(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】試料容器を取り扱うための把持装置および分析機器
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020093680
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2020-05-28
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライン マイケル
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0036276(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第34444616(EP,A1)
【文献】特開2009-274204(JP,A)
【文献】特表2008-541061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00ー 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器(2)を取り扱うための把持装置(1、1’)であって、前記試料容器(2)は、所定のキャップタイプのキャップ(3)によって閉鎖されているか、または、キャップによって閉鎖されておらず、前記把持装置(1、1’)は、
共同して試料容器(2)の把持を引き起こすように構成された複数のフィンガ(4)と、
前記フィンガ(4)の少なくとも1つに配置され
た触覚センサ装置(5、7、8、9)であって、前記触覚センサ装置(5、7、8、9)は、試料容器(2)の長手方向の輪郭(LP)
を得るように、または、試料容器(2)がキャップ
によって閉鎖されている場合には
、前記試料容器(2)と前記キャップ(3)との長手方向の輪郭(LP)を
得るように構成された
、触覚センサ装置(5、7、8、9)と、
前記触覚センサ装置(5、7、8、9)に連結された制御装置(6)と
を備え、前記制御装置(6)は、
得られた前記長手方向の輪郭(LP)に
おける、前記長手方向の位置に応じた前記長手方向に垂直な方向での変位に基づいて、前記試料容器(2)がキャップ(3)によって閉鎖されているか、または、キャップによって閉鎖されていないかを判定するように構成されている、把持装置(1、1’)。
【請求項2】
前記触覚センサ装置(5、7、8、9)は、前記長手方向の輪郭(LP)を
得るために、前記フィンガ(4)の少なくとも1つに沿って長手方向に配置された複数の触覚センサ(5)を備えている、請求項1に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項3】
前記試料容器(2)がキャップ(3)によって閉鎖されていると前記制御装置(6)が判定した場合、前記制御装置(6)がさらにキャップタイプを判定するように構成されている、請求項1または2に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項4】
前記制御装置が、
得られた前記長手方向の輪郭(LP)に基づいて、前記キャップタイプを判定するように構成されている、請求項3に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項5】
前記キャップ(3)が、前記試料容器(2)に挿入される基部(3b)
と、前記試料容器(2)の外径よりも大きな外径を有する頭部(3a)とを備え、
前記試料容器(2)がキャップ(3)によって閉鎖されていると前記制御装置(6)が判定した場合、前記制御装置(6)はさらに、
前記頭部(3a)、前記基部(3b)および前記試料容器(2)の外径の違いに応じた、得られた前記長手方向の輪郭(LP)
における変化に基づいて、前記基部(3b)が前記試料容器(2)に挿入された程度を判定するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項6】
前記触覚センサ装置(5、7、8、9)は、前記フィンガ(4)の少なくとも1つに沿って長手方向に配置された複数の触覚センサ(5)を備え、
触覚センサ(5)のそれぞれが、
軸方向に可動のピン(7)と、
前記軸方向に可動のピン(7)の軸方向の変位を測定するように構成された変位測定セル(8)と
を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項7】
前記触覚センサ装置(5、7、8、9)は、前記フィンガ(4)の少なくとも1つに沿って長手方向に配置された複数の触覚センサ(5)を備え、
前記触覚センサがバネ付勢されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項8】
前記触覚センサ装置(5、7、8、9)は、前記フィンガ(4)の少なくとも1つに沿って長手方向に配置された複数の触覚センサ(5)を備え、
複数の触覚センサ(5)が、複数のフィンガ(4)のそれぞれ1つに沿って長手方向に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項9】
前記フィンガ(4)の数が2つである、請求項1~8のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項10】
前記把持装置(1、1’)がさらに、
