(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】地下水位低下工法及び地下水位低下用設備敷設システム
(51)【国際特許分類】
E02D 19/10 20060101AFI20220304BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
E02D19/10
E02D27/34 Z
(21)【出願番号】P 2020156744
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000141082
【氏名又は名称】株式会社キャプティ
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】岡村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 太司
(72)【発明者】
【氏名】岸野 洋也
(72)【発明者】
【氏名】下田 武志
(72)【発明者】
【氏名】勝田 賢太
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191984(JP,A)
【文献】特開昭51-067613(JP,A)
【文献】特開2010-070919(JP,A)
【文献】特開2017-075410(JP,A)
【文献】特開2001-226979(JP,A)
【文献】特開2006-169930(JP,A)
【文献】実開昭51-049504(JP,U)
【文献】特開昭64-014417(JP,A)
【文献】特開2017-071977(JP,A)
【文献】特開2006-132079(JP,A)
【文献】特開平06-280473(JP,A)
【文献】特開2006-144382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0153698(US,A1)
【文献】特開2004-125100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/10
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下工法において、
前記地盤に削孔を形成する可撓性ロッドを到達坑に向けて前記地下水位よりも深い地盤領域を通過するように誘導掘削を行う工程と、
前記可撓性ロッドの一端に連結部材を介して筒状織布からなる可撓性排水管を取り付ける工程と、
前記可撓性ロッドを引き戻すことによって、前記可撓性排水管を前記到達坑から前記削孔に引き込んで敷設する工程と、
前記到達坑に位置する前記可撓性排水管の端部に地下水の排水口を設ける工程と、
前記地下水位よりも深く位置する前記可撓性排水管の内部に前記筒状織布を通じて地下水を集水してから、前記可撓性排水管の管内に集水した前記地下水を流して前記排水口から排出する工程と、
を有しており、
前記可撓性排水管は、経糸に対して剛性を有する緯糸を螺旋状に織り込んで筒状に織成して形成されており、
前記連結部材に前記可撓性排水管を取り付ける際に、前記可撓性排水管の先端側の前記緯糸を取り除き、該緯糸が取り除かれた前記可撓性排水管の先端側の前記経糸を内側に折り込む地下水位低下工法。
【請求項2】
前記可撓性排水管の表面に滑剤が塗布されている
請求項1に記載の地下水位低下工法。
【請求項3】
前記滑剤は、ポリアクリル酸塩である
請求項2に記載の地下水位低下工法
【請求項4】
前記緯糸は、金属ワイヤ又は硬質樹脂線の少なくとも何れかを含む
請求項1に記載の地下水位低下工法。
【請求項5】
前記排水口に外気との接触を遮断する接触遮断部が設けられている
請求項1~4の何れか1項に記載の地下水位低下工法。
【請求項6】
前記接触遮断部は、前記排水口に取り付けられるU字型配管である
請求項5に記載の地下水位低下工法。
【請求項7】
前記地盤は、高低差を有する傾斜領域であり、
前記可撓性ロッドの貫入坑は、前記傾斜領域の高位置の地面に形成され、前記到達坑は、前記傾斜領域の低位置の地面に形成される
請求項1~6の何れか1項に記載の地下水位低下工法。
【請求項8】
地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下用設備を敷設する地下水位低下用設備敷設システムにおいて、
前記地盤に設けられている貫入坑から到達坑に向けて推進させて削孔を形成可能な可撓性ロッドを有する誘導式水平ドリル工法用の掘削推進装置と、
可撓性を有する筒状織布からなり、前記貫入坑と前記到達坑との間に設けられる可撓性排水管と、
前記可撓性ロッドの先端部が前記到達坑に到達した際に、前記先端部が取り外された前記可撓性ロッドの一端と前記可撓性排水管の先端側とを連結する連結部材と、を備えており、
