を有しなかった(
図15)。
【0077】
本発明に内在する明らかなその他の利点は、当業者には自明であろう。特定の特徴およびサブコンビネーションは有益であり、その他の特徴およびサブコンビネーションへの参照がされなくても使用することができると理解されるであろう。これは、特許請求の範囲により検討され、その範囲内にある。本発明の範囲を逸脱することなく本発明から多くの可能な実施形態を作成することができるので、本明細書に示されるまたは添付の図面に示されるすべての事項は、説明的なものとして解釈されるべきであって、限定の意味で解釈されるべきではないと理解されるであろう。
【0078】
添付の特許請求の範囲の方法は、本明細書に記載される具体的な方法による範囲に限定されるものではなく、それらは、特許請求の範囲の幾つかの態様を例示するものと解釈され、そして機能的に等価な任意の方法は、特許請求の範囲内に含まれる。前記方法の様々な変更は、本明細書に示され、記載されるもの以外にも、添付の特許請求の範囲内に含まれると解釈される。さらに、本明細書に開示される特定の代表的な方法工程のみしか具体的に記載されていない場合に、方法工程の他の組み合わせも、特に記載がないとしても添付の特許請求の範囲内に含まれると解釈される。このように、工程、構成要素、コンポーネントまたは成分の組み合わせが明示的に本明細書中で述べられている場合、またはそれを下回る場合があるが、その他の工程、構成要素、コンポーネントおよび成分の組み合わせは、明示的に記載されていなくても含まれる。