(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】生物反応器組立体
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220304BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220304BHJP
C12N 5/00 20060101ALN20220304BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
C12N5/00
C12N1/00 A
(21)【出願番号】P 2019522858
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2017077389
(87)【国際公開番号】W WO2018077995
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】201611037205
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】サンカール・ガネーシュ・コラッパン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0160597(US,A1)
【文献】特表2008-513034(JP,A)
【文献】特表2014-506479(JP,A)
【文献】国際公開第2012/000502(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/113369(WO,A1)
【文献】特開2005-168384(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124505(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養バッグを保持するための複数のトレイ(30)と、
前記複数のトレイ(30)が横に並んで搭載される保持体(2)であって、生物反応器組立体の第1の側に第1の一連のトレイ
(31)と、前記第1の側の反対側の前記生物反応器組立体の第2の側に第2の一連のトレイ(32)とが形成され、前記保持体(2)は、前記第1の側と前記第2の側の間に配置されている、保持体(2)と、
前記第1の一連のトレイ(31)および前記第2の一連のトレイ(32)に動作可能に連結される、前記トレイを一緒に揺動させるための揺動機構(4)と、
相互作用ユニット(51、52)および/または制御ユニット(53)を保持するための保持領域(5)であって、前記保持領域(5)は、前記生物反応器組立体の前記第1の側および前記第2の側の中央の前記保持体(2)に配置される、保持領域(5)と、
を備える生物反応器組立体。
【請求項2】
前記揺動機構(4)が少なくとも1つのモータ(41)を備え、前記モータが、前記トレイ(30)が搭載される前記保持体(2)を移動または回転させることで前記トレイ(30)を揺動させるように配置構成される、請求項1に記載の生物反応器組立体。
【請求項3】
前記揺動機構(4)が、少なくとも1つのモータ(41)と、前記少なくとも1つのモータにそれぞれ動作可能に連結され、それによって前記トレイのうちの1つまたは複数を直接的に揺動させるようにそれぞれが駆動される複数の揺動ユニット(42)とを備える、請求項1に記載の生物反応器組立体。
【請求項4】
前記揺動機構(4)を制御するように配置構成される制御ユニット(53)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の生物反応器組立体。
【請求項5】
前記制御ユニット(53)が、複数の相互作用ユニット(51、52)から入力信号を受信し、出力信号を前記相互作用ユニット(51、52)へと送信するようにさらに配置構成される、請求項4に記載の生物反応器組立体。
【請求項6】
前記相互作用ユニット(51、52)が、前記トレイに置かれた細胞培養バッグに栄養物を供給するための供給ユニット(51)と、前記細胞培養バッグから廃棄物を除去するための廃棄ユニット(52)とを備え、前記供給ユニット(51)および前記廃棄ユニット(52)は、管を介して、栄養物を前記細胞培養バッグへと汲み上げると共に廃棄物を前記細胞培養バッグから汲み上げるための少なくとも1つのポンプ(54)によって駆動される、請求項5に記載の生物反応器組立体。
