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特許7034148波長範囲が狭い蛍光発光のヒドロポルフィリンビーズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】波長範囲が狭い蛍光発光のヒドロポルフィリンビーズ
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20220304BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220304BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20220304BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20220304BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C09K11/06 ZNM
G01N21/64 F
G01N21/03 Z
C12Q1/00 Z
C12Q1/6806 Z
G01N33/543 575
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019517192
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017037073
(87)【国際公開番号】W WO2017214637
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】62/348,532
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518438380
【氏名又は名称】ニルバナ サイエンシーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】NIRVANA SCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ブルース ピットナー
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー ビー エバンス-ストームズ
(72)【発明者】
【氏名】ドュアン エー オルセン
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0082127(US,A1)
【文献】特表2004-501923(JP,A)
【文献】特表2008-534670(JP,A)
【文献】特表平09-511741(JP,A)
【文献】国際公開第2015/018700(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/064841(WO,A2)
【文献】LEE, J-H et al.,Dye-labeled polystyrene latex microspheres prepared via a combined swelling-diffusion technique,Journal of colloid and interface science,(2011),Vol.363, No.1,pp.137-144
【文献】MADISON, R. et al.,Latex nanosphere delivery system(LNDS): novel nanometer-sized carriers of fluorescent dyes and active agents selectively target neuronal subpopulations via uptake and retrograde transport,Brain research,(1990),Vol.522, No.1,pp.90-98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
G01N 21/62-21/74
H01L 33/00-33/64
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団であって、
(i) 各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのヒドロポルフィリンを含み、該ヒドロポルフィリンが、クロリン類及びバクテリオクロリン類からなる群から選択され、かつ
(ii) 該集団が、異なるヒドロポルフィリンを含む、少なくとも2つの異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含み、
少なくとも1つの該ヒドロポルフィリンが、下記化学式I及びIIから成る群から選択される構造を有する、集団。
【化1】
(式中、Mは金属であるか又は存在しない;
Xは、Se、NH、CH、O及びSから成る群から選択され;
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アリールオキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジ置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、結合基、及び表面結合基から成る群から選択され;
、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S、Se、Te及びCHから成る群から選択されるヘテロ原子であり;
、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14、ならびにS及びSのいずれか、又はS及びSのいずれかは、それぞれ独立して、水素原子、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、及びカルバモイルであり、又はSとS13は共に=Oを形成する。)
【請求項2】
各異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、1又はそれ以上の異なるヒドロポルフィリンと結合し、最大ピーク半値幅が25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるヒドロポルフィリンのいずれかのものから少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する、請求項に記載の集団。
【請求項3】
下記段階(a)~(f)から成る、請求項1又は2に記載の集団を作る方法であって、
(a) 溶剤中の1又はそれ以上の前記ヒドロポルフィリンの第1溶液を調製する段階;
(b) 該第1溶液を、ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、水、及びポリマー界面活性剤を含む第1混合液に添加して、第2混合液を調整する段階;
(c) 第2混合液を一定期間混合する段階;
(d) 該第2混合液から溶媒を除去して第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階;
(e) 該段階(a)~(d)を繰り返して、1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子とは異なる1つのヒドロポルフィリン又はヒドロポルフィリン混合物を含む、段階;及び
(f) 該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかと混合する段階;
その結果、複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団であって、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのヒドロポルフィリンを含む、集団が提供され、該集団が光によって励起されると、該複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、別個に及び/又は同時に検出されることができる、方法。
【請求項4】
1~5個の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む請求項1又は2に記載の集団であって、該1~5個の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、ヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるヒドロポルフィリンを含み、更にヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62及びB66が以下の構造を有する、集団。
【化2】
【請求項5】
マルチプレックスアッセイに使用するための別個に検出可能な請求項1又は2に記載の集団を調製するための、下記段階(a)~(e)から成る方法であって、
(a) 溶剤中の1又はそれ以上の前記ヒドロポルフィリンの第1溶液を調製する段階;
(b) 該第1溶液を、ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、水、及びポリマー界面活性剤を含む第1混合液に添加して、第2混合液を調整する段階;
(c) 第2混合液をある期間混合する段階;
(d) 該第2混合液から溶媒を除去して第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階;及び
(e) 該段階(a)~(d)を繰り返して、1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子とは異なる1つのヒドロポルフィリン又はヒドロポルフィリン混合物を含む、段階;
該セット中の該蛍光性高分子マイクロ粒子及び/又は前記ナノ粒子の吸着波長帯域が重複しており、該セット中の該蛍光性高分子マイクロ粒子及び/又は前記ナノ粒子のそれぞれが、その最大ピーク半値幅が25nm未満であり、及び/又はこのピークが他の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかから少なくとも5nm離れている、異なる発光波長帯を有する、方法。
【請求項6】
更に、分子、タンパク質、抗体、抗体断片、核酸、及び細胞からなる群の1つに前記マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の1又はそれ以上を結合させる段階を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーマトリックス及びそれと結合する少なくとも1つのヒドロポルフィリンを含む請求項1又は2に記載の集団であって、
(i) 該マイクロ粒子又はナノ粒子はビーズであって、
(ii) 該ビーズはポリスチレンビーズであって、及び/又は
(iii) 該ビーズが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる蛍光分子を含むように、該ビーズが、さらに、複数の異なるヒドロポルフィリン含有ダイアドを含む、及び/又は
(iv) 該ヒドロポルフィリン含有ダイアドが、クロリンを含む第1の蛍光分子及びバクテリオクロリンを含む第2の蛍光分子を含む、及び/又は
(iv) 該第2の蛍光分子が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)供与体を含み、該FRET供与体が該第1の蛍光分子の最大発光と重複する発光スペクトルを持つことを特徴とする、
集団
【請求項8】
請求項1又は2に記載の集団を、細胞を差別的に標識するために使用する方法であって、その中に存在する特定の蛍光ナノ粒子に由来する区別可能な発光スペクトルに基づいて個々の細胞を互いに区別できるようにヒドロポルフィリンを組み込んだ異なる蛍光ナノ粒子を細胞に導入する段階を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2016年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/348,532号の優先権を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
この発明は、1又はそれ以上のポルフィリン大環状化合物、任意に1又はそれ以上のクロリン、バクテリオクロリン、及び/又はイソバクテリオクロリンを含む組成物、並びにこれらを生物学的分子及び/又は細胞を標識及び/又は他の方法で検出するために使用する方法に関する。本発明は、特に、ここに開示のポルフィリン系大環状化合物で標識されたナノ粒子及びマイクロ粒子のような本発明のポルフィリン系大環状分子、分子及びビヒクルを含む組成物、ならびにこれらを標的を標識及び/又は検出するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
蛍光に基づく多色フローサイトメトリー(PFC)は、現代の免疫学及び生命科学研究における重要な分析技術である。このPFCは、研究や診断目的の真核生物細胞の分析及び免疫表現型分類に比類なく適しており、免疫細胞サブセット及びその機能について増大する複雑な分析を可能にしている。PFCは、当初、1980年代のHIV疾患研究の必要性により駆り立てられて、初期のT細胞サブセットの3色測定から(アメリカ疾病管理予防センター(CDC)、1982)、複雑なHIV陽性患者のマルチマーカー研究へ進んできた。そこでは、病気の進行、細胞系統及びワクチン応答因子はすべてPFCによって検査することができる(Chattopadhyay & Roederer, 2010)。PFCの臨床応用には、免疫学的疾患に加えて、白血病及びリンパ腫免疫表現型検査(現在8~10色を用いる。例えば、Craig & Foon, 2008; Peters & Ansari, 2011を参照されたい。)及びHLAタイピングによる移植交差検定が含まれる。
光学及びレーザーの改善と結びついた、より優れた多重化能力に対する要望により、新しくて高パラメータフローサイトメーターが導入された。これには、Becton Dickinsonの50色FACSymphonyTMブランドの高速セル分析装置及びBio-Radの28色ZE5TMブランドの細胞分析装置などが含まれる。しかし、これら及び従来の機器におけるPFCの多重化能力は、現在、既存の色素の広いスペクトル帯域幅によって妨げられており、その結果、発光プロファイルがブロードになり重なり合いをもたらしており、これらの新しいデバイスの能力を十分に活用する可能性を著しく制限している。ブロードで重なり合った発光は、所与のレーザーによって分析することができるスペクトルの解像可能な色の数を減少させる。PFCに使用される現在の染料は、準最適なバンドパスフィルターの使用、分析前実験、及び補償(オーバーラップ補正)を必要とする。これらは、蛍光感度を低下させ、「広がり(spread)」などの人為産物を生じる。例えば、プロトタイプの50色の計測器を用いても、最先端のPFC研究者は、30パラメータのパネルしか実施できなかった(Chattopadhyay et al., 2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ワクチンや薬剤の開発、感染症研究及び腫瘍学などの分野(但し、これらに限定されない。)で使用するための高パラメータPFCパネル用の新しい色素が直ちに必要とされている。特に、現在少なくとも20又はそれ以上の新たな蛍光色素分子が必要とされているだけでなく、同時に、新たに非常に狭い発光の、スペクトル的に明瞭な蛍光色素分子の必要性が増加している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでは、本発明のいくつかの実施態様を列挙し、多くの場合、これらの実施態様の変形及び置換を列挙する。これらは、多数の様々な実施態様の単なる例示に過ぎない。所与の実施態様における1又はそれ以上の代表的な要素も同様に例示的なものである。そのような実施態様は、典型的には、示された要素の有無にかかわらず存在することができる。同様に、これらの要素は、ここに挙げられているか否かに関わらず、本発明の他の実施態様にも適用することができる。過度の繰り返しを避けるために、ここでは、そのような要素の可能な組み合わせを全て列挙したり、提案したりはしていない。
【0006】
いくつかの実施態様において、本発明は、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する。いくつかの実施態様において、本発明の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及びそれと結合する少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含む。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、ポルフィリン類(17,18-ジデヒドロホルビン類を含む。)、クロリン類(ホルビン類を含む。)、バクテリオクロリン類(バクテリオホルビン類を含む。)、及びイソバクテリオクロリン類(融合「E」環を含むイソバクテリオクロリン類を含む。)からなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物の内の1又はそれ以上は、下記化学式I及びIIから成る群から選択される構造を有する。
【化1】
(式中、Mは金属であるか又は存在しない;Xは、Se、NH、CH、O及びSから成る群から選択され;R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アリールオキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジ置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、結合基、及び表面結合基から成る群から選択され;K、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S、Se、Te及びCHから成る群から選択されるヘテロ原子であり;S、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14、ならびにS及びSのいずれか、又はS及びSのいずれかは、それぞれ独立して、水素原子、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、及びカルバモイルであり、又はSとS13は共に=Oを形成する。)
