(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】C-METに対するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220304BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220304BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220304BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220304BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220304BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220304BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220304BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220304BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220304BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
A61P35/00
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2020076411
(22)【出願日】2020-04-23
(62)【分割の表示】P 2018104445の分割
【原出願日】2011-03-10
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2010-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2010-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2010-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ゲンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ネイセ ヨースト ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デ ゴージ バルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ブリンク エトワルト
(72)【発明者】
【氏名】ラブリン アラン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホート レネ エム. エイ.
(72)【発明者】
【氏名】スールマン ヤニネ
(72)【発明者】
【氏名】パレン パウル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ウィンケル ヤン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特許第6055312(JP,B2)
【文献】国際公開第2005/016382(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/126799(WO,A2)
【文献】国際公開第96/038557(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/007427(WO,A2)
【文献】J. Nucl. Med.,2008年01月,Vol.49, No.1,p.129-134
【文献】Cancer Res.,2008年07月01日,Vol.68, No.11,4360-4368
【文献】Clin. Cancer Res.,2006年10月15日,Vol.12, No.20,p.6144-6152
【文献】EMBO J.,1988年07月,Vol.7, No.7,p.1989-1994
【文献】J. Mol. Biol.,2002年05月24日,Vol.319, No.1,p.9-18
【文献】J. Immunol.,2006年07月15日,Vol.177, No.2,p.1129-1138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
Google/Google Scholar
REGISTRY/Caplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号98、99、および100のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびに配列番号102、103、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(069)を含む、ヒトc-Metに結合する
IgG1,κモノクローナル抗体。
【請求項2】
配列番号97の配列を含むVH領域、および配列番号101の配列を含むVL領域(069)を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
c-MetのSEMAドメインに結合する、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
完全長抗体である、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
請求項1~2のいずれかにおいて定義されたc-Met結合部位と、異なる結合特異性を有する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体である、請求項1~
4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
請求項1記載の抗体をコードするヌクレオチドのセットであって、第一のヌクレオチドが配列番号98、99、100をコードし、かつ第二のヌクレオチドが配列番号102、103、104をコードする、ヌクレオチドのセット。
【請求項7】
請求項
6記載のヌクレオチドのセットを含み、抗体の機能的に連結された軽鎖定常領域、重鎖定常領域、または軽鎖および重鎖の両方をさらにコードする、発現ベクター。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか一項において定義された抗体を産生する、組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞。
【請求項9】
請求項1~
5のいずれか一項において定義された抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
癌を治療するための医薬を製造するための、請求項1~
5のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項11】
医薬として使用するための、請求項1~
5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項12】
1種類または複数種のさらなる治療剤と組み合わせて使用される、請求項
9記載の薬学的組成物。
【請求項13】
治療剤が化学療法剤である、請求項
12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
a)請求項
8記載の宿主細胞を培養する工程、および
b)培地から抗体を精製する工程
を含む、請求項1~
5のいずれか一項記載の抗体を産生するための方法。
【請求項15】
抗体とc-Metの複合体の形成を可能にする条件下で、試料を請求項1~
5のいずれか一項記載の抗体と接触させる工程;および
複合体が形成されたかどうか分析する工程
を含む、試料中のc-Metの存在を検出するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、肝細胞増殖因子受容体であるヒトc-Metに対するモノクローナル抗体、およびこのような抗体の使用、特に、癌の治療におけるこのような抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
c-Metは、膜貫通受容体型チロシンキナーゼタンパク質である。主に単鎖の前駆体は翻訳後、切断されて、成熟型c-Metヘテロ二量体を生じる。成熟型c-Metヘテロ二量体は細胞外α鎖(50kDa)およびさらに長い膜貫通β鎖(145kDa)からなり、これらはジスルフィド結合している(Birchmeier et al. 2003. Nat Rev Mol Cell Biol 4:915(非特許文献1))。c-Metの細胞外部分は3つのドメインタイプからなる。N末端SEMAドメインは、αサブユニット全体およびβサブユニットの一部によって形成され、セマフォリンタンパク質と相同性を有する。SEMAドメインの後ろにはシステインリッチドメインが続き、さらに4つの免疫グロブリン(Ig)様ドメインが続く。細胞質部分は、膜近傍キナーゼドメインおよび下流シグナル伝達に不可欠なカルボキシ末端テールを含む。c-Metの唯一知られている高親和性リガンドである肝細胞増殖因子(HGF)は、主に、正常条件下では線維芽細胞(Li and Tseng 1995. J Cell Physiol 163:61(非特許文献2))および腫瘍細胞(Ferracini et al. 1995. Oncogene 10:739(非特許文献3))によって発現される。HGF(細胞分散因子(scatter factor):SFとも呼ばれる)は前駆体として合成され、タンパク分解によって活性α/βヘテロ二量体に変換される。受容体-結合断片の結晶構造に基づいて、HGFは二量体としてc-Metに結合すると考えられている(Chirgadze et al. 1999. Nat Struct Biol 6:72(非特許文献4))。HGF-α鎖は高い親和性でc-Metの中にあるIg様ドメインと結合するのに対して、HGF-β鎖は低い親和性でc-Met SEMAドメインと結合する(Basilico et al. 2008. J Biol Chem 283:21267(非特許文献5))。後者の相互作用は、活性HGFヘテロ二量体が結合した時のc-Met二量体化および受容体型チロシンキナーゼ活性化を担っている。受容体が自己リン酸化すると、エフェクターが動員するための独特のドッキング部位が生じる。これらのうちGab1(増殖因子受容体結合タンパク質2[Grb2]関連バインダー1)の結合は、主要なc-Met下流シグナル伝達経路:
・Ras-ERK1/2経路:増殖
・Ras-Rac経路:浸潤、運動性、上皮から間葉系への移行
・PI3K-Akt経路:生存
に不可欠である(Comoglio et al. 2008. Nat Rev Drug Discov 7:504(非特許文献6))。c-Metは、胚形成の間および成人期に、肝臓、膵臓、前立腺、腎臓、筋肉、および骨髄を含む多くの臓器の上皮細胞および内皮細胞の表面において発現する。c-Met活性化は、増殖、運動、血管形成、およびアポトーシスからの保護を含む一連のプロセスからなる、いわゆる「浸潤性増殖」プログラムにおいて不可欠な役割を果たしている(Boccaccio and Comoglio 2006. Nat Rev Cancer 6:637(非特許文献7))。これらのc-Metによって調節されるプロセスは正常な生理学的条件下では胚発生、肝臓損傷修復および心臓損傷修復の間に、病理学的には腫瘍形成の間に起こる(Eder et al. 2009. Clin Cancer Res 15:2207(非特許文献8))。
【0003】
不適切なc-Metシグナル伝達は、実質的に全てのタイプの固形腫瘍、例えば膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、および甲状腺癌、ならびに様々な肉腫、造血性悪性腫瘍、および黒色腫において起こる(Birchmeier et al., 2003. Nat Rev Mol Cell Biol 4:915(非特許文献1); Comoglio et al. 2008. Nat Rev Drug Discov 7: 504(非特許文献6); Peruzzi and Bottaro 2006. Clin Cancer Res 12:3657(非特許文献9))。c-Met腫瘍形成能の基礎となる機構は、典型的には、以下の3つの異なる方法:
・オートクラインHGF/c-Metループ、
・c-MetまたはHGFの過剰発現、
・c-Met受容体コード配列内のキナーゼ活性化変異
で成し遂げられる。
【0004】
特に、c-Met活性化変異が遺伝性乳頭状腎臓癌の患者において特定されている(Schmidt et al. 1997. Nat Genet 16:68(非特許文献10))。c-Metの構成的活性化は、癌の増殖表現型、浸潤表現型、生存表現型、または血管形成表現型の1つまたは組み合わせに寄与する。腫瘍細胞において内因的に発現されているc-Metを遺伝子サイレンシングすると、増殖および腫瘍成長が無くなり、確立している転移が後退し、新たな転移の発生が減少することが示されている(Corso et al. 2008. Oncogene 27:684(非特許文献11))。
【0005】
c-Metは発生から進行、転移まで複数の癌発症期に寄与するので、c-MetおよびそのリガンドHGFは標的化癌療法の主な候補になってきた(Comoglio et al. 2008. Nat Rev Drug Discov 7:504(非特許文献6); Knudsen and Vande Woude 2008. Curr Opin Genet Dev 18:87(非特許文献12))。この目標に到達するために、以下のいくつかの戦略が探索されている。
【0006】
・デコイ(Decoy)受容体:HGFもしくはc-Metの小領域または分子類似体は、リガンド結合または受容体二量体化をブロックすることによって化学量論的競合因子として拮抗作用することができる。HGFのこのような拮抗性小領域の一例がNK4(Kringle Pharma)である。
・低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI):臨床評価の異なる段階にある3種類のc-Met特異的TKIが、ARQ197(ArQule)、JNJ38877605(Johnson & Johnson)、およびPF-04217903(Pfizer)である。
・抗HGFモノクローナル抗体、例えばAMG102、リロツムマブ(rilotumumab)(Amgen)、HuL2G7(Takeda)、およびAV-299(Schering)。
・抗c-Metモノクローナル抗体がWO2005016382(特許文献1)、WO2006015371(特許文献2)、WO2007090807(特許文献3)、WO2007126799(特許文献4)、WO2009007427(特許文献5)、WO2009142738(特許文献6)、およびvan der Horst et al.(van der Horst et al. 2009. Neoplasoa 11:355(非特許文献13))に記載されている。MetMAb(Genentech)は、c-Met細胞外ドメインに結合し、それによって、HGF結合およびその後の受容体活性化を阻止するヒト化一価(1アーム(one-armed))OA-5D5抗体である(Jin et al. 2008. Cancer Res 68:4360(非特許文献14))。マウス異種移植モデルにおいて、MetMAbを用いた治療は、HGFによって誘導される同所性グリア芽細胞腫および皮下膵臓腫瘍の腫瘍成長を阻害することが見出された(Jin et al. 2008. Cancer Res 68:4360(非特許文献14); Martens et al. 2006. Clin Cancer Res 12:6144(非特許文献15))。h224G11(Pierre Fabre)(Corvaia and Boute 2009. Abstract 835 AACR 100th Annual Meeting(非特許文献16))はヒト化二価抗c-Met IgG1抗体である。この抗体の抗腫瘍作用がマウスにおいて観察されている(Goetsch et al. 2009. Abstract 2792 AACR 100th Annual Meeting(非特許文献17))。CE-355621(Pfizer)は、c-Met細胞外ドメインに結合することによってリガンド結合をブロックし、腫瘍異種移植モデルにおいてHGF依存性増殖を阻害するヒトIgG2である(Tseng et al. 2008. J Nucl Med 49:129(非特許文献18))。
【0007】
結論として、いくつかの抗c-Met製品が研究されているが、今までに、治療用途に認可された抗c-Met製品は無い。癌などの重篤なc-Met関連疾患を治療するための効果的かつ安全な製品が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2005016382
【文献】WO2006015371
【文献】WO2007090807
【文献】WO2007126799
【文献】WO2009007427
【文献】WO2009142738
【非特許文献】
【0009】
【文献】Birchmeier et al. 2003. Nat Rev Mol Cell Biol 4:915
【文献】Li and Tseng 1995. J Cell Physiol 163:61
【文献】Ferracini et al. 1995. Oncogene 10:739
【文献】Chirgadze et al. 1999. Nat Struct Biol 6:72
【文献】Basilico et al. 2008. J Biol Chem 283:21267
【文献】Comoglio et al. 2008. Nat Rev Drug Discov 7:504
【文献】Boccaccio and Comoglio 2006. Nat Rev Cancer 6:637
【文献】Eder et al. 2009. Clin Cancer Res 15:2207
【文献】Peruzzi and Bottaro 2006. Clin Cancer Res 12:3657
【文献】Schmidt et al. 1997. Nat Genet 16:68
【文献】Corso et al. 2008. Oncogene 27:684
【文献】Knudsen and Vande Woude 2008. Curr Opin Genet Dev 18:87
【文献】van der Horst et al. 2009. Neoplasoa 11:355
【文献】Jin et al. 2008. Cancer Res 68:4360
【文献】Martens et al. 2006. Clin Cancer Res 12:6144
【文献】Corvaia and Boute 2009. Abstract 835 AACR 100th Annual Meeting
【文献】Goetsch et al. 2009. Abstract 2792 AACR 100th Annual Meeting
【文献】Tseng et al. 2008. J Nucl Med 49:129
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、医療用の新規の高度に特異的かつ有効なモノクローナル抗c-Met抗体を提供することである。本発明の抗体は、当技術分野において説明された抗体とは異なるc-Met結合特性を示す。好ましい態様において、本発明の抗体はヒトc-Metに対して高親和性を有し、拮抗性であり、ヒト患者における使用に好ましい薬物動態学的プロファイルを有する。
[本発明1001]
ヒトc-Metに結合するモノクローナル抗体。
[本発明1002]
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)と競合する抗体であって、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合する、本発明1001の抗体。
[本発明1003]
可溶性cMetECDHisとの結合において、以下:
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(005)、
b)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(008)、
c)抗体5D5のVH領域およびVL領域を含む固定化抗体、ならびに
d)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)
からなる群より選択される抗体と競合しない抗体であって、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と25%未満、例えば20%未満競合する、本発明1002の抗体。
[本発明1004]
a)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む抗体(024)、
b)SEQ ID NO:65の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域を含む抗体(061)、
c)SEQ ID NO:73の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域を含む抗体(062)、
d)SEQ ID NO:81の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域を含む抗体(064)、
e)SEQ ID NO:89の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体(068)、
f)SEQ ID NO:97の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域を含む抗体(069)、
g)SEQ ID NO:113の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:117の配列を含むVL領域を含む抗体(098)、
h)SEQ ID NO:121の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:125の配列を含むVL領域を含む抗体(101)、ならびに
i)SEQ ID NO:129の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:133の配列を含むVL領域を含む抗体(181)
からなる群より選択される抗体と同じエピトープに結合する、本発明1002の抗体。
[本発明1005]
a)SEQ ID NO:36に示した配列を有するVH CDR3領域(024)、
b)SEQ ID NO:193に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:68、76、84、もしくは92に示したVH CDR3領域(061、062、064、068)、
c)SEQ ID NO:196に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:100もしくは132に示したVH CDR3領域(069、181)、
d)SEQ ID NO:116に示した配列を有するVH CDR3領域(098)、または
e)SEQ ID NO:201に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:124に示したVH CDR3領域(101)
を含む、本発明1002または1004の抗体。
[本発明1006]
a)SEQ ID NO:33、185、および36のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:37、39、および206のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:34、35、および36のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:38、39、および40のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(024)、
b)SEQ ID NO:191、192、および193のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:78、79、および208のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば
a. SEQ ID NO:66、67、および68のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:70、71、および72のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(061)、
b. SEQ ID NO:74、75、および76のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:78、79、および80のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(062)、
c. SEQ ID NO:82、83、および84のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:86、87、および88のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(064)、もしくは
d. SEQ ID NO:90、91、および92のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:94、95、および96のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(068)、
c)SEQ ID NO:194、195、および196のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:209、210、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば
a. SEQ ID NO:98、99、および100のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:102、103、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(069)、もしくは
b. SEQ ID NO:130、131、および132のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:134、135、および136のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(181)、
d)SEQ ID NO:197、198、および116のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:118、119、および211のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:114、115、および116のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:118、119、および120のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(098)、または
e)SEQ ID NO:199、200、および201のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:126、212、および128のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:122、123、および124のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:126、127、および128のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(101)
を含む、本発明1002または1004の抗体。
[本発明1007]
a)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域(024)、
b)SEQ ID NO:65の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域(061)、
c)SEQ ID NO:73の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域(062)、
d)SEQ ID NO:81の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域(064)、
e)SEQ ID NO:89の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域(068)、
f)SEQ ID NO:97の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域(069)、
g)SEQ ID NO:113の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:117の配列を含むVL領域(098)、
h)SEQ ID NO:121の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:125の配列を含むVL領域(101)、
i)SEQ ID NO:129の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:133の配列を含むVL領域(181)、
j)SEQ ID NO:159の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:160の配列を含むVL領域(078)、
k)SEQ ID NO:161の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:162の配列を含むVL領域(084)、
l)SEQ ID NO:163の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:164の配列を含むVL領域(063)、
m)SEQ ID NO:165の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:166の配列を含むVL領域(087)、
n)SEQ ID NO:137の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:138の配列を含むVL領域(066)、
o)SEQ ID NO:139の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:140の配列を含むVL領域(065)、
p)SEQ ID NO:141の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:142の配列を含むVL領域(082)、
q)SEQ ID NO:143の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:144の配列を含むVL領域(089)、または
r)該配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該抗体のいずれかの変種
を含む、本発明1002の抗体。
[本発明1008]
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(006)と競合し、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合し、かつ
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と、50%未満、例えば25%未満、例えば20%未満、競合し、かつ
c-MetのSEMAドメインに結合し、好ましくは実施例9に記載のように、HGFとSEMAドメインとの結合を、10μg/mL未満、例えば2μg/mL未満のIC50で阻害することができる、
本発明1001の抗体。
[本発明1009]
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)と競合しない抗体であって、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する、本発明1008の抗体。
