IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧 ▶ ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティの特許一覧

特許7034180リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法
<>
  • 特許-リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法 図1A
  • 特許-リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法 図1B
  • 特許-リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法 図1C
  • 特許-リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】リラクサ強誘電体フルオロポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/22 20060101AFI20220304BHJP
   C08F 214/24 20060101ALI20220304BHJP
   C08F 214/28 20060101ALI20220304BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220304BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20220304BHJP
   B29C 55/04 20060101ALI20220304BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20220304BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20220304BHJP
【FI】
C08F214/22
C08F214/24
C08F214/28
C08J5/18 CEW
B29C55/02
B29C55/04
B29C55/12
B29C48/154
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019562585
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2017000786
(87)【国際公開番号】W WO2018206996
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】500429332
【氏名又は名称】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティボー ソールスティン
(72)【発明者】
【氏名】レイ ジュー
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06355749(US,B1)
【文献】特表2002-513514(JP,A)
【文献】特表2009-522775(JP,A)
【文献】特表平08-507876(JP,A)
【文献】A. Petchsuk et al.,SYNTHESIS AND ELECTRIC PROPERTY OF VDF/TrFE/HEP TERPOLYMERS,MAT. RES. SOC. SYMP. PROC. VOL.600,MATERIALS RESEARCH SOCIETY,2000年,53-60
【文献】Haisheng Xu et al.,Structural and ferroelectric response in vinylidene fluoride/trifluoroethylene/hexafluoropropylene terpolymers,Polymer,2007年,48,2124-2129
【文献】LEI ZHU,Stretching-Induced Novel Relaxor Ferroelectlic Behavior In a Poly(vinylidene fluoride-co-trifluoroethylene-co-hexafluoropropylene) Random Terpolymer,APS March Meeting 2017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/00 - 214/28
B29C 55/00 - 55/30
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08J 27/00 - 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、フルオロポリマー物体の製造方法:
-モノマーM,M及びMから誘導される単位を含むフルオロポリマーから作られた基材を提供する、ここで、 ,M 及びM は互いに異なり、そして
〇 Mは弗化ビニリデン;
〇 Mは式(I):CX=CX(ここで、X、X、X及びXの各々は独立してH,Cl及びFから選ばれ、そしてX、X、X及びXの少なくとも1つはFである)で表わされるモノマー;
〇 Mは、式(II):CY=CYCF(ここで、Y、Y及びYの各々は独立してH,Cl、F、Br、I及び1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、該アルキル基は場合によっては部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい)で表わされるモノマーである;