【0008】
いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRはそれぞれアルキルであり;Rは任意に置換されてもよいアリールである。いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRはそれぞれメチルであり;Rはp-トリルである。いくつかの実施態様において、Mは存在し、MはPd、Pt、Mg、Zn、Al、Ga、In、Sn、Cu、Ni及びAuから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、MはZn又はMgである。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S及びCHから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKはすべてNである。いくつかの実施態様において、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14は全てアルキルである。いくつかの実施態様において、この蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の集団中に存在し、さらに、(i) 該集団は、複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含み;(ii) 各異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、1又はそれ以上の異なるポルフィリン大環状分子と結合し;及び(iii) 各異なるポルフィリン大環状化合物は、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。いくつかの実施態様において、このポリマーマトリックスはポリスチレンであり、任意に前記ポリマーマトリックスはポリスチレンビーズを含む。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、前記蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の外表面と非共有結合的に結合し、前記蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子又はその両方によってカプセル化される。
【0009】
また、本発明は、本発明の複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団を提供する。いくつかの実施態様において、(i) 各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含み、かつ(ii) 該集団は、異なるポルフィリン大環状分子を含む、少なくとも2つの異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む。いくつかの実施態様において、各異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、1又はそれ以上の異なるポルフィリン大環状分子と結合し、各異なるポルフィリン大環状化合物が、約25nm未満であり、各異なるポルフィリン大環状化合物の、最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかのものから少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。いくつかの実施態様において、この集団は、少なくとも3,4,5,6,7又は8の異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む。いくつかの実施態様において、このポリマーマトリックスはポリスチレンを含む。いくつかの実施態様において、この集団中の異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれは、単一波長の光及び/又は約320nm~約450nmの光による励起が可能である。いくつかの実施態様において、この異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子の少なくとも一つのサブセットは、ポルフィリン類(17,18-ジデヒドロホルビン類を含む。)、クロリン類(ホルビン類を含む。)、バクテリオクロリン類(バクテリオホルビン類を含む。)、及びイソバクテリオクロリン類(融合「E」環を含むイソバクテリオクロリン類を含む。)からなる群から選択される1つのポルフィリン大環状化合物を含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物の内の1又はそれ以上は、下記化学式I及びIIから成る群から選択される構造を有する。
【化1】
(式中、Mは金属であるか又は存在しない;Xは、Se、NH、CH、O及びSから成る群から選択され;R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アリールオキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジ置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、結合基、及び表面結合基から成る群から選択され;K、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S、Se、Te及びCHから成る群から選択されるヘテロ原子であり;S、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14、ならびにS及びSのいずれか、又はS及びSのいずれかは、それぞれ独立して、水素原子、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、及びカルバモイルであり、又はSとS13は共に=Oを形成する。)
【0011】
いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRはそれぞれアルキルであり;Rは任意に置換されてもよいアリールである。いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRはそれぞれメチルであり;Rはp-トリルである。いくつかの実施態様において、Mは存在し、MはPd、Pt、Mg、Zn、Al、Ga、In、Sn、Cu、Ni及びAuから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、MはZn又はMgである。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S及びCHから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKはすべてNである。いくつかの実施態様において、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14は全てアルキルである。
【0012】
いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状分子の1又はそれ以上は、ヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、更にヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62及びB66は以下の構造を有する。
【化2】
【0013】
また本発明は、いくつかの実施態様において、複数の異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団を提供する。いくつかの実施態様において、この異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれは、(a) 溶剤(任意に、テトラヒドロフラン(THF))中の少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物の溶液を、ポリマーマトリックスを含むマイクロ粒子の水溶液と混合する段階及び次にこの溶剤を除去する段階により調製され、かつ(b)その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。
【0014】
また本発明は、いくつかの実施態様において、下記段階)から成る方法によって得られた複数の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団であって、(a) 溶剤(任意に、テトラヒドロフラン(THF))中の1又はそれ以上のポルフィリン大環状化合物の第1溶液を調製する段階であって、任意に該第1溶液が約0.25μg/ml~約20μg/mlのヒドロポルフィリンを含む段階;(b) 該第1溶液を、ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、水、及びポリマー界面活性剤を含む第1混合液に添加して、第2混合液を調整する段階であって、任意に、該第1溶液を、約33%の溶媒を含む第2混合液を提供するために、添加し、及び/又は該ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子がポリスチレンを含み、及び/又は該ポリマー界面活性剤がポリアルキレングリコールブロックコポリマーである、段階;(c) 第2混合液をある期間混合する段階であって、任意に該期間が約15分間である段階;(d) 該第2混合液から溶媒を除去して第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、任意に該除去する段階が、第2混合液を遠心分離する段階及び/又は該マイクロ粒子をすすぐ段階を含む、段階;(e) 上記段階を繰り返して、1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子とは異なる1つのポルフィリン大環状分子又はポルフィリン大環状分子混合物を含む、段階;及び(f) 該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかと混合する段階;その結果、複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団であって、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含む、集団が提供され、該集団が光によって励起されると(任意に、該光は約320nm~約450nmの光である。)、該複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、別個に及び/又は同時に検出されることができる、集団を提供する。
【0015】
本発明の集団のいくつかの実施態様において、この記複数の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれは、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、及び/又はこのピークが他の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかから少なくとも5nm離れている、異なる発光波長帯を有する。いくつかの実施態様において、この複数の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はこのナノ粒子のそれぞれの発光波長帯域は、約590nm~約750nmの間である。いくつかの実施態様において、この集団は、405nmの光による励起が可能である。いくつかの実施態様において、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及び1つのポルフィリン大環状化合物を含む。いくつかの実施態様において、本発明の集団は、1~5個の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含み、この1~5個の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれは、ヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0016】
また本発明は、いくつかの実施態様において、任意にマルチプレックスアッセイに使用するための、別個に検出可能な蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子のセットを調製するための方法を提供する。いくつかの実施態様において、この方法は、(a) 溶剤(任意に、テトラヒドロフラン(THF))中の1又はそれ以上のポルフィリン大環状化合物の第1溶液を調製する段階であって、任意に該第1溶液が約0.25μg/ml~約20μg/mlのヒドロポルフィリンを含む段階;(b) 該第1溶液を、ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、水、及びポリマー界面活性剤を含む第1混合液に添加して、第2混合液を調整する段階であって、任意に、該第1溶液を、約33%の溶媒を含む第2混合液を提供するために、添加し、及び/又は該ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子がポリスチレンを含み、及び/又は該ポリマー界面活性剤がポリアルキレングリコールブロックコポリマーである、段階;(c) 第2混合液をある期間混合する段階であって、任意に該期間が約15分間である段階;(d) 該第2混合液から溶媒を除去して第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、任意に該除去する段階が、第2混合液を遠心分離する段階及び/又は水を用いて該マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を1回又はそれ以上すすぐ段階を含む、段階;及び(e) 上記段階を繰り返して、1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子とは異なる1つのポルフィリン大環状分子又はポルフィリン大環状分子混合物を含む、段階から成り、該セット中の該蛍光性高分子マイクロ粒子及び/又は前記ナノ粒子の吸着波長帯域が重複しており、該セット中の該蛍光性高分子マイクロ粒子及び/又は前記ナノ粒子のそれぞれが、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、及び/又はこのピークが他の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかから少なくとも5nm離れている、異なる発光波長帯を有する。
【0017】
いくつかの実施態様において、本発明は、更に、分子、タンパク質、抗体、抗体断片、核酸、及び細胞からなる群の1つに前記マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の1又はそれ以上を結合させる段階を含む方法を提供する。
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の方法の1つによって調製された個別に検出可能な蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子のセットを提供する。
本発明は、いくつかの実施態様において、本発明の個別に検出可能な蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子のセットを、フローサイトメーターを較正する方法に使用する方法を提供する。
【0018】
また本発明は、いくつかの実施態様において、粒子(任意に、マイクロ粒子又はナノ粒子である、)に結合したポルフィリン大環状分子を含むダイアドを提供する。いくつかの実施態様において、このマイクロ粒子又はナノ粒子はビーズである、いくつかの実施態様において、このビーズはポリスチレンビーズである。いくつかの実施態様において、このビーズが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる蛍光分子を含むように、このビーズは、さらに、複数の異なるポルフィリン大環状分子含有ダイアドを含む。いくつかの実施態様において、この第1の蛍光分子はクロリンを含み、この第2の蛍光分子はバクテリオクロリンを含み、更に、紫色光による励起の際に、このダイアドは赤色及び近赤外の両方の光を放射する。いくつかの実施態様において、この第2の蛍光分子は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)供与体を含み、更に、該FRET供与体は該第1の蛍光分子の最大発光と重複する発光スペクトルを持つことを特徴とする。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明のポルフィリン大環状分子含有ダイアドを、多レーザーフローサイトメーターの較正、共焦点蛍光顕微鏡の位置合わせ及び/又は較正、又は細胞及び/又は他の生体分子の差別的標識に使用する方法を提供する。いくつかの実施態様において、この他の生体分子は、抗体及び/又はパラトープ含有断片又はその誘導体であるから成る群から選択される。
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の集団を、マルチウォールプレートのウェルを別個に標識するために使用する方法を提供する。いくつかの実施態様において、この方法は、コーティングされた複数のウェルが、そこに存在する特定の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子に由来する励起スペクトルに基づいて、互いに区別することが可能であるように、マルチウォールプレートの複数のウェルのそれぞれを、異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子でコーティングする段階を含む方法を提供する。
