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<図1A>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】センサおよびセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6874 20180101AFI20220304BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220304BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220304BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6876 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12N15/09 Z ZNA
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019572160
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 US2019036979
(87)【国際公開番号】W WO2020005557
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】62/692,468
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2021376
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ムーン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531978(JP,A)
【文献】特表2002-540803(JP,A)
【文献】国際公開第2017/189930(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/132727(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その間に空間を有する2つの電極と、
標識ヌクレオチドのヌクレオチドを新生鎖に組み込むように構成された固定化ポリメラーゼであって、前記標識ヌクレオチドは連結分子によってスイッチ鎖に連結されたヌクレオチドを含む、固定化ポリメラーゼと、
該2つの電極に取り付けられた変調可能な導電性チャネルであって、前記2つの電極に電気的に接続され、前記2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含み、該修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが、
部分的に結合した第1のポリヌクレオチド鎖および第2のポリヌクレオチド鎖と、
ヌクレオチドが欠落している前記第1のポリヌクレオチド鎖のギャップであって、
前記スイッチ鎖を少なくとも部分的に受け入れるように構成されたギャップと、
該第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している前記第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基と、
を含む、変調可能な導電性チャネルと、
を備える、センサ。
【請求項2】
前記ギャップの長さが約10nm~約50nmである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記固定化ポリメラーゼが、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーに結合されている、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
i)リンカーが、それぞれ、前記第1のポリヌクレオチド鎖の各末端を、前記2つの電極のそれぞれ1つに結合させる、もしくは
ii)リンカーが、それぞれ、前記第2のポリヌクレオチド鎖の各末端を、前記2つの電極のそれぞれ1つに結合させる、または
iii)iおよびiiの両方、
である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも1つがグアニン塩基であるか、または前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の各々がグアニン塩基である、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む前記スイッチ鎖が、前記ギャップの複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と会合したときに、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーからの応答を検出するための検出器をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
記2つの電極を支持する基板をさらに備え、前記固定化ポリメラーゼが前記基板に結合されている、請求項1、4~6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーに試薬を導入するための流体システムをさらに備え
記試薬が標識ヌクレオチドを含み、
前記スイッチ鎖が前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記2つの電極に取り付けられた複数の他の変調可能な導電性チャネルをさらに備え、前記他の変調可能な導電性チャネルの各々が、前記2つの電極に電気的に接続され、前記2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーをそれぞれ含む、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記変調可能な導電性チャネルが、
前記複数のヌクレオチド塩基が前記ギャップで露出しているときの第1のコンダクタンスと、
前記ギャップの複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部が前記スイッチ鎖の複数の相補的なヌクレオチド塩基と会合したときの、前記第1のコンダクタンスとは異なる第2のコンダクタンスと、
を示す、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記標識ヌクレオチドをさらに含み
前記連結分子が前記ヌクレオチドのリン酸基に結合し、
前記スイッチ鎖は、前記第1のポリヌクレオチド鎖の前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のセンサ
【請求項12】
支持体と、
前記支持体上に作動的に配置され、空間によって隔てられた2つの電極と、
を含む、電子部品と、
液体担体と、
該液体担体中の、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーであって、
部分的に結合した、逆向きの末端を有する2本のポリヌクレオチド鎖と、
前記逆向きの末端の各々に結合したリンカーであって、前記2つの電極のそれぞれ1つに結合するための各リンカーと、
ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖のギャップと、
該第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基と、
を含む、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーと、
標識ヌクレオチドを含む試薬溶液であって、該標識ヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、
ヌクレオチドと、
該ヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子と、
該連結分子に結合したスイッチ鎖であって、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、前記スイッチ鎖と、を含む試薬溶液と、
を含む、ポリマー溶液と、
を備え、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが、各リンカーが前記2つの電極のそれぞれ1つに結合したときに、前記2つの電極間の空間に変調可能な導電性チャネルを形成する、キット。
【請求項13】
a)前記スイッチ鎖の塩基が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基と完全に相補的であるか、または
b)前記スイッチ鎖が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基のうちの対応する塩基と非相補的である不適正塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含むか、または
c)前記スイッチ鎖のヌクレオチド鎖が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも少なくとも1つ少ないヌクレオチドを有するか、または
d)前記スイッチ鎖のヌクレオチド鎖が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも多数のヌクレオチドを有し、前記スイッチ鎖の一部が、前記ギャップで会合したときにステムループを形成するか、または
e)前記スイッチ鎖のヌクレオチド鎖が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも多数のヌクレオチドを有し、
前記スイッチ鎖の一部が、前記ギャップで会合したときにステムループを形成し、かつ
前記スイッチ鎖の他の部分が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基と完全に相補的であるか、または前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基のうちの対応する塩基と非相補的である不適正塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む、
請求項12に記載のキット。
【請求項14】
フローセルと、
該フローセルに組み込まれた電子センサであって
その間に空間を有する2つの電極と、
標識ヌクレオチドのヌクレオチドを新生鎖に組み込むように構成された固定化ポリメラーゼであって、前記標識ヌクレオチドは連結分子によってスイッチ鎖に連結されたヌクレオチドを含む、固定化ポリメラーゼと、
該2つの電極に取り付けられた変調可能な導電性チャネルであって、前記2つの電極に電気的に接続され、前記2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含み、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが以下:
部分的に結合した第1のポリヌクレオチド鎖および第2のポリヌクレオチド鎖と、
ヌクレオチドが欠落している前記第1のポリヌクレオチド鎖のギャップであって、前記スイッチ鎖を少なくとも部分的に受け入れるように構成されたギャップと、
該第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している前記第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基と、
を含む、前記変調可能な導電性チャネルと、
を含む、電子センサと、
を備える、センシングシステム。
【請求項15】
