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特許7034175重合可能基含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、製造方法およびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】重合可能基含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、製造方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20220304BHJP
   C07C 251/66 20060101ALI20220304BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20220304BHJP
   C07D 303/36 20060101ALI20220304BHJP
   C07D 303/16 20060101ALI20220304BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20220304BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20220304BHJP
   C07D 305/06 20060101ALI20220304BHJP
   C08G 59/00 20060101ALI20220304BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C08F2/50
C07C251/66 CSP
C08F220/36
C07D303/36
C07D303/16
C07D333/16
C07D409/14
C07D305/06
C08G59/00
C08G65/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019558470
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2018082761
(87)【国際公開番号】W WO2018196619
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】201710274018.4
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710796351.1
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼ ▲暁▼春
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/023067(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 2/00- 2/60
6/00-246/00
301/00
C07C 251/66
C07D 303/36
C07D 303/16
C07D 333/16
C07D 409/14
C07D 305/06
C08G 59/00
C08G 65/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤であって、一般式(I)で示される構造を有することを特徴とする、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【化1】
(ただし、
前記nは、1~4の整数を表す。
前記Rは、H、ニトロ基、ハロゲン、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のアリ-ル基、C-C14のアリ-ル基で置換されたC-C10のアルキル基、二重結合を含有するC-Cの複素環基、当該二重結合を含有するC-Cの複素環基で封鎖されたC-C12のアルキル基、又は
【化2】
から選択されるものであり、且つ、前記Rにおける-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
前記Xは、単結合又はカルボニル基を表す。
2つの前記Rは、それぞれエチレン性二重結合を含有する置換基、3員エポキシ基を含有する置換基、または4員エポキシ基を含有する置換基から選択されるものであり、2つの前記Rは、同一又は異なっていてもよく、前記エチレン性二重結合を含有する置換基は、C-Cのアルケニル基であり、該アルケニル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化3】
で置換される。
前記Rは、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアリ-ル基、C-C10のフェニルアルキル基(当該フェニルアルキル基のフェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい)、O、N又はSという複素原子と二重結合とを含有するC-Cの複素環基、前記C-Cの複素環基で封鎖されたC-Cのアルキル基、或いは、フェニル基における少なくとも一つの水素原子がC-Cのアルキル基、C-Cのアルコキシ基、またはC-Cのアルコキシ基における少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換されてなる基で置換されてなるフェニル基から選択されるものである。
前記Rは、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-Cのシクロアルキル基で置換されたC-C10のアルキル基、C-C20のアリ-ル基、 -C 20 のアルキルシクロアルキル基、-Cのアルキル基で置換されたC-C20のアリ-ル基、C-C20のヘテロアリ-ル基、C-C20のアルケニル基、又はC-Cのアルキル基で置換されたC-C20のヘテロアリ-ル基から選択されるものである。)
【請求項2】
前記Rは、H、ニトロ基、ハロゲン、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C12のアリ-ル基、C-C16のアラルキル基、チエニル基、ピロリル基、チエニル基又はピロリル基で封鎖されたC-Cのアルキル基、又は-X-C(R)=N-O-CO-Rであり、前記Rにおける-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいことを特徴とする、請求項1に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項3】
前記nは1であり、前記Rは、位置が一般式(I)の構造の右側にある-X-C(R)=N-O-CO-Rと対向し、且つ、前記Rは、H、ニトロ基、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、
【化4】
又は-X-C(R)=N-O-CO-Rから選択されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項4】
前記Rは、C-Cのアルケニル基、又はエポキシエチル基もしくはエポキシプロピル基で封鎖されたC-Cのアルキル基から選択されるものであり、前記C-Cのアルケニル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化5】
で置換されることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項5】
前記Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、C-C10のフェニルアルキル基(当該フェニルアルキル基のフェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい)、チエニル基、又はチエニル基で封鎖されたC-Cのアルキル基から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項6】