また本発明は、いくつかの実施態様において、本発明の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子の集団を、細胞を別個に標識するために使用する方法を提供する。いくつかの実施態様において、この方法は、個々の細胞が特定の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子に由来する励起スペクトルに基づいて互いに区別できるように、複数の細胞に異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を導入する段階を含む。
【0020】
また本発明は、本発明の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は本発明のポルフィリン大環状分子ダイアドに共有結合した、抗体及びその断片及び/又はその誘導体を提供する。いくつかの実施態様において、このポルフィリン大環状化合物は、ポルフィリン大環状分子SE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及び/又はそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、及び/又はこのポルフィリン大環状分子ダイアドは、ポルフィリン大環状分子SE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及び/又はそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む。
【0021】
これら及びその他の特徴及び実施態様は、生物分子及び/又は細胞を検出及び/又は標識するために有用な組成物及び方法を当技術分野に提供する本開示を読むことにより、当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】クロロフィルa及びバクテリオクロロフィルaの構造、ならびにそれぞれクロロフィルa及びバクテリオクロロフィルaに基づく合成クロリン及びバクテリオクロリンのコア構造を示す。
図2】クロリン類(2A)及びバクテリオクロリン類(2B)の典型的な吸収スペクトル及び蛍光発光スペクトルのプロットである。
図3】5つの合成クロリンの構造(図3A)及び蛍光発光スペクトル(図3B)を示す。図3Bにおいて、スペクトルは発光波長の順であり、クロリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355(左から右へ)に対応する。
図4】直径5.4μmのポリスチレンビーズ(固体)中のクロリンSE420(クロリンC3とも呼ばれる。)(実線)及びクロリンを加えずにTHFで処理したビーズ(点線)の半対数濃度滴定の一連のフローサイトメトリーヒストグラムである。LP:ロングパスフィルター、BP:バンドパスフィルター。
図5】個々に5つの異なるクロリンC1~C5で処理されたビーズの混合物の補償データの一連の選択されたペアワイズドットプロットである。補償は表2の値を用いて行った。
図6】3つのバクテリオクロリン(B56、B66及びB62)の構造(図6A)及びその700~800nmの間の蛍光発光スペクトル(図6B)である。スペクトル((図6B))は波長の順である。
図7】5つの異なる濃度の色素溶液で滴定した、バクテリオクロリンでドープした直径5.43μmのポリスチレンビーズの一連のフローサイトメトリーヒストグラムである。図7AはバクテリオクロリンB62、図7BはバクテリオクロリンB66、図7CはバクテリオクロリンB56に対応する。各パネルは、左から右にそれぞれ0、0.25、0.5、1.0及び5.0μg/mLの濃度に対応する5つのピークを含む。
図8】3つのバクテリオクロリンでドープされた直径5.43μmのビーズの混合物のフローサイトメトリー分析のドットプロットを提供する(上3パネルは非補償、下3パネルは補償。)。
図9】405nmで励起された懸濁液中のポリスチレン(PS)及び磁性PSビーズの蛍光の一連のプロットである。図9Aは、染色前の磁性PSビーズの蛍光のプロット、図9Bは、クロリンSE197(左ピーク)及びSE355(右ピーク)で染色した後のPSビーズ及び磁性PSビーズの混合物の蛍光のプロット、図9Cは、磁気ビーズを磁気ラックで保持した後のビーズ混合物上清の蛍光のプロット、図9Dは、洗浄及び渦巻状撹拌後の再懸濁磁気ビーズの蛍光のプロットである。
図10】405nmの励起による、1.0、2.0、4.0、8.0、16.0及び32.0μg/mL(それぞれ最も低いピークから最も高いピークへ)のSE420色素でドープされた0.46μmのPS-COOHナノビーズの蛍光発光を示す一連のプロットである。
図11】405nmの励起による、5.0、45.0及び90.0μg/mL(それぞれ最も低いピークから最も高いピークへ)のSE420色素でドープされた0.11μmPSナノビーズの蛍光発光を示す一連のプロットである。
図12】405nmの励起による、20、40及び80μg/mL(それぞれ最も低いピークから最も高いピークへ)のクロリンSE420色素でドープされた0.042μmポリスチレン粒子の懸濁液の蛍光発光を示す一連のプロットである。試料は250倍に希釈され、0.43%w/v最終生成物(1.07×1014粒子/mL)である。
図13】非結合(図13A及び13Bのそれぞれ最も左側のピーク)及び0.2μM、0.6μM及び2.0μLのFITC標識抗CD3抗体に結合したヤギ抗マウスIgG捕捉ビーズのフローサイトメトリーヒストグラム(図13A)、並びに1:1及び1:10希釈の1x抗CD3抗体で受動的に被覆されたクロリンSE420でドープされたナノ粒子のフローサイトメトリーヒストグラム(図13B)である。
図14】非結合(点線)並びに0.125ng、1.25ng、及び125ngのFITC標識抗CD3に結合したヤギ抗マウスIgG捕捉ビーズのフローサイトメトリーヒストグラム(図14A、左から右へ)、並びに1:10、1:3.16及び1:1希釈のクロリンSE420でドープされたプロテインG/抗CD3被覆ナノ粒子のフローサイトメトリーヒストグラムである(図14B;それぞれ左から右へ)。
図15】405nmの励起による、0.25、0.5及び1.0μg/mL(それぞれ最も低いピークから最も高いピークへ)のクロリンSE197(左の3つのピーク)及びSE420(右の3つのピーク)で共ドープされた5.43μm粒子の蛍光発光を示す一連のプロットである。
図16】2つのクロリンのドーピングレベルが異なる複数のビーズの混合物のFACS散布図である。図16Aは、単一のビーズを分析するためにゲーティングされた前方散乱及び側方散乱を示す。図16Bは、BV605チャネルのSE197及びBV650チャネルのSE420の9-プレックスビーズアレイの蛍光を示す。
図17】クロリン(SE211)及び蛍光エネルギー移動供与体(ADS036FO)でドープされたポリスチレンビーズの懸濁液の一連の蛍光発光である。図中に示すように励起は355又は405nmであった。「1.0μg」、「2.0μg」及び「4.0μg」は試験したクロリンSE211の量を意味する。
図18】種々の濃度のクロリン(SE211,4μg/mL)及び蛍光エネルギー移動供与体でドープされたポリスチレンビーズの蛍光発光のプロットである。355ex393em(点線)は、励起が355nmで発光が393nmを示し、これは供与体のみの励起及び発光に対応する。355ex635em(実線)は、供与体の励起及びクロリンの発光を示し、FRET供与体/受容体対の効果を示す。405ex635em(長点線)は、クロリンの励起と発光を示し、クロリン単独の効果を示す。
図19】例示的なベータ連結クロリン-ペリレンダイアド(C-PMI13)の構造である。
図20】図中の波長(すなわち、最も高いピークから最も低いピークへ、405nm、561nm、532nm、355nm、488nm及び640nm)で励起された例示的なクロリン-ペリレンダイアドでドープされたビーズ懸濁液の一連の蛍光発光である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、以下でより完全に記載される。しかし、そこには本発明のいくつかの実施態様が示されるが、全てではない。実際、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施態様に限定されるものと解釈すべきではない。これらの実施態様は、その開示が適用される法的要件を満たすように提供されたものである。
【0024】
I.定義
本明細書で使用する用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、以下に別途定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することを意図したものである。本明細書で採用される技術への言及は、当業者にとって明らかなこれらの技術の変形又は同等の技術の置換を含む、当技術分野で一般に理解されている技術へ言及したものである。
以下の用語は、当業者によってよく理解されると考えられるが、以下の定義は、本発明の説明を促進するために説明される。
本発明を説明するにあたり、多くの技術及び段階が開示されることが理解されるであろう。これらの各々は個々の利益を有し、それぞれは、他に開示された技術の1又はそれ以上又は任意に全てと共に使用することもできる。
従って、明瞭化のために、この説明では、不必要に個々の段階の可能な組み合わせのすべて繰り返すことを控える。にもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本発明の範囲及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0025】
長年の特許法慣習に従って、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その」は、使用される場合、「1つ以上」を指す。例えば、「蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子」というフレーズは、複数の同じ蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む、1又はそれ以上の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を指す。同様に、「少なくとも1つの」というフレーズは、実体を指すために本明細書で使用される場合、例えば、その実体の1, 2 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 75, 100又はそれ以上を含み、1~100及び100より大きいの整数値を含むが、これに限定されない。
【0026】
別段示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、成分、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。質量、重量、時間、容量、濃度又は割合(%)のような測定可能な値を指すとき、本明細書で使用される「約」という用語は、明記される値から、いくつかの実施態様において±20%、いくつかの実施態様において±10%、いくつかの実施態様において±5%、いくつかの実施態様において±1%、いくつかの実施態様において±0.5%、ある実施態様では±0.1%の変動を含み、これらの変動は開示された方法を実施するために適当なものである。従って、反対であることを示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
本明細書で使用される場合、実体を列挙する文脈で使用される時、「及び/又は」という用語は、単独又は組み合わせで存在する実体を指す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という語句は、A、B、C、及びDを個々に含むが、また、A、B、C、及びDの任意ならびに全ての組み合わせ及び部分組み合わせも含む。
【0027】
「結合する」というフレーズは、2つの実体の間の任意の相互作用を意味し、例えば、ポリマーマトリックスとポルフィリン大環状分子との間の任意の相互作用を意味する。いくつかの実施態様において、ポリマーマトリックス及びポルフィリン大環状化合物は、疎水的、静電的及びファンデルワールス相互作用の1又はそれ以上の(但し、これらに限定されない)非共有結合によって互いに結合している。いくつかの実施態様において、ポルフィリン大環状化合物が内部に存在するように、ポリマーマトリックス(例えば、ナノ粒子、マイクロ粒子、ビーズなど)がポルフィリン大環状化合物を包含する結果として、ポリマーマトリックスとポルフィリン大環状化合物とは互いに結合する。このような実施態様において、ポリマーマトリックスは、また、ポルフィリン大環状化合物「によってドープされる」又は「でドープされる」とも呼ばれ、このポルフィリン大環状化合物は、ポリマーマトリックス内に「埋め込まれる」とみなされ得る。いくつかの実施態様において、ポリマーマトリックス及びポルフィリン大環状化合物は、ポリマーマトリックスの表面にポルフィリン大環状化合物を結合させる共有結合によって互いに結合する。
【0028】
「を含む(including)」、「を含有する」、又は「によって特徴付けられる」と同義である「を含む(comprising)」という用語は、包括的又は無制限であり、引用されない追加の要素及び/又は方法ステップを除外しない。「を含む」は、特許請求の言語で使用される専門用語であり、名前を挙げた要素及び/又はステップが存在するが、他の要素及び/又はステップが追加されても依然として特許請求の範囲内である。
本明細書で使用される場合、「のみからなる」という語句は、特許請求の範囲内に明記されないいかなる要素、ステップ、又は成分も除外する。「のみからなる」という語句が、前文の直後ではなく、特許請求の範囲の本文の条項に出現する場合、それは、その条項内に説明される要素のみを限定し、他の要素は特許請求の範囲全体からは除外されない。
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という語句は、特許請求の範囲を、明記される材料及び/又はステップ、ならびに開示内容やクレームの基本的及び新規の特徴(複数可)に実質的に影響を与えないものの範囲に限定する。例えば、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、ポリマーマトリックス及びそれと結合する少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物から「本質的になる」という場合、言及されたポリマーマトリックスは、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子中に存在する唯一のポリマーマトリックスであるということを意味する。
【0029】
「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、本開示の主張される主題は、その他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。例えば、いくつかの実施態様において、本発明は蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子に関する。当業者は、本開示を概観した後で、本発明は、本発明のポリマーマトリックス及びそれに結合した少なくとも1つのポルフィリン系大環状化合物から本質的になる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子、並びに、本発明のポリマーマトリックス及びそれに結合した少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物のみからなる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含むことを理解するであろう。
【0030】
本明細書で使用される「ハロ」は、-F、-Cl、-Br、-I及び-Atを含む任意の適切なハロゲンを指す。
本明細書で使用される「メルカプト」は、-SH基を指す。
本明細書で使用する「アジド」は、-N基を指す。
本明細書で使用される「シアノ」は、-CN基を指す。
本明細書で使用される「ヒドロキシル/水酸基」は、-OH基を指す。
本明細書で使用される「ニトロ」は、-NO基を指す。
【0031】
本明細書で単独又は別の基の一部として使用される「アルキル」は、1又は2~10,20又は50個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖の炭化水素である(例えば、C~Cアルキル、C~C10アルキル、C11~C50アルキル)。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「低級アルキル」は、アルキルのサブセットであり、いくつかの実施態様においては好ましいものであり、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指す。低級アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「アルキル」又は「低級アルキル」は、他に指示がない限り、置換及び非置換アルキル又は低級アルキルの両方を含むことが意図され、これらの基は、以下から選択される基で置換されてもよい:ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロシクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、メルカプト、アルキル-S(O)m、アルケニル-S(O)m、アルキニル-S(O)m、シクロアルキル-S(O)m、ハロアルキル-S(O)m、シクロアルキルアルキル-S(O)m、アリール-S(O)m、アリールアルキル-S(O)m、ヘテロシクロ-S(O)m、ヘテロシクロアルキル-S(O)m、アミノ、カルボキシ、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ハロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ、アミノアシルオキシ、ニトロ又はシアノ(式中、mは0,1,2又は3である。)。