[本発明1010]
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域を含む抗体(005)、
b)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む抗体(006)、
c)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:29の配列を含むVL領域を含む抗体(022)、ならびに
d)SEQ ID NO:57の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域を含む抗体(058)
からなる群より選択される抗体と同じエピトープに結合する、本発明1008の抗体。
[本発明1011]
a)SEQ ID NO:181に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:4もしくは12に示したVH CDR3領域(005、006)、
b)SEQ ID NO:28に示した配列を有するVH CDR3領域(022)、または
c)SEQ ID NO:60に示した配列を有するVH CDR3領域(058)
を含む、本発明1008または1010の抗体。
[本発明1012]
a)SEQ ID NO:179、180、および181のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:6、7、および202のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば
a. SEQ ID NO:2、3、および4のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:6、7、および8のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(005)、もしくは
b. SEQ ID NO:10、11、および12のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:14、15、および16のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(006)、
b)SEQ ID NO:26、184、および28のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:30、31、および205のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:26、27、および28のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:30、31、および32のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(022)、または
c)SEQ ID NO:189、190、および60のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:62、63、および207のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:58、59、および60のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:62、63、および64のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(058)
を含む、本発明1008または1010の抗体。
[本発明1013]
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域(005)、
b)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域(006)、
c)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:29の配列を含むVL領域(022)、
d)SEQ ID NO:57の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域(058)、
e)SEQ ID NO:145の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:146の配列を含むVL領域(031)、
f)SEQ ID NO:147の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:148の配列を含むVL領域(007)、
g)SEQ ID NO:149の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:150の配列を含むVL領域(011)、
h)SEQ ID NO:151の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:152の配列を含むVL領域(017)、
i)SEQ ID NO:153の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:154の配列を含むVL領域(025)、または
j)該配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該抗体のいずれかの変種
を含む、本発明1008または1010の抗体。
[本発明1014]
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)と競合し、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合し、かつ
可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(006)と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する、
本発明1001の抗体。
[本発明1015]
可溶性cMetECDHisとの結合において、以下:
a)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(008)、ならびに
b)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)
からなる群より選択される抗体と競合せず、
好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、該固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する、
本発明1014の抗体。
[本発明1016]
SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む抗体(045)と同じエピトープに結合する、本発明1014の抗体。
[本発明1017]
SEQ ID NO:188に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:52に示したVH CDR3領域を含む(045)、本発明1014または1016の抗体。
[本発明1018]
SEQ ID NO:186、187、および188のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:54、55、および56のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えばSEQ ID NO:50、51、および52のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:54、55、および56のCDR1、2、および3配列を含むVL領域を含む(045)、本発明1014または1016の抗体。
[本発明1019]
a)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域(045)、
b)SEQ ID NO:155の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:156の配列を含むVL領域(040)、
c)SEQ ID NO:157の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:158の配列を含むVL領域(039)、または
d)該配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該抗体のいずれかの変種
を含む、本発明1014または1016の抗体。
[本発明1020]
SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む抗体(008)と同じエピトープに結合する、またはSEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:45の配列を含むVL領域を含む抗体(035)と同じエピトープに結合する、またはSEQ ID NO:105の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域を含む抗体(096)と同じエピトープに結合する、本発明1001の抗体。
[本発明1021]
SEQ ID NO:183に示した配列を有するVH CDR3領域、例えばSEQ ID NO:20、44、または108に示したVH CDR3領域を含む(008、035、096)、本発明1020の抗体。
[本発明1022]
SEQ ID NO:18、182、および183のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:22、203、および204のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば
a)SEQ ID NO:18、19、および20のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:22、23、および24のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(008)、または
b)SEQ ID NO:42、43、および44のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:46、47、および48のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(035)、または
c)SEQ ID NO:106、107、および108のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:110、111、および112のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(096)
を含む、本発明1020の抗体。
[本発明1023]
a)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域(008)、
b)SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:45の配列を含むVL領域(035)、
c)SEQ ID NO:105の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域(096)、または
d)該配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該抗体のいずれかの変種
を含む、本発明1020または1022の抗体。
[本発明1024]
c-MetのSEMAドメインに結合する抗体であって、好ましくは、実施例9に記載のように、HGFとSEMAドメインとの結合を、10μg/mL未満、例えば2μg/mL未満のIC50で阻害することができる、前記本発明1001~1019のいずれかの抗体。
[本発明1025]
好ましくは実施例13に従い求められた時に、10nM以下のEC50、例えば2nM以下のEC50でA431細胞に結合する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1026]
二価抗体である、本発明1025の抗体。
[本発明1027]
好ましくは実施例14に従い求められた時に、20nM以下の親和性定数(K
D)、例えば5nM以下の親和性でc-Metに結合する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1028]
アカゲザルc-Metに結合する抗体であって、好ましくは、実施例15に従い求められた時に、アカゲザルc-Metに結合した抗体のシグナルが負の対照抗体のシグナルの少なくとも5倍である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1029]
HGFとc-Met細胞外ドメインとの結合を阻害する抗体であって、好ましくは、実施例16に従い求められた時に、40%を超えて、例えば50%を超えて、例えば60%を超えて、例えば70%を超えて、例えば80%を超えて、例えば90%を超えて、結合を阻害する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1030]
KP4細胞の生存を阻害することができる抗体であって、好ましくは実施例19に記載のように、好ましくは、10%を超えて、例えば25%を超えて、例えば40%を超えて、生存を阻害することができる、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1031]
完全長抗体、好ましくはIgG1抗体、特にIgG1,κ抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1032]
別の部分、例えば細胞傷害性部分、放射性同位体、または薬物と結合体化されている、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1033]
エフェクター機能欠損性の抗体、例えば安定化されたヒトIgG4抗体、例えばヒトIgG4の重鎖定常領域にある位置409のアルギニンが、リジン、スレオニン、メチオニン、もしくはロイシン、好ましくはリジンで置換されているおよび/またはヒンジ領域がCys-Pro-Pro-Cys配列を含む抗体
である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1034]
一価抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1035]
一価抗体が、
(i)本発明1001~1023のいずれかの抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、および
(ii)ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合はC
H領域の他の領域、例えばC
H3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のC
H領域とのジスルフィド結合または同一のC
H領域との他の共有結合もしくは安定した非共有結合による重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基を含まないように修飾されている、免疫グロブリンのC
H領域、またはC
H2領域およびC
H3領域を含むその断片
を含む、本発明1034の抗体。
[本発明1036]
工程(ii)において言及されている免疫グロブリンがIgG4サブタイプである、本発明1035の抗体。
[本発明1037]
ヒンジ全体が欠失されるように重鎖が修飾されている、本発明1035または1036の抗体。
[本発明1038]
例えばヒンジ領域変異によって、可動性が低下するように修飾されている、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1039]
IgG1サブタイプである抗体であって、ヒンジ領域が、
(i)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させ、これを配列:ERKCCVECPPCP(SEQ ID NO:214)のIgG2ヒンジ領域で置換する(IgG1ヒンジ-IgG2);
(ii)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:215)となるように位置220を欠失させる(IgG1 ΔC220);
(iii)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSXDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:216)となるように、位置220のシステインを他の任意の天然アミノ酸(X)で置換する(IgG1 C220X);
(iv)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させる(ユニボディ IgG1);
(v)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させ、これを配列
(SEQ ID NO:217)
のIgG3ヒンジ領域で置換する(IgG1ヒンジ-IgG3);または
(vi)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSCDCHCPPCP(SEQ ID NO:218)となるように、位置223のスレオニンをシステインで置換し、位置222のリジンおよび位置225のスレオニンを欠失させる(IgG1 TH7Δ6-9)
ことによって修飾されている、本発明1038の抗体。
[本発明1040]
修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:219)(IgG1 C220S)となるように、位置220のシステインをセリンで置換することによってヒンジ領域が修飾されている、本発明1039の抗体。
[本発明1041]
IgG2サブタイプである、本発明1038の抗体。
[本発明1042]
陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー-パルスドアンペロメトリ検出(HPAEC-PAD)によって確かめられた時に、コアフコシル化が10%未満、例えば5%未満に低減されるように修飾されている、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1043]
前記本発明のいずれか一項記載において定義されたc-Met結合部位と、異なる結合特異性、例えばヒトエフェクター細胞、ヒトFc受容体、B細胞受容体、またはc-Metの非重複エピトープに対する結合特異性を有する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1044]
SEQ ID NO:1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、93、97、101、105、109、113、117、121、125、129、133、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、および178からなる群より選択されるアミノ酸配列の1つまたは複数をコードする、ヌクレオチド配列。
[本発明1045]
本発明1044のヌクレオチド配列を含み、抗体の機能的に連結された軽鎖定常領域、重鎖定常領域、または軽鎖および重鎖の両方をさらにコードする、発現ベクター。
[本発明1046]
本発明1001~1043のいずれか一項において定義された抗体を産生する、組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞。
[本発明1047]
本発明1001~1043のいずれか一項において定義された抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[本発明1048]
医薬として使用するための、本発明1001~1043のいずれかの抗体。
[本発明1049]
癌、例えばHGF依存性癌またはHGF非依存性癌の治療において使用するための、本発明1001~1043のいずれかの抗体。
[本発明1050]
膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、胆管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、線維肉腫、急性骨髄性白血病、成人T細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、グリア芽細胞腫、星状細胞腫、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、ならびに明細胞肉腫(CCS)、胞状軟部肉腫(ASPS)、および転座関連腎細胞癌を含むMiT腫瘍からなる群より選択される癌の治療において使用するための、本発明1001~1043のいずれかの抗体。
[本発明1051]
1種類または複数種のさらなる治療剤、例えば化学療法剤と組み合わせて癌を治療するためのものである、本発明1049または1050の抗体。
[本発明1052]
任意で、本発明1049および1050のさらなる特徴を含む、癌を治療するための医薬を製造するための、本発明1001~1043のいずれかの抗体の使用。
[本発明1053]
c-Metを発現する腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法であって、それを必要とする個体に、本発明1001~1043のいずれかの抗体を投与する工程を含む、方法。
[本発明1054]
a)本発明1046の宿主細胞を培養する工程、および
b)培地から抗体を精製する工程
を含む、本発明1001~1043のいずれかの抗体を産生するための方法。
[本発明1055]
抗体とc-Metの複合体の形成を可能にする条件下で、試料を本発明1001~1043のいずれかの抗体と接触させる工程;および
複合体が形成されたかどうか分析する工程
を含む、試料中のc-Metの存在を検出するための方法。
[本発明1056]
本発明1001~1043のいずれかの抗体;および
キットを使用するための説明書
を含む、試料中のc-Metの存在を検出するためのキット。
[本発明1057]
本発明1001~1043のいずれかの抗体に対する、抗イディオタイプ抗体。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】HuMab重鎖可変領域配列のアラインメント。これらの配列に基づいて、CDR配列の一部のコンセンサス配列を定義することができる。これらのコンセンサス配列を表4に示した。
【
図2-1】HuMab軽鎖可変領域配列のアラインメント。これらの配列に基づいて、CDR配列の一部のコンセンサス配列を定義することができる。これらのコンセンサス配列を表4に示した。
【
図3】一価型抗c-Met抗体および二価型抗c-Met抗体とc-Met発現A431細胞との結合曲線。示されたデータは1回の代表的な実験のMFIである。IgG1-024およびUni-068はA431細胞に対して飽和結合を示さなかったので、正確なEC
50値を計算することはできなかった。
【
図4】抗体と、アカゲザル上皮細胞上に発現しているc-Metとの結合。示されたデータは1回の実験のMFIである。
【
図5】抗c-Met抗体によって誘導された、HGFとc-Met受容体細胞外ドメインとの結合の阻害。示されたデータは代表的な1回の実験である。
【
図6】TR-FRETを用いて試験された、cMetSEMA_567His8との結合における様々な抗c-Met抗体のHGF結合阻害曲線。示されたデータは、3回の独立した実験の平均MFI±標準偏差である。
【
図7】非処理細胞(0%)と比較した、抗c-Met抗体処理後のKP4生細胞の阻害パーセント。示されたデータは、2回の独立した実験の生細胞の阻害パーセント±標準偏差である。IgG1-1016-022は1回の実験における唯一の陽性であった。
【
図8】SCIDマウスにおけるKP4異種移植モデルにおける腫瘍成長を抗c-Met抗体が阻害する効力。マウスを9日目に400μg抗体で処置した後に、維持用量200μgで毎週処置した。処置群あたりの腫瘍サイズの中央値を示した。
【
図9】SCIDマウスにおけるKP4異種移植モデルにおける腫瘍成長を抗c-Met抗体が阻害する効力。マウスを9日目に400μgの抗体で処置した後に、維持用量200μgで毎週処置した。腫瘍発生率に対する処置の効果(時間)。腫瘍のないマウス(腫瘍サイズ<500mm
3)のパーセントを示した。対照抗体と比較して、拮抗性抗体で処置したマウスでは腫瘍形成が遅くなる。
【
図10】SCIDマウスにおけるMKN45異種移植モデルにおける腫瘍成長を抗c-Met抗体が阻害する効力。マウスを7日目に40mg/kgの抗体で処置し、14日目、21日目、および28日目に20mg/kg抗体で処置した。マウスの50%が700mm
3エンドポイントに到達するまで、処置群あたりの腫瘍サイズの中央値を示した。
【
図11】SCIDマウスにおけるMKN45異種移植モデルにおける腫瘍成長を抗c-Met抗体が阻害する効力。マウスを7日目に40mg/kgの抗体で処置し、14日目、21日目、および28日目に20mg/kg抗体で処置した。腫瘍サイズが700mm
3未満のマウスのパーセントをカプラン・マイヤープロットにおいて示した。アイソタイプ対照抗体と比較して、抗c-Met抗体で処置したマウスでは腫瘍形成が遅くなる。
【
図12】アゴニスト活性に対する抗体可動性の効果を確かめるためのKP4生存アッセイ。IgA2m(1)形式は、同じ抗体のIgA1形式およびIgG1形式とは対照的に増殖を誘導しなかった。この実験では、5D5抗c-Met抗体の変種(US6468529および実施例2を参照されたい)を使用した。
【
図13】(069)の可動性変異体の非還元SDS-PAGE分析。異常な多量体または分解産物は観察されなかったのに対して、軽鎖の対形成は、C220S、ΔC220、およびIgG1-ヒンジIgG3変異体では50kDバンド((LC)
2)として見られた。
【
図14】c-Metとc-Met抗体ヒンジ変異体との結合を測定するための抗原結合ELISA。全ての変異体は、ELISAに示されたようにc-Metに対して同等の親和性で結合する。
【
図15】c-Metに対する抗体のアゴニスト活性の読み取り値としてのc-Metリン酸化。
図15はA549溶解産物のウエスタンブロット結果を示す。リン酸化c-met、全c-Met、またはβ-アクチンに対する抗体で膜を染色した。
【
図16】NCI-H441細胞を用いた増殖アッセイ。抗体または対照の存在下で7日間インキュベートした後に細胞質量を求め、未処理試料(100%と設定した)に対するパーセントとしてプロットした。
【
図17】KP4生存アッセイ。KP4細胞の全生存率に対する抗c-Met抗体の効果を試験した。IgG1-1016-069がKP4生存率を下げる能力は、抗体の可動性を小さくする変異を導入することによって保持および/または改善された。
【
図18】ELISAを用いてA549溶解産物中の全c-Metレベルとして測定された時の発現低下。抗体(069)の全ての変種は発現低下能を保持した。
【
図19】高フコースバージョンおよび低フコースバージョンの抗体IgG1-1016-069を比較するためのADCCアッセイ。
【
図20】FACS結合アッセイにおける、c-Met抗体と全血中の細胞との結合の欠如。B細胞;単球および顆粒球についての結果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
定義
「c-Met」という用語は、本明細書において用いられる時には、肝細胞増殖因子受容体(GenBankアクセッションNM000245)を指し、細胞によって天然に発現されたヒトc-Met、またはc-Met遺伝子でトランスフェクトされた細胞上に発現されたヒトc-Metの任意の変種、アイソフォーム、および種ホモログを含む。
【0013】
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽鎖(L)、一対が重鎖(H)の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合で相互接続されている構造的に関連する糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造ははっきり特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989))を参照されたい。簡単に述べると、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと省略する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3からなる。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと省略する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が著しく変化し得る、および/もしくは構造が規定されたループの形をとり得る超可変領域)にさらに細分することができ、超可変性領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域と共に散在している。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917(1987)も参照されたい)。典型的には、この領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991)に記載の方法によって行われる(本明細書における、Kabatと同様の、またはKabatによる可変ドメイン残基ナンバリングなどの句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについての、このナンバリングシステムをいう)。このナンバリングシステムを用いると、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮または可変ドメインのFRもしくはCDRへの挿入に対応して、ペプチドの実際の直鎖アミノ酸配列中のアミノ酸を減らすことができる、またはさらなるアミノ酸を含むことができる。例えば、重鎖可変ドメインは、VH CDR2の残基52の後ろに1個のアミノ酸インサート(Kabatに従って、残基52a)、ならびに重鎖FR残基82の後ろに挿入残基(例えば、Kabatに従って、残基82a、82b、および82cなど)を含むことができる。Kabat残基ナンバリングは、ある特定の抗体について、Kabatによってナンバリングされた「標準」配列と抗体配列との相同性領域でのアラインメントによって決定することができる。
【0014】
本発明の文脈において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い半減期、例えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3日、4日、5日、6日、7日以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導する、促進する、増強する、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む、宿主組織または宿主因子との結合を媒介することができる。抗c-Met抗体はまた、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、または類似の分子でもよい(例えば、ダイアボディの説明については、PNAS USA 90(14), 6444-8(1993)を参照されたい)。実際には、本発明によって提供される二重特異性抗体、ダイアボディなどは、c-Metの一部に加えて、任意の適切な標的に結合することができる。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たし得ることも示されている。「抗体」という用語の中に含まれる結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov; 21(11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546(1989));(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ(nanobody)(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan; 5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、本発明の独特の特徴であり、異なる生物学的な特性よび有用性を示す。本発明の文脈における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片は本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば酵素切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解すべきである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。