前記Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C14のシクロアルキルアルキル基、C-C14のアルキルシクロアルキル基、又はC-C12のアリ-ル基であることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項7】
前記Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、又はフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は6に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項8】
前記フルオレンオキシムエステル系光開始剤は、
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
【化6-4】
【化6-5】
からなる群から選択される一つまたは複数のものであることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項9】
光開始剤と重合性モノマ-とを含む光硬化性樹脂組成物であって、
前記重合性モノマ-が、エチレン性二重結合を含有し、
前記光開始剤が、フルオレンオキシムエステル含有光開始剤を含み、
前記フルオレンオキシムエステル含有光開始剤が、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤であることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化分野に関し、具体的に重合可能基含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、製造方法およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化性材料は、高速硬化性、低溶剤揮発性、省エネなどのメリットを有し、光硬化分野に、特にインク、塗料、接着剤、プリント基板、液晶ディスプレイの製造などに広く用いられている。光開始剤は、配合における肝心な成分である。現在、オキシムエステル系光開始剤は、徐々に開発されてきた。カルバゾールとジフェニルスルフィドとを主体構造とするオキシムエステル系光開始剤は、優れた感光性を有することが実証されたので、広まり用いられ、特に液晶ディスプレイの製造に優れた現像性能を表現している。しかしながら、使用中にも、高コストおよび溶解性不足という欠陥が反映されている。フルオレンを主体構造とするオキシムエステル系光開始剤は、コストが低いであるが、マイグレーション性および溶解性の問題がまだ有効に解決されていない。実用上、高マイグレーション性の光開始剤は、アプリケーション分野が制限される(例えば、食品、玩具、衛生包装材など)だけではなく、環境に悪影響も及ぼす。
【0003】
液晶パネルは、画像のコントラストを強調するためのブラックマトリックスと、RGB(一般、赤(R)、緑(G)および青(B)の各色からなる)の着色層を形成しているカラーフィルターとを具備している。これらのブラックマトリックス、カラーフィルターは、黒色又は各色の着色剤が分散されている感光性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物ともいう)を基板に塗布、乾燥してから、得られた塗膜を露光、現像して、所望のパターンを形成する、という操作を繰り返すことにより形成される。例えばCN104395824A、CN101923287A、CN103309154A、CN104345559Aなどの公開番号の特許出願は、異なるオキシムエステル系化合物がカラーフィルター、ブラックマトリックス、カラーレジストの製造への使用を開示し、例えばCN105838149A、CN106483764A、CN106537254Aの特許公開番号の特許は、異なるオキシムエステル系開始剤がカラーレジスト、カラーフィルター、光学スペーサー、絶縁フィルムへの使用を報告している。これらの光開始剤は、感光活性が高いであるが、長期間使用した後、マイグレーションする恐れがあることを見出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願CN104395824A号明細書
【文献】中国特許出願CN101923287A号明細書
【文献】中国特許出願CN103309154A号明細書
【文献】中国特許出願CN104345559A号明細書
【文献】中国特許出願CN105838149A号明細書
【文献】中国特許出願CN106483764A号明細書
【文献】中国特許出願CN106537254A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記目的を達成するために、本願発明の1つの態様によれば、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤を提供する。フルオレン構造の9位に重合可能基を導入することによって形成するフルオレンオキシムエステル系光開始剤は、溶解性がよく、光開始効率が高く、かつ硬化後にマトリックス樹脂と結合して、ほとんどマイグレーションしないから、応用の見通しが明るい。
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、一般式(I)で示される構造を有する、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤を提供する。
【化1】
ただし、
nは、1~4の整数を表す。
は、それぞれ独立にH、ニトロ基、ハロゲン、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のアリール基、C-C24のアラルキル基、O、N又はSという複素原子と二重結合とを含有するC-Cの複素環基もしくは当該複素環基で封鎖されたC-C12のアルキル基、又は-X-C(R)=N-O-CO-Rを表し、これらの基における-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
は、重合可能基を表す。
Xは、単結合又はカルボニル基(即ち、-CO-)を表す。
は、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、C-C20のヘテロアリール基、O、N又はSという複素原子と二重結合とを含有するC-Cの複素環基、もしくは当該複素環基で封鎖されたC-Cのアルキル基を表す。
は、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、C-C20のヘテロアリール基、又はC-C20のアルケニル基を表す。
【0007】
上記一般式(I)で示される構造において、Rは、H、ニトロ基、ハロゲン、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C12のアリール基、C-C16のアラルキル基、チエニル基、ピロリル基、チエニル基又はピロリル基で封鎖されたC-Cのアルキル基、又は-X-C(R)=N-O-CO-Rであることが好ましく、これらの基における-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
【0008】
より好もしくは、nは1であり、Rは、位置が一般式(I)の構造の右側にある-X-C(R)=N-O-CO-Rと対向し、且つ、Rは、H、ニトロ基、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ベンゾイル基
【化2】
3-チエニル基
【化3】
3-テノイル基
【化4】
又は-X-C(R)=N-O-CO-Rから選択されるものである。
【0009】
上記一般式(I)で示される構造において、Rは、二重結合、エポキシ基又はこれらの組み合わせ構造を含有する重合可能基である。
【0010】
好ましくは、Rは、C-C12のアルケニル基(該アルケニル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化5】
