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特許7034146ライナを備えた栓付きドラムならびにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ライナを備えた栓付きドラムならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/06 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B65D77/06 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019515952
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017001086
(87)【国際公開番号】W WO2018054527
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】202016005920.4
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591112326
【氏名又は名称】マウザー-ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Mauser-Werke GmbH
【住所又は居所原語表記】Schildgesstrasse 71-163, D-50321 Bruehl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ヴァイラオホ
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-162732(JP,A)
【文献】特開平10-310173(JP,A)
【文献】特開2000-238888(JP,A)
【文献】特開2003-034337(JP,A)
【文献】特開2017-178320(JP,A)
【文献】米国特許第04635814(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/23572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/14
B65D 77/00-77/06
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉のプラスチックフィルムから成るライナ(22)が挿入された、熱可塑性プラスチックから成る栓付きドラム(10)であって、円筒形のドラム壁(12)と、ディスク形の下底部(14)と、ディスク形の上底部(16)とを有しており、該上底部(16)には、閉鎖栓により閉鎖可能な2つの栓接続管片(18,20)が配置されており、一方の前記栓接続管片は充填兼排出用栓接続管片(18)として形成されており、かつ他方の前記栓接続管片は給排気用栓接続管片(20)として形成されており、前記充填兼排出用栓接続管片(18)および前記給排気用栓接続管片(20)内にはそれぞれ、前記ライナ(22)の対応する充填兼排出用ライナ接続管片(24)および給排気用ライナ接続管片(26)が取り付けられており、前記給排気用栓接続管片(20)のための前記閉鎖栓は、複数部分から形成されておりかつ少なくとも下側のアダプタリング(28)と上側のキャップナットまたはリングナット(48)とを有しており、前記アダプタリング(28)および前記キャップナットまたはリングナット(48)にはそれぞれ中心貫通開口(50,68)が設けられており、さらに、前記アダプタリング(28)の前記中心貫通開口(68)内にねじこまれた中心の栓プラグ(64)を有しており、前記アダプタリング(28)は、前記ライナ(22)の前記給排気用ライナ接続管片(26)の上端部に固く溶接されておりかつねじ嵌められた前記リングナット(48)によりフランジリング(46)を介して、当該栓付きドラム(10)の前記給排気用栓接続管片(20)内に固定されている、栓付きドラム(10)において、
‐2つの栓接続管片(18,20)は、同じ大きさのインチ栓接続管片として、雌ねじ山(BCS70×6閉鎖手段)と、その下に位置するシール台座(38)とを備えて形成されており、
‐前記充填兼排出用栓接続管片(18)のための前記閉鎖栓は、インチ栓プラグとして、雄ねじ山(BCS70×6閉鎖手段)と、その下に位置する、前記充填兼排出用栓接続管片(18)に設けられた前記シール台座(38)に対してシールするシールリングとを備えて形成されており、
‐前記充填兼排用栓接続管片(18)は、前記雌ねじ山の下側の、接続管片ネック(40)において最も狭い貫通箇所に、平滑化された環状面の溶接台内面(42)を有しており、該溶接台内面(42)には、前記ライナ(22)の前記充填兼排出用ライナ接続管片(24)の上端部が固く溶接されており、
‐前記アダプタリング(28)の前記中心貫通開口(68)内にねじ込まれた前記栓プラグは、/4インチ栓プラグ(64)として、雄ねじ山と、その下に位置するシールリング(66)とを備えて形成されており、
‐ねじ嵌められた前記リングナット(48)により上方から係合される、前記アダプタリング(28)の前記フランジリング(46)は、その下面の外縁に環状のシールリング(60)を有しており、前記給排気用栓接続管片(20)に設けられた前記雌ねじ山の下側の前記シール台座(38)に対してドラム内部をシールしている
ことを特徴とする、栓付きドラム(10)。
【請求項2】
ねじ嵌められた前記リングナット(48)は、上方からスナップ嵌めまたは緊締された位置固定キャップ(52)により被覆されており、該位置固定キャップ(52)もやはり中心貫通開口(54)を備えており、この中心貫通開口を通じて、前記アダプタリング(28)の中心にねじ込まれた3/4インチ栓プラグ(64)に自由にアクセスすることができるようになっている、請求項1記載の栓付きドラム(10)。
【請求項3】
前記ランジリング(46)の下面の外縁に設けられた環状のシールリング(60)は、ライナ表面とドラム内壁との間の中間空気スペースを、前記給排気用栓接続管片(20)内で前記雌ねじ山の下側に配置された前記シール台座(38)に対してシールしている、請求項記載の栓付きドラム(10)。
【請求項4】
前記リングナット(48)が緩められたもしくはねじり出された場合に、前記フランジリング(46)の下面に前記環状のシールリング(60)を備える前記アダプタリング(28)は、固くねじ込まれた中心の前記3/4インチ栓プラグ(64)と共に、真空ベル状体(70)を貫通して案内された牽引工具(74)により上方に向かって持上げ可能に形成されており、前記シールリング(60)と前記シール台座(38)との間に環状ギャップ(76)が形成されると、該環状ギャップ(76)を通じて、前記真空ベル状体(70)に接続された真空ポンプにより、ライナ表面とドラム内壁との間の前記中間空気スペースを真空引きすることができるようになっている、請求項記載の栓付きドラム(10)。