【0015】
本明細書で使用する「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)をいう。
【0016】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈では、抗体分子が1種類の抗原分子にしか結合できない、従って、抗原架橋できないことを意味する。
【0017】
「エフェクター機能が欠損している抗体」または「エフェクター機能欠損性抗体」は、1つまたは複数のエフェクター機構、例えば補体活性化もしくはFc受容体結合を活性化する能力が大幅に低下している、または補体活性化もしくはFc受容体結合を活性化する能力が無い抗体をいう。従って、エフェクター機能欠損性抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力が大幅に低下しているか、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力が無い。このような抗体の一例はIgG4である。
【0018】
「抗c-Met抗体」とは、抗原c-Metに特異的に結合する前記の抗体である。
【0019】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボで体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0020】
本明細書中で使用するヒト抗体は、その抗体がヒト免疫グロブリン配列を用いた系から、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって獲得される場合、特定の生殖系列配列に「由来」し、ここで、選択されたヒト抗体は、アミノ酸配列において、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、または例えば、少なくとも99%同一である。典型的には、特定のヒト生殖系列配列由来のヒト抗体は、重鎖CDR3外では、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、20個以下のアミノ酸の違い、例えば10個以下のアミノ酸の違い、例えば9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、または5個以下、例えば4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下のアミノ酸の違いを示す。
【0021】
好ましい態様において、本発明の抗体は単離されている。本明細書で使用する「単離された抗体」は、抗原特異性の異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、c-Metに特異的に結合する単離された抗体は、c-Met以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトc-Metのエピトープ、アイソフォーム、または変種に特異的に結合する単離された抗体は、他の関連抗原、例えば他の種に由来する抗原(例えば、c-Metの種ホモログ)との交差反応性を有することがある。さらに、単離された抗体は、他の細胞の材料および/または化学物質を実質的に含まないことがある。本発明の1つの態様では、詳細に明らかにされた組成物において、抗原結合特異性の異なる、2種類以上の「単離された」モノクローナル抗体が組み合わされる。
【0022】
2種類以上の抗体の文脈に関して本明細書において用いられる場合、「と競合する」または「と交差競合する」という用語は、2種類以上の抗体がc-Metとの結合において競合する、例えば本明細書の実施例に記載のアッセイにおいてc-Metとの結合において競合することを示す。一部の抗体対については、実施例のアッセイにおける競合は一方の抗体がプレート上にコーティングされ、他方の抗体が競合に用いられた時のみに観察され、逆は同じではない。「と競合する」という用語はまた、本明細書において用いられる場合、このような組み合わせ抗体をカバーすることが意図される。
【0023】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。コンホメーションエピトープおよび非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが、後者への結合が失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープ免疫優性成分とも呼ばれる)、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基(言い換えると、このアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリント(footprint)の中にある)を含むことがある。
【0024】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、分子組成が1種類しかない抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して結合特異性および親和性を1つしか示さない。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、結合特異性を1つしか示さない抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスクロモソーム非ヒト動物、例えばヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合したハイブリドーマによって作製することができる。
【0025】
抗体と所定の抗原との結合に関して本明細書で使用する「結合」という用語は、典型的には、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、BIAcore 3000機器において、リガンドとして抗原、分析物として抗体を用いて確かめられた時に、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11Mまたはさらにそれ未満のKDに対応する親和性での結合であり、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合の親和性の少なくとも1/10以下、例えば少なくとも1/100以下、例えば少なくとも1/1,000以下、例えば少なくとも1/10,000以下、例えば少なくとも1/100,000以下のKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性が小さくなる量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも小さくなる量は少なくとも1/10,000以下であり得る。
【0026】
本明細書で使用する「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数をいう。この値は、koff値とも呼ばれる。
【0027】
本明細書で使用する「ka」(M-1xsec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数をいう。
【0028】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。
【0029】
本明細書で使用する「KA」(M-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数をいい、kaをkdで割ることによって得られる。
【0030】
本明細書で使用する「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞について言及している場合)という用語は、細胞と抗c-Met抗体が接触した時に、抗c-Met抗体と接触していない同じ細胞の増殖と比較して任意の測定可能な細胞増殖減少、例えば細胞培養増殖の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の阻害を含むことが意図される。このような細胞増殖減少は、様々な機構、例えばエフェクター細胞食作用、ADCC、CDC、および/またはアポトーシスによって起こり得る。
【0031】
本発明はまた、実施例の抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的変種を含む抗体を提供する。抗c-Met抗体に関して用いられるVL、VH、またはCDRの機能的変種は依然として、親抗体の親和性/アビディティおよび/または特異性/選択性の少なくともかなりの部分(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)を抗体が保持することを可能にする。場合によっては、このような抗c-Met抗体は、親抗体より高い親和性、選択性、および/または特異性に関連することがある。
【0032】
このような機能的変種は、典型的には、親抗体と大きな配列同一性を保持している。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一の位置の数/位置の総数x100)である。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17(1988))のアルゴリズムを使用し、PAM120ウエイト残基表、12のギャップレングスペナルティ、および4のギャップペナルティを用いて決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453(1970))アルゴリズムを用いて決定することができる。
【0033】
CDR変種の配列は、主に保存的置換によって親抗体配列のCDRの配列と異なってもよい。例えば、変種における置換の少なくとも10個、例えば少なくとも9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個は保存的アミノ酸残基置換である。
【0034】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸クラスの中の置換によって定義することができる。
【0035】
【0036】
本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば本発明の抗体をコードする発現ベクターが導入されている細胞をいうことが意図される。組換え宿主細胞には、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)、例えばCHO細胞、HEK293細胞、NS/0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0037】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、1つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖のトランスジーンまたはトランスクロモソーム(transchromosome)を含む(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれた、または組み込まれていない)ゲノムを有し、完全なヒト抗体を発現することができる非ヒト動物をいう。例えば、トランスジェニックマウスは、c-Met抗原および/またはc-Met発現細胞で免疫した時にヒト抗c-Met抗体を産生するように、ヒト軽鎖トランスジーンおよびヒト重鎖トランスジーンまたはヒト重鎖トランスクロモソームを有することができる。ヒト重鎖トランスジーンは、トランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウス、例えばHCo7もしくはHCol2マウスのようにマウスの染色体DNAに組み込まれてもよく、または、ヒト重鎖トランスジーンは、WO02/43478に記載のトランスクロモソームKMマウスのように染色体外に維持されてもよい。さらに大きなヒトAb遺伝子レパートリーを有する類似のマウスにはHCo7およびHCo20が含まれる(例えば、WO2009097006を参照されたい)。このようなトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソームマウス(総称して本明細書において「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによって、ある特定の抗原に対して、複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、および/またはIgE)を産生することができる。トランスジェニック非ヒト動物はまた、このような特異的抗体をコードする遺伝子を導入することによって、例えばこれらの遺伝子と、動物の乳の中に発現される遺伝子とを機能的に連結することによって、ある特定の抗原に対する抗体を産生するのに使用することもできる。
【0038】
「治療」とは、症状または疾患状態を緩和する、寛解させる、抑止する、または根絶する(治癒する)目的で、治療活性のある有効量の本発明の化合物を投与するこという。
【0039】
「有効量」とは、望ましい治療結果を得るために必要な投与および時間で効果を示す量をいう。抗c-Met抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において抗c-Met抗体が望ましい応答を誘発する能力などの要因に応じて変わることがある。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分の治療に有益な作用が毒性作用または有害作用を上回る量でもある。
【0040】
「抗イディオタイプ」抗体は、概して抗体の抗原結合部位に結合する独特の決定基を認識する抗体である。
【0041】
本発明のさらなる局面および態様
前記のように、第1の局面において、本発明は、ヒトc-Metに結合するモノクローナル抗体に関する。
【0042】
本発明のモノクローナル抗体は、例えばKohler et al., Nature 256, 495(1975)によって初めて述べられたハイブリドーマ法によって産生されてもよく、組換えDNA方法によって産生されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばClackson et al., Nature 352, 624-628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222, 581-597(1991)に記載の技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。モノクローナル抗体は任意の適切な供給源から得ることができる。従って、例えばモノクローナル抗体は、関心対象の抗原、例えば表面上に抗原を発現する細胞、または関心対象の抗原をコードする核酸の形をした抗原で免疫したマウスから得られたマウス脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから得られてもよい。モノクローナル抗体はまた、免疫したヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えばラット、イヌ、霊長類などの抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られてもよい。
【0043】
1つの態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。c-Metに対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソームマウスを用いて作製することができる。このようなトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソームマウスは、本明細書において、それぞれ、HuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書において総称して「トランスジェニックマウス」と呼ばれる。
【0044】
HuMAbマウスは、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)免疫グロブリン配列ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列と、内因性μ鎖およびκ鎖遺伝子座を不活化する標的変異をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する(Lonberg, N. et al., Nature 368, 856-859(1994))。従って、このマウスはマウスIgMまたはκの低発現を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランスジーンはクラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgG,κモノクローナル抗体を産生する(Lonberg, N. et al.(1994), 前出;Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology 113, 49-101(1994)、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol.13 65-93(1995)、およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N. Y. Acad. Sci 764 536-546(1995)に概説)。HuMAbマウスの調製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research 20, 6287-6295(1992)、Chen, J. et al., International Immunology 5, 647-656(1993)、Tuaillon et al., J. Immunol. 152, 2912-2920(1994)、Taylor, L. et al., International Immunology 6, 579-591(1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology 14, 845-851(1996)に詳述されている。US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,789,650、US5,877,397、US5,661,016、US5,814,318、US5,874,299、US5,770,429、US5,545,807、WO98/24884、WO94/25585、WO93/1227、WO92/22645、WO92/03918、およびWO01/09187も参照されたい。
【0045】
HCo7マウスは、内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830(1993)に記載)、内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851(1996)に記載)、およびHCo7ヒト重鎖トランスジーン(US5,770,429に記載)を有する。
【0046】
HCo12マウスは、内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830(1993)に記載)、内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851(1996)に記載)、およびHCo12ヒト重鎖トランスジーン(WO01/14424の実施例2に記載)を有する。
【0047】
KMマウス系統では、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al., EMBO J. 12, 811-820(1993)に記載のようにホモで破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、WO01/09187の実施例1に記載のようにホモで破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851(1996)に記載のように、ヒトκ軽鎖トランスジーンであるKCo5を有する。このマウス系統はまた、WO02/43478に記載のように、第14番染色体断片hCF(SC20)からなるヒト重鎖トランスクロモソームも有する。
【0048】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞を用いると、周知の技法に従って、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製することができる。
【0049】
さらに、本発明のヒト抗体または他の種に由来する本発明の抗体は、当技術分野において周知の技法を用いた、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技法を含むが、それに限定されるわけではないディスプレイ型技術によって特定することができ、得られた分子は、このような技法が当技術分野において周知のように親和性成熟などのさらなる成熟に供することができる(例えば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227, 381(1991)(ファージディスプレイ)、Vaughan et al., Nature Biotech 14, 309(1996)(ファージディスプレイ)、Hanes and Plucthau, PNAS USA 94, 4937-4942(1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene 73, 305-318(1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS 17, 241-245(1992)、Cwirla et al., PNAS USA 87, 6378-6382(1990)、Russel et al., Nucl. Acids Research 21, 1081-1085(1993)、Hogenboom et al., Immunol. Reviews 130, 43-68(1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH 10, 80-84(1992)、およびUS5,733,743を参照されたい)。非ヒト抗体を作製するためにディスプレイ技術が用いられるのであれば、このような抗体をヒト化することができる。
【0050】
1つの態様において、本発明の抗体は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgMの抗体である。
【0051】
本発明の抗体の第1の主な態様において、抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)と競合し、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合する。
【0052】
さらなる態様において、前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、以下:
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(005)、
b)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(008)、
c)抗体5D5のVH領域およびVL領域を含む固定化抗体、ならびに
d)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)
からなる群より選択される抗体と競合しない。好ましくは前記抗体は、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する。
【0053】
さらなる態様において、前記抗体は、以下:
a)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む抗体(024)、
b)SEQ ID NO:65の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域を含む抗体(061)、
c)SEQ ID NO:73の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域を含む抗体(062)、
d)SEQ ID NO:81の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域を含む抗体(064)、
e)SEQ ID NO:89の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体(068)、
f)SEQ ID NO:97の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域を含む抗体(069)、
g)SEQ ID NO:113の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:117の配列を含むVL領域を含む抗体(098)、
h)SEQ ID NO:121の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:125の配列を含むVL領域を含む抗体(101)、ならびに
i)SEQ ID NO:129の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:133の配列を含むVL領域を含む抗体(181)
からなる群より選択される抗体と同じエピトープに結合する。
【0054】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:36に示した配列を有するVH CDR3領域(024)、
b)SEQ ID NO:193に示した配列を有するVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:68、76、84、もしくは92に示したVH CDR3領域(061、062、064、068)、
c)SEQ ID NO:196に示した配列を有するVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:100もしくは132に示したVH CDR3領域(069、181)、
d)SEQ ID NO:116に示したVH CDR3領域(098)、または
e)SEQ ID NO:201に示したVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:124に示したVH CDR3領域(101)。
【0055】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:34、185、および36のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:38、39、および206のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、SEQ ID NO:34、35、および36のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:38、39、および40のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(024)、
b)SEQ ID NO:191、192、および193のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:78、79、および208のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、
a. SEQ ID NO:66、67、および68のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:70、71、および72のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(061)、
b. SEQ ID NO:74、75、および76のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:78、79、および80のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(062)、
c. SEQ ID NO:82、83、および84のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:86、87、および88のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(064)、もしくは
d. SEQ ID NO:90、91、および92のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:94、95、および96のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(068)、
c)SEQ ID NO:194、195、および196のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:209、210、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、
a.SEQ ID NO:98、99、および100のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:102、103、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(069)、もしくは
b.SEQ ID NO:130、131、および132のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:134、135、および136のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(181)、
d)SEQ ID NO:197、198、および116のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:118、119、および211のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、SEQ ID NO:114、115、および116のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:118、119、および120のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(098)、または
e)SEQ ID NO:199、200、および201のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:126、212、および128のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、SEQ ID NO:122、123、および124のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:126、127、および128のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(101)。
【0056】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域(024)、