前記フローセルの投入口に試薬を選択的に導入するための試薬送達システムをさらに備え、
前記試薬が試料容器に入っており、前記試薬が前記標識ヌクレオチドを含み、
前記連結分子がヌクレオチドのリン酸基に結合されており
前記スイッチ鎖、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含
記電子センサからの応答を検出するための検出器をさらに備え、
前記固定化ポリメラーゼが、前記修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーまたは前記電子センサの支持体に固定されている、請求項14に記載のセンシングシステム。
【請求項16】
鋳型ポリヌクレオチド鎖を、i)2つの電極間の空間を橋架し、2つの電極に電気的に接続されている変調可能な導電性チャネルか、またはii)前記2つの電極を支持する基板につながれたポリメラーゼを有する電子センサに導入する工程であって、前記変調可能な導電性チャネルが、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含み、
該修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが、
部分的に結合した第1のポリヌクレオチド鎖および第2のポリヌクレオチド鎖と、
ヌクレオチドが欠落している前記第1のポリヌクレオチド鎖のギャップであって、
前記スイッチ鎖を少なくとも部分的に受け入れるように構成されたギャップと、
該第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している前記第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基と、
を含む、導入する工程と、
複数の標識ヌクレオチドを含む試薬を前記電子センサに導入することで、複数の前記標識ヌクレオチドのうちの1つのヌクレオチドがポリメラーゼに会合し、複数の前記標識ヌクレオチドのうちの1つのヌクレオチド特異的スイッチ鎖が、前記ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部に会合する、工程と、
前記ギャップでの会合に応答して、前記電子センサの応答を検出する工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記電子センサの応答を、前記会合したヌクレオチド特異的スイッチ鎖に関連付ける工程と、
前記会合したヌクレオチド特異的スイッチ鎖に基づいて、前記標識ヌクレオチドのうちのそのヌクレオチドを識別する工程と、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヌクレオチド特異的スイッチ鎖を前記ギャップから解離させるために加熱する工程をさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年6月29日に出願された米国仮出願第62/692,468号、および2018年7月23日に出願されたオランダ出願第N2021376号の利益を主張する;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
EFS-Web経由で本明細書に添えて提出される配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ファイル名はILI149BPCT_IP-1687-PCT_sequence_listing_ST25.txt、ファイルサイズは366バイト、ファイル作成日は2019年6月7日である。
【背景技術】
【0003】
生物学的または化学的研究における様々なプロトコルは、局所的な支持体表面上で、または予め画定された反応チャンバ内で、多数の制御された反応を実行することを伴う。次いで指定の反応を観察または検出することができ、その後の分析は、反応に関与する化学物質の特性を同定または明らかにするのに役立ち得る。例えば、いくつかの多重アッセイにおいて、識別可能なラベル(例えば、蛍光ラベル)を有する未知の分析物を、制御された条件下で数千の既知プローブにさらすことができる。各既知プローブを、マイクロプレートの対応するウェルに沈着させることができる。既知プローブとウェル内の未知の分析物との間で起こる任意の化学反応を観察することは、分析物の特性を同定または明らかにするのに役立ち得る。そのようなプロトコルの他の例としては、シーケンシング・バイ・シンセシス(SBS)またはサイクリック・アレイ・シーケンシングなどの既知DNAシーケンシングプロセスが挙げられる。ポリヌクレオチドシーケンシング技法では、分析は、反応に関与するポリヌクレオチドの特性を同定または明らかにするのに役立ち得る。
【発明の概要】
【0004】
(緒言)
本明細書に開示する第1の態様は、センサである。一例では、センサは、以下のものを備える:その間に空間を有する2つの電極と;2つの電極に取り付けられた変調可能な導電性チャネルであって、2つの電極に電気的に接続され、2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが以下のものを含む、変調可能な導電性チャネル:部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖と;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖のギャップと;第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基。
【0005】
センサの一例では、ギャップの長さは約10nm~約50nmである。
【0006】
センサの一例は、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーに結合したポリメラーゼをさらに含む。
【0007】
センサの一例では、i)リンカーは、それぞれ、第1のポリヌクレオチド鎖の各末端を、2つの電極のそれぞれ1つに結合させる;もしくはii)リンカーは、それぞれ、第2のポリヌクレオチド鎖の各末端を、2つの電極のそれぞれ1つに結合させる;またはiii)iおよびiiの両方。
【0008】
センサの一例では、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも1つはグアニン塩基である。
【0009】
センサの一例では、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の各々はグアニン塩基である。
【0010】
センサの一例は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含むスイッチ鎖が、ギャップの複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と会合したときに、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーからの応答を検出するための検出器をさらに備える。
【0011】
センサの一例は、以下のものをさらに備える:2つの電極を支持する基板と;基板に結合したポリメラーゼ。
【0012】
センサの一例は、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーに試薬を導入するための流体システムをさらに備える。一例では、試薬は標識ヌクレオチドを含み、標識ヌクレオチドのうちの少なくとも1つは以下のものを含む:ヌクレオチドと;ヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子と;連結分子に結合したスイッチ鎖であって、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、スイッチ鎖。
【0013】
センサの一例は、2つの電極に取り付けられた複数の他の変調可能な導電性チャネルをさらに備え、他の変調可能な導電性チャネルの各々は、2つの電極に電気的に接続され、2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーをそれぞれ含む。
【0014】
センサの一例では、変調可能な導電性チャネルは以下のものを示す:複数のヌクレオチド塩基がギャップで露出しているときの第1のコンダクタンスと;ギャップの複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部が相補的なヌクレオチド塩基と会合したときの、第1のコンダクタンスとは異なる第2のコンダクタンス。
【0015】
本明細書に開示するセンサの任意の特徴を、任意の望ましい方法および/または構成で、ならびに/あるいは本明細書に開示する任意の他の例と組み合わせてもよいことが理解される。
【0016】
本明細書に開示する第2の態様は、以下のものを含む、標識ヌクレオチドである:ヌクレオチドと;ヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子と;連結分子に結合したスイッチ鎖であって、第1の態様に記載のセンサのギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、スイッチ鎖。
【0017】
本明細書に開示する第3の態様は、以下のものを備える、キットである:以下のものを含む、電子部品;支持体と;支持体上に作動的に配置され、空間によって隔てられた2つの電極;および以下のものを含む、ポリマー溶液;液体担体と;液体担体中の、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーであって、以下のものを含む、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー:部分的に結合した、逆向きの末端を有する2本のポリヌクレオチド鎖と;逆向きの末端の各々に結合したリンカーであって、2つの電極のそれぞれ1つに結合するための各リンカーと;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖のギャップと;第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基;各リンカーが2つの電極のそれぞれ1つに結合したときに、2つの電極間の空間に変調可能な導電性チャネルを形成するための、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー。
【0018】
一例では、キットは、標識ヌクレオチドを含む試薬溶液をさらに含み、標識ヌクレオチドのうちの少なくとも1つは以下のものを含む:ヌクレオチドと;ヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子と;連結分子に結合したスイッチ鎖であって、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、スイッチ鎖。キットの一例では、スイッチ鎖の塩基は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基と完全に相補的である。キットの別の例では、スイッチ鎖は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基のうちの対応する塩基と非相補的である不適正塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む。キットのさらに別の例では、スイッチ鎖のヌクレオチド鎖は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも少なくとも1つ少ないヌクレオチドを有する。キットのさらに別の例では、スイッチ鎖のヌクレオチド鎖は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも多数のヌクレオチドを有し、スイッチ鎖の一部は、ギャップで会合したときにステムループを形成する。キットの一例では、スイッチ鎖のヌクレオチド鎖は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基よりも多数のヌクレオチドを有する;スイッチ鎖の一部は、ギャップで会合したときにステムループを形成する;およびスイッチ鎖の他の部分は、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基と完全に相補的であるか、またはギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基のうちの対応する塩基と非相補的である不適正塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。
