(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】炭化水素を熱分解するための管および装置
(51)【国際特許分類】
C10G 9/36 20060101AFI20220304BHJP
C10G 9/20 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C10G9/36
C10G9/20
(21)【出願番号】P 2019554790
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2018058615
(87)【国際公開番号】W WO2018185167
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】102017003409.5
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511093199
【氏名又は名称】シュミット ウント クレメンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schmidt + Clemens GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kaiserau 2, D-51779 Lindlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディートリンデ ヤコビ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン アレクサンダー ハイラント
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ディートマー ヴァイガント
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-199876(JP,A)
【文献】特表2004-536268(JP,A)
【文献】特表2005-533917(JP,A)
【文献】特表2002-504170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される混合物が外側から加熱される管を通じて案内され、蒸気の存在下で炭化水素を熱分解するための管
を製造する方法であって、
該方法では、
a.第1のステップにおいて、平滑管の貫通面積に対応する管(1)の貫通面積を等価直径
【数1】
と定義し、
b.第2のステップにおいて、溝の深さTT(mm)を決定し、
c.第3のステップにおいて、溝底部の円弧の半径r
2
を決定し、
d.第4のステップにおいて、前記管(1)の内面に溝(2)を作り、以下のような管(1)を製造し、
・前記管(1)が、長手方向軸線(A)に沿って延びていて、前記管(1)の内面に加工された、前記長手方向軸線(A)を中心として螺旋状に前記内面に沿って延びる個数N
Tの溝(2)を有していて、
・前記溝(2)が加工された前記内面が、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、直径Diおよび半径r
1=Di/2を有していて、
・前記溝(2)が、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、その溝底部(4)においてそれぞれ円弧の形状を有していて、該円弧が半径r
2を有しており、
前記溝(2)が、それぞれ溝深さTTを有していて、該溝深さTTは、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、前記内面上にあり、中心点が前記長手方向軸線(A)上にある、前記直径Diの円と、前記溝(2)の前記溝底部(4)の、前記長手方向軸線(A)から最も離れた点との間の最小の間隔にそれぞれ相当する、炭化水素を熱分解するための管であって、
等価直径
【数2】
の数値
【数3】
と、前記溝(2)の前記個数N
Tと、前記溝(2)のmm単位で測定された前記溝深さTTの数値|TT|とが、関係式
【数4】
、ただし定数
C1=1946.066
C2=302.378
C3=-2.178
C4=266.002
C5=1.954
C6=50.495
C7=-2.004
C8=79.732
C9=-1.041
-0.2≧P1≧-0.3
310≦P2≦315
200≦P3≦1500
を満たし、
ここで、同じ等価直径
【数5】
を備えた管の内面に最大限に加工可能な、溝深さTT=1.3mmを備えた溝の基準数N
refに対する、前記管の前記溝N
Tの割合を百分率で表す溝密度VDが、以下の関係式:
VD=N
T/N
ref*100
から得られ、かつ前記基準数N
refが、関係式
【数6】
を満たす最大の自然数であり、ここで、
【数7-1】
【数7-2】
であり、これに対するr
Nrefが存在し、該r
Nrefは、上述の関係式により求められた、
【数8】
に対する値を用いて、以下の関係式を満たし、したがって
【数9】
は同様に、
【数10-1】
【数10-2】
であり、ここで付帯条件
【数11】
を犯すことはなく、等価直径
【数12】
は、関係式
【数13】
から得られることを特徴とする、炭化水素を熱分解するための管
を製造する方法。
【請求項2】
供給される混合物が外側から加熱された管を通じて案内され、蒸気の存在下で炭化水素を熱分解する管
を製造する方法であって、
該方法では、
a.第1のステップにおいて、平滑管の貫通面積に対応する管(1)の貫通面積を等価直径
【数14】
と定義し、
b.第2のステップにおいて、溝の深さTT(mm)を決定し、
c.第3のステップにおいて、溝底部の円弧の半径r
2
を決定し、
d.第4のステップにおいて、前記管(1)の内面に溝(2)を作り、以下のような管(1)を製造し、
・前記管(1)が、長手方向軸線(A)に沿って延びていて、前記管(1)の内面に加工された、前記長手方向軸線(A)を中心として螺旋状に前記内面に沿って延びる個数N
Tの溝(2)を有していて、
・前記溝(2)が加工された前記内面が、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、直径Diおよび半径r
1=Di/2を有していて、
・前記溝(2)が、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、その溝底部(4)においてそれぞれ円弧の形状を有していて、該円弧が半径r