前記可撓性排水管は、経糸に対して剛性を有する緯糸を螺旋状に織り込んで筒状に織成して形成されており、前記連結部材に取り付ける際に、前記可撓性排水管の先端側の前記緯糸が取り除かれ、該緯糸が取り除かれた前記先端側の前記経糸が内側に折り込まれるものである地下水位低下用設備敷設システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水位低下工法及び地下水位低下用設備敷設システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の液状化防止対策ための技術の1つとして、地盤の浅い部分の地下水を抜いて地下水位を低下させて地盤の液状化を防ぐ地下水位低下工法が知られている。地下水位低下工法は、多孔の排水管を地中に埋設し、地下水を排水管に集めて排出することによって、地下水位を低下させている。排水管を埋設する関連技術として、特許文献1では、地盤に溝を掘って排水管を敷設する開削工法が開示され、特許文献2では、深い立坑を2か所掘削してから非開削で排水管を敷設する推進工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-125100号公報
【文献】特開平06-280473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開削工法では、大規模な掘削工事や開削によって出る多量の土砂の処理が必要なため、掘削工事に労力やコストを要するものとなっていた。一方、推進工法では、深い立坑を2カ所掘削する必要があることから、掘削工事に労力やコストを要するものとなっていた。地下水位低下工法として、より少ない労力、コストで容易に地下水位の低下が図れる性能を確保することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より少ない労力、コストで地下水位を容易に低下させることを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下工法において、前記地盤に削孔を形成する前記可撓性ロッドを前記到達坑に向けて前記地下水位よりも深い地盤領域を通過するように誘導掘削を行う工程と、前記可撓性ロッドの一端に連結部材を介して筒状織布からなる可撓性排水管を取り付ける工程と、前記可撓性ロッドを引き戻すことによって前記可撓性排水管を前記到達坑から削孔に引き込んで敷設する工程と、前記到達坑に位置する前記可撓性排水管の端部に地下水の排水口を設ける工程と、前記地下水位よりも深く位置する前記可撓性排水管の管内に前記筒状織布を通じて地下水を集水してから、前記可撓性排水管の管内に集水した前記地下水を流して前記排水口から排出する工程と、を有する。
【0007】
本発明の一態様によれば、誘導式水平ドリル工法用の可撓性ロッドで到達坑に向けて掘削しながら削孔を形成してから、可撓性ロッドを戻す過程で排水性能の高い可撓性排水管を削孔内に取り付けるので、容易に地下水の低下が図れる地下水位低下用設備を敷設できるようになる。
【0008】
本発明の一態様では、前記可撓性排水管の表面に滑剤が塗布されていることとしてもよい。
【0009】
このようにすれば、可撓性排水管の表面の摩擦抵抗が低減するので、削孔内に効率的に可撓性排水管を敷設し易くできる。
【0010】
本発明の一態様では、前記滑剤は、ポリアクリル酸塩であることとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、可撓性排水管の表面に塗布しても排水機能が阻害されることなく、可撓性排水管の表面の摩擦抵抗を低減できる。
【0012】
本発明の一態様では、前記可撓性排水管は、経糸に対して剛性を有する緯糸を螺旋状に織り込んで筒状に織成して形成されているとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、可撓性排水管の径方向の剛性を確保しながら、可撓性排水管を削孔に沿って所望の線形状に変形させながら敷設し易くなる。
【0014】
本発明の一態様では、前記緯糸は、金属ワイヤ又は硬質樹脂線の少なくとも何れかを含むこととしてもよい。
【0015】
このようにすれば、可撓性排水管の径方向の剛性を確保した上で、溶接による可撓性排水管の長尺化や可撓性排水管の削孔への固定の安定化が図れるようになる。
【0016】
本発明の一態様では、前記連結部材に前記可撓性排水管を取り付ける際に、前記可撓性排水管の先端側の前記緯糸を取り除き、該緯糸が取り除かれた前記可撓性排水管の前記経糸を内側に折り込むこととしてもよい。
【0017】
このようにすれば、可撓性排水管を引き込む際に、連結部材との連結部位の経糸が切れて、可撓性排水管の先端が連結部材から外れることを抑制できる。
【0018】
本発明の一態様では、前記排水口に外気との接触を遮断する接触遮断部が設けられていることとしてもよく、前記接触遮断部は、前記排水口に取り付けられるU字型配管であることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、可撓性排水管の目詰まりの一因となる鉄細菌の発生を抑制できるようになる。
【0020】