【0019】
キットの任意の特徴を、任意の望ましい方法で組み合わせてもよいことが理解される。さらに、キットの特徴および/またはセンサの特徴および/または標識ヌクレオチドの特徴の任意の組み合わせを、本明細書に開示する任意の例と一緒に使用してもよく、ならびに/あるいはそれらと組み合わせてもよいことが理解される。
【0020】
第4の態様では、センシングシステムは、以下のものを備える:フローセルと;以下のものを含む、フローセルに組み込まれた電子センサ:その間に空間を有する2つの電極と;2つの電極に取り付けられた変調可能な導電性チャネルであって、2つの電極に電気的に接続され、2つの電極間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーが以下のものを含む、変調可能な導電性チャネル:部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖と;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖のギャップと;第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基。
【0021】
一例では、センシングシステムは、フローセルの投入口に試薬を選択的に導入するための試薬送達システムをさらに備える。一例では、試薬は試料容器に入っており、試薬は標識ヌクレオチドを含み、標識ヌクレオチドのうちの少なくとも1つは以下のものを含む:ヌクレオチドと;ヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子と;連結分子に結合したスイッチ鎖であって、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含む、スイッチ鎖。
【0022】
センシングシステムの一例は、電子センサからの応答を検出するための検出器をさらに備える。
【0023】
センシングシステムの一例は、以下のものをさらに含む:修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーまたは電子センサの支持体に固定されたポリメラーゼと;電子センサに導入される鋳型ポリヌクレオチド鎖。
【0024】
センシングシステムの任意の特徴を、任意の望ましい方法で組み合わせてもよいことが理解される。さらに、センシングシステムの特徴および/またはセンサの特徴および/またはキットの特徴および/または標識ヌクレオチドの特徴の任意の組み合わせを、本明細書に開示する任意の例と一緒に使用してもよく、ならびに/あるいはそれらと組み合わせてもよいことが理解される。
【0025】
本明細書に開示する第5の態様は、方法である。一例では、本発明の方法は、以下の工程を含む:鋳型ポリヌクレオチド鎖を、i)2つの電極間の空間を橋架し、2つの電極に電気的に接続されている変調可能な導電性チャネルか、またはii)2つの電極を支持する基板につながれたポリメラーゼを有する電子センサに導入する工程であって、変調可能な導電性チャネルが、以下のものを含む修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーを含む、工程:部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖と;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖のギャップと;第1のポリヌクレオチド鎖のギャップで露出している第2のポリヌクレオチド鎖の複数のヌクレオチド塩基;標識ヌクレオチドを含む試薬を電子センサに導入することで、標識ヌクレオチドのうちの1つのヌクレオチドがポリメラーゼに会合し、標識ヌクレオチドのうちのそのヌクレオチド特異的スイッチ鎖が、ギャップで露出している複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部に会合する、工程;およびギャップでの会合に応答して、電子センサの応答を検出する工程。
【0026】
本発明の方法の一例は、以下の工程をさらに含む:電子センサの応答を、会合したヌクレオチド特異的スイッチ鎖に関連付ける工程と;会合したヌクレオチド特異的スイッチ鎖に基づいて、標識ヌクレオチドのうちのそのヌクレオチドを識別する工程。
【0027】
本発明の方法の一例は、ヌクレオチド特異的スイッチ鎖をギャップから解離させるために加熱する工程をさらに含む。
【0028】
本発明の方法の任意の特徴を、任意の望ましい方法で組み合わせてもよいことが理解される。さらに、本発明の方法の特徴および/またはセンシングシステムの特徴および/またはセンサの特徴および/またはキットの特徴および/または標識ヌクレオチドの特徴の任意の組み合わせを、本明細書に開示する任意の例と一緒に使用してもよく、ならびに/あるいはそれらと組み合わせてもよいことが理解される。
【0029】
本開示の例の特徴は、以下の発明を実施するための形態および図面を参照することにより明らかになり、ここでは、類似の参照数字は、同一ではないかもしれないが同様の構成要素に対応している。簡潔さのために、既に説明した機能を有する参照数字または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して説明される場合とされない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1Aは、本明細書に開示するセンサの一例の概略図である。図1Bは、センサの一例および修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーに試薬を導入するためのセンサの流体システムの一例の概略図である。
図2】本明細書に開示する標識ヌクレオチドの一例の概略図である。
図3図3Aは、異なるスイッチ鎖を含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーのギャップで露出しているヌクレオチド塩基に会合した、異なる例示的な標識ヌクレオチドの断面概略図である。図3Bは、異なるスイッチ鎖を含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーのギャップで露出しているヌクレオチド塩基に会合した、異なる例示的な標識ヌクレオチドの断面概略図である。図3Cは、異なるスイッチ鎖を含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーのギャップで露出しているヌクレオチド塩基に会合した、異なる例示的な標識ヌクレオチドの断面概略図である。図3Dは、異なるスイッチ鎖を含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマーのギャップで露出しているヌクレオチド塩基に会合した、異なる例示的な標識ヌクレオチドの断面概略図である。
図4】フローセルおよび本明細書に開示するセンサの一例を含むセンシングシステムの一例の概略的透視図である。
図5】センシングシステムの一例の概略図である。
図6】本明細書に開示する方法の一例の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
核酸シーケンシング手順における1分子検出のために使用され得る電子/電気センサを、本明細書に開示する。このセンサは、2つの電極に電気的に取り付けられた変調可能な導電性チャネルを含む。変調可能な導電性チャネルは、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー(本明細書では修飾「dsNA」と称する)を含み、したがって、導電性分子ナノワイヤと称することもできる。修飾dsNAのポリヌクレオチド鎖すなわちポリヌクレオチドストランドの一方は、ヌクレオチド塩基が露出しているギャップを有する。ポリヌクレオチド鎖の他方は、一方の電極から他方の電極に延在しており、したがって、ギャップでヌクレオチド塩基が露出しているとき(および1分子検出が行われていないとき)であっても、変調可能な導電性チャネルは、2つの電極間の導通経路を提供する。ギャップのヌクレオチド塩基は、ギャップのヌクレオチド塩基と相補的な少なくともいくつかのヌクレオチド塩基を有するスイッチ鎖と会合することができる。スイッチ鎖がギャップで会合すると、導通経路が拡大し、導電性チャネルのコンダクタンスが変調される。したがって、変調可能な導電性チャネルは、複数のヌクレオチド塩基がギャップで露出しているときの第1のコンダクタンスと;ギャップの複数のヌクレオチド塩基の少なくとも一部が相補的なヌクレオチド塩基と会合したときの、第1のコンダクタンスとは異なる第2のコンダクタンスを示す。一例では、ギャップでヌクレオチド塩基が露出しているとき、変調可能な導電性チャネルの伝導率は比較的低い。対照的に、スイッチ鎖がギャップで会合すると、変調可能な導電性チャネルの伝導率は、いくつかの例では、桁違いに変化する(例えば、上昇または低下する)。
【0032】
スイッチ鎖は、標識ヌクレオチドの一部であってもよく、標識ヌクレオチドは、スイッチ鎖に連結した特定のヌクレオチドを含む。核酸シーケンシング手順の間に特定のヌクレオチドが新生鎖に組み込まれているため、スイッチはギャップで会合し、その結果、変調可能な導電性チャネルの伝導率の変化をもたらす。ヌクレオチドとスイッチ鎖は互いに特異的であるため、スイッチに関連付けられた伝導率の変化は、ヌクレオチドにも関連付けられる。したがって、伝導率の変化を使用して、新生鎖に組み込まれているヌクレオチドの塩基を識別することができる。
【0033】
次に図1Aを参照すると、センサ10の一例が描かれている。例示的なセンサ10は、電気/電子センサである。センサ10は、その間に空間を有する2つの電極12、14と、2つの電極12、14に取り付けられた変調可能な導電性チャネル16とを含む。変調可能な導電性チャネルは、2つの電極12、14に電気的に接続され、2つの電極12、14間の空間を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー(すなわち修飾dsNA)16’を含み、修飾dsNA16’は、部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖18、20と;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22と;第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22で露出している第2のポリヌクレオチド鎖20の複数のヌクレオチド塩基24とを含む。
【0034】
電極12、14は、修飾dsNA16’/変調可能な導電性チャネル16と電気的に通信しており、したがって、センサ10が作動しているときには、電極12、14の間に一定の導通経路が存在する。前述したように、この導通経路は、ギャップ22におけるスイッチ鎖の会合によって変調可能である。
