(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】植物被覆カバーと植物受粉方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/04 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
A01G13/04
(21)【出願番号】P 2020146841
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520335923
【氏名又は名称】本多 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋子
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-112244(JP,U)
【文献】実開昭63-031764(JP,U)
【文献】独国実用新案第202019106631(DE,U1)
【文献】英国特許出願公開第02464319(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0366145(US,A1)
【文献】登録実用新案第3149272(JP,U)
【文献】実開昭61-022487(JP,U)
【文献】米国特許第05810191(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/02
A01H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培中の植物を覆うことのできる植物被覆カバーであり、
前記植物被覆カバーは、筒状の周面ネットの上端側が面状の上面ネットで閉塞され、周面ネットの下端側に底面開口部があり、周面ネットと上面ネットの内側に上端から下端まで
連通している筒状の内部空間があ
る上面閉塞の筒状であり、
前記内部空間は栽培中の植物及びその周囲に立設した支柱の外周を被覆することができる広さと長さであり、
前記周面ネットの周方向任意箇所に縦長の開閉部があり、
前記開閉部は周面ネットの上端側から底面開口部まで又は底面開口部の近くまで開口されており
、周方向一端
側の開口周縁部と他端
側の開口周縁部が内側と外側に重
なり合って閉塞されており、重
なり合
っている外側
の開口周縁部を内側
の開口周縁部の側方まで広げると開き、広げた外側
の開口周縁部
を戻すと閉じるようにした、
ことを特徴とする植物被覆カバー。
【請求項2】
請求項1記載の植物被覆カバーにおいて、
周面ネット及び上面ネットが、通気性があり、透光性のあるネット製である、
ことを特徴とする植物被覆カバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の植物被覆カバーにおいて、
周面ネットの周方向一箇所又は、周方向二以上の箇所に均等間隔で開閉部がある、
ことを特徴とする植物被覆カバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の植物被覆カバーにおいて、
内部空間が植木鉢で栽培中の植物及びその周囲に立設した支柱の外周を被覆することができる広さと長さであり、底面開口部が植木鉢の外周に被さる大きさの内径である、
ことを特徴とする植物被覆カバー。
【請求項5】
植物の受粉方法において、
栽培中の植物及びその周囲に立設した支柱の外側を請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物被覆カバーで被覆し、当該植物被覆カバーの開閉部を閉じて前記植物を周囲から隔離し、
前記植物被覆カバーの開閉部を開いて当該開閉部から植物被覆カバー内の植物に受粉作業を行い、受粉作業終了後に開閉部を閉じて植物を周囲から隔離する、
ことを特徴とする植物受粉方法。
【請求項6】
請求項5記載の植物受粉方法において、
植物被覆カバーの底面開口部を植木鉢の外側まで被せて当該植木鉢ごと植物を被覆し、
受粉時に、開閉部の縦方向全部又は一部を開いて、開いた箇所から受粉作業を行う、
ことを特徴とする植物受粉方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の植物受粉方法において、
植物及び支柱を被覆した植物被覆カバーを、当該植物及び支柱の周方向に回転させて、周面ネットの開閉部の位置を変え、変えた箇所で開閉部を開いて、開いた箇所から受粉作業を行う、
ことを特徴とする植物受粉方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の植物受粉方法において、