【請求項7】
前記トレイ(30)のうちの少なくとも1つが、前記揺動機構(4)から連結解除されるように構成される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の生物反応器組立体。
【請求項8】
前記トレイ(30)のうちの少なくとも1つが、前記生物反応器組立体(1)から取り外し可能であるように構成される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の生物反応器組立体。
【請求項9】
前記トレイ(30)を前記生物反応器組立体(1)から取り外すための取り外し装置(6)をさらに備える、請求項
8に記載の生物反応器組立体。
【請求項10】
前記保持体(2)および前記トレイ(30)が前記生物反応器組立体(1)内に層(33)を形成し、
前記生物反応器組立体(1)が少なくとも1つのさらなるこのような層(34)を備える、請求項1から
9のいずれか一項に記載の生物反応器組立体。
【請求項11】
前記複数のトレイが、一続きの揺動トレイを形成するために縁と縁とが結合される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の生物反応器組立体。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の生物反応器組立体(1)を少なくとも1つ備え、
前記生物反応器組立体の動作を制御するための制御ユニット(53)と、
前記細胞培養バッグへの栄養物の供給を提供するための供給ユニット(51)、および、前記細胞培養バッグから廃棄物を除去するための廃棄ユニット(52)を備える相互作用ユニット(51、52)であって、前記供給ユニットおよび前記廃棄ユニットは、管を介してそれぞれの細胞培養バッグに連結されるように配置構成され、前記相互作用ユニットのそれぞれは少なくとも1つのポンプによって駆動される、相互作用ユニット(51、52)と、
入力をシステムに提供するための入力部(55)と、
出力をシステムから提供するための出力部(56)と
を備え、
前記制御ユニットが、前記入力部(55)と、前記揺動機構と、前記相互作用ユニットのそれぞれと、前記出力部(56)とに動作可能に連結され、前記制御ユニットが、前記揺動機構および前記相互作用ユニットの動作を制御するように、および、出力信号を前記出力部(56)へと提供するように構成される、生物反応器システム(100)。
【請求項13】
前記制御ユニット(53)が、前記細胞培養バッグの少なくとも1つの性質に関するデータを受信するように構成され、任意選択で、前記データを保存して前記出力部(56)へと送信するように構成される、請求項
12に記載の生物反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞製造のための生物反応器組立体に関する。本発明は、少なくとも1つのこのような生物反応器組立体を備える生物反応器システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞試料の培養のための生物反応器の使用は、例えば米国特許出願公開第2007/0269888号(Houtzagerら)および米国特許第6190913号(Singh)を通じて、当技術分野でよく知られている。一部の実施形態では、大きなバッチを、何リットルもの流体容量を持つ発酵容器において成長させるが、多くの場合では、数リットル以下の個々のバッグ内にいくつかのより小さい試料を有することがより望まれる。それぞれのバッグは、栄養物へのアクセスと、廃棄物の除去と、栄養物および空気を細胞試料と混合させるために攪拌または揺動を通じて運動させることとを概して必要とする。
【0003】
前述の米国特許出願公開第2007/0269888号(Houtzagerら)の文献は、反応器フレームに搭載される個々のバッグ内に複数の細胞試料を備えるこのような生物反応器を開示している。バッグは、バッグを揺動させるために協働するリンクのシステムを通じて連結される個々のトレイ内で維持される。
【0004】
公知の生物反応器に関連する1つの問題は、生物反応器が所望の細胞培養を達成するために大量のバッグを十分な監視および処置の下で取り扱うことが概してできないこと、ならびに、生物反応器が大きな空間を占めることである。そのため、改良された生物反応器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2007/0269888号