【0035】
修飾dsNA16’に化学的および電気的に結合することができる任意の適当な電極材料を使用することができる。適当な電極材料の例としては、金、白金、炭素、インジウムスズ酸化物などが挙げられる。
【0036】
修飾dsNA16’は、部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖18、20を含む核酸ポリマーである。「部分的に結合した」とは、2本の鎖18、20のヌクレオチド塩基の一部が互いに水素結合して二重らせんを形成しているが、一方の鎖18はヌクレオチドが存在しないギャップ22を有することを意味する。一方の鎖18のギャップ22では、他方の鎖20のヌクレオチド塩基が露出している。「露出している」とは、これらのヌクレオチドの塩基が別のヌクレオチドに結合しておらず、したがって相補的なヌクレオチドとの結合、ハイブリダイゼーション、または他の方法での会合に利用可能であることを意味する。
【0037】
2本のポリヌクレオチド鎖18、20のヌクレオチドは天然ヌクレオチドであってもよい。天然ヌクレオチドは、窒素含有複素環塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基を含む。2本のポリヌクレオチド鎖18、20の天然ヌクレオチドの例としては、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。リボヌクレオチドでは、糖はリボースであり、デオキシリボヌクレオチドでは、糖はデオキシリボース、すなわちリボースの2’位に存在する水酸基を欠いた糖である。例示的には、ヌクレオチドは、複数のリン酸基(例えば、三リン酸(すなわち、ガンマリン酸)、 四リン酸、五リン酸、六リン酸(図5に示すように)など)を含むため、ポリリン酸の形態である。複素環塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基、ピリミジン塩基、または任意の他の核酸塩基類似体であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体などが挙げられる。ピリミジン塩基には、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体が含まれる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。ポリヌクレオチド鎖18、20はまた、任意の核酸類似体を含んでもよい。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、または核酸塩基のいずれかが改変されていてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ユニバーサル塩基またはペプチド核酸(PNA)などのリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。
【0038】
本明細書で述べたように、第1のポリヌクレオチド鎖18は、ヌクレオチドが存在しないギャップ22を有する。ギャップ22は、鎖18に沿った任意の場所、例えば、鎖18の中心または中心付近、鎖18のいずれかの末端、鎖18の中心と一末端との間などに位置していてもよい。したがって、いくつかの例では、第1のポリヌクレオチド鎖18は、ギャップ22によって切り離された2本の短い鎖を含む。他の例では(例えば、ギャップ22が鎖18のいずれかの末端にあるとき)、第1のポリヌクレオチド鎖18は、単一の連続鎖である。まだ他の例では、第1のポリヌクレオチド鎖18は、ポリマー骨格に沿って複数のギャップ18を有していてもよい。ギャップ(単数または複数)22は、dsNA16’の全長よりも短い任意の長さを有していてもよい。一例では、各ギャップ22の長さは、約5nm~約60nmである。別の例では、各ギャップ22の長さは、約10nm~約50nmである。さらに別の例では、各ギャップ22の長さは、約20nm~約40nmである。ギャップ22の長さはメートル単位として規定されているが、ギャップ長は、ギャップ22に収まり得るヌクレオチドの数、またはギャップ22で露出している第2のポリマー鎖20のヌクレオチド塩基の数の観点からも定義され得ることが理解されるであろう。第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ(単数または複数)22は、修飾dsNA16’の伝導率を低下させる。
【0039】
第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22において、第2のポリマー鎖20の複数のヌクレオチドが露出している。特に、これらのヌクレオチドの塩基24が露出している。露出している塩基24は、すべて同じ塩基であってもよいし、異なる塩基の組み合わせであってもよい。一例では、露出している塩基24の少なくとも1つはグアニン(G)である。この例では、他の露出している塩基24は、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、および/またはウラシル(U)の任意の1つまたは任意の組み合わせであってもよい。別の例では、露出している塩基24の各々はグアニン(G)である。グアニン(G)塩基が他の塩基よりも良好に電気を伝えるため、ギャップ22で露出している複数のグアニン(G)塩基を一列に含むことが好ましい場合がある。
【0040】
2本の部分的に結合したポリヌクレオチド鎖は逆向きの末端を有し、リンカーは逆向きの末端の各々に結合していてもよい。本明細書に開示する例では、i)リンカーは、それぞれ、第1のポリヌクレオチド鎖18の各末端を、2つの電極12、14のそれぞれ1つに結合させる;もしくはii)リンカーは、それぞれ、第2のポリヌクレオチド鎖の各末端を、2つの電極のそれぞれ1つに結合させる;またはiii)iおよびiiの両方。図1は、リンカー26を介して電極12、14に結合された第2のポリヌクレオチド鎖20を図示しているが、第1のポリヌクレオチド鎖18または両方の鎖18、20が、それぞれのリンカー26を介して電極12、14に結合されてもよいことが理解されるであろう。したがって、第1および/または第2のポリヌクレオチド鎖18、20のそれぞれの5’末端および3’末端に、リンカー26が結合されていもよい。リンカー26は、修飾dsNA16’を電極12、14に電気的に接続した。リンカー26は、それぞれの電極12、14に化学的に結合することもでき、それにより、修飾dsNA16’を電極12、14の間で橋架することができる。したがって、リンカー26は、電極材料によって決められてもよい。例として、チオラートまたはアミンリンカーは金電極に結合することができ、チオールリンカーは白金電極に結合することができ、シランリンカー(例えば、アジドシラン)はITO電極に結合することができる。それぞれのリンカー26の電極12、14の1つへの結合は、リンカーおよび電極材料に応じて、共有結合、配位結合、または別の化学的結合もしくは物理的結合を介してなされ得る。リンカー26はまた、修飾dsNA16’が電極12、14の各々に結合したときに電極12、14間で導通経路が確立されるように、電気的に導電性である。
【0041】
本明細書に開示するセンサ10の任意の例は、2つの電極12、14に取り付けられた複数の他の変調可能な導電性チャネル16を含むことができ、他の変調可能な導電性チャネル16の各々は、2つの電極12、14に電気的に接続され、2つの電極12、14間の空間を橋架する、それぞれの修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16’を含む。言い換えると、センサ10は、2つ以上の部分的に2本鎖の核酸ポリマー16’を含むことができ、ここで各修飾dsNA16’は2つの電極12、14に電気的に接続されている。複数のチャネル16は、(複数の修飾dsNA16’鎖を結合させることによって)製造が相対的に容易であり、スイッチ鎖(単数または複数)が会合することができる複数のギャップ22を設ける。複数のチャネル16では、ベース信号(例えば、スイッチ鎖(単数または複数)がギャップ(単数または複数)22に会合していないとき)は比較的高く、それぞれのスイッチ鎖が複数の変調可能な導電性チャネル16に会合すると、検出される信号は増強され得る。
【0042】
図1Aには示していないが、センサ10はまた、電極12、14が配置される基板または支持体を含んでもよい。支持体/基板13の一例を図1Cに示す。支持体/基板13は、電極12、14を置くことができる任意の固体表面であってもよい。任意の非導電性または半導電性の固体表面を使用することができる。また、固体表面は、1分子シーケンシング操作で使用される液体、試薬などに対して非透過性であり、不活性であってもよい。適当な支持体/基板13の例としては、エポキシシロキサン、ガラスおよび変性または機能性ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(Chemours社のTEFLON(登録商標)など)、シクロオレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(Zeon社のZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなど)、ナイロン、セラミック/セラミック酸化物、シリカ、溶融シリカ、またはシリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコンおよび変性シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(TaO)または他の酸化タンタル(単数または複数)(TaO)、酸化ハフニウム(HaO)、無機ガラスなどが挙げられる。また、支持体または基板13は、その表面に二酸化ケイ素もしくは酸化タンタルまたは他のセラミック酸化物の被覆層が設けられたガラスあるいはシリコンであってもよい。
【0043】
また、図1Aには示していないが、センサ10は、センサ10の電気的応答を検出することができる検出器を含んでもよい。検出器15の例を、図1B図4、および図5に示す。一例では、検出器15は電流計である。図5を参照してさらに詳細に説明するように、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24の少なくとも一部と相補的な塩基を含むヌクレオチド鎖を含むスイッチ鎖28(図2に示す)が、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24の少なくとも一部に会合するときに、修飾dsNA16’(したがって、変調可能な導電性チャネル16)の伝導率が増加し得る。
【0044】
図1Bに示すように、センサ10は、変調可能な導電性チャネル16に試薬を導入するための流体システム17をさらに含んでもよい。この流体システム17は、試薬をdsNA16’に送達することができるか、または試薬をdsNA16’に近接して収容することを可能にする任意の流体デバイスであってもよい。図1Bに示すように、流体システム17は、支持体/基板13に着脱可能なフローセル蓋であってもよい。流体システム17のこの例では、試薬が導入され得る入口19を含む。この流体システムの壁は、試薬をdsNA16’に近接した状態で維持する。別の例(図示せず)として、流体システム17は、試薬を変調可能な導電性チャネル16/dsNA16’に送達するために使用され得るピペット(または他の送達装置)であってもよい。この例では、支持体/基材13は、試薬を受け取ることができ、試薬が変調可能な導電性チャネル16/dsNA16’に接触することを可能にする、変調可能な導電性チャネル16/dsNA16’に隣接する溝を有していてもよい。いくつかの例示的な流体システムを提供したが、センサ10は、試薬を変調可能な導電性チャネル16/dsNA16’に送達することができ、および/または試薬を変調可能な導電性チャネル16/dsNA16’の近接に収容させる任意の流体システム17を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0045】