把持されるキャップ(3)がある場合に、キャップ(3)の色を検知するように構成された色センサ(10)を備えている、請求項1~9のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の把持装置(1、1’)を備えた分析機器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器を取り扱うための把持装置および分析機器に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の目的は、試料容器を取り扱うための把持装置を提供すること、および、高度に柔軟で高パフォーマンスを有する分析機器を提供することである。
【0003】
把持装置は、例えば従来の試料管の形態の試料容器を取り扱うように構成されている。試料容器は所定のキャップタイプのキャップによって閉鎖されているか、またはキャップによって閉鎖されていない。キャップタイプは、異なるキャップタイプのセットから選択され得る。異なるタイプの試料容器は、例えば、異なるタイプのキャップによって閉鎖され得る。
【0004】
把持装置は、共同して試料容器を把持するように構成された、および/または、試料容器の把持を引き起こすように構成された複数のフィンガを備えている。
【0005】
把持装置はさらに、フィンガのうちの少なくとも1つに配置される、および/または、フィンガのうちの少なくとも1つに機械的に連結された、触覚センサ装置を備えている。触覚センサ装置は、試料容器の、および、ある場合には把持されるキャップの、長手方向の輪郭を測定および/またはサンプリングするように構成されている。長手方向の輪郭は、試料容器の長手方向への延在の輪郭である。
【0006】
把持装置はさらに、触覚センサ装置に連結された制御装置を備えており、制御装置は、サンプリングされた長手方向の輪郭に基づいて、試料容器がキャップによって閉鎖されているか、または、キャップによって閉鎖されていないかを判定するように構成されている。サンプリングされた長手方向の輪郭は、キャップによって試料容器が閉鎖されているかいないかに左右される。典型的には、試料容器に挿入されないキャップの一部は、別の外径、特に、試料容器よりも大きな外径を有する。その結果、サンプリングされた長手方向の輪郭は、試料容器およびキャップの間の遷移位置において明確に変化する。したがって、制御装置は、キャップが存在するかを判定するために、例えばサンプリングされた長手方向の輪郭の勾配を評価することができる。追加または代替的に、制御装置は、サンプリングされた長手方向の輪郭を、記憶された、キャップを有する/有しない既知の試料容器の長手方向の輪郭と比較してもよい。
【0007】
一実施形態によると、触覚センサ装置は、長手方向の輪郭をサンプリングするために、移動可能であり、フィンガの少なくとも1つに沿って長手方向に配置された、例えば2~100個の、複数の触覚センサを備えている。触覚センサは軸方向に移動可能であってもよい。触覚センサは、把持される試料容器の長手軸に対して垂直な方向に移動可能であってもよい。
【0008】
一実施形態によると、試料容器がキャップによって閉鎖されていると制御装置が判定した場合、制御装置はさらに、特にサンプリングされた長手方向の輪郭に基づいて、キャップタイプを判定するように構成されている。典型的には、サンプリングされた長手方向の輪郭は、キャップタイプに特有である。したがって、サンプリングされた長手方向の輪郭に基づいて、キャップタイプを判定することができる。制御装置は、例えばサンプリングされた長手方向の輪郭を、記憶された既知のキャップタイプの長手方向の輪郭と比較してもよい。制御装置はさらに、キャップタイプを判定するために、検知されたキャップの色を用いてもよい。
【0009】
一実施形態によると、キャップは、試料容器に挿入される基部を備え、試料容器がキャップによって閉鎖されていると制御装置が判定した場合、制御装置はさらに、サンプリングされた長手方向の輪郭に基づいて、基部が試料容器に挿入された程度を判定するように構成されている。典型的には、キャップは試料容器に挿入される基部と、試料容器よりも大きな外径を有する、隣接する頭部とを備えている。基部が試料容器に完全に挿入された場合、サンプリングされた輪郭は、試料容器および頭部の間の遷移位置において、試料容器の外径によって判定された値と、頭部の外径によって判定された値との間で変化する。基部が試料容器に完全に挿入されない場合、サンプリングされた輪郭は、試料容器の外径によって判定された値と、そして基部の外径によって判定された値と、そして頭部によって判定された値との間で変化する。その結果、試料容器に挿入されていない基部の長さが判定され得る。さらに、キャップタイプが既知である場合、キャップの幾何学的特徴、例えば基部および頭部の長手方向の延在がわかる。したがって、基部が試料容器に挿入された程度が、サンプリングされた長手方向の輪郭に基づいて計算できる。
【0010】
一実施形態によると、複数の触覚センサのそれぞれが、軸方向に可動のピンと、軸方向に可動のピンの軸方向の変位を測定するように構成された変位測定セルとを備えている。長手方向の輪郭は、触覚センサの軸方向の変位により形成される。
【0011】
一実施形態によると、軸方向に可動のピンが把持された試料容器の表面にバネ力によって押圧されるように、触覚センサはバネ付勢されている。
【0012】
一実施形態によると、複数の触覚センサは、複数のフィンガのそれぞれ1つに沿って長手方向に配置されている。例えば把持装置が2つのフィンガを備える場合、複数の触覚センサが第1のフィンガに沿って長手方向に配置され、同じ数の触覚センサが第2のフィンガに沿って長手方向に配置される。
【0013】
一実施形態によると、フィンガの数は2つである。
【0014】
一実施形態によると、把持装置はさらに、把持されるキャップがある場合に、キャップの色を検知するように構成された色センサを備えている。制御装置は、キャップの色に応じてキャップタイプを判定するように構成され得る。