-該基材を該基材のフルオロポリマーのキュリー転移温度よりも高い温度で延伸し、ここで、該キュリー転移温度は1kHzでの広帯域誘電分光法で、加熱速度:2℃/分、適用電圧:1.0Vrmsを用いて測定する。
【請求項2】
上記フルオロポリマー物体がフルオロポリマーフィルム又はフルオロポリマー繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記基材を20~120℃、好ましくは30~110℃、更に好ましくは40~100℃の温度で延伸する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記基材を少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%延伸する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記基材を一方向に延伸する;又は少なくとも2方向に延伸する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
がトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び1,1-クロロフルオロエチレンから選ばれ、そして好ましくはトリフルオロエチレンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
、Y及びYの各々が独立してH,Cl、F、Br及びIから選ばれ、そして更に好ましくはそれぞれ独立してH,Cl及びFから選ばれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
がヘキサフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンから選ばれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記フルオロポリマー中のMモノマーから誘導される単位の割合が、MモノマーとMモノマーとから誘導される単位の合計の15~55モル%、好ましくは25~45モル%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記フルオロポリマーが、15モル%未満、好ましくは10モル%未満のMモノマーから誘導される単位を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記基材の提供が、上記フルオロポリマーを基材に造形すること、好ましくは該フルオロポリマーを該基材に押出すか熱間圧縮することにより造形することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記基材の提供が、モノマーM、M及びMを重合してフルオロポリマーを製造する予備ステップをも含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12記載のいずれか一つの方法から得られたフルオロポリマー物体。
【請求項14】
請求項13記載のフルオロポリマー物体を含む電子装置。
【請求項15】
請求項13記載のフルオロポリマー物体が上記装置内で層として存在する、請求項14に記載の電子装置。
【請求項16】
上記電子装置が、電界効果トランジスター、変換器、触覚装置及び電気機械マイクロシステムから選ばれる請求項14又は15に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初めのフルオロポリマー基材を延伸することによりフルオロポリマー系フィルム又は類似物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狭いヒステリシスループを示すリラクサ強誘電体(RFE)ポリマーは広範囲の潜在的用途、例えば電気エネルギー貯蔵、人工筋肉、誘電熱量冷却及びプリンタブルエレクトロニクス、に魅力的である。現在の技術のRFEポリマーは主としてP(VDF-TrFE-X)、即ち、ポリ(ビニリデンフルオリド-ter-トリフルオロエチレン-ter-X)、ランダムターポリマーであって、ここでXは1,1-クロロフルオロエチレン(CFE)又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)である。
【0003】
相対的に少量の塩素化モノマーをP(VDF-TrFE)系コポリマーに添加すると該ポリマーの半結晶構造を変更し、RFEの性質を達成することを可能にすると思われる。これに関して、特に特許文献1を参照されたい。
【0004】
他方、リラクサ強誘電体挙動は、他のコポリマー又はターポリマー、特にP(VDF-TrFE-X)ターポリマー(ここでXはCF基含有モノマー)を用いては観察されなかった。これに関して、非特許文献1を参照されたい。この非特許文献1はP(VDF-TrFE-HFP)ターポリマーの強誘電性を論じ、ここでHFPはヘキサフルオロプロペンを示す。非特許文献2もまた参照されたい。この非特許文献2はP(VDF-TrFE-1234ze)ターポリマーの半結晶形成を論じ、ここで1234zeは1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを示す。
【0005】