植物及び支柱を被覆した植物被覆カバーの二以上の箇所の開閉部を開いて、開いた箇所から受粉作業を行い、その受粉作業後に当該開閉部を閉じてから、他の箇所の開閉部を開いて、開いた箇所から受粉作業を行う、
ことを特徴とする植物受粉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢に栽培中の植物を被覆(カバー)することのできる植物被覆カバーであり、特に、品種改良を目的とする花卉の交配作業(受粉作業)を行うのに適する植物被覆カバーと、その植物被覆カバーを使用した植物受粉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
花卉、野菜等の植物の品種改良を目的とする交配は、通常、植物の花に花粉を受粉して行われる。受粉には自家受粉と他家受粉がある。他家受粉には虫媒花、風媒花、鳥媒花などの受粉がある。いずれの受粉であっても、目的とする花粉以外の花粉が受粉されないようにしている。特に、固有種植物の受粉の場合は、他の種の植物の花粉が受粉しないようする必要がある。固有種の独立性の確保の面から、受粉する植物を他の植物から隔離する必要がある。しかし、これまでは、植物を隔離でき、受粉もできる受粉専用の資材(隔離具)がないため、他の花粉が付かないように受粉後の花を個別に薬包紙で包んだり、紙袋をかけたりする方法や、市販の防虫ネットで植物を被覆して隔離しているのが現状である。防虫用ネットとして特許文献1、非特許文献のようなネットがある。この他に、必要な形状、寸法に切断して使用できるシート状のネットもある。
【0003】
しかし、薬包紙で包んだり、紙袋をかけたりする方法では、植物が屋外にある場合は、薬包紙や紙袋が雨で濡れる恐れがある。雨で濡れた薬包紙や紙袋の重さで花に負担かが掛かって花が変形したり、落下したりして受精率が低下することもある。また、薬包紙や紙袋内で花が蒸れて枯死するとか、薬包紙や紙袋が風で煽られて花がもぎ取られてしまうとか、薬包紙や紙袋が破れて他の植物からの隔離が不十分になり他の花粉を受粉する恐れもある。
【0004】
受粉用の隔離具には、交配する植物を他の植物から隔離できるだけでなく、植物に被せ易いこと、被せたままで受粉作業がし易いこと、被せても植物の成長が阻害されないこと、植物の草姿が形崩れしにくいこと等々が要求される。
【0005】
しかし、特許文献1のネットはネットの周囲が開口しないため、ネットを被せたままでの受粉作業は困難である。非特許文献の防虫ネットは植木鉢に立てた支柱に被せることはできるが、
図7(a)(b)のように、ネットAの上端Bが扁平であるためネット上部の内部空間が狭く、ネット内上部の花への受粉作業がしにくい。特に、ネット内の奥行き幅が狭いため、奥行き方向の花への受粉作業がしにくい。上部の内部空間が狭いため植物成長空間が十分に確保されず、植物が成長しにくい。成長する植物の草姿が形崩れし易い。これら理由により、特許文献1のネットも非特許文献のネットも交配用として使用するには不向きであった。
【0006】
植物がキク科のような筒状花の集まりの場合は、雄蕊、雌蕊の熟度に差があるため、複数回の受粉作業を必要とする場合がある。この場合、薬包紙で包んだり、紙袋を被せたりする方法では、受粉のたびに薬包紙や紙袋を取り外したり付け替えたりしなければならず、花に負担が掛かり、花が落ちたり弱ったりし易い。また、薬包紙や紙袋の取り外し、付け替え作業が面倒でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
【文献】MARSOL ONLINE「スリット型防虫ネット」(https://item.rakuten.co.jp/marsol-morishita/10001421/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決課題は、植木鉢で栽培中の植物を被覆し易く、被覆したままで受粉作業し易く、被覆しても植物の成長が阻害され難く、草姿が形崩れし難く、受粉作業終了後も植物を確実に被覆して外部から隔離することができ、受粉作業を複数回行っても花が傷みにくく、複数回の受粉作業を手軽に行うこともできる植物被覆カバーを提供すること、その植物被覆カバーを使用した植物受粉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の植物被覆カバーは、筒状の周面ネットの上端側を面状の上面ネットで閉塞し、周面ネットの底面を開口して底面開口部としてあり、周面ネットと上面ネットの内側に内部空間がある。内部空間は支柱及び栽培中の植物の外周を覆うことができる広さと長さである。周面ネットの周方向任意箇所に縦長の開閉部があり、開閉部は周面ネットの上端側から底面開口部まで又は底面開口部の近くまで開口されており、周面ネットの周方向一端部と他端部が内側と外側に重ね合わせて閉塞されている。開閉部は重ね合わせてある外側の端部を内側の端部の側方まで広げると開き、広げた外側の端部を内側の端部の外側に戻すと閉じるようにしてある。