【0015】
分析機器は上述した把持装置を備えている。分析機器は典型的には、例えば試料容器に収容された試料を処理する装置、遠心分離機、分取装置など、把持装置と相互作用する他の構成要素を備えている。
【0016】
図面を参照して、本発明が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態による、試料容器を取り扱うための把持装置を備えた分析機器の側面図を示す。
【
図2】開放状態における、
図1の把持装置の側面図である。
【
図3】閉鎖状態における、
図1の把持装置の側面図である。
【
図4】さらなる実施形態による、試料容器を取り扱うための把持装置を備えた分析機器の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、試料容器2を取り扱うための把持装置1を備えた分析機器100をかなり概略的に示しており、試料容器2は、所定のキャップタイプのキャップ3によって閉鎖されている、またはキャップによって閉鎖されていない。
【0019】
試料容器2は、例えば血液試料など、処理されるべきおよび/または分析されるべき検査室試料12を含んでいる。
【0020】
分析機器は、例えば分取用装置を形成し得る。
【0021】
把持装置1は、示されているように、対応する把持面4aによって試料容器2を共同して把持するように構成された2つのL字型フィンガ4を備えている。フィンガ4は、試料容器2を解放するために開放することができ(
図2参照)、試料容器2を把持するために閉鎖することができる(
図3参照)。
【0022】
フィンガ4は、例えば電動モータの形態など、明確には図示していない従来の駆動機構によって、移送/移動/回転され得る。
【0023】
把持装置1はさらに、試料容器2の、および、(あるならば)把持されるキャップ3の長手方向の輪郭LPをサンプリングするために、長手に、すなわち長手方向LDに、フィンガ4に沿って配置された複数の触覚センサ5を備えた触覚センサ装置を備えている。
【0024】
それぞれの触覚センサ5は、その長手軸LAに沿って可動のピン7を備えている。ピン7は、それぞれのピンの長手軸が、把持される試料容器2の長手軸に直交するように配置されている。
【0025】
それぞれの触覚センサ5はさらに、対応する軸方向に可動のピン7の軸方向の変位を測定するように構成された変位測定セル8を備えている。
【0026】
それぞれの触覚センサ5はさらに、軸方向に可動のピン7が、把持される試料容器2の外面を押圧するように、バネ9を備えている。
【0027】
長手方向の輪郭LPは、長手方向の位置zに応じた、軸方向に可動のピン7の軸方向の変位(x方向における変位、すなわち長手軸LAの方向における変位)を意味し得る。
【0028】
把持装置1はさらに、制御装置6が長手方向の輪郭LPを読み取ることができるように、それぞれの触覚センサ5の変位測定セル8に連結された制御装置6を備えていてもよい。長手方向の輪郭LPに基づいて、制御装置6は、試料容器2がキャップ3によって閉鎖されているか、または、キャップによって閉鎖されていないかを判定する。さらに、制御装置6は、サンプリングされた長手方向の輪郭LPに基づいて、キャップタイプを判定する。
【0029】
図2および
図3を参照すると、把持装置1はさらに、制御装置6に連結され、(あるならば)把持されるキャップ3の色を検知するように構成された色センサ10を備えている。制御装置は、キャップ3の色に基づいて、キャップタイプおよび/または試料容器のタイプを判定することができる。
【0030】
図2および
図3を参照すると、把持装置1はさらに、制御装置6に連結され、(あるならば)把持されるキャップ3までの距離を検知するように構成された任意の距離センサ11を備えている。制御装置は、検知された距離に基づいて、把持動作を制御することができる。
【0031】
図1を参照すると、キャップ3は頭部3aと、試料容器2に挿入される基部3bとを備えている。試料容器2がキャップ3によって閉鎖されていると制御装置6が判断する場合、制御装置6は、サンプリングされた長手方向の輪郭LPに基づいて、基部3bが試料容器2に挿入されている程度を判定する。
【0032】
図4は、さらなる実施形態による試料容器2を取り扱うための把持装置1’を示している。
【0033】
把持装置1’は、2つのI型フィンガ4を備え、バネ付勢された触覚センサ5によって試料容器2を把持し、
図1に示された把持装置1はフィンガ4の把持面4aによって試料容器2を把持する。
【0034】
残りの特徴に関しては、
図1~
図3に示された実施形態に関する説明が参照される。
【0035】
本発明の把持装置1/1’は、試料容器を取り扱う間に、キャップの存在、キャップタイプ、試料容器へのキャップの挿入の程度、試料容器の外径およびキャップの色を判定することができる。
【0036】
把持装置1/1’は、
図4上で軸方向に可動のピン7を含む、触覚/機械的センサを備え、それぞれの軸方向に可動のピン7は、把持装置1/1’によって取り扱われる/把持される試料容器の表面に独立して応答する。
【0037】
変位測定セル8は、キャップ3の、および、試料容器2の長手方向の輪郭LPを生成するために、それぞれのピン7の軸方向の位置をマップ化する。
【0038】
この輪郭LPの情報は、キャップ3のタイプ、および、試料容器2内にキャップ3が挿入される程度を分類するために用いられる。
【0039】
キャップ3の挿入が安定していない場合、軸方向に可動のピン7が、移送/取り扱いの間にキャップ3を所定の場所で保持/固定する。
【0040】
追加の色センサ10は、キャップの色判定のために把持装置1に一体化されていてもよい。