いくつかのフルオロポリマー類、例えばP(VDF-HFP)コポリマー、から作られた延伸フィルムは当業界で知られているが、この延伸によりリラクサ強誘電体挙動は得られなかった。これに関して、非特許文献3及び4を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許6,355,749号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Xu外、Polymer 2007 (DOI: 10.1016/j.polymer.2007.02.035)
【文献】Bargain外、Macromolecules 2017 (DOI: 10.1021/acs.macromol.7b00051)
【文献】Guan外、Macromolecules 2010 (DOI: 10.1021/ma101062j)
【文献】Guan外、Macromolecules 2010 (DOI: 10.1021/ma901921h)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
更なるモノマーに基づいて、リラクサ強誘電性を有する更なるフルオロポリマーフィルム又は他の類似物を提供することへの要求がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記を含むフルオロポリマー物体の製造方法を提供することである:-モノマーM,M及びMから誘導される単位を含むフルオロポリマーから作られた基材を提供する、ここで:
〇 Mは弗化ビニリデン;
〇 Mは式(I):CX=CX(ここで、X、X、X及びXの各々は独立してH,Cl及びFから選ばれ、そしてX、X、X及びXの少なくとも1つはFである)で表わされるモノマー;
〇 Mは、式(II):CY=CYCF(ここで、Y、Y及びYの各々は独立してH,Cl、F、Br、I及び1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、該アルキル基は場合によっては部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい)で表わされるモノマーである;
-該基材を延伸する。
【0010】
いくつかの態様では、フルオロポリマー物体はフルオロポリマーフィルム又はフルオロポリマー繊維である。
【0011】
いくつかの態様では、上記基材を、該基材のフルオロポリマーのガラス転移温度よりも高い温度、好ましくは該基材のフルオロポリマーのキュリー転移温度よりも高い温度で延伸する。
【0012】
いくつかの態様では、上記基材を20~120℃、好ましくは30~110℃、更に好ましくは40~100℃の温度で延伸する。
【0013】
いくつかの態様では、上記基材を少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%延伸する。
【0014】
いくつかの態様では、上記基材を一方向に延伸する;又は少なくとも2方向に延伸する。
【0015】
いくつかの態様では、Mはトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び1,1-クロロフルオロエチレンから選ばれ、そして好ましくはトリフルオロエチレンである。
【0016】
いくつかの態様では、Y、Y及びYの各々は独立してH,Cl、F、Br及びIから選ばれ、そして更に好ましくはそれぞれ独立してH,Cl及びFから選ばれる。
【0017】
いくつかの態様では、Mはヘキサフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンから選ばれる。
【0018】
いくつかの態様では、上記フルオロポリマー中のMモノマーから誘導される単位の割合は、MモノマーとMモノマーとから誘導される単位の合計の15~55モル%、好ましくは25~45モル%である。
【0019】
いくつかの態様では、上記フルオロポリマーは、15モル%未満、好ましくは10モル%未満のMモノマーから誘導される単位を含む。
【0020】
いくつかの態様では、基材の提供は、フルオロポリマーを基材に造形すること、好ましくはフルオロポリマーを基材に押出すか熱間圧延することにより造形することを含む。
【0021】
いくつかの態様では、基材の提供はまた、モノマーM、M及びMを重合してフルオロポリマーを製造する予備ステップをも含む。
【0022】
本発明はまた、上記の方法から得られた(又は得られる)フルオロポリマー物体にも関する。
【0023】
本発明はまた、上記フルオロポリマー物体を含む電子装置にも関する。
【0024】
いくつかの態様では、上記フルオロポリマー物体は上記装置内で層として存在する。
【0025】
いくつかの態様では、上記電子装置は、電界効果トランジスター、変換器、触覚装置及び電気機械マイクロシステムから選ばれる。
【0026】
本発明は、従来技術に表された要求に向けたものである。特に、本発明はVDF、TrFE及びCFE以外、又はVDF、TrFE及びCTFE以外のモノマー組合せ物に基づく、リラクサ強誘電性を有するフルオロポリマーフィルム又は他の類似物を提供する。
【0027】
更に特定的には、本発明はVDF及びCF基含有モノマー、例えばHFP、から誘導された単位(即ち、重合された単位)を含むターポリマーに基づくフルオロポリマーフィルム又は他の類似物を提供する。
【0028】