【0032】
本明細書で使用される「アルキレン」は、置換又は非置換であってもよい二官能性の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を指し、「アルキル」は上記で定義したとおりである。
本明細書中で単独又は別の基の一部として使用される「アルケニル」は、1又は2~10,20又は50個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖炭化水素であり(例えば、C~Cアルケニル、C~C10アルケニル、C50アルケニル)(又は炭素数1~4の低級アルケニル)、通常鎖中に1~4個の二重結合を含む。アルケニルの代表例には、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2,4-ヘプタジエニル、などが含まれるが、これらに限定されない。
用語「アルケニル」又は「低級アルケニル」は、他に示されない限り、置換及び非置換のアルケニル又は低級アルケニルの両方を含み、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して記載された基で置換されてもよい。
本明細書で使用される「アルケニレン」は、置換又は非置換であり得る二官能性の直鎖、分岐又は環状アルケニル基を指し、「アルケニル」は上記で定義したとおりである。
【0033】
本明細書中で単独又は別の基の一部として使用される「アルキニル」は、1又は20~10,20又は50個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素であり(例えば、C~Cアルキニル;C~C10アルキニル;C11~C50アルキニル)(又は炭素原子1~4個の低級アルキニル)、これは通常の鎖に1つの三重結合を含む。アルキニルの代表例には、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニルなどが含まれるが、これらに限定されない。「アルキニル」又は「低級アルキニル」という用語は、他に示されない限り、置換及び非置換のアルキニル又は低級アルキニルの両方を含むことが意図され、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して説明したのと同じ基で置換されてもよい。
本明細書で使用される「アルキニレン」は、置換又は非置換であってもよい二官能性の直鎖、分岐又は環状アルキニル基を指し、「アルキニル」は上記で定義したとおりである。
本明細書で使用される「アルキリデン鎖」は、置換又は非置換であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい、二官能性直鎖状、分枝状及び/又は環状有機基を指し、任意にN、O及びSからなる群から選択される1,2又は3個のヘテロ原子を含有してもよい。その例には、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルカリーレン及びアラルキレンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,946,533号を参照されたい。このアルキリデン鎖は、任意の適切な数の炭素原子を含んでもよい(例えば、C~C4;~C10;C10~C20;C20~C50)。
【0034】
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「アルコキシ」は、オキシ基(-O-)を介して親分子部分に結合した本明細書で定義したアルキル基又は低級アルキル基をいう。アルコキシの代表例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「アシル」は、-C(O)R基(式中、Rはアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又は他の適切な置換基などの本明細書に記載された任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用される「ハロアルキル」は、本明細書で定義されたアルキル基を介して親分子部分に結合した本明細書で定義された少なくとも1つのハロゲンを指す。ハロアルキルの代表例としては、クロロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-クロロ-3-フルオロペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用される「アルキルチオ」は、本明細書で定義されたチオ部分を介して親分子部分に結合した本明細書で定義されたアルキル基を指す。アルキルチオの代表例には、メチルチオ、エチルチオ、t-ブチルチオ、ヘキシルチオなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用される「アリール」は、単環式炭素環式環系又は1若しくはそれ以上の芳香族環を有する二環式炭素環式縮合環系をいう。アリールの代表例には、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチルなどが含まれる。用語「アリール」は、他に示されない限り、置換及び非置換アリールの両方を含むことが意図され、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して説明したのと同じ基で置換されてもよい。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「アリールアルキル」は、本明細書で定義されたアルキル基を介して親分子部分に結合した、本明細書で定義されたアリール基を指す。アリールアルキルの代表例には、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、2-ナフト-2-イルエチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「アミノ」は、-NH基を意味する。
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用される「アルキルアミノ」は、-NHR基(式中、Rはアルキル基である。)を意味する。
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用される「アリールアルキルアミノ」は、-NHR基(式中、Rはアリールアルキル基である。)を意味する。
【0036】
本明細書中で単独で又は別の基の一部として使用される「二置換アミノ」は、-NR基(式中、R及びRは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキルから成る群から選択される。)を意味する。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「アシルアミノ」は、-NR基(式中、Rは本明細書で定義されたアシル基であり、Rは水素原子、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキルから成る群から選択される。)を意味する。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「アシルオキシ」は、-OR基(式中、Rは本明細書で定義されたアシル基である。)を意味する。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「エステル」は、-C(O)OR基(式中、Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書で使用される「ホルミル」は、-C(O)H基を指す。
本明細書で使用される「カルボン酸」は、-C(O)OH基を指す。
【0037】
本明細書で使用される「スルホキシル」は、式-S(O)R(式中、Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)で表される化合物を指す。
本明細書で使用される「スルホニル」は、式-S(O)(O)R(式中、Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)で表される化合物を指す。
本明細書で使用される「スルホネート」は、式-S(O)(O)OR(式中、Rはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)で表される化合物を指す。
本明細書で使用される「スルホン酸」は、式-S(O)(O)OHで表される化合物を指す。
本明細書中で単独又は別の基の一部として使用される「アミド」は、-C(O)NR基(式中、R及びRは水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書中で単独又は別の基の一部として使用される「スルホンアミド」は、-S(O)NR基(式中、R及びRは水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
【0038】
本明細書中で単独で又は別の基の一部として使用される「尿素」は、-N(R)C(O)NR基(式中、R、R及びRは水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書中で単独又は別の基の一部として使用される「アルコキシアシルアミノ」は、-N(R)C(O)OR基(式中、R、Rは水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書中で単独で又は別の基の一部として使用される「アミノアシルオキシ」は、-OC(O)NR基(式中、R及びRは水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。)を指す。
本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される「シクロアルキル」は、3,4又は5~6、7又は8個の炭素原子(この炭素原子は以下で議論されるような複素環基で置換されていてもよい。)を含む飽和又は部分不飽和の環式炭化水素基を指す。シクロアルキルの代表例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが含まれる。これらの環は、任意に、ハロ又は低級アルキルなどの本明細書に記載された追加の置換基で置換されていてもよい。用語「シクロアルキル」は、一般的なものであり、特に明記しない限り、以下に述べる複素環式基を含むことが意図される。
【0039】
II.組成物
IIA.一般論
本発明は、いくつかの実施態様において、ポリマーマトリックス及びそれと結合する少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物(本明細書では、「ヒドロポルフィリン」とも呼ばれる。)を含む蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する。本明細書で使用される場合、「ポリマーマトリックス」は、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を形成する分子の任意の分子又は複合体であってもよく、それにより、1又はそれ以上のポルフィリン大環状分子と結合するための足場を提供する。例示的なポリマーマトリックスには、ポリスチレンが含まれる。
【0040】
用語「マイクロ粒子」は、約1,000μm未満であるが約1,000nmより大きい寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造を指す。この寸法は、いくつかの実施態様において約500μm未満、いくつかの実施態様において約250μm未満、いくつかの実施態様において約200μm未満、いくつかの実施態様において約150μm未満、いくつかの実施態様において約125μm未満、いくつかの実施態様において約80μm未満、いくつかの実施態様において約70μm未満、いくつかの実施態様において約60μm未満、いくつかの実施態様において約50μm未満、いくつかの実施態様において約50μm未満いくつかの実施態様において約30μm未満、いくつかの実施態様において約20μm未満、いくつかの実施態様において約10μm未満、いくつかの実施態様において約5μm未満である。この寸法は、いくつかの実施態様において、約1μm~約250μm(例えば、約5, 10, 15, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140, 150, 160, 170, 180, 190, 200, 210, 220, 230, 240又は250μm)である。
同様に、用語「ナノ粒子」は、約1,000nm未満の寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造を指す。いくつかの実施態様において、この寸法はより小さい(例えば、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約125nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、又は約20nm未満)。いくつかの実施態様において、この寸法は、約5nm~約250nm(例えば、約1, 5, 10, 15, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140, 150, 160, 170, 180, 190, 200, 210, 220, 230, 240又は250nm)である。
【0041】
いくつかの実施態様において、このマイクロ粒子又はナノ粒子は、ほぼ球形である。このマイクロ粒子又はナノ粒子がほぼ球形である場合、特徴的な寸法はその球体の直径に対応することができる。このマイクロ粒子又はナノ粒子は、球形に加えて、円盤状、板状(例えば、六角平板状)、長方形、多面体、棒状、立方体又は不規則な形状であってもよい。
このマイクロ粒子又はナノ粒子は、コア領域(すなわち、この粒子の外寸の間の空間)及び外表面(すなわち、粒子の外寸を画定する表面)を含むことができる。いくつかの実施態様において、このマイクロ粒子又はナノ粒子は、マイクロ粒子又はナノ粒子のコアを取り囲むか又は部分的に取り囲む1又はそれ以上のコーティング層を有することができる。従って、例えば、球状のマイクロ粒子又はナノ粒子は、1又はそれ以上の同心コーティング層を有することができ、各連続層は、その粒子の中心により近いほどより小さな層が外表面上に広がる。
【0042】
用語「ポリマー」及び「ポリマー性」は、反復単位(すなわち、所与の化学的基礎構造の複数のコピー)を有する化学構造を指す。ポリマーは、重合性モノマーから形成することができる。重合性モノマーは、反応して重合性モノマーの他の分子上の部分と結合(例えば、共有結合又は配位結合)を形成することができる1又はそれ以上の部分を含む分子である。いくつかの実施態様において、各重合性モノマー分子は、2又はそれ以上の他の分子/部分に結合することができる。いくつかの場合では、重合性モノマーは他の1つの分子にのみ結合し、ポリマー材料の末端を形成する。
ポリマーは、有機、無機、又はそれらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用する「無機」という用語は、炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、リン、又はハロゲンの1つ以外の少なくともいくつかの原子を含む一つの化合物又は組成物を指す。従って、例えば、無機化合物又は無機組成物は、1若しくはそれ以上のケイ素原子及び/又は1若しくはそれ以上の金属原子を含有することができる。いくつかの実施態様において、このポリマーはポリスチレンであり、このマイクロ粒子及び/又はナノ粒子はポリスチレンでできている。いくつかの実施態様において、このマイクロ粒子及び/又はナノ粒子はポリスチレンビーズである。
【0043】
本明細書中に開示されるように、このポリマーマトリックスは、本発明の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を生成するために、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子に結合される。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の外表面と非共有結合的に結合し、この蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子又はその両方によってカプセル化される。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状分子は、蛍光分子である。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、ポルフィリン類(17,18-ジデヒドロホルビン類を含む。)、クロリン類(ホルビン類を含む。)、バクテリオクロリン類(バクテリオホルビン類を含む。)、及びイソバクテリオクロリン類(融合「E」環を含むイソバクテリオクロリン類を含む。)からなる群から選択される。本明細書で使用される「ポルフィリン」という用語は、典型的には、4つの窒素原子及び種々の金属原子と容易に置換可能な2つの置換可能な水素原子を有し、共に4つのピロール環から構成される環状構造を指す。典型的なポルフィリンはヘミンである。本発明の組成物及び方法において使用することができる例示的なポルフィリン大環状化合物は、米国特許第6,559,374号;同第7,173,691号;同第8,173,691号;同第8,207,329号;同第8,546,088号;同第9,417,245号、及びTaniguchi et al., 2008、及びLindsey, 2015に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。本発明のマイクロ粒子及び/又はナノ粒子に使用するための有利な励起及び発光スペクトルを有するポルフィリン大環状化合物の製造方法は、例えば、米国特許第6,559,374号;同第7,173,691号;同第9,417,245号に記載され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書に開示された例示的なポルフィリン大環状化合物に関して、異なる及び/又は変更された発光スペクトルを有する追加のポルフィリン性大環状化合物を与えるように、この例示的なポルフィリン性大環状化合物を「波長調整」するために、これに改変を行うこともできる。いくつかの実施態様において、β-ピロール位に異なる補助色素を配置することによって、本発明のポルフィリン大環状化合物の発光波長は変更(すなわち、「調整」)される。いくつかの実施態様において、また、このポルフィリン大環状化合物の安定性を高めるために、還元されたピロール位にジメチル基が追加される。例えば、Lindsey, 2015を参照されたい。