2を有しており、
前記溝(2)が、それぞれ溝深さTTを有していて、該溝深さTTは、前記長手方向軸線(A)に対して垂直な横断面において、前記内面上にあり、中心点が前記長手方向軸線(A)上にある、前記直径Diの円と、前記溝(2)の前記溝底部(4)の、前記長手方向軸線(A)から最も離れた点との間の最小の間隔にそれぞれ相当する、炭化水素を熱分解するための管であって、
等価直径
【数15】
の数値
【数16】
と、前記溝(2)の個数N
Tと、前記溝(2)のmm単位で測定された溝深さTTの数値|TT|とが、関係式
【数17】
、ただし定数
C1=1946.066
C2=302.378
C3=-2.178
C4=266.002
C5=1.954
C6=50.495
C7=-2.004
C8=79.732
C9=-1.041
C10=0.04631
C11=-0.26550
-0.2≧P1≧-0.3
310≦P2≦315
200≦P3≦1500
を満たし、
同じ等価直径
【数18】
を備えた管の内面に最大限に加工可能な、TT=1.3mmの溝深さを備える溝の基準数N
refに対する、前記管の前記溝N
Tの割合を百分率で記述する溝密度VDが、以下の関係式:
VD=N
T/N
ref*100
から得られ、かつ前記基準数N
refが、関係式
【数19】
を満たす最大の自然数であり、ここで、
【数20】
であり、これに対するr
Nrefが存在し、該r
Nrefは、上述の関係式により求められた
【数21】
に対する値を用いて、以下の関係式を満たし、したがって
【数22】
は同様に
【数23-1】
【数23-2】
であり、ここで付帯条件
【数24】
を犯すことはなく、前記等価直径
【数25】
は、関係式
【数26】
から得られることを特徴とする、炭化水素を熱分解するための管
を製造する方法。
【請求項3】
前記管の前記内面が円筒状であり、該円筒状の内面に前記溝が加工されるので、前記溝の間に、円筒の部分を形成する前記内面の部分が残っている、請求項1または2記載の管
を製造する方法。
【請求項4】
前記長手方向軸線に対して垂直な横断面において、前記内面の、2つの溝の間に配置された部分により占められる、前記内面円上の円弧セグメントが、前記内面のこの部分に隣接する溝のうちの少なくとも1つの溝の溝開口により占められる、前記内面円上の円弧セグメントの1%よりも大きい、請求項1から3までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項5】
前記溝(2)が加工された前記内面の前記直径Diが、15mm~280mmの範囲にある、請求項1から4までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項6】
前記溝深さTTが、0.1mm~10mmの範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項7】
前記溝(2)の個数N
Tが、1%~347%の範囲にある溝密度をもたらす、請求項1から6までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項8】
前記溝(2)が、前記長手方向軸線(A)に関して20°~40°、好適には22.5°~32.5°の角度で延びている、請求項1から7までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項9】
前記管が、遠心鋳造管であるか、または遠心鋳造管への溝の加工により遠心鋳造管から製造されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【請求項10】
前記管が、
0.05%~0.6%の炭素、
20%~50%のクロム、
5%~40%の鉄、
2%~6%のアルミニウム、
2%までのケイ素、
2%までのマンガン、
1.5%までのニオブ、
1.5%までのタンタル、
6.0%までのタングステン、
1.0%までのチタン、
1.0%までのジルコニウム、
0.5%までのイットリウム、
0.5%までのセリウム、
0.5%までのモリブデン、
0.1%までの窒素、
および残りの溶融による不純物を含むニッケル
から成る、高い酸化耐性、浸炭耐性、クリープ強度およびクリープ耐性を備えたニッケル-クロム-鉄-合金を有していて、特にこのような合金から成っている、請求項1から9までのいずれか1項記載の管
を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される混合物が外側から加熱される管を通じて案内され、蒸気の存在下で炭化水素を熱分解するための管に関する。さらに本発明は、炭化水素を熱分解するための装置に関する。
【0002】
炭化水素(石油誘導体)の高温熱分解のためには、管状炉が有効であることが実証されている。管状炉では、炭化水素/水蒸気-混合物が750℃を超える温度で、高い酸化耐性もしくは酸化被膜耐性および高い浸炭耐性を備えた、耐熱性のニッケル-クロム-鉄-合金から成る、個別またはメアンダ状に配置された管(クラッキングコイル管)から成る列を通って案内される。コイル管は、鉛直方向または水平方向に延びる直線状の管区分から成っていて、これらの管区分は、U字形の管湾曲部を介して互いに結合されているか、または互いに平行に配置されている。コイル管は、通常、側壁バーナおよび/または底部バーナにより加熱され、したがってバーナに向けられたいわゆるサニーサイド(Sonnenseite)と、サニーサイドに対して90°だけずらされた、つまり管列の方向に延びるいわゆるダークサイド(Schattenseite)を有している。この場合、平均管壁温度(TMT)は、部分的に1000℃を超える。
【0003】
クラッキング管の寿命は、管材料のクリープ耐性および浸炭耐性ならびに炭化速度に著しく依存する。炭化速度にとって、つまり管内壁における炭素堆積(熱分解コークス)の層の増大にとって重要であるのは、使用される炭化水素の種類の他に、内壁の領域における分解ガス温度と、いわゆる分解度(Crackschaerfe)とであり、その背後にシステム圧の影響およびエチレン収量のための管システム内における滞留時間が潜んでいる。分解度は、分解ガスの平均流出温度(たとえば850℃)に基づいて生じる。管内壁の近傍でこの温度を超えてガス温度が高ければ高いほど、分解コークスの層がより強く増大する。この分解コークスの絶縁作用は、管温度をさらに上昇させる。管材料として使用される、0.4%の炭素、25%以上のクロム、20%以上のニッケル、たとえば35%のクロム、45%のニッケルおよびたとえば1%のニオブを有するニッケル-クロム-鉄-合金が高い浸炭耐性を有しているにもかかわらず、炭素は、酸化層の空隙箇所において管壁内に拡散し、この管壁において著しい浸炭をもたらす。この浸炭は、0.5mm~3mmの壁深度において1%~3%の炭素含有量に及ぶ。このことは、特に炉の始動および停止時の熱的な変更負荷時の亀裂形成の危険を伴う管材料の著しい脆化に関連する。