【0011】
本発明の植物被覆カバーは、植木鉢に立設した支柱及び当該植木鉢で栽培中の植物の外周を覆うことも、地面に立設した支柱及び露地栽培中の植物の外周を被覆することもできる。
【0012】
本発明の植物受粉方法は、立設した数本の支柱及び栽培中の植物の外側に前記植物被覆カバーを被せて、それら支柱及び植物の外周を被覆し、植物被覆カバーの開閉部を閉じて植物を周囲から隔離し、その開閉部を開いて開いた箇所から植物被覆カバー内の植物に受粉作業を行い、受粉作業終了後に前記開閉部を閉じて植物を周囲から隔離する。開閉部は重ね合わせてある内側端部と外側端部を支柱に止め具で係止して閉じることができる。
【0013】
本発明の植物受粉方法は、植木鉢に立設した支柱及び当該植木鉢で栽培中の植物の外周を被覆して、又は、地面に立設した支柱及び露地栽培中の植物の外周を被覆して、それら植物を周囲から隔離し、その状態で受粉作業をすることもできる。植木鉢に栽培中の植物を被覆して隔離するときは、植物被覆カバーの底面開口部を植木鉢の外周に被せて、底面開口部からの花粉の侵入を防止するのが望ましい。植物被覆カバーの開閉部の奥の方(開閉部と反対側)の花に受粉するときは、植物被覆カバーを複数本の支柱及び植物の周方向に回転させて、開閉部を奥の方の花側にずらしてから、当該開閉部を開いて受粉作業をすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物被覆カバーは次の効果がある。
(1)支柱及び植物の外周に被せたまま開閉部を開いて受粉作業ができるので、支柱及び植物の外周に被せた植物被覆カバーを受粉時に取り外したり、受粉後に被せ直したりする面倒がなく、被覆したり、取り外したりすることによる植物の損傷もない。
(2)受粉する花を外部から確実に隔離できるため、受粉する花の独立性を確保でき、虫媒花、風媒花、鳥媒花などの他家受粉を防止でき、固有種の受粉に特に適する。
(3)筒状の周面ネットの上端部に面状の上部ネットを設けて、周面ネットの上端側の内部空間も筒状に確保してあるため、作業空間が広くなり、受粉作業がし易くなり、植物の成長が阻害されにくく、植物の草姿が形崩れしにくくなる。
(4)支柱及び植物の外周に被せたまま回転させて開閉部を奥の花側にセットし、当該開閉部を開いてその花に受粉作業をすることができるため、植物被覆カバーの奥まで手を差し込まなくても、植物被覆カバー内の周方向全域の花に受粉し易くなる。
(5)周面ネットの内部空間を支柱の上から植木鉢の外周まで被せることができる長さにした場合は、周面ネットの底面開口部を植木鉢の外側に被せて植木鉢に係止して底面開口部も閉塞することができ、底面開口部からの虫媒花の他家受粉を防止することもできる。
【0015】
本発明の植物受粉方法は次の効果がある。
(1)植物被覆カバーを支柱及び植物の外周に被せた状態で開口部を開いて、開いた箇所から受粉作業するので、受粉作業が容易にできる。また、一つの花に複数回受粉作業を行う場合であっても、開口部を開閉するだけで済むため花の損傷を防止でき、複数回の受粉作業を手軽に行うこともできる。
(2)植物被覆カバーの周面ネットの開閉部を支柱に係止するので、開閉部が確実に閉塞され、外に置いても、風で煽られて不用意に開くことがない。このため、受粉する花の独立性を確保して虫媒花、風媒花、鳥媒花などの他家受粉を防止することができる。また、雨に濡れても、薬包紙や紙袋のように破れることがないため他家受粉を防止でき、重くなって花に負担が掛かることもないため受精率の低下も防止できる。
(3)内部空間が筒状に確保されている植物被覆カバーを支柱及び植物の外周に被せるので、植物被覆カバーが傾いたり、位置ずれしたりもしにくくなる。また、内部空間の上部に植物の成長空間が確保されるため、植物の成長が阻害されにくく、草姿が形崩れもしにくい。
(4)植物被覆カバーを支柱及び植物の外周に被せた状態で回転させて、開閉部の位置を変えることができるので、植物被覆カバーの奥の方の花への受粉作業も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の植物被覆カバーの使用の一例を示す斜視図。
【
図2】本発明の植物被覆カバーの一例を示す斜視図。
【
図3】本発明の植物被覆カバーを被せる前の植物の斜視図。
【
図4】支柱への本発明の植物被覆カバーの係止例の説明図。