本明細書に開示するセンサ10は、単一分子感度を有効にし得る。さらに、アレイ(すなわち、基板/支持体13上に配置された複数のセンサ10)に配置される場合、密度(すなわち、センサ/面積)を非常に高くすることができるように、非常に短いセンサ間距離を利用してもよい。
【0046】
センサ10を形成するために、任意の適当な方法を使用してもよい。一例では、修飾dsNA16’を合成することができ、次いで、修飾dsNA16’を電極12、14に結合させ、2つの電極12、14間の空間に変調可能な導電性チャネル16を形成することができる。
【0047】
修飾dsNA16’は、第2のポリヌクレオチド鎖20を合成し、次いで、第2のポリヌクレオチド鎖20と、適当な位置(単数または複数)で第2のポリヌクレオチド鎖20に結合する相補鎖(単数または複数)とを混合することによって作ることができる。その後、混合物をアニーリングさせ、結合を開始させることができる。一例では、結果として得られる修飾dsNA16’の2つの末端の間のどこかにギャップ22が形成されるように、2本の相補鎖が第2のポリヌクレオチド鎖20のそれぞれの部分に結合することができる。別の例では、結果として得られる修飾dsNA16’の1つの末端にギャップ22が形成されるように、第2のポリヌクレオチド鎖20よりも短い1本の相補鎖が第2のポリヌクレオチド鎖20の一部分に結合することができる。第2のポリヌクレオチド鎖20および結合して第1のポリヌクレオチド鎖18を形成する相補鎖(単数または複数)は、ギャップ22の長さおよびギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24を制御するように選択されてもよいことが理解されるであろう。
【0048】
その後、修飾dsNA16’を電極12、14に結合させることができる。任意の適当な技法を用いてリンカー26を修飾dsNA16’に結合させることができ、次いでリンカー26を電極12、14に結合させることができる。一例では、チオール修飾DNA塩基を、鎖18、20の3’および5’末端でコンジュゲートさせることができる。一例では、電極12、14を修飾dsNA16’の溶液中で適当な時間露出させ、次いで、適当な緩衝液で洗い流して非結合修飾dsNA16’を除去することにより、修飾dsNA16’を電極12、14に固定化させることができる。
【0049】
センサ10の作製方法において、電極12、14は、検出器15に電気的に接続されていてもよい。
【0050】
いくつかの例では、センサ10は、予め組み立てられた状態であってもよい。
【0051】
他の例では、センサ構成要素はキットの一部であってもよく、キット構成要素を使用してセンサ10を組み立てることができる。キットの一例は、電子部品とポリマー溶液とを含む。電子部品は、支持体13と、支持体上に作動的に配置され、空間によって隔てられた2つの電極12、14とを含む。「作動的に配置される」とは、電極12、14は、それらの作動を可能にする電子回路に接続されていてもよい(例えば、検出器15および電源に一旦接続される)ことを意味する。電子回路は、検出器15および電源に電気的に接続可能であってもよい。ポリマー溶液は、液体担体と、液体担体中の修飾dsNA16’とを含み、ここで、修飾dsNA16’は、本明細書に記載した例のいずれかである。本明細書に記載のように、修飾dsNA16’は、部分的に結合した、逆向きの末端を有する2本のポリヌクレオチド鎖18、20を含む。修飾dsNA16’は、逆向きの末端の各々において、一方または両方の鎖18および/または20に結合したリンカー26を有していてもよい。一例では、修飾dsNA16’は、クエン酸生理食塩水などのイオン性塩緩衝液中にミリモル~モル濃度である。
【0052】
キットを使用するとき、使用者は、ポリマー溶液を電子部品上に沈着させ、リンカー26がそれぞれの電極12、14に結合するのに適した時間の間、ポリマー溶液を電子部品上に留めることができ、次いで、電子部品を適当な緩衝液で洗い流して非結合修飾dsNA16’を除去することができる。
【0053】
センサ10を形成するための構成要素を含むことに加えて、キットのいくつかの例は、センサ10と共に使用される試薬溶液を含むこともできる。試薬溶液は、図2を参照して説明する標識ヌクレオチドを含む。
【0054】
次に図2を参照すると、上述したスイッチ鎖28を含む標識ヌクレオチド30の一例が描かれている。標識ヌクレオチド30は、ヌクレオチド32と、ヌクレオチド22のリン酸基に結合した連結分子34と、連結分子34に結合したスイッチ鎖28とを含み、スイッチ鎖28は、センサ10のギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24の少なくとも一部と相補的な塩基36を含むヌクレオチド鎖を含む。標識ヌクレオチド30は、構造的にまたは化学的に天然ヌクレオチドとは異なるため、非天然ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドとみなされてもよい。
【0055】
標識ヌクレオチド30のヌクレオチド32は、天然ヌクレオチドであってもよい。天然ヌクレオチドは、窒素含有複素環塩基、糖、および3個以上のリン酸基を含む。天然ヌクレオチドの例としては、例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。上述したように、リボヌクレオチドでは、糖はリボースであり、デオキシリボヌクレオチドでは、糖はデオキシリボースである。例示的には、ヌクレオチド32は、複数のリン酸基(例えば、三リン酸基、 四リン酸基、五リン酸基、六リン酸基など)を含むため、ポリリン酸の形態である。複素環塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基(例えば、アデニン(A)もしくはグアニン(G))またはピリミジン塩基(例えば、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U))であり得る。
【0056】
標識ヌクレオチド30はまた、連結分子34を含む。連結分子34は、1つの末端でヌクレオチド32のリン酸基(単数または複数)に化学的に結合することができ、他方の末端でスイッチ鎖28に化学的に結合することができる任意の長鎖分子であり得る。連結分子34はまた、本明細書に開示するシステム40、40’(図4および図5を参照)において使用されるポリメラーゼ38と相互作用しないように選択されてもよい。連結分子34は、例えば、ヌクレオチド32がポリメラーゼ38によって保持されている間に、スイッチ鎖28が電気センサ10のギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24に会合するのに十分な長さを有するように選択される。
【0057】
一例として、連結分子34は、アルキル鎖、ポリ(エチレングリコール)鎖、アミド基、リン酸基、トリアゾールなどの複素環、ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含み得る。アルキル鎖の例は、少なくとも6個の炭素原子を含むことができ、ポリ(エチレングリコール)鎖の例は、少なくとも3つのエチレングリコール単位を含むことができる。
【0058】
以下の例は、標識ヌクレオチド30の一例を示し、ここで連結分子34は、アルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、およびトリアゾールを含む:
【化1】
【0059】
以下の例は、標識ヌクレオチド30のさらに別の例を示し、ここで連結分子34は、アルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、およびリン酸基を含む:
【化2】
【0060】
以下の例は、標識ヌクレオチド30のさらに別の例を示し、ここで連結分子34は、アルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、およびリン酸基を含む:
【化3】
【0061】
以下の例は、標識ヌクレオチド10のさらなる例を示し、ここで連結分子34、34’は、アルキル鎖、アミド基、ポリ(エチレングリコール)鎖、トリアゾール、リン酸基およびポリヌクレオチド鎖を含む:
【化4】
【0062】
いくつかの例示的な連結分子34を記載したが、他の連結分子34を使用してもよいことが理解されるであろう。
【0063】
スイッチ鎖28は、ヌクレオチド鎖である。スイッチ鎖28のヌクレオチドは、ヌクレオチド32と類似しており、すなわち、窒素含有複素環塩基、糖、および3個以上のリン酸基を含む。スイッチ鎖28のヌクレオチドの少なくとも一部は、センサ10のギャップ22で露出している塩基24と相補的な塩基36を含む。したがって、スイッチ鎖28のヌクレオチド配列は、少なくとも部分的には、露出している塩基24の配列によって決まる。
【0064】
一例では、スイッチ鎖28の塩基36は、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24と完全に相補的である。一例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-G-G-G-G-G-Gであり得、スイッチ鎖28Aは、C-C-C-C-C-C-Cであり得る。別の例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-A-G-T-G-C-G-Gであり得、スイッチ鎖28Aは、C-T-C-A-C-G-C-Cであり得る。図3Aに示す例では、スイッチ鎖28Aにおいて、それがギャップ22で露出している塩基24と同じ数の塩基を有し、かつそれに対して完全に相補的である限り、任意の適当な配列が使用されてもよい。完全に相補的なスイッチ鎖28Aを含む標識ヌクレオチド30Aの例を、図3Aに示す。描かれているように、標識ヌクレオチド30Aのスイッチ鎖28Aは、ギャップ22で露出している塩基24にそれ自身を会合させる。より具体的には、この例では、スイッチ鎖28Aのヌクレオチド塩基36の各々は、ポリヌクレオチド鎖18のギャップ22で露出しているその相補的な(ポリヌクレオチド鎖20の)塩基24と一時的に、少なくとも部分的にハイブリダイズする。いくつかの例では、ハイブリダイゼーションは完全ではなく、他の例では、ハイブリダイゼーションは完全である。部分的または完全なハイブリダイゼーションを達成するために、相補的塩基間の相互作用の融解温度を調整することができる。異なるスイッチ鎖28Aとヌクレオチド塩基24間の異なる程度のハイブリダイゼーションにより、異なるスイッチ鎖28Aで異なる時間シグネチャを達成することができる。スイッチ鎖28Aは、組み込まれると、修飾dsNA16’のスイッチを閉じ、これは、dsNA16’の伝導率を著しく変化させ(例えば、増加させ)、チャネル16を変調させ、検出可能な変化をもたらす。
【0065】