で置換されてもよい)、及びエポキシエチルアルキル基又はエポキシプロピルアルキル基(これらの基中のエポキシ基とフルオレン構造との間のアルキル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-CH-CH(OH)-CH-O-で置換されてもよい)から選択されるものである。
【0011】
より好ましくは、Rは、C-Cのアルケニル基(該アルケニル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化6】
で置換されてもよい)、及びエポキシエチル基又はエポキシプロピル基で封鎖されたC-Cのアルキル基(該C-Cのアルキル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-CH-CH(OH)-CH-O-で置換されてもよく、且つ、エポキシエチル基又はエポキシプロピル基におけるHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい)から選択されるものでる。
【0012】
上記一般式(I)で示される構造において、Rは、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアリール基、O、N又はSという複素原子と二重結合とを含有するC-Cの複素環基、もしくは当該複素環基で封鎖されたC-Cのアルキル基であることが好ましい。
【0013】
より好ましくは、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、フェニル基(その中で、一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい)、C-C10のフェニルアルキル基(フェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい)、チエニル基、又はチエニル基で封鎖されたC-Cのアルキル基から選択されるものである。
【0014】
上記一般式(I)で示される構造において、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C14のシクロアルキルアルキル基、C-C14のアルキルシクロアルキル基、又はC-C12のアリール基であることが好ましい。
【0015】
さらに好ましくは、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、又はフェニル基である。
【0016】
限定されるものではないが、前記重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤は、以下の構造から選択してもよい。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【0017】
本願発明の別の態様によれば、本願発明は、一般式(I)で示される、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤の製造方法をさらに提供し、該製造方法は、下記のステップを含む。
【0018】
(1)中間体aの調製
原料aと原料bであるR-Y(ただし、Yは、ハロゲンを表し、好ましくはF、Cl又はBrである)は、触媒存在下で反応して、中間体aを生成する。
【0019】
(2)中間体bの調製
中間体aと原料cであるR’-CO-Cl(ただし、R’は、RまたはR-CH-を表し、具体的に、Xは単結合である場合、R’は、Rを表し、Xはカルボニル基である場合、R’は、R-CH-を表す)は、三塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛の触媒作用下で、有機溶媒中でフリーデル・クラフツアシル化反応して、中間体bを得る。
【0020】
(3)中間体cの調製
Xは単結合である場合、中間体bは、塩酸ヒドロキシルアミンと酢酸ナトリウムの作用下でオキシム化反応して、中間体cを生成すること;
Xはカルボニル基である場合、濃塩酸存在下で、中間体bは、亜硝酸エステルまたは亜硝酸塩と常温でオキシム化反応して、中間体cを生成する。
【0021】
(4)生成物の調製
中間体cは、酸無水物である(R-CO)Oまたは酸塩化物化合物であるR-CO-Clとエステル化反応して、目的とする生成物を得る。
反応式は、以下の通りである。
【化8】
【0022】
上記合成に使用される原料は、いずれも既知の化合物であり、市販されてもよく、既知の合成方法により便利に製造されてもよい。当該合成プロセスは、求核反応、フリーデル・クラフツアシル化反応、オキシム化反応およびエステル化反応を順に含み、これらは、いずれも有機化学合成分野の常規の反応タイプである。反応プロセスを明瞭した上で、具体的な反応条件は、当業者にとって容易に確定できる。
【0023】
ステップ(1)において、原料aとR-Yは、触媒存在下で求核反応し、中間体aを得る。前記触媒は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、カリウムメトキシドなどから選択されてもよい。反応は、溶剤系中で行う。反応に使用される溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、好ましくはDMSO、THF、DMFである。反応温度は一般的に室温である。反応時間は、原料の種類によって多少に異なるが、一般的に2~10時間である。
【0024】
ステップ(2)において、反応温度は一般的に-10~30℃である。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0025】
ステップ(3)において、中間体cの調製は、溶剤系中で行う。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよい。Xは単結合である場合、使用される溶剤は、アルコールと水の混合溶剤であってもよく、エタノールと水の混合溶剤であることが好ましい。反応は、加熱還流下で行う。Xはカルボニル基である場合、使用される溶剤は、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどであってもよく、前記亜硝酸エステルは、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソオクチルから選択されてもよく、前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムから選択されてもよい。
【0026】
ステップ(4)において、エステル化反応は、有機溶剤中で行う。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0027】
本願発明のもう1つの態様によれば、本願発明は、一般式(I)で示された、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤の光硬化分野への使用、及び当該フルオレンオキシムエステル系光開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物をさらに提供する。
本願発明の光硬化性樹脂組成物は、一般式(I)で示された、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤に加え、重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂および任意の他の成分をさらに含んでも良い。
【0028】