本発明の一態様では、前記地盤は、高低差を有する傾斜領域であり、前記可撓性ロッドの貫入坑は、前記傾斜領域の高位置の地面に形成され、前記到達坑は、前記傾斜領域の低位置の地面に形成されることとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、傾斜領域の地形に合わせた線形で排水性能の高い可撓性排水管を敷設することができる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下用設備を敷設する地下水位低下用設備敷設システムにおいて、前記地盤に設けられている貫入坑から到達坑に向けて削孔を形成可能な可撓性ロッドを有する誘導式水平ドリル工法用の掘削推進装置と、可撓性を有する筒状織布からなり、前記貫入坑と前記到達坑との間に設けられる可撓性排水管と、前記可撓性ロッドの先端部が前記到達坑に到達した際に、前記可撓性ロッドの先端部と前記可撓性排水管の先端側とを連結する連結部材と、を備える。
【0023】
本発明の他の態様によれば、誘導式水平ドリル工法用の掘削推進装置の可撓性ロッドで削孔を形成してから、可撓性ロッドを戻す過程で排水性能の高い可撓性排水管を削孔内に取り付けられるので、容易に地下水の低下が図れる地下水位低下用設備を敷設できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、より少ない労力、コストで地下水位を確実に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される地下水位低下用設備の概要構成を示す説明図である。
【
図2】(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下用設備敷設システムによる地下水位低下工法の概要を示す動作説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で使用される掘削推進装置の概要構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される可撓性排水管の概略構成を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により使用される連結部材と可撓性排水管の先端部との連結された部位の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で敷設される可撓性排水管の端部と排水口との間に設けられているU字型配管の概略を示す構成図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法による作用・効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
まず、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される地下水位低下用設備の概略構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される地下水位低下用設備の概要構成を示す説明図である。
【0028】
本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法は、主に地盤G1の地下水位L1を低下させる際や、余剰の地下水を排水する際に適用される。本実施形態の地下水位低下工法は、地盤内の地下水位L1を低下させる地下水位低下用設備10として、非開削工法の1つである誘導式水平ドリル工法(Horizontal Directional Drilling:以下「HDD工法」とも言う。)を用いて、可撓性を有する筒状織布からなり、集水性(地盤G1からの地下水の排水機能)に優れる可撓性排水管120を地盤G1に敷設する。可撓性排水管120は、地盤G1に設ける貫入坑H1と到達坑H2との間に敷設する。
【0029】
本実施形態の地下水位低下工法は、地下水位L1を少なくとも3mより深くすることによって、地盤の液状化被害を軽減できることに基づいて、特に、地震による地盤G1の液状化被害を防止するために、地表からの深さDが3.5mの位置に可撓性排水管120を敷設する。すなわち、本実施形態では、地下水位L1よりも深い地盤領域を通過するように可撓性排水管120を敷設する。
【0030】
本実施形態の地下水位低下工法により敷設される地下水位低下用設備10は、
図1に示すように、可撓性排水管120が貫入坑H1から斜め下方向に敷設されている傾斜部121と、可撓性排水管120が地表G1からの深さD3.5mに到達した地点から到達坑H2に向けて水平方向に敷設されている水平部122と、可撓性排水管120の水平部122の到達坑H2側の端部に設けられている排水口140と、から構成される。なお、水平部122にいう「水平」の用語は、字義のとおり傾斜角度の無い「水平」のみに限定して解釈すべきものではなく、それに加えて傾斜角度があり横方向に伸長する部分をも含む用語として解釈すべきものである。
【0031】