これは、かかるターポリマーに基づくフィルム又は他の類似物を延伸すると、それらの強誘電性を修正しそしてリラクサ強誘電体挙動を付与するという驚くべき発見により可能にされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】以下の実施例2に詳細に示された3種のポリマーフィルムA,B及びCについての分極曲線を示す。分極mC/mはY軸に示され、印加電界MV/mはX軸に示される。
図2】本発明のポリマーフィルムの温度の関数としての誘電率を示す。種々の曲線は、以下の実施例2に詳細に示されたように、種々の周波数を用いて得られた。誘電率はY軸に示され、そして温度℃はX軸に示される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで本発明を以下の記述で更に詳細に記載するが、これに限定されない。
【0031】
本発明は、モノマーM,M及びMから誘導される単位を含むフルオロポリマーの使用に依存する。言い換えると、該ポリマーはモノマーM,M及びM(そして以下に記載するように場合によっては更なるモノマー)の重合により得られる。
【0032】
モノマーM,M及びMは異なる。
【0033】
モノマーMは弗化ビニリデンモノマーである。
【0034】
モノマーMは式(I):CX=CX(ここで、X、X、X及びXの各々は独立してH,Cl及びFから選ばれ、そしてX、X、X及びXの少なくとも1つはFである)で表わされるモノマーである。
【0035】
モノマーMは、式(II):CY=CYCF(ここで、Y、Y及びYの各々は独立してH,Cl、F、Br、Iから選ばれるか、又は1-3個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、該アルキル基は場合によっては部分的に又は完全にハロゲン化されている)で表わされるモノマーである。
【0036】
及びMの両方について、異なるモノマーの混合物を使用することができる。その上、さらに別のモノマーから誘導された単位が上記フルオロポリマーに存在してもよい。かかる場合、該フルオロポリマー中の更に別のモノマーから誘導されたかかる単位の全体の割合は、好ましくは5モル%未満、更に好ましくは2モル%未満又は1モル%未満である。
【0037】
最も好ましくは、本発明のフルオロポリマーは本質的に又は理想的にはモノマーM,M及びMから誘導された単位から成る。
【0038】
その上、最も好ましくは、単一のモノマーM及び単一のモノマーMを使用することであり、それは上記フルオロポリマーがターポリマーであることを意味する。
【0039】
は好ましくは弗化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び1,1-クロロフルオロエチレンから選ばれる。更に好ましくは、Mはトリフルオロエチレンである。
【0040】
従って、好ましい変形では、本発明のフルオロポリマーはP(VDF-TrFE-M)ターポリマーであり、ここでMは前に定義した通りである。
【0041】
モノマーMは好ましくは3~6個の炭素原子を含み得る。更に好ましくは、モノマーMは3個の炭素原子を含む。
【0042】
好ましい変形では、式(II)中のY、Y及びYの各々は独立してH,Cl、F、Br及びIから選ばれ、そして更に好ましくは独立してH,Cl及びFから選ばれる。
【0043】
他の好ましい変形では、式(II)中のY、Y及びYの各々は独立してH、F及び1~3個の炭素原子を含み、場合によっては部分的に又は完全にフッ素化されているアルキル基から選ばれる。
【0044】
他の好ましい変形では、式(II)中のY、Y及びYの各々は独立してH及びFから選ばれる。
【0045】
いくつかの変形では、上記フルオロポリマーは塩素原子を含まない。高温で起こり得る脱塩化水素は塩素含有ターポリマーの溶融加工を妨害する。従って、塩素なしのフルオロポリマーに対してRFE挙動を達成するのが特に有利である。
【0046】
好ましいモノマーMはヘキサフルオロプロペン(HFP)、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)である。
HFP及び1234zeが更に好ましい。
HFPが最も好ましい。
【0047】
モノマーMから誘導された単位の割合は、フルオロポリマー中のモノマーM及びMから誘導された単位の合計に対して、好ましくは5~95モル%である。更に好ましくは、それは5~10モル%;又は10~15モル%;又は15~20モル%;又は20~25モル%;又は25~30モル%;又は30~35モル%;又は35~40モル%;又は40~45モル%;又は45~50モル%;又は50~55モル%;又は55~60モル%;又は60~65モル%;又は65~70モル%;又は70~75モル%;又は75~80モル%;又は80~85モル%;又は85~90モル%;又は90~95モル%である。15~55モル%、更に特に25~45モル%の範囲が好ましい。
【0048】
フルオロポリマー中のモノマーMから誘導された単位の割合(全単位に対して)は、好ましくは0.5~1モル%;又は1~2モル%;又は2~3モル%;又は3~4モル%;又は4~5モル%;又は5~6モル%;又は6~7モル%;又は7~8モル%;又は8~9モル%;又は9~10モル%;又は10~12モル%;又は12~15モル%;又は15~20モル%である。15モル%未満、そして更に特に10モル%未満の割合が好ましい。
【0049】
本発明のフルオロポリマーのモル組成は種々の方法で決定できる。炭素、フッ素及び塩素又は臭素元素の元素分析の慣用方法は、ターポリマーについては2つの独立した未知数を含む2つ又は3つの独立した等式のシステムを生じ(%VDF及び%M、%M=100-(%VDF+%M))、これは該ポリマーの重量組成を明確に計算可能にし、該重量組成からモル組成が導き出される。