b)SEQ ID NO:61の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域(061)、
c)SEQ ID NO:73の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域(062)、
d)SEQ ID NO:81の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域(064)、
e)SEQ ID NO:89の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域(068)、
f)SEQ ID NO:97の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域(069)、
g)SEQ ID NO:113の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:117の配列を含むVL領域(098)、
h)SEQ ID NO:121の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:125の配列を含むVL領域(101)、
i)SEQ ID NO:129の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:133の配列を含むVL領域(181)、
j)SEQ ID NO:159の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:160の配列を含むVL領域(078)、
k)SEQ ID NO:161の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:162の配列を含むVL領域(084)、
l)SEQ ID NO:163の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:164の配列を含むVL領域(063)、
m)SEQ ID NO:165の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:166の配列を含むVL領域(087)、
n)SEQ ID NO:137の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:138の配列を含むVL領域(066)、
o)SEQ ID NO:139の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:140の配列を含むVL領域(065)、
p)SEQ ID NO:141の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:142の配列を含むVL領域(082)、
q)SEQ ID NO:143の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:144の配列を含むVL領域(089)、または
r)前記配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変種。
【0057】
1つの態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:100のCDR3配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:104のCDR3配列を含むVL領域を含む(069)。
【0058】
1つの態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:98、99、および100のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:102、103、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域を含む(069)。
【0059】
1つの態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:97の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域を含む(069)。
【0060】
本発明の抗体の別の主な態様において、
前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(006)と競合し、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合し、かつ
前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と50%未満、例えば25%未満、例えば20%未満、競合し、かつ
前記抗体はc-MetのSEMAドメインに結合し、好ましくは実施例9に記載のように、HGFとSEMAドメインとの結合を、10μg/mL未満、例えば2μg/mL未満のIC50で阻害することができる。
【0061】
さらなる態様において、前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する。
【0062】
さらなる態様において、前記抗体は、以下:
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域を含む抗体(005)、
b)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む抗体(006)、
c)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:29の配列を含むVL領域を含む抗体(022)、ならびに
d)SEQ ID NO:57の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域を含む抗体(058)
からなる群より選択される抗体と同じエピトープに結合する。
【0063】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:181に示した配列を有するVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:4もしくは12に示したVH CDR3領域(005、006)、
b)SEQ ID NO:28に示した配列を有するVH CDR3領域(022)、または
c)SEQ ID NO:60に示した配列を有するVH CDR3領域(058)。
【0064】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:179、180、および181のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:6、7、および202のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、
a. SEQ ID NO:2、3、および4のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:6、7、および8のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(005)、もしくは
b. SEQ ID NO:10、11、および12のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:14、15、および16のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、(006)、
b)SEQ ID NO:26、184、および28のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:30、31、および205のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、SEQ ID NO:26、27、および28のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:30、31、および32のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(022)、または
c)SEQ ID NO:189、190、および60のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:62、63、および207のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、SEQ ID NO:58、59、および60のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:62、63、および64のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(058)。
【0065】
なおさらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域(005)、
b)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域(006)、
c)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:29の配列を含むVL領域(022)、
d)SEQ ID NO:57の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域(058)、
e)SEQ ID NO:145の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:146の配列を含むVL領域(031)、
f)SEQ ID NO:147の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:148の配列を含むVL領域(007)、
g)SEQ ID NO:149の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:150の配列を含むVL領域(011)、
h)SEQ ID NO:151の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:152の配列を含むVL領域(017)、
i)SEQ ID NO:153の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:154の配列を含むVL領域(025)、または
j)前記配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変種。
【0066】
本発明の抗体の別の主な態様において、
前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(045)と競合し、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と50%を超えて、例えば75%を超えて競合し、かつ
前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:13の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(006)と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する。
【0067】
さらなる態様において、前記抗体は、可溶性cMetECDHisとの結合において、以下:
a)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(008)、ならびに
b)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域を含む固定化抗体(024)
からなる群より選択される抗体と競合せず、好ましくは、実施例17に記載のように求められた時に、前記固定化抗体と25%未満、例えば20%未満、競合する。
【0068】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域を含む抗体(045)と同じエピトープに結合する。
【0069】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:188に示した配列を有するVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:52に示したVH CDR3領域を含む(045)。
【0070】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:186、 187、および188のCDR1、2、および3 配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:54、 55、および56のCDR1、 2、および3 配列を含むVL領域を含み、例えば、SEQ ID NO:50、 51、および52のCDR1、2、および3 配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:54、 55、および56のCDR1、 2、および3 配列を含むVL領域を含む(045)。
【0071】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:53の配列を含むVL領域(045)、
b)SEQ ID NO:155の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:156の配列を含むVL領域(040)、
c)SEQ ID NO:157の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:158の配列を含むVL領域(039)、または
d)前記配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変種。
【0072】
さらなる態様において、前記抗体はc-MetのSEMAドメインに結合し、好ましくは実施例9に記載のように、HGFとSEMAドメインとの結合を、10μg/mL未満、例えば2μg/mL未満のIC50で阻害することができる。
【0073】
本発明の抗体の別の主な態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域を含む抗体(008)と同じエピトープに結合するか、またはSEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:45の配列を含むVL領域を含む抗体(035)と同じエピトープに結合するか、またはSEQ ID NO:105の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域を含む抗体(096)と同じエピトープに結合する。
【0074】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:183に示した配列を有するVH CDR3領域、例えば、SEQ ID NO:20、44、または108に示したVH CDR3領域を含む(008、035、096)。
【0075】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:18、182、および183のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:22、203、および204のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、例えば、
a)SEQ ID NO:18、19、および20のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:22、23、および24のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(008)、または
b)SEQ ID NO:42、43、および44のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:46、47、および48のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(035)、または
c)SEQ ID NO:106、107、および108のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:110、111、および112のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(096)。
【0076】
さらなる態様において、前記抗体は、以下を含む:
a)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:21の配列を含むVL領域(008)、
b)SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:45の配列を含むVL領域(035)、
c)SEQ ID NO:105の配列を含むVH領域、および、好ましくはSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域(096)、または
d)前記配列内に、好ましくは最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変種。
【0077】
さらなる態様において、前記抗体は、好ましくは実施例13に記載のように確かめられた時に、10nM以下のEC50、例えば2nM以下のEC50でA431細胞に結合する。
【0078】
なおさらなる態様において、前記抗体は、好ましくは実施例14に記載のように確かめられた時に、20nM以下の親和性定数(KD)、例えば5nM以下の親和性でc-Metに結合する。
【0079】
なおさらなる態様において、前記抗体はアカゲザルc-Metに結合する。好ましくは実施例15に記載のように確かめられた時に、アカゲザルc-Metに結合した抗体のシグナルは、負の対照抗体のシグナルの少なくとも5倍である。
【0080】
なおさらなる態様において、前記抗体は、HGFとc-Met細胞外ドメインとの結合を阻害する、好ましくは実施例16に記載のように確かめられた時に、40%超、例えば50%超、例えば60%超、例えば70%超、例えば80%超、例えば90%超、結合を阻害する。
【0081】
なおさらなる態様において、前記抗体はKP4細胞の生存を阻害することができ、好ましくは実施例19に記載のように、10%超、例えば25%超、例えば40%超の生存を阻害することができる。
【0082】
抗体形式
本発明は、拮抗性抗c-Met抗体および非拮抗性抗c-Met抗体を提供する。一部の抗体は一価または二価であるかに関係なく標的細胞に拮抗作用するが、他の抗体の場合、機能作用は結合価に左右される。本明細書において実施例19に示したように、例えば、抗体024、062、064、068、069、098、101、181(これらは全て同じクロスブロッキング(cross-blocking)グループにある。実施例17を参照されたい)は形式に関係なくKP4生存アッセイにおいて拮抗性を有する。他方で、抗体022および058は、このアッセイでは一価形式では拮抗的に振る舞うが、二価形式ではアゴニストとして(または少なくとも非拮抗的に)振る舞う。従って、特定の用途の望ましい機能特性に応じて、本発明において提供される抗体セットから特定の抗体を選択することができる、および/または給合価を変えるように、これらの形式を適応することができる。
【0083】
さらに、本発明の抗体はどのアイソタイプでもよい。アイソタイプの選択は、典型的には、ADCC誘導などの望ましいエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのどちらか一方を使用することができる。所望であれば、本発明の抗c-Met抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチすることができる。例えば、最初にIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチ法を用いて、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgG1からIgG2に変換することができる。従って、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途に合わせて、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変えることができる。1つの態様において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1,κである。
【0084】
拮抗性抗体によって誘導されるc-Metの発現低下は治療用c-Met抗体の作用機構である。従って、本発明の1つの局面において、アゴニスト特性が低下しているが、c-Metの発現低下を誘導する能力を保持している抗体が望ましい。
【0085】
抗体のコンホメーション可動性を小さくすることによって、二価IgG1抗体の残存する潜在的なアゴニスト活性が最小になることが発見されている。
【0086】
従って、さらなる態様において、本発明の抗体は、可動性が小さくなるように、例えばヒンジ領域変異によって可動性が小さくなるように修飾されている。
【0087】
最も大きなコンホメーション変化は、広範囲のFab-Fc角度を可能にするヒンジ可動性によってもたらされる(Ollmann Saphire, E., R.L. Stanfield, M.D.M. Crispin, P.W.H.I. Parren, P.M. Rudd, R.A. Dwek, D.R. Burton and I.A. Wilson. 2002. Contrasting IgG structures reveal extreme asymmetry and flexibility. J. Mol. Biol. 319: 9-18)。免疫グロブリンにあるFabアームの可動性を小さくする手法の1つは、遺伝子組換えによって軽鎖と重鎖との間のジスルフィド結合の形成を阻止することである。天然IgG1抗体では、軽鎖は、軽鎖のC末端システインと重鎖のFcのヒンジにある位置220のシステイン(C220 EUナンバリング)とをつなぐジスルフィド結合を介して重鎖と共有結合している。アミノ酸C220をセリンもしくは他の任意の天然アミノ酸に変異させることによって、C220を除去することによって、ヒンジ全体を除去することによって、またはIgG1ヒンジをIgG3ヒンジで置換することによって、ヒトアイソタイプIgA2m(1)に見られる状況と同様に、軽鎖が軽鎖C末端システインを介してつながっている分子が形成される。これにより、Fcに対するFabの可動性が小さくなり、その結果、実施例に示されたように架橋結合能が低下する。
【0088】
IgG1分子の可動性を低下させる別の戦略は、IgG1ヒンジをIgG2ヒンジまたはIgG2様ヒンジで置換することである(Dangl et al. EMBO J. 1988;7: 1989-94)。このヒンジ領域には、IgG1と異なる、分子の可動性を小さくすると考えられている2つの特性がある。第1に、IgG1ヒンジと比較して、IgG2ヒンジは3アミノ酸短い。第2に、IgG2ヒンジは追加システインを含有し、従って、2つの重鎖内ジスルフィド架橋の代わりに3つの重鎖内ジスルフィド架橋を形成することができる。または、IgG2ヒンジに似たIgG1ヒンジの変種を導入することができる。この変異体(TH7Δ6-9)(WO2010063746)は、追加システインのある短いヒンジを作り出す変異T223Cならびに2つの欠失(K222およびT225)を含有する。
【0089】
さらなる態様において、本発明の抗体はIgG1サブタイプであり、ヒンジ領域は、以下:
(i)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させ、これを、配列:ERKCCVECPPCP(SEQ ID NO:214)のIgG2ヒンジ領域で置換する(IgG1ヒンジ-IgG2);
(ii)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:215)になるように、位置220を欠失させる(IgG1 ΔC220);
(iii)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSXDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:216)になるように、位置220にあるシステインを他の任意の天然アミノ酸(X)で置換する(IgG1 C220X);
(iv)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させる(ユニボディ(UniBody)IgG1);
(v)配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:213)のヒンジ領域を欠失させ、これを、配列
(SEQ ID NO:217)のIgG3ヒンジ領域で置換する(IgG1ヒンジ-IgG3);または
(vi)修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSCDCHCPPCP(SEQ ID NO:218)になるように、位置223にあるスレオニンをシステインで置換し、位置222にあるリジンおよび位置225にあるスレオニンを欠失させる(IgG1 TH7Δ6-9)
ことによって修飾されている。
【0090】
本発明の1つの態様において、本発明の抗体は、修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:215)になるように、位置220を欠失させることによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 ΔC220)、または修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSXDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:216)になるように、位置220にあるシステインを他の任意の天然アミノ酸(X)で置換することによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 C220X)、IgG1サブタイプの抗体である。
【0091】
さらなる態様において、本発明の抗体は、修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:219)になるように、位置220のシステインをセリンで置換することによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 C220S)、IgG1サブタイプの抗体である。
【0092】
さらなる態様において、本発明の抗体はIgG2サブタイプである。
【0093】
さらなる態様において、本発明の抗体は、例えばUS2009317869に記載のように、もしくはBerkel et al.(2010)Biotechnol. Bioeng.105:350に記載のように、抗体産生中に培地に化合物を添加することによって、または、例えばYamane-Ohnuki et al(2004)Biotechnol. Bioeng 87:614に記載のようにFUT8ノックアウト細胞を使用することによって、フコースを減らし、従って、ADCCを強化するように糖が操作されている。または、ADCCは、Umana et al.(1999)Nature Biotech 17:176に記載の方法を用いて最適化されてもよい。
【0094】
1つの態様において、前記抗体は、修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:219)になるように、位置220のシステインをセリンで置換することによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 C220S)、IgG1サブタイプのSEQ ID NO:100のCDR3配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:104のCDR3配列を含むVL領域(069)を含む。
【0095】
1つの態様において、前記抗体は、修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:219)になるように、位置220のシステインをセリンで置換することによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 C220S)、IgG1サブタイプのSEQ ID NO:98、99、および100のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:102、103、および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域(069)を含む。
【0096】
1つの態様において、前記抗体は、修飾されたヒンジ領域の配列がEPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:219)になるように、位置220のシステインをセリンで置換することによってヒンジ領域が修飾されている(IgG1 C220S)、IgG1サブタイプのSEQ ID NO:97の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域(069)を含む。
【0097】
様々な刊行物が、インビトロでコアフコシル化の低下とADCC活性の上昇には相関関係があることを証明している(Shields RL. 2002 J BC; 277:26733-26740, Shinkawa T. 2003 J BC; 278(5):3466-3473, Umana P. Nat Biotechnol. 1999 Feb;17(2):176-80)。
【0098】
さらなる態様において、本発明の抗体は、陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー-パルスドアンペロメトリ検出(pulsed amperometric detection)(HPAEC-PAD)によって確かめられた時に、コアフコシル化が10%未満、例えば5%未満になるように修飾されている。これは、先行技術において周知の方法、例えばキフネンシン(kifunensine)処理またはFUT8陰性細胞における産生によって達成することができる。
【0099】
さらなる態様において、本発明の抗体は、例えばNatsume et al.(2009)Cancer Sci. 100:2411に記載のように補体活性化を強化するように操作されている。
【0100】
1つの態様において、本発明の抗体は、完全長抗体であり、好ましくはIgG1抗体、特にIgG1,κ抗体である。別の態様において、本発明の抗体は抗体断片または単鎖抗体である。
【0101】
抗体断片は、例えば従来の技法を用いた断片化によって得ることができ、この断片は、抗体全体について本明細書で説明されたものと同じやり方で有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。ジスルフィド架橋を還元するように、得られたF(ab')2断片を処理して、Fab'断片を作製することができる。Fab断片は、IgG抗体をパパインで処理することによって得ることができる。Fab'断片は、IgG抗体のペプシン消化によって得ることができる。F(ab')断片はまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して下記のFab'を結合することによって作製することもできる。Fab'断片は、F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体断片である。Fab'断片は、F(ab')2断片をジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得ることができる。抗体断片はまた、組換え細胞において、このような断片をコードする核酸を発現させることによって作製することもできる(例えば、Evans et al., J. Immunol. Meth. 184, 123-38(1995)を参照されたい)。例えば、このような切断型抗体断片分子を生じるために、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列に続いて翻訳停止コドンを含むことができる。
【0102】