このような地下水位低下用設備10を敷設すると、地盤G1の地表からの深さDが3.5mよりも浅い地下水位L1の地下水は、自ずと排水機能に優れる可撓性排水管120の管内に筒状織布を通じて集水されて、可撓性排水管120の管内に集水した地下水を流して、到達坑H2に設けられている排水口140に排水されるようになる。このように、可撓性排水管120が地下水を集水することによって、地下水位L1が少なくとも3mより深くなるように容易に低下できるようになる。なお、可撓性排水管120は、時間の経過に伴って目詰まりを起こして排水量が低下することがあるので、定期的に可撓性排水管120の内部から水を噴射させて高圧洗浄することが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の地下水位低下工法は、地震による地盤の液状化被害を防止するための地下水位の低下に適用されているが、大規模盛土地区の地盤安定化のための余剰の地下水の排水や、斜面の安定化のための降雨時の安定的な排水、道路盛土のための降雨時の安定的な排水を行う際にも適用可能である。つまり、地盤G1が自然地盤であるか人工地盤であるかは、不問であり、地表の形態(傾斜の有無、凹凸の有無等)も問わない。また、本実施形態では、地下水位L1を地表から少なくとも3mよりも深くなるようにするために、可撓性排水管120の水平部122の深さが3.5mの位置に敷設しているが、地下水位L1を下げる目的や、地形や地質により異なる地下水の流れと水位の挙動等に応じて、可撓性排水管120を敷設する地表からの深さを変更してもよい。
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下用設備敷設システムによる地下水位低下工法の概要について、図面を使用しながら説明する。
図2(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下用設備敷設システムによる地下水位低下工法の概要を示す動作説明図である。
【0034】
本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法は、地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下用設備10(
図1参照)として、HDD工法を用いて貫入坑H1と到達坑H2との間に排水機能に優れる可撓性排水管120を地下水位L1よりも深い地盤領域を通過するように敷設する。本実施形態では、地盤G1に可撓性排水管120を敷設する際に、地盤G1に設けられている貫入坑H1から到達坑H2に向けて削孔H3を形成可能な可撓性ロッド112を有するHDD工法用の掘削推進装置110を用いて、可撓性を有する筒状織布からなる可撓性排水管120を地下水位低下用設備10(
図1参照)として敷設する地下水位低下用設備敷設システム100となっている。
【0035】
本実施形態では、まず、誘導式水平ドリル工法用の可撓性ロッド112を貫入させる貫入坑H1と貫入坑H1から所定の距離を離隔した到達坑H2を地盤G1に設ける。貫入坑H1は、
図2(A)に示すように、例えば、長さ3m、幅1m、深さ0.7m程度の斜め方向のスロープ状に浅く形成され、到達坑H2は、貫入坑H1よりも深くなるように、例えば、深さ5~6mの立坑として形成される。
【0036】
次に、貫入坑H1から可撓性ロッド112を貫入して、可撓性ロッド112の先端部112aを到達坑H2に向けて推進させながら、地下水位L1よりも深い地盤領域を通過するように誘導掘削を行って削孔H3を形成する。本実施形態では、
図2(A)に示すように、HDD工法用の掘削推進装置110がドリルヘッドとなる先端部112aを一端に取り付けた可撓性ロッド112を貫入坑H1から貫入して、先端部112aからの電磁波を受信するロケータ111を用いて可撓性ロッド112の先端部112aを検知しながら誘導ボーリングを行う。この誘導ボーリングにおいては、掘削推進装置110によって先端部112aの掘進方向を三次元方向に誘導することができ、地盤G1の地下水位L1の状況に応じた掘削路(可撓性排水管120の敷設路)を形成することが可能である。
【0037】
図2(B)に示すように、可撓性ロッド112の先端部112aが到達坑H2に到達したら、先端部112aを取り外す。そして、可撓性ロッド112の一端112bに連結部材130を介して筒状織布からなる可撓性排水管120を取り付ける。本実施形態では、連結部材130として、金属製の管保持具となるトーイングヘッドが使用される。また、本実施形態では、
図2(C)に示すように、尖った先端から基端に向けて拡径する拡径リーマ132が連結部材130の先端側に配置されるように可撓性ロッド112に取り付けられている。
【0038】
連結部材130を介して可撓性ロッド112の一端112bと可撓性排水管120を接続したら、可撓性排水管120の表面に滑剤を塗布してから、
図2(C)に示すように、連結部材130を介して可撓性ロッド112の一端112bに取り付けられた可撓性排水管120を到達坑H2から削孔H3を介して貫入坑H1まで引き込む。滑剤は、可撓性排水管120を可撓性ロッド112で引き込む前までに表面に塗布されていればよいので、連結部材130を介して可撓性ロッド112の一端112bと可撓性排水管120を接続する前に、事前に可撓性排水管120の表面に塗布してもよい。また、滑剤としては、ポリアクリル酸塩を配合した粘性液体等を使用することができる。
【0039】
可撓性排水管120の削孔H3への引き込みは、掘削推進装置110が多数本連結された可撓性排水管120を回収することで行う。削孔H3に引き込まれた可撓性排水管120は、拡径リーマ132が削孔H3の孔径を拡大しながら推進することで形成される削孔H3の中を、貫入坑H1に向けて推進する。