【請求項5】
真空引きが行われた後で、前記ライナ表面がほぼ完全にもしくは全面的に前記ドラム内壁に当て付けられると、前記アダプタリング(28)は、固くねじ込まれた中心の前記3/4インチ栓プラグ(64)と共に、前記真空ベル状体(70)を貫通して案内された前記牽引工具(74)により下方に向かって案内可能に形成されており、かつ前記ランジリング(46)の下面の前記環状のシールリング(60)は、前記給排気用栓接続管片(20)において前記雌ねじ山の下側に配置された前記シール台座(38)に固くかつ気密に押付け可能に形成されており、次いで上方から固くねじ嵌められた前記リングナット(48)により永続的に、気密な位置に固定されている、請求項記載の栓付きドラム(10)。
【請求項6】
‐前記リングナット(48)が固くねじ込まれている状態において、反対側に位置する前記充填兼排出用栓接続管片(18)を通じて、自動充填設備において圧力充填管を介して液状の充填物を当該栓付きドラム(10)に充填するためおよび自動排出設備において負圧吸引管を介して液状の充填物を取り出すために‐中心に配置された前記3/4インチ栓プラグ(64)に、前記中心貫通開口(54)を備えた前記位置固定キャップ(52)を介して自由にアクセスすることができるようになっており、かつ前記3/4インチ栓プラグ(64)は、ねじ締結工具を用いて手で、またはねじ締結自動装置により自動的にねじ外し可能にかつ再ねじ込み可能に形成されている、請求項からまでのいずれか1項記載の栓付きドラム(10)。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項記載の栓付きドラムに挿入するためのライナ(22)において、
円筒形のライナ壁(30)と、ディスク形の下底部(34)と、ディスク形の上底部(32)とが設けられており、該上底部(32)には2つのライナ接続管片(24,26)が配置されており、一方の前記ライナ接続管片は、他方の前記ライナ接続管片よりも大きな直径を有しておりかつ充填兼排出用接続管片(24)として用いられ、かつ他方のライナ接続管片(26)は、当該ライナおよび前記栓付きドラム(10)における液状の充填物の充填もしくは排出時に給排気用に用いられ、より小さな直径を有する前記ライナ接続管片(26)の上端部は、アダプタリング(28)に固く溶接されており、該アダプタリング(28)は、半径方向に張り出したフランジリング(46)を有しており、該フランジリング(46)の下面には環状のシールリング(60)が配置されているもしくは取り付けられている
ことを特徴とする、ライナ(22)。
【請求項8】
前記ライナ接続管片(24,26)は内側から、半径方向内向きの溶接フランジ縁部でもって前記ライナ上底部(32)のライナ壁に溶接されて、内側から外側に向かって折り返され、これにより、存在する全てのフィルム切断縁部が充填物に接触しないように覆われることになり、前記フィルム切断縁部は‐溶接された前記ライナ接続管片(24,26)の前記溶接フランジ縁部においても、ライナ壁に形成された貫通開口の内側画定部においても‐充填された液状の充填物と接触することは一切ない、請求項記載のライナ(22)。
【請求項9】
溶接された前記ライナ接続管片(24,26)は、前記ライナ壁(30,32,34)と同じ多層のフィルム構造を有している、請求項または記載のライナ(22)。
【請求項10】
より大きな直径を有する前記ライナ接続管片(24)は、前記栓付きドラム(10)への挿入前は、少なくともその直径の2倍の長さを有しており、その自由端部は溶接されている、または気密に閉じられている、請求項または記載のライナ(22)。
【請求項11】
より大きな直径を有する前記ライナ接続管片(24)は、前記栓付きドラム(10)への挿入後に適当な長さに切断され、充填兼排出用栓接続管片(18)の雌ねじ山の直下で、接続管片ネック(40)に形成された溶接台内面(42)に、半径方向において溶接されている、請求項から10までのいずれか1項記載のライナ(22)。
【請求項12】
請求項から11までのいずれか1項記載のライナ(22)を備えた、請求項1からまでのいずれか1項記載の栓付きドラム(10)を製造する方法において、以下の方法ステップ、すなわち:
‐70×6閉鎖手段を備えた2つの2インチ栓接続管片と、70×6閉鎖手段用のインチ栓プラグ(44)と、70×6閉鎖手段用の/4インチ栓プラグ(64)とを備えた、付きドラム(10)を用意し、前記2インチ栓プラグ(44)を備えた一方の前記2インチ栓接続管片を、液状の充填物用の充填兼排出用栓接続管片(18)として用い、かつ他方の前記2インチ栓接続管片を、前記ライナ(22)の内部の充填容積用および前記ライナ(22)の外側表面とドラム内壁との間の中間空気スペース用の給排気用栓接続管片(20)として用いるステップ、
‐異なる大きさの2つのライナ接続管片(24,26)を備えたライナ(22)であって、70×6閉鎖手段を備えた前記2インチ栓接続管片用に設けられかつ溶接された自由端部を備えてやや長く形成された、より大きなライナ接続管片と、これに対してより短くやや小さなライナ接続管片であって、該ライナ接続管片の端部に、下側のシールリング(60)を備えた中空のスリーブ状のアダプタリング(28)が溶接されているライナ接続管片とを備えたライナ(22)を用意するステップ、
‐前記ライナ(22)を巻いて、溶接された前記アダプタリング(28)が上部に配置された細長いロール(36)を形成するステップ、
‐前記給排気用栓接続管片(20)を介して前記細長いロール(36)を挿入し、中心貫通開口(50)と、前記給排気用栓接続管片(20)の前記2インチ栓接続管片における前記70×6閉鎖手段用の雄ねじ山とを備えるリングナット(48)であって、前記アダプタリング(28)を包囲するリングナット(48)により前記アダプタリング(28)を固定し、該アダプタリング(28)が前記下側のシールリング(60)でもって前記給排気用栓接続管片(20)内で、前記ライナ(22)の外側表面と前記ドラム内壁との間の前記中間空気スペースをシールするステップ、
‐前記給排気用栓接続管片(20)内へ圧縮空気を、前記ライナ(22)が完全に膨らまされ、かつ溶接されたより大きな方の前記ライナ接続管片(24)が反対側に位置する前記充填兼排出用栓接続管片(18)から姿を見せるまで、吹き込むステップ、
‐より大きな方の前記ライナ接続管片(24)の溶接された自由端部を切り取り、該ライナ接続管片を外側に向かって前記栓付きドラム(10)の前記充填兼排出用栓接続管片(18)に被せるように折り返すステップ、
‐前記充填兼排出用栓接続管片(18)の前記雌ねじ山の下側で前記ライナ接続管片(24)を半径方向において溶接し、かつ前記雌ねじ山の下側の溶接環状面(42)の上側の余分なかつ/または突出した前記ライナ接続管片(24)を正確に適合するように切り取るステップ、