別の例では、スイッチ鎖28の塩基36は、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24と完全に相補的ではなく;むしろ、スイッチ鎖28Bは、図3Bに示すように、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24のうちの対応する塩基(24’として示す)と非相補的である不適正塩基42を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。言い換えると、不適正塩基42は、ギャップ22で露出している対応するヌクレオチド塩基24’と相補的ではない。一例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-G-G-G-G-G-Gであり得、スイッチ鎖28Bは、C-C-C-A-C-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Bのアデニンは、ポリヌクレオチド鎖20のギャップ22で露出している対応するグアニンと相補的ではないため、不適正塩基42となる。別の例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24はG-A-G-T-G-C-G-Gであり得、スイッチ鎖28BはC-C-C-A-C-G-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Bの2番目のシトシンは、ポリヌクレオチド鎖20のギャップ22で露出している対応するアデニンと相補的ではないため、不適正塩基42となる。図3Bに示す例では、スイッチ鎖28Bにおいて、それがギャップ22で露出している塩基24と同じ数の塩基を有し、それに対して部分的に相補的であり、かつそれに対して少なくとも1個の不適正塩基を含む限り、任意の適当な配列が使用されてもよい。描かれているように、標識ヌクレオチド30Bのスイッチ鎖28Bは、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24にそれ自身を会合させる。より具体的には、この例では、スイッチ鎖28Bのヌクレオチド塩基36の一部がそれぞれの相補的塩基24に一時的にハイブリダイズしている間、不適正塩基42とポリヌクレオチド鎖20の対応するヌクレオチド塩基24’とは、結合していないままである。スイッチ鎖28Bは、組み込まれると、修飾dsNA16’のスイッチを実質的に閉じ(不適正塩基42のために完全には閉じないが)、これは、dsNA16’の伝導率を著しく変化させ(例えば、増加させ)、チャネル16を変調させ、検出可能な変化をもたらす。いくつかの例では、スイッチ鎖28Bによる伝導率の増加は、不適正塩基42のために、スイッチ鎖28Aで観察される増加ほど大きくない場合があることが理解されよう。
【0066】
さらに別の例では、スイッチ鎖28のヌクレオチド鎖は、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24よりも少なくとも1つ少ないヌクレオチドを有する。このスイッチ鎖28Cの例を、図3Cに示す。スイッチ鎖28Cのヌクレオチドは、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24の一部と相補的である;しかしながら、スイッチ鎖28Cがギャップ22で会合した後は、(塩基が欠落しているために)スイッチ鎖長がより短いため、ヌクレオチド塩基24’’の少なくとも1つは結合していないままである。一例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-G-G-G-G-G-Gであり得、スイッチ鎖28Cは、C-C-C-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Cは、2個の塩基が欠落しているか、またはギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24(24’’を含む)の総数よりも2つヌクレオチドが少ない。別の例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-A-G-T-G-C-G-Gであり得、スイッチ鎖28Cは、T-C-A-C-G-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Cは、1個の塩基が欠落しているか、またはギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24(24’’を含む)の総数よりも1つヌクレオチドが少ない。図3Cに示す例では、スイッチ鎖28Cにおいて、それがギャップ22で露出している塩基24の総数よりも少ない塩基を有し、かつギャップ22で露出している塩基24の一部と相補的である限り、任意の適当な配列が使用されてもよい。図3Cに描かれているように、標識ヌクレオチド30Cのスイッチ鎖28Cがギャップ22にそれ自身を会合させると、i)スイッチ鎖28Cのヌクレオチド塩基36が一時的に、少なくとも部分的にそれぞれの相補的塩基24にハイブリダイズし、ii)スイッチ鎖28が塩基を欠いているために、ポリヌクレオチド鎖20のヌクレオチド塩基24’’の一部は結合していないままである。スイッチ鎖28Cは、組み込まれると、修飾dsNA16’のスイッチを実質的に閉じ(塩基(単数または複数)が欠落しているために完全には閉じないが)、これは、修飾dsNA16’(およびチャネル16)の伝導率を著しく変化させ(例えば、増加させ)、検出可能な変化をもたらす。いくつかの例では、スイッチ鎖28Cによる伝導率の増加は、欠落した塩基のために、スイッチ鎖28Aで観察される増加ほど大きくない場合があることが理解されよう。
【0067】
まだ別の例では、スイッチ鎖28のヌクレオチド鎖は、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24よりも多数のヌクレオチドを有し、スイッチ鎖28の一部は、ギャップ22で会合したときにステムループを形成する。このスイッチ鎖28Dの一例を図3Dに示す。スイッチ鎖28Dのヌクレオチドの一部は、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24と相補的である;しかしながら、スイッチ鎖28Dがギャップ22で会合した後は、スイッチ鎖28Cの非相補的ヌクレオチド36’は結合せずに残り、ステムループ44を形成する。一例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、G-G-G-G-G-G-G-G-Gであり得、スイッチ鎖28Cは、C-C-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Dは、ステムループ44を形成する9個の追加の塩基36’を含む。別の例として、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24は、A-G-T-T-T-T-T-T-Gであり得、スイッチ鎖28Cは、T-C-Cであり得る。この例では、スイッチ鎖28Cは、ステムループ44を形成する6個の追加の塩基36’を含む。図3Dに示す例では、スイッチ鎖28Cにおいて、それがギャップ22で露出している塩基24の総数よりも多い塩基を有し、かつギャップ22で露出している塩基24と相補的な少なくともいくつかのヌクレオチド塩基を含む限り、任意の適当な配列が使用されてもよい。ステムループ44のいずれかの末端のヌクレオチド塩基は、ギャップ22で露出している塩基24に完全に相補的であってもよく、1個または複数個の非相補的塩基を含んでもよく、塩基が欠落していてもよく、または相補的塩基、非相補的塩基、および欠失した塩基の組み合わせを含んでもよい。図3Dに描かれているように、標識ヌクレオチド30Dのスイッチ鎖28Dがギャップ22にそれ自身を会合させると、i)スイッチ鎖28Dのヌクレオチド塩基36の一部が一時的に、少なくとも部分的にそれぞれの相補的塩基24にハイブリダイズし、ii)スイッチ鎖28Dの非相補的ヌクレオチド塩基36’’の一部は結合せずに残り、ステムループ44を形成する。スイッチ鎖28Dは、組み込まれると、修飾dsNA16’のスイッチを閉じ、これは、修飾dsNA16’の伝導率を著しく変化させ(例えば、増加させ)、チャネル16を変調させ、検出可能な変化をもたらす。電子電流の一部は、いずれかの鎖18、20上で流れるため(例えば、両方の鎖18、20が電極12、14に結合しているとき)、ステムループ44を追加することは、大きな抵抗器を並列に追加することに匹敵する。
【0068】
本明細書に開示する標識ヌクレオチド30(例えば、30A、30B、30C、30D)の任意の例を、キットの例の試薬溶液中で、ならびに/または図4および図5に例示するセンシングシステム40、40’中で使用することができる。システム40、40’の各々は、本明細書に開示するセンサ10の例も含む。
【0069】
図4に示すセンシングシステム40の例は、フローセル41と、フローセル41に組み込まれた電子センサ10とを含む。電子センサ10は、2つの電極12、14と;2つの電極12、14を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16とを含み、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16は、部分的に(水素結合を介して)結合した2本のポリヌクレオチド鎖18、20と、ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22と;ギャップ22で露出している第2のポリヌクレオチド鎖20の複数のヌクレオチド塩基24とを含む。フローセル41は、センサ10を収容する容器である。ウェル、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリプレート、ボトルなどの他の容器が、代替としてセンサ10を含んでもよいことが理解される。核酸シークエンス反応などの周期的プロセスは、フローセル41に特に好適である。
【0070】
例示的なフローセル41は、基板/支持体13と、それに直接または間接的に結合された、またはそれと一体化して形成された蓋とを含む。フローセル41は、フローセル41内に含まれる1つのセンサ10またはセンサ10のアレイへのバルク試薬の送達を可能にする流体入口45および流体出口47を含んでもよい。
【0071】
センシングシステム40はまた、フローセル41の投入口(例えば、流体入口45)に試薬を選択的に導入し、センサ10を越えて、流体出口47から流出させるための試薬送達システム49を含んでもよい。試薬送達システム49は、流体入口45に取り外し不能にまたは取り外し可能に取り付けることができるチューブまたは他の流体を含んでもよい。試薬送達システム49は、試料容器51を含んでもよい。試薬(電子センサ10に導入される標識ヌクレオチド30を含む)は、試料容器内に保存されてもよいし、使用直前に調製されて試料容器に導入されてもよい。試薬送達システム49はまた、試薬を試料容器51から回収して流体入口45に送達するためのポンプまたは他の適当な装置を含んでもよい。他の例では、試料容器51は、試薬が重力によって流体入口45に流れ、センサ10を越えて、流体出口47から流出するように配置されている。
【0072】
フローセル41内のセンサ10はまた、センシングシステム40が使用されているときのセンサ10の伝導率の変化を検出するために、検出器15に作動的に接続されていてもよい。
【0073】
システム40’の別の例は、図5に示しており、電子センサ10を含み、電子センサ10は以下のものを含む:2つの電極12、14;2つの電極12、14を橋架する、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16であって、部分的に(水素結合を介して)結合した2本のポリヌクレオチド鎖18、20と、ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22と;ギャップ22で露出している第2のポリヌクレオチド鎖20の複数のヌクレオチド塩基24とを含む、修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16;および電子センサ10に導入される、以下のものを含む別個の試薬:標識ヌクレオチド30であって、その少なくとも1つがヌクレオチド32を含む標識ヌクレオチド30、そのヌクレオチドのリン酸基に結合した連結分子34、連結分子34に結合したスイッチ鎖28であって、ギャップ22で露出された複数のヌクレオチド塩基24の少なくとも一部と相補的な塩基36を含むヌクレオチド鎖を含むスイッチ鎖28。図5に示す例では、ポリヌクレオチド鎖18はACCGGGGTA-gap-ATCCGであり、ポリヌクレオチド鎖20はTGGGCCCCATCCCCCCTAGGC(配列番号1)である。ポリヌクレオチド鎖20において、ヌクレオチド塩基「CCCCCC」は、ギャップ22で露出している(少なくともスイッチ鎖28がそれに会合するまで)。
