(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】温度センサ、温度検出装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/16 20060101AFI20220304BHJP
G01K 7/22 20060101ALI20220304BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K7/22 J
G03G15/20 505
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2020072858
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2021-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】宮内 将之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 守富
(72)【発明者】
【氏名】岡田 優里
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525979(JP,A)
【文献】特開平9-218102(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105110(WO,A1)
【文献】特開平4-115131(JP,A)
【文献】特開昭62-161342(JP,A)
【文献】米国特許第6252207(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/16
G01K 7/22-7/25
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温対象物の温度を検知する感温素子と、
前記感温素子が配置される素子配置部を有し、前記測温対象物に対して当接されて前記感温素子に対し熱的に結合する金属製の集熱部材と、
前記集熱部材を支持し、前記集熱部材に対向する空間を形成する樹脂製の保持部材と、
前記素子配置部と前記感温素子とを絶縁する絶縁部と、を備え
、
前記感温素子は、前記測温対象物側から前記絶縁部を介して前記素子配置部に配置されている、温度センサ。
【請求項2】
フィルム状に形成された前記絶縁部である内側絶縁部と、
フィルム状に形成され、前記集熱部材を前記測温対象物側から覆うように前記感温素子と前記測温対象物との間に配置される外側絶縁部と、を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記集熱部材は、前記保持部材に支持される一対の脚部を備える、
請求項1
または2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記集熱部材は、板ばねである、
請求項
3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記集熱部材は、
前記一対の脚部と、前記素子配置部が形成される本体部と、を備え、
前記本体部が弾性力により前記測温対象物側へ加圧される、
請求項
3または
4に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記集熱部材は、平面視において長方形状の板状の前記本体部と、前記本体部の長手方向の端部にそれぞれ形成される前記一対の脚部と、を備え、
前記素子配置部は、前記本体部の短手方向に延出するとともに前記本体部の面外方向へ屈曲して形成される、
請求項
5に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記保持部材は、前記素子配置部を介して前記感温素子を支持する素子支持部を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記素子配置部は、前記集熱部材において凹形状に形成され、
前記感温素子は、前記素子配置部の内側に収容される、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記集熱部材は、前記空間に挿入される複数の位置決め片を含む、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項10】
前記保持部材は、前記空間を形成する壁体を含み、
前記壁体には、前記壁体から突出して前記位置決め片に接触する接触突起が形成されている、
請求項
9に記載の温度センサ。
【請求項11】
前記保持部材は、前記空間を形成する壁体を含み、
前記集熱部材は、前記壁体の一部の先端に支持され、
前記壁体は、前記集熱部材を支持する位置では、他の位置における高さよりも低い、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項12】
前記感温素子は、温度変化により抵抗値が変化する感温体と、該感温体を外部の回路に電気的に接続するための一対のリード線と、を有し、