重合性化合物として、光硬化分野に通常使用される種類を選択して用いることができる。好ましく、前記重合性化合物は、エチレン性二重結合を有する光重合性モノマー化合物であり、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、t-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体の(メタ)アクリル酸ハーフエステル、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-プロピレン)ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルフタレートジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、カルバメート(メタ)アクリレート(即ち、トリレンジイソシアネート)、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、ポリオールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物、1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(triacrylformal)、2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノールトリアクリレート、および2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノールジアクリレートなどが挙げられる。重合性化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。光硬化性樹脂組成物の固形分に対して、重合性化合物の含有量は、5~60wt%であってもよく、10~50wt%であることが好ましい。
【0029】
アルカリ可溶性樹脂は、従来各光硬化性樹脂組成物に配合されて用いられる樹脂から適宜選択されてもよい。光硬化性樹脂組成物にアルカリ可溶性樹脂を使用することによって、アルカリ現像性をさらに向上することができる。前記アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリレート系共重合体であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物の固形分に対して、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、0~90wt%であってもよく、10~80wt%であることが好ましい。
【0030】
必要に応じて、光硬化性樹脂組成物に、本分野における各常規助剤をさらに含んでも良い。限定されるものではないが、例えば溶剤、表面調整剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、光増感剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、連鎖移動剤などが挙げられる。添加剤は、いずれも従来既知の物質を使用してもよい。界面活性剤として、アニオン系化合物、カチオン系化合物、非イオン系化合物などが挙げられる。密着性向上剤として、シランカップリング剤などが挙げられる。熱重合禁止剤として、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテルなどが挙げられる。消泡剤として、ポリシロキサン化合物、フッ素化合物などが挙げられる。
【0031】
実用から分かるように、本願発明の上記フルオレンオキシムエステル系光開始剤は、アプリケーションで光開始効率が高く、溶解性がよい、マイグレーション性がないという特徴を具備し、販売の見通しがとても明るい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本願の一部を構成する図面は、本願発明への更なる理解のため提供される。本願発明の模式的な実施例およびその説明は、本願発明を説明するためのものであり、本願発明を限定するものではない。
【0033】
図1】本願が提供する光硬化性組成物を採用して形成した現像パターンを示す概略図である。
図2】従来の光硬化性組成物を採用して形成した現像パターンが発生するアンダーカット現象を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
なお、対立がない場合、本願における実施例及び実施例中の特徴は、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照して本願発明を詳細に説明する。
【0035】
背景技術の通りに、従来の光開始剤は、マイグレ-ションしやすいという問題がある。上記技術問題を解決するために、本願は、一般式(I)で示される構造を有する、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤を提供する。
【化9】
ただし、
nは、1~4の整数を表す;
は、H、ニトロ基、ハロゲン、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のアリ-ル基、C-C14のアリ-ル基で置換されたC-C10のアルキル基、二重結合を含有するC-Cの複素環基、当該二重結合を含有するC-Cの複素環基で封鎖されたC-C12のアルキル基、又は
【化10】
から選択されるものであり、Rにおける-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい;
2つのRは、それぞれエチレン性二重結合を含有する置換基、3員エポキシ基を含有する置換基、または4員エポキシ基を含有する置換基から選択されるものであり、2つのRは、同一又は異なっていてもよい;
は、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-Cのシクロアルキル基で置換されたC-C10のアルキル基、C-C20のアルキル基で置換されたC-Cのシクロアルキル基、フェニル基、フェニル基における少なくとも一つの水素原子がC-Cのアルキル基、-Cのアルコキシ基、または-Cのアルコキシ基における少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換されてなる基で置換されてなるフェニル基から選択されるものである;
は、C-C20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-Cのシクロアルキル基で置換されたC-C10のアルキル基、C-C20のアリ-ル基、C-Cのアルキル基で置換されたC-C20のアリ-ル基、C-C20のヘテロアリ-ル基、C-C20のアルケニル基、又はC-Cのアルキル基で置換されたC-C20のヘテロアリ-ル基から選択されるものである。
式(I)で示される構造を有する光開始剤の自身が大きな分子量を具備しているとともに、重合可能基をさらに持っているので、光硬化の過程中で、上記光開始剤と重合性モノマ-におけるエチレン性二重結合とは重合反応が起こり、大きな分子量を具備しているポリマ-が形成される。これにより、光硬化は、比較的均一なレ-トで行われているとともに、光開始剤の開始活性が向上される。一方、硬化してなるポリマ-は、分子量が比較的に大きいので、加熱状態で昇華物を生じることが困難であるから、硬化を経た後、上記光開始剤は、マイグレ-ション性が低い。つまり、上記構造を具備している光開始剤は、高い開始活性および低いマイグレ-ション率を有する。上記構造を具備している光開始剤は、高い開始活性および低いマイグレ-ション率を有する。光開始剤の総合性能をさらに向上するために、光開始剤における各基をさらに最適化してもよい。
【0036】
一つの好ましい実施態様では、Rは、H、ニトロ基、ハロゲン、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C12のアリール基、C-C16のアラルキル基、チエニル基、ピロリル基、チエニル基又はピロリル基で封鎖されたC-Cのアルキル基、又は-X-C(R)=N-O-CO-Rであり、Rにおける-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
【0037】
一つの好ましい実施態様では、nは1であり、Rは、位置が一般式(I)の構造の右側にある-X-C(R)=N-O-CO-Rと対向し、且つ、前記Rは、H、ニトロ基、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ベンゾイル基
【化11】
3-チエニル基
【化12】
3-テノイル基
【化13】
又は-X-C(R)=N-O-CO-Rから選択されるものである。
一つの好ましい実施態様では、Rは、二重結合、エポキシ基又はこれらの組み合わせ構造を含有する重合可能基である。