【0074】
図示していないが、センサ10は、フローセル41(図4)、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリプレート、ボトルなどの容器内または容器の一部に配置されてもよいことが理解されるであろう。適当な容器の別の例は、フローセルである。
【0075】
図5では1つのセンサ10を示しているが、センシングシステム40’は、基板上に配置されたセンサ10のアレイを含み得ることが理解されるであろう。さらに、センシングシステム40’のセンサ10(単数または複数)は、スイッチ鎖28がギャップ22に会合したときの電気センサ10からの応答を検出するために、それぞれの検出器15に電気的に接続されていてもよい。
【0076】
センシングシステム40’のいくつかの例は、修飾dsNA16’に固定されたポリメラーゼ38と、センサ10に導入される鋳型ポリヌクレオチド鎖48とをさらに含む。
【0077】
図5に示すように、センサ10はポリメラーゼ38を含む。一度に1つのヌクレオチドを新生鎖に加えることを触媒することができる任意のDNAポリメラーゼを使用してもよい。DNAポリメラーゼは、以下のファミリーのいずれかに属するものであってもよい:A、B、C、D、X、Y、およびRTである。ファミリーAからの具体例としては、T7 DNAポリメラーゼ、Pol I、Pol γ、Pol Θ、またはPol vが挙げられ;またはファミリーBからの具体例としては、Pol II、Pol B、Pol ζ、Pol α、Pol δ、およびPol εが挙げられ;またはファミリーCからの具体例としては、Pol IIIが挙げられ;またはファミリーDからの具体例としては、Pol D(DP1/DP2ヘテロダイマー)が挙げられ、またはファミリーXからの具体例としては、Pol β、Pol σ、Pol λ、Pol μ、および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼが挙げられ;またはファミリーYからの具体例としては、Pol ι、Pol κ、Pol η、Pol IV、およびPol Vが挙げられ;またはファミリーRTからの具体例としては、テロメラーゼが挙げられる。
【0078】
図5に示すように、ポリメラーゼ38は、テザー46で修飾dsNA16’に固定化される。別の例では、ポリメラーゼ38は、テザー46で基板に固定化される。テザー46は、ポリメラーゼ38のアンカーとして使用され、テザー46は非導電性であることが好ましい場合がある。非導電性テザーは、ポリメラーゼ38が修飾dsNA16’に結合している場合に特に好ましい場合がある。適当なテザー46の例には、いくつかの点で開裂可能なリンクをPEG鎖に沿って有するポリエチレングリコール(PEG)が挙げられ、あるいはニッケルNTA/Hisタグ化学、ストレプトアビジン/ビオチン化学(例えば、修飾dsNA16’に結合したストレプトアビジンおよびポリメラーゼ38に結合したビオチン)、DNA-DNAハイブリダイゼーション、DNA-PNAハイブリダイゼーション、カルボキシルシラン1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、またはポリメラーゼを修飾dsNA16’もしくは基板表面に結合させることができる任意の他の適当なリンカーを挙げることができる。いくつかの例では、テザー46は、ポリメラーゼ38を、修飾dsNA16’から少なくとも10nm離れた位置に保持する。これは、例えば、ポリメラーゼ38に対するコンフォメーションの変化、ポリメラーゼ38の電荷、および/またはポリメラーゼ38によって保持された標的/鋳型ポリヌクレオチド鎖48の電荷が、修飾dsNA16’のセンシング操作を妨げないように、望ましい場合がある。
【0079】
一例では、修飾dsNA16’を、開裂可能なリンクを含むテザー46によって最初にポリメラーゼ38に結合させることができる。この組み合わせを電極12、14に導入し、修飾dsNA16’の逆向きの末端を電極12、14に結合させ、ポリメラーゼ38を、例えばニッケルNTA/Hisタグ化学を介して基板表面に結合させることができる。この例では、開裂可能なリンクを開裂させ、ポリメラーゼ38を修飾dsNA16’から切り離すことができる。この例では、ポリメラーゼ38は修飾dsNA16’に近接しているが、実際には接触していない。化学作用がもたらされるとテザー46が切断され、ポリメラーゼ38は、例えば、基板表面上に、かつセンサ10に近接して保持されることが理解されよう。
【0080】
本明細書で述べたように、システム40、40’の例はまた、センサ10に導入される鋳型ポリヌクレオチド鎖48を含んでもよい。
【0081】
鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、シーケンシングされる任意の試料であり得、DNA、RNA、またはそれらの類似体(例えば、ペプチド核酸)から構成され得る。鋳型(または標的)ポリヌクレオチド鎖48の起源は、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、または天然起源の他の核酸であり得る。場合によっては、そのような起源に由来する鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、本明細書の方法またはシステム40、40’における使用に先立って増幅され得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライマー増幅(RPA)を含むがこれらに限定されない様々な既知増幅技術のいずれかを使用することができる。本明細書に記載の方法またはシステム40、40’における使用に先立って、鋳型ポリヌクレオチド鎖48を増幅することは任意であることが理解されよう。したがって、いくつかの例では、鋳型ポリヌクレオチド鎖48を使用前に増幅しない。鋳型/標的ポリヌクレオチド鎖48は、任意選択で合成ライブラリーに由来し得る。合成核酸は、天然DNAまたはRNA成分を有し得、またはそれらの類似体であり得る。
【0082】
鋳型ポリヌクレオチド鎖48が由来し得る生物学的試料には、例えば、以下に由来するものが含まれる:げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄類、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳類;シロイヌナズナ、トウモロコシ、ソルガム、オートムギ、コムギ、イネ、キャノーラ、またはダイズなどの植物;コナミドリムシなどの藻類;カエノラブディティス・エレガンスなどの線虫;キイロショウジョウバエ、カ、ハエ、ミツバチまたはクモなどの昆虫;ゼブラフィッシュなどの魚;爬虫類;カエルまたはアフリカツメガエルなどの両生類;キイロタマホコリカビ;ニューモシスティス・カリニ、トラフグ、酵母、サッカロマイセス・セレビシエ、またはシゾサッカロマイセス・ポンベなどの真菌;または熱帯熱マラリア原虫。鋳型ポリヌクレオチド鎖48はまた、細菌、大腸菌、ブドウ球菌または肺炎マイコプラズマなどの原核生物;古細菌;C型肝炎ウイルス、エボラウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス;またはウイロイドに由来し得る。鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、上記生物の均質な培養物または集団に由来し得るか、または代替として、例えば群集または生態系内の複数の異なる生物の集合体に由来し得る。
【0083】
さらに、鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、天然由来のものでなくてもよく、既知技術を用いて合成することができる。例えば、遺伝子発現プローブまたはジェノタイピングプローブを合成し、本明細書に記載の例で使用することができる。
【0084】
いくつかの例では、鋳型ポリヌクレオチド鎖48を、1つ以上の大きな核酸の断片として得ることができる。断片化は、例えば、噴霧化、超音波処理、化学的開裂、酵素的開裂、または物理的剪断を含む、当該技術分野で知られている様々な技法のいずれかを用いて実施することができる。断片化はまた、大きな核酸鎖の一部のみをコピーすることによってアンプリコンを生成する特定の増幅技法の使用に由来する場合もある。例えば、PCR増幅は、増幅中にフランキングプライマーがハイブリダイズする位置の間にある元の鋳型のヌクレオチド配列の長さによって定義されるサイズを有する断片を生成する。鋳型ポリヌクレオチド鎖48の長さは、ヌクレオチド数を単位として、またはメートル長(例えば、ナノメートル)を単位としていてもよい。
【0085】
鋳型/標的ポリヌクレオチド鎖48、またはそれらのアンプリコンの集団は、本明細書に記載の方法またはシステム40、40’の特定の適用に対して望まれるまたは適当な平均鎖長を有し得る。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替としてまたは追加として、平均鎖長は、約10ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、または約100,000ヌクレオチドよりも大きい場合がある。標的ポリヌクレオチド鎖48、またはそれらのアンプリコンの集団の平均鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲であり得る。
【0086】
場合によっては、鋳型/標的ポリヌクレオチド鎖48の集団は、その成員の最大長を有する条件下で産生され得るか、さもなければそうなるように構成され得る。例えば、その成員の最大長さは、約100,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替としてまたは追加として、鋳型ポリヌクレオチド鎖48、またはそれらのアンプリコンの集団は、その成員の最小長を有する条件下で産生され得るか、さもなければそうなるように構成され得る。例えば、その成員の最小鎖長は、約10ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、または約100,000ヌクレオチドよりも大きい場合がある。集団内の鋳型ポリヌクレオチド鎖48の最大鎖長および最小鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲であり得る。
【0087】
図5に示すように、シーケンシングされる鋳型ポリヌクレオチド鎖48(例えば、1本鎖DNA鎖)は、標識ヌクレオチド30などの試薬とともに溶液中に導入された後、ポリメラーゼ38に結合される。
【0088】