前記で説明したように、1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体は二価抗体である。
【0103】
別の態様において、本発明の抗c-Met抗体は一価抗体である。
【0104】
1つの態様において、本発明の抗体は、例えばUS20080063641(Genentech)に記載のFab断片もしくは1アーム抗体、または例えばWO2007048037(Amgen)に記載の一価抗体である。
【0105】
好ましい態様において、一価抗体は、ヒンジ領域が欠失されている、WO2007059782(Genmab)(参照により本明細書に組み入れられる)に記載の構造を有する。従って、1つの態様において、前記抗体は一価抗体であり、抗c-Met抗体は、以下の工程を含む方法によって構築される:
i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を準備する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗c-Met抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列とIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列とを含み、前記選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列および前記IgのCL領域をコードするヌクレオチド配列が一緒に機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、または動物もしくはヒトに投与された時に、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸もCL領域が含有しないように、CL領域をコードするヌクレオチド配列が修飾されている、工程;
ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を準備する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列とヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列とを含み、ヒンジ領域に対応する領域、およびIgサブタイプにより必要とされる場合にはCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、または動物もしくはヒトに投与された時に、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合、または共有結合もしくは安定した非共有結合による重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように、CH領域をコードするヌクレオチド配列が修飾されており、前記選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードするヌクレオチド配列が一緒に機能的に連結されている、工程;
iii)前記一価抗体を産生するための細胞発現系を準備する工程;
iv)(iii)の細胞発現系の細胞において、(i)および(ii)の核酸構築物を同時発現させることによって、前記一価抗体を産生する工程。
【0106】
同様に、1つの態様において、抗c-Met抗体は、以下を含む一価抗体である:
(i)本明細書に記載の本発明の抗体の可変領域または前記領域の抗原結合部分、ならびに
(ii)ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合はCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合もしくは安定した非共有結合による重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように修飾されている、免疫グロブリンのCH領域、またはCH2領域およびCH3領域を含むその断片。
【0107】
そのさらなる態様において、一価抗c-Met抗体の重鎖は、ヒンジ全体が欠失されるように修飾されている。
【0108】
別のさらなる態様において、前記一価抗体はIgG4サブタイプであるが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の1つまたは複数がなされるように修飾されている。
【0109】
CH3変異のナンバリング
*KABATは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991)に準拠するアミノ酸ナンバリングを示す。EUインデックスは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))に概説されたEUインデックスに準拠するアミノ酸ナンバリングを示す。
【0110】
別のさらなる態様において、前記一価抗体の配列は、N結合型グリコシル化のアクセプター部位を含まないように修飾されている。
【0111】
本発明の抗c-Met抗体はまた単鎖抗体を含む。単鎖抗体は、重鎖Fv領域および軽鎖Fv領域が接続されているペプチドである。1つの態様において、本発明は、1本のペプチド鎖において、本発明の抗c-Met抗体のFvの重鎖および軽鎖が可動性ペプチドリンカー(典型的には、約10個、12個、15個以上のアミノ酸残基からなる)とつながっている単鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を作製する方法は、例えばUS4,946,778、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315(1994)、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)、Huston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)、およびMcCafferty et al., Nature 348, 552-554(1990)に記載されている。単鎖抗体は、1種類のVHおよびVLしか用いられないのであれば一価であり得、2種類のVHおよびVLが用いられるのであれば二価であり得、3種類以上のVHおよびVLが用いられるのであれば多価であり得る。
【0112】
1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体はエフェクター機能欠損性抗体である。1つの態様において、エフェクター機能欠損性の抗c-Met抗体は、Fabアーム交換を阻止するように修飾されている、安定化されたIgG4抗体である(van der Neut Kolfschoten et al.(2007)Science 317(5844):1554-7)。適切な安定化されたIgG4抗体の例は、Kabat et al.,のようにEUインデックスで示された、ヒトIgG4の重鎖定常領域の位置409にあるアルギニンが、リジン、スレオニン、メチオニン、もしくはロイシン、好ましくはリジンで置換されている(WO2006033386(Kirin)に記載)、および/またはヒンジ領域がCys-Pro-Pro-Cys配列を含むように修飾されている、抗体である。
【0113】
さらなる態様において、安定化されたIgG4抗c-Met抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、前記重鎖は、409に対応する位置に、Lys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、ならびに/または405に対応する位置に、Ala、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、前記抗体は、任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。好ましくは、前記抗体は、409に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、抗体のCH3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域で置換されている。WO2008145142(Genmab)も参照されたい。
【0114】
なおさらなる態様において、安定化されたIgG4抗c-Met抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、前記重鎖は、409に対応する位置に、Lys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、ならびに/または405に対応する位置に、Ala、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、前記抗体は、任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含み、ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。好ましくは、前記抗体は、409に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、抗体のCH3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域で置換されている。
【0115】
さらなる態様において、エフェクター機能欠損性の抗c-Met抗体は、ADCCなどのエフェクター機能を媒介する能力が低下するように、さらにはエフェクター機能が無くなるように変異されている、非IgG4型、例えばIgG1、IgG2、またはIgG3の抗体である。このような変異は、例えばDall'Acqua WF et al., J Immunol.177(2):1129-1138(2006)およびHezareh M, J Virol.;75(24):12161-12168(2001)に記載されている。
【0116】
結合体
さらなる態様において、本発明は、治療部分、例えば細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤、または放射性同位体と結合体化された抗c-Met抗体を提供する。このような結合体は本明細書において「免疫結合体」と呼ばれる。1種類または複数種の細胞毒を含む免疫結合体は「免疫毒素」と呼ばれる。
【0117】
細胞毒または細胞傷害剤には、細胞に有害な(例えば、細胞を死滅させる)任意の薬剤が含まれる。本発明の免疫結合体を形成するための適切な治療剤には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロ-テストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えばカルボプラチン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC))、ジフテリア毒素および関連分子(例えば、ジフテリアA鎖およびその活性断片、ならびにハイブリッド分子)、リシン毒素(例えば、リシンAまたは脱グリコシルリシンA鎖毒素)、コレラ毒素、志賀毒素様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズBowman-Birkプロテアーゼ阻害剤、シュードモナス属(Pseudomonas)エキソトキシン、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン(modeccin)、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、およびエノマイシン(enomycin)毒素が含まれる。他の適切な結合体化分子には、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリン毒素、およびシュードモナス属エンドトキシンが含まれる。例えば、Pastan et al., Cell 47, 641(1986)およびGoldenberg, Calif. A Cancer Journal for Clinicians 44, 43(1994)を参照されたい。本明細書の他の場所で説明されるように本発明の抗c-Met抗体と組み合わせて投与され得る治療剤はまた、本発明の抗体と結合体化するのに有用な治療部分の候補でもよい。
【0118】
別の態様において、本発明の抗c-Met抗体には核酸または核酸結合分子が結合体化される。本発明の1つのこのような側面において、結合体化される核酸は、細胞傷害性リボヌクレアーゼ、アンチセンス核酸、抑制性RNA分子(例えば、siRNA分子)、または免疫賦活性核酸(例えば、免疫賦活性CpGモチーフ含有DNA分子)である。別の態様において、本発明の抗c-Met抗体はアプタマーまたはリボザイムに結合体化される。
【0119】
1つの態様において、1つまたは複数の放射標識アミノ酸を含む抗c-Met抗体が提供される。放射標識された抗c-Met抗体は診断目的および治療目的で使用することができる(放射標識分子との結合体化は別の可能性のある特徴である)。ポリペプチドの標識の非限定的な例には、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、および125I、131I、ならびに186Reが含まれる。
【0120】
抗c-Met抗体はまた、例えば、循環半減期を延ばすために、ポリマーと共有結合させることによって化学修飾されてもよい。例示的なポリマー、およびポリマーをペプチドに取り付ける方法は、例えばUS4,766,106、US4,179,337、US4,495,285、およびUS4,609,546に例示されている。さらなるポリマーには、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000の分子量を有するPEG)が含まれる。
【0121】
抗c-Met抗体と、結合体化分子、例えば前記の結合体化分子を結合体化するための当技術分野において公知の任意の方法を、Hunter et al., Nature 144, 945(1962)、David et al., Biochemistry 13, 1014(1974)、Pain et al., J. Immunol. Meth. 40, 219(1981)、およびNygren, J. Histochem. and Cytochem. 30, 407(1982)に記載の方法を含めて使用することができる。このような抗体は、他の部分と、抗c-Met抗体またはその断片(例えば、抗c-Met抗体H鎖もしくはL鎖)のN末端側またはC末端側とを化学的に結合体化することによって作製することができる(例えば、Antibody Engineering Handbook, Osamu Kanemitsu編, Chijin Shokan(1994)により出版を参照されたい)。このような結合体化された抗体誘導体はまた、適宜、内部の残基または糖において結合体化を行うことによっても作製することができる。薬剤は、本発明の抗c-Met抗体と直接または間接的に共役されてもよい。第2の薬剤の間接的な共役の一例は、スペーサー部分による共役である。1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体は、キレート剤リンカー、例えばチウキセタンに取り付けられる。キレート剤リンカーがあると、抗体と放射性同位体との結合体化が可能になる。
【0122】
二重特異性抗体
さらなる局面において、本発明は、本明細書において前述で説明された本発明の抗c-Met抗体に由来する第1の抗原結合部位、および異なる結合特異性、例えばヒトエフェクター細胞、ヒトFc受容体、T細胞受容体、B細胞受容体に対する結合特異性、またはc-Metの非重複エピトープに対する結合特異性を有する第2の抗原結合部位を含む二重特異性分子、すなわち、例えば実施例17に記載のように試験された時に、第1および第2の抗原結合部位がc-Metとの結合において競合しない二重特異性抗体に関する。
【0123】
本発明の例示的な二重特異性抗体分子は、(i)一方の抗体がc-Metに対する特異性を有し、別の抗体が第2の標的に対する特異性を有し、これらが一緒に結合体化されている、2つの抗体、(ii)c-Metに特異的な1本の鎖またはアームおよび第2の分子に特異的な第2の鎖またはアームを有する、1つの抗体、ならびに(iii)c-Metおよび第2の分子に対する特異性を有する単鎖抗体を含む。1つの態様において、第2の分子は、癌抗原/腫瘍関連抗原、例えば癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、RAGE(腎臓抗原)、α-フェトプロテイン、CAMEL(黒色腫においてCTLによって認識される抗原)、CT抗原(例えば、MAGE-B5、-B6、-C2、-C3、およびD;Mage-12;CT10;NY-ESO-1、SSX-2、GAGE、BAGE、MAGE、およびSAGE)、ムチン抗原(例えば、MUC1、ムチン-CA125など)、ガングリオシド抗原、チロシナーゼ、gp75、C-myc、Mart1、MelanA、MUM-1、MUM-2、MUM-3、HLA-B7、およびEp-CAM、または癌関連インテグリン、例えばα5β3インテグリンである。別の態様において、第2の分子は、血管新生因子または他の癌関連増殖因子、例えば血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子、アンジオゲニンおよびこれらの任意の受容体、特に、癌進行に関連する受容体(例えば、HER1~HER4受容体の1つ)である。1つの態様において、本発明の二重特異性抗体はダイアボディである。
【0124】
核酸配列、ベクター、および宿主細胞
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖をコードする、核酸配列、例えばDNA配列に関する。
【0125】
1つの態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、93、97、101、105、109、113、117、121、125、129、133、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、および178からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする。
【0126】
別の特定の態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、および177からなる群より選択されるVHアミノ酸配列をコードする。
【0127】
別の特定の態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、および178からなる群より選択されるVLアミノ酸配列をコードする。
【0128】
なおさらなる局面において、本発明は、本発明の抗体をコードする、発現ベクターまたは一組の発現ベクターに関する。抗体の重鎖および軽鎖は同じベクターによってコードされてもよく、異なるベクターによってコードされてもよい。
【0129】
このような発現ベクターは、本発明の抗体の組換え産生に使用することができる。
【0130】
1つの態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、93、97、101、105、109、113、117、121、125、129、133、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、および178からなる群より選択されるアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0131】
別の特定の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、および177からなる群より選択されるVHアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチドを含む。
【0132】
別の特定の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、および178からなる群より選択されるVLアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0133】
さらなる態様において、発現ベクターは、抗体、例えばヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖の両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0134】
本発明の文脈において発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(適切な一組の発現制御エレメントを含む核酸配列)を含む任意の適切なベクターでよい。このようなベクターの例には、SV40、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターの誘導体が含まれる。1つの態様において、抗c-Met抗体をコードする核酸は、例えば直鎖発現エレメントを含む、裸のDNAベクターもしくはRNAベクター(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355-59(1997)に記載)、圧縮された核酸ベクター(例えば、US6,077,835および/もしくはWO00/70087に記載)、プラスミドベクター、例えばpBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793-800(2001)に記載)、または沈殿された核酸ベクター構築物、例えばCaPO4によって沈殿された構築物(例えば、WO00/46147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551-55(1986)、Wigler et al., Cell 14, 725(1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603(1981)に記載)の中に含まれる。このような核酸ベクターおよびその利用は当技術分野において周知である(例えば、US5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0135】
1つの態様において、ベクターは、細菌細胞における抗c-Met抗体の発現に適している。このようなベクターの例には、発現ベクター、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen, Madison WI)など)が含まれる。
【0136】
同様にまたは代替として、発現ベクターは、酵母系における発現に適したベクターでもよい。酵母系における発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターには、例えば構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えばα因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516-544(1987)に概説)。
【0137】
同様にまたは代替として、発現ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適したベクター、例えば選択マーカーとしてグルタミン合成酵素を含むベクター、例えば(Bebbington(1992)Biotechnology(NY)10:169-175)に記載のベクターでもよい。
【0138】
核酸および/またはベクターはまた、分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列を含んでもよい。分泌配列/局在化配列は、ポリペプチド、例えば新生ポリペプチド鎖を細胞周辺腔にまたは細胞培地中に標的化することができる。このような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0139】
本発明の発現ベクターでは、抗c-Met抗体をコードする核酸は、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含んでもよく、これらと結合してもよい。このようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド産物用の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または便利なクローニングサイト(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、構成的プロモーターと相対する誘導性プロモーター、例えばCMV IEを含んでもよい。
【0140】
1つの態様において、抗c-Met抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して、宿主細胞もしくは宿主動物の中に配置されてもよく、および/または宿主細胞もしくは宿主動物に送達されてもよい。
【0141】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において定義される本発明の抗体を産生する、組換え真核宿主細胞または原核宿主細胞、例えばトランスフェクトーマに関する。宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞、および哺乳動物細胞、例えばCHO細胞またはHEK細胞が含まれる。例えば、1つの態様において、本発明は、本発明の抗c-Met抗体の発現をコードする配列を含む核酸が細胞ゲノムに安定に組み込まれている細胞を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の抗c-Met抗体の発現をコードする配列を含む、非組み込み型核酸、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、または直鎖発現エレメントを含む細胞を提供する。
【0142】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義される本発明の抗体を産生するハイブリドーマに関する。なおさらなる局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖をコードする核酸を含む、トランスジェニック非ヒト動物または植物に関し、ここで、このような動物または植物は本発明の抗体を産生する。
【0143】
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗c-Met抗体を産生するための方法であって、
a)本明細書において前述された本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程、および
b)培地から本発明の抗体を精製する工程
を含む方法に関する。
【0144】
組成物
さらなる主な局面において、本発明は、
本明細書において定義された抗c-Met抗体、および
薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物に関する。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1種類の抗体または本発明の異なる抗体の組み合わせを含有してもよい。
【0146】
薬学的組成物は、従来の技法、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示される技法に従って処方することができる、本発明の薬学的組成物は、例えば希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えばTween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0147】
薬学的に許容される担体には、本発明の化合物と生理学的に適合する、任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性および非水性の担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なその混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル、ならびに/または様々な緩衝液が含まれる。薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。適切な流動性は、例えばコーティング材料、例えばレシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0148】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含んでもよい。
【0149】
本発明の薬学的組成物はまた、組成物中に、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0150】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を増強することができる、選択された投与経路に適した1種類または複数種の佐剤、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、または緩衝液を含んでもよい。本発明の化合物は、急速に放出されないように化合物を保護する担体、例えば移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに閉じ込めた送達系を含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみもしくはポリ乳酸とろう、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。このような製剤を調製するための方法は一般的に当業者に公知である。
【0151】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、例えば前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、および必要とされる他の成分、例えば前記で列挙されたものを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の予め濾過滅菌した溶液から、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0152】
薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性無く、特定の患者、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態要因に依存する。
【0153】
薬学的組成物は、任意の適切な経路および方法によって投与することができる。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口投与される。本明細書で使用する「非経口投与される」とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常、注射による投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入を含む。
【0154】
1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0155】
使用
さらなる主な局面において、本発明は、医薬として使用するための本発明の抗c-Met抗体に関する。
【0156】
本発明の抗c-Met抗体は多くの目的に使用することができる。特に、本発明の抗体は、転移性癌および難治性癌を含む様々な形態の癌の治療に使用することができる。このような癌はHGF依存性でもよく、HGF非依存性でもよい。
【0157】
1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体は、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、胆管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、胆嚢癌、前立腺癌、および甲状腺癌からなる群より選択される癌の一形態の治療に用いられる。
【0158】
別の態様において、本発明の抗c-Met抗体は、骨肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫からなる群より選択される癌の一形態の治療に用いられる。
【0159】