‐前記給排気用栓接続管片(20)に真空ベル状体(70)を被せ嵌め、前記リングナット(48)が緩められ前記アダプタリング(28)が持ち上がった状態で、前記真空ベル状体(70)に接続された負圧ポンプにより、前記ライナ(22)の外側表面と前記ドラム内壁との間の前記中間空気スペースから全ての空気を吸い出し、前記ライナ(22)の外側表面が前記ドラム内壁に全面的に当て付けられるまで真空引きするステップ、
‐前記リングナット(48)を締め付けて、前記給排気用栓接続管片(20)内で前記アダプタリング(28)を下側の前記シールリング(60)と共に押し付けることにより、前記ライナと前記ドラム内壁との間の真空を永続的に維持するステップ、
‐前記充填兼排出用栓接続管片(18)の前記2インチ栓接続管片に前記2インチ栓プラグ(44)をねじ込み、かつ雌ねじ山(56)を備えたスリーブ状の前記アダプタリング(28)内に前記3/4インチ栓プラグ(64)をねじ込むステップ
を特徴とする、方法。
【請求項13】
真空の損失を伴う前記リングナット(48)の不慮の緩みまたはねじり出しを防ぐために、前記給排気用栓接続管片(20)には、保護被覆するための、中心貫通開口(54)を備えた位置固定キャップ(52)が被せ嵌められる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記給排気用栓接続管片(20)を介して真空引きする間に、反対側に位置する前記充填兼排出用栓接続管片(18)を介して圧縮空気が前記ライナ(22)の内部へ吹き込まれ、これにより、前記ライナ(22)のライナフィルムが前記栓付きドラム(10)の内壁に全面的に押し当てられると共に、全ての中間スペース空気が押し出される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
吹き込まれる前記圧縮空気は、高温空気であって、ライナフィルムを熱活性化させるために吹き込まれ、その結果、前記ライナフィルムの外面は接着作用を発揮して、前記栓付きドラム(10)の内壁に付着しかつ/または再剥離可能に貼り付くことになる、請求項1213または14記載の方法。
【請求項16】
前記ドラム内部から前記ライナ(22)を取り出すために、前記リングナット(48)が緩められて前記アダプタリング(28)が持ち上がった状態で、前記アダプタシールリング(60)と前記栓接続管片シール台座(38)との間の環状ギャップを通して、ライナ表面とドラム内壁との間の前記中間空気スペース内に圧縮空気が吹き込まれ、これにより、前記ドラム内壁に付着しかつ/または貼り付いている前記ライナ表面が剥離する、請求項121314または15記載の方法。
【請求項17】
前記充填兼排出用栓接続管片(18)を通して前記ライナ(22)の内部で、該ライナが前記ドラム内壁から完全に剥離されるまで真空引きが行われる、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記充填兼排出用栓接続管片(18)に溶接された前記ライナ接続管片(24)は、まず前記溶接環状面(42)の直下で切り取られ、前記充填兼排出用栓接続管片(18)から少しだけ引き出されて密閉され、その後、前記ライナ(22)全体が前記アダプタリング(28)と共に、反対側に位置する前記給排気用栓接続管片(20)を通してドラム内部から引き出される、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填兼排出用接続管片と給気接続管片とを備えたフレキシブルなライナが挿入された、特に危険な液状または流動性の充填物を保管しかつ搬送するための栓付きドラムに関する。
【0002】
ライナが装備された栓付きドラムの場合、液状の充填物はドラム内部と接触することはなく、ライナ内部にのみ接触する。使用済みの、大抵は高価な栓付きドラムを再利用するためには単に、使用された比較的廉価なライナもしくはフィルムバッグの交換が必要とされているに過ぎない。
【0003】
本発明は、好適には特定のプラスチック栓付きドラムに関するものであるが、基本的には例えばドラム蓋に2つの栓を備えた蓋付きドラム、側方取っ手を備えたファセット(Fassetts:商標名)または上部取っ手を備えたキャニスタ等の、別のプラスチック容器にも適用され得る。
【0004】
薄肉のプラスチックフィルムから成るライナが挿入された、熱可塑性プラスチックから成る栓付きドラムは、円筒形のドラム壁と、ディスク形の下底部と、ディスク形の上底部とを有しており、上底部には、閉鎖栓により閉鎖可能な2つの同じ大きさの栓接続管片が配置されており、一方の栓接続管片は充填兼排出用栓接続管片として形成されており、かつ他方の栓接続管片は給排気用栓接続管片として形成されており、充填兼排出用栓接続管片および給排気用栓接続管片内にはそれぞれ、ライナの対応する充填兼排出用ライナ接続管片および給排気用ライナ接続管片が取り付けられている。この場合、給排気用栓接続管片のための閉鎖栓は少なくとも、アダプタリング、アダプタリングを包囲するかもしくは覆うように係合し、それぞれが中心貫通開口を備えたキャップナットまたはリングナット、およびさらに、アダプタリングの中心貫通開口内にねじ込まれた中心栓プラグを備えて複数部分から形成されている。アダプタリングは、ライナの給排気用栓接続管片の上端部に固く溶接されておりかつねじ嵌められたリングナットによりフランジリングを介して、栓付きドラムの給排気用栓接続管片内に固定されている。
【0005】
問題点:
種々様々な液状の充填物に関して包装材を選択する際に、例えば多層のライナが挿入された栓付きドラムの場合には、各充填物に必要とされるライナの遮断特性を選択する必要がある。敏感な液状の充填物は、例えば拡散する酸素により影響を及ぼされて損傷される恐れがある。しかしながら、遮断特性を有する多層のライナは比較的高価であると共に、極小さな衝撃・引裂強さしか有しておらず、液体容器の搬送時に往復して打ち寄せる充填物により常時発生しかつ液状の充填物柱の上側の空気スペース内でライナ接続管片にのみ懸吊されたライナフィルムを常時動かすような、持続する動的な交番荷重により、屈曲折畳み箇所のところが容易に不密になるか、または特にライナ接続管片の領域において裂断する恐れがある。
【0006】
背景技術:
充填物と容器内壁との接触を回避するためのプラスチックライナが挿入された容器自体は周知である。刊行物である米国特許第4993579号明細書(US 4993579A)に開示された容器は、主として剛性の包囲体と、弾性的な気泡の形態のライナとから成り、気泡は充填時に外装パッケージの容積を満たすことができる。容器を空にする際に気泡が排出開口の手前に移動して排出を妨げることを防止するために、気泡は開口から遠ざけられた点において包囲体に固定されている。充填に際して弾性的な気泡は、容器内部を十分に満たすことができる。容器外壁に対する気泡の近さは、安定性を向上させる。このような構造は、典型的には充填時に容器外壁に対して十分に当て付けられるほど弾性的ではない、遮断特性を備えた多層フィルムには適さない。