【0045】
IIB.ポルフィリン大環状分子としてのバクテリオクロリン類
本発明のいくつかの実施態様において、本発明のポルフィリン大環状化合物はバクテリオクロリンである。ここで使用される「バクテリオクロリン」は、本質的にポルフィリンと同じであるが、ポルフィリンとは2つの部分的に飽和した非隣接(すなわちトランス)ピロール環を有する点で異なる。例示的で非限定的なバクテリオクロリンとしては、米国特許第8,173,691号に開示されているバクテリオクロリンが挙げられるが、これらに限定されない。そこに記載されているように、例示的なバクテリオクロリンは、上記の化学式Iの構造を有し、
Mは金属であるか又は存在しない、任意にMはPd、Pt、Mg、Zn、Al、Ga、In、Sn、Cu、Ni及びAuから成る群から選択される金属であり;
Xは、Se、NH、CH、O及びSから成る群から選択され;
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アリールオキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジ置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、結合基、及び表面結合基から成る群から選択される。
いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRがそれぞれアルキルであり;Rは任意に置換されてもよいアリールである。
いくつかの実施態様において、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子であり;R及びRはそれぞれメチルであり;Rはp-トリルである。
【0046】
いくつかの実施態様において、化学式Iのバクテリオクロリンは、有機溶媒中、酸の存在下で化学式IIIの化合物(下式)の自己縮合(又はペアの化合物の縮合)によって生成する。
【化3】
式中、Rはアセタール又はアルデヒド基であり;X及びR~Rは上記の通りであり、Rは水素原子(又はアルコキシ、又はこのアセタール又はアルデヒド基によって与えられるその他の基である。)である。R11及びR12はそれぞれ水素原子であるか又はR11及びR12は一緒になって共有結合を形成する。任意に、この化合物をさらに誘導体化して、公知の技術によって、R位の水素原子を更に上記の置換基と交換することができる。
【0047】
IIC.ポルフィリン大環状分子としてのクロリン類
本発明のいくつかの実施態様において、本発明のポルフィリン大環状化合物は、クロリンである。ここで使用される「クロリン」は、本質的にポルフィリンと同じであるが,ポルフィリンとは1つの部分的に飽和したピロール環を有する点で異なる。植物の光合成の緑色色素であるクロロフィルの基本発色団はクロリンである。本発明の例示的な非限定的なクロリンとしては、米国特許第6,559,374号に開示されているトランス置換クロリンが挙げられる。そこに記載されているように、例示的なトランス置換クロリンは、上記の化学式IIの構造を有し、
Mは金属であるか又は存在しない、任意にMはPd、Pt、Mg、Zn、Al、Ga、In、Sn、Cu、Ni及びAuから成る群から選択される金属であり;
、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S、Se、Te及びCHから成る群から選択されるヘテロ原子であり;
、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14、ならびにS及びSのいずれか、又はS及びSのいずれかは、それぞれ独立して、水素原子、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、及びカルバモイルであり、又はSとS13は共に=Oを形成する。
いくつかの実施態様において、MはZn又はMgである。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKは、それぞれ独立して、N、O、S及びCHから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、K、K、K及びKはすべてNである。いくつかの実施態様において、S、S、S、S、S10、S11、S12、S13及びS14は全てアルキルである。
【0048】
化学式IIのトランス置換クロリンは、米国特許第6,599,374号に記載のように製造することができる。いくつかの実施態様において、化学式IIのトランス置換クロリンは、有機溶媒中酸の存在下で、化学式IVの化合物を化学式Vの化合物(下式参照)と縮合させることによって製造され、縮合生成物を形成する。
【化4】
【0049】
IID.ポルフィリン大環状分子としてのイソバクテリオクロリン類
本発明のいくつかの実施態様において、本発明のポルフィリン大環状化合物は、イソバクテリオクロリンである。「イソバクテリオクロリン」は、本質的にポルフィリンと同じであるが、ポルフィリンとは2つの部分的に飽和した隣接(すなわちシス)ピロール環を有する点で異なる。本発明の例示的なイソバクテリオクロリンには、米国特許第8,546,088号に開示のものが含まれるが、これに限定されない。
【0050】
IIE.ポルフィリン大環状分子及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
いくつかの実施態様において、本発明のマイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)供与体を含み、ポルフィリン大環状化合物はFRET受容体として作用する。これは、ポルフィリン大環状分子(典型的にはこれ自体は励起効率をほとんど又は全く示さない。)を励起するために異なる蛍光励起波長を加えることを提供する。限定するためではなく例えば、ビーズ及び粒子に個々のポルフィリン大環状化合物をドープするための本明細書に記載の方法を用いて、ポルフィリン大環状化合物及び第2の疎水性染料を含む有機溶液をビーズ及び粒子に加える。典型的には、所望の励起特性と選択されたポルフィリン大環状分子の励起最大値と有意に重なる発光とを有するFRET供与体が選択される。いくつかの実施態様において、このFRET供与体は、第1の蛍光分子の発光極大と顕著に重複する発光スペクトルによって特徴付けられる。本明細書中で使用される場合、「顕著に重複する」とは、正規化された供与体発光と正規化された受容体吸収との間の重複領域を指す。Lakowicz, 1999を参照されたい。
【0051】
IIF.ダイアド
いくつかの実施態様において、本発明はまた、ポルフィリン大環状分子のダイアドを提供する。本明細書で使用される場合、用語「ダイアド」は、1又はそれ以上の他のポルフィリン大環状分子及び/又は他の色素に共有結合したポルフィリン大環状分子を指す。従って、本明細書で使用される場合、用語「ダイアド」は、1,2,3,4,5又はそれ以上の異なるポルフィリン大環状分子及び/又は他の色素に共有結合で結合したポルフィリン大環状分子を指す。リンカーは、典型的には、アルキニル、フェニル-アルキニル、アリール-アルキニルなど様々であってもよいが、リンカーはポルフィリン大環状分子及び他のパートナーを結合させるために使用される。いくつかの場合では、これは、蛍光量子収量などの特性を向上させることができ、又は溶媒依存性蛍光などの特性を提供することができる(Yu et al., 2014を参照されたい。)。例えば、クロリン-バクテリオクロリンのダイアドは、クロリンの励起とバクテリオクロリンの近赤外(NIR)蛍光発光とを組み合わせることができる( Muthiah et al., 2008を参照されたい。)。いかなる操作理論にも縛られることを望まないが、このアプローチを使用して、クロリンで典型的な赤色発光だけでなく、クロリン-バクテリオクロリンダイアドを使用した近赤外(NIR)発光を伴う紫色で励起可能なビーズ/粒子を作製することが可能である。米国特許第6,420,648号もまた参照されたい。参照によりこの全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
またポルフィリン大環状分子ダイアドでドープされたビーズ及び/又は複数の励起波長を有する粒子も本明細書に開示される。現在、この特性を有するビーズは、マルチレーザーフローサイトメーターの較正に使用され、例えば、SPHERO(商標)レインボー較正粒子(Spherotech Inc., Lake Forest, Illinois, USA)中の複数の蛍光色素分子の混合物を用いて調製される。これらは、また共焦点蛍光顕微鏡の位置合わせ及び較正にも使用される。複数の蛍光色素分子を使用することは、複数の蛍光色素分子の変化するドーピング効率、及び複数の蛍光色素分子のエネルギー移動、及び干渉し競合する光学特性により、重大なチャレンジである。ダイアドは、これよりはるかに単純な単一蛍光成分であり、かつ複数の蛍光色素分子を用いることと比較して一貫して均一なドーピングプロセスを提供する。一例として、「全色性」蛍光ダイアドは、ヒドロポルフィリンとブロードに吸収するペリレン染料とを組み合わせたもので、Hu et al., 2016に記載されている。ダイアド中にヒドロポルフィリンを使用することができるペリレン以外の他のパートナー群には、BODIPY、ポルフィリン、ピレン、テリレン、クマリンなどが含まれるが、これらに限定されない。米国特許第6,420,648号もまた参照されたい。参照によりこの全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
従って、いくつかの実施態様において、本発明は、粒子(任意に、マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はビーズ、任意にポリスチレンビーズ)に結合したポルフィリン大環状分子含有ダイアドを含む。いくつかの実施態様において、このビーズは、更にビーズが少なくとも3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10又はそれ以上の異なる蛍光分子を含むように、複数の異なるポルフィリン大環状分子含有ダイアドを含む。いくつかの実施態様において、第1の蛍光分子はクロリンを含み、第2の蛍光分子はバクテリオクロリンを含み、紫色光により励起されると、このダイアドが赤色及び近赤外の両方の光を発光する。いくつかの実施態様において、本発明のポルフィリン大環状分子含有ダイアドは、マルチレーザーフローサイトメーターの較正、共焦点蛍光顕微鏡の位置合わせ及び/又は較正、又は細胞及び/又は他の生体分子の識別用ラベル(例えば、抗体又はその断片又はその誘導体)に使用される。いくつかの実施態様において、本発明のポルフィリン大環状分子含有ダイアドは、抗体及び/又はパラトープ含有断片又はその誘導体に結合される。
【0054】
IIG.異なる複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の集団
本発明はまた、複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団を提供する。本明細書で使用される場合、用語「異なる」とは、任意の測定可能な基準に基づいて互いに区別することができる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を指す。例えば、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が結合する異なるポルフィリン大環状化合物を有し、それが識別可能な発光スペクトルを有する場合、蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は「異なる」と考えることができる。いくつかの実施態様において、本発明の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、1又はそれ以上の異なるポルフィリン大環状化合物と結合し、各異なるポルフィリン大環状化合物は、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。
【0055】
いくつかの実施態様において、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含み、いくつかの実施態様において、その集団は、異なる複数のポルフィリン大環状分子を含む、少なくとも2つの異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む。
いくつかの実施態様において、各異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、1又はそれ以上の異なるポルフィリン大環状分子と結合し、かつ各異なるポルフィリン大環状化合物は、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。いくつかの実施態様において、この集団は、少なくとも3,4,5,6,7又は8の異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む。
いくつかの実施態様において、このポリマーマトリックスは、ポリスチレンを含み、任意にビーズの形態である。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物は、蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はビーズの外表面と非共有結合的に結合し、蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はビーズによってカプセル化され、蛍光性マイクロ粒子の表面、ナノ粒子、及び/又はビーズ、又はそれらの任意の組み合わせの表面に共有結合的に結合する。
【0056】
ここで開示されている集団のいくつかの実施態様において、この集団中に存在する異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、それぞれ単一波長及び/又は約320nm~約450nmの光による励起が可能である。
いくつかの実施態様において、この異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子の少なくとも一つのサブセットは、ポルフィリン類(17,18-ジデヒドロホルビン類を含む。)、クロリン類(ホルビン類を含む。)、バクテリオクロリン類(バクテリオホルビン類を含む。)、及びイソバクテリオクロリン類(融合「E」環を含むイソバクテリオクロリン類を含む。)からなる群から選択される1つのポルフィリン大環状化合物を含む。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物の内の1又はそれ以上は、上記化学式I及びIIから成る群から選択される構造を有する。いくつかの実施態様において、この少なくとも1つのポルフィリン大環状分子の1又はそれ以上は、ヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
本発明の集団のいくつかの実施態様において、複数の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、それぞれ、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、及び/又はこのピークが他の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかから少なくとも5nm離れている、異なる発光波長帯を有する。
【0057】
いくつかの実施態様において、複数の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子の各々の発光波長帯域は、約590nm~約750nmの間である。いくつかの実施態様において、その集団は、405nmの光による励起が可能である。いくつかの実施態様において、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及び1つのポルフィリン大環状化合物を含む。いくつかの実施態様において、本発明の集団は、少なくとも1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50又はそれ以上の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含み、任意に、この蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の1つ又は複数が、ヒドロポルフィリンSE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62及びB66から成る群から選択されるポルフィリン大環状化合物を含む。
【0058】
いくつかの実施態様において、本発明の集団の異なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、溶媒(任意に、テトラヒドロフラン(THF))中の少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物の溶液をポリマーマトリックスを含むマイクロ粒子の水溶液と混合する工程、及び続いてその溶媒を除去する工程により生成され、その最大ピーク半値幅が約25nm未満であり、かつこのピークが該集団中の他の異なるポルフィリン大環状化合物のいずれかの発光波長帯から少なくとも5nm離れている、発光波長帯を有する。p-ジオキサン、テトラヒドロピラン及び2-メチル-テトラヒドロフランなど(但し、これらに限定されない)のTHF以外の他の溶媒も使用できることに留意されたい。選択された溶媒は、ヒドロポルフィリンを溶解し、水に混和性であるべきであり、理想的には、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子(例えば、ポリスチレン粒子又はビーズ)を非常に穏やかに膨潤させて、少なくとも1つのポルフィリン性大環状分子がそのマイクロ粒子及び/又はナノ粒子(例えば、ポリスチレン粒子又はビーズ)結合することを可能にするものであるべきである。