別の態様において、本発明の抗c-Met抗体は、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、および線維肉腫からなる群より選択される癌の一形態の治療に用いられる。
【0160】
別の態様において、本発明の抗c-Met抗体は、造血性悪性腫瘍、例えば急性骨髄性白血病、成人T細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択される悪性腫瘍の治療に用いられる。
【0161】
さらなる態様において、本発明の抗c-Met抗体は、グリア芽細胞腫、星状細胞腫、黒色腫、中皮腫、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される新生物の治療に用いられる。
【0162】
さらなる態様において、本発明の抗c-Met抗体は、明細胞肉腫(CCS)、胞状軟部肉腫(ASPS)、および転座関連腎細胞癌(translocation-associated renal cell carcinoma)を含む、MiT腫瘍の治療に用いられる。
【0163】
別の態様において、本発明のアゴニスト性抗c-Met抗体は、サイトカイン産生の調節および内皮前駆細胞動員の誘導、例えば、冠状動脈性心疾患の患者におけるサイトカイン産生の調節および内皮前駆細胞動員の誘導に用いられる(Yang et al.(2009)Clin Exp Pharmacol Physiol. 36:790)。
【0164】
別の態様において、本発明のアゴニスト性抗c-Met抗体は、慢性腎不全の阻害または改善に用いられる(Mizuno et al.(2008)Front Biosci.13:7072)。
【0165】
同様に、本発明は、c-Metを発現する腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法であって、それを必要とする個体に有効量の本発明の抗体を投与する工程を含む方法に関する。
【0166】
1つの態様において、前記腫瘍細胞は、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、胆管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、線維肉腫、急性骨髄性白血病、成人T細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、グリア芽細胞腫、星状細胞腫、黒色腫、中皮腫、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される癌の一形態に関与する。
【0167】
また、本発明は、癌、例えば前述された特定の癌適応症の1つを治療するための医薬を調製するための、ヒトc-Metに結合するモノクローナル抗体の使用に関する。
【0168】
1つの態様において、抗c-Met抗体によって治療しようとする患者の選択は、前記患者の関連腫瘍細胞におけるc-Metおよび/またはHGFの(過剰)発現のレベルに基づく。
【0169】
本発明の治療方法のさらなる態様において、治療の効力は、療法中に、例えば所定の時点で、関連腫瘍細胞におけるc-Met発現レベルを確かめることによってモニタリングされる。
【0170】
前記の治療方法および使用における投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の難局により示されるように比例して減少または増加してもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために単位剤形で非経口組成物が処方されてもよい。
【0171】
抗c-Met抗体の効率的な投与量および投与計画は、治療しようとする疾患または状態に左右され、当業者によって決定することができる。本発明の化合物の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5 mg/kg、例えば約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、または約8mg/kgである。
【0172】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる抗c-Met抗体の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要とされる用量より低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を段々と増やすことができる。一般的に、本発明の組成物の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量である。投与は、例えば非経口投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与でもよい。1つの態様において、抗c-Met抗体は、10~500mg/m2、例えば200~400mg/m2の毎週投与量で注入されることによって投与されてもよい。このような投与は、例えば1~8回、例えば3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例えば2~12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。1つの態様において、毒性副作用を弱めるために、抗c-Met抗体は、長期間にわたる、例えば24時間を超える、ゆっくりとした連続注入によって投与されてもよい。
【0173】
1つの態様において、抗c-Met抗体は、250mg~2000mg、例えば300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mg、または2000mgの毎週投与量で、8回まで、例えば4~6回、投与されてもよい。このようなレジメンは、例えば6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてもよい。投与量は、投与の際の本発明の化合物の血中量を測定することによって、例えば、生物学的試料を採取し、本発明の抗c-Met抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって決定または調節されてもよい。
【0174】
1つの態様において、抗c-Met抗体は、維持療法によって、例えば6ヶ月以上の期間にわたって1週間に1回投与されてもよい。
【0175】
抗c-Met抗体はまた、癌を発症するリスクを下げるために、癌進行における事象の発生の開始を遅延するために、および/または癌が軽快している時の再発のリスクを下げるために予防的に投与することもできる。
【0176】
抗c-Met抗体はまた併用療法で投与することができる、すなわち、治療しようとする疾患または状態に関連する他の治療剤と組み合わせて投与することができる。従って、1つの態様において、抗体を含有する医薬は、1種類または複数種のさらなる治療剤、例えば細胞傷害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤と併用するためのものである。
【0177】
このような併用投与は同時に行われてもよく、別々に行われてもよく、連続して行われてもよい。同時投与の場合、薬剤は、適宜、1つの組成物として投与されてもよく、別々の組成物として投与されてもよい。従って、本発明はまた、前記のc-Metを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、下記の1種類または複数種のさらなる治療剤と組み合わせて本発明の抗c-Met抗体を投与する工程を含む方法を提供する。
【0178】
1つの態様において、本発明は、対象において、c-Metを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗c-Met抗体および少なくとも1種類のさらなる化学療法剤を、障害の治療を必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0179】
1つの態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗c-Met抗体および少なくとも1種類のさらなる化学療法剤を、癌の治療または予防を必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0180】
1つの態様において、このようなさらなる治療剤は、代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、またはクラドリビンにより選択されてもよい。
【0181】
別の態様において、このようなさらなる治療剤は、アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えばカルボプラチンにより選択されてもよい。
【0182】
別の態様において、このようなさらなる治療剤は、有糸分裂阻害剤、例えばタキサン、例えばドセタキセルおよびパクリタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンにより選択されてもよい。
【0183】
別の態様において、このようなさらなる治療剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンまたはイリノテカン、ならびに細胞分裂停止薬、例えばエトポシドおよびテニポシドにより選択されてもよい。
【0184】
別の態様において、このようなさらなる治療剤は、増殖因子阻害剤、例えばErbB1(EGFR)阻害剤(例えば、抗EGFR抗体、例えばザルツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブもしくはニモツズマブ(nimotuzumab)、または他のEGFR阻害剤、例えばゲフィチニブもしくはエルロチニブ)、ErbB2(Her2/neu)阻害剤(例えば、抗HER2抗体、例えばトラスツズマブ、トラスツズマブ-DM1、またはペルツズマブ)、あるいはEGFRおよびHER2両方の阻害剤、例えばラパチニブにより選択されてもよい。
【0185】
別の態様において、このようなさらなる治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばイマチニブ(Glivec、Gleevec STI571)またはラパチニブ、PTK787/ZK222584により選択されてもよい。
【0186】
別の態様において、本発明は、対象において、c-Metを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗c-Met抗体、ならびに血管形成、新血管新生、および/または他の血管新生の少なくとも1種類の阻害剤を、障害の治療を必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0187】
このような血管形成阻害剤の例は、ウロキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、マリマスタット、ネオバスタット(neovastat)、BAY12-9566、AG3340、BMS-275291、および類似の薬剤)、内皮細胞の遊走および増殖の阻害剤(例えば、TNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、ペニシラミン、SCH66336(Schering-Plough Corp, Madison, NJ)、R115777(Janssen Pharmaceutica, Inc, Titusville, NJ)、および類似の薬剤)、血管新生増殖因子のアンタゴニスト(例えば、ZD6474、SU6668、血管新生剤および/またはその受容体(例えば、VEGF(例えば、ベバシズマブ)、bFGF、およびアンジオポエチン-1)に対する抗体、サリドマイド、サリドマイド類似体(例えば、CC-5013)、Sugen5416、SU5402、抗血管新生リボザイム(例えば、アンギオザイム(angiozyme))、インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2a)、スラミン、および類似の薬剤)、VEGF-Rキナーゼ阻害剤および他の抗血管新生性のチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、SUO11248)、内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤(例えば、ビタキシン(vitaxin)および類似の薬剤)、銅アンタゴニスト/キレート剤(例えば、テトラチオモリブデート(tetrathiomolybdate)、カプトプリル、および類似の薬剤)、カルボキシアミド-トリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156E、ならびに血管形成を阻害するヌクレオチド分子(例えば、アンチセンス-VEGF-cDNA、アンギオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNA、および欠損VEGF受容体-2をコードするcDNA)である。
【0188】
血管形成、新血管新生、および/または他の血管新生のこのような阻害剤の他の例は、抗血管新生性のヘパリン誘導体(例えば、ヘペリナーゼ(heperinase)III)、テモゾロミド、NK4、マクロファージ遊走阻害因子、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、低酸素誘導性因子1の阻害剤、抗血管新生性のダイズイソフラボン、オルチプラズ、フマギリンおよびその類似体、ソマトスタチン類似体、多流酸ペントサン、テコガランナトリウム、ダルテパリン、タムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレスタチン(combrestatin)、カンスタチン(canstatin)、アバスタチン(avastatin)、他の標的に対する抗体、例えば抗α-v/β-3インテグリンおよび抗キニノスタチン抗体である。
【0189】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、抗癌免疫原、例えば癌抗原/腫瘍関連抗原(例えば、上皮細胞接着分子(EpCAM/TACSTD1)、ムチン1(MUC1)、癌胎児抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質72(タグ-72)、gp100、Melan-A、MART-1、KDR、RCAS1、MDA7、癌関連ウイルスワクチン(例えば、ヒトパピローマウイルスワクチン)、または腫瘍由来熱ショックタンパク質でもよい。
【0190】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、抗癌性サイトカイン、ケモカイン、またはその組み合わせでもよい。適切なサイトカインおよび増殖因子の例には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα(例えば、INFα2b)、IFNβ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFαが含まれる。適切なケモカインは、Glu-Leu-Arg(ELR)ネガティブケモカイン、例えばヒトCXCおよびC-CケモカインファミリーからのIP-10、MCP-3、MIG、およびSDF-1αを含んでもよい。適切なサイトカインには、サイトカイン誘導体、サイトカイン変種、サイトカイン断片、およびサイトカイン融合タンパク質が含まれる。
【0191】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス制御因子(または「制御剤」)でもよい。細胞周期制御/アポトーシス制御因子は、細胞周期制御/アポトーシス制御因子を標的とし、調節する分子、例えば、(i)cdc-25(例えば、NSC663284)、(ii)細胞周期を過度に刺激するサイクリン依存性キナーゼ(例えば、フラボピリドール(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシスタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)、およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202))、ならびに(iii)テロメラーゼモジュレーター(例えば、BIBR1532、SOT-095、GRN163、ならびに例えば、US6,440,735およびUS6,713,055に記載の組成物)を含んでもよい。アポトーシス経路に干渉する分子の非限定的な例には、TNF関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、TRAIL受容体を活性化する抗体、IFN、およびアンチセンスBcl-2が含まれる。
【0192】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、ホルモン制御剤、例えば抗アンドロゲン療法および抗エストロゲン療法に有用な薬剤でもよい。このようなホルモン制御剤の例は、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エスチニル(estinyl)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミンド(flutaminde)/エルレキシン(eulexin))、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシ-プロゲステロン/プロベラ、酢酸メゲストロール/メゲース)、副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(およびその類似体、ならびに他のLHRHアゴニスト、例えばブセレリンおよびゴセレリン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストラゾール(anastrazole)/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン(cytraden)、エキセメスタン)、またはホルモン阻害剤(例えば、オクトレオチド/サンドスタチン)である。
【0193】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、抗アネルギー剤、例えばCTLA-4の活性をブロックする分子、例えばイピリムマブでもよい。
【0194】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤は、抗癌性核酸または抗癌性抑制性RNA分子でもよい。
【0195】
前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、分化誘導剤、レチノイン酸類似体(例えば、オールトランスレチノイン酸、13-cisレチノイン酸、および類似の薬剤)、ビタミンD類似体(例えば、セオカルシトール(seocalcitol)および類似の薬剤)、ErbB3、ErbB4、IGF-IR、インシュリン受容体、PDGFRa、PDGFRβ、Flk2、Flt4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、TRKA、TRKC、RON(例えば、抗RON抗体)、Sea、Tie、Tie2、Eph、Ret、Ros、Alk、LTK、PTK7の阻害剤、および類似の薬剤である。
【0196】
前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、エストラムスチンおよびエピルビシンである。
【0197】
前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、HSP90阻害剤、例えば17-アリルアミノゲルダナマイシン、腫瘍抗原、例えばPSA、CA125、KSAなどに対する抗体、インテグリン、例えばインテグリンβ1、またはVCAM阻害剤である。
【0198】
前記の障害を治療するために抗c-Met抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、カルシニューリン阻害剤(例えば、バルスポダール(valspodar)、PSC833および他のMDR-1またはp-糖タンパク質阻害剤)、TOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス、およびラパミン(rapamcyin))、ならびに「リンパ球ホーミング」機構の阻害剤(例えば、FTY720)、ならびに細胞シグナル伝達に作用する薬剤、例えば接着分子阻害剤(例えば、抗LFAなど)である。
【0199】
1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体は、1種類または複数種の他の治療用抗体、例えばオファツムマブ、ザノリムマブ(zanolimumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、ラニビズマブ、Zenapax、Simulect、Remicade、Humira、Tysabri、Xolair、ラプティバ、および/またはリツキシマブと併用されるものである。
【0200】
本発明の抗体と併用することができる他の治療抗体は、c-Metの他の領域に結合する抗c-Met抗体、例えばWO2005016382、WO2006015371、WO2007090807、WO2007126799、またはWO2009007427に記載の抗体(全て参照により本明細書に組み入れられる)である。
【0201】
別の態様では、疾患を治療するために、本明細書に記載の2種類またはそれ以上の異なる本発明の抗体が併用される。特に興味深い組み合わせには、2種類またはそれ以上の非競合抗体が含まれる。このような併用療法は、細胞1個につき多数の抗体分子を結合させることができ、このために、例えば補体媒介性溶解の活性化を介して、効力が増大し得る。
【0202】
前記に加えて、本発明の併用療法の他の態様は、以下を含む:
・非小細胞肺癌を治療するためには、抗c-Met抗体と、EGFR阻害剤、例えば抗EGFR抗体、例えばザルツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブもしくはニモツズマブ(nimotuzumab)または他のEGFR阻害剤、例えばゲフィチニブもしくはエルロチニブ)、あるいはErbB2(Her2/neu)阻害剤(例えば、抗HER2抗体、例えばトラスツズマブ、トラスツズマブ-DMl、もしくはペルツズマブ)、またはEGFRおよびHER2両方の阻害剤、例えばラパチニブ、あるいはHER3阻害剤との併用。
・神経膠腫を治療するためには、抗c-Met抗体と、テモゾロミドまたは血管形成阻害剤、例えばベバシズマブとの併用。
・結腸直腸癌を治療するためには、抗c-Met抗体と、ゲムシタビン、ベバシズマブ、FOLFOX、FOLFIRI、XELOX、IFL、オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU/LV、カペシタビン、UFT、EGFR標的剤、例えばセツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ;VEGF阻害剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤、例えばスニチニブより選択される1種類または複数種の化合物との併用。
・前立腺癌を治療するためには、抗c-Met抗体と、ホルモン/抗ホルモン療法;例えば、抗アンドロゲン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、および化学療法剤、例えばタキサン、ミトキサントロン、エストラムスチン、5FU、ビンブラスチン、イクサベピロンより選択される1種類または複数種の化合物との併用。
【0203】
放射線療法-外科手術
1つの態様において、本発明は、対象において、c-Metを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法を提供するものであり、この方法は、それを必要とする対象への、治療的有効量の抗c-Met抗体、例えば本発明の抗c-Met抗体および放射線療法の投与を含む。
【0204】
1つの態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供するものであり、この方法は、それを必要とする対象への、治療的有効量の抗c-Met抗体、例えば本発明の抗c-Met抗体および放射線療法の投与を含む。
【0205】
1つの態様において、本発明は、放射線療法と組み合わせて投与される癌を治療するための薬学的組成物を調製するための、抗c-Met抗体、例えば本発明の抗c-Met抗体の使用を提供する。
【0206】
放射線療法は放射線を含む場合があり、または患者への放射性医薬品の関連する投与が提供される。放射線源は、治療を受けている患者の外部にあってもよく、内部にあってもよい(放射線治療は、例えば外部ビーム放射線療法(EBRT)または近接照射療法(BT)の形をとってもよい)。このような方法の実施において使用することができる放射性元素には、例えばラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、およびインジウム-111が含まれる。
【0207】
さらなる態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法であって、癌の治療または予防を必要とする対象に、治療的有効量の抗c-Met抗体、例えば本発明の抗c-Met抗体を外科手術と組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0208】
診断用途
本発明の抗c-Met抗体は診断目的でも使用することができる。従って、さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義された抗c-Met抗体を含む診断用組成物に関する。
【0209】
1つの態様において、本発明の抗c-Met抗体は、c-Metを発現する活性化細胞が発病において積極的な役割を果たしている疾患を診断するために、c-Metレベルまたは膜表面にc-Metを含有する細胞のレベルを検出することによってインビボまたはインビトロで使用することができる。これは、例えば試験しようとする試料と抗c-Met抗体とを、任意で対照試料と共に、抗体とc-Metとの複合体が形成する条件下で接触させることによって達成することができる。
【0210】
従って、さらなる局面において、本発明は、試料中のc-Met抗原またはc-Metを発現する細胞の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
-試料と本発明の抗c-Met抗体とを、抗体とc-Metとの複合体が形成する条件下で接触させる工程;および
-複合体が形成したかどうか分析する工程
を含む方法に関する。
【0211】
1つの態様において、前記方法はインビトロで行われる。
【0212】
さらに具体的には、本発明は、浸潤細胞および浸潤組織、ならびに本発明の抗c-Met抗体によって標的化される他の細胞を特定および診断するための方法、ならびに治療処置の進行、治療後の状況、癌が発症するリスク、癌の進行などをモニタリングための方法を提供する。
【0213】
このような技法において用いられる抗c-Met 抗体 および/または 二次抗体に適した標識は当技術分野において周知である。
【0214】
さらなる局面において、本発明は、
-本発明の抗c-Met抗体または本発明の二重特異性分子;および
-キットを使用するための説明書
を含む、試料中のc-Met抗原またはc-Metを発現する細胞の存在を検出するためのキットに関する。
【0215】
1つの態様において、本発明は、抗c-Met抗体、および抗c-Met抗体とc-Metとの結合を検出するための1種類または複数種の試薬を含む容器を含む、癌を診断するためのキットを提供する。試薬は、例えば蛍光タグ、酵素タグ、または他の検出可能なタグを含んでもよい。試薬はまた、二次もしくは三次の抗体または酵素反応用試薬を含んでもよく、酵素反応によって、視覚化可能な産物が産生される。
【0216】
抗イディオタイプ抗体
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載のように本発明の抗c-Met抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0217】
抗イディオタイプ(Id)抗体は、概して、抗体の抗原結合部位に関連する独特の決定基を認識する抗体である。Id抗体は、抗c-Met mAbの供給源と同じ種および遺伝子型の動物を、抗Idの抗原となるmAbで免疫することによって調製することができる。免疫された動物は、典型的には、免疫用抗体のイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することによって、これらのイディオタイプ決定基を認識し、イディオタイプ決定基に応答することができる。
【0218】
抗Id抗体はまた、さらに別の動物において免疫応答を誘導するための「免疫原」として使用して、いわゆる抗抗Id抗体を産生することもできる。抗抗Idは、抗Idを誘導した最初のmAbとエピトープが同一である可能性がある。従って、mAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を用いることによって、特異性が同一の抗体を発現する他のクローンを特定することができる。
【0219】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、以下の実施例は、さらに限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0220】
実施例1:c-Metの発現構築物
HEK細胞またはCHO細胞において、c-Met、c-Metの細胞外ドメイン(ECD)(aa 1-932およびC末端His6タグ)、またはSEMAドメイン(aa 1-567およびC末端His9タグ)を発現させるためのコドン最適化構築物を作製した。これらの構築物によってコードされるタンパク質は、c-MetのGenBankアクセッションNM000245と同一である。これらの構築物は適切なクローニング用制限部位および最適なKozak配列(Kozak et al.(1999)Gene 234:187-208)を含有する。これらの構築物を哺乳動物発現ベクターpEE13.4(Lonza Biologics)(Bebbington(1992)Biotechnology(NY)10:169-175)にクローニングして、pEE13.4cMet、pEE13.4cMetECDHis、およびpEE13.4cMetSEMA-567His8を得た。
【0221】
実施例2:5D5v1、5D5、およびG11-HZの発現構築物
HEK細胞において、IgG1抗体である5D5v1、5D5、およびG11-HZの重鎖(HC)および軽鎖(LC)を発現させるためのコドン最適化構築物を作製した。これらの構築物によってコードされるタンパク質は、5D5v1重鎖および軽鎖については米国特許第6468529号(配列番号3および4)に記載のタンパク質、5D5重鎖および軽鎖についてはWO2006/015371A2(
図13)に記載のタンパク質、ならびに224G11重鎖および軽鎖についてはWO2009/007427A2(複数の図から配列を抽出した)に記載のタンパク質と同一である。224G11を本明細書ではG11-HZとも呼ぶ。
【0222】
実施例3:HEK-293F細胞における一過的発現
Freestyle(商標)293-F(懸濁増殖および化学的に明らかにされているFreestyle培地に適応したHEK-293サブクローン、(HEK-293F))細胞をInvitrogenから入手し、293fectin(Invitrogen)を用いて製造業者の説明書に従って適切なプラスミドDNAでトランスフェクトした。下記のように、c-Met発現をFACS分析によって試験した。抗体発現の場合には、適切な重鎖発現ベクターおよび軽鎖発現ベクターを同時発現させた。
【0223】
実施例4:CHO細胞における一過的発現
Freestyle(商標)CHO-S(Invitrogen)細胞株において、Freestyle MAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、pEE13.4cMetを一過的にトランスフェクトした。下記のように、c-Met発現をFACS分析によって試験した。
【0224】
実施例5:一価抗体(ユニボディ(登録商標)分子)のクローニングおよび発現