【0004】
管内壁における炭素堆積(炭化)を抑えるために、熱分解運転を時折中断し、熱分解コークスを蒸気/空気混合物により燃焼させることが必要である。このことは、36時間までの運転の中断を必要とし、したがって方法の経済性を著しく損なう。
【0005】
英国特許出願公開第969796号明細書および欧州特許出願公開第1136541号明細書からも、内側リブを備えたクラッキング管の使用が公知である。このような内側リブは、確かに数パーセント、たとえば10%だけ大きな内面と、ひいては改善された熱伝達とを引き起こす。しかし、内側リブは、拡大された管内面における摩擦によって、平滑管に比べて著しく高められた圧力損失の欠点にも結びついている。比較的高い圧力損失は、比較的高いシステム圧を要求し、これにより、強制的に滞留時間が変化し、収率を悪化させる。さらに、炭素およびクロムの高い含有量を有する公知の管材料はもはや冷間変形加工、たとえば冷間延伸によって溝をつけることができない。この管材料は、その変形性が耐熱性が増すにつれて著しく減じられるという欠点を有している。このことは、たとえば1050℃までの、エチレン収率に関して所望の高い管壁温度は、遠心鋳造管の使用を要求することにつながる。しかし遠心鋳造管は、円筒形の壁部しか製造することができないので、内側管を製造するために、特別な賦形法、たとえば電解除去加工または賦形溶接法が必要である。
【0006】
最終的に米国特許第5950718号明細書からは傾斜角の全スペクトルと、内側リブの間隔とが公知であるが、リブの性質について考慮していない。
【0007】
欧州特許第1525289号明細書からは、炭化水素を熱分解するためのリブ付き管が公知である。このリブ付き管は、管軸線に関して傾斜させられた螺旋状に延びる内側リブを有している。
【0008】
国際公開第2010/043375号からは、高い酸化耐性および浸炭耐性、クリープ強度およびクリープ耐性を備えた、0.4%~0.6%の炭素、28%~33%のクロム、15%~25%の鉄、2%~6%のアルミニウム、2%までのケイ素、2%までのマンガン、1.5%までのニオブ、1.5%までのタンタル、1.0%までのタングステン、1.0%までのチタン、1.0%までのジルコニウム、0.5%までのイットリウム、0.5%までのセリウム、0.5%までのモリブデン、0.1%までの窒素、残りの溶融による不純物を含むニッケルから成る、ニッケル-クロム-鉄合金が公知である。
【0009】
この背景から、本発明の根底を成す課題は、外側から加熱された管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善することにある。
【0010】
この課題は、請求項1,2,9および10に記載の対象により解決される。有利な実施形態は、従属請求項と、以下の説明に記載されている。
【0011】
請求項1の上位概念部に記載の特徴を備える管では、管を特徴付ける特徴、すなわち、
・管の内面に加工された、長手方向軸線を中心として螺旋状に内面に沿って延びる溝の個数NT、
・長手方向軸線に対して垂直な横断面における、溝が加工された内面の直径、
・長手方向軸線に対して垂直な横断面において、その溝底部においてそれぞれ円弧の形状を有する溝の溝底部の半径r2および
・長手方向軸線に対して垂直な横断面において、内面上にあり、その中心点が長手方向軸線上にある、直径Diの円と、溝の溝底部の、長手方向軸線から最も離れた点との間の最小の間隔にそれぞれ相当する、溝の溝深さTT
の間の関係式が生じ、この関係式を考慮しながら、外側から加熱された管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善することができることが確認された。
【0012】
すなわち、熱伝達の考慮に基づく特性値を処理することができ、この特性値は、互いに異なった2つの、しかしそれぞれ上述の管を特徴付ける特徴にのみに依存する方法で計算できることが確認された。
【0013】
第1の熱伝達の考慮によれば、この特性値は、定数P1,P2およびP3ならびにmm単位で測定された内径Diに依存する等価直径
【数1】
の数値
【数2】
により
【数3】
と表現することができる。
【0014】
良好な結果は、定数P1として、特許請求された-0.2~-0.3の範囲から数が選択される場合に、達成される。有利な実施形態では、定数P1は、-0.25~-0.295の範囲から、特に有利には-0.287~-0.2655の範囲から選択される。特に有利には、定数P1は、-0.287または-0.2655に等しい。
【0015】
良好な結果は、定数P2として、特許請求された310~315の範囲から数が選択される場合に、達成される。有利な実施形態では、定数P2は、310~312の範囲から、特に310.42~311.31の範囲から選択される。特に有利には、定数P2は、310.42または311.31に等しい。
【0016】
良好な結果は、定数P3として、特許請求された200~1500の範囲から数が選択される場合に、達成される。有利な実施形態では、定数P3は、230~1400の範囲から、特に261.21~1076から選択される。特に有利には、定数P3は、261.21または1076に等しい。
【0017】
本発明に係る管の形成のために使用される特性値は、上述の関係式において、mm単位で測定された内径Diに依存する等価直径
【数4】
の数値
【数5】
に依存して表現される。「数値」という概念は、この文脈かつ下記において、物理量の、数値および単位から構成される値の無次元数と理解される。物理量は、物理的な対象物、事象または状態の量的に特定可能な特性である。その値(量の値)は、数値(量の値)と単位とから成る積として表示される。本発明に係る管の形成のために使用される関係式は無次元であるので、物理量の数値が用いられる。このことを明確にするために、明細書および特許請求の範囲では、量の数値が、その他の場合にしばしば絶対値の表示のために使用される術語表記で表され、たとえば、