【0038】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-C12のアルケニル基、及びエポキシエチルアルキル基又はエポキシプロピルアルキル基から選択されるものであり、
は、C-C12のアルケニル基である場合、Rにおける一つ又は複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化14】
で置換されてもよく、
【0039】
は、エポキシエチルアルキル基又はエポキシプロピルアルキル基である場合、Rにおけるエポキシ基とフルオレン構造との間のアルキル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-CH-CH(OH)-CH-O-で置換されてもよい。
【0040】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-Cのアルケニル基、又はエポキシエチル基もしくはエポキシプロピル基で封鎖されたC-Cのアルキル基から選択されるものであり、
【0041】
は、C-Cのアルケニル基である場合、Rにおける一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は
【化15】
で置換されてもよく、
【0042】
は、エポキシエチル基又はエポキシプロピル基で封鎖されたC-Cのアルキル基である場合、C-Cのアルキル基における一つまたは複数の-CH-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-CH-CH(OH)-CH-O-で置換されてもよく、エポキシエチル基又はエポキシプロピル基におけるHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい。
【0043】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-C10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアリール基、O、N又はSという複素原子と二重結合とを含有するC-Cの複素環基、もしくは当該C-Cの複素環基で封鎖されたC-Cのアルキル基を表す。
【0044】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、C-C10のフェニルアルキル基、チエニル基、又はチエニル基で封鎖されたC-Cのアルキル基から選択されるものであり、上記フェニルアルキル基のフェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい。Rは、フェニル基である場合、フェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよく、Rは、C-C10のフェニルアルキル基である場合、C-C10のフェニルアルキル基のフェニルにおける一つまたは複数のHは、C-Cのアルキル基で置換されてもよい。
【0045】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C14のシクロアルキルアルキル基、C-C14のアルキルシクロアルキル基、又はC-C12のアリール基である。
【0046】
一つの好ましい実施態様では、Rは、C-Cの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C-Cのシクロアルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基、又はフェニル基である。
【0047】
一つの好ましい実施態様では、フルオレンオキシムエステル含有光開始剤は、
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
からなる群から選択される一つまたは複数のものである。
【0048】
本願発明の1つの態様は、一般式(I)で示される、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤の製造方法を提供する。該製造方法は、下記のステップを含む。
【0049】
(1)中間体aの調製
原料aと原料bであるR-Y(ただし、Yは、ハロゲンを表し、好ましくはF、Cl又はBrである)は、触媒存在下で反応して、中間体aを生成する。
【0050】
(2)中間体bの調製
中間体aと原料cであるR’-CO-Cl(ただし、R’は、RまたはR-CH-を表し、具体的に、Xは単結合である場合、R’は、Rを表し、Xはカルボニル基である場合、R’は、R-CH-を表す)は、三塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛の触媒作用下で、有機溶媒中でフリーデル・クラフツアシル化反応して、中間体bを得る。
【0051】
(3)中間体cの調製
Xは単結合である場合、中間体bは、塩酸ヒドロキシルアミンと酢酸ナトリウムの作用下でオキシム化反応して、中間体cを生成する。
Xはカルボニル基である場合、濃塩酸存在下で、中間体bは、亜硝酸エステルまたは亜硝酸塩と常温でオキシム化反応して、中間体cを生成する。
【0052】
(4)生成物の調製
中間体cは、酸無水物である(R-CO)Oまたは酸塩化物化合物であるR-CO-Clとエステル化反応して、目的とする生成物を得る。
反応式は、以下の通りである。
【化17】
【0053】
上記合成に使用される原料は、いずれも既知の化合物であり、市販されてもよく、既知の合成方法により便利に製造されてもよい。当該合成プロセスは、求核反応、フリーデル・クラフツアシル化反応、オキシム化反応およびエステル化反応を順に含み、これらは、いずれも有機化学合成分野の常規の反応タイプである。反応プロセスを明瞭した上で、具体的な反応条件は、当業者にとって容易に確定できる。
【0054】
ステップ(1)において、原料aとR-Yは、触媒存在下で求核反応し、中間体aを得る。前記触媒は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、カリウムメトキシドなどから選択されてもよい。反応は、溶剤系中で行う。反応に使用される溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、好ましくはDMSO、THF、DMFである。反応温度は一般的に室温である。反応時間は、原料の種類によって多少に異なるが、一般的に2~10時間である。
【0055】
ステップ(2)において、反応温度は一般的に-10~30℃である。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0056】
ステップ(3)において、中間体cの調製は、溶剤系中で行う。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよい。Xは単結合である場合、使用される溶剤は、アルコールと水の混合溶剤であってもよく、エタノールと水の混合溶剤であることが好ましい。反応は、加熱還流下で行う。Xはカルボニル基である場合、使用される溶剤は、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどであってもよく、前記亜硝酸エステルは、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソオクチルから選択されてもよく、前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムから選択されてもよい。
【0057】
ステップ(4)において、エステル化反応は、有機溶剤中で行う。使用される有機溶剤は、種類が特に限定されなく、原料を溶解できるとともに反応に悪影響を及ぼさなければよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0058】
本願発明をより良好に理解するために、本願発明のもう1つの態様は、光開始剤および重合性モノマーを含む光硬化性樹脂組成物をさらに提供し、該重合性モノマーが、エチレン性二重結合を含有し、該光開始剤が、前記フルオレンオキシムエステル含有光開始剤を含む。
【0059】