【0007】
国際公開第9426603号(WO 94/26603 A1)に記載された、栓付きドラムとライナの組合せでは、少なくとも80mmの追加的な取付け開口が必要とされている。よってこれは、既存の充填設備やポンプによる排出設備に簡単に使用され得る規格容器ではない。規格に対応していない追加的な開口は、コストの増大をもたらす。さらに、追加的な開口により外装パッケージのさらなる潜在的な不密性が実現されている。ここでは、ライナはドラム内壁に固定されてはいない。つまりこの場合も、遮断特性を備えた多層ライナを使用した場合には、一方では動的な交番荷重に基づきかつ他方ではこのライナの小さな衝撃・引張強さに基づき、屈曲折畳み箇所における不密性もしくはライナ接続管片の領域における裂断の危険が生じる恐れがある。
【0008】
最後に刊行物である米国特許第5217138号明細書(US 5217138)からは、上底部に充填兼排出用栓接続管片と給排気栓接続管片とを備えた栓付きドラム内での、薄いプラスチックフィルムから成る円筒形のライナの使用が公知である。この場合は、栓付きドラムの各栓接続管片内の2つのライナ接続管片に関する。一方のライナ接続管片は、溶接された環状スリーブもしくはアダプタリングを備えており、環状スリーブもしくはアダプタリングは、ドラムの給排気用栓接続管片内に上方から挿入されて固定される。この栓接続管片を通して、巻かれたライナもドラム内部へ入れねばならない。ライナを挿入した後で、線材等を用いて第2のライナ接続管片を反対側のドラム栓接続管片を通して引き出し、ドラム栓接続管片に緊締して取り付けることができるようになるまで、ドラムは往復して転がされざるを得ない。その後、ライナはドラムに設けられた両ライナ栓接続管片に柔軟に懸吊された状態になる。ライナとドラム内壁との間の中間空気スペースは、ライナ挿入後は排気不能になるが、ただし、ドラム本体がいずれかの箇所に別の閉鎖可能な栓接続管片もしくは別の閉鎖可能なドラム開口を有している場合は別である。充填兼排出用栓接続管片を介して栓付きドラムに充填する場合、反対の側に位置する給排気用栓接続管片においては、環状スリーブ内の中心に配置されたより小型の栓プラグがねじ外されてよく、これにより、充填物により押し退けられる空気をライナ内部から抜くことができる。中間スペース空気を抜くためには、ドラム充填部のところに、迅速な排気を保証する別の別個の排気開口が設けられている必要があり、さもなければ、予定された充填物量が十分迅速にドラムに流入することができないため、自動充填設備の場合にはドラムが溢れることが発生し易くなる恐れがある。
【0009】
課題:
本発明の根底を成す課題は、指摘した従来技術の欠点を解消すると共に、既存の規格栓付きドラムに交換可能なライナを装備して、特に充填者や排出者等の使用者もしくはユーザが取扱い時に、ライナ無しの同じ規格栓付きドラムと比べて違いや欠点を一切認めることがなく、かつライナを装備した栓付きドラムが何らかの補助手段無しで、既存の充填設備およびポンプによる排出設備に使用され得るようにすることにある。
【0010】
解決手段:
この課題は、特許請求項1記載の特別な特徴により解決される。下位請求項に記載の各特徴は、本発明による、ライナを備えた栓付きドラムの別の有利な構成の可能性を表している。
【0011】
提案する技術的な教示自体は、ライナを備えた周知の栓付きドラムの欠点の克服の仕方、およびライナを装備したドラムの取扱いが充填者および排出者にとって規格ドラムの取扱いと何ら相違しない、ということを簡単に伝えるものである。
【0012】
このことは構造的に、以下の各特徴、すなわち:
‐2つの栓接続管片は、規格化された2インチ栓接続管片として、雌ねじ山(BCS70×6閉鎖手段)と、その下に位置するシール台座とを備えて形成されており、
‐充填兼排出用栓接続管片のための閉鎖栓は、市販の規格化された2インチ栓プラグとして、雄ねじ山(BCS70×6閉鎖手段)と、その下に位置する、充填兼排出用栓接続管片に設けられたシール台座に対してシールするシールリングとを備えて形成されており、
‐充填兼排気用栓接続管片は、雌ねじ山の下側の、接続管片ネックにおいて最も狭い貫通箇所に、平滑化された環状面の溶接台内面を有しており、溶接台内面には、ライナの充填兼排出用ライナ接続管片の上端部が固く溶接されており、
‐アダプタリングの中心貫通開口内にねじ込まれた栓プラグは、市販の規格化された3/4インチ栓プラグとして、雄ねじ山と、その下に位置するシールリングとを備えて形成されており、
‐ねじ嵌められたリングナットにより上方から係合される、アダプタリングのフランジリングは、その下面の外縁に環状のシールリングを有しており、給排気用栓接続管片に設けられた雌ねじ山の下側のシール台座に対してドラム内部をシールしている
ことにより、達成される。
【0013】
本発明の構成では、ねじ嵌められたリングナットは、上方からスナップ嵌めまたは緊締された位置固定キャップにより被覆されており、位置固定キャップもやはり中心貫通開口を備えており、この中心貫通開口を通じて、アダプタリングの中心にねじ込まれた3/4インチ栓プラグに自由にアクセスすることができるようになっている、ということが想定されている。
【0014】
本発明のこの構造上の構成は、リングナットが緩められたもしくはねじり出された場合に、フランジリングの下面に環状のシールリングを備えるアダプタリングが、固くねじ込まれた中心の3/4インチ栓プラグと共に、真空ベル状体を貫通して案内され係合する牽引工具により、やや上方に向かって持上げ可能に形成されており、シールリングとシール台座との間に環状ギャップが形成されると、環状ギャップを通じて、真空ベル状体に接続された真空ポンプにより、ライナ表面とドラム内壁との間の中間空気スペース内で真空引きすることができるようになっている、ということを想定している。
【0015】
本発明による栓付きドラムはさらに、真空引きが行われた後で、ライナ表面がほぼ完全にもしくは全面的にドラム内壁に当て付けられると、アダプタリングは、固くねじ込まれた中心の3/4インチ栓プラグと共に、真空ベル状体を貫通して案内された牽引工具により下方に向かって案内可能に形成されており、かつアダプタのフランジリングの下面の環状のシールリングは、給排気用栓接続管片において雌ねじ山の下側に配置されたシール台座に固くかつ気密に押付け可能に形成されており、次いで上方から固くねじ嵌められたリングナットにより永続的に、気密な位置に固定されている、という点において優れている。
【0016】