前記一対のリード線は、前記感温素子を基準として一方向へ延出するとともに、前記保持部材の一の側面を経由して前記保持部材の内部へ延出する、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項13】
前記感温素子は、温度変化により抵抗値が変化する感温体と、該感温体を外部の回路に電気的に接続するための一対のリード線と、を有し、
前記一対のリード線は、前記感温素子を基準として両方向へ延出するとともに、前記保持部材の両側面を経由して前記保持部材の内部へ延出する、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の温度センサと、
前記温度センサに電気的に接続され、前記温度センサからの信号に基づいて前記測温対象物の温度を算出するための回路部と、を備える、温度検出装置。
【請求項15】
電子写真方式の画像形成装置であって、
加熱および加圧によりトナーを記録媒体に定着させる定着器と、
前記定着器に備わる部材の温度を検知する、請求項1から
13のいずれか一項に記載の温度センサと、を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の温度を検知する温度センサ、温度検出装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真プロセスを用いたプリンタ等の画像形成装置に備わる加熱定着ローラの温度を制御するため、ローラに設けられたヒータに接触させて配置される温度検出装置が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の温度検出装置は、温度検出素子と、温度検出素子のリード線と回路部の被覆電線とを導通させる導通部材がインサート成形されたセンサ本体と、センサ本体と温度検出素子との間に介在した耐熱性弾性体とを備えている。センサ本体は、コイルばねにより支持体に弾性的に支持されている。温度検出素子は、断熱性弾性体の弾性力によりヒータに押圧されている。耐熱性弾性体としては、典型的には無機材料の繊維からなるセラミックペーパーが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、セラミックペーパーを使用しない温度センサが要望されている。
本発明は、セラミックペーパーに代わり、断熱性および測温対象物への押圧力を備えた応答性の良好な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、測温対象物との当接状態を維持するように配置される温度センサであって、測温対象物の温度を検知する感温素子と、測温対象物に対して加圧し、感温素子に対して熱的に結合する集熱部材と、集熱部材を支持し、集熱部材に対向する空間を形成する保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の温度センサにおいて、集熱部材は、板ばねであることが好ましい。
【0007】
本発明の温度センサにおいて、集熱部材は、感温素子が配置される本体部を備え、本体部の端部が保持部材に支持されるとともに、本体部が弾性力により測温対象物側へ加圧されることが好ましい。
【0008】
本発明の温度センサにおいて、集熱部材は、保持部材に支持される一対の脚部を本体部の両端部に備え、脚部の弾性力により本体部が測温対象物側へ加圧されることが好ましい。
【0009】
本発明の温度センサにおいて、本体部には、感温素子を配置するための素子配置部が形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の温度センサにおいて、保持部材は、素子配置部を介して感温素子を支持する素子支持部を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の温度センサにおいて、素子配置部は、本体部の一部に凹形状に形成され、感温素子は、素子配置部の内側に収容されることが好ましい。
【0012】
本発明の温度センサにおいて、本体部は、平面視において略矩形状に形成され、長手方向の両端部に備わる脚部により前記保持部材に支持され、素子配置部は、本体部の短手方向に延出するとともに本体部の面外方向へ屈曲して形成されることが好ましい。
【0013】
本発明の温度センサにおいて、集熱部材は、空間に挿入される複数の位置決め片を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の温度センサにおいて、保持部材は、空間を形成する壁体を含み、壁体には、壁体から突出して位置決め片に接触する接触突起が形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の温度センサにおいて、保持部材は、空間を形成する壁体を含み、集熱部材は、壁体の一部の先端に支持され、壁体は、集熱部材を支持する位置では、他の位置における高さよりも低いことが好ましい。
【0016】