前記光硬化性樹脂組成物において、式(I)で示される構造を有する光開始剤の自身が大きな分子量を具備しているとともに、重合可能基をさらに持っているので、光硬化の過程中で、上記光開始剤と重合性モノマーにおけるエチレン性二重結合とは重合反応が起こり、大きな分子量を具備しているポリマーが形成される。これは、前記光硬化性樹脂組成物を比較的均一なレートで硬化させることに有利であり、これにより、光硬化過程中のパターンのアンダーカット現象の発生を効果的に抑制できる。一方、硬化してなるポリマーは、分子量が比較的に大きいので、加熱状態で昇華物を発生することが困難であるから、前記光硬化性樹脂組成物から形成した硬化物は、高い熱安定性も具備している。つまり、感光性樹脂組成物は、遮光剤を含有しても、又は露光量が不足であっても、本願が提供する光硬化性樹脂組成物は、現像後のパターンのアンダーカット現象の発生を抑制でき、且つ、現像した後に高い熱安定性を具備している。
【0060】
感光性樹脂組成物は、遮光剤を含有しても、又は露光量が不足であっても、本願が提供する光硬化性樹脂組成物は、現像後のパターンのアンダーカット現象の発生を抑制でき、且つ、現像した後に高い熱安定性を具備している。一つの好ましい実施態様では、光硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂および助剤をさらに含む。前記アルカリ可溶性樹脂は、本分野によく用いられる樹脂を選択して用いてもよい。光硬化性組成物にアルカリ可溶性樹脂を添加することは、アルカリ現像性をさらに向上することに有利である。好ましくは、前記アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリレート系共重合体である。より好ましくは、前記アルカリ可溶性樹脂は、開示された特許出願CN106397752Aに記載されているアルカリ可溶性樹脂である。
【0061】
好ましくは、光硬化性組成物は、重量部で、フルオレンオキシムエステル含有光開始剤を0.5~10部、前記重合性モノマーを10~100部、アルカリ可溶性樹脂0~80部、および助剤を0~500部含む。
【0062】
さらに好ましくは、光硬化性組成物は、重量部で、フルオレンオキシムエステル含有光開始剤を0.5~5部、前記重合性モノマーを10~80部、アルカリ可溶性樹脂0~60部、および助剤を0~200部含む。
【0063】
一つの好ましい実施態様では、前記重合性モノマーは、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、t-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体の(メタ)アクリル酸ハーフエステル、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-プロピレン)ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルフタレートジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、カルバメート(メタ)アクリレート(即ち、トリレンジイソシアネート)、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、ポリオールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物、1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノールトリアクリレートおよび2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノールジアクリレートからなる群から選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0064】
前記光硬化性樹脂組成物には、本分野における各種の添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、溶剤、染料、顔料、充填剤、表面調整剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤剤、分散剤、つや消し剤、硬化促進剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤および密着促進剤からなる群から選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0065】
好ましくは、界面活性剤は、アニオン系化合物、カチオン系化合物、非イオン系化合物からなる群から選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0066】
好ましくは、密着性向上剤は、シランカップリング剤を含むが、これらに限定されない。
【0067】
好ましくは、熱重合禁止剤は、ハイドロキノン及び/又はハイドロキノンモノエチルエーテルを含むが、これらに限定されない。
【0068】
好ましくは、消泡剤は、ポリシロキサン化合物及び/又はフッ素化合物を含むが、これらに限定されない。
【0069】
好ましくは、前記光硬化性樹脂組成物は、本分野における従来の光開始剤または増感剤と組み合わせて用いられる。
【0070】
好ましくは、本分野における従来の光開始剤は、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、α-ヒドロキシケトン系、α-アミノケトン系、ベンゾイルホルメート系およびトリアジン系からなる群から選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0071】
好ましくは、増感剤は、クマリン系化合物、アントラキノン系化合物、アントラセンエステル系化合物およびアクリジン系化合物からなる群から選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0072】
本願の他の一態様は、感光性樹脂組成物の製造方法をさらに提供している。具体的に、当該製造方法は、所望の組成に応じて成分を選択し、各成分を攪拌機に入れて混合する、というステップを含む。好ましくは、調製される感光性樹脂組成物をより均一させるように、フィルターで上記光硬化性組成物の各成分を濾過する。
【0073】
本願の他の一態様は、本願が提供する光硬化性組成物から形成するイメージングパターンを含むカラーフィルターをさらに提供している。
【0074】
好ましくは、上記イメージングパターンの製造方法は、以下のステップを含む。
1)ロールコーター又はコーターで光硬化性樹脂組成物を基板に塗布する。
2)塗布された光硬化性樹脂組成物を乾燥して、塗膜を形成する。
3)ネガ型のマスクを介して、紫外線又はエキシマレーザーなどの活性エネルギー線で当該塗膜を照射して、その一部を露光させる。
4)現像液で上記露光後の塗膜を現像して、所望の形状のパターンを形成する。
5)特定の温度(好ましくは200~250℃)で現像後のパターンをポストベークする。
【0075】
本願の他の一態様は、前記カラーフィルターを含む表示装置をさらに提供している。
前述のように、本願発明の光硬化性樹脂組成物を用いるによって、現像後に形成されるパターンのアンダーカットを抑制できる。本願発明の光硬化性樹脂組成物を用いてカラーフィルターのイメージングパターンを形成する場合、気泡が各画素の境界部の近傍に入ることを抑制でき、上記カラーフィルターを含む液晶表示装置の画質を向上することに有利である。
【0076】
以下、具体的な実施例を参照して、本願発明をさらに詳述するが、これらの実施例は、本願発明が保護要求する範囲を限定するものではないと理解すべきである。
【0077】
製造実施例
実施例1
(1)中間体1aの合成
【化18】
【0078】
1000mLの四口フラスクに原料1aを135.2g、ナトリウムメトキシドを54.0g、ジメチルスルホキシド(DMSO)を100mL添加し、窒素ガスを通し、室温で0.5時間攪拌してから、3時間をかけて徐々に原料1bを120.5g滴下し、原料が変化しないまでに液相で反応を追跡した(liquid phase tracking)。反応液を脱イオン水に入れ、攪拌し、n-ヘキサンで生成物を抽出し、無水MgSOで生成物のn-ヘキサン溶液を乾燥し、ロータリーエバポレーションでn-ヘキサンを除去した。メタノールで再結晶して、白色固体生成物である中間体1aを177.6g得た(収率81wt%、純度98wt%)。