ライナとドラム内壁との間の中間空気スペース内の持続的な真空により、ライナフィルムは、液体容器の搬送時に充填物が往復して打ち寄せることにより常時発生するような動的な交番荷重が比較的長く続いても、「吸い付けられた」ようにドラム内壁に接触し続け、液状の充填物柱の上側の空気スペース内にライナフィルムの折畳みや動きが生じることは一切ない。ライナフィルムが不密になることまたは裂断することは、最早生じない。ドラム内壁におけるライナフィルムの真空固定により、ライナは「第2の外被」のように全面的にドラム内壁に着座することになり、これにより有利には、比較的小さな引裂き強さを有する廉価なライナフィルム材料の使用も可能になる。
【0017】
本発明の別の構成では、真空引きが行われた後に、ライナ表面がほぼ全面的にドラム内壁の内側表面に当て付けられると、充填側の2インチ栓プラグがねじ外されかつ排気側の3/4インチ栓プラグがねじ外された状態で、例えば場合により相応に湾曲されたブロー管を介して高温空気がドラム内部もしくはライナの内部に、特にドラム壁および上底部の上部領域に吹き込まれ、これにより、ライナフィルムの熱活性化が生ぜしめられて、ライナの外側表面がドラム壁の内側表面に接着され易くなる、ということが想定されている。この場合、有利には、ライナ内部への高温空気の吹込みは、高められた圧力において改善された接着作用を得るために行われる。
【0018】
充填者および排出者にとって、本発明によるライナを備えた栓付きドラムの取扱いと、ライナ無しの同じ栓付きドラムの取扱いとに相違が生じないようにするために、本発明では‐リングナットが固くねじ込まれている状態において、反対側に位置する充填兼排出用栓接続管片を通じて、自動充填設備において圧力充填管を介して液状の充填物を栓付きドラムに充填するためおよび自動排出設備において負圧吸引管を介して液状の充填物を取り出すために‐中心に配置された3/4インチ栓プラグに、中心貫通開口を備えた位置固定キャップを介して自由にアクセスすることができるようになっており、かつ3/4インチ栓プラグは、ねじ締結工具を用いて手で、またはねじ締結自動装置により自動的にねじ外し可能にかつ再ねじ込み可能に形成されている、ということが想定されており、これにより特に、押し付けているリングナットの、真空の損失を伴う不慮の緩みも防止されるようになっている。
【0019】
ライナの1つの有利な特徴は、ライナ接続管片が内側から、半径方向内向きの溶接フランジ縁部でもってライナ上底部のライナ壁に溶接されて、内側から外側に向かって折り返され、これにより、存在する全てのフィルム切断縁部が充填物に接触しないように覆われることになり、フィルム切断縁部は、溶接されたライナ接続管片の溶接フランジ縁部においても、ライナ壁に形成された貫通開口の内側画定部においても、充填された液状の充填物と接触することは一切ない、という点にある。これにより、溶剤を含有する充填物がいずれかのフィルム切断縁部と接触し、遮断層間に注入された接着剤状の付着仲介層を侵して溶解させ、その結果、特に多層のライナが装備された栓付きドラムの搬送が比較的長時間続いた場合に、遮断特性を損なうフィルム層の不都合な剥離および後続の充填物損傷が生じる恐れは一切ない、ということが保証されている。
【0020】
本発明による、ライナを備えた栓付きドラムを製造する方法は、以下の方法ステップ、すなわち:
‐70×6閉鎖手段を備えた2つの2インチ栓接続管片と、70×6閉鎖手段用の市販の2インチ栓プラグと、70×6閉鎖手段用の市販の3/4インチ栓プラグとを備えた、市販の規格栓付きドラムを用意し、2インチ栓プラグを備えた一方の2インチ栓接続管片を、液状の充填物用の充填兼排出用栓として用い、かつ他方の2インチ栓接続管片を、ライナ内部の充填容積用およびライナ外側表面とドラム内壁との間の中間空気スペース用の給排気用栓として用いるステップ、
‐異なる大きさの2つのライナ接続管片を備えたライナであって、70×6閉鎖手段を備えた2インチ栓接続管片用に設けられかつ溶接された自由端部を備えてやや長く形成された、より大きなライナ接続管片と、これに対してより短くやや小さなライナ接続管片であって、該ライナ接続管片の端部に、下側のシールリングを備えた中空のスリーブ状のアダプタリングが溶接されているライナ接続管片とを備えたライナを用意するステップ、
‐ライナを巻いて、溶接されたアダプタリングが上部に配置された細長いロールを形成するステップ、
‐給排気用栓を介して細長いロールを挿入し、中心貫通開口と、給排気用栓の2インチ栓接続管片における70×6閉鎖手段用の雄ねじ山とを備えるリングナットであって、アダプタリングを包囲するリングナットによりアダプタリングを固定し、アダプタリングが下側のシールリングでもって2インチ栓接続管片内で、ライナの外側表面とドラム内壁との間の中間空気スペースをシールするステップ、
‐給排気用栓内へ圧縮空気を、ライナが完全に膨らまされ、かつ溶接されたより大きな方のライナ接続管片が反対側に位置する充填兼排出用栓から姿を見せるまで、吹き込むステップ、
‐より大きな方のライナ接続管片の溶接された自由端部を切り取り、該ライナ接続管片を外側に向かって栓付きドラムの2インチ栓接続管片に被せるように折り返すステップ、
‐2インチ栓接続管片の雌ねじ山の下側でライナ接続管片を半径方向において溶接し、かつ雌ねじ山の下側の溶接環状面の上側の余分なもしくは突出したライナ接続管片を正確に適合するように切り取るステップ、
‐給排気用栓に真空ベル状体を被せ嵌め、リングナットが緩められアダプタリングが持ち上がった状態で、真空ベル状体に接続された負圧ポンプにより、ライナの外側表面とドラム内壁との間の中間空気スペースから全ての空気を吸い出し、ライナの外側表面がドラム内壁に全面的に当て付けられるまで真空引きするステップ、
‐リングナットを締め付けて、2インチ栓接続管片内でアダプタリングを下側のシールリングと共に押し付けることにより、ライナとドラム内壁との間の真空を永続的に維持するステップ、
‐充填兼排出用栓の2インチ栓接続管片内に2インチ栓プラグをねじ込み、かつ雌ねじ山を備えたスリーブ状のアダプタリング内に3/4インチ栓プラグをねじ込むステップ
に基づき、優れている。
【0021】
真空の損失を伴うリングナットの不慮の緩みまたはねじり出しを確実に防ぐために、2インチ栓接続管片には、中心の3/4栓プラグに対する自由なアクセスを許可する中心貫通開口を備えた、位置固定キャップが被せ嵌められる。
【0022】
上記各方法ステップに基づく当該方法の有利な態様では、給排気用栓接続管片を介して真空引きする間に、反対側に位置する充填兼排出用栓接続管片を介して圧縮空気がライナ内部へ吹き込まれ、これによりライナのライナフィルムが‐特に埋没した栓ハウジングの周りの上底部領域において‐栓付きドラムの内壁に全面的に押し当てられると共に、全ての中間スペース空気が押し出される、ということが想定されている。この場合、吹き込まれる圧縮空気は、高温空気であって、ライナフィルムを熱活性化させるために吹き込まれ、その結果、ライナフィルムの外面は接着作用を発揮して、栓付きドラムの内壁に付着するもしくは再剥離可能に貼り付くことになる。
【0023】