【0059】
いくつかの実施態様において、この集団は、(a) 溶剤(任意に、テトラヒドロフラン(THF))中の1又はそれ以上のポルフィリン大環状化合物の第1溶液を調製する段階であって、任意に該第1溶液が約0.25μg/ml~約20μg/mlのヒドロポルフィリンを含む段階;(b) 該第1溶液を、ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、水、及びポリマー界面活性剤を含む第1混合液に添加して、第2混合液を調整する段階であって、任意に、該第1溶液を、約33%の溶媒を含む第2混合液を提供するために、添加し、及び/又は該ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子がポリスチレンを含み、及び/又は該ポリマー界面活性剤がポリアルキレングリコールブロックコポリマーである、段階;(c) 第2混合液をある期間混合する段階であって、任意に該期間が約15分間である段階;(d) 該第2混合液から溶媒を除去して第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、任意に該除去する段階が、第2混合液を遠心分離する段階及び/又は該マイクロ粒子をすすぐ段階を含む、段階;(e) 上記段階を繰り返して、1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を提供する段階であって、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のそれぞれが、該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子、及び/又は1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子とは異なる1つのポルフィリン大環状分子又はポルフィリン大環状分子混合物を含む、段階;及び(f) 該第1の蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を、該1又はそれ以上の更なる蛍光性ポリマーマイクロ粒子及び/又はナノ粒子のいずれかと混合する段階から成る方法によって得られ、その結果、複数の異なる蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む集団であって、各蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、ポリマーマトリックス及び少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含む、集団が提供され、該集団が光によって励起されると(任意に、該光は約320nm~約450nmの光である。)、該複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、別個に及び/又は同時に検出されることができる。
いくつかの実施態様において、この方法は、更に、分子、タンパク質、抗体、抗体断片、核酸、及び細胞からなる群の1つに前記マイクロ粒子及び/又はナノ粒子の1又はそれ以上を結合させる段階を含む。
【0060】
本明細書で使用する「抗体」及び「複数の抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1又はそれ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子は、典型的には、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、アルファ(α)、ガンマ(γ)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)及びミュー(μ)定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)いずれかに分類される。哺乳類では、重鎖はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はイプシロン(ε)に分類され、それぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。他の種は、他の軽鎖及び重鎖遺伝子を有し(例えば、特定の鳥類で産生されたIgYと呼ばれるものは、卵の卵黄中に沈着する免疫グロブリン型である。)、これらは同様に本発明に包含される。
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、2つの同一の一対のポリペプチド鎖からなり、各対は1つの軽鎖(平均分子量が約25キロダルトン(kDa))及び1つの重鎖(平均分子量が約50-70kDa)を有する。この2つの同一の一対のポリペプチド鎖は、重鎖領域内に存在するジスルフィド結合によって二量体形態で共に保持される。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖を指す。
【0061】
抗体は、通常、完全な免疫グロブリンとして、又は種々のペプチダーゼで消化することによって産生可能なよく特徴付けられた多数の断片として存在する。例えば、パパインによる抗体分子の消化は、抗体をジスルフィド結合のN末端の位置で切断する。これは3つの断片を産生する。この3つの断片とは、軽鎖及び重鎖のN末端を有する同一の2つの「Fab」断片、及びジスルフィド結合によって共に保持される重鎖のC末端を含む「Fc」断片である。一方、ペプシンは、抗体のC末端をヒンジ領域のジスルフィド結合に消化して、「F(ab)'2」断片として知られる断片を産生する。これは、ジスルフィド結合によって結合されたFab断片の二量体である。この「F(ab)'2」断片は、温和な条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊し、それによって「F(ab)'2」二量体を2つの「Fab'」単量体に変換する。このFab'単量体は本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFab断片である(例えば、他の抗体断片の詳細についてはPaul, 1993を参照されたい。)。これらの種々の断片に関して、Fab、F(ab)'2及びFab'断片は、少なくとも1つの完全な抗原結合ドメイン(「パラトープ」と呼ばれる。)を含み、抗原に結合することができる。
様々な抗体断片は、完全な抗体の消化に関して定義されているが、当業者は、これらの種々の断片(Fab'断片を含むが、これに限定されない。)が、初めから、化学的に又は組換えDNA法により合成できることを知っている。従って、本明細書で使用される用語「抗体」は、完全抗体の改変によって産生される抗体断片、又は組換えDNA法を使用して新規に合成される抗体断片のいずれをも含む。いくつかの実施態様において、用語「抗体」は、少なくとも1つの抗原結合ドメインを有する断片を含む。
【0062】
本発明の抗体、断片及び誘導体はまた、キメラ抗体を含む。本明細書において抗体の文脈で使用される場合、この用語「キメラ」及びその文法上の改変体は、1つの種からの抗体定常領域に実質的に又は排他的に由来する定常領域と、他の種からの可変領域に実質的に又は排他的に由来する可変領域とを有する抗体誘導体を指す。特定の種類のキメラ抗体は、ヒト化抗体であり、このヒト化抗体は、(例えば,マウス抗体の)相補性決定領域(CDR)をヒト抗体のCDRに置換することによって産生される(例えば、国際公開WO 1992/22653を参照されたい。)。従って、いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、対応するヒト抗体領域に実質的に又は排他的に由来するCDR及びヒト以外の哺乳類に実質的に又は排他的に由来するCDR以外の定常領域及び可変領域を有する。
本発明の抗体、断片及び誘導体は、一本鎖抗体及び一本鎖抗体断片であってもよい。一本鎖抗体断片は、ここに記載した抗体全体の可変領域及び/又はCDRの少なくとも1つを有するアミノ酸配列を含むが、これらの抗体の定常ドメインの一部又は全部を欠いている。これらの定常ドメインは、抗原結合には必要ではないが、抗体全体の構造の主要部分を構成する。
【0063】
一本鎖抗体断片は、定常ドメインの一部又は全部を含む抗体の使用に伴ういくつかの問題を克服することができる。例えば、一本鎖抗体断片は、生物学的分子と重鎖定常領域との間の望ましくない相互作用、又は他の望ましくない生物学的活性を有さない傾向がある。さらに、一本鎖抗体断片は、抗体全体よりもかなり小さいため、完全な抗体よりも毛細管透過性が高く、そのため、一本鎖抗体断片は、より効率的に標的抗原結合部位に局在し、結合することができる。また、抗体断片は、原核細胞において比較的大規模に産生されることが可能なため、それらの産生を促進する。さらに、比較的小さなサイズの一本鎖抗体断片は、完全な抗体よりもレシピエントにおいて免疫応答を誘発する可能性が低い。本発明の一本鎖抗体断片には、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv、二重特異性ダイアボディを含むダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、ミニボディ、四価二重特異性分子、二重特異性F(ab')2断片などのような(但し、これらに限定されない)、一本鎖断片可変(scFv)抗体及びその誘導体が含まれる。
【0064】
従って、いくつかの実施態様において、本発明は、ここに記載されたような蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアドに結合した及び/又は共有結合で結合した抗体又はその断片若しくはその誘導体に関する。いくつかの実施態様において、本発明の抗体又はその断片又はその誘導体は、ポルフィリン大環状分子SE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62、B66及び/又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポルフィリン大環状化合物に結合し及び/又は共有結合で結合し、及び/又はポルフィリン大環状分子SE197、SE211、SE420、SE357、SE355、B56、B62及びB66及び/又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のポルフィリン大環状化合物を含むポルフィリン大環状分子含有ダイアドに結合し及び/又は共有結合で結合する。
【0065】
IIH.その他の組成物
いくつかの実施態様において、本発明は、また、いくつかの実施態様において、本発明の方法によって生成される別々に検出可能な複数の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、及び/又はダイアドのセットを提供する。いくつかの実施態様において、別々に検出可能な複数の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、及び/又はダイアドのセットは、少なくとも1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50又はそれ以上の別個に検出可能な蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、及び/又はダイアドを含む。
本発明の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアドを合成するための更なる出発材料及び方法は、米国特許第7,332,599号;同7,408,058号;同7,423,160号;同7,470,785号;同7,501,508号;同7,518,905号;同7,534,807号;同7,553,977号;同7,582,751号;同7,595,407号;同7,633,007号;同7,678,900号;同7,723,513号;同7,745,618号;同7,884,280号;同7,947,828号;同7,947,829号;同7,951,939号;同7,964,720号;同7,994,312号;同8,013,149号;同8,062,756号;同8,080,653号;同8,097,609号;同8,129,520号;同8,173,691号;同8,173,692号;同8,187,824号;同8,188,298号;同8,207,329号;同8,212,023号;同8,212,055号;同8,278,439号;同8,304,561号;同8,445,695号;同8,524,892号;同8,530,459号;同8,546,088号;同8,664,260号;同8,980,565号;同9,303,165号;同9,365,722号;同及び9,417,245号に見いだすことが可能で、これらの各々はその全体が参照により組み込まれる。
【0066】
III.使用法
本発明の組成物(例えば、蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、ビーズ、ダイアドなど)は、蛍光分子(特に、複数の蛍光分子を含む粒子)をそのために使用することができる任意の目的に用いることができる。本発明の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、ビーズ、ダイアド、及びそれらの集団の例示的な使用法には、フローサイトメトリーやその他の診断用途の校正標準として使用(補償制御、機器設定制御などを含むが、これに限定されない。例えば、Perfetto et al., 2006を参照されたい。);フローサイトメトリーのための多重ビーズアレイにおける使用(イムノアッセイ、核酸検出、PCR産物などを含むが、これに限定されない。);細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析のための標識;イメージング及び顕微鏡検査用の標識;及び限定されるものではないが、抗体及びその断片及びその誘導体などの細胞及び生体分子の粒子アレイ及びバーコード化における使用、等が含まれる。
【0067】
従って、いくつかの実施態様において、本発明の蛍光性ポリマーマイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアドの集団を、マルチウォールプレートのウェルを区別して標識するために用いることができる。いくつかの実施態様において、このマルチウォールプレートの1又はそれ以上のウェルが、コーティングされたウェルが、その中に存在する特定の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、及び/又はダイアドに由来する励起スペクトルに基づいて、区別可能なように、それぞれ異なる蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、又はダイアド、又はそれらの組み合わせでコーティングされる。
同様に、いくつかの実施態様において、本発明の蛍光性ポリマーマイクロ粒子、ナノ粒子、及び/又はダイアドの集団を、細胞及び/又は生体分子を区別して標識するために用いることができる。いくつかの実施態様において、これは、個々の細胞及び/又は生体分子が、その中に存在する及び/又は結合又は会合している特定の蛍光微粒子、ナノ粒子及び/又はダイアド由来の励起スペクトルに基づいて、互いに区別することができるように、1又はそれ以上の細胞に、異なる蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアド、又はそれらの組み合わせを導入すること、又はそれを生体分子(抗体又はその断片又は誘導体を含むが、これに限定されない。)に会合させる及び/又は結合させることによって行うことができる。
【0068】
限定するためではなく例示として、発光の波長範囲が狭いポルフィリン大環状化合物は、バーコード実験について明確な利点を提供する。第1に、波長範囲が狭い発光はチャネル間の補償(補正)を少なくし、そのためビーズ/ナノ粒子の同定の精度を高める。第2に、波長範囲が狭い発光は、紫色レーザーなどの1つのレーザーからのより多くの発光チャネルを可能にし、交差励起問題を排除し、6~10個の異なる発光チャネルの使用可能にする。第3に、合成ポルフィリン大環状化合物は、いくつかの実施態様において、非常に疎水性であり、複数のビーズ/ナノ粒子に均一に充填し、ほとんどのバイオアッセイに典型的な水性条件下で使用する場合、ビーズ/ナノ粒子からの染料の損失を最低限にする。バーコードを行うために量子ドット(QD)を使用する例はRees et al., 2014に提供されており、この文献では、3つの異なるQDを使用して1700個の個別セルコードを生成している。
【0069】
IV.キット