【0079】
中間体1aの構造は、H-NMRおよびMSにより確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):2.7692(4H,s),4.5306-4.8667(4H,m),7.2851-7.9904(14H,m)。
MS(m/z):439(M+1)
【0080】
(2)中間体1bの合成
【化19】
【0081】
500mLの四口フラスクに中間体1aを87.7g、三塩化アルミニウムを27g、ジクロロメタンを100mL添加し、氷水浴で0℃までに温度を下げ、温度を10℃以下に制御しながら、約2時間をかけて24.1gの原料1cと50mLのジクロロメタンとの混合溶液を滴下し、滴下完了後、引き続き2時間攪拌し、完全に反応したまでに液相で反応を追跡した。攪拌しながら、得られたものを400gの氷水と50mLの濃塩酸(37%)とが配合されてなる希塩酸に徐々に入れた。その後、分液漏斗に入れ、下層であるジクロロメタン層を取り、50mLのジクロロメタンで水層を洗浄し、得られたジクロロメタン層を合わせた。5wt%重炭酸ナトリウム水溶液で(毎回150mL、合計3回)ジクロロメタン層を洗浄し、その後、pHが中性になるように水でジクロロメタン層を洗浄し、80gの無水MgSOでジクロロメタン層を乾燥し、濾過してから、生成物のジクロロメタン溶液をロータリーエバポレーションし、メタノールで再結晶し、80℃のオーブンで2時間乾燥して、中間体1bを93.0g得た(収率89wt%、純度98wt%、MS(m/z):523(M+1))。
【0082】
(3)中間体1cの合成
【化20】
【0083】
500mLの四口フラスクに中間体1bを53g、塩酸ヒドロキシルアミンを6.0g、酢酸ナトリウムを6.4g、エタノールを100mL、水を50mL添加し、85℃で5時間加熱還流攪拌した後、反応を止めた。得られたものを1000mLの大きなビーカーに入れ、水を500mL添加し、攪拌し、ジクロロメタン100mLで抽出し、抽出液に無水MgSOを30g添加して乾燥させ、吸引ろ過し、濾液を減圧でロータリーエバポレーションして溶剤を除去し、回転ボトルに油状粘調物を得た。得られた粘調物を100mL石油エーテルに入れ、攪拌して析出させ、吸引ろ過し、白色粉末状固体を得、70℃で5時間ベークして、中間体1cを41.4g得た(収率75wt%、純度98wt%、MS(m/z):538(M+1))。
【0084】
(4)化合物1の合成
【化21】
【0085】
250mLの四口フラスクに中間体1cを26.9g、ジクロロメタンを100mL添加し、室温で5分間攪拌し、その後、約30分間をかけて塩化プロピオニルを5g滴下し、引き続き2時間攪拌し、その後、pH値を中性に調整するように5wt%のNaHCO水溶液を入れた。分液漏斗で有機層を取り、さらに水100mLで2回洗浄し、20gの無水MgSOで乾燥し、濾過した後に溶剤をロータリーエバポレーションして除去させ、粘調状液体を得た。メタノールで再結晶して、白色固体粉末を得、濾過し、化合物1を合計26.1g得た(収率88wt%、純度99wt%)。
化合物1の構造は、H-NMRおよびMSより確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):0.9554-1.0973(6H,t),1.3298-1.3332(2H,m),1.4907-1.5163(2H,m),2.2631-2.2788(2H,m),2.6654-2.8225(6H,m),4.5665-4.8826(4H,d),7.2806-8. 0483 (13H,m)。
MS(m/z):594(M+1)
【0086】
実施例2
(1)中間体2aの合成
【化22】
【0087】
1000mLの四口フラスクに原料2aを83.1g、ナトリウムメトキシドを54.0g、ジメチルスルホキシド(DMSO)を200mL添加し、窒素ガスを通し、室温で0.5時間攪拌し、その後、3時間をかけて徐々にエポキシクロロブタンを107g滴下し、原料が変化しないまでに液相で反応を追跡した。反応液を脱イオン水に入れ、攪拌し、n-ヘキサンで生成物を抽出し、無水MgSOで生成物のn-ヘキサン溶液を乾燥し、ロータリーエバポレーションでn-ヘキサンを除去し、メタノールで再結晶して、白色固体生成物である中間体2aを134.8g得た(収率88wt%、純度98wt%)。
中間体2aの構造は、H-NMRおよびMSより確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):1.3695-1.4231(4H,m),1.7906-1.8651(4H,t),2.4963-2.5678(6H,m),7.3853-7.8430(8H,m)。
MS(m/z):307(M+1)
【0088】
(2)中間体2bの合成
【化23】
【0089】
500mLの四口フラスクに中間体2aを61.3g、三塩化アルミニウムを27g、ジクロロメタンを100mL添加し、氷水浴で0℃までに温度を下げ、温度を10℃以下に制御しながら、約2時間をかけて34.9gの原料2cと50mLのジクロロメタンとの混合溶液を滴下し、滴下完了後、引き続き2時間攪拌し、完全に反応したまでに液相で反応を追跡した。それで、攪拌しながら、得られたものを400gの氷水と50mLの濃塩酸(37%)とが配合されてなる希塩酸に徐々に入れ、その後、分液漏斗に入れ、下層であるジクロロメタン層を取り、50mLのジクロロメタンで水層を洗浄し、得られたジクロロメタン層を合わせた。5wt%重炭酸ナトリウム水溶液で(毎回150mL、合計3回)ジクロロメタン層を洗浄し、その後、pHが中性になるように水でジクロロメタン層を洗浄し、80gの無水MgSOでジクロロメタン層を乾燥し、濾過してから、生成物のジクロロメタン溶液をロータリーエバポレーションし、メタノールで再結晶し、80℃のオーブンで2時間乾燥して、中間体2bを76.5g得た(収率87wt%、純度98wt%、MS(m/z):445(M+1))。
【0090】
(3)中間体2cの合成
【化24】
【0091】
250mLの四口フラスクに中間体2bを44.5g、37%の塩酸を8.0g、亜硝酸イソアミルを7.5g、テトラヒドロフランを100mL添加し、常温で5時間攪拌し、反応を止めた。得られたものを1000mLの大きなビーカーに入れ、水を500mL添加し、攪拌し、ジクロロメタン100mLで抽出し、抽出液に無水MgSOを30g添加して乾燥させ、吸引ろ過し、濾液を減圧でロータリーエバポレーションして溶剤を除去し、回転ボトルに油状粘調物を得た。得られた粘調物を100mL石油エーテルに入れ、攪拌して析出させ、吸引ろ過し、白色粉末状固体を得、70℃で5時間ベークして、中間体2cを35.52g得た(収率75wt%、純度98wt%、MS(m/z):476(M+1))。
【0092】
(4)化合物2の合成
【化25】
【0093】
250mLの四口フラスクに中間体2cを47.4g、ジクロロメタンを100mL添加し、室温で5分間攪拌し、その後、約30分間をかけて無水プロピオン酸を13g滴下し、引き続き2時間攪拌し、その後、pH値を中性に調整するように5wt%のNaHCO水溶液を入れ、分液漏斗で有機層を取り、さらに水200mLで2回洗浄し、50gの無水MgSOで乾燥し、濾過した後に溶剤をロータリーエバポレーションして除去させ、粘調状液体を得た。メタノールで再結晶して、白色固体粉末を得、濾過し、生成物を45.5g得た(収率86wt%、純度99wt%)。
【0094】
化合物2の構造は、H-NMRおよびMSより確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):0.9959-1.1005(3H,t),1.3067-1.4432(17H,m),1.8668-1.8772(4H,t),2.2590-2. 2713(8H,m),7.2832-8. 0122 (7H,m)。
MS(m/z):530(M+1)
【0095】
実施例3