【0050】
多核NMR技術、例えばプロトン(1H)及びフッ素(19F)NMR、を使用し、そして適当な重水素を含む溶媒中の上記フルオロポリマー溶液を分析することも可能である。NMRスペクトルを、多核プローブを備えたFT-NMR分光器に記録する。生成したスペクトル中のいろいろなモノマーから生じる特定のシグナルを次ぎに同定する。例えば、プロトンNMRでTrFE単位はCFH基(ほぼ5ppmに)の特定のシグナル特性を生じる。同じことがVDF単位のCH基(3ppmを中心にした未解明のピーク)に適用される。2つのシグナルの相対的積分は、2種のモノマーの相対的存在量、即ちVDF/TrFEモル比、への接近法を与える。
【0051】
同様に、CF基はフッ素NMRにおいて特徴的且つ充分に単離したシグナルを生じる。プロトンNMR及びフッ素NMRで得られた種々のシグナルの相対的積分の組合せは等式システムを生じ、その解答は上記フルオロポリマー中の種々のモノマーのモル濃度を与える。
【0052】
最後に、元素分析、例えば塩素又は臭素のようなヘテロ原子についての元素分析、とNMR分析とを組合せることができる。
【0053】
本発明のフルオロポリマーは好ましくは統計的(ランダム)線状ポリマーである。
【0054】
好ましくは、該ポリマーは熱可塑性でありそして実質的にエラストマーでない(即ち、フルオロエラストマーでない)。
【0055】
上記フルオロポリマーは均質でも不均質でもよい。均質ポリマーは均一な鎖構造を有し、即ち、種々のモノマーから誘導された単位の統計的分布が鎖の間で実質的に変わらない。不均質ポリマーにおいては、鎖中の種々のモノマーから誘導された単位の分布は多様であるか又は広がっている。従って不均質ポリマーは、ある種の単位を多く含む鎖と、この種の単位をより少なく含む他の鎖とを含む。不均質ポリマーの一例は、文献WO2007/080338に見出すことができる。
【0056】
上記フルオロポリマーは、乳化重合、懸濁重合及び溶液重合のような公知のあらゆる重合工程を用いて製造し得る。
【0057】
いくつかの変形において、文献WO2010/116105に開示された工程と同様の工程を使用し得る。この工程は、高分子量のポリマー及び適切な構造のポリマーを得ることを可能にする。
【0058】
要約すると、この工程は下記のステップを含む:
-MとMの初期混合物(Mなし)を、水を収容した撹拌オートクレーブに装填する;
-該オートクレーブを重合温度に近い所定の温度に加熱する;
-好ましくは少なくとも80バールである圧力を該オートクレーブに達成させそしてM及びMの水中懸濁液を形成するために、水を混ぜたラジカル重合開始剤を該オートクレーブに注入する;
-M、M及びMの第2の混合物を該オートクレーブに注入する;
-重合反応が始まるとすぐに、圧力を本質的に一定のレベル、好ましくは少なくとも80バールのレベル、に維持するために、該第2の混合物を該オートクレーブ反応器に連続的に注入する。
【0059】
上記初期混合物は、MとMのみを最終フルオロポリマーの所望の組成に等しい割合で含むのが有利である。上記第2混合物は、該初期混合物と該第2混合物とを含めて、該オートクレーブに導入されるモノマーの全組成が最終フルオロポリマーの所望の組成に等しいか又はほぼ等しくなるように調節された組成を有するのが有利である。
【0060】
上記第2混合物の上記初期混合物に対する重量比は、好ましくは0.5~2、更に好ましくは0.8~1.6である。
【0061】
初期混合物と第2混合物とを用いたこの工程の実施は、該工程を、しばしば予期できない反応の開始から独立したものにする。このようにして得られたポリマーは、殻又は皮のない粉末の形態である。
【0062】
上記オートクレーブ反応器内の圧力は好ましくは80~110バールであり、そして温度は好ましくは40℃~60℃のレベルに維持される。
【0063】
第2混合物は、上記オートクレーブに連続的に注入することができる。該混合物は該オートクレーブに注入する前に、例えば圧縮機又は2連続圧縮機を使用して、一般に該オートクレーブ内の圧力よりも高い圧力に圧縮することができる。
【0064】
他の変形では、全モノマーM、M及びMを初めからバッチ工程で上記反応器に導入してもよい。これは特に、CFE又はCTFEを使用しない場合、例えばP(VDF-TrFE-HFP)及びP(VDF-TrFE-1234ze)ポリマー用の場合である。この文脈で、WO2017/051109に開示された工程と類似の工程を例えば使用し得る。
【0065】
従って、上記フルオロポリマーは溶媒中のラジカル開始剤の存在下、溶液ラジカル重合により調製し得る。
【0066】
上記反応体混合物を30~100℃、好ましくは40~80℃の反応開始温度まで加熱し得る。上記オートクレーブ内の初期圧力は溶媒、反応温度及びモノマーの量に依存して変化し得る。それは一般に0~80バールである。最適温度の選択は使用した開始剤に依存する。一般に、反応は少なくとも6時間の間に、上記開始剤の半減期が1~10時間となる温度で行い得る。
【0067】
或いは、上記フルオロポリマーは水、ラジカル開始剤、場合によっては分散剤、及び場合によっては連鎖移動剤の存在下で、懸濁ラジカル重合により調製し得る。これは合成中の毒性の溶媒及びフッ素化された表面活性剤の使用の回避を可能にする。
【0068】