ライナを備えた使用済みの栓付きドラムの再利用に関して、再調整工場にとって極めて有利なのは、ドラム内部からライナを取り出すために、リングナットが緩められてアダプタリングが持ち上がった状態で、アダプタのシールリングと栓接続管片のシール台座との間の環状ギャップを通して、例えば被せ嵌められた圧縮空気ベル状体および接続された圧縮空気導管を介してライナ表面とドラム内壁との間の中間空気スペース内に圧縮空気が吹き込まれ、これにより、ドラム内壁に付着しているもしくは貼り付いているライナ表面を剥離する場合である。この場合、有利には充填兼排出用栓接続管片を通して、例えば被せ嵌められた真空ベル状体を介してライナ内部で、ライナがドラム内壁から完全に剥離されるまで真空引きが行われる。
【0024】
次いでまず、充填兼排出用栓接続管片に溶接されたライナ接続管片が、溶接環状面の直下で切り取られ、栓接続管片から少しだけ引き出されて例えば溶接により密閉され、これにより、ドラム内部の汚染が回避される。その後、ライナ全体がアダプタリングと共に、反対側に位置する給排気用栓を通してドラム内部から引き出される。より大きな方のライナ接続管片を半径方向において溶接するために充填兼排出用栓内の溶接環状面を補修した後で直ぐに、新規のライナを挿入して固定することができる。
【0025】
例えばパレットコンテナ、栓付きドラムおよびキャニスタ等の、液体搬送用に使用された容器は、資格を有する再調整工場で専門家により再利用するために処理され、この処理には特に、新規のライナの洗浄、テスト、品質管理ならびに挿入も含まれる。
【0026】
栓付きドラムにおいて、ライナのフレキシブルで薄壁の充填兼排出用接続管片が、安定したプラスチック栓付きドラム接続管片の安定した充填兼排出用接続管片内に固く溶接されていると、栓付きドラム内でのライナのこの固定部は、顧客およびユーザ、つまり液状の充填物の充填者および排出者にとって最も簡単に取り扱うことができるようになる。それというのも、ねじキャップ、栓接続管片、排出部品または攪拌工具のねじ嵌めまたはねじ外し時に、従来、剛性の容器接続管片に対する折返しおよび緊締によるライナ接続管片の一般的な取付けにおいて頻繁に生じているような、ライナのフレキシブルな充填兼排出用接続管片の、皺形成および不密性を伴うねじれが一切生じる恐れはないからである。ドラム内部もしくはライナ内部に給気するためには、従来慣例のように、反対側に位置する排気用栓において中心に配置された3/4インチ栓プラグだけが(アダプタリングから)ねじ外されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下に、本発明を図面に概略的に示した実施例に基づき、より詳しく説明する。
図1】ライナが挿入された、本発明による栓付きドラムを示す斜視図である。
図2図1に示した栓付きドラム用の、挿入されるライナを示す側面図である。
図3】栓付きドラムに挿入する前の、巻かれたライナを示す側面図である。
図4】2インチ栓接続管片および溶接されたライナ接続管片を備えたプラスチック栓付きドラムの上部領域の周りを示す部分断面図である。
図5】給排気用栓接続管片を、ねじ外された3/4インチ栓プラグと共に示す部分断面図である。
図6】真空ベル状体が被せ嵌められた、給排気用栓接続管片の領域の周りを示す、別の部分断面図である。
【0028】
図1には、好適な実施例として符号10で、熱可塑性プラスチックから成る栓付きドラムが示されており、この栓付きドラムには、薄肉のプラスチックフィルムから成る、挿入されたライナ22が装備されている。説明したように、本発明はキャニスタ、ファセット、栓付き蓋を備えた蓋付きドラムまたはパレットコンテナ等の別のプラスチック容器にも同様に適用され得る。
【0029】
危険な充填物の投入もしくは使用に関して、栓付きドラム10は特別な試験基準を満たしており、相応する公的な許認可を与えられている。栓付きドラム10は、最も多く用いられる220l(リットル)の容積サイズにおいて、特に化学製品や食品に適している。栓付きドラム10の主構成部材は、円筒形のドラム壁12、ディスク形の下底部14およびディスク形の上底部16であり、上底部16内には閉鎖栓により閉鎖可能な栓接続管片18,20が配置されている。このような栓付きドラムは、約935mmの高さおよび約581mmの直径を有しており、好適にはブロー成形法で製造されており、一般にHDPEプラスチック材料から成っている。ドラム重量は、約8.2kgである。最新のドラムは3層から成っており、この場合、薄い外層(20%)のみが青く着色されており、薄い高純度の内層(20%)は新素材から成っている一方で、中間の支持層(60%)は再粒状化物、すなわち使用済みのプラスチック材料から再生されたプラスチック材料から成っている。
【0030】
本発明による栓付きドラム10では、一方の栓接続管片が充填兼排出用栓接続管片18として形成されており、かつ他方の栓接続管片は給排気用栓接続管片20として形成されている。両栓接続管片は、BCS70×6ねじ締結部を備えた2インチ栓接続管片として形成されている。
【0031】
これらのドラム用栓接続管片には、ライナ22の、相応に対応配置された充填兼排出用接続管片24および給排気用接続管片26が取り付けられている。
【0032】
図2には、ライナ22が側面図で示されている。ライナ22の形状は、ドラムの内壁に適合されており、円筒形のライナ壁30、ディスク形のライナ上底部32およびディスク形のライナ下底部34から成っている。ライナ22の上底部32における相応の位置には、栓付きドラム10の栓接続管片18に対応する、直径をやや大きくかつやや長く形成されたライナ接続管片24が配置されており、反対の側には、栓付きドラム10の給排気用栓接続管片20に対応する、やや小さくかつやや短いライナ接続管片26が配置されている。短い方のライナ接続管片26にはアダプタリング28が溶接されており、アダプタリング28は、給排気用栓接続管片20内に挿入される。
【0033】
この場合、フレキシブルなライナ接続管片24,26は、フレキシブルなライナ22のフィルム材料と同じ遮断特性を有する同じフィルム材料から製造されており、これにより、プラスチック材料に浸透する不都合な拡散作用を阻止することができる。
【0034】
ライナフィルムのフィルム構造が多層で非対称的な層配置の場合には、ライナ壁にライナ接続管片の溶接フランジ縁部を環状に溶接する際に、それぞれ同じフィルム材料もしくは同じ外側のフィルム層が互いに溶接されていることが重要である。
【0035】