【数6】
として表される。たとえば
【数7】
のような、水平方向の2つの線の間の変数の表示は、本明細書および特許請求の範囲の文脈において、物理量の、変数により表される値(量の値)の数値の表示として理解される。mm単位で測定された70mmの直径Diの数値|Di|は、たとえば数70である。
【0018】
本発明に係る管の形成のために使用される特性値は、上述の関係式において、mm単位で測定された内径Diに依存する等価直径
【数8】
の数値
【数9】
に依存して表現される。等価直径は、溝を備えない平滑な管が有するであろう内面の直径であり、この平滑な管の貫通面積は、本発明に係る管の貫通面積に相当する。貫通面積とは、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、管の内部で空いている面積であると理解される。熱伝達に関連する考慮は、しばしばより簡単に平滑管において実施され得ることが示された。さらに、本発明に係る管の使用者はしばしば、供給される混合物が外側から加熱される管を通じて案内され、蒸気の存在下で炭化水素を熱分離するための装置において、過去には平滑管で作業していたことが示された。したがって、本発明に係る管に置き換えるために、貫通面積が対応する平滑管との比較が行われ得ることは理解可能である。
【0019】
等価直径
【数10】
は、関係式
【数11】
を介して、本発明に係る管の貫通面積に相当する貫通面積を有する、溝を備えない平滑な管が有するであろう内面の半径から生じる。平滑管の等価直径
【数12】
【数13】
を本発明に係る管の貫通面積と同じとみなした場合、平滑管の貫通面積
【数14】
は、管を特徴付ける特徴において以下のように表現することができる(使用された記号は、たとえば
図5においても説明されるような術語表記に関する):
【数15】
。
【0020】
平滑管の貫通面積
【数16】
と同じとみなした、本発明に係る管の貫通面積は、内面の半径に基づいてA
1=πr
1
2により容易に特定することができる、溝が加工された内面により画定された貫通平面A
1と、それぞれの貫通面積A
Tを備えた個数N
Tの溝により提供される付加的な面積とから構成される。
【0021】
したがって、上述の関係式を解くことにより、平滑管の貫通面積
【数17】
と同じと見なした、本発明に係る管の貫通面積は、専ら管を特徴付ける特徴によって以下のように表現される(以下で公式(1)も参照される):
【数18】
。
【0022】
第2の熱伝達の考慮によれば、この特性値は、
【数19】
として、または別の横断方向の関係(Querverknuepfung)を考慮して
【数20】
として、mm単位で測定された内径Diに依存する等価直径
【数21】
の数値
【数22】
と、溝の個数N
Tと、溝のmm単位で測定された溝深さTTの数値|TT|に依存して、かつ溝密度VDに依存して記載される。溝密度VDは、同一の等価直径
【数23】
を備えた管の内面に最大限に加工可能な、溝深さTT=1.3mmを備えた溝の基準数N
refに対する管の溝N
Tの割合を百分率で表す。ここで、定数は以下のように規定される:
C1=1946.066
C2=302.378
C3=-2.178
C4=266.002
C5=1.954
C6=50.495
C7=-2.004
C8=79.732
C9=-1.041
C10=0.04631
C11=-0.26550。
【0023】
特性値のためのこれらの両計算法を同じとみなす場合に、関係式
【数24】
または別の横断方向の関係を考慮した関係式
【数25】
は、管を特徴付ける特徴の関係の記述として互いに維持されることが確認された。この関係式は、外側から加熱される管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善する管を特徴付ける。管のために使用すべき、管を特徴付ける具体的な特徴、すなわち、
・管の内面に加工された、長手方向軸線を中心として螺旋状に内面に沿って延びる溝の個数N
T、
・長手方向軸線に対して垂直な横断面における、溝が加工された内面の直径、
・長手方向軸線に対して垂直な横断面において、その溝底部においてそれぞれ円弧の形状を有する溝の溝底部の半径r
2および
・長手方向軸線に対して垂直な横断面において、内面上にあり、その中心点が長手方向軸線上にある、直径Diの円と、溝の溝底部の、長手方向軸線から最も離れた点との間の最小の間隔にそれぞれ相当する、溝の溝深さTT
は、これらの関係式を基礎とした単純な反復法で求めることができる。この関係式を満たす、管を特徴付けるこれら4つの特徴の各対は、外側から加熱される管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善する管を表している。
【0024】
実際には、反復法のための手間は実際にはそれどころかさらに減少することが判った。したがって、管を特徴付ける4つの特徴の個々の決定は、剛性制限または製造制限または特定の貫通面積を備える管を形成しなければならないことに基づいて生じる。
【0025】
管が使用されるべきプラントに基づいて生じる、個別の管の可能な最大重量を介して、管の最大の肉厚のための制限が生じてしまう。この肉厚制限は、さらに剛性の観点から、形成可能な最大の溝深さTTのための制限を形成する。肉厚(ひいては形成可能な最大の溝深さ)のための制限は、別の観点、たとえば達成すべき熱伝達に基づいても生じる。
【0026】
剛性の検討は、管の内面に加工された、長手方向軸線を中心として螺旋状に内面に沿って延びる溝の個数NTのための上限値を、溝深さTTと組み合わせて生じさせることができる。多過ぎる、深過ぎる溝が加工されると、管の剛性が過度に弱められてしまう。
【0027】
供給される混合物が外側から加熱される管を通じて案内される管の、蒸気の存在下で炭化水素の熱分解する際に炭化する傾向に基づいて、溝底部の円弧の半径r2に関する限界値を、溝深さTTと組み合わせて生じさせることができる。
【0028】