本発明の温度センサにおいて、感温素子と測温対象物との間には、集熱部材を測温対象物側から覆う第1絶縁材が配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明の温度センサにおいて、第1絶縁材は、フィルム状に形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の温度センサにおいて、感温素子は、温度変化により抵抗値が変化する感温体と、該感温体を外部の回路に電気的に接続するためのリード線と、を有し、感温素子と集熱部材との間には、感温素子の少なくともリード線と集熱部材とを絶縁する第2絶縁材が配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明の温度センサにおいて、第2絶縁材は、フィルム状に形成され、集熱部材を測温対象物側から覆っていることが好ましい。
【0020】
本発明の温度センサにおいて、感温素子は、温度変化により抵抗値が変化する感温体と、該感温体を外部の回路に電気的に接続するための一対のリード線と、を有し、一対のリード線は、感温素子を基準として一方向へ延出するとともに、保持部材の一の側面を経由して保持部材の内部へ延出することが好ましい。
【0021】
本発明の温度センサにおいて、感温素子は、温度変化により抵抗値が変化する感温体と、該感温体を外部の回路に電気的に接続するための一対のリード線と、を有し、一対のリード線は、感温素子を基準として両方向へ延出するとともに、保持部材の両側面を経由して保持部材の内部へ延出することが好ましい。
【0022】
また、本発明の温度検出装置は、上述の温度センサと、温度センサに電気的に接続され、温度センサからの信号に基づいて測温対象物の温度を算出するための回路部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の電子写真方式の画像形成装置は、加熱および加圧によりトナーを記録媒体に定着させる定着器と、定着器に備わる部材の温度を検知する、上述の温度センサと、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、集熱部材により測温対象物に対して加圧するとともに、集熱部材が感温素子に対して熱的に結合することにより、加圧する測温対象物からの熱伝導により集熱部材に入力される熱が感温素子に迅速に伝達される。こうした集熱作用と、集熱部材に対向する空間による断熱作用とにより、感温素子に熱をより十分に留めることができるので、所謂セラミックペーパーを使用せずとも、測温対象物の温度変動に対して感温素子による検知温度が即座に追従する良好な応答性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る温度センサの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す温度センサに備わる感温素子を示す平面図である。
【
図3】
図1のIII矢印の向きから保持部材および感温素子のリード線を示す側面図である。
【
図4】(a)は、保持部材を示す斜視図である。(b)は、保持部材を示す平面図である。
【
図5】(a)および(b)は、保持部材および板ばねを示す斜視図および平面図である。二点鎖線で感温素子を示している。
【
図6】(a)および(b)は、集熱部材としての板ばねを示す斜視図および平面図である。
【
図7】(a)は、
図1のVIIa-VIIa線断面図である。(b)は、(a)のVIIb部の拡大図である。
【
図8】保持部材に内側のフィルムが設けられた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示す温度センサを搭載したプリンタの内部構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態(
図1~
図4)について説明する。
〔温度検出装置及び温度センサの概略構成〕
本発明の温度検出装置1及び温度センサ10の概略構成について、
図1及び
図7(a)を参照して説明する。
図1に示すように、温度検出装置1は、温度センサ10と、回路部8と、温度センサ10と回路部8とを電気的に接続するための電線81,82とから構成される。
温度センサ10は、測温対象物7(
図7(a)参照)と対向する位置に、測温対象物7との当接状態を維持するように配置される。温度センサ10は、主要な構成要素として、測温対象物7の温度を検知する感温素子11と、保持部材20と、集熱部材としての板ばね30とを備えている。
また、温度センサ10は、絶縁および沿面距離の確保のため、板ばね30を覆う内側フィルム41(第2絶縁材)と、内側フィルム41の上に配置された感温素子11を覆う外側フィルム42(第1絶縁材)とを備えている。さらに、温度センサ10は、内側フィルム41および外側フィルム42の間で感温素子11の周囲に封入される集熱材43を備えている。
【0027】
回路部8は、感温素子11から出力される電気信号に基づいて測温対象物7の温度を算出する。この回路部8は、保持部材20から引き出された電線81,82を介して温度センサ10に電気的に接続される。
【0028】
電線81,82が引き出される方向に温度センサ10が延在する方向を長手方向D1と称する。長手方向D1に対して平面視において直交する方向を幅方向D2と称する。長手方向D1および幅方向D2の双方に対して直交する方向を高さ方向D3と称する。高さ方向D3において測温対象物7側を「上」と称し、その反対側を「下」と称する。