【
図5】本発明の植物被覆カバーを被せた状態での受粉作業の説明図。
【
図6】本発明の植物被覆カバーであって、上面ネットを円形にした場合の斜視図。
【
図7】(a)は従来の防虫カバーの平面図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(植物被覆カバーの実施形態)
本発明の植物被覆カバーの実施形態を、
図1~
図6を参照して説明する。図示した植物被覆カバーはあくまでも一例である。本発明の植物被覆カバーは、本発明の課題を解決可能な限りにおいて、他の形状、構造、機能のものであってもよい。植物の一例として
図1、
図3、
図5、
図6に示す植物は虫媒花のムギワラギクであるが、他の植物の受粉用として使用できるのは勿論である。また、植木鉢に差し込んである支柱及び植物を被覆する場合を図示してあるが、露地栽培の植物及びその周囲に差し込んである支柱の外周を被覆することもできる。
【0018】
本発明の植物被覆カバー1(
図2)はネット製であり、
図3のように植木鉢2に差し込んである三本の支柱3a、3b、3c及び植木鉢2で栽培中の植物4の外周に、
図1のように被せて使用するものである。
【0019】
植物被覆カバー1は、筒状の周面ネット5の上端側が面状の上面ネット6で閉塞され、下端側(裾)が開口して底面開口部7となっている。周面ネット5と上面ネット6の内側は中空の内部空間8となっている。周面ネット5の周方向一箇所に開閉部9がある。開閉部9は周面ネット5の上端側から下端まで縦方向に開口している。開閉部9は周面ネット5の周方向一端部(内側端部)10の外側に他端部(外側端部:重ね代)11を重ね合わせて閉じてある。開閉部9は、
図5のように、外側端部11を内側端部10の外側まで広げると開くようにしてある。
【0020】
周面ネット5、上面ネット6は市販の防虫用ネットを必要な形状、サイズに裁断して、縫製により或いは接着剤で接着するなどして作ることができる。市販の防虫用ネットは通気性及び透光性があり、害虫や花粉が侵入できない程度のメッシュサイズである。防虫用ネット以外に、交配用の植物カバーとして適当なネットがあれば、そのネットを使用することもできる。
【0021】
支柱3a、3b、3cとしては市販の三本リング支柱(リング支柱)を使用することができる。市販のリング支柱は
図3のように、三本の支柱3a、3b、3cが略正三角形に配置され、それら支柱3a、3b、3cの上端側が下端側よりも外側広がりに配置され、支柱3a、3b、3cの長さ方向三箇所が円形の上リング12a、中リング12b、下リング12cで連結されている。これらリングの径は支柱3a、3b、3cの上方広がりに合わせて、上リング12aが最大、下リング12cが最小である。支柱3a、3b、3cの連結箇所は長手方向二箇所でも四箇所以上であってもよい。それら連結箇所をリングで連連結する。支柱3a、3b、3cには一本ずつバラバラのものを使用することもできる。
【0022】
図2の周面ネット5は角筒状であるが、円筒状、楕円筒状、その他の形状の筒状とすることができる。
図2の上面ネット6も四角形であるが、その形状は周面ネット5の形状に合わせて円形、楕円形、三角形、その他の形状とすることができる。
図6は上面ネット6を円形にした場合の例である。周面ネット5の内径は、
図3の連結リングの上方広がりに合わせて、上端側が広く、下端側が狭くなる筒状にしてあるが、下端側から上端側まで同じ広さの筒状であっても、上端側が狭く、下端側が広くなる筒状であってもよい。
【0023】
内部空間8は植木鉢2に差し込んだ支柱3a、3b、3c及び植木鉢2で栽培中の植物の外側を被覆できる内径と長さの筒状である。内部空間8の底面開口部7は、
図1のように、植木鉢2の外周に被さる広さ(内径)である。植木鉢2の外周に被せた底面開口部7は、三本の支柱3a、3b、3c(
図3)及び植木鉢2に栽培中の植物4(
図3)の周囲を被覆できる内径と長さである。
【0024】
開閉部9は周面ネット5の上端側から下端まで開口しており、周面ネット5の内側端部10の外側に、外側端部11を重ねてあり、外側端部11を内側端部10の側方まで広げる(開く)と内部空間8が開き、広げた外側端部11を内側端部10の外側に戻す(重ね合わせる)と内部空間8が閉じるようにしてある。開閉部9は周面ネット5の下端まで開口せずに、下端近くまで開口させることもできる。
【0025】
開閉部9は、
図4のように、重ね合わせた内側端部10と外側端部11を支柱3a、3b、3cのいずれか(
図4では3a)に巻き付けて、市販のガーデンクリップや洗濯挟みのような止め具13で係止して、風で煽られても不用意に開かないようにしてある。この場合、