全モノマーを初めから上記反応器に導入し得る。次ぎに該反応器を所望の開始温度にし、それを重合の間、40~60℃に維持する。次ぎに上記開始剤を該反応器に注入して、重合を開始できるようにする。圧力はモノマーの消費の結果、低下し、それは水の連続供給により補う。従って圧力は、例えば80~110バールの範囲に維持できる。次ぎに該反応器を冷却しそして脱ガスし、そして生成物を、濾過できる懸濁液の形態で収集することができる。
【0069】
上記の種々の工程において、ラジカル開始剤は例えばtert-ブチルペルオキシピバレート(TBPPI)、tert-アミルペルオキシピバレート、ペルオキシジカーボネート、例えばビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ナトリウム又はジ(n-アルキル)ペルオキシジカーボネート、過硫酸アンモニウム又はカリウム、ベンゾイルペルオキシド及びその誘導体、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチレペルオキシド、又は2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンであり得る。該開始剤は一般に、モノマーの合計装填量1kg当たり0.1~10gの量で使用できる。好ましくは、使用量は0.5~5g/kgである。
【0070】
上記溶媒は、もし存在するなら、例えば1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン及びそれらの混合物から選び得る。
【0071】
上記分散剤は、もし存在するなら、例えばアルキルセルロース又はアルキルヒドロキシアルキルセルロースのような水溶性セルロース誘導体、パラフィン及びポリビニルアルコールから選び得る。
【0072】
上記フルオロポリマーの分子量をより良く制御するために、上記連鎖移動剤を含め得る。それは例えば酢酸エチルのような酢酸アルキル、ジエチルカーボネートのようなビスアルキルカーボネート、ブタノン-2のようなケトン、チオール、ハロゲン化アルキル、イソプロパノールのような飽和アルコール、及びプロパンのようなアルカンから選ぶことができる。
【0073】
上記フルオロポリマーは、一旦合成されると、洗浄しそして乾燥することができる。
【0074】
上記フルオロポリマーの重量平均分子量は、好ましくは少なくとも100,000g.mol-1、更に好ましくは少なくとも200,000g.mol-1、更に好ましくは300,000g.mol-1、そして最も好ましくは少なくとも400,000g.mol-1である。それは、重合工程のいくつかのパラメータ、例えば反応温度、を変更するか、又は上記の連鎖移動剤を使用することにより調整することができる。
【0075】
分子量分布は、溶離剤としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い、孔度が増加する3個のカラムセットを用いて、サイズ排除クロマトグラフィーにより評価し得る。固定相は、スチレン-ジビニルベンゼンゲルである。検出は屈折率の測定に依存し、検量はポリスチレン標準を用いて行う。サンプルを0.5g/Lのジメチルホルムアミド溶液に入れ、0.45μmのナイロンフィルターで濾過する。
【0076】
本発明によると、該ポリマーを基材(又は初期の物体)に形作る。次ぎに該基材を延伸して、(目的)物体を形成する。
【0077】
上記基材は好ましくはフィルムである。或いは、それは、繊維又は一組の繊維であることができる。
【0078】
上記フィルムは平均厚1~100μm、好ましくは2~60μmを有し得る。上記繊維は平均直径1~100μm、好ましくは2~60μmを有し得る。
【0079】
上記フルオロポリマーのフィルムは、該フルオロポリマーを液体ベヒクル中に懸濁又は溶解してインクを形成し、引き続きインクの層を表面に沈積させ、そして該液体ベヒクルを蒸発させることにより製造し得る。
【0080】
上記液体ベヒクルは溶媒であるのが好ましい。更に好ましくは、それはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、例えばテトラヒドロフラン;エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及び酢酸プロピレングリコールメチルエーテル;カーボネート類、例えばジメチルカーボネート;ホスフェート、例えばトリエチルホスフェートから選ばれる。これらの化合物の混合物もまた使用し得る。
【0081】
上記液体ベヒクル中のフルオロポリマーの全重量濃度は、特に0.1~30%、好ましくは0.5~20%であり得る。
【0082】
上記インクは場合によっては1種又はそれ以上の添加剤、例えば界面活性剤、レオロジー変更剤、耐老化剤、顔料若しくは染料、フィラー(ナノフィラーを含む)、又はフルオロポリマー合成に使用される残りの添加剤、を含み得る。
【0083】
上記インクは特にガラス表面又はシリコン表面又はポリマー表面又は金属表面に沈積し得る。該沈積は特に回転被覆、スプレー被覆、バー被覆、浸漬被覆、ロール-ツー-ロール印刷、セリグラフィー印刷、平版印刷又はインクジェット印刷により実施し得る。
【0084】
或いは、そして更に好ましくは、上記フィルムは、インクを使用せずに、フルオロポリマー粉末を、2つの板の間で熱間圧延することにより形成し得る。熱間圧延は、該粉末を2つのポリイミドフィルム(特にKapton(登録商標)フィルム)のようなフィルムの間に挟み、得られたサンドイッチを閉鎖していない熱定盤の間で加熱することを含み得る。この加熱は例えば150~250℃の温度で、例えば1000~7000psi、好ましくは2000~6000psi、更に好ましくは3000~5000psiの圧力で実施し得る。加熱されたサンドイッチを圧力下、例えば1~30分、好ましくは2~15分、更に好ましくは3~10分の持続時間、維持し得る。該フィルムに気泡が捕らえられるのを避けるために、脱ガスを特にこの圧延の前に、繰り返された圧縮と解放により実施し得る。圧力下に保持した後、該フィルムを、例えば液体窒素中に急冷して、大きい結晶の形成を防止することができる。