【0029】
また、板ばね30の位置を基準として、測温対象物7側のことを表面側Fsと定義し、その反対側(保持部材20側)のことを背面側Bsと定義する。本実施形態においては、表面側Fsは上側に相当し、背面側Bsは下側に相当する。
【0030】
以下、温度センサ10の各構成要素を説明する。
〔感温素子〕
感温素子11は、
図2に示すように、感温体110と、感温体110に設けられた電極110A,110Bと、この電極110A,110Bに電気的に接続される一対のリード線111,112と、感温体110を覆う被覆部113とを備えるサーミスタ素子である。その他、感温素子11としては、薄膜サーミスタ、白金温度センサ等の温度係数を持つ抵抗体を広く使用することができる。
リード線111,112はそれぞれ、保持部材20の内部に設けられた、後述する一対の導電性部材121,122(
図7(a))を介して電線81,82に導通される。
【0031】
感温素子11の感温体110は、測温対象物7(
図7(a))に対して、集熱材43および外側フィルム42を介して対向した状態に配置される。
【0032】
〔保持部材〕
保持部材20について、
図4を参照して説明する。
本実施形態の保持部材20は、平面視において略矩形状に形成されており、本体部22と、この本体部22の長手方向D1の中央付近から高さ方向D3に突出形成された壁体21からなる台座201と、電線81,82が接続される電線接続部25とを備えている。台座201の内側には、壁体21により囲われて直方体状の空間20Sが形成されている。この空間20Sの表面側Fs(高さ方向D3側)には、後述する板ばね30が配設される。
なお、保持部材20は、空間20Sの形状、および後述するボス221,231の配置等によっては、平面視において正方形や、円形状に形成されていてもよい。
【0033】
保持部材20は、絶縁性樹脂材料を用いて、射出成形により一体に形成される。本体部22の上面22a及び電線接続部25の上面25aは、例えば、同一平面上に存在する。そして、本体部22のそれぞれの上面22aには、高さ方向D3に突出形成された複数の第1ボス221が設けられ、側面23には、幅方向D2へ突出形成された複数の第2ボス231が設けられている。これらの第1ボス221及び第2ボス231は、フィルム41,42を保持部材20に固定するために用いられる。
電線接続部25は、感温素子11と回路部8とを電気的に接続するための電線81,82を取り付けるための部位であり、本体部22の長手方向D1の一方の端部において本体部22と一体的に形成される。この電線接続部25には、後述の導電性部材121,122にそれぞれ電線81,82を接続するための接続孔251,252が形成されている。
【0034】
台座201は、板ばね30を取り付けるための部位であり、平面視で矩形状に形成される。この台座部201は、壁体21と空間20Sとからなる。
【0035】
壁体21は、長手方向D1に延びて幅方向D2に対向する一対の第1壁211,211と、第1壁211,211の長手方向D1の両端を結ぶ第2壁212,212とを有している。第1壁211,211及び第2壁212,212はいずれも台座201の底部213から高さ方向D3に立ち上がって形成され、第1壁211,211及び第2壁212,212の上端は、矩形状の開口210をなしている。第1壁211,211の長さ方向D1の中央には、それぞれ凹状に切り欠いて形成した切り欠き211A,211Aが形成されている。そして、板ばね30の一部である位置決め片321~324(
図6)が開口210を通じて空間20Sに挿入される。
【0036】
空間20Sは、感温素子11から外部に向けた熱伝導を抑制する断熱作用により、感温素子11に熱を維持する。そうすることで、感温素子11に熱を入力する測温対象物7の温度変動に対して迅速に感温素子11の抵抗値の変化を生じさせ、温度センサ10としての応答性を向上させる。空間20Sには、必要な熱抵抗を実現する横断面積(D1,D2方向の面積)および厚さ(D3方向の寸法)が与えられる。
【0037】
空間20Sは、熱伝導率を出来るだけ低くするため、空間20Sには空気以外の物質を極力配置しないことが好ましい。なお、空間20Sにおける空気以外の気体や液体等の物質の存在が全く排除されるものではなく、熱伝導率を低く維持することが出来れば、空気以外の物質を空間20S内に封止することを妨げない。また、空間20Sにおける対流の発生を抑えるために、空間20Sに板状の部材等を配置することは許容される。なお、空間20Sは、他の形状、例えば円筒状に形成されていてもよい。
【0038】
第2壁212の上端(先端)には、板ばね30を支持する支持部214が形成されている。この支持部214は、平坦に形成され、支持部214の高さは、第1壁211の上端の高さよりも低く設定されている。
一対の第2壁212の外表面212Aは、上方に向かうにつれて互いに近づく向きに傾斜している。そのため、保持部材20は、側面視において錐台状に形成されている。
【0039】