さらに、製造の観点に基づいて、たとえば溝底部の円弧の半径r2に関する制限が、溝深さTTとの組み合わせにおいて生じる。溝は、たとえば深穴穿孔法において、たとえば出願人が出願した未だ未公開の書類番号102016012907.7の独国特許出願に記載されているような方法により形成することができる。その際、溝を製造するためにスローアウェイチップが使用される。このスローアウェイチップは、規定されたサイズで入手可能である。経済的な理由からも推奨されるように、既に入手可能なスローアウェイチップを使用し、スローアウェイチップを具体的な管の製造のために固有に製造する、同様に想定可能である可能性を省くことにより、溝底部の円弧の半径r2のためのこれに基づく決定も溝深さTTとの組み合わせにおいて生じる。第1の個数の溝を備える管は、第1の個数に対して大きな第2の個数の溝を備える管よりも迅速かつ明らかに廉価に製造することができるので、このことに基づいても加工すべき溝の個数のための制限が生じることが判った。
【0029】
管にとってある程度の流量の供給される混合物が要求され、したがって管の最小貫通面積が要求されることによっても制限が生じ得る。
【0030】
結果として、反復法の実施の前に既に、管を特徴付ける4つの特徴のうちの個別の特徴が存在することができない範囲が生じ、したがってこの範囲を反復法の実施時に排除することができる。
【0031】
上述の関係式
【数26】
もしくは、別の横断方向の関係を考慮した関係式
【数27】
は、溝密度VDに依拠する。溝密度VDは、同一の等価直径
【数28】
を備えた管の内面に最大限に加工可能な、溝深さTT=1.3mmを備える溝の基準数N
refに対する管の溝Ntの百分率で示す割合である。
【0032】
本発明による知識は、溝が加工される内面の直径Diの幅広いスペクトルを備える管のために使用することができる。当然ながら、より小さな直径Diを備えた管におけるよりも、より大きな直径Diを備えた管に、溝の溝底部における円弧の規定された半径r2と、規定された溝深さTTとを備えるより多く溝を加工することができる。それにもかかわらず全ての直径のための関係式を提示することができるように、標準化が行われた。この標準化では、関係式において溝の実際の個数NTが使用されるのではなく、溝密度VDが使用される。
【0033】
溝密度VDは、百分率で表現されるので、関係式
VD=N
T/N
ref*100
から生じ、この場合、基準数N
refは、関係式が
【数29】
を満たしている最大の自然数であり、
【数30】
は、公式(1)に基づいて計算された等価直径であり、ここで
【数31】
であり、この場合、反復式に規定すべきr
Nrefを求めることが同時に可能であり、r
Nrefは、公式(1)により計算された等価直径
【数32】
を用いながら以下の関係式を満たす(以下で公式(2)とも呼ぶ):
【数33-1】
【数33-2】
、ただし付帯条件
【数34】
。
【0034】
N
refは、以下のステップにより容易に特定することができる:
第1のステップにおいて、関係式の右辺
【数35】
は、本発明による利点を実現するか否かを検査する必要がある管の値で算出される。N
refは自然数でなければならないので、算定された値が自然数である場合には算定された値に一致する自然数が取られ、または算定された値に対して近似する小さい方の自然数が取られる。ここでは、Di=60mm、TT=2.05mm、r
2=8mmおよびN
T=8を備える管を例として用いる。したがって、N
ref≦19.4967769が生じる。したがって、N
refを、第1のステップでは19とみなす。
【0035】
第2のステップでは、第1のステップにおいて求められたN
refにより、r
Nrefを求めることができるか否かが検査される。r
Nrefにより、公式(1)で計算された等価直径
【数36】
を用いながら公式(2)を満たすことができ、ここで付帯条件
【数37】
を犯すことはない。等価直径
【数38】
は、本発明による利点を実現するか否かが検査される必要がある管の値により算出されて、公式(1)により計算される。上述の例の値(Di=60mm、TT=2.05mm、r
2=8mmおよびN
T=8)では、2963.77397mm
2の
【数39】
が生じる。したがって、N
refを求める第2のステップでは、第1のステップにおいて求められたN
refによりr
Nrefを求めることができるか否かが検査され、このように算定された
【数40】
により、公式(2)が満たされ、同時に上記の付帯条件が満たされる。
【0036】
この反復法は、容易に表計算プログラム、たとえばMicrosoft(登録商標)のExcelおよびこのような表計算プログラムに設けられている目標値検索により実施することができる。まずは空白の第1のセルを選択し、このセルは、後に目標値検索の関数で「可変のセル」とみなされる。このセルに任意の数値、たとえば|r
1|を記入する。次いで、第2のセルに上述の
【数41】
のための方程式を記入する。この
【数42】
は、r
Nrefにおいて表現される。この場合、r
Nrefに対して、任意の数値、たとえば|r
1|を記入された第1のセルが参照され、r
2のための値が、本発明による利点を実現するか否かが検査される必要がある管の特性データから取り出される。
【0037】
第3のセルには、方程式
【数43】
を記入する。ここで、
【数44】
は、公式(1)により計算される。
【0038】
【0039】
ここで、rNrefは、任意の数値、たとえば|r1|を記入された第1のセルを参照し、r2のための値は、本発明の利点が実現されるか否かを検査される必要がある管の特性データから選択される。第5のセルには、If-Thenテストが挿入される。このIf-Thenテストは、第4のセルの値がゼロよりも小さい場合には、「False(偽)」を出力し、その他の場合には「true(真)」を出力する。
【0040】
このように準備されたワークシートにより、次いで表計算プログラムに設けられた目標値検索を開始することができる。目標値検索は、どれが目標セルであるかを問う。このためには、第3のセルを指定する。さらに目標値検索は目標値を問う。この目標値を0(ゼロ)として指定する。さらに目標値検索は可変のセルを問う。このためには、第1のセルを指定する。目標値検索は、第1のセルの値へ導かれる。この値において、第5のセルの内容が「true」である場合、第1のステップで求められたNrefは、使用すべきNrefである。第5のセルの値が「false」である場合、第1のステップで求められたNrefを数1だけ減じ、これにより、第2のステップを新たに実施する新規のNrefを形成する。通常、このことは既に目標値検索の最後に第1のセルの値をもたらす。この値に対して、第5のセルにおいても「true」が生じるので、このように得られた新規のNrefは、使用すべきNrefである。別の場合には、新規のNrefをさらに数1だけ減じ、第2のステップをもう一度実施する。表計算プログラムにおけるこのような目標値検索が少数位において完璧でない場合でさえ、このことは通常の公差にも基づいて設計に対する著しい影響を有していないことが判った。