【0085】
或いは、上記フィルムを押出しにより、例えばフルオロポリマー粉末を150~250℃の温度で溶融し、そしてそれを押出型を通して押し出すことにより、形成し得る。
【0086】
繊維もまた、押し出し又は電界紡糸により形成し得る。電界紡糸は、例えばZhongらの論文(Polymer 2011,52:2228-2237)に記載されるようにして実施し得る。
【0087】
このようにして形成された基材は引き続き延伸される。延伸ステップは、特に、フィルムを、異なる速度で回転する2つのロールの間に挿入することにより実施し得る。
【0088】
延伸を行う温度は、好ましくは該フルオロポリマーのガラス転移温度よりも高い。
【0089】
延伸を行う温度は、好ましくは(1kHzの電気周波数で)該フルオロポリマーのキュリー温度よりも高い。
【0090】
従って、延伸を行う温度は、好ましくは20~120℃、更に好ましくは30~110℃、より更に好ましくは40~100℃である。上記延伸に典型的に適した可能な温度範囲は20~30℃、又は30~40℃、又は40~50℃、又は50~60℃、又は60~70℃、又は70~80℃、又は80~90℃、又は90~100℃、又は100~110℃、又は110~120℃である。
【0091】
延伸比は好ましくは少なくとも150%、更に好ましくは少なくとも200%、又は250%、又は300%、又は350%、又は400%である。
【0092】
フィルムについては、延伸比は延伸後の表面と延伸前の表面の比に相当する。
【0093】
繊維又は一組の繊維については、延伸比は延伸後の長さと延伸前の長さの比に相当する。
【0094】
基材がフィルムであると、延伸は一回又は数回の連続段階で一方向(一軸延伸)又は一方向より多くの方向(例えば二軸延伸)に実施し得る。
【0095】
延伸ステップの後、フルオロポリマー物体は後処理ステップ、例えば熱的アニールステップ、に付し得る。しかしながら、好ましい変形では、後処理を行わず、特に熱的アニールを行わない。特に、熱的アニールは、延伸を充分高い温度で行った場合には必要でないことが分かった。
【0096】
延伸を比較的低温で、キュリー転移温度未満で実施した場合、フィルムを、末端を固定してキュリー転移温度より高い温度で熱的アニールステップを実施して、RFE性を安定させるのが好ましい。従って、熱的アニールステップを実施する温度は、好ましくは20~120℃、更に好ましくは30~110℃、さらにより好ましくは40~100℃である。上記熱的アニールステップを実施するのに典型的に適した可能な温度範囲は20~30℃、又は30~40℃、又は40~50℃、又は50~60℃、又は60~70℃、又は70~80℃、又は80~90℃、又は90~100℃、又は100~110℃、又は110~120℃である。末端を固定しての熱的アニールは、フィルム寸法の変化を該熱的アニールの間防止することを意味する。
【0097】
末端を自由にした熱的アニールは、フィルムをキュリー転移温度未満の温度で延伸した場合、RFE挙動が失われ得るので、特に望ましくない。
【0098】
上記のようにして得られたフルオロポリマー物体は、下記のパラメータの1つ又はそれ以上、好ましくは全てにより特徴付けられるのが好ましい:
-保磁場が60MV/m未満、更に好ましくは40MV/m未満(周波数10Hz,強度150MV/mを有する印加電界にて);
-電界周波数に依存して変わるキュリー転移温度;
-電界周波数1kHzにてキュリー転移温度が80℃未満、好ましくは70℃未満、又は60℃未満、そして更に好ましくは10~60℃;
-25℃で、且つ電界周波数1kHzにて、誘電率が少なくとも10、好ましくは少なくとも13;
-キュリー転移温度にて、且つ電界周波数1kHzにて、誘電率が少なくとも20、好ましくは少なくとも25、そして更に好ましくは少なくとも30。
【0099】
延伸ステップは好ましくは保磁場を減少させる。従って、延伸前の保磁場は好ましくは40MV/mを越え、延伸後の保磁場は好ましくは40MV/m未満である。
【0100】
延伸ステップ前では、基材は、電界周波数に関して実質的に一定であるキュリー転移温度を有し、一方該キュリー転移温度は、延伸ステップ後は電界周波数に依存するようになる。電界周波数に依存して変化するキュリー転移温度はリラクサ強誘電体材料の特徴である。
【0101】
保磁場は、下記の例示的プロトコルを用いてD-Eヒステリシスループ測定法に基づいて決定し得る:プレマイア(Premiere)II強誘電性テスター(ラジアント テクノロジー社(Radiant Technologies,Inc.)、アルバカーキ(Albuquerque)、ニューメキシコ州)を、Trek 10/10B-HS高圧増幅器(0-10kV AC,ロックポート(Lockport),ニューヨーク州)と組み合わせて使用する。印加電圧は、周波数範囲0.1~1000Hzで二極正弦曲線波形を有する。EvoVac蒸着システム(オングストロームエンジニアリング社(Angstrom Engineering,Inc.)、キッチナー(Kitchener)、オンタリオ州、カナダ)を用いて、厚さ約25nmの金電極(直径約2.5mm)を蒸発させてフィルムサンプルの両側に蒸着させる。金属化したフィルムサンプルをシリコーン油(Fisher 460-M3001)浴中に浸漬して、空中でのコロナ放電を回避させる。温度をIKA RCT温度制御器(ウイルミントン(Wilmington)、ノースカロライナ州)により制御する。0℃の低温が、ドライアイス浴を使用してシリコーン油浴を冷却することにより達成される。サンプル固定具を使用して、フィルムの両側の電極を輻射強誘電性テスターの界面に高圧ケーブルを使用して連結する。保磁場は、分極が0の場合、周波数10Hz、最大強度150MV/mを有する電界を用いて得られたヒステリシスループ上の印加電界の値に相当する。