図1のように周面ネット5の裾側5aを植木鉢2の周縁部2aの下まで被せ、裾側5aも止め具13で植木鉢2の周縁部2aに係止して、底面開口部7からの害虫の侵入防止、侵入による食害を防止することができる。
【0026】
開閉部9は周面ネット5の周方向二以上の箇所に設けることもできる。二箇所に設ける場合は周面ネット5の周方向対向箇所の二箇所に設けるのが望ましい。三以上の箇所に設ける場合は周方向均等間隔の箇所に設けるのが望ましい。二以上の箇所に設けた場合は、夫々の箇所の開閉部9を開いて受粉作業をすることができる。二以上の箇所の開閉部9は同じ構造にすることも、異なる構造とすることでもできる。
【0027】
図6のように上面ネット6を円形にした場合は、開閉部9の外側端部11の裾11aを窄めて、支柱3a、3b、3cの外周に弛みなく斜めに巻き付ける。この場合も、外側端部11を止め具13で支柱3a、3b、3cのいずれかに係止し、周面ネット5の裾側5aを植木鉢2の周縁部2aの下まで被せて、裾側5aを止め具13で周縁部2aに係止することにより、閉塞部9を確実に閉塞して下側からの害虫の侵入及び害虫による食害を防ぐことができる。
【0028】
(植物受粉方法の実施形態)
本発明の植物受粉方法の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は植木鉢で栽培中の植物の受粉方法であるが、露地栽培の植物の受粉方法であってもよい。また、この実施形態はあくまでも一例であるため、本発明の課題を解決できれば他の受粉方法であってもよい。
【0029】
本発明の植物受粉方法は、植木鉢2に栽培中の植物4を交配(受粉)する方法であり、
図3のように、植木鉢2に差し込んだ支柱3a、3b、3c及び植木鉢2で栽培中の植物4の外周を前記した植物被覆カバー1で被覆し、当該植物被覆カバー1の開閉部9の内側端部10と外側端部11を重ねて、
図4のように支柱3aに止め具13で係止して閉じて、植物4を周囲から隔離しておく。受粉作業時に、前記止め具13を外して開閉部9を
図5のように開き、開いた箇所から植物被覆カバー1内の植物4の花に受粉作業を行う。受粉作業終了後に開閉部9を止め具13で支柱3aに係止して閉じて、植物4を周囲から隔離する。
【0030】
開閉部9を
図5のように開くことにより、開閉部9側の花には受粉し易いが、奥の方の花には受粉しにくい場合がある。このときは、植物被覆カバー1を支柱3a、3b、3cの周方向に回転させて、開閉部9を回転前と反対側の箇所にセットし、そこで開閉部9を開いて受粉作業を行うこともできる。開閉部9を周面ネット5の周方向二以上の箇所に設けた場合は、植物被覆カバー1を回転させることなく、同じ位置に固定したまま、受粉したい箇所に近い箇所の開閉部9を開いて受粉作業を行うことができる。
【0031】
複数回の受粉作業を必要とする花の場合は、受粉するたびに、前記のように、開閉部9を開閉して受粉作業することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の植物被覆カバーは、受粉用の独立性確保のために使用できるだけでなく、植木鉢栽培や露地栽培の植物の防虫用ネット或いは防風用ネット、その他の用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 植物被覆カバー
2 植木鉢
2a (植木鉢の)周縁部
3a、3b、3c 支柱
4 植物
5 周面ネット
5a (周面ネットの)裾側
6 上面ネット
7 底面開口部
8 内部空間
9 開閉部
10 (周面ネットの)内側端部
11 (周面ネットの)外側端部
11a (周面ネットの外側端部の)裾
12a 上リング
12b 中リング
12c 下リング
13 止め具
A ネット
B (ネットの)上端
【要約】 (修正有)
【課題】植物を被覆し易く、被覆したままで受粉作業し易く、被覆しても植物の成長が阻害され難く、草姿が形崩れし難く、受粉作業に適した植物被覆カバーを提供する。
【解決手段】筒状の周面ネット5の上端側を、面状の上面ネット6で閉塞し、周面ネットの下端側を開口させて、周面ネットと上面ネットの内側に内部空間を設けた。内部空間は植木鉢2に立てた支柱3a,3b,3c及び当該植木鉢で栽培中の植物の外周を覆うことができる広さと長さにした。周面ネットの周方向任意箇所に縦長の開閉部を設け、開閉部は周面ネットの上端側から下端側まで開口し、周面ネットの周方向一端部と他端部を内側と外側に重ね合わせて閉塞できるようにした。開閉部は、重ね合わせた外側端部11を内側端部の側方まで広げると開き、広げた外側端部を内側端部の外側に戻して重ね合わせると閉じるようにした。
【選択図】
図6