実施例1および2の方法を参照し、対応する原料から示される構造を有する化合物3~15を製造した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0096】
性能評価
1.代表的な光硬化性樹脂組成物を調製し、本願発明の式(I)で示される光開始剤の硬化速度、マイグレーション性および溶解性などのアプリケーション性能を評価した。具体的なステップは、以下の通りであった。
【0097】
(1)下記組成の光硬化性樹脂組成物を調製した。
アクリレート共重合体 200重量部
[メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル(モル比:70/10/20)共重合体(Mv:10000)]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100重量部
光開始剤 5重量部
ブタノン(溶剤) 900重量部
【0098】
上記組成物において、光開始剤は、本願発明における式(I)で示される化合物、又は従来技術に既知の光開始剤(比較例として)であった。
【0099】
(2)硬化速度
上記組成物を黄色光ランプの下で攪拌し、得られたものを取ってPETテンプレートの上にロールコーティングして成膜し、90℃で2分間乾燥し、乾燥膜厚が2μmである塗膜を得、その後、室温までに冷却し、高圧水銀灯(露光機型番:RW-UV70201、単回露光量50mJ/cm)の照射で塗膜を露光し、硬化させて膜になった。
【0100】
塗膜が硬化して硬化膜になるまでにキャタピラー式露光装置を通過する回数で評価し、通過回数が多いほど、硬化速度が良くないことを示した。
【0101】
(3)マイグレーション性
硬化膜を切り刻んで、硬化膜サンプルを0.5g量って、50mLのビーカーに置き、メタノールを4.5mL添加し、超音波で30分間超音波溶解し、得られたメタノール溶液を10mLのメスフラスコに移し、引き続きサンプルをメタノールで2回(2mL×2)洗浄し、メスフラスコに入れ、ピペットで内標準物質としてトルエンを0.1mL取って、メタノールを添加して定容し、均一に振り、静置した。
【0102】
日本島津LC-20A液体クロマトグラフィー(shim packコラム、150×6.0mm、検出器SPD-20A、検出限界20ppm、検出波長254nm)を採用し、25℃、流速1.0mL/min、移動相(メタノール/水=90/10)の条件で、光開始剤の存在を検出できるかどうかを観察した。トルエンに対する液相のピーク面積百分比で評価し、液相に開始剤の含有量が高いほど、マイグレーション性が大きいことを示した。
【0103】
(4)溶解性
光開始剤の活性希釈剤およびオリゴマーへの溶解性能は、開始剤のアプリケーション性能を評価するための重要な指標である。光開始剤のPGMEAへの溶解度は、光開始剤の溶解性能およびアプリケーション性能を評価する指標・パラメータの一つである。
【0104】
本願発明の一般式(I)で示される化合物、と比較としての従来のオキシムエステル系光開始剤とを選択して用い、それぞれ25℃でこれらのPGMEAへの溶解度を測定した。
【0105】
評価結果は、表2に示される。
【表2】
【0106】
表2において、光開始剤Aは、
【化26】
であった。
光開始剤Bは、
【化27】
であった。
光開始剤Cは、
【化28】
であった。
【0107】
表2の測定結果からわかるように、本願発明の一般式(I)で示される、重合可能基を含有するフルオレンオキシムエステル系光開始剤は、溶解性が優れ、光硬化アプリケーション中の開始効率が高く、硬化速度が速く、且つマイグレーションが発生しなく、総合性能が従来のオキシムエステル系光開始剤製品より優れた。
【0108】
アプリケーション実施例
本願で製造した光開始剤と本分野の通常の光開始剤とを利用してそれぞれ光硬化性組成物に製造した。各光硬化性組成物の組成は、表3および表4に示される。
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
化合物D、E、F、Gは、以下の構造を具備している。
【化29】
【0111】
アルカリ可溶性樹脂A1は、以下の構造を具備している。
【化30】
【0112】
性能評価
(1)感度
以下のステップに従って、実施例11乃至29および比較例4乃至9の感光性樹脂組成物の感度をそれぞれ評価した。まず、サンプルを取ってPETテンプレートに置き、ワイヤーバーで塗布し、90℃で5分間乾燥して溶剤を除去し、膜厚が約2μmである塗膜を形成した。塗膜が形成された基板を室温までに冷却し、マスク板を介して、高圧水銀灯1PCS光源で、FWHMフィルターによって長波長放射を実現した。マスク板のギャップによって、波長370~420nmの紫外線で塗膜を露光し、その後、25℃で、2.5wt%の炭酸ナトリウム溶液に20秒浸漬して現像させ、さらに超純水で洗浄して、空気乾燥し、220℃で30分間ハードベークしてパターンを定着させ、得られたパターンを評価した。
【0113】
露光した時、露光ステップ中光照射エリアの現像後の残膜率が90%又はそれ以上になるための最小露光量を露光必要量とした。露光必要量が小さいほど、感度が高いことを示した。
【0114】
(2)パターン形状についての評価
以下のステップに従って、実施例11乃至29および対比例4乃至9の感光性樹脂組成物から形成したパターンの形状をそれぞれ評価した。まず、サンプルを取ってPETテンプレートに置き、ワイヤーバーで塗布し、90℃で5分間乾燥して溶剤を除去し、膜厚が約2μmである塗膜を形成した。塗膜が形成された基板を室温までに冷却し、マスク板を介して、高圧水銀灯1PCS光源で、FWHMフィルターによって長波長放射を実現した。マスク板のギャップによって、波長370~420nmの紫外線で塗膜を十分に露光し(露光量100mJ/cm)、その後、25℃で、2.5wt%の炭酸ナトリウム溶液に20秒浸漬して現像させ、さらに超純水で洗浄して、空気乾燥し、220℃で30分間ハードベークしてパターンを定着させ、走査型電子顕微鏡でパターンと基板との間の接合角度(コーン角)を測定した。当該コーン角が図1および図2における角θに相応的に対応した。コーン角が鋭角であれば、パターンにアンダーカットが存在していないことを示し、コーン角が鈍角であれば、パターンにアンダーカットが存在していることを示した。具体的な結果は、表5に示される。
【表5】
【0115】
表5から分かるように、図1に示すように、本願実施例11乃至29で得られた光硬化性組成物から形成したパターンと基板との接合角度が鋭角であるが、対比例4乃至9で得られた光硬化性組成物から形成したパターンと基板との接合角度が鈍角である。したがって、本願発明に記載されている重合可能なフルオレンオキシムエステル系光開始剤は、感光性能が優れ、単独で使用する場合にも、他の光開始剤と組み合わせて使用する場合にも、アンダーカットの発生の問題を有効に解決できる。
【0116】
(3)昇華性評価
露光後の組成物における、開始剤からの昇華生成物を検出し、100mJ/cmの条件下で、上記実施例11、19、20、24および対比例4、9の処方について、それぞれ膜を80枚製造して露光させ、露光した後に同量のテトラヒドロフランを使用してマスクをよく洗浄し、島津液体クロマトグラフィー(LC-200)でマスクの付着物を定量分析し、開始剤のピーク位置のピーク面積およびピーク高さを記録した。ピーク面積およびピークの高さが高いほど、昇華が明らかであることを示した。結果は、表6に示される。
【0117】
【表6】
【0118】
表6から分かるように、本願発明の感光性組成物を使用すると、昇華物の発生を抑制できる特徴を示す。
【0119】
つまり、本願発明に記載されている感光性樹脂組成物は、現像後のパターンのアンダーカットの発生を抑制でき、現像後の加熱中で昇華物の発生が少ない。
【0120】
上記説明は、本願発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者にとって、本発明に対して様々な変更および変化を行うことができる。本発明の主旨および原則内でなされた任意の変更、同等の置換、改善などは、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2