【0040】
可撓性排水管120の先端120aが貫入坑H1に到達したら、可撓性排水管120の基端となる到達坑側の端部120bに排水口140を設ける。本実施形態では、排水口140には、外気との接触を遮断するための接触遮断部150(
図6参照)が設けられている。なお、接触遮断部150の詳細については、後述する。
【0041】
このように、可撓性排水管120と排水口140を設けることによって、地下水位L1よりも深く位置する可撓性排水管120の管内に筒状織布を通じて地下水が集水されて、可撓性排水管120の管内に集水した地下水を排水口140に向けて流すようになる。そして、排水口140から地下水が排出されるようになる。
【0042】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で使用される掘削推進装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で使用される掘削推進装置110の概要構成を示す正面図である。
【0043】
本実施形態の地下水位低下工法で使用される掘削推進装置110は、誘導式水平ドリル工法用の可撓性ロッド112を地盤G1に推進させながら削孔H3を掘削するボーリングマシンである。掘削推進装置110は、
図3に示すように、装置本体113と、可撓性ロッド112をガイドするガイドセル116と、可撓性ロッド112を推進・回転させるように駆動するドリルヘッド114と、ガイドセル116の角度を調整する角度調整部115と、を備える。
【0044】
装置本体113は、少なくともドリルヘッド114をガイドセル116に沿って走行させながら推進・回転させる機能と、可撓性ロッド112のアプローチ角度を調整する機能と、可撓性ロッド112に振動を付与する機能と、を有する。すなわち、装置本体113は、ドリルヘッド114に可撓性ロッド112を構成するロッドを取り付ける際、及びドリルヘッド114に可撓性ロッド112を構成するロッドを取り付けてから推進させる際に、ドリルヘッド114をガイドセル116に沿って走行させながら、ドリルヘッド114の位置を調整する制御機能を有する。また、装置本体113は、角度調整部115を介してガイドセル116の角度を調整することによって、可撓性ロッド112の挿入角度となるアプローチ角度を例えば15~45度となるように調整する制御機能を有する。さらに、装置本体113は、可撓性ロッド112を地盤G1に推進させる際に、ドリルヘッド114を介して可撓性ロッド112に振動を付与する制御機能を有する。
【0045】
可撓性ロッド112は、長さ方向に対して所定の方向に屈曲可能な可撓性を有するように構成されており、先端部112aが切削機能を有するビットとなっている。本実施形態では、可撓性ロッド112は、例えば、不図示の収容部(ラック)に収容されている1本3m程度のロッドを複数連結させることによって構成されている。すなわち、ドリルヘッド114の先端に取り付けた一のロッドを地盤G1に推進させたら、ドリルヘッド114を一のロッドから切り離して後退させ、その後、ドリルヘッド114の先端に他のロッドを取り付けて一のロッドの後端に向けて推進させる。そして、他のロッドの先端が一のロッドの基端に当接したら、一のロッドの後端にネジで連結して、また1本分を推進させることを繰り返すことによって、所望の長さの可撓性ロッド112が形成される。
【0046】
また、本実施形態では、可撓性ロッド112は、地盤G1に削孔H3を掘削する際に、所望の長さとなるように複数のロッドを連結させてからドリルヘッド114を駆動させることによって、先端部112aに所定の大きさのトルク、回転力、振動が付与されて、地盤G1を掘削しながら推進するように制御されている。さらに、本実施形態では、可撓性ロッド112は、削孔H3の掘削が終了した際には、可撓性ロッド112を引き戻す過程で1本ずつのロッドのネジ止めを解きながら、ロッドを1本ずつ外して回収する。
【0047】
また、本実施形態では、可撓性ロッド112の先端部112aに小型の電磁波の発信機(ゾンデ)が埋め込まれている。このため、地上で電磁波受信手段となるロケータ111(
図2(A)参照)を用いて電磁波の強度が最大の地点を探索して、その電磁波の強度が最大の地点を先端部112aの真上であると推定されることによって、可撓性ロッド112を所定の方向に向けて推進させながら地盤G1を掘削する誘導ボーリングができるようになっている。
【0048】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される可撓性排水管の構成について、図面を使用しながら説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により敷設される可撓性排水管の概略構成を示す正面図である。
【0049】