壁体21の内側には、板ばね30を介して感温素子11を支持する素子支持部215、第1接触突起216、および第2接触突起217が形成されている。
素子支持部215は、一対の第1壁211の切り欠き211A,211Aが形成された位置からそれぞれ、幅方向D2の内側に受けて突出して形成されている。素子支持部215の先端面と、第1壁211に形成された切欠211Aの底面とは連続している。各素子支持部215は、空間20Sの長手方向D1の中央に位置しており、感温体110に対応する位置で板ばね30を支持する。
【0040】
第1接触突起216(
図4)は、一対の第1壁211における素子支持部215の両側に、2箇所ずつ形成されている。各第1接触突起216は、第1壁211から突出して位置決め片321~324の表面に接触する。また、第2接触突起217は、第1接触突起216の近傍で底部213の四隅に形成されており、位置決め片321~324の側面に接触する。これら第1接触突起216および第2接触突起217により、板ばね30は長手方向D1および幅方向D2に位置決めされ、かつ壁体21から離れた状態に維持される。
【0041】
第1接触突起216は、
図4(b)に示すように、第1壁211から円弧状に突出して形成されている。また、第1接触突起216の上端は、板ばね30を挿入時にガイドするためにテーパ形状となっている。第1接触突起216の高さは、第1壁211側の基端と比べて先端側で低く設定されている。同様に、第2接触突起217の上端もテーパ形状に形成されている。
このような第1接触突起216および第2接触突起217の形状にすることで、保持部材20と板ばね30との接触面積が抑えられるから、感温素子11から板ばね30を通じて保持部材20に熱が逃げ難くなっている。
【0042】
台座201の底部213の内部には、
図7(a)に示すように、板状の導電性部材121,122が設けられている。導電性部材121,122は、保持部材20の射出成形の金型に配置されてインサート成形することができる。この底部213には、高さ方向D3に貫通するように、接続孔241,242が形成されている。導電性部材121,122は、この接続孔241,242の内側に突出するように配置される。リード線111,112は、板ばね30の幅方向D2の一方側へ延出するとともに、保持部材20の側面23を経由して保持部材20の内部に延出している。
【0043】
第1ボス221および第2ボス231は、保持部材20に一体に形成されている。
第1ボス221は、本体部22の上面に2つずつ配置され、第2ボス231は、保持部材20の両側面23に2つずつ配置されている。これは一例であり、第1ボス221および第2ボス231を保持部材20の適宜な位置に形成することができる。
【0044】
〔板ばね(集熱部材)〕
板ばね30(
図5~
図7)は、弾性力により測温対象物7に対して背面側Bsから加圧するとともに、感温素子11に対して熱的に結合するためのものである。
【0045】
板ばね30は、測温対象物7からの熱を感温素子11に迅速に伝えるために、樹脂材料等と比べて一般的には熱伝導率が高い金属材料、および金属材料の熱伝導率に並ぶ程度の熱伝導率を有した他の材料、例えば、銅合金やステンレス鋼等の金属材料、あるいはカーボンを含む材料等を用いて一体に形成することができる。金属材料が用いられる場合は、打ち抜きおよび曲げのプレス加工により板ばね30を形成することができる。板ばね30に用いる材料は、熱伝導率、ばね性、および耐熱性を考慮して適宜に選定することができる。
板ばね30の板厚は、熱容量の増大による応答性の低下を避けるため、強度を確保できることを限度に、出来る限り薄いことが好ましい。板ばね30の板厚は、例えば、0.05~0.2mm程度である。
【0046】
上述の空間20Sによる断熱作用に加えて板ばね30による集熱作用により、測温対象物7の温度変動に対して即座に感温素子11の抵抗値の変化を生じさせ、温度センサ10としての応答性をより一層向上させることができる。ここで、本明細書における「集熱」は、測温対象物7から入力される熱を感温素子11に迅速に伝えることを意味する。この板ばね30の集熱作用により、感温素子11および感温素子11の近傍に熱が維持される。
【0047】
板ばね30は、感温素子11が配置される本体部31と、板ばね30を保持部材20に位置決めする複数の位置決め片321~324とを含む。
本体部31は、平面視において略矩形状に形成されている。本体部31は、測温対象物7に押し当てられる当接部310と、当接部310の長手方向D1の両端部をなす一対の脚部としてのばね片311,312とを含む。
【0048】
当接部310には、感温体110およびリード線111,112の一部が配置される素子配置部としての溝310Aが設けられている。溝310Aは、本体部31の短手方向(幅方向D2)に延出するとともに本体部31の面外方向へ屈曲して凹形状に形成される。この溝310Aは、当接部310の幅方向D2の一端から他端までに亘り形成されている。
溝310Aは、感温体110の寸法形状が公差によりばらついていても感温体110を収容することのできる幅(長手方向D1の寸法)および深さに設定されている。
【0049】