【文献】米国特許第6190913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述した問題を排除すること、または、少なくとも最小限にすることである。本発明者は、一連のトレイが保持体と連結して配置される生物反応器を考案することで、これらの問題に対処している。それによって、多数の細胞培養バッグが、空間効率の良い方法で同時に培養され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、揺動機構は、少なくとも1つのモータを備え、そのモータは、保持体を回転または移動させることでトレイを揺動させるように配置される。それによって、トレイは、単純で効率的な方法で揺動でき、細胞の培養を容易にするために必要な揺動を発生させる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、揺動機構は、少なくとも1つのモータと、前記少なくとも1つのモータに動作可能に連結され、それぞれがトレイと連結して配置される複数の揺動ユニットとを備え、揺動機構は、それぞれの揺動ユニットが前記トレイのうちの1つまたは複数を直接的に揺動させるように、揺動運動を作り出すためのモータによって駆動されるそれぞれの揺動ユニットによってトレイを揺動させるように構成される。それによって、保持体は不動のままにすることができ、それぞれのトレイは個々に揺動させることができ、それぞれのトレイの揺動を、トレイに置かれた特定の細胞培養バッグの要件に基づいて決定させることができる。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、組立体は、揺動機構を制御するように配置構成され、複数の相互作用ユニットから入力信号を受信し、出力信号を前記相互作用ユニットへと送信するように好ましくは配置構成される制御ユニットをさらに備える。相互作用ユニットは、トレイに置かれた細胞培養バッグに栄養物を供給するための供給ユニットと、細胞培養バッグから廃棄物を除去するための廃棄ユニットとを備えてもよく、供給ユニットおよび廃棄ユニットは、管を介して、栄養物を細胞培養バッグへと汲み上げると共に廃棄物を細胞培養バッグから汲み上げるための少なくとも1つのポンプによって駆動される。それによって、トレイ内の細胞培養バッグには栄養物が供給でき、廃棄物を除去させることができ、この供給および除去は、制御ユニットによって制御でき、トレイの揺動も制御ユニットによって制御できる。これにより、生物反応器組立体における細胞の培養を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、生物反応器組立体は、相互作用ユニットおよび/または制御ユニットを保持するための保持領域をさらに備え、前記保持領域は保持体内に配置される。それによって、相互作用ユニットは、細胞培養バッグに接近して保持され、生物反応器組立体に必要とされる空間をさらに縮小することができる。好ましくは、制御ユニットは、細胞培養バッグの内容物を監視でき、前記内容物に関するデータを、生物反応器組立体における現場または遠隔のいずれかにおいて、保存すること、および/または、使用者に送信することもできる。
【0011】
本発明のなおも別の態様によれば、トレイのうちの少なくとも1つは取り外し可能に配置される。それによって、トレイを生物反応器組立体から連結解除させることができ、細胞培養バッグをさらに取り扱うために、操作者または自動化された処理システムによってトレイにアクセスすることができる。好ましくは、取り外し装置が、連結解除を実施し、トレイを所定の場所まで送達するために提供されて、人の操作者がすべてのトレイに手作業でアクセスするのが難しい大形の生物反応器組立体内のトレイの取り扱いを容易にする。当然ながら、取り外し可能な配置構成は、新たな細胞培養バッグの追加と、生物反応器組立体への細胞培養バッグの連結とを可能にするようにも供し、そのためトレイの内容物の交換が容易にされる。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、トレイのうちの少なくとも1つは揺動機構から連結解除されるように構成される。それによって、個々のトレイの揺動を停止することができ、取り外し/交換または他の取り扱い、監視、もしくは試験を可能にする一方で、残っているトレイには揺動を続けさせることができる。これは、生物反応器組立体の取り外し、交換、装填、または空にすることの間であっても培養を続けさせることができる点において特に有利であり、細胞培養バッグ内の細胞試料のための培養時間を短縮させるように供する。