【0041】
このように求められたN
refにより、本発明の利点を実現するか否かを検査する必要がある管のために、管密度VDがVD=100*N
T/N
refに基づいて特定される。このように得られた値により、
【数46】
または、別の横断方向の関係を考慮しながら、
【数47】
が生じると、計算の根底を成す、管を特徴付ける4つの特徴(N
T,Di,r
2,TT)を備えた管が、外側から加熱される管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善するという確証が存在する。
【0042】
上述の例の値(Di=60mm、TT=2.05mm、r2=8mmおよびNT=8)では、第1のステップにおいて19のNrefが生じる。第2のステップでは、19のNrefによる目標値検索で、29.4509992のrNrefが生じる。しかし、第4のセルにおいて、値-0.07096658が生じるので、第5のセルにおいて「false」が出される。19のNrefから数1だけ減じて18にし、第2のステップを改めて実施すると、これにより18のNrefによる目標値検索で29.5192908のrNrefが生じる。しかし、第4のセルで、値0.10620948が生じるので、第5のセルには「true」が出される。Nref=18は、本発明への所属性についての管の別の検査時に、溝密度VDの計算のために使用することができる。
【0043】
本発明に係る管は、長手方向軸線に沿って延びていて、その内面に加工された溝を有している。存在する溝の個数は、変数NTにより表現される。溝は、長手方向軸線を中心として螺旋状に管の内面に沿って延びている。好適な実施形態では、溝は管の周面にわたって均等に分配されている。これにより、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、全ての溝にとって、隣合って配置された2つの溝の間の周方向の間隔が全ての溝にとって同一であることを意味している。
【0044】
溝深さは、内面と溝の最深の点との間隔として理解される。これは、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、溝の、半径方向で長手方向軸線から見て最も離れた点(最深点)と、長手方向軸線を中心とする内面円との間の最短の間隔であり、この内面円上に、内面の、最も内方に向かって配置された、溝の間に残っている部分が位置する。管の内面が円筒状であり、この円筒状の内面に溝が加工される本発明の構成が規定されている。溝の間には、円筒の部分を形成する内面の部分が残っている。内面の最も内方に向かって配置された部分が位置する内面円は、この実施形態では内面の残っている全ての部分が同様に十分に内方に向かって配置されているので、横断面において円である。この円上に、円筒状の内面の残っている部分が位置する。
【0045】
しかし、溝開口(内面における溝の開口横断面)が極めて大きく選択されるので、2つの溝の間に残る内面がほぼ線にまで減じられた実施形態も規定されている。特に、このような実施形態では、溝底部における凹状の湾曲(溝底部における円弧)から溝開口の領域における溝の表面の凸状の湾曲まで溝の表面の湾曲が変化する場合、このような実施形態は、周方向で溝に(ここでは溝の凸状に湾曲された領域を意図する)溝の間に配置されたリブ(この場合、溝の凹状に湾曲された領域を意図する)が接続し、溝(より良好には凹状に湾曲された溝底部)を画定する壁部がリブの外面に移行するように、作用することができる。内面の最も内方に向かって配置された部分がそれぞれ位置する内面円は、このような実施形態において、横断面で円形であり、この円上に、横断面で「リブ」の頂点が位置する。溝深さは、本発明により求められた、管を特徴付ける関係式において変数TTにより表現される。
【0046】
溝は、好適な実施形態では、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、少なくとも溝底部において丸くされた横断面を有している。この横断面は、好適には円弧で近似することができるか、または円弧に一致する。溝開口の領域において、溝の横断面幾何学形状は、好適な実施形態では拡開することができ、特に溝底部における凹状の横断面幾何学形状から溝開口の領域における凸状の横断面幾何学形状への変化により拡開することができる。代替的な実施形態では、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、溝全体の横断面幾何学形状は、円弧で近似することができるか、または円弧に相当する。同様に、溝が、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、楕円形の一部の横断面幾何学形状を有している実施形態も可能である。好適な実施形態では、溝の、長手方向軸線に対して垂直な横断面の形状が、長手方向軸線に対して垂直な全ての横断面にとって同一である。特に好適な実施形態では、溝の、長手方向に対して垂直な横断面の形状および大きさは、長手方向軸線に対して垂直な全ての横断面にとって同一である。好適な実施形態では、管の全ての溝が、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、好適には長手方向軸線に対して垂直な全ての横断面において、同一の形状を有していて、特に好適には同一の形状および大きさを有している。溝が種々異なる大きさ、特に種々異なる溝深さを有している場合、管を特徴付ける本発明による関係式のためには、最も深い溝の溝深さTTが使用される。
【0047】
好適な実施形態では、管の、長手方向軸線に対して垂直な横断面が、長手方向軸線を中心として回転対称である。このことは、少なくとも0°~360°の角度が存在することを意味し、この角度だけ、管の横断面が長手方向軸線を中心とした回転により自体描かれ得る。
【0048】
好適な実施形態では、管の、長手方向軸線に対して垂直な横断面は、長手方向軸線が横断面において占める点を中心として点対称である。
【0049】
好適な実施形態では、管の、長手方向軸線に対して垂直な横断面は、この横断面に位置する、長手方向軸線に対して垂直に延びる軸線を中心として鏡像対称である。
【0050】