ここで、感温体110よりも熱伝導率が高いリード線111,112(特に感温体110近傍のジュメット線)に測温対象物7から十分に入熱すると応答性を向上させることができるので、感温素子11の感温体110の配置される位置としては、リード線111,112の出来るだけ長い区間が溝310Aに配置されると良い。例えば、感温体110の配置される位置を、板ばね30に形成されている溝310Aの幅方向D2の中央よりも外側へずらして配置することで、リード線111,112が溝310Aに配置される部分を長くするようにしても良い。
【0050】
当接部310は、溝310Aを除いては、ほぼ平坦に形成されており、長さ方向D1の全体に亘り測温対象物7に押し当てられる。
両端でばね片311,312により支持された当接部310が、測温対象物7からの反力により両端の間で撓み、それによって感温素子11が測温対象物7から離れてしまうのを避けるため、当接部310は、溝310Aの位置で保持部材20の素子支持部215により支持される。
なお、当接部310には、溝310Aに代えて、感温体110の外形と同形状の凹部が形成されていてもよい。
【0051】
ばね片311,312は、当接部310から長手方向D1の両側に突出し、当接部310の表面に対して下方に向けて傾斜するように折り曲げられ、それぞれの先端311A,312Aは、支持部214と面接触するように当接部310の面方向へ折り曲げられている。ばね片311,312は、保持部材20の一対の第1壁211の間で、第1壁211よりも低い位置に形成された支持部214にそれぞれ支持される。そのため、測温対象物7に当接部310が押し当てられてばね片311,312が支持部214上を変位するとき、ばね片311,312が第2壁212には干渉せずに弾性変形するから、板ばね30として測温対象物7を十分に加圧することができる。
ばね片311,312のそれぞれの先端311A,312Aは、支持部214と面接触するように折り曲げ形成されているから、ばね片311,312が支持部214を摺動するときにばね片311,312により保持部材20を傷付け難い。
なお、板ばね30と保持部材20とは、極力接触する面積が少ないことが好ましい。この接触する部分を介して保持部材20へ熱が逃げてしまうからである。そのため、本実施の形態における板ばね30のばね片311,312は、支持部214との接触面積を減らすため、二股状に形成されている。
【0052】
位置決め片321~324は、当接部310の幅方向D2の両側に形成されている。この位置決め321~324は、それぞれ当接部310の四隅に近接して設けられ、当接部310を厚み方向D3へ折り曲げられて下方に突出形成される。なお、位置決め片321~324は、当接部310において幅が縮小した部分から連なっている。当接部310は、溝310Aに対して長手方向D1の両側で、段差310Bを境にして幅が縮小している。
位置決め片321~324は、空間20Sに挿入されると、上述の第1接触突起216および第2接触突起217により保持部材20に位置決めされる。
【0053】
温度センサ10を測温対象物7(
図7(a))に押し当てると、当接部310が測温対象物7に面接触し、測温対象物7により板ばね30は押圧される。すると、板ばね30のばね片311,312は、押圧の方向(D3)に対して直交する長手方向D1の外側に向けて、支持部214上を変位しつつ弾性変形する。このとき、ばね片311,312の弾性力により本体部31が測温対象物7に向けて加圧される。
【0054】
〔内側フィルム〕
内側フィルム41は、板ばね30と感温素子11とを絶縁するために保持部材20に設けられる。
【0055】
内側フィルム41は、絶縁性を有しており、
図7(b)および
図8に示すように、溝310Aの内側に挿入され、板ばね30と感温素子11との間に介在する。それに加えて、内側フィルム41は、感温素子11に対する沿面距離を十分に確保するため、板ばね30の表面を測温対象物7側から全体に亘り覆っている。
【0056】
この内側フィルム41には、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂等の樹脂材料が用いられる。内側フィルム41の厚さは、例えば、10~20μm程度である。
内側フィルム41には、台座201の幅と同等の幅が与えられ、矩形状に形成されている。
なお、リード線111,112に絶縁被覆が設けられている場合は、板ばね30が導電性を有していても、必ずしも内側フィルム41は必要ない。同様に、板ばね30が樹脂成形品等の導電性を有しない部材である場合も、内側フィルム41は配設を省略することができる。
そして、板ばね30と感温素子11とは、内側フィルム41を介して熱結合するようになっている。
【0057】
〔集熱材〕
溝310Aに配置された感温素子11の周囲の隙間G1には、感温素子11に集熱するため、感温素子11に対して熱的に結合する絶縁性の集熱材43(
図7(b)および
図8)が充填されることが好ましい。
【0058】
この集熱材43には、例えば、樹脂材料の中では熱伝導率が高いシリコーン樹脂等の分散媒と、セラミックの粉末等の絶縁性の分散質とを含む材料が用いられる。また集熱材43には、所謂、熱伝導グリス、シリコーンオイルコンパウンドを使用することができる。