本実施形態の地下水位低下工法により敷設される可撓性排水管120は、断面方向に対して環状に配置された経糸120cと、当該経糸120cに対して螺旋状に織り込まれた剛性を有する緯糸120dとを織成してなる筒状織布である。経糸120cは、例えば、ポリエステル又はナイロンの長繊維からなる可撓性を有する合成繊維であり、緯糸120dは、ステンレス等から構成される金属ワイヤや剛直なモノフィラメント系等の硬質樹脂線からなり、所定の大きさ以上の剛性を有する。すなわち、緯糸120dは、金属ワイヤ又は硬質樹脂線の少なくとも何れかを含むものとなっている。
【0050】
特に、本実施形態では、緯糸120dは、より大きな剛性を確保するために、少なくとも金属ワイヤが1本含まれることが好ましいので、金属ワイヤ1本と樹脂線1本の2本が並行して用いられている。なお、緯糸120dの本数に関しては、2本に限定されず、1本や3本以上の他の本数としてもよい。また、緯糸120dの構成に関しては、より剛性を高めるために、金属ワイヤ2本以上を含む構成としてもよい。さらに、本実施形態では、
図4に示すように、可撓性排水管120の両端部(先端120a、端部120b)には、経糸120cと緯糸120dを熔融させて一体化した加熱処理や、接着剤の塗布等によって、経糸120cが緯糸120dから解れるのを防止する解れ止め部120eが形成されている。
【0051】
本実施形態では、このように可撓性排水管120を構成することによって、可撓性排水管120は、可撓性と自己保形性を有する筒状織物管となっている。すなわち、可撓性排水管120は、長さ方向に対しては、可撓性を有する合成繊維からなる経糸120cが曲げ方向に容易に屈曲可能となり、径方向に対しては、剛性を有する緯糸120dが断面形状を筒状に維持できるように自己保形性を確保している。
【0052】
また、可撓性排水管120は、例えば、45000個/mの微細な孔が形成された筒状織布とすることによって、良好な排水性を確保できるようになっている。さらに、可撓性排水管120は、孔径が100μm以下の筒状織布とすることによって、土砂の流出を防止できるようになっている。また、可撓性排水管120は、例えば、硬質塩化ビニル有孔管であるVP40に外装して使用できるように、施工性を良好なものとなっている。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により使用される可撓性排水管と連結部材との連結態様について、図面を使用しながら説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法により使用される可撓性排水管の先端部と連結部材との連結された部位の断面図である。
【0054】
本実施形態の地下水位低下工法では、HDD工法で誘導ボーリングして可撓性ロッド112の先端部112aが到達坑H2に到達したら、先端部112aを取り外してから可撓性ロッド112の一端112bに連結部材130を介して可撓性排水管120を取り付ける。本実施形態では、連結部材130は、
図5に示すように、本体部130aの先端130bが縮径して尖ったトーイングヘッドである。連結部材130の本体部130aの側面には、複数の凸部130cが設けられている。連結部材(トーイングヘッド)130は、先端130bを締め込むことによって、側面に複数の凸部130cが設けられている本体部130aを外向きに拡径させる機能を有する。このため、本体部130aを拡径させることによって、本体部130aを覆うように取り付けられた可撓性排水管120を外向きに押圧するので、可撓性排水管120が連結部材130に強固に固定されるようになる。
【0055】
本実施形態では、連結部材130に可撓性排水管120を取り付ける際に、可撓性排水管120の先端側の解れ止め部120e(
図4参照)と緯糸120dを取り除く。そして、
図5に示すように、可撓性排水管120の当該緯糸120dが取り除かれた部位の経糸120cを内側に折り込んで、内側に折り込まれた経糸120cのみが連結部材130の本体部130aの側面と凸部130cに当接するようにして、可撓性排水管120が連結部材130の本体部130aに取り付けられる。前述のように可撓性排水管120は、管端側の剛性のある緯糸120dを除去して経糸120cを管内側に折り込んだ「経糸折り込み部120c1」を形成している。このような経糸折り込み部120c1は、凸部130cと交差するように配置される。このため、経糸折り込み部120c1が本体部130aと凸部130cによって形成される凹凸形状に追従して配置されるので、連結部材130に対して可撓性排水管120を抜け止めする固定力を発揮できるようになる。
【0056】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で敷設される接触遮断部の構成について、図面を使用しながら説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法で敷設される排水口に設けられている接触遮断部の一例となるU字型配管の概略を示す構成図である。
【0057】
本実施形態では、可撓性排水管120の目詰まりの一因となる鉄細菌(鉄バクテリア)の発生を抑制するために、可撓性排水管120の到達坑H2側の端部120bに有する排水口140には、
図6に示すように、外気との接触を遮断する接触遮断部となるU字型配管150が設けられている。また、排水口140には、可撓性排水管120の基端側を補強するために、可撓性排水管120の内側に硬質塩化ビニル有孔管からなる補強管141が内挿されている。