管は、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、変数Diで表現される内径を有している。内径は、内面円、つまり長手方向軸線を中心とした、内面の、最も内方に向かって配置された、溝の間に残る部分が位置する円の直径である。
【0051】
好適な実施形態では、管横断面は、内側で、15mm~280mmの範囲、特に好適には15mm~180mm、特に有利には20mm~150mm、特に好適には30mm~140mmの範囲の直径Diを有している。
【0052】
好適な実施形態では、溝深さTTは、0.1mm~10mm、特に好適には1.0mm~7mm、極めて特に有利には1.0mm~4mmの範囲にある。
【0053】
好適な実施形態では、溝の個数NTは、1~100、特に好適には2~50、極めて特に好適には2~30の範囲にある。
【0054】
好適な実施形態では、溝密度VDが、1%~347%、特に有利には2%~113%、極めて特に有利には10%~105%の範囲にある。
【0055】
好適な実施形態では、溝が、長手方向軸線に関して、20°~40°、有利には22.5°~32.5°の角度で延びている。
【0056】
好適な実施形態では、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、内面の、2つの溝の間に配置されている部分により占められている、内面円上の円弧セグメントが、内面のこの部分に隣接する溝のうちの少なくとも1つの溝の溝開口により占められている、内面円上の円弧セグメントの1%よりも大きく、特に2%よりも大きく、特に5%よりも大きく、特に10%よりも大きく、特に30%よりも大きく、特に50%よりも大きく、特に70%よりも大きい。好適な実施形態では、横断面において、内面の、2つの溝の間に配置された部分により占められる、内面円上の円弧セグメントが、内面のこの部分に隣接する溝のうちの少なくとも1つの溝の溝開口により占められる、内面円上の円弧セグメントと同一であるか、または大きい。
【0057】
供給される混合物が外側から加熱された管を通じて案内され、蒸気の存在下で炭化水素を熱分解するための本発明に係る装置は、本発明に係る少なくとも1つの管を有している。
【0058】
本発明に係る管では、管壁および管内部における、サニーサイドとダークサイドとの間の管周囲にわたって必然的に異なる熱供給が補償され、その際に熱は迅速にコア領域に向かって内方へと導出される。これには、管壁におけるプロセスガスの局所的な過熱と、これにより生じるコークスの発生の危険の低減が結びつく。さらに、管材料への熱負荷は、サニーサイドとダークサイドとの間の温度補償に基づき小さくなり、このことは、寿命の延長をもたらす。最終的に、本発明に係る管では、改善されたオレフィン収率を伴う、管横断面にわたる温度の均一化も生じる。その理由は、管内部における本発明による半径方向の温度補償なしでは、高温の管壁において過分解が生じ、管中央において過小の反応量が生じてしまうからである。
【0059】
本発明に係る管は、材料に応じて、たとえば遠心鋳造管から製造することができ、この場合に、軸平行な溝を備えた管の両端部が互いに対して回動させられるか、または内側プロフィールが、たとえば熱間鍛造または熱間引抜きによる遠心鋳造管の予備成形により、またはプロファイル工具、たとえば管の内側プロフィールに対応する外側プロフィールを備えたフライングマンドレル(fliegenden Dorn)またはマンドレルバーを介した冷間変形により形成される。
【0060】
管の内側プロファイリングのための切削機械は、種々異なる態様において、たとえば独国特許出願公開第19523280号明細書から公知である。この機械は、本発明に係る管を製造するためにも適している。
【0061】
本発明に係る管の内面は、できるだけ小さな粗さを有していることが望ましい。したがって、管の内面は平滑化され、たとえば機械的に研磨されるか、または電解式に平坦化されていてよい。
【0062】
管材料として、エチレンプラントにおける使用のためには、0.1%~0.5%の炭素、20%~35%のクロム、20%~70%のニッケル、3%までのケイ素、1%までのニオブ、5%までのタングステン、ならびにそれぞれ0.5%までのハフニウム、チタン、希土類またはジルコニウムの添加物および6%までのアルミニウムを備えたニッケル-クロム-鉄-合金が適している。
【0063】
特に好適には、管のためには、高い酸化耐性、浸炭耐性、クリープ強度およびクリープ耐性を備えたニッケル-クロム-鉄-合金であって、
0.05%~0.6%の炭素、
20%~50%のクロム、
5%~40%の鉄、
6%までのアルミニウム、
2%までのケイ素、
2%までのマンガン、
1.5%までのニオブ、
1.5%までのタンタル、
6.0%までのタングステン、
1.0%までのチタン、
1.0%までのジルコニウム、
0.5%までのイットリウム、
0.5%までのセリウム、
0.5%までのモリブデン、
0.1%までの窒素、
および残りの溶融による不純物を含むニッケル
から成るニッケル-クロム-鉄-合金が使用される。
【0064】
以下の表は、本発明により提案された関係式に対応する、本発明の可能な実施形態を示している。この場合、選択された内径
【数48】
のための1つの行には、N
TMax、TT
minおよびVD
maxのペアリングが、良好な、しかしN
TMin、TT
MaxおよびVD
minから成る第2のペアリングに対して小さな熱伝達のために提示されている。付加的に、表は、シミュレーションプログラムにより評価された熱伝達を示している(より小さな熱伝達のための
【数49】
;さらに改善された熱伝達のための
【数50】
)
【表1-1】
【表1-2】
。
【0065】
予想すべき熱伝達は、良好な、しかし別の最適化された値と比較して幾らか小さな値
【数51】
のためにも、別の最適化された値
【数52】
のためにも、
図4に示すように、内径に直接に比例してよい。以下の表は、本発明により使用される、個別の管のための関係式の種々異なる変数の値を示している。溝底部における円弧は、8mmの半径r
2を有している。
【表2-1】
【表2-2】
【0066】
値
【数53】
および
【数54】
の評価のために使用されるCFD分析(数値流体力学分析)では、以下のシミュレーション条件が使用される:
熱伝達をシミュレーションするための境界条件:
管を外側から加熱するための室の温度:1300℃:
管の放射率ε:0.85