この集熱材43は、内側フィルム41の上から充填される。
集熱材43は、感温素子11に密着し、かつ内側フィルム41を介して板ばね30に密着することで、板ばね30を感温素子11に対してより十分に熱的に結合させて応答性をさらに向上させることができる。
【0059】
〔外側フィルム〕
外側フィルム42は、絶縁性を有しており、板ばね30および保持部材20を測温対象物7側から覆い、感温素子11と測温対象物7との間に介在することで、両者を絶縁するために設けられる。また、外側フィルム42は、感温素子11を板ばね30に保持する。この外側フィルム42は、
図1および
図7(a)に示すように、内側フィルム41の上から感温素子11を覆い隠し、保持部材20の両側面23に固定される。それに加えて、外側フィルム42は、感温素子11および導電性部材121,122に対する沿面距離を十分に確保するため、板ばね30の全体に加え、保持部材20の両側面23を含め、保持部材20の大部分を覆っている。
【0060】
外側フィルム42には、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂等の樹脂材料が用いられる。
図7(b)に示すように、外側フィルム42は、2枚以上のフィルム素材が積層されたものであってもよい。外側フィルム42の全体の厚さは、例えば、10~20μm程度である。
【0061】
〔温度センサの組み立て手順〕
温度センサ10は、例えば、次の手順により組み立てることができる。
【0062】
各手順を説明する。
(1)保持部材20にインサート成形された状態の導電性部材121,122(
図7(a))に感温素子11のリード線111,112の末端を電気的溶接等により接合する。
(2)
図4に示す保持部材20の壁体21の内側に板ばね30の位置決め片321~324を挿入する。このとき位置決め片321~324の先端(下端)は底部213に接触していない。さらに板ばね30が壁体21の内側に押し込まれると、位置決め片321~324の先端が底部213に突き当たり、このとき位置決め片321~324はストッパとして機能する。
板ばね30は、
図5(a)に示すように、ばね片311,312が支持部214により支持された状態に、保持部材20に組み付けられる。このとき当接部310は、第1壁211の上端よりも上方に突出している。板ばね30の背面側Bsには、空間20Sが区画される。
【0063】
(3)次いで、
図8に示すように、内側フィルム41により板ばね30を覆い、内側フィルム41の四隅に設けられた孔に通された第1ボス221に熱および圧力を加える熱かしめにより内側フィルム41を保持部材20に固定する。
(4)リード線111,112を成形しながら、引き回し、感温素子11を保持部材20および板ばね30に組み付ける。具体的には、リード線111,112を導電性部材121,122から保持部材20の側面23に沿って上方へ曲げた後、板ばね30の溝310Aの位置でも曲げて、内側フィルム41が敷かれている溝310Aの内側に感温体110を収容する。
【0064】
(5)続いて、感温体110に集熱材43を塗布する。集熱材43は、感温体110および感温体110から引き出されているリード線111,112に付着する。
(6)最後に、
図1に示すように、外側フィルム42により、感温素子11および集熱材43を含め保持部材20の大部分を覆い、第1ボス221と同様にして、第2ボス231の熱かしめにより外側フィルム42を保持部材20に固定する。
以上により、温度センサ10の組み立てが完了する。
【0065】
〔温度センサによる主な作用効果〕
温度センサ10を測温対象物7(
図7(a))に対向させて設置すると、板ばね30の当接部310が測温対象物7に押圧されることでばね片311,312が支持部214をスムーズに摺動しながら弾性変形する。その結果、素子支持部215により支持された当接部310は、内側フィルム41および外側フィルム42を介して測温対象物7に均等に加圧される。さらに、測温対象物7から放射される熱は、測温対象物7に押圧された当接部310へ十分に入熱され、その熱は、当接部310から溝310Aの内側に供給されている集熱材43を介して感温素子11に熱を十分に伝達させることができる。このとき当接部310は、感温素子11に加えて測温対象物7にも熱的に結合する。
組み立て完了時に感温素子11と当接部310との間に空隙が残されていたとしても、板ばね30による測温対象物7への加圧により、集熱材43は感温体110およびその近傍に実質的に隙間なく充填される。そのため、感温素子11と板ばね30とをより十分に熱的に結合させることができる。
【0066】
しかも、板ばね30の位置決め片321~324およびばね片311,312は保持部材20に必要最小限で接触しているため、板ばね30を通じた保持部材20への熱の流出が抑えられている。このことと、板ばね30の集熱作用、さらには、セラミックペーパー等の断熱材と比べて熱伝導率の低い空間20Sによる断熱作用との相乗によれば、測温対象物7から伝わった熱を感温素子11およびその近傍により確実に留めることができる。