【0102】
誘電率は、下記の例示のプロトコルを使用して、広帯域誘電分光法により測定し得る:Novocontrol Concept 80 広帯域誘電分光計(Montabaur,ドイツ)を温度制御器と共に使用する。適用電圧:1.0Vrms(二乗平均平方根電圧)、周波数:0.01Hz~10MHz、温度:-50~100℃,加熱速度:2℃/分。金電極をフィルムの両表面上に、D-Eループ測定と同じ手順を使用して蒸着させた。電極面積は約0.786cmである。
【0103】
キュリー転移温度は、示差走査熱量計により又は好ましくは上記広帯域誘電分光測定法から決定し得る:それは温度の関数としての誘電率の最大ピークに相当する。
【0104】
ガラス転移温度は、示差走査熱量計により又は好ましくは上記広帯域誘電分光測定法から決定し得る。
【0105】
本発明のフルオロポリマー物体は、電子装置の製造に使用できる。特に、本発明のフルオロポリマーフィルムは電子装置中の多層配置中の層として使用できる。
【0106】
従って、フルオロポリマー物体は、ガラス、シリコン(ケイ素)、金属又はポリマー表面のような1種又はそれ以上の表面に沈着又は張り付けてもよい。1種又はそれ以上のポリマー層又は半導体層又は金属層のような、1種又はそれ以上の層をフルオロポリマー物体上に付着させることができる。
【0107】
”電子装置”とは、単一の電子部品、又は電子回路で1つ又はそれ以上の機能を与え得る一組の電子部品を意味する。
【0108】
いくつかの変形では、該電子装置は更に特定的には電磁線を放出、検出又は制御し得る光電子装置である。
【0109】
本発明に従って製造できる電子装置又は光電子装置の例は、トランジスター、例えば電界効果トランジスター、電子チップ、バッテリー、光電池、有機エレクトロルミネセントダイオード、センサー、作動器、変換器、触覚装置、電気機械システム及び検出器である。
【0110】
本発明の電子装置及び光電子装置は、種々のシステム、例えばテレビ、電話、硬質又は柔軟性スクリーン、太陽光電池モジュール、照明源、エネルギー変換器、電気エネルギー貯蔵システム、人工筋肉、誘電熱量冷却システム等、に使用されそして一体化される。
【実施例
【0111】
下記の実施例は本発明を制限することなく例示する。
【0112】
実施例1-P(VDF-TrFE-HFP)の合成
統計的P(VDF-TrFE-HFP)ランダムターポリマーを懸濁重合により合成した。
VDF(520g,8.13モル),TrFE(358g,4.37モル)及びHFP(163g,1.09モル)を、脱イオン水(1784g)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース安定剤を含む3L反応器に室温で移した。該反応器を48℃まで加熱し、次にラジカル開始剤を加えた。該反応器内部の圧力を、脱イオン水の注入により80バールと100バールの間に維持した。更に670gの水を導入後、反応器を17℃に早急に冷却して重合を停止させた。脱ガス後、粗製生成物を濾過し、そして得られた細かい白色粉末を脱イオン水で洗った。最終生成物を換気したオーブン中、60℃で24時間乾燥した(収率=68%)。58/38/4の最終VDF/TrFE/HFPモル組成物が19F核磁気共鳴(NMR)分光分析により決定された。ジメチルホルムアミド中のSEC結果に基づき、ターポリマーのMnは153.2kg.mol-1であり、多分散指数は3.0であった。
【0113】
実施例2-フィルム加工
フィルムを、種々のフルオロポリマーを熱間圧縮することにより得た。2枚のカプロンフィルムに挟まれた粉末サンプルを、開いた熱盤の間で190℃にて10分間加熱した。該フィルム中に気泡が捕らえられるのを避けるために、脱ガス工程を圧縮と解放の繰り返しにより3サイクル行った。次に、4000psiの圧力を急速に加えた。5分間保持した後、該サンプルを液体窒素中に入れて急冷して、大きい結晶の形成を防止した。得られたフィルムを、一軸伸張機を用いて室温で(約20℃)で12~600mm/分で400%延伸率まで延伸した。該フィルムを、65℃で末端を固定した後加工熱アニールステップに付した。
【0114】
D-Eヒステリシスループを上記のプロトコルに従って測定した。それらを図1に(A)比較用の急冷したP(VDF-TrFE)50/50コポリマー、(B)実施例1で製造した急冷P(VDF-TrFE-HFP)ターポリマー、及び(C)本実施例で得た延伸P(VDF-TrFE-HFP)ターポリマーについて示す。
【0115】
誘電率を、上記のプロトコルに従って延伸P(VDF-TrFE-HFP)ターポリマーに対して測定した。温度の関数としての結果を図2に示す。頂部から底部までの異なる曲線が、それぞれ1Hz,10Hz,100Hz,1kHz,10kHz,100kHz及び1MHzの周波数で得られた。キュリー転移温度Tcは1Hzで48℃と決定された。

図1A
図1B
図1C
図2