本発明はまた、いくつかの実施態様において、1又はそれ以上の蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアドを含むキットを提供する。いくつかの実施態様において、本発明のキットは、複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子及び/又はダイアドを含み、各蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子又はダイアドは、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む。いくつかの実施態様において、このキットは、各容器が蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子、又はダイアドのうちの1種のみを含むように、個々の容器に精製された種として少なくとも1つのポルフィリン大環状化合物を含む、複数の蛍光性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子及び/又はダイアドを供給する。本明細書中で使用される場合、用語「種」とは、異なる種が互いに別々に検出可能であるように、1若しくはそれ以上のポルフィリン大環状分子で標識された単一のマイクロ粒子、ナノ粒子若しくはダイアド、又は1若しくはそれ以上の同じポルフィリン大環状分子で標識された複数の同一のマイクロ粒子、ナノ粒子若しくはダイアドのことをいう。従って、いくつかの実施態様において、このキットは、この方法を実施するため及び/又は本明細書に上記記載の使用法の一部に関与するために、単一又は様々な組み合わせで使用できる試薬を提供する。いくつかの実施態様において、このキットは、少なくとも1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50又はそれ以上の別々に検出可能な蛍光性マイクロ粒子、ナノ粒子及び/又はダイアドを含む。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、例示的な実施態様を提供する。本発明及び当業者の一般的なレベルに照らして、当業者は、以下の実施例は単なる例示であり、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更、改変、及び変更を行うことができることを理解するであろう。
【0071】
実施例1
クロリンによるポリスチレンビーズの染色
材料:Pluronic(R)F127ブランドの非イオン性界面活性剤は、Sigma-Aldrich Co., LLC (St. Louis, Missouri, USA)から購入した。SE197、SE211、SE420、SE355及びSE357(図3参照)を含む種々のクロリンは、ノースカロライナ州立大学(Raleigh, North Carolina, USA)のJohn Lindseyから入手した。阻害剤なし(BHTなし)のテトラヒドロフラン(THF)はSigma-Aldrich Co., LLC (St. Louis, Missouri, USA)から購入した(カタログ番号401757)。ポリスチレン(PS)ビーズ(平均直径5.43μm)は、Bangs Laboratories, Inc. (Fishers, Indiana, USA)から購入した(カタログ番号PS06N)。米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の基準に合う水は、Worldwide Medical Corporation (Lake Forest, California, USA) から購入した(カタログ番号ES612PS06N)。蛍光は、Varian Cary Eclipse 蛍光分光光度計(Varian, Inc., now part of Agilent Technologies, Palo Alto, California, USA)で検出し定量した。
【0072】
方法:1.7mLの微量遠心管に、NCCLS水140.0μL、2.0%(v/v)Pluronic(R) F127ブランドの非イオン性洗剤70.0μL及びPSビーズ15.0μLを加えた(使用前によく再懸濁した。)。THFの最終濃度が約33%になるように、微量遠心管の内容物を渦巻状に撹拌ながら、クロリン/THF溶液(115μL; THF中のクロリン濃度0.25μg/ mL~20.0μg/ mL)を滴下した。この微量遠心管を、70~80RPMで回転するロータリーミキサー上に「水平に」置いて、室温で15分間インキュベートした。この反応管(微量遠心管)を850×gで3分間遠心分離して、ドープされたPSビーズのペレットを得た。Rainin P200ピペッター及びチップを用いて、その上清を注意深く除去した。このペレットにNCCLS水300μLの加え、5/8スピードの5パルスで「パルス」法を用いてこの反応管を渦巻状に撹拌した。この遠心分離及びその後の工程をさらに2回繰り返し、このPSビーズを合計3回洗浄した。3回目の上清除去後、NCCLS水30.0μLを添加し、この反応管を再び渦巻状に撹拌し、蛍光分光法によるキャラクタリゼーションのために、このサンプルをNCCLS水で1:75に希釈した(すなわち、サンプル4.0μL +NCCLS水300μL)。このクロリンをドープしたPSビーズのスペクトルは、トルエン中で測定したクロリン蛍光のスペクトルと本質的に同じであった(図3B参照)。
【0073】
実施例2
ラベルの相対的な明るさを評価するためのクロリンでドープされたPSビーズのフローサイトメトリー
ポリスチレンビーズ(5.43μm)をBangs Laboratoriesから得て、実施例1の記載と同様にクロリンで処理した。サンプルを、5mLのポリスチレン丸底管(カタログ番号352058、Corning, Inc., Corning, New York, USA)でフローサイトメトリーを行うように調整した。陰性対照については、色素を添加しないこと以外は、非標識ポリスチレンビーズを実施例1と同様にTHFで処理し充填した。材料を同じ方法で洗浄し、フローサイトメトリーでブランクとして使用するために水に再懸濁した。分析のために、ビーズ(ブランク又は染色したもの)を、0.05%Pluronic(R)F127ブランドの非イオン性界面活性剤を含有する水で1:400に希釈し、フローサイトメトリーチューブに入れた。
これらのサンプルを、ノースカロライナ大学コアフローサイトメトリー装置(Chapel Hill, North Carolina, USA)において、(1) 7つのレーザー(波長:355, 405, 488, 532, 561, 594及び633nm)を備えた19パラメーターLSR-II SORPフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, California, USA)、又は(2) 5つのレーザー(波長:355, 405, 488, 561及び640nm)を備えたLSRFORTESSA(商標)ブランドのフローサイトメーター(BD Biosciences)のいずれかを使用し、FACSDiva 8.0獲得ソフトウェア(BD Biosciences)を用いて分析した。クロリンSE420のデータを、630nmロングパス(LP)フィルター及び660/20nmバンドパス(BP)フィルターを備えた100mW 405nmレーザーのチャネルAに収集し、図4に示すデータを得た。このLP及びBPフィルターは、BD Biosciences 又はChroma Technology Corporation (Bellows Falls, Vermont, USA)のいずれかから入手した。図5に示す5つのクロリンパネルデータについては、表1に記載されたフィルター及びチャネルを使用した。実験後の分析は、FlowJoソフトウェア(version 10.0.8, FlowJo, LLC, Ashland, Oregon, USA)を用いて行った。
【0074】
【表1】
【0075】
ブランクのビーズは、前方光散乱及び側方光散乱に基づいて同定された。ゲーティングを適用して単一ビーズよりも低い散乱及び高い散乱の両方の事象を排除し、更なるデータの全てをこのゲーティングを用いて分析した。すべての実験において、ゲーティングされた3000個の事象が収集された。
図4は、1μg/ mLに等しい最高ドーピング濃度を有する半対数濃度工程で調製された単一クロリン(SE420)の溶液で処理した、複数セットのビーズの組み合わせについてのフローサイトメトリーヒストグラムの例を示す。シャープなピークは、ビーズへのクロリン適用が2対数濃度範囲以上均一であることを示す。
図5は、混合されたビーズ集団の間の対の同時相互作用のドットプロットの選択を示す。これらのドットプロットは、表2の補償マトリックス値を適用した後に生成された。これらの補償値は、個々のビーズの他の4つのチャネルへのスピルオーバーの測定から決定された。このデータセットにおいて、チャネル及びクロリンは表1に示すようにC1~C5と命名された。これらのデータ及び補正表の値は、120nm未満で分離されたピーク発光を有する、紫色で励起可能で発光の波長範囲が狭い5つのクロリンは、最低限の修正(補償)で、市販のフィルターセットを用いた従来のフローサイトメーターを使用するフローサイトメトリーによって正確に分析することができることを示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例3
バクテリオクロリンによるポリスチレンビーズの染色
実施例1でクロリン染色されたビーズの調製に使用されたものと同様の手順で、ポリスチレン(PS)ビーズ(平均直径5.43μm、Bangs Laboratories, Inc.、カタログ番号PS06N/6667)を、3つのバクテリオクロリンで染色した。これらのバクテリオクロリンを、Taniguchi et al., 2008又はYang et al., 2011のいずれかに従って調整した。図6にこれら3つのバクテリオクロリンの構造とトルエン中の蛍光発光スペクトルを示す。
【0078】
実施例4
フローサイトメトリーによるバクテリオクロリンでドープされたビーズの分析
フローサイトメトリー分析を、実施例2に記載の方法と同様に行った。但し、LSRFORTESSA(商標)ブランドのフローサイトメーターを使用し、その励起源はUVレーザー(355nm)であり、分析のためのフィルターは表3に指定した通りであった。図7A~7Cは、表3に示すフィルターを使用して分析された、各バクテリオクロリンについて0, 0.25, 0.5, 1.0及び5.0μg/mLの各ドーピング溶液を使用した、3種のバクテリオクロリンの滴定を示す。図7中のシャープなピークは、これらビーズ内でヒドロポルフィリンのドーピングが均一であることを示す。
【0079】
【表3】
【0080】
ブランクのビーズは、前方光散乱及び側方光散乱に基づいて同定された。ゲーティングを適用して単一ビーズよりも低い散乱及び高い散乱の両方の事象を排除し、更なるデータの全てをこのゲーティングを用いて分析した。すべての実験において、ゲーティングされた3000個の事象が収集された。個々のバクテリオクロリンでドープされたビーズの測定に続いて、補償マトリックスを作成した(表4)。補償適用の前後の3つ全てのバクテリオクロリンの相互のドットプロットを、図8に示す。これらのデータは、わずか60nmで分離されたピーク発光を有する3つの波長範囲が狭い発光バクテリオクロリンが、通常の機器、光学系及びフィルターセットを用いたフローサイトメトリーによって容易に分離され、キャラクタリゼーションされ得ることを実証している。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例5
磁性ビーズのクロリンによる染色
2種のビーズを用意した:(1)ポリスチレン(PS)ビーズ:平均サイズ5.43μm、カタログ番号PS06N/6667、Bangs Laboratories);(2)ポリスチレン(PS)磁性粒子:平均サイズ5.21μm(カタログ番号PM-50-10、ロットAF01; Spherotech, Inc., Lake Forest, Illinois, USA)。色素ドープされたPSビーズ及びPS磁性粒子を、THF中の最大クロリン濃度1.0μg/ mLで、実施例1に記載の方法によって作製した。このPSビーズをクロリンSE197で染色し、この磁気PSビーズをクロリンSE357で染色した。このPS磁性粒子は2.5%w/vのストックとして供給される。ドーピング中の粒子/ビーズ濃度を等しくするために、適切なチューブ中で15.0μLのPSビーズ(10.2%w / vストック)及び60.0μLのPS磁性粒子(2.5%ストック)を別々に使用した。
1.7mLの微量遠心管に、0.05%のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤(Sigma-Aldrich、Inc.)、1.0μg/ mLのSE197でドープされたPSビーズ20.0μL、及び20.0μLのSE197でドープされたPSビーズ、及び20.0μLの5.0μg/ mL SE357でドープされたPS磁性粒子を含有する60.0μLの1xPBSを加えた。染色されていない磁気ビーズ(図9A)及びクロリン染色されたPS粒子と磁性粒子の混合物の両方の水1:15希釈液としての蛍光を測定した(図9B)。この混合物を入れた微量遠心管を3分間、磁気ラック(DynaMag(R)2、Life Technologies Corp., Thermo Fischer Scientific Corp., Waltham, Massachusetts, USAの一部)上に置いた。1000μLのピペットを用いて上清を除去し、水の1:15希釈物の蛍光を計測した(図9C)。磁気ラック上の微量遠心管に残っている磁性粒子に、0.05%TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するPBS(300μL)を加え、そのペレットを5/8速度×5パルスで「パルス」法を用いて渦巻状に撹拌した。これを上記磁気ラック上に3分間置いた。そして、渦巻状の撹拌工程、磁気ラック工程、上清除去工程、及び緩衝液添加工程を繰り返した。その後、ペレットを80μLの水で再懸濁し、5パルスで5/8速度で「パルス」法を用いて渦巻状に撹拌した。この混合物を水で1:15に希釈し、蛍光を計測した(図9D)。図9B図9Dに見られるように、磁気ラックを使用して2つのビーズ集団の明確な分離が得られた。これは、蛍光磁気ビーズを必要とするバイオアッセイに、ヒドロポルフィリンを効果的に使用できることを実証した。
【0083】
実施例6
クロリンがドープされた径がサブミクロンのPS粒子の調製
実施例1の記載に従い、但し、下記の変更を施して、クロリンSE420及び0.46μmのPS-COOHビーズ(カルボキシルポリスチレン粒子;0.46μm;5%(w/v);カタログ番号CP-05-10/AH02;;Spherotech)を用いて0.46μmのビーズを調製した。反応管を9,000×gで15分間遠心分離し、水洗浄容量を300μLではなく600μLとした。図10は、20, 40及び80μg/ mLのクロリンSE420の溶液から得たドープされた一連の0.46μmPSビーズを405nmで励起した蛍光発光を示す。ビーズは5%懸濁液から水で75倍に希釈した。
直径がより大きいポリスチレンビーズ(例えば、0.46μm及び5.4μmのビーズ)を、処理し、遠心分離を用いてビーズを未結合の試薬、溶媒及び緩衝液から分離して洗浄することができた。しかし、より小さな粒子のドーピング及び表面処理については、遠心分離はあまり有効ではなく、改質粒子を他の成分から分離するために、接線流濾過(TFF)のような他の分離方法が必要であった。
直径が0.11μm及び0.046μmのドープされた粒子を調製するために、MICROKROS(R)ブランドのTFFシステム及びフィルターを使用した(Spectrum Laboratories, Rancho Dominguez, California, USA)。0.11μm粒子については、750キロダルトン(kDa)の中空繊維フィルター(カタログ番号C02E750-10N、Spectrum Laboratories)を使用し、0.046μm粒子については300kDaの中空繊維フィルターを使用した(カタログ番号C02E300-05N、Spectrum Laboratories)。これらの繊維を、この繊維を、製造元の指示に従って、5.0mLのシリンジを用いて0.1%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するNCCLS水を用いて、3回の別サイクルで合計15mLで平衡化させた。
【0084】
0.11μmの粒子のクロリンドーピングは以下のようにして行った。5mLのポリプロピレンチューブに、462μLのNCCLS水、2.0%(v/v)のPluronic(R)F127ブランドの非イオン性洗剤231μL、0.11μmのPS-COOH 10%ビーズ(カタログ番号PC02N / 12634、Bangs Laboratories 、使用前によく再懸濁した)50μL、379μLのSE420クロリン染料(THF中、90.0μg/ mL)を加えた。THF中のクロリンSE420溶液を、ポリプロピレンチューブの内容物を渦巻状に撹拌しながら滴下して添加し、THF約33%の最終濃度にした。これを室温で15分間インキュベートし、光から遮断された70~80RPMの回転混合機で混合した。
この反応混合物を、0.1%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する44.88mLの水で希釈し、THFを0.74%に希釈した(中空繊維フィルターへの溶媒の影響を最小限にするために1%未満)。この750kDaの中空繊維フィルターは、0.1%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するNCCLS水で、5mLシリンジを用いて、合計15mLの3回の別サイクルで調整した。5mLシリンジを用いて、未反応の染料及び他の反応物をドープ粒子から除去して、チェックバルブを通る流れを制御した。これを100μL(残留物)になるまで継続した。この残留物を、0.1%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する5.0mLの水で4回洗浄し、100μLの残留物にこの水合計20.0mLを循環させた。更に、濾液シリンジに、0.1%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する500μLの水を加え、最も遠位の残留物シリンジを介した負圧バックフラッシュを用いて、この洗浄した残留物100μLを回収した。これを繰り返して約3.0mLの最終ドープ粒子(2.54×10 12粒子/ mLで0.166%粒子(w / v))を得た。このサンプルをNCCLS水で1:75に希釈して、蛍光分析した(図11)。
【0085】