【0058】
U字型配管150は、
図6に示すように、排水口140からの排水を導入する導入用配管151と、連結用配管152と、導出用配管153でU字型に構成され、導出用配管153の一端に集水した地下水を排水する排水用配管154が設けられている。本実施形態では、導入用配管151は、可撓性排水管120の内側に内挿されている補強管141に連結されている。
【0059】
なお、本実施形態では、接触遮断部としてU字型配管150が排水口140に取り付けられているが、排水口140を外気との接触を遮断する態様となっていれば、他の態様としてもよい。例えば、排水口140の一端に下向きの配管を設けて、当該配管をバケツ等の水が充填された貯水容器に浸漬させることによって、排水口140を外気との接触を遮断するようにしてもよい。また、接続遮断部として排水口140の表面に界面活性剤や抗菌剤を練り込んで鉄細菌の発生を抑制するようにしてもよい。
【0060】
次に、本発明の一実施形態に係る地下水位低下工法及び地下水位低下用設備敷設システム100の作用・効果について説明する。
【0061】
本実施形態では、誘導式水平ドリル工法用の可撓性ロッド112を貫入坑H1から到達坑H2に向けて推進させながら地盤G1を掘削して削孔H3を形成する。その際に、可撓性排水管120を貫入させるために形成される貫入坑H1は、例えば、長さ3m、幅1m、深さ0.7m程度の比較的浅い小さな坑として、地面に対してスロープ状に形成されている。すなわち、本実施形態では、貫入坑H1として、深い立坑でない浅いスロープ状の坑を形成して、当該貫入坑H1から所定の距離を離隔して形成されている立坑となる到達坑H2に向けて、可撓性ロッド112を地下水位L1よりも深い地盤領域を通過するように誘導ボーリングしながら地盤G1に削孔H3を掘削する。
【0062】
このため、本実施形態の地下水位低下工法は、道路を3.5m程度掘って排水管を敷設する開削工法と比べて、形成する貫入坑H1を浅く、小さく出来るので、工事における労力と費用の低減が図れた上で、周囲が沈下する懸念を解消できるようになる。また、本実施形態の地下水位低下工法は、深い立坑を2箇所掘削してから非開削で排水管を敷設する推進工法と比べて深い立坑の形成が1ヶ所で済むので、工事における労力と費用の低減が図れるようになる。特に、本実施形態では、可撓性ロッド112は、推進しながら地盤G1を掘削する際に、振動が付与されるので、地盤G1が地滑り等の発生し易い砂地でも、可撓性ロッド112を推進させながら地盤G1を容易に掘削できるようになる。
【0063】
また、本実施形態では、可撓性ロッド112を掘削推進装置110のドリルヘッド114に向けて引き戻す過程で排水性能の高い可撓性排水管120を削孔H3内に取り付ける。すなわち、HDD工法で地盤G1に削孔H3を形成する過程で可撓性ロッド112を戻す際に、可撓性ロッド112の一端112bに連結部材130を介して取り付けた可撓性排水管120を引き込むことによって、可撓性排水管120を削孔H3に沿って地下水位L1よりも深い地盤領域を通過するように敷設することができる。このように、HDD工法で地盤G1に削孔H3を形成する一連の過程で排水性能の高い可撓性排水管120を引き込むことによって、地下水位L1の低下を確実に図れる地下水位低下用設備10を容易に敷設できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、地下水位低下用設備10として敷設される排水管は、金属や樹脂による硬質な固定排水管でなく、柔軟性を有する可撓性排水管120である。このため、現場で敷設する際に、敷設すべき排水管の長さの設計値と誤差がある場合でも、可撓性ロッド112で引き込んだ可撓性排水管120が貫入坑H1から到達坑H2まで敷設されてから、可撓性排水管120を切断して敷設できるので、より現場の地盤G1に沿った所望の長さの可撓性排水管120を敷設することができる。
【0065】
また、本実施形態では、可撓性排水管120は、孔径が100μm以下の筒状織布であるので、時間の経過に伴って目詰まりを発生することがある。このため、定期的に可撓性排水管120の内部から洗浄水を噴射して高圧洗浄することによって、地下水の排水量の低下を抑制できるので、容易に地下水位低下用設備10のメンテナンスを行えるようになる。
【0066】
特に、本実施形態では、
図7に示すように、地盤G2が高低差を有する傾斜領域である場合に、貫入坑H1を傾斜領域の高位置の地面に対して斜め方向のスロープ状に形成して、到達坑H2を傾斜領域の低位置の地面に立坑として形成してから、貫入坑H1から到達坑H2に向けて誘導ボーリングをして、その後、可撓性排水管120を敷設する。すなわち、本実施形態では、柔軟性が高い可撓性ロッド112と可撓性排水管120を使用することによって、関連技術となる縦ボーリングや横ボーリングでは、難しかった地形に合わせた線形での可撓性排水管120を敷設できるようになる。このため、地形に合わせた線形で排水性能の高い可撓性排水管120を敷設できることから、一度に広範囲の排水が可能な排水性能の高い地下水位低下用設備を容易に敷設できるようになる。