【0013】
本発明のなおも別の態様によれば、生物反応器組立体は、第1の一連のトレイの反対において保持体上に搭載され、揺動機構に動作可能に連結されてもいる第2の一連のトレイをさらに備える。好ましくは、保持体およびトレイは生物反応器組立体内に層を形成し、生物反応器組立体は少なくとも1つのさらなるこのような層を備える。それによって、トレイの数、ひいては、同時に培養され得る細胞培養バッグの数が、さらに増加する。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、複数のトレイは、一続きの揺動トレイを形成するために縁と縁とが結合される。それによって、生物反応器組立体は、増加した空間効率を伴って作られ、培養のために多数の細胞培養バッグをなおも確実に保持できる。
【0015】
本発明は、前述したような生物反応器組立体を少なくとも1つ有し、生物反応器組立体の動作を制御するための制御ユニットと、細胞培養バッグへの栄養物の供給を提供するための供給ユニット、および細胞培養バッグから廃棄物を除去するための廃棄ユニットを備える相互作用ユニットであって、前記供給ユニットおよび前記廃棄ユニットは、管を介してそれぞれの細胞培養バッグに連結され、相互作用ユニットのそれぞれは少なくとも1つのポンプによって駆動される、相互作用ユニットと、入力をシステムに提供するための入力部と、出力を前記システムから提供するための出力部とを備え、制御ユニットは、入力部と、揺動機構と、相互作用ユニットのそれぞれと、出力部とに動作可能に連結され、制御ユニットは、揺動機構および相互作用ユニットの動作を制御するように、および、出力信号を出力部へと提供するように構成される、添付の独立請求項に記載の生物反応器システムも含む。
【0016】
本発明の一態様によれば、制御ユニットは、細胞培養バッグの少なくとも1つの性質に関するデータを受信するように構成され、任意選択で、前記データを保存して前記出力部へと送信するように構成される。それによって、細胞培養バッグ内の細胞の培養を監視することができ、それらに関するデータを、保存、外部ユニットへの表示および/もしくは送信、または、システムの使用者への提示をすることができる。
【0017】
本発明の多くの追加の便益および利点は、以下の詳細な記載を考慮することで、当業者には容易に明らかとなる。
【0018】
以下、本発明を、添付の図面を参照してより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による生物反応器組立体の好ましい実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明による少なくとも1つの生物反応器組立体を備える生物反応器システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の好ましい実施形態による生物反応器組立体1を開示している。生物反応器組立体は、生物反応器組立体1の第1の端11から第2の端12へと延び、第1の一連のトレイ31が沿って配置される保持体2を備える。第1の一連のトレイ31は、保持体2に沿って並んで配置されると共にそれぞれが保持体2に動作可能に連結される複数の個々のトレイ30を備える。これは、トレイ30が一連を形成するために平行に配置されることを意味する。生物反応器組立体1に同じく含まれるのは、好ましくは、トレイを一緒に揺動させるために、保持体2に沿って、もしくは、生物反応器組立体1の一端において、または代替で、生物反応器組立体1内のもしくはそこにおける別の適切な場所において配置され得る少なくとも1つのモータ41の形態での、揺動機構4である。
【0021】
トレイ30に置かれた細胞培養バッグ(図示せず)の内容物が、栄養物の分配、廃棄物の除去を向上させて、細胞の増速を助けるために、移動を維持したままとなるように、揺動機構4は、トレイ30のそれぞれに動作可能に連結され、それぞれのトレイ30のための揺動運動を発生させるように配置構成される。揺動機構4は、本発明の特定の実施形態に適しているものに依存して、保持体2を通じて、または、それぞれのトレイ30に直接的に、連結され得る。
【0022】