280μLのNCCLS水、140μLの2.0%(v/v)Pluronic(R)F127ブランドの非イオン性界面活性剤、30μLの0.042μmPS 10%粒子(カタログ番号CXCPS02N /10602、Bangs Laboratories、使用前によく再懸濁した。)、及びTHF中のSE420 Chlorin色素溶液230μL(80, 40, 20μg/ mL)を、1.7mLのポリプロピレンチューブ中で組み合わせることによって、0.042μm粒子のクロリンドーピングを達成した。THFの最終濃度が約33%になるように、このポリプロピレンチューブの内容物を渦巻状に撹拌しながら、THF中のクロリンSE420溶液を滴下して添加した。これを室温で15分間インキュベートし、光から遮断された70~80RPMの回転混合機で混合した。
この反応混合物を、0.1%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する水34mLに希釈して、THFを0.74%に希釈した(中空繊維フィルターへの溶媒の影響を最小限にするために1%未満)。この300kDaの中空繊維フィルターは、0.1%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するNCCLS水で、5mLシリンジを用いて、合計15mLの3回の別サイクルで調整した。5mLシリンジを用いて、未反応の染料及び他の反応物をドープ粒子から除去して、チェックバルブを通る流れを制御した。これを100μL(残留物)になるまで継続した。この残留物を、0.1%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する5.0mLの水で4回洗浄し、100μLの残留物にこの水合計20.0mLを循環させた。更に、濾液シリンジに、0.1%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有する250μLの水を加え、最も遠位の残留物シリンジを介した負圧バックフラッシュを用いて、この洗浄した残留物100μLを回収した。これを繰り返して約1.0mLの最終ドープ粒子を得た。このサンプルをNCCLS水で1:75に希釈して、蛍光分析した(図12)。
【0086】
実施例7
マウス抗ヒトCD8及びマウス抗ヒトCD3 IgG抗体で被覆されたクロリンをドープした0.11μm径のPS粒子
実施例6に記載したように調製されたクロリンがドープされた直径0.11μmのPSビーズを、ヒト抗CD8抗体を標識するために使用した。750kDa中空繊維フィルターを、製造業者の説明書に従って、5mLシリンジを用いて3回の別々のサイクルを用いて計15mLについて平衡化した。この繊維を、製造元の指示に従って、5.0mLのシリンジを用いて0.0008%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するPBSを用いて、3回の別サイクルで合計15mLで平衡化させた。0.0008%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するPBSへの緩衝液交換を、新たに調製したSE420色素をドープした0.10μmのPS-COOHビーズ90.0μg/mLを用いて開始した。
新しい新鮮な5.0mLシリンジを使用し、チェックバルブポートを通して注入し、0.0008%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するPBSで4サイクル交換し、残留物100μLに合計合計20.0mLを循環させた。0.0008%(v/v)TWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含有するPBS500μLを濾液シリンジを用いて添加し、最も遠位の残留物シリンジを介して負圧バックフラッシュを用いて洗浄し、残留物100μLを回収した。この洗浄工程を2回繰り返して、約5mLのドープ粒子を得た(1.53×1012粒子/mLで0.1%粒子(w / v))。
【0087】
ドープ粒子5mLを4つの別々の1.7mL微量遠心管に等しく分割した(1微量遠心管あたり1.25mL)。この微量遠心管に、クローンUCHT-4マウス抗ヒト抗CD8 IgG(カタログ番号C366,9.4mg / mL;Leinco Technologies, Inc., St. Louis, Missouri, USA)の溶液を、0.0, 28.6, 143及び715μgのUCHT-4量(IgGの理論上の単層量x0.0, x0.2, x1.0及びx5.0に相当する。)で加えた。この微量遠心管を室温で70~80RPMで震動させ、4時間光から遮断し、次いで4℃で16~18時間放置した。各微量遠心管の反応物を125μLの10%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液の添加によりブロックし(最終濃度BSA1.0%)、この微量遠心管を室温で70~80RPMで再度震動させ、光から1時間遮断した。この微量遠心管の内容物を上記の中空繊維法を用いて精製したが、この繊維を1.0%BSA及び0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBSで平衡化し、サンプルを洗浄した。各サンプルの最終容量は約1.0mLであった。
マウス抗ヒトCD3で被覆されたナノ粒子を調製するために、CD8にしたのと同じ手順を用いたが、マウス抗ヒトCD3 IgG(クローンUCHT-1、Leinco)を同じコーティング濃度及び量で置換した(0. 0,28. 6,143及び715μg)。
図13Bは、1.0x単層抗CD3 IgGで被覆されたSE420直径0.11μmナノ粒子の3つの異なる希釈物(0, 1:10及び1:1)の、抗マウスIgG捕捉ビーズ(Bangs Laboratories、Inc.)に対する結合を示し、同じ抗体クローンの市販のFITC標識IgG(図13A;Bangs Quantum Simply Cellular Microspheres、製品番号814)と比較した。フローサイトメーターは、SE420でドープされたビーズのフローサイトメトリーのための実施例2の記載と同様に設定した。
【0088】
実施例8
プロテインG及び抗CD3 IgG抗体で被覆されたクロリンをドープした0.11μm径のPS粒子
この実施例では、実施例6のSE420クロリンドープ粒子(45μg/ mL)を使用した。但し、最初にIgGで受動的にコーティングする代わりに、500μgのプロテインG溶液(0.05%アジド;rec-Protein Gを含む10mg/mL溶液0.05mL;Life Technologiesカタログ番号003005)を含む微量遠心管に、クロリンをドープした粒子(0.0008%(v/v)のTWEEN(R)20ブランドのポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含むPBS中0.25%v/vの約1.0mL)を添加した。この微量遠心管を室温で70~80RPMで震動させ、4時間光から遮断し、次いで4℃で16~18時間放置した。被覆された粒子を、125μLの10%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液の添加によりブロックし(最終濃度BSA1.0%)、この微量遠心管を室温で70~80RPMで再度震動させ、光から1時間遮断した。この微量遠心管の内容物を上記の中空繊維法を用いて洗浄して、約1.0mLを得た。
最初に受動的にコーティングされた、プロテインGでコーティングされクロリンをドープした直径0.11μmのポリスチレン粒子の50μL分割量を、プロテインGと共にインキュベートし、次に0.024μgの抗CD3 IgG抗体とインキュベートした。これらを分析し(クローンUCHT-1、Leinco)、室温で30分間インキュベートし、次いで、0.5%BSAを含む1mLのPBSで2回洗浄した。図14は、前の実施例に記載した方法と同様のフローサイトメトリーによる分析を示す。Fc部分を介して抗体を配向させるために固定化されたプロテインGを用いることにより、有効な粒子コーティングが得られた。
【0089】
実施例9
アレイを作成するための複数のヒドロポルフィリンでドーピングされた粒子
実施例1に記載の方法を用いて、5.43μmのPSビーズをドーピングするために、クロリンSE197及びSE420を、それぞれ、0, 0.25, 0.5及び1.0μg/ mLの濃度で、及び互いに組み合わせて調製した。
図15は、405nmの励起を用いて0.25, 0.5及び1.0μg/ mL濃度の各色素をドープした粒子の懸濁液の蛍光を示す。これらは、各クロリンについて2つの明瞭かつ狭い蛍光発光ピークを示した。
図16は、SE197とSE420の9つの組み合わせのビーズの混合物(SE197/SE420: 0/0, 0/0.025, 0/0.25, 0.025/0, 0.25/0, 0.025/0.025, 0.025/0.25, 0.25/0.025, 0.25/0.25 μg/mL)のフローサイトメトリーを示す。異なる集団の分離は十分に明瞭であり、補償の必要性は最小限であり、このことは、これら又は同様に調製されたビーズを、アドレス可能なアレイ中の異なる集団の細胞をバーコードするために使用できることを示す。
【0090】
実施例10
蛍光エネルギー移動供与体及びヒドロポルフィリンエネルギー移動受容体で増強されたヒドロポルフィリンでドープされたビーズの調製
実施例1に記載の法を用いて、5.43μmのPSビーズに、クロリンSE211及びUV吸収フルオレンオリゴマーADS036FO (American Dye Source, Inc, Quebec, Canada)を組み込んだ。SE211は、THF中0, 40, 80又は160μg/ mL濃度のADS036FOを用いて1.0, 2.0及び4.0μg/ mLの濃度で調製された。図17は、355nm又は405nmで励起されたビーズ懸濁液の蛍光発光を示す。図18は、様々な量のオリゴマーを含む4.0μg/ mL SE211の蛍光強度を示す。80及び160μg/ mLのオリゴマーが存在すると、クロリンの発光は、355nmの励起で、SE211単独に対して3倍から4倍に増加した。これは、オリゴマーからクロリンへのエネルギー移動が起こったことを示す。
【0091】
実施例11
ヒドロポルフィリンダイアドでドープされた粒子
THF中のダイアドの20μg/ mL溶液を用いて、実施例1に記載の方法により、5.43μmのPS粒子にペリレン-クロリンダイアド(C-PMI13、Hu et al., 2016参照)を組み込んだ。図19にダイアドの構造を示す。図20に、異なる励起波長で励起されたダイアドでドープされたビーズの懸濁液の蛍光発光を示す。励起波長は355, 405, 488, 532, 561, 640nmであり、これらはマルチレーザフローサイトメータに使用される、BD LSRFortessa(R)(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)のような一般的なレーザ及び/又はレーザダイオードに対応する。ダイアドでドープされたビーズは全ての励起波長で678~679nmの蛍光発光を示し、マルチレーザー装置の較正ビーズとしての使用可能性を示した。
【0092】
実施例についての議論
ヒドロポルフィリンは、ポルフィリンに関連する複数の化合物内の一つのクラスであるが、コアのテトラピロール環系内の1又はそれ以上の結合が還元されている(例えば、Scheer et al., 1978を参照されたい。)。天然に存在し生物学的に活性なヒドロポルフィリンには、クロロフィルやバクテリオクロロフィルが含まれる。クロリン類及びバクテリオクロリン類は、構造的にクロロフィル及びバクテリオクロロフィルに関連するが、クロロフィル及びバクテリオクロロフィルとは、それぞれ1及び2の還元された結合の存在によって異なる。ヒドロポルフィリンは、しばしば2つの蛍光発光ピークを特徴とするポルフィリンと比較して、典型的に赤色~近赤外(NIR)スペクトル領域において単一の鋭い発光バンドを有し、ほとんどの場合、ポルフィリンよりもはるかに大きな蛍光発光強度を有する。
【0093】
本明細書では、ビーズにヒドロポルフィリン色素を組み込む方法が開示され、これはフローサイトメトリー及び他の診断アッセイに有用な光安定性ビーズを提供する。この方法は、内部色素凝集が明白に無い色素充填ビーズを提供し、2対数濃度範囲にわたって色素濃度と直線関係にある信号を提供する。染料が充填されたビーズは、有機溶媒中でキャラクタリゼーションされた際に、ヒドロポルフィリンによって示されたのと同じ大きなストークスシフト及び鮮明な狭い蛍光発光スペクトルを維持する。このような染料は、恐らくその限られたアクセシビリティのために、これまでポリマービーズに組み込まれていなかったと考えられる。本明細書に開示される堅牢な合成方法により、隣接する発光ピークを有する複数の色素を調製することができる。本明細書ではまた、励起のために一般的な紫色の(405nm)レーザーを使用して、現代のフローサイトメーターを用いて、150nmウィンドウ内の5つのチャネルで、5つのクロリン充填ポリスチレンビーズからの発光シグナルを同時に検出可能であることを示す。
【0094】
これらのヒドロポルフィリンビーズは、機器セットアップのための較正標準として、及びフローサイトメトリーで使用されるオーバーラッピング蛍光色素分子の「補償」又は数学的補正値を決定するための潜在的用途を有する。これらはまた、大きな有効なストークスシフトが、しばしば励起波長に近い、散乱又はビーズ自己蛍光からのバックグラウンドを最小にする用途において価値がある。さらに、複数の色素充填レベル及び/又は2又はそれ以上のヒドロポルフィリンをビーズ内で使用することは、フローサイトメーターにおけるマルチプレックスアッセイ検出のためのプラットフォームとして本発明の組成物を使用することを促す。
【0095】
予期外なことに、ヒドロポルフィリンのテトラヒドロフラン(THF)溶液は、色素のポリスチレン(PS)ビーズへの拡散のための迅速かつ効率的な媒体を提供することが判明した。ビーズ懸濁液中でTHFに対する水の比を徐々に増加することにより、ヒドロポルフィリンがビーズに捕捉される。THFの残量を除去するために洗浄した後、ビーズを位相差顕微鏡検査によって検査したところ、等価直径及び非修飾PSビーズに匹敵する最小限の凝集を有することが判明した。水性緩衝液中のヒドロポルフィリンで染色されたPSビーズの懸濁液は、THF中に溶解した同じヒドロポルフィリンのスペクトル上にほぼ重ね合わせることができる懸濁液の蛍光特性(例えば、鋭い発光バンド)を示した。PSビーズにヒドロポルフィリンを組み込むための他の方法を使用する試みは、不安定又は劣った結果をもたらした。例えば、徐々に溶媒を蒸発させる方法(Zhang et al., 2009を参照されたい。)による、ヒドロポルフィリンのビーズへの拡散のためのクロロホルム及びイソプロパノールの使用は、顕著なビーズ分解をもたらした。また、本発明の方法は、マルチプレックスアッセイ用の多重色素ビーズを調製するために記載された方法(米国特許第6,632,536号)よりも、より迅速で、より効果的で、より少ない工程で済む。
【0096】
本発明のビーズは、フローサイトメトリー実験において、(適切な発光フィルター及び一般的な紫色(405nm)レーザーによる励起で590nm~750nmの波長範囲で発光する5つのクロリンで)別々に染色されたビーズの混合物からのシャープな発光バンド及びシグナルを維持したことを実証した。
【0097】
本発明の代表的な有利な点には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
今日まで、殆どの較正標準及び多重ビーズアレイ(例えば、ローダミン、スクアライン、カルボシアニンなど)には従来の染料が使用されていた。このような色素は、典型的には広い発光プロファイルを有する(swhmが40~50nm又はそれ以上)。本発明によれば、本発明で使用するポルフィリン大環状化合物は、シャープで狭い発光ピークを有する(典型的には、クロリンについては15~20nm、バクテリオクロリンについては20~25nmである。)。一緒に使用すると、これらの色素のうちの2又はそれ以上は、従来の色素を用いた場合に可能であるよりも、単一の励起源からより高いレベルの多重化を可能とする。例えば、590nm~740nmの間で、5つのクロリンが、それらの間のスペクトル重複が最小限で、検出可能である。この範囲内では、従来3つの色素のみが、本発明の5つのクロリンよりもスペクトル重複が大きい状態で、分離可能であるにすぎない。
従来の色素に対するポルフィリン大環状分子の別の有利な点は、大きな有効ストークスシフト(励起波長と発光波長の差)である。従来の染料が20~30nmより大きいストークスシフトを有することはめったにない。一方、クロリンは、405nmで励起されると、590nm~750nmの間の発光が得られ、有効ストークスシフトは185nm~350nm又はそれ以上になる。これにより、より明瞭で信頼性の高い蛍光負対照信号及びより正確な正信号を提供するなど、ポリスチレンなどの他のビーズ又は粒子非色素成分からのバックグラウンドが低減される。
【0098】
参考文献
本開示で挙げられた全ての参考文献、即ち、全ての特許、特許出願及びその公開物、科学雑誌記事、及びデータベースエントリーは、それらが補完し、説明し、及び/又は本明細書で使用される方法、技術及び/又は組成物について根拠を提供し、教示する範囲において、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。参考文献の議論は、単にその著者の主張を要約することを意図している。いかなる参考文献(又はその一部)も関連する先行技術であると認められない。出願人は、引用された参考文献の正確性及び妥当性に挑戦する権利を留保する。
【0099】
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本発明の様々な詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更されてもよいことが理解されるであろう。さらに、前述の説明及び実施例は、例示のみを目的としたものであり、本発明を限定することを目的とするものではない
図1
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図3A
図3B
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図6A
図6B
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図9AB
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