サニーサイド/ダークサイド(サニーサイド:80%の放射、20%の対流、ダークサイド:20%の放射、80%の対流)ならびに温度に依存した物理的な材料特性、密度、比熱容量および熱伝導率
シミュレーション長さ:2m
【表3】
【表4】
。
【0067】
供給される混合物が外側から加熱される管を通じて案内される、本発明に係る管は、好適には蒸気の存在下で炭化水素を熱分解するために使用される。
【0068】
以下に本発明を専ら本発明の実施形態を図示した図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図2】本発明に係る管の第1の可能な横断面を、管の長手方向軸線に対して垂直な切断面で示す図である。
【
図3】本発明に係る管の第2の可能な横断面を、管の長手方向軸線に対して垂直な切断面で示す図である。
【
図4】良好な結果をもたらす溝の個数N
Tおよび溝深さTTのペアリングと、さらに改善された結果をもたらす溝の個数N
Tおよび溝深さTTのペアリングのための、これらのペアリングにより達成される熱伝達と内径との依存関係を図示するグラフである。
【
図5】溝を備える本発明に係る管の横断面を示す図である。
【0070】
図1に図示された本発明に係る管1は、長手方向軸線Aに沿って延びていて、内面に加工された、長手方向軸線Aを中心として螺旋状に内面に沿って延びる3つの溝2を有している。
【0071】
図2に図示された、本発明に係る管1の横断面では、好適な実施形態により、溝2が、管1の、さもなければ円筒状に形成されている内面に加工されることを確認することができる。したがって、溝2の間には、管1の、円筒状に形成された内面の部分が残っている。
【0072】
図2には、溝深さTT、直径Diおよび内面円3が記入されている。
【0073】
図2には、同様に、溝2の横断面が円弧により図示されることが図示されている。
【0074】
本発明に係る管1の、
図3に図示された横断面では、択一的な実施形態により、溝底部4において凹状に形成された溝が溝開口5の方向で凸形状に移行することができ、内面の、2つの溝2の間に残っている部分がほぼ線にまで減じられていることを確認することができる。
図3には、溝深さTT、直径Diおよび内面円3が記入されている。
【0075】
図4は、等価直径
【数55】
に依存する
【数56】
および
【数57】
のために表に再現された値を示している。この値は、それぞれ1つの線で図示され得ることを確認することができる。
【0076】
図5および
図5に図示された詳細
図Yは、たとえば溝を備えた本発明に係る管において、特許請求の範囲および本明細書において使用される、略語の術語表記A
1,r
1,TT,h,b
2,b
1,A
T,r
2,およびsを再現している。
【0077】
管を特徴付ける4つの値NT,Di,r2,およびTTをどのように求めることができるかを、以下の例において示す。
【0078】
例において、貫通面積が60mmの直径を備える平滑管の貫通面積に相当するべきであるという外部要求が生じる。さらに、管の製造のために使用可能な工具に基づいて製造側で、横断面で円弧状の溝において、1.3mmの溝深さTTおよび溝底部の円弧の、8mmの半径r2が選択されるべきであるという制限が生じる。問題は、どのような直径Diおよびどのような溝の個数により、外側から加熱される管を備えた管状炉における炭化水素の熱分解の経済性を改善することができるかである。
【0079】
したがって、出発点は:
【数58】
であり、ここで、
【数59】
に基づいて、直接に
【数60】
が生じ、
【数61】
に基づいて、第1のステップにおいてN
refを特定するために公式
【数62】
により、18である第1のN
refが生じる。18であるこのN
refにより、上述の目標値検索に基づいて、29.1406241のr
Nrefが生じ、ここで同時に付帯条件
【数63】
が満たされる。数18は、したがってN
refとして使用することができる。N
ref=18により、VD=N
T/18*100が生じる。
【0080】
P1,P2およびP3のための最小値を使用しながら、方程式
【数64】
ここで定数
C1=1946.066
C2=302.378
C3=-2.178
C4=266.002
C5=1.954
C6=50.495
C7=-2.004
C8=79.732
C9=-1.041
C10=0.04631
C11=-0.26550
-0.2≧P1≧-0.3
310≦P2≦315
200≦P3≦1500
の左側の項のために、値
【数65】
が生じ、かつP1,P2およびP3のための最大値を使用しながら、方程式の左側の項のために、
【数66】
が生じる。
【0081】
方程式
【数67】
の右側の項のためには、|TT|=1.3および
【数68】
=60の使用により、
1946.066+302.378*1.3+-2.178*VD+266.002*60
+(1.3-1.954)*(VD-50.495)*-2.004
+(1.3-1.954)*(60-79.732)*-1.041
+(VD-50.495)*(60-79.732)*0.04631
+(60-79.732)*(60-79.732)*-0.26550
が生じ、したがって、
18162.4329-1.7812VD
が生じ、かつVD=N
T/N
ref*100=N
T/18*100=5.5556N
Tにより、
18162.4329-9.8954N
T
が生じる。
【0082】
管が本発明による利点を達成することを確実にするために、NTは、関係式
19.680≧18162.4329-9.8954NT
および関係式
18162.4329-9.8954NT≧17.720
が満たされているように、選択すべきである。両方の関係式は、1≦NT≦44.71により満たされ得る。
【0083】
このように求められたNTは、予め計算された値Nrefよりも大きいので、溝の可能な最大数(Nref=18)の加工時でさえ、この谷深さは未だに本発明による利点を達成することができる。したがって、使用者は、この実施例において、本発明の利点を失うことなしに、管に可能な最大数の溝を設けることができる。
【0084】
このように求められたN
Tにより、管の半径r
1、ひいては管の内径Di(=2r
1)は、公式(1)により反復的に特定することができる。なぜならば、
【数69】
であるからである。
【0085】
したがって、本発明の長所を実現する管の製造のために必要となる全てのパラメータを特定することができる。