哺乳動物細胞において一価抗体を発現させるために、ヒンジ領域(Ch)(アミノ酸E99-P110)が無く、CH3領域に2つの変異F405TおよびY407Eを含有するIgG4 HC定常領域を哺乳動物発現ベクターpcDNA3.3(Invitrogen)の中でコドン最適化構築物として合成して、pUniTEと名付けた。ヒトκ軽鎖領域のコドン最適化定常領域をpcDNA3.3に挿入することによって別のベクターを構築し、pKappaと名付けた。
【0225】
関連するVH領域およびVL領域を、それぞれ、pUniTEおよびpKappaに挿入して、特定の抗体の重鎖および軽鎖を発現させるためのベクターを得た。特定の抗体の重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターをHEK-293F(Invitrogen)細胞においてコトランスフェクションすると、望ましい特異性を有する一価抗体が一過的に産生された。(実施例11に記載のように)プロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。
【0226】
実施例6:Hisタグ化c-Metの精製
cMetECDHisおよびcMetSEMAHisをHEK-293F細胞において発現させた。cMetECDHisおよびcMetSEMAHisの中にあるHisタグは、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーを用いた精製を可能にする。このプロセスでは、クロマトグラフィー樹脂上に固定化されたキレート剤にCo2+カチオンが充填されている。バッチモードで(すなわち、溶液中で)、cMetECDHisおよびcMetSEMAHisを含有する上清を樹脂とインキュベートした。Hisタグ化タンパク質は樹脂ビーズに強く結合するのに対して、培養上清中に存在する他のタンパク質は強く結合しない。インキュベーション後、ビーズを上清から取り出し、カラムに詰めた。弱く結合しているタンパク質を除去するためにカラムを洗浄する。次いで、強く結合しているcMetECDHisタンパク質およびcMetSEMAHisタンパク質を、HisとCo2+との結合において競合するイミダゾールを含有する緩衝液で溶出する。脱塩カラムにおける緩衝液交換によって溶出剤をタンパク質から除去する。
【0227】
実施例7:トランスジェニックマウスの免疫手順
抗体005、006、007、008、011、012、016、017、022、024、025、028、031、035、039、040、045、093、095、096、101、および104は以下の免疫から得られた。1匹のHCo20マウス(1匹の雌、GG2713系統)、1匹のHCo17マウス(雌、GG2714系統)、および2匹のHCol2-Balb/Cマウス(2匹の雌、GG2811系統)(Medarex, San Jose, CA, USA;参照のために、前記のHuMabマウスに関する章、WO2009097006、およびUS2005191293を参照されたい)を、5x106個のNCI-H441腫瘍細胞、腹腔内(IP)および20μgのハプテンキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)結合cMetECDHisタンパク質、皮下(SC)を2週間ごとに交互に用いて免疫した。
【0228】
抗体058、061、062、063、064、065、066、068、069、078、082、084、087、089、098、および181は以下の免疫から得られた。2匹のHCo20マウス(1匹の雄および1匹の雌、GG2713系統)ならびに1匹のHCol2-Balb/Cマウス(1匹の雄、GG2811系統)(Medarex, San Jose, CA, USA;参照のために、前記のHuMabマウスに関する章を参照されたい)を、cMetECDで一過的にトランスフェクトされた5x106個のCHO-K1SV細胞、腹腔内(IP)および20μgのハプテンキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)結合cMetECDHisタンパク質、皮下(SC)を2週間ごとに交互に用いて免疫した。
【0229】
マウス1匹当たり最大8回の免疫、4回のIP免疫および4回のSC免疫を尾の付け根に行った。細胞を用いた初回免疫は、完全フロイントアジュバント(CFA; Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)に溶解して行った。他の全ての免疫については、細胞をPBSに溶解してIP注射した。KLH結合cMetECDは、不完全フロイントアジュバント(IFA; Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)を用いてSC注射した。実施例8に記載のように抗原特異的スクリーニングFMATアッセイにおいて、200(1/200の血清希釈度)またはそれ以上のc-Met特異的抗体価が少なくとも2回の連続して検出されたマウスを融合した。
【0230】
実施例8:均質抗原特異的スクリーニングアッセイ
免疫マウスの血清中またはHuMab(ヒトモノクローナル抗体)ハイブリドーマもしくはトランスフェクトーマの培養上清中にある抗c-Met抗体の存在を、均質抗原特異的スクリーニングアッセイ(4クワドラント(four quadrant))によってFluorometric Micro volume Assay Technology(FMAT; Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて確かめた。このために、3種類の細胞ベースのアッセイおよび1種類のビーズベースのアッセイの組み合わせを使用した。細胞ベースのアッセイにおいては、TH1016-cMet(c-Met受容体の細胞外ドメインを一過的に発現するHEK-293F細胞;前記のように作製された)およびHT29(細胞表面にc-Metを発現する)ならびにHEK293野生型細胞(c-Metを発現しない負の対照)との結合を確かめた。ビーズベースのアッセイの場合、SB1016-cMet(前記のように、一過的にトランスフェクトされたHEK-293F細胞から得られ、ビオチン化され、ストレプトアビジンコーティングビーズと結合されたcMetECDHis)との結合を確かめた。c-Metと結合させるために、試料を細胞/ビーズに添加した。その後に、蛍光結合体(ヤギ抗ヒトIgG-Cy5; Jackson ImmunoResearch)を用いて、HuMabの結合を検出した。キメラc-Met特異的抗体5D5v1(HEK-293F細胞において作製された)を正の対照として使用し、HuMab-マウスプール血清およびHuMab-KLHを負の対照として使用した。試料を、Applied Biosystems 8200 Cellular Detection System(8200 CDS)を用いてスキャンし、「カウントx蛍光」を読み取り値として使用した。カウントが50を超える時に試料は陽性と示され、カウントx蛍光は、負の対照であるHuMab-KLHの少なくとも3倍であった。
【0231】
実施例9:HuMabハイブリドーマの作製
十分な抗原特異的力価(前記で定義した)が発生したHuMabマウスを屠殺し、脾臓ならびに腹大動脈および大静脈に隣接するリンパ節を収集した。脾細胞およびリンパ節細胞とマウスミエローマ細胞株を、CEEF 50 Electrofusion System(Cyto Pulse Sciences, Glen Burnie, MD, USA)を用いて、本質的に製造業者の説明書に従って融合した。融合プレートを、前記のように抗原特異的結合アッセイを用いてスクリーニングし、このアッセイからの陽性を、下記のようにERK-リン酸化Alphascreen(登録商標)SureFire(登録商標)アッセイおよび親和性ランキング(affinity ranking)Octetアッセイにおいて試験した。標準的なプロトコールに基づいて(例えば、Coligan J.E., Bierer, B.E., Margulies, D.H., Shevach, E.M. and Strober, W., eds. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., 2006に記載のプロトコールに基づいて)、抗体031、035、087、および089を増殖および培養した。
【0232】
同時に、ClonePixシステム(Genetix, Hampshire, UK)を用いて、抗体005、006、007、008、011、012、016、017、022、024、025、028、035、039、040、045、058、061、062、063、064、065、066、068、069、078、082、084、093、095、096、098、101、104、および181をクローニングした。特異的な一次ウェルハイブリドーマを、40%CloneMedia(Genetix, Hampshire, UK)および60%HyQ 2x完全培地(Hyclone, Waltham, USA)から作られた半固体培地に播種し、それぞれの一次ウェルの約100個のサブクローンをつついた。前記のように抗原特異的結合アッセイにおいてサブクローンを再試験した。さらに増殖させるために、Octetを用いてIgGレベルを測定して、一次ウェル1個につき最も特異的な、かつ産生しているクローンを選択した。結果として生じたHuMabハイブリドーマのさらなる増殖および培養は、標準的なプロトコール(例えば、Coligan J.E., Bierer, B.E., Margulies, D.H., Shevach, E.M. and Strober, W., eds. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., 2006に記載のプロトコール)に基づいて行った。
【0233】
実施例10:精製抗体の質量分析
6ウェルまたはHyperflask段階からの抗体含有ハイブリドーマ上清の小さな0.8mlアリコートを、Sciclone ALH 3000ワークステーション(Caliper Lifesciences, Hopkinton, USA)においてプロテインG樹脂(PhyNexus Inc., San Jose, USA)を含有するPhyTipカラムを用いて精製した。PhyTipカラムを製造業者の説明書に従って使用したが、緩衝液を、Binding Buffer PBS(B. Braun, Medical B.V., Oss, Netherlands)およびElution Buffer 0.1Mグリシン-HCl pH2.7(Fluka Riedel-de Haen, Buchs, Germany)と交換した。精製後、試料を2M Tris-HCl pH9.0(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)によって中和した。または、場合によっては、さらに多量の培養上清を、プロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0234】
精製後、試料を384ウェルプレート(Waters, 100ul角型ウェルプレート,部品番号186002631)に入れた。N-グリコシダーゼFを用いて、試料を37℃で一晩、脱グリコシルした。DTT(15mg/mL)を添加し(1μl/ウェル)、37℃で1時間インキュベートした。試料(5ulまたは6ul)を、Acquity UPLC(商標)(Waters, Milford, USA)においてBEH300 C18、1.7μm、2.1x50mmカラムを用いて60℃で脱塩した。いずれも0.1%ギ酸(Fluka, カタログ番号56302, Buchs, Germany)を含む、MQ水およびLC-MS等級のアセトニトリル(Biosolve,カタログ番号01204101, Valkenswaard, The Netherlands)を、それぞれ、溶出剤AおよびBとして使用した。飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量スペクトルを、陽イオンモードで動いているmicrOTOF(商標)質量分析計(Bruker, Bremen, Germany)においてオンラインで記録した。分析の前に、900~3000m/zスケールを、ESチューニングミックス(tuning mix)(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)を用いて較正した。DataAnalysis(商標)ソフトウェアv.3.4(Bruker)と、5~80kDaの分子量を探すMaximal Entropyアルゴリズムを用いて、質量スペクトルをデコンボリューションした。
【0235】
デコンボリューションの後、重複抗体を発見するために、全ての試料の得られた重鎖質量および軽鎖質量を比較した。重鎖比較の際には、C末端リジン変種が存在する可能性を考慮に入れた。これにより独特の抗体のリストが得られた。この場合、独特とは、重鎖および軽鎖の独特の組み合わせと定義される。万一、重複抗体が発見されたら、他の試験からの結果を用いて、実験を続けるためにどの抗体が最良の材料であるかを決定した。
【0236】
実施例11:抗c-Met抗体可変ドメインの配列分析および発現ベクターへのクローニング
抗c-Met HuMabの全RNAを5x106個のハイブリドーマ細胞から調製し、SMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を用いて製造業者の説明書に従って、100ngの全RNAから5'-RACE-Complementary DNA(cDNA)を調製した。VH(重鎖の可変領域)コード領域およびVL(軽鎖の可変領域)コード領域をPCR増幅し、連結非依存クローニング戦略(ligation independent cloning strategy)(Aslanidis et al.1990 Nucleic Acids Res. 18:6069-6074)を用いて、哺乳動物発現ベクターpEE6.4(Lonza Biologics, Slough, UK(Bebbington et al.(1992)Biotechnology 10:169-175))の中にある定常領域ベクターpGlf(コドン最適化された完全合成のヒトIgG1(アロタイプf)重鎖定常領域を含有する)、および哺乳動物発現ベクターpEE12.4(Lonza Biologics, Slough, UK(Bebbington et al.(1992)Biotechnology 10:169-175)の中にあるpKappa(コドン最適化された完全合成のヒトκ軽鎖(アロタイプKm3)定常領域を含有する)にインフレームでクローニングした。それぞれのHuMabについて、12個のVLクローンおよび8個のVHクローンを配列決定し、それらの理論質量を計算し、入手可能な抗体質量分析データと比較した。配列を配列表および本明細書にある以下の表1に示した。CDR配列は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, M D.(1991)に準拠して定義した。表2および表3は、抗体配列情報および最も相同性のある生殖系列配列の概要を示す。
【0237】
(表1)HuMabの重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、およびCDR配列
【0238】
【0239】
【0240】
図1および2は、HuMab配列のアラインメントを示す。これらの配列に基づいて、CDR配列の一部についてコンセンサス配列を定義することができる。これらのコンセンサス配列を表4に示した。
【0241】
【0242】
実施例12:抗体の精製
培養上清を0.2μmデッドエンドフィルターで濾過し、5mlのMabSelect SuReカラム(GE Health Care)にロードし、0.1Mクエン酸ナトリウム-NaOH, pH3を用いて溶出した。すぐに、溶出液を2M Tris-HCl, pH9で中和し、12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl, pH7.4(B.Braun)に対して一晩、透析した。または、精製後、溶出液をHiPrep Desaltingカラムにロードし、抗体を12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl, pH7.4(B.Braun)緩衝液に交換した。透析後または緩衝液交換後、試料を0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌濾過した。純度をSDS-PAGEによって求め、濃度を比濁分析および280nmでの吸光度によって測定した。精製抗体を4℃で保管した。実施例10に記載のように、ハイブリドーマによって発現された抗体重鎖および軽鎖の分子量を特定するために、質量分析を行った。
【0243】
実施例13:FACS分析によって測定された、抗c-Metクローンと膜結合型c-Metを発現する腫瘍細胞との結合
抗c-Met抗体およびその一価型(本明細書では「ユニボディ分子」とも呼ぶ。実施例5を参照されたい)と膜結合型c-Metを発現するA431細胞(ATCC, CRL-1555で購入した)との結合を、フローサイトメトリー(FACS Canto II, BD Biosciences)を用いて試験した。Qifi分析(Dako, Glostrup, Denmark)から、A431細胞は、細胞1個あたり平均30,000コピーのc-Metタンパク質を発現することが明らかになった。抗c-Met抗体およびユニボディ分子との結合を、フィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson)を用いて検出した。IgG1-5D5を正の対照抗体として使用し、HuMab-KLHをアイソタイプ対照抗体として使用した。GraphPad Prism V4.03ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、非線形回帰(傾きが変化するS字形用量反応)によってEC50値を求めた。
【0244】
図3は、試験した全ての抗c-Met抗体およびユニボディ分子が、A431細胞上に発現しているc-Metに用量依存的に結合したことを示す。結合のEC
50値はIgGについては0.28~1.92nMまで変化し、ユニボディ分子については0.52~13.89nMまで変化した。興味深いことに、抗体IgG1-024は、A431細胞に対して大きな不飽和の結合レベルを示した。これは、HT-29細胞(ATCC, HTB-38(商標)で購入した)に対する結合を試験した時には観察されなかった(データ示さず)。抗体022、024、062、064、069、098、101、および181については、同一クローンのIgG1とユニボディ分子との間で半分になったEC
50値は観察されなかった、または半分以下になったEC
50値は観察されなかった。また、IgG1とユニボディ分子との間で最大結合レベルは変化しなかった。他方で、抗体005、006、008、035、045、および058については、IgG1とそのユニボディ対応物と比較して、EC
50値の半分以下の減少ならびに最大結合レベルの減少が観察された。これは、これらの抗体のオフレート(K
d)が低いことによる可能性が最も高かった(実施例14を参照されたい)。
【0245】
実施例14:親和性ランキングOctetアッセイ
抗体とcMetECDHisとの結合を、Octet System(Fortebio, Menlo Park, USA)においてBio-Layer Interferometry(BLI)技術によって分析した。抗ヒトIgGでコーティングされたバイオセンサー(Fc特異的)を用いて、製造業者によって推奨された手順に従って抗c-Met抗体を捕捉した。ロードされたバイオセンサーを、10倍に希釈したキネティクス(kinetics)緩衝液(Fortebio)で希釈した10μg/mL cMetECDHisを含有するウェルに入れることによって、固定化された抗c-Met抗体の上にHEK293細胞由来cMetECDHisをロードした。cMetECDHis結合によるバイオセンサー表面の光反射の差(Δλ, nm)を約10分間リアルタイム測定し、会合定数(ka [1/Mxs])を計算するためにOctetソフトウェア(V4.0, Fortebio)によって使用した。次に、解離定数(kd [1/s])を求めるために、ロードされたバイオセンサーを、(PBSで10倍希釈した)キネティクス緩衝液のみを含有するウェルに入れた。モデル1:1(ラングミュア)を用いて、親和性(KD [M])を求めるためにキネティクス分析を行った。正の対照として、HEK293細胞において産生された0.2μg/mLの5D5 IgG1を使用した。
【0246】
表5は、0.6~13.9nMのナノモル親和性で全ての抗c-Met抗体がcMetECDHisに結合したことを示す。
【0247】
(表5)cMetECDHisとの結合に関する抗体の反応速度定数(k
a、k
d、およびK
D)
5D5を除き、各試料を1回測定した。
【0248】
実施例15:FACS分析によって測定された、抗c-Met抗体とアカゲザル上皮細胞上に発現している膜結合型c-Metとの結合
アカゲザルc-Metとの交差反応性を確かめるために、抗c-Met抗体とc-Met陽性アカゲザル上皮細胞(ATCCで購入した4MBr-5)との結合を、フローサイトメトリー(FACS Canto II, BD Biosciences)を用いて試験した。フィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson)を二次結合体として使用した。HuMab-KLHをアイソタイプ対照抗体として使用した。
【0249】
図4は、試験した全ての抗c-Met抗体がアカゲザルc-Metと交差反応することを示す。両試験濃度(0.5μg/mLおよび10μg/mL)で、抗c-Met抗体はアカゲザルc-Metに特異的に結合することができた。全ての抗体について、シグナルは、アイソタイプ対照抗体HuMab-KLHの少なくとも5倍であった。興味深いことに、P1016-035は、他のc-Met特異的抗体と比較してかなり大きな最高蛍光レベル(約200.000のMFI)を示した。この差は、ヒトc-Met受容体を発現する細胞株では観察されなかった。
【0250】
実施例16:酵素結合免疫測定法(ELISA)を用いて確かめられた、HGFとc-Met細胞外ドメインとの結合のブロッキング
肝細胞増殖因子(HGF)とc-Met受容体との結合を抗c-Met抗体がブロックできるかどうか分析するために、ELISAを行った。従って、コーティングされたc-Met細胞外ドメインを非標識抗c-Met抗体および蛍光標識HGFとインキュベートした。非阻止抗体はc-Met結合において標識HGFと競合せず、その結果、最大蛍光シグナルが発生する。阻止抗体はc-Met結合において標識HGFと競合し、その結果、蛍光シグナルが減少する。
【0251】
HGF(ProSpec Tany, Rehovot, Israel)をユーロピウム3+(PerkinElmer, Turku, Finland)と結合させることによって蛍光標識した。ELISAウェルを、PBSで希釈した0.5μg/mL組換えヒトc-Met細胞外ドメイン(R&D systems, Minneapolis, USA)によって4℃で一晩コーティングした。次に、ELISAウェルを、PBST(0.05%Tween-20[Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands]を添加したPBS)で洗浄し、2%(v/v)ニワトリ血清(Gibco, Paisley, Scotland)を添加したPBSTで室温(RT)で1時間ブロックした。PBSTで洗浄した後に、ELISAウェルを、PBSTに溶解した、連続希釈した抗c-Met抗体(5倍希釈で0.128~10,000ng/mL)50μLおよび0.44μg/mLユーロピウム3+結合HGF 50μLの混合物とRTで1時間、光から保護しながらインキュベートした。次に、結合しなったユーロピウム3+結合HGFをPBSTで洗い流し、蛍光シグナルを増強するために、結合したユーロピウム3+結合HGFをDelfia Enhancement Solution(PerkinElmer)と暗所、RTで30分間インキュベートした。EnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer)を使用し、以下の環境:Lance/Delfiaデュアルミラー、発光フィルター615、励起フィルター340nm、ディレイタイム(delay time)400μs、ウィンドウ(window)400μs、100フラッシュ(flash)、2000μs/サイクル、および二方向の列毎の読み出し(row-by-row reading)を適用して、615nmでの平均蛍光強度を測定した。IC50値を求めるために、非線形回帰(傾きが変化するS字形用量反応。最高値は全てのデータセットの共通値に制限される)とGraphPad Prism V4.03ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、結合曲線を分析した。
【0252】
図5は、組換えヒトc-Met細胞外ドメインとの結合における抗c-Met抗体のHGF結合阻害曲線の代表例を図示する。5D5を正の対照抗体として使用した。示された実験における全ての抗c-Met抗体は、組換えc-Metとの結合においてユーロピウム
3+結合HGFと競合することができた。IC
50値は0.0011~0.0794μg/mLまで変化した。ユーロピウム
3+結合HGFが添加されなかった場合は、最大阻害に達した時のシグナルを示す約600の相対蛍光単位(RFU)が検出された。ユーロピウム
3+結合HGFの結合が阻害されなかった場合、約66,000のRFUが検出された。抗体005、006、058、101、および正の対照抗体5D5は、HGFとc-Met受容体との結合の84.5~92.1%を阻害することができた。他の全ての抗体は、HGFとc-Metとの結合の少なくとも55%を阻害することができた。HGFはc-Met受容体のSEMAドメインおよびIg領域の両方に結合できるので、一部の抗体は、これらの相互作用の一方しか阻害しないかもしれない。どちらの相互作用が阻害されるのか確かめるために、時間分解型蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)アッセイのcMetSEMAHisベース阻害を行った。
【0253】
実施例17:サンドイッチ-ELISAによって測定された、可溶性cMetECDHisとの結合における抗c-Met抗体の競合
最初に、試験される抗c-Met抗体の最適コーティング濃度およびcMetECDHisの最適濃度を求めた。従って、ELISAウェルを、PBSで連続希釈した抗c-Met HuMab(2倍希釈して8μg/mL)と4℃で一晩コーティングした。次に、ELISAウェルをPBST(0.05%Tween-20[Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands]を添加したPBS)で洗浄し、PBSTC(2%[v/v]ニワトリ血清[Gibco, Paisley, Scotland]を添加したPBST)によって室温(RT)で1時間ブロックした。その後に、ELISAウェルをPBSTで洗浄し、PBSTCで連続希釈したビオチン化cMetECDHis(2倍希釈して1μg/mL)とRTで1時間インキュベートした。結合しなかったビオチン化cMetECDHisをPBSTで洗い流し、結合したビオチン化cMetECDHisを、PBSTで希釈した0.1μg/mLストレプトアビジン-ポリ-HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)とRTで1時間インキュベートした。洗浄後、2,2'-アジノ-bis(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS:1個のABTS錠剤を50mL ABTS緩衝液[Roche Diagnostics, Almere, The Netherlands]で希釈した)とRTで15分間、光から保護しながらインキュベートすることによって、反応を視覚化した。等量のシュウ酸(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands)を添加することによって、発色を停止した。マイクロタイタープレートリーダー(Biotek Instruments, Winooski, USA)において405nmでの蛍光を測定した。各抗体の最適以下(約80%)の結合を生じる条件を確かめ、以下のクロスブロック(cross-block)実験のために使用した。
【0254】
ELISAウェルを、前記のように最適以下の用量の抗c-Met抗体によってコーティングした。ELISAウェルをブロッキングした後に、過剰な抗c-Met抗体の存在下で所定濃度のビオチン化cMetECDHisとインキュベートした。前記のように反応を発生させた。残存する結合を、競合抗体の非存在下で観察される結合に対するパーセントで表した。
【0255】
表6:全ての抗c-Met抗体は競合因子として添加された時に、結合においてこれらの固定化対応物と競合することができた。022、058、および5D5は競合抗体として添加された時に、抗体005および006と競合した。しかしながら、逆の反応は、抗体005および006による部分的競合しか示さなかった。これらの差は、ビオチン化cMetECDHisに対する抗体005および006の低親和性によって説明することができる。抗体5D5もまた競合抗体として添加された時に、抗体008および045と部分的競合を示したのに対して、逆の反応では競合は観察されなかったか、または最小限の競合が観察された。さらに、抗体024、062、064、068および181は競合抗体として添加された時に、抗体101と部分的競合を示したのに対して、逆の反応はcMetECDHis結合の完全阻害を示した。100%より大きな値は、アビディティ作用および2種類の非競合抗体を含有する抗体-cMetECDHis複合体の形成によって説明することができる。
【0256】
抗体024、062、064、068、069、098、101、および181はcMetECDHisとの結合において互いに競合する。抗体005、006、022、および058は、005、006、022、058、および5D5との完全競合を特徴とする1つのクロスブロックグループに属するとみなされた。しかしながら、抗体5D5は、抗体045との結合においても競合できた唯一の抗体であった。008、035、およびG11-HZによって、cMetECDHisとの結合において競合する別の抗体グループが形成される。
【0257】
(表6)ビオチン化cMetECDHisとの結合における抗c-Met抗体の競合
【0258】
示されたデータは、3回の独立した実験の結合の阻害パーセント±標準偏差である。抗体035、5D5、およびG11-HZについては、クロスブロックELISAを2回しか行わなかった。さらに、多数の競合反応(*)から、ELISAリーダーの検出限界を超える、5.0より大きな最適密度値が得られた。これらの結果を分析から捨てて、2回の測定値を得た。
【0259】
実施例18:時間分解型蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)によって確かめられた、HGFとcMetSEMA-567 His8との結合のブロッキング
HGFは、c-Met受容体のSEMAドメインおよびIgG領域の両方に結合することができる。しかしながら、SEMAドメインに結合したHGFのみが受容体活性化に重要であると見出された。従って、TR-FRET技術を用いて、抗c-Met抗体とc-Met受容体SEMAドメインとの相互作用を研究した。この均質な、至近距離に基づくアッセイを行うために、肝細胞増殖因子(HGF, ProSpec Tany, Rehovot, Israel)を蛍光アクセプター色素;AlexaFluor-647(Invitrogen, Breda, The Netherlands)と結合体化させた。cMetSEMA-567His8を、ヒスチジンタグに対する蛍光ドナー分子(抗6xhisユーロピウム3+, PerkinElmer, Turku, Finland)で標識した。AlexaFluor-647結合HGFとユーロピウム3+標識cMetSEMA-567His8が結合すると、ドナー分子(励起340nm)からアクセプター分子(発光665nm)へのエネルギー転移が可能になる。665nmでの平均蛍光強度をEnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer)において測定した。665nmでのTR-FRETシグナルの減少によって、非標識抗c-Met抗体とAlexaFluor-647結合HGFとの競合を測定した。なぜなら、非結合状態ではドナーとアクセプターフルオロフォアとの距離は離れすぎて、エネルギー転移が起こらないからである。
【0260】