したがって、本実施形態の温度センサ10によれば、測温対象物7の温度変化に感温素子11を即座に追従させて検知温度に良好な応答性を実現することができる。温度センサ10によれば、薄い板ばね30と、その背面側Bsに区画した空間20Sとにより、断熱性能と、測温対象物7に温度センサ10を加圧する弾性力とを兼ね備えているので、温度センサ10を小型に維持しつつ、所謂セラミックペーパーを使用せずとも、それと同等以上の応答性を実現することができる。
【0067】
〔画像形成装置への適用例〕
図9を参照し、温度センサ10を備えた温度検出装置1を画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ9に適用した例を簡単に説明する。
レーザプリンタ9は、
図9に示すように、感光体ベルト91と、帯電器92と、露光装置93と、現像器901~904と、案内ローラ94と、中間転写ユニット95と、給紙カセット96と、給紙ローラ97と、転写ローラ98と、定着器99と、レジストローラ910と、排紙ローラ911と、排紙トレイ912と、レーザプリンタ9の各部を制御する制御装置900とを備えている。
【0068】
定着器99は、加圧ローラ991および加熱ローラ992を含んでいる。加熱ローラ992は、熱源としての図示しないヒータを内蔵している。
【0069】
温度センサ10は、加熱ローラ992に内蔵されるヒータの温度、あるいはヒータに設けられた部材の温度を測定するため、ヒータあるいは当該部材に押し当てて設置される。
【0070】
レーザプリンタ9による画像形成のプロセスとしての帯電、露光、現像、および転写を経て、定着のプロセスでは、カラートナー像が転写された記録用紙913が、定着器99の加圧ローラ991と加熱ローラ992との間に向けて送り出される。加圧ローラ991と加熱ローラ992との間を通過する間に記録用紙913が加圧および加熱されることで、記録用紙913にカラートナー像が定着される。その後、記録用紙913は、排紙ローラ911を経て排紙トレイ912に排出される。
【0071】
制御装置900は、温度センサ10および温度センサ10が接続された回路部により得られる温度測定値を用いて、加熱ローラ992のヒータへの通電状態を制御している。制御装置900は、例えば、温度測定値が閾値を超えたならば、加熱ローラ992のヒータへの通電を停止する。
温度センサ10により、加熱ローラ992の表面温度が追従性良く測定されるので、測定の応答の遅れを見込んで加熱ローラ992をヒータにより余分に加熱することなく、ヒータの通電状態を適切に制御することができる。
【0072】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0073】
上記実施形態では、
図2に示すように感温体110の一方の側からリード線111,112が延びている構成を有するサーミスタ素子を用いた場合を例示して説明しているが、リード線111,112がそれぞれ感温体110の一方の側から延出されているサーミスタ素子を用いてもよい。この場合、リード線111,112は、保持部材20の両方の側面23を経由して保持部材20の内部に延出している。
また、本実施形態では、感温体110からリード線111,112が幅方向D2に引き出されている場合を例示して説明しているが、感温体110からリード線111,112が長手方向D1に引き出されていてもよい。
【0074】
板ばね30の形状は、上記実施形態には限らず、種々の改変が可能である。
例えば、ばね片311,312のそれぞれの二股状の部分の間に、保持部材20に板ばね30を位置決めするための突起を形成することができる。その場合は、当接部310から下方へ延出した位置決め片321~324は必要ない。
【符号の説明】
【0075】
1 温度検出装置
7 測温対象物
8 回路部
9 レーザプリンタ
10 温度センサ
11 感温素子
20 保持部材
20S 空間
21 壁体
22 本体部
23 側面
25 電線接続部
30 板ばね(集熱部材)
31 本体部
41 内側フィルム(第2絶縁材)
42 外側フィルム(第1絶縁材)
43 集熱材
81,82 電線
91 感光体ベルト
92 帯電器
93 露光装置
94 案内ローラ
95 中間転写ユニット
96 給紙カセット
97 給紙ローラ
98 転写ローラ
99 定着器
110 感温体
111,112 リード線
113 被覆部
121,122 導電性部材
201 台座
210 開口
211 第1壁
211A 切欠
212 第2壁
212A 外表面
213 底部
214 支持部
215 素子支持部
216 第1接触突起(接触突起)
217 第2接触突起(接触突起)
221 第1ボス
231 第2ボス
241,242 接続孔
251,252 接続孔
310 当接部
310A 溝(素子配置部)
310B 段差
311,312 ばね片(脚部)
311A,312A 先端
321~324 位置決め片
900 制御装置
901~904 現像器
910 レジストローラ
911 排紙ローラ
912 排紙トレイ
913 記録用紙(記録媒体)
991 加圧ローラ
992 加熱ローラ
Bs 背面側
Fs 表面側
D1 長手方向
D2 幅方向
D3 高さ方向
G1 隙間