ライナ22は220lの充填容量に対し、約930mmの高さおよび約580mmの直径を有している。小さい方のライナ接続管片26の直径は約25mmであり、より大きくかつより長く形成されたライナ接続管片24の直径は約58mmである。ライナはその薄壁に基づき、それ自体は形状安定的ではなく極めてフレキシブルであり、可撓性および適合性を有している。多層のライナ複合フィルムの壁厚さは、約100μm~300μm、好適には約150μmである。約100~150g/mの単位面積当たり重量では、220lのライナバッグ1つにつき、約0.15~0.3kgの材料重量が生じる。この場合、極薄い複合層は、間に配置された付着剤から成る層を備えた、例えばHDPE/LDPE/EVOH/PET/PA/PPまたはSiOx等の、複数の異なる材料から成っていてよく、かつ/またはグラスファイバ補強部または織布補強部を備えていてよい。用途に応じて、複合フィルムには例えば炭化水素拡散、酸素拡散、芳香族物質拡散または水蒸気拡散に対する遮断層が装備されており、場合によっては無菌性の抗菌コーティングまたは蒸着された銀含有またはアルミニウム含有金属フィルムが設けられている。
【0036】
構造的には、ライナ接続管片24,26は、半径方向内向きの溶接フランジ縁部でもって内側からライナ上底部32の内壁に溶接されており、その後、内側から外側に向かって折り返され、これにより、存在する全てのフィルム切断縁部が充填物に接触しないように覆われることになる。フィルム切断縁部は、溶接されたライナ接続管片24,26の溶接フランジ縁部においても、ライナ壁に形成された貫通開口の内側画定部においても、充填された液状の充填物と接触することは一切ない。これにより、栓付きドラムの搬送時間および保管時間が長い場合でも完全な遮断特性が完璧に保たれ、拡散に起因する、敏感な充填物の損傷が回避される。
【0037】
特別なライナを実現するためにはいずれにしろ、ライナ上底部の内壁に対する両者の溶接フランジ縁部の環状の溶接が、製造技術的に、閉じられたライナ本体用に多層のライナフィルムの切断部分を完全に最終的に溶接する前に行われていることが重要であり、さもなければ最早、フィルム接続管片を内側からライナ上底部の内壁に溶接することはできない。
【0038】
フレキシブルで薄肉の多層フィルムから成るライナ22をドラム内部に入れることができるようにするために、ライナ22は図3に認められるように巻かれ、細長い棒状のロール36を形成する。この場合、アダプタリング28が溶接された、小さい方のライナ接続管片26の上端部が突出しているのに対して、大きな方のライナ接続管片24は巻き込まれており、ここでは見えなくなっている。ライナの素材に関する重要な特徴として、より大きな直径を有するライナ接続管片24は、栓付きドラム10への挿入前は、少なくともその直径の2倍の長さを有しており、その自由端部は溶接されているもしくは気密に閉じられている。
【0039】
ライナロール36は、栓付きドラム10の給排気用栓接続管片20を通して案内され、アダプタリング28は、以下でより詳しく説明するように、栓接続管片20内に取り付けられる。アダプタリング28が給排気用栓接続管片20内に取りつけられた後で、中空のアダプタリング28を介して小さい方のライナ接続管片26から圧縮空気が低速でライナ内へ吹き込まれ、これによりライナは広がり、反対側に位置する、これから溶接されるべき大きな方のライナ接続管片24が下側から空気圧によりひとりでに、栓付きドラム10の相応する充填兼排出用栓接続管片18から姿を見せるまで、完全に膨張させられることになる。
【0040】
図4には、BCS70×6規格閉鎖手段用の充填兼排出用栓接続管片18を備えた、栓付きドラム10の上部領域が示されている。2インチ栓接続管片18は‐および同様に形成された栓接続管片20も‐並目ねじ山として設計された雌ねじ山を有している。雌ねじ山の直下には、2インチ栓プラグ44に装着されているシールリング用の、直径が狭められたシール台座38が位置している。充填兼排出用栓接続管片18は雌ねじ山の下側に、溶接されるべき2インチライナ接続管片24用の溶接台面としての環状の内面42を備えた、直径を減じられた接続管片ネック40を有している。接続管片ネック40における環状の内面42は、溶接台面として平滑化されて形成されている。内面42の補修のために行われる平滑化は、例えばホーニング工具、リーマまたはピーリングナイフを用いて、有利にはドラムを頭上に位置決めして行われ、この場合、落下する剥離したプラスチック粒子は下方に向かって吸い取られ、場合によっては同時に他方の栓接続管片20を介して圧縮空気がドラム本体内に吹き込まれるので、いずれにしろ、剥離したプラスチック粒子がドラム本体内に侵入する恐れは排除されている。
【0041】
ライナ22を栓付きドラム10内に挿入して膨らまされると、これから溶接されるべきライナ接続管片24が栓接続管片18から姿を見せ、ライナ接続管片24は引っ張られて上部を切開され、かつ栓接続管片18の上に被せられる。次いでライナ接続管片24は膨張溶接法により、環状の内面42(溶接台面)に対して半径方向に固く溶接されると共に、正確に適合するように切断され、その結果、市販の2インチ栓プラグ44がねじ込まれると共に、そのシールリングを用いて、雌ねじ山の下端部に配置されたシール台座38もしくは溶接台面の直上のシール対応受けに対してシールすることができるようになる。溶接台面の補修以外に、規格栓付きドラム10において別の対策または適合は一切行われない。本発明によるライナを備えたユーザフレンドリーな栓付きドラムの有利な取扱いは、主として給排気用栓接続管片20用のインサートの特別な構造的な構成および機能形式に基づき実現される。
【0042】
図5に示すように、2インチ給排気用栓接続管片20のための閉鎖インサートは、少なくとも3つの部分から成っている。これらは、ほぼ中間に配置され半径方向に張り出した外側のフランジリング46を備えた、内部が中空のアダプタリング28、フランジリング46の上側のスリーブ状のアダプタリング28を包囲する、雄ねじ山と中心貫通開口50とを備えたリングナット48および給排気用栓接続管片20の上部の外側に上から被さる、中心貫通開口54を備えた位置固定キャップ52である。
【0043】
中空のスリーブ状のアダプタリング28は、その貫通開口の上部領域に、雌ねじ山56を備えている。並目ねじ山として設計された雌ねじ山56は、下端部に、直径が減じられたシール台座58を備えている。
【0044】
アダプタリング28のフランジリング46の下面外側には、好適には矩形の平形シールとして形成された環状のシールリング60が配置されており、シールリング60は栓接続管片20の内側において‐反対の側に位置する栓接続管片18の場合と同様に‐直径が縮小された接続管片ネックの上側の雌ねじ山の下端部に形成されたシール台座に当接してシールしている。アダプタリング28のフランジリング46の上面は、アダプタリング28の上部領域を包囲するリングナット48により上から荷重を加えられ、リングナット48の、並目ねじ山として設計された雄ねじ山62は、栓接続管片20の雌ねじ山に係合し、かつアダプタフランジリング46のシールリング60を、栓接続管片20の雌ねじ山の下端部に形成されたシール台座38に押し付けている。フランジリング46の下側では、ホース状のライナ接続管片26が半径方向外側から、環状スリーブ状のアダプタリング28に溶接されている。