2.67%安定剤溶液(PerkinElmer)および0.03%(v/v)Tween-20(Riedel de Haen, Seelze, Germany)を添加した0.5xLance検出緩衝液(PerkinElmer)に溶解して全ての希釈液を作製した。25μLのcMetSEMA-567His8を25μLのAlexaFluor-647結合HGFに添加し、25μLの抗6xhisユーロピウム3+および25μLの非標識抗c-Met抗体を96ウェルopti-whiteプレート(PerkinElmer)に添加した。最終濃度2.93μg/mLのcMetSEMA-567His8、0.96μg/mLのAlexaFluor-647結合HGF、および0.4μg/mLの抗6xhisユーロピウム3+を得た。0.49~8000ng/mLの非標識抗c-Met抗体の4倍段階希釈液を試験した。暗所、4℃で一晩インキュベートした後に、EnVision 2101 Multilabelリーダーを使用し、以下の環境:Lance/Delfiaデュアルミラー、発光フィルター615~665nm、励起フィルター320nm、ディレイタイム60μs、ウィンドウ100μs、100フラッシュ、2000μs/サイクル、および二方向の横読みを適用して、665nmでの平均蛍光強度を測定した。IC50値を求めるために、非線形回帰(傾きが変化するS字形用量反応)とGraphPad Prism V4.03ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、結合曲線を分析した。
【0261】
図6は、TR-FRETによって試験した、cMetSEMA_567His8との結合における様々な抗c-Met抗体のHGF結合阻害曲線を示す。抗体008、035、および096を除き、全ての抗体はcMetSEMA-567His8との結合においてAlexaFluor-647結合HGFと競合することができた。抗体022は、約80%のHGF結合を阻害することができたのに対して、抗体005、006、024、045、058、061、062、064、068、069、098、101、181、および正の対照抗体5D5は、HGFとcMetSEMA-567His8との結合の>90%を阻害することができた。0.082~0.623μg/mLのIC
50値が求められた。
【0262】
(表7)TR-FRETを用いて求められた、cMetSEMA-567His8に対する結合における抗c-Met抗体のリガンド阻害のIC
50値(μg/mL)およびパーセント
示されたデータは、3回の独立した実験の平均MFIである。
【0263】
実施例19:KP4生存アッセイ
c-Met抗体がKP4細胞(理研バイオリソースセンター細胞バンク, RCB1005)の生存を阻害する能力を試験した。自己分泌により高レベルのc-MetおよびHGFを発現するKP4細胞を、無血清培地(1部のHAM's F12K[Cambrex, East Rutherford, New Jersey]および1部のDMEM[Cambrex])が入っている96ウェル組織培養プレート(Greiner bio-one, Frickenhausen, Germany)(10,000個の細胞/ウェル)に播種した。66.7nM抗c-Met抗体希釈液を無血清培地に溶解して調製し、細胞に添加した。3日間インキュベートした後に、Alamarblue(BioSource International, San Francisco, US)を用いて製造業者の説明書に従って、生細胞の量を定量した。EnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer, Turku, Finland)と標準的なAlamarblue環境を用いて、蛍光をモニタリングした。抗体処理細胞のAlamarblueシグナルを、非処理細胞と比較してパーセントシグナルとしてプロットした。
【0264】
図7は、非処理細胞(0%)と比較した、抗c-Met抗体処理後のKP4生細胞の阻害パーセントを図示する。四角で囲んだクローンは、実施例17に記載のように互いに交差競合する抗体である。興味深いことに、抗体024、062、064、068、069、098、101、および181は同じクロスブロックグループに属し、全てIgG1およびユニボディ分子としてKP4生存を阻害することができた(18~46%)。抗体008、061、および096のIgG1分子もKP4生存を阻害することができた。対照的に、抗体045は、IgG1としてもユニボディ分子としてもKP4生存を阻害しなかった。Uni-1016-045-TEの場合、これは、FACS分析によって測定されたように(実施例13)、膜結合型c-Metに対する弱い見かけの親和性によるものかもしれない。クローン005、006、022、および058のIgG1抗体はKP4生存を有意に阻害しなかったのに対して、Uni-1016-022-TE、Uni-1016-058-TE、およびIgG1-1016-058-wtFabは、それぞれ、KP4生存の57%、38%、および44%を阻害した。Uni-1016-005およびUni-1016-006もクローン022および058と交差競合するが、KP4生存を有意に阻害しなかった。これは、FACS分析によって測定されたように(実施例13)、弱い見かけの親和性によるものかもしれない。興味深いことに、IgG4-1016-058もKP4生存のいくらかの阻害を示した。これはIgG4-5D5では観察されなかった。
【0265】
全体的に見て、データから、一部のクロスブロックグループについては、KP4生存を阻害するためには一価結合が必要とされるのに対して、他のクロスブロックグループについては、一価結合抗体および二価結合抗体が両方ともKP4生存を阻害できることが分かる。
【0266】
実施例20:SCIDマウスにおけるKP4異種移植腫瘍モデル
抗c-Met HuMabがインビボでの腫瘍成長を阻害する効力を確かめるために、SCIDマウスにおけるKP4異種移植腫瘍モデルを行った。7~11週齢の雌SCIDマウス、C.B-17/IcrPrkdc-scid/CRL系統をCharles River Laboratories Nederland(Maastricht, the Netherlands)から購入し、フィルタートップケージに入れて無菌条件下に保ち、飼料および水を自由に与えた。マウス識別のためにマイクロチップ(PLEXX BV, Elst, The Netherlands)を付けた。全ての実験はユトレヒト大学動物倫理委員会によって認可された。
【0267】
0日目に、10x106個のKP4細胞を200μlのPBSに溶解して右側腹部に皮下接種した。マウスの疾患の臨床徴候を少なくとも週2回検査した。腫瘍サイズを少なくとも週1回確かめた。16日目から、体積(mm3)をカリパス(PLEXX)測定値から0.52x(長さ)x(幅)2として計算した。9日目に平均腫瘍サイズを測定し、マウスを、それぞれ7匹のマウスからなる8つの群に分けた。抗c-Met抗体(008、058、069、および098)を腹腔内注射した。抗体G11-HZを正の対照抗体として使用したのに対して、5D5およびアイソタイプ対照抗体を負の対照抗体として使用した。マウスに初回量400μg/マウスを与えた後に、維持量200μg/マウスを7週間にわたって毎週与えた。
【0268】
さらに、1回目、3回目、および5回目の維持用量を投与する前ならびにマウスを屠殺する時に血漿試料を回収し、ラテックスビーズを用いてBNII比濁計(Dade Behring, Atterbury, UK)においてヒトIgGの存在を確認した。
【0269】
図8および
図9は、KP4細胞の腫瘍成長がHuMab008、069、098、および正の対照G11-HZによって阻害されたことを示す。この阻害をアイソタイプ対照抗体処置と比較した。対照抗体G11-HZによってKP4細胞の腫瘍成長は遅延したが、完全に阻害されなかった。クローン069および098はクローン008およびG11-HZと比較して強力な阻害を示した。抗体5D5および058は腫瘍成長を阻害しなかった。これは、実施例19に記載のインビトロデータと一致した。まとめると、これらのデータから、一部のクロスブロックグループについて二価結合抗体はKP4腫瘍成長を阻害できることが分かる。
【0270】
実施例21:MKN45異種移植腫瘍モデル
ヌードマウスにおけるヒト胃腺癌MKN45異種移植腫瘍モデルを用いて、抗c-Met HuMabがインビボで腫瘍成長を阻害する効力を確かめた。
【0271】
ヒトMKN45胃腺癌細胞を、100単位/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、25μg/mLゲンタマイシン、20%胎仔ウシ血清、および2mMグルタミンを含有するRPMI-1640培地中で37℃および5%CO2で培養した。7~8週齢の雌ヌードマウス(nu/nu, Harlan)(研究開始時に体重17.0~26.4g)を使用した。動物には水および飼料を自由に与えた。実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)の推奨に遵守した条件下でマウスを収容した。動物の管理および使用のプログラムはAAALACによって認証された。0日目に、PBSに溶解した50%マトリゲル200μlに1x10e7個のMKN45細胞を溶解して各マウスの側腹部に皮下接種した。7日目に、平均腫瘍量80~120mm3の動物を5つの群(n=10)に分け、処置を開始した。抗c-Met抗体(008、058、069)を尾静脈に(iv)注射した。抗体G11-HZを正の対照抗体として使用し、アイソタイプ対照抗体を負の対照抗体として使用した。全てのマウスに7日目に40mg/kg抗体を与え、14日目、21日目、および28日目に20mg/kg抗体を与えた。
【0272】
エンドポイント腫瘍量が700mm
3になるまで、または研究が終了するまで(62日目)、カリパスを用いて、腫瘍を週2回、測定した。
図10および
図11は、MKN45細胞の腫瘍成長が、アイソタイプ対照抗体処置と比較して、抗体008、058、069および対照抗体G11-HZによって有意に遅延したことを示す。
【0273】
実施例22:コンホメーション可動性を小さくすることによってIgG1 c-Met抗体の残存アゴニスト活性を減少させる
c-Metの天然リガンドであるHGFは、2つのc-Met分子の二量体化を誘導する機能的二量体である。その後に、c-Met細胞内ドメインが細胞内リン酸化すると、細胞の増殖、浸潤、および生存に関与するいくつかのシグナル伝達経路が活性化される。c-Metに対して作製された大部分の二価抗体は、特に、抗体の結合エピトープがc-MetのSEMAドメインの近く、またはc-MetのSEMAドメインの中にある時に細胞運命に対してHGFと同等の作用を示す。
【0274】
二価IgG1抗体の潜在的な残存アゴニスト活性を最小にするために、コンホメーション可動性を小さくする戦略を使用した。IgG1では、Fcドメインと比較してFabアームが動く自由度は大きい。最も大きなコンホメーション変化は、広範囲のFab-Fc角度を可能にするヒンジ可動性によってもたらされる(Ollmann Saphire, E., R.L. Stanfield, M.D.M. Crispin, P.W.H.I. Parren, P.M. Rudd, R.A. Dwek, D.R. Burton and I.A. Wilson. 2002. Contrasting IgG structures reveal extreme asymmetry and flexibility. J. Mol. Biol. 319: 9-18)。免疫グロブリンにあるFabアームの可動性を小さくする手法の1つは、遺伝子組換えによって軽鎖と重鎖とのジスルフィド結合の形成を阻止することである。天然IgG1抗体では、軽鎖は、軽鎖のC末端システインと重鎖のFcのヒンジにある位置220(C220 EUナンバリング)のシステインとをつなぐジスルフィド結合を介して重鎖と共有結合している。アミノ酸C220をセリンもしくは他の任意の天然アミノ酸に変異させることによって、C220を除去することによって、ヒンジ全体を除去することによって、またはIgG1ヒンジをIgG3ヒンジで置換することによって、ヒトアイソタイプIgA2m(1)に見られる状況と同様に、軽鎖が軽鎖C末端システインを介してつながっている分子が形成される。これにより、Fcに対するFabの可動性が小さくなり、その結果、KP4生存アッセイ(
図12)においてIgA2m(1)およびアゴニスト性c-Met抗体(5D5)のIgG1形式を用いた比較研究に示されたように架橋結合能が低下する。
【0275】
IgG1分子の可動性を小さくする別の戦略は、IgG1ヒンジをIgG2ヒンジまたはIgG2様ヒンジで置換することである(Dangl et al. EMBO J. 1988;7:1989-94)。このヒンジ領域には、IgG1と異なる、分子の可動性を小さくすると考えられている2つの特性がある。第1に、IgG1ヒンジと比較して、IgG2ヒンジは3アミノ酸短い。第2に、IgG2ヒンジは追加システインを含有し、従って、2つの重鎖内ジスルフィド架橋の代わりに3つの重鎖内ジスルフィド架橋が形成される。または、IgG2ヒンジに似たIgG1ヒンジ変種を導入することができる。この変異体(TH7Δ6-9)(WO2010063746)は、追加システインのある短いヒンジを作り出すために変異T223Cならびに2つの欠失(K222およびT225)を含有する。
【0276】
実施例23:可動性が小さいIgG1分子の作製(硬化したIgG1分子)
クローニングおよび発現
変異体IgG1抗体を設計し、標準的な分子生物学的技法を用いてクローニングした。作製された全てのヒンジ領域変異の配列の概要を以下の表8に示した。
【0277】
(表8)変異体IgG1抗体のヒンジのアミノ酸配列。欠失には「-」の印をし、変異には下線を引いた。
【0278】
結果として生じた硬化したIgG1抗体を哺乳動物細胞において発現させるために、ヒンジ領域に変異を含有するIgG1 HC定常領域(前記の表8を参照されたい)を、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.3(Invitrogen)に入れてコドン最適化構築物として合成した。ヒトκ軽鎖領域のコドン最適化定常領域をpcDNA3.3に挿入することによって、別のベクターを構築した。クローン069および対照抗体5D5のVH領域およびVL領域を、それぞれ、HC定常プラスミドおよびκ軽鎖プラスミドに挿入し、その結果として、特定の抗体の(変異した)重鎖および軽鎖を発現させるためのベクターを得た。HEK-293F(Invitrogen)細胞において特定の抗体の重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターをコトランスフェクションすると、変異抗体が一過的に産生された。抗体の精製は、(実施例11に記載のように)プロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィーを用いて行った。
【0279】
生化学的特徴付け
一過的発現
全ての変異体を十分なレベルで発現させた。これらの変異体は、MS(>99%純度)およびSDS-PAGEによって確かめられた時に異常な多量体形成を示さなかった。
【0280】
SDS-PAGE結果を
図13に示した。C220変異体(C220SおよびΔC220)ならびにヒンジが欠失したIgG1変種(ヒンジが欠失したIgG1変種をユニボディ-IgG1またはUni-IgG1とも呼ぶ)では、非還元SDS-PAGE分析において約50kDのタンパク質バンドとして目に見える軽鎖の対形成が観察された。IgG3ヒンジを有する変種も軽鎖の対形成を示したのに対して、IgG2ヒンジを有する変種およびIgG1 TH7Δ6-9変異体は正常な軽鎖-重鎖の対形成を示した。
【0281】
実施例24:変異体のc-Met結合特性
変異体のc-Met結合特性をELISAにおいて試験した。ELISAプレートウェルを、PBSに溶解したrhHGFR/Fcキメラ(R&D Systems; Cat.358MT/CF)(1μg/mL)によって4℃で一晩コーティングした。次に、ウェルをPBST(0.05%Tween-20[Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands]を添加したPBS)で洗浄し、PBSTC(2%[v/v]ニワトリ血清[Gibco, Paisley, Scotland]を添加したPBST)によって室温(RT)で1時間ブロックした。その後に、ウェルをPBSTで洗浄し、PBSTCで連続希釈した抗cMet抗体および変種(4倍希釈で10μg/mL)とRTで1時間インキュベートした。結合しなかった抗体をPBSTで洗い流し、コーティングに結合している抗体を、PBSTで希釈したヤギ抗ヒトIgG F(ab')2-HRP(Jacksonカタログ番号109-035-097)とRTで1時間インキュベートすることによって検出した。洗浄後、2,2'-アジノ-bis(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS:1個のABTS錠剤を50mL ABTS緩衝液[Roche Diagnostics, Almere, The Netherlands]で希釈した)とRTで15分間、光から保護しながらインキュベートすることによって、反応を視覚化した。等量のシュウ酸(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands)を添加することによって発色を止めた。マイクロタイタープレートリーダー(Biotek Instruments, Winooski, USA)において405nmでの蛍光を測定した。全ての変異体が、c-Metに匹敵する見かけの親和性(EC50)で結合した(
図14)。表10は、この実験において得られた変異体のEC
50値を示す。
【0282】
(表9)ELISAによって求められた時のEC
50値
【0283】
実施例25:硬化したIgG1 c-Met抗体のアゴニスト作用の低下
受容体リン酸化
硬化した抗体のアゴニスト特性を確かめるために、cMetリン酸化に対する抗体の作用を行った。天然リガンドHGFまたは大部分の二価抗体によって、2つの隣接するcMet受容体が二量体化すると、c-Metの細胞内ドメインにある3つのチロシン残基(位置1230、1234、および1235)が交差リン酸化(cross phosphorylate)され、その後に、細胞内ドメインにある他のいくつかのアミノ酸がリン酸化し、多数のシグナル伝達カスケードが活性化される。従って、cMetの二量体化および活性化は、リン酸化受容体のこれらの位置に特異的な抗体を用いてモニタリングし、従って、抗c-Met抗体の潜在的なアゴニズムの読み取り値として使用することができる。
【0284】
A549細胞、ATCCから得られたCCL-185を、70%コンフルエンシーに達するまで血清含有DMEM培地中で増殖させた。トリプシン処理し、細胞を洗浄した後に、細胞を、血清含有培地が入っている6ウェル培養プレートに1
*10e6細胞/ウェルでプレートした。一晩インキュベートした後に、細胞を、HGF(R&D systems; Cat.294-HG)(50ng/mL)または抗体パネル(30μg/mL)で処理し、37℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche;カタログ11836170001)を添加した溶解緩衝液(Cell Signaling;cat.9803)で溶解し、試料を-80℃で保管した。ホスホc-Met特異的抗体を用いたウエスタンブロットによってリン酸化を測定することによって、受容体活性化を確かめた。細胞溶解産物中のタンパク質を4~12%SDS-PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、その後に、リン酸化c-Met(Y1234/1235)特異的抗体(Cell Signaling;cat.3129)で染色した。ゲルローディングの対照をとるために、全c-Metおよびβ-アクチンに対する抗体を使用した。ウエスタンブロットの結果を
図15に示した。
【0285】
組織培地対照および抗体5D5の一価形式ユニボディで処理した細胞は受容体リン酸化を示さなかった。対照的に、正の対照HGFまたはアゴニスト抗体IgG1-1016-058で処理した細胞のウエスタンブロット分析は、予想された高さで明瞭なバンドを示した。抗体IgG1-1016-069は弱いが検出可能な受容体リン酸化を示した。このことから、この受容体はある程度、架橋結合することが分かる。しかしながら、抗体分子の可動性を小さくするように設計された変種は、一価対照Uni-5D5-TEで処理された細胞において検出されたレベルに相当するレベルまで最小限の受容体活性化を示した(
図15)。
【0286】
インビトロでのNCI-H441増殖に及ぼすc-Met抗体の影響
cMet抗体の潜在的な増殖性アゴニスト活性を、高レベルのc-Metを発現するが、そのリガンドHGFを産生しない肺腺癌細胞株NCI-H441(ATCC, HTB-174(商標))を用いて試験した。NCI-H441細胞を、血清を含まないRPMI(Lonza)が入っている96ウェル組織培養プレート(Greiner bio-one, Frickenhausen, Germany)(5,000個の細胞/ウェル)に播種した。抗c-Met抗体希釈液(66.7nM)を、血清を含まないRPMIに溶解して調製し、細胞に添加した。37℃/5%CO2で7日間インキュベートした後に、Alamarblue(BioSource International, San Francisco, US)を用いて製造業者の説明書に従って、生細胞の量を定量した。EnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer, Turku, Finland)と標準的なAlamarblue環境を用いて、蛍光をモニタリングした。
【0287】
図17に見られるように、NCI-H441細胞の増殖は、アゴニスト性対照mAbであるIgG1-058およびIgG1-5D5によって強く誘導された。抗体IgG1-1016-069も、アイソタイプ対照で処理された細胞と比較して、いくらかのアゴニスト作用を示した。IgG1-1016-069のアゴニスト活性は、C220変異体C220Sおよび-delを導入することによって完全に取り除くことができ、IgG2およびTH7Δ6-9ヒンジまたはIgG2バックボーンを有する変種によって部分的に取り除くことができた。アイソタイプ対照および一価バージョンの5D5(Uni-5D5-TE)で処理された対照試料は細胞増殖を誘導しなかった。
【0288】
KP4生存アッセイ
抗c-Met抗体変異体がHGF依存性細胞を阻害する能力もKP4生存アッセイにおいて確かめた(実験手順については実施例19を参照されたい)。結果を
図17に示した。IgG1-1016-069ベースの変異体の効力は完全に保持されているか、またはC220変異体においてわずかに良かった。特に、アゴニスト性抗体5D5のC220を変異させると、KP4生存は著しく低下した。IgG1形式の058抗体および5D5抗体のアゴニスト作用は、KP4によるHGF高発現(オートクラインHGFループ)のために観察されなかった。
【0289】
発現低下
拮抗性抗体によって誘導されるc-Metの発現低下は治療用c-Met抗体の作用機構である。従って、1つの態様において、アゴニスト特性が低下しているが、c-Metの発現低下を誘導する能力を保持している抗体が望ましい。抗体の発現低下能を確かめるために、A549細胞(ATCCから入手したCCL-185)を、血清含有細胞培地が入っている6ウェル組織培養プレート(500,000個の細胞/ウェル)に播種し、37℃で一晩、培養した。翌朝、最終濃度10μg/mLの抗c-Met抗体を添加し、プレートを37℃でさらに2日間インキュベートした。PBSで洗浄した後に、250μL溶解緩衝液(Cell signaling, Danvers, USA)と室温で30分間インキュベートすることによって細胞を溶解した。総タンパク質量は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ試薬(Pierce)を用いて製造業者のプロトコールに従って定量した。細胞溶解産物中のc-Metタンパク質量は、c-Met特異的サンドイッチELISAを用いて定量した。このために、ELISAプレートウェルを、PBSで希釈したc-Met細胞外ドメインに対するヤギ抗ヒトc-Met抗体(R&D systems)(1μg/mL)を用いて4℃で一晩コーティングした。次に、ウェルをPBST(0.05%Tween-20[Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands]を添加したPBS)で洗浄し、PBSTC(2%[v/v]ニワトリ血清[Gibco, Paisley, Scotland]を添加したPBST)を用いてRTで1時間ブロックした。未希釈の細胞溶解産物を添加し(100μL)、RTで1時間インキュベートした。PBSTによって洗浄した後に、ウェルを、PBSCで1:1000に希釈した、ヒト-c-Met細胞内チロシン-1234残基に対するマウス抗体(Cell signaling)とRTで1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで再洗浄し、PBSCで1:5000に希釈したヤギ抗マウスFc-HRP抗体(Jackson)とRTで1時間インキュベートした。PBSTで洗浄した後に、2,2'-アジノ-bis(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS:1個のABTS錠剤を50mL ABTS緩衝液[Roche Diagnostics, Almere, The Netherlands]で希釈した)とRTで30分間、光から保護しながらインキュベートすることによって、反応を視覚化した。等量のシュウ酸(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands)を添加することによって発色を止めた。マイクロタイタープレートリーダー(Biotek Instruments, Winooski, USA)において405nmでの蛍光を測定した。
図18に見られるように、抗体069の全ての変異体は発現低下を誘導することができた。
【0290】
実施例26:抗体依存性細胞傷害(ADCC)
MKN45細胞(理研バイオリソースセンター, Tsukuba, Japan, RCB1001から購入した)を回収し(5x106細胞)、洗浄し(PBS、1500rpm、5分で2回)、10%cosmic calf serum(CCS)(HyClone, Logan, UT, USA)を添加したRPMI1640培地1mLに入れて収集し、これに200μCiの51Cr(クロム-51; Amersham Biosciences Europe GmbH, Roosendaal, The Netherlands)を添加した。混合物を、振盪している水浴に入れて37℃で1.5時間インキュベートした。細胞を洗浄した後に(PBS、1500rpm、5分で2回)、細胞を、10%CCSを添加したRPMI1640培地に再懸濁し、トリパンブルー排除によってカウントし、1x105細胞/mLの濃度まで希釈した。
【0291】
一方で、標準的なフィコール密度遠心分離を用いて製造業者の説明書に従って(リンパ球分離培地; Lonzam, Verviers, France)、末梢血単核球(PBMC)を新鮮なバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)から単離した。10%CCSを添加したRPMI1640培地に細胞を再懸濁した後に、トリパンブルー排除によってカウントし、1x107細胞/mLの濃度まで濃縮した。
【0292】
それぞれのADCC実験のために、96ウェルマイクロタイタープレートの中で、50μLの51Cr標識MKN45細胞(5.000個の細胞)を、総体積100μLの10%CCS添加RPMI培地に溶解した15μg/mL cMet抗体とプレインキュベートした。RTで15分後に、50μLのPBMC(500,000個の細胞)を添加して、100:1のエフェクター:標的細胞比にした。最大量の細胞溶解は、50μLの51Cr標識MKN45細胞(5,000個の細胞)を100μLの5%Triton-X100とインキュベートすることによって確かめられた。自然溶解量は、抗体またはエフェクター細胞を含まない150μLの培地中で5,000個の51Cr標識MKN45細胞をインキュベートすることによって確かめられた。抗体非依存性細胞溶解のレベルは、抗体を使用せずに5,000個のMKN45細胞を500,000個のPBMCとインキュベートすることによって確かめられた。その後に、細胞を、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。細胞を遠心分離(1200rpm、3分)し、75μLの上清をミクロニックチューブ(micronic tube)に移し、この後に、放出された51Crを、ガンマカウンターを用いてカウントした。測定されたカウント毎分(cpm)を用いて、以下:
(cpm試料-cpm Ab非依存性溶解)/(cpm最大溶解-cpm自然溶解)x100%
のように抗体性溶解のパーセントを計算した。
【0293】
様々な刊行物が、インビトロでコアフコシル化の低下とADCC活性の上昇には相関関係があることを証明している(Shields RL. 2002 J BC; 277:26733-26740、Shinkawa T. 2003 JBC;278(5):3466-3473)。
図19は、抗体069がADCCを介したMKN45細胞溶解を誘導しないことを証明している。しかしながら、HEK細胞においてmAb産生中にキフネンシンの存在によりコアフコシル化が低下すると、抗体069はMKN45細胞の30%超の溶解を誘導することができた。さらに、0.01μg/mL未満の抗体濃度で溶解が既に観察された。図示した値は、MKN45細胞を用いた代表的な1回のインビトロADCC実験からの平均最大パーセント
51Cr放出±標準偏差である。キフネンシンの存在下ではHEK293細胞において069低フコースが産生され、約99.5%の非コアフコシル化が起こった(すなわち、フコースが無かった)。陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー-パルスドアンペロメトリ検出(HPAEC-PAD)によって確かめられた時に、キフネンシンの非存在下ではHEK293細胞において069高フコースが産生され、約2.11%の非コアフコシル化が起こった(データ示さず)。
【0294】
実施例27:c-Met抗体とヒト末梢血細胞との結合の欠如
クローン069と、末梢血に存在する3種類の細胞(B細胞、単球、および顆粒球)との結合を扱うために、FACS結合アッセイを行った。蛍光標識されたクローン069を用いると、二次検出抗体を用いることなくFACSによって直接測定することができた。関心対象の細胞上にある特異的マーカーに対する市販の蛍光標識抗体を用いたアッセイにおいて、血中の細胞集団が特定された。
【0295】
健常ボランティアからの末梢血(University Medical Center Utrecht)をFACS緩衝液(PBS+0.4%BSA+0.02%NaN3)で10倍希釈し、100μlの最終体積で、Alexa488結合c-Met抗体、ならびにFITC結合抗CD19、抗CD16、および抗CD14抗体(最終濃度10μg/mL)、ならびにフィコエリトリン(PE)標識抗CD19、抗CD16、および抗CD14抗体(BD Biosciences, San Jose CA)とインキュベートして、細胞集団(それぞれ、B細胞、顆粒球、および単球)を特定した。4℃で30分後に、試料を遠心分離し(300g、3分)、上清を除去し、200μlのEry-lysis溶液(155mM NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM EDTA[pH7.4])とインキュベート(10分、4℃)することによって赤血球を溶解した。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。試料を100μL FACS緩衝液に再懸濁し、FACS Canto II(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0296】
図20は、Alexa
488結合069がB細胞集団(リンパ球ゲート内にあるCD19-PE
+細胞)に結合しないことを示す代表的なFACSプロットである。Alexa
488結合リツキシマブの結合を正の対照として使用した。他の細胞集団との結合も同様に分析し、3人のドナーのうちの1人の代表的な結果も
図21にプロットした。抗体069-Alexa
488はB細胞にも単球にも顆粒球にも結合しなかったのに対して、正の対照抗体は特異的結合を示した。
【配列表】