揺動機構4が保持体2を通じて連結される場合、トレイは、保持体を時計回り方向および反時計回り方向に交互に回転させることで、揺動され得る。代替で、保持体2は、側方から側方へと移動または揺動され得る。揺動機構4は、保持体2の一端にクランクを備えてもよく、クランクは、保持体2を前後に回転させてトレイ30を保持体上で一緒に揺動させるために、モータ41によって駆動される。
【0023】
揺動機構4がそれぞれのトレイ30に個々に連結される場合、揺動機構4は、前記少なくとも1つのモータに動作可能に連結される複数の揺動ユニット42(図示せず)を備えてもよく、それぞれの揺動ユニット42はトレイと連結して配置され、揺動機構は、揺動運動を作り出すために、モータによって駆動されるそれぞれの揺動ユニット42によってトレイを揺動させるように構成され得る。したがって、揺動機構4は、それぞれの揺動ユニットが前記トレイのうちの1つまたは複数を直接的に揺動させるために駆動されるように、揺動ユニット42に連結される。揺動機構4は共通のシャフト上に複数のカムを備えてもよく、カムおよびシャフトは、トレイ30のそれぞれを個々に揺動させるためにモータ41によって駆動される。
【0024】
トレイ30のために発生される揺動運動は、好ましくは、枢動点の周りでの角度運動または四節リンク機構の運動である。
【0025】
代替の実施形態では、個々のトレイ30は、複数の細胞培養バッグを保持できる一続きの揺動トレイを形成するために縁と縁とが結合され得る。一続きの揺動トレイは、個々のトレイ30に同様に搭載され、本質的に同じ方法で揺動されるが、複数の揺動ユニット42を必要としないことになる。
【0026】
好ましい実施形態では、第2の一連のトレイ32が、前述した第1の一連のトレイ31と本質的に同じ分配で保持体2に沿って同じく配置される。一緒になって、第1の一連のトレイ31および第2の一連のトレイ32ならびに保持体2は、生物反応器組立体1が立つ床の上方の実質的に同じ高さにそれぞれの個々のトレイ30があるトレイの層33を形成する。揺動機構4は、トレイ30がどの一連に属するかに関係なく、それぞれのトレイ30に同じ方法で好ましくは連結される。
【0027】
したがって、揺動機構4は、少なくとも1つのモータと、それぞれのトレイ30と連結して置かれる個々の揺動ユニット42、または、保持体2のための揺動装置のいずれかとを好ましくは備え、揺動装置は、保持体2の回転移動もしくは揺動移動を作り出すために配置構成される。揺動機構4は、モータにトレイ30の揺動運動を駆動させるために、モータと揺動ユニット42または揺動装置との間に連結部も備える。
【0028】
利用可能なトレイの数をさらに増加させるために、少なくとも1つであるが好ましくは2つまたはそれ以上のトレイのさらなる層34が、生物反応器組立体1内に好ましくは設けられる。この方法では、複数の層がある生物反応器組立体1が作り出される。それによって、多数のトレイ30を非常に空間効率の良い方法で提供でき、非常に多数の細胞培養バッグの培養を同時に可能にする。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの保管領域5が、保持体2と連結して設けられ、トレイ30内の細胞培養バッグのために働きその細胞培養バッグを監視する少なくとも1つであるが好ましくは複数の相互作用ユニットを保持するように構成される。保管領域5は、好ましくは不動の棚5の形態になっている。これらの相互作用ユニットは、概してMeidaの形態での栄養物、空気混合物(air mixout)(酸素、CO2、N2)の供給を保持するように配置構成される供給ユニットと、廃棄物を細胞培養バッグから受け入れるように配置構成される廃棄ユニットとを備える。供給ユニットと廃棄ユニットは、保持体2に沿って延びると共にそれぞれのトレイへと延びる管を介してトレイ30内のそれぞれの細胞培養バッグへと好ましくは連結され、その管は、細胞培養バッグと、栄養物を細胞培養バッグへと汲み上げ、廃棄物を細胞培養バッグから汲み上げる少なくとも1つのポンプ54とに容易に連結するためのコネクタまで続く。
【0030】
相互作用ユニットは、生物反応器組立体1に置かれたそれぞれの種類の相互作用ユニットのための1つの大きなユニットを備えることができるが、それぞれの層33、34上のトレイ30における細胞培養バッグへと容易にアクセスするために、それぞれの保持体21、22と連結しているそれぞれの層33、34に搭載されたそれぞれの種類の複数の相互作用ユニットを任意選択で備えてもよい。ポンプ54の数は、これに応じて変わってもよい。
【0031】