【0045】
アダプタリング28の、並目ねじ山として設計された雌ねじ山56内には、上からより小型の3/4インチ栓プラグ64がねじ込み可能であり、3/4インチ栓プラグ64はそのシールリング66でもって、雌ねじ山56の、直径が減じられたシール台座58をシールする。
【0046】
ライナ22がドラム本体内に挿入され、両方のライナ栓がドラムの栓接続管片内に取り付けられると、リングナット48が固く締め付けられるため、シールリング60は栓接続管片20に設けられたシール台座に気密に押し付けられることになり、ライナとドラム内壁との間の中間空気スペースは、完全に気密に閉じられた状態になる。その後で、中心貫通開口54を備えた位置固定キャップ52が給排気用栓接続管片20に上から被せ嵌められ、その際に給排気用栓接続管片20は、その上部領域の外側を包囲される。位置固定キャップ52は、好適には薄壁のプラスチックキャップとして、解離可能または解離不能なスナップ係止閉鎖手段を備えて形成されており、アダプタリング28の固定用のリングナット48が不本意にまたは不適切に外れないように保護し、かつ栓付きドラムの充填および排出時に開かれていなければならない3/4インチ給気栓38×6に対する唯一のアクセスを許可するために用いられる。
【0047】
1つの別の実施形態では、位置固定キャップ52は、中心貫通開口54を備えた、解離不能に折り曲げられた薄い金属薄板蓋として形成されており、この金属薄板蓋は追加的に、解離可能なスナップ係止閉鎖手段を備えた薄壁の塞がれたプラスチック保護キャップもしくはプラスチック封止キャップにより覆われている。この場合、追加的な封止キャップは、汚れおよび雨水に対する防護手段として設けられておりかつ3/4インチ栓プラグ64をねじ外すために容易に取り外すことができるようになっている一方で、解離不能に被せ嵌められた、貫通開口を備えた金属薄板蓋は、如何なる場合にもリングナット48の不慮のまたは不正なねじ外しを防ぎ、リサイクル工場において適当な工具を用いてのみ、取り外すことができるようになっている。つまり、このような構成の給排気用栓20では、栓接続管片の雌ねじ山とリングナットの雄ねじ山との間の、より大型の70×2閉鎖手段内に、アダプタの雌ねじ山と3/4インチ栓プラグの雄ねじ山との間の、より小型の38×6閉鎖手段が挿入されている。
【0048】
本発明による栓付きドラム10の機能形式を明確に示すために、図6には、ライナ表面とドラム内壁との間の中間空気スペースを真空引きするために、シールリング72を備えた真空ベル状体70が給排気用栓20に被せ嵌められている様子が示されている。真空ベル状体70の中心には棒状の牽引工具74が配置されており、牽引工具74は、二重矢印により示唆されているように、上下に動かすことができるようになっている。牽引工具74は下方において、アダプタリング28内に固くねじ込まれた3/4インチ栓プラグ64に突入して係止されている。リングナット48が緩められるかまたはねじり出されると、牽引工具74を介して栓プラグ64はアダプタリング28と共に容易に持ち上げられ、その結果、アダプタリング28のフランジリング46に設けられたシール60が、栓接続管片20のシール台座38から少しだけ持ち上がって環状ギャップ76を解放し、不都合な中間空気は、ライナ22とドラム内壁との間の中間空気スペースから環状ギャップ76を通じて完全に排出される。この過程が終了してから、真空を継続して維持するためにリングナット48がねじ込まれて固く締め付けられる。これによりアダプタリング28は、下側のシールリング60と共に栓接続管片20のシール台座38に不動に押し付けられることになる。その後、2インチ栓接続管片20にさらに、充填者および排出者に対して3/4インチ栓プラグ64への自由なアクセスを許可する、中心貫通開口54を備えた位置固定キャップ52が被せ嵌められる。位置固定キャップ52は、真空の損失を伴うリングナット48の不慮の緩みまたはねじり出しを防止する。位置固定キャップ52もしくは2インチ栓接続管片20上にはさらに、慣用の薄いプラスチックスナップ蓋が、汚れおよび雨水から保護するためにスナップ嵌めされていてよい。
【0049】
本発明では、ライナ22は形状適合されて全面的に第2の外被のように、栓付きドラム10の内側表面に載着されている。このような第2の外被のライナの主要な利点は、フィルムバッグが、充填時のばたつきまたは搬送移動時の液状の充填物の往復打寄せに対する従来の高度な引裂強さをそれほど必要としない、という点にある。それというのも、この場合はライナ22のフィルム材料が栓付きドラム10の内面に永続的に固定されて当て付けられているか、もしくは再度取外し可能に接着されているため、ライナ22のフィルム材料は全く動かされないからである。これにより、従来よりも廉価な、高い遮断特性を備えた亀裂の生じやすいフィルム材料も使用され得る。
【0050】
結論:
本発明は、栓付きドラムの複雑な新規構造を成すものではなく、ライナを備えた規格栓付きドラムにおいて特異な形式で、一方ではライナ挿入直後のライナとドラム内壁との間の不都合な中間空気の真空引き、および他方では充填時のドラム内部からの排気または充填物取出し時のドラム内部への給気を、同一の栓接続管片により行うことができる、ということを可能にするものである。この構成は、2つの2インチ栓を備えた、市場に普及している周知の栓付きドラムタイプに関して構想されたものであるため、新規に製造された栓付きドラムだけでなく、このタイプの、市販されている全ての中古の栓付きドラムにも新規のライナを備え付けて、再利用可能にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 プラスチック栓付きドラム
12 円筒形のドラム壁(10)
14 ディスク形の下底部
16 ディスク形の上底部
18 充填兼排出用栓接続管片(10)
20 給排気用栓接続管片(10)
22 ライナ(フィルムバッグ)
24 充填兼排出用ライナ接続管片(22)
26 給排気用ライナ接続管片(22)
28 アダプタリング(26)
30 円筒形のライナ壁(22)
32 ディスク形のライナ上底部(22)
34 ディスク形のライナ下底部(22)
36 ライナロール(22)
38 シール台座(18)
40 接続管片ネック(18)
42 溶接台・内面(40)
44 2インチ栓プラグ(18)
46 フランジリング(28)
48 リングナット
50 貫通開口(48)
52 位置固定キャップ
54 貫通開口(52)
56 雌ねじ山(28)
58 シール台座(56)
60 シールリング(46)
62 雄ねじ山(48)
64 3/4インチ栓プラグ
66 シールリング(64)
68 貫通開口(28)
70 真空ベル状体
72 シールリング(70)
74 牽引工具(70)
76 環状ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6