いくつかの例では、複数の異なる標識ヌクレオチド30(例えば、ヌクレオチド32としてそれぞれdA、dC、dG、およびdTで標識されている)が、センサ10のアレイを含むシステム40、40’において一緒に使用されてもよい。一例では、4つの異なる標識ヌクレオチド30が使用され、それぞれが異なるヌクレオチド32と異なるヌクレオチド特異的スイッチ鎖28とを含む。一例として、標識ヌクレオチド30は、以下のものを含む:ヌクレオチドとしてのデオキシアデノシンポリリン酸と、第1のヌクレオチド特異的スイッチ鎖とを含む第1の標識ヌクレオチド;ヌクレオチドとしてのデオキシグアノシンポリリン酸と、第1のスイッチ鎖とは異なる配列を有する第2のヌクレオチド特異的スイッチ鎖とを含む第2の標識ヌクレオチド;ヌクレオチドとしてのデオキシシチジンポリリン酸と、第1および第2のスイッチ鎖の各々とは異なる配列を有する第3のヌクレオチド特異的スイッチ鎖とを含む第3の標識ヌクレオチド;ならびにヌクレオチドとしてのデオキシチミジンポリリン酸と、第1、第2および第3のスイッチ鎖の各々とは異なる配列を有する第4のヌクレオチド特異的スイッチ鎖とを含む第4の標識ヌクレオチド。したがって、この例では、第1、第2、第3、および第4のヌクレオチド特異的スイッチ鎖は、互いに異なるものである。異なるスイッチ鎖は、(相補的なギャップ22に会合したときに)異なる伝導率の変化を生じ、これを、それらに結合している特定のヌクレオチドを識別するために利用することができる。
【0089】
次に図6を参照すると、方法の一例が描かれている。方法100は、以下の工程を含む:鋳型ポリヌクレオチド鎖48を、i)2つの電極12、14間の空間を橋架し、2つの電極12、14に電気的に接続されている変調可能な導電性チャネル16か、またはii)2つの電極12、14を支持する基板13につながれたポリメラーゼ38を有する電子センサ10に導入する工程であって、変調可能な導電性チャネル16が、以下のものを含む修飾された部分的に2本鎖の核酸ポリマー16’を含む、工程:部分的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖18、20と;ヌクレオチドが欠落している第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22と;第1のポリヌクレオチド鎖18のギャップ22で露出している第2のポリヌクレオチド鎖20の複数のヌクレオチド塩基24(参照番号102);標識ヌクレオチド30を含む試薬を電子センサ10に導入することで、標識ヌクレオチドのうちの1つのヌクレオチド32がポリメラーゼ38に会合し、標識ヌクレオチド30のうちのそのヌクレオチド特異的スイッチ鎖28が、ギャップ22で露出している複数のヌクレオチド塩基24の少なくとも一部に会合する、工程(参照数字104);およびギャップ22での会合に応答して、電子センサ10の応答を検出する工程。図5も、方法100の議論を通して参照される。
【0090】
図5に示すように、センサ10に導入された鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、センサ10またはセンサ10を支持する基板表面につながれたポリメラーゼ38によって所定の位置に保持され得る。図5に示す鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、DNAの鋳型鎖である。鋳型ポリヌクレオチド鎖48は、標識ヌクレオチド30などの試薬とともに、生物学的に安定な溶液中に導入されてもよい。生物学的に安定な溶液は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または線形増幅などのポリメラーゼ塩基導入反応に適した任意の緩衝液であってよい。生物学的に安定な溶液の一例には、pHが7近傍、塩濃度が数ミリモル超、Mg2+イオンがミリモル濃度で存在する緩衝液を挙げることができる。
【0091】
また、図5に示すように、標識ヌクレオチド30は、鋳型ポリヌクレオチド鎖48の標的核酸と相補的な塩基を含んでいてもよい。標識ヌクレオチド30は、鋳型ポリヌクレオチド鎖48にも結合しているポリメラーゼ38によって、その一部が所定の位置に保持される。
【0092】
標識ヌクレオチド30とポリメラーゼ38との間の相互作用および連結分子34の長さにより、スイッチ鎖28がセンサ10のギャップ22に会合することができる。一例では、スイッチ鎖28とギャップ22との会合は、スイッチ鎖28の少なくとも一部と、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24とのハイブリダイゼーションを伴う。生じるハイブリダイゼーションは、ある程度、使用されるスイッチ鎖28(例えば、28A、28B、28C、28D)によって決まる。溶液の温度および/またはイオン濃度は、ギャップ22で露出しているヌクレオチド塩基24の少なくとも一部に対するスイッチ鎖28の完全もしくは部分的なハイブリダイゼーションまたはアニーリングを開始もしくは促進するために調整されてもよい。一例として、スイッチ鎖28は、室温(例えば、約18℃~約22℃)で、50mMの塩濃度を有する溶液中で、ギャップ22で部分的または完全にハイブリダイズするように設計されてもよい。
【0093】
ポリメラーゼ38は、スイッチ鎖28をギャップ22に近接して保持し、それにより、複数のハイブリダイゼーションおよび脱ハイブリダイゼーション事象が発生することを可能にする。対照的に、ランダムに漂っている鎖は、一度ハイブリダイズしてから離れる可能性が高い。スイッチ鎖28は、例えば、融解または別の適当な技法を用いて、解離するまで、ギャップ22に近接して保持され得る。いくつかの例では、ギャップ22でのスイッチ鎖の会合は、数十ミリ秒以上にまで及び得る。この比較的長い相互作用はスイッチを「オン」にし(例えば、コンダクタンスを低い状態から増加させることによってチャネル16を変調する)、伝導率の変化を検出することができる。この比較的長い相互作用は、溶液中に存在する他の標識ヌクレオチド30(すなわち、ランダムな、漂流鎖)とは異なり、これらは拡散して短時間接触することはあっても、センサ10において少なくとも部分的なハイブリダイゼーションおよび脱ハイブリダイゼーション事象のいくつかを経ることはない。これらの他の標識ヌクレオチド30の短い相互作用は、一時的なおよび/または散発的な伝導率の変化を引き起こす場合があり、したがって、ギャップ22に近接して保持されているスイッチ鎖28から生じる伝導率の変化とは区別される。
【0094】
スイッチ鎖28が、露出しているヌクレオチド塩基24に数回、少なくとも部分的にハイブリダイズして脱ハイブリダイズするとき、スイッチ鎖28がヌクレオチド特異的である(すなわち、特定のスイッチ鎖28が特定の塩基に対して選択される)ため、センサ10の応答は、標識ヌクレオチド30の塩基を示すものであり得る。したがって、方法100はまた、センサ10の応答を、会合したヌクレオチド特異的スイッチ鎖28(すなわち、ポリメラーゼ38およびギャップ22に会合した標識ヌクレオチド30)と関連づけ、ヌクレオチド特異的スイッチ鎖28に基づいて、会合した標識ヌクレオチド30(すなわち、ポリメラーゼ38およびギャップ22に会合した標識ヌクレオチド30)のヌクレオチド(例えば、塩基)を識別する工程を伴い得る。
【0095】
会合した標識ヌクレオチド30の塩基は、鋳型ポリヌクレオチド鎖48にハイブリダイズした新生鎖50に組み込まれる。これは、次いで、標識ヌクレオチド30のリン酸基(単数または複数)と新たに組み込まれたヌクレオチド塩基との間の結合を切断する。これにより、標識ヌクレオチド30の残りの部分が、新たに組み込まれたヌクレオチド塩基から切断される。
【0096】
スイッチ鎖28が少なくとも部分的にハイブリダイズし、修飾dsNA16’の二重らせん構造で接続したままでいる方を選ぶ場合があるため、方法100は、ヌクレオチド特異的スイッチ鎖28をギャップ22から解離させるために加熱する工程をさらに伴い得る。スイッチ鎖28の融解温度は、ポリメラーゼ38が標識ヌクレオチド30のヌクレオチド32を保持する時間の長さにある程度応じて、「オン」時間が短くまたは長くなるように、標識ヌクレオチド30を合成する際に調整され得る。一例では、融解温度は、標識ヌクレオチド30のリン酸基(単数または複数)と新たに組み込まれたヌクレオチド塩基との間の結合時にセンシングシステム40、40’が作動する温度に対応するように、調整され得る。これは、標識ヌクレオチド30の切断時と同じ時間枠内で、スイッチ鎖28の解離を引き起こすことになる。別の例では、スイッチ鎖28の「オフ」時間は、標識ヌクレオチド30が新生鎖50に組み込まれている間にポリメラーゼ38によって保持されている時間よりもはるかに短いことが望ましい場合がある。これは、ポリメラーゼ38に会合していないスイッチ鎖28からのバックグラウンド事象を最小化することができる。
【0097】
切断および解離の結果、標識ヌクレオチド30の残りの部分は、ヌクレオチド塩基から自由に解離し、センサ10から離れて拡散する。切断および解離は、標識ヌクレオチド30がポリメラーゼ38およびギャップ22と会合する前にあった初期の(例えば、低い)導電性状態にセンサ10の伝導率を戻すことによって、再びチャネル16を変調する。センサ10の伝導率が変化する(例えば、増加する、および低い状態に戻る)ときの信号の出現および消失は、それぞれ、鋳型ヌクレオチド鎖48の新生鎖50へのヌクレオチド塩基の組み込みおよびその後の標識ヌクレオチド30の解離と相関し得る。
【0098】
例示的な方法100において、標識ヌクレオチド30のうちの1つの(ポリメラーゼ32およびギャップ22との)会合、検出、応答の関連付け、および識別を一緒に、ポリメラーゼ取り込み事象(すなわち、どのヌクレオチドが新生鎖50に組み込まれたか)の1分子検出に使用することができる。
【0099】
前述の概念および以下でより詳細に論じられる追加の概念のすべての組み合わせが(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)、本明細書に開示する本発明の主題の一部として企図されていることが理解されるべきである。特に、本開示の最後に現れるクレームされた主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示する本発明の主題の一部であると企図される。また、本明細書で明示的に使用される用語は、参照により組み込まれる任意の開示にも現れる可能性があり、本明細書に開示する特定の概念と最も整合性のある意味を付与されるべきであることも理解されよう。
【0100】
本明細書全体を通した、「一例」、「別の例」、「一例」などへの言及は、例に関連して記載した特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書に記載した少なくとも1つの例に含まれ、他の例に存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、文脈から明確に別段の指示がない限り、任意の例について記載した要素は、様々な例において任意の適当な方法で組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0101】
特許請求の範囲を含む本開示全体を通して使用される用語「実質的に」および「約」は、処理のばらつきに起因するような小さな変動を記載し、考慮するために使用される。例えば、それらは、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
【0102】
さらに、本明細書で提供される範囲は、明示的に列挙されているかのように、記載の範囲および記載の範囲内の任意の値または部分的範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、約10nm~約50nmで表される範囲は、約10nm~約50nmという明示的に引用された限界値だけでなく、約15nm、22.5nm、45nmなどの個々の値、および約20nm~約48nmなどの部分的範囲も含むと解釈されるべきである。
【0103】
いくつかの例を詳細に記載しているが、開示した例は修正されてもよいことが理解されるであろう。したがって、前記の記述は、非限定的であるとみなされるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
【配列表】
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