相互作用ユニットとしては、トレイ30内の細胞培養バッグのうちの少なくとも1つの性質を監視するように配置構成される少なくとも1つの制御ユニット53も含まれる。その性質は、細胞培養バッグ内の物質の濃度もしくは量、栄養物の供給速度もしくは廃棄物の除去速度、細胞培養バッグの温度、または、細胞培養バッグ内の細胞の培養と関連する任意の他の性質であり得る。制御ユニット53はまた、それぞれの細胞培養バッグに動作可能に連結され、前記性質に対応する回収されたデータを保存および/または処理してもよい。データは、生物反応器組立体1において、または、別のユニットにおいて遠隔で、表示されてもよく、また、制御ユニットまたは人の操作者から入力を受け付けるように、および、その入力に応じて生物反応器組立体1の動作を変更するように構成されてもよい。制御ユニット53は、供給ユニット51、廃棄ユニット52、およびポンプ54などの他の相互作用ユニットのこれらのユニットとの間の動作を制御するように構成されてもよい。
【0032】
トレイ30は生物反応器組立体1から取り外し可能となるように好ましくは配置構成され、そのため個々のトレイ30は、保持体2から連結解除でき、生物反応器組立体1から取り出すことができる。この取り外しは、人の操作者によって行われ得るが、細胞培養バッグから相互作用ユニットを連結解除すると共に保持体2からトレイ30を連結解除するように供するロボットまたは同様物の形態で取り外し装置6によって好ましくは自動化および実施される。そのため、トレイ30は細胞培養バッグの取り外しのために、および/または、生物反応器組立体1への再挿入の前のトレイ30における新たな細胞培養バッグの配置のために、人の操作者または自動システムのいずれかである、所望の場所へと持って行かれ得る。好ましくは、揺動機構は、それぞれのトレイ30から個々に連結解除でき、そのため、あるトレイ30が取り外されて再挿入される間、生物反応器組立体内の残りのトレイ30は揺動を続けることができる。
【0033】
トレイ30は、スライド機構、係止機構、または、トレイ30を保持体2と堅固に保持できる他の機構など、任意の適切な連結部によって、直接的に、または、前述したように揺動ユニット42を介してのいずれかで、保持体2に搭載できる。
【0034】
生物反応器組立体1は、
図2に概略的に示しているように、前述した相互作用ユニット、つまり、供給ユニット51、廃棄ユニット52、および制御ユニット53と共に、生物反応器システム100を形成する。制御ユニット53は、揺動機構4およびトレイ30の取り外しを制御するために、生物反応器組立体1と相互作用するが、供給ユニット51、廃棄ユニット52、および、例えば空気混合ユニットなどの任意のさらに設けられるユニットとも相互作用するように構成されている。入力部55が、入力データを制御ユニット53へと提供するために設けられ、出力データを制御ユニット53から受信し、そのようなデータを送信または表示するために設けられている出力部56も設けられている。制御ユニットは、データを保存および/もしくは処理するように構成されてもよく、または代替で、このような処理および保存は、データを出力部56から受信するように構成される遠隔ユニットにおいて実施されてもよい。入力部55が、操作者または別体の制御システムが入力信号を提供するために制御ユニット53と相互作用するのに適する任意の装置であってもよい。したがって、入力部55は、コンピュータ、キーボード、コンピュータ画面、または任意の他の適切な装置であり得る。同様に、出力部56は、表示装置もしくはコンピュータの形態であり得るか、または、単に信号をシステム100から送信するための送信装置の形態であり得る。入力部55および/または出力部56が制御ユニット53と一体にされ得ることにも、留意されたい。
【0035】
生物反応器組立体1および生物反応器システム100のための動作の一実施形態または適切な様態に関連して前述した任意の特徴は、このような組み合わせが本明細書において不適切であると明確に述べられていない限り、本発明の他の特徴と自由に組み合わせられ得ることに、留意されたい。
【符号の説明】
【0036】
1 生物反応器組立体
2 保持体
4 揺動機構
5 保管領域、棚
6 取り外し装置
11 第1の端
12 第2の端
21、22 保持体
30 トレイ
31 第1の一連のトレイ
32 第2の一連のトレイ
33 トレイの層
34 トレイのさらなる層
41 モータ
42 揺動ユニット
51 供給ユニット
52 廃棄ユニット
53 制御ユニット
54 ポンプ
55 入力部
56 出力部
100 生物反応器システム