【0067】
また、本実施形態では、掘削推進装置110のドリルヘッド114に向けて引き込む可撓性ロッド112を用いて削孔H3に可撓性排水管120を引き込む際に、可撓性排水管120の表面に滑剤が塗布されている。このため、可撓性排水管120の表面の摩擦抵抗が低減するので、削孔H3内に効率的に可撓性排水管120を敷設し易くできる。特に、滑剤として、水に溶け易く、砂に浸透し易く、かつ、摩擦低減効果のあるポリアクリル酸塩を可撓性排水管120の表面に塗布することによって、排水機能が阻害されることなく、可撓性排水管の表面の摩擦抵抗を低減できるようになる。
【0068】
さらに、本実施形態では、可撓性排水管120は、可撓性を有する経糸120cに対して剛性を有する緯糸120dを螺旋状に織り込むことによって、孔径が100μm以下の微細な孔が45000個/mの密度で形成された筒状織物となっている。このため、良好な排水性を有しながら土砂流出がなく、地震や豪雨から誘発される地すべり対策用の水抜き管として機能するので、効率的な地下水の排水を行えて、確実に地下水位L1を低下できるようになる。
【0069】
また、本実施形態では、可撓性排水管120は、環状に配置された可撓性を有する経糸120cに対して剛性を有する緯糸120dを螺旋状に織り込んで織成した筒状織布とすることによって、可撓性排水管120の径方向の剛性を確保して潰れ難くしながら、可撓性排水管120を削孔H3に沿って所望の線形状に変形させながら敷設し易くなる。特に、緯糸120dにステンレス等からなる金属ワイヤを含めることによって、可撓性排水管120の径方向の剛性を確保して自己保形性を高められるので、可撓性排水管120の押圧性を向上させられるようになる。
【0070】
また、可撓性排水管120は、緯糸120dを金属ワイヤとすることによって、溶接による可撓性排水管120の長尺化や可撓性排水管120の削孔H3への固定の安定化を容易に図れるようになる。さらに、可撓性排水管120は、緯糸120dとして含める金属ワイヤの本数を増やすことによって、可撓性排水管120の径方向の剛性を更に高めて、可撓性排水管120の押圧性を向上させられるようになる。このため、例えば、可撓性排水管120をより深い地中に敷設するように、より高い応力が作用する現場でも適用可能となる。
【0071】
さらに、本実施形態では、可撓性ロッド112の一端112bと可撓性排水管120の先端120aとを連結させる連結部材130の先端側に、尖った先端から基端に向けて拡径する拡径リーマ132が設けられている。このため、可撓性ロッド112を貫入坑H1側に戻す際に、拡径リーマ132が削孔H3を広げるように作用するので、可撓性排水管120を引き込む際の推進力を確保して可撓性排水管120を削孔H3内に敷設し易くなる。
【0072】
また、本実施形態では、連結部材130に可撓性排水管120を取り付ける際に、可撓性排水管120の先端側の解れ止め部120eと緯糸120dの一部を取り除き、当該緯糸120dが取り除かれた部分の可撓性排水管120の経糸120cを内側に折り込むようにしている。連結部材130として、例えば、他の管種用のトーイングヘッドを使用した場合に、連結部材130の本体部130aの側面には、他の管種と連結するための突起部分となる複数の凸部130cが設けられている。このため、これらの凸部130cと緯糸120dに挟まれて経糸120cが切れ易くなることがあった。
【0073】
そこで、本実施形態では、可撓性排水管120の先端120aの緯糸120dを除去して、残った経糸120cを内側に折り込んで二重にすることによって、連結部材130の本体部130aと可撓性排水管120との接続部位の緩衝性を持たせて、接続部位の引張り強度を補強している。このようにするによって、可撓性排水管120を引き込む際に、連結部材130の本体部130aとの連結部位の経糸120cが切れて、可撓性排水管120の先端120aが連結部材130から外れることを抑制できるようになる。
【0074】
また、本実施形態では、排水口140における外気との接触を遮断する接触遮断部150として、排水口140にU字型配管が取り付けられている。可撓性排水管120の目詰まりの原因として、特に、地下水に含まれる溶存鉄(Fe2+)が大気中の酸素と反応して発生する鉄細菌(鉄バクテリア)が挙げられる。地下水に含まれる溶存鉄(Fe2+)は、可撓性排水管120の排水口140側で大気中の酸素と接して反応することによって鉄細菌となるので、外気との接触を遮断する接触遮断部150を排水口140に設けることによって、鉄細菌の発生を抑制して、可撓性排水管120の目詰まり対策となっている。
【0075】
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0076】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、地下水位低下工法、地下水位低下用設備敷設システム及び地下水位低下用設備の構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 地下水位低下用設備
100 地下水位低下用設備敷設システム
110 掘削推進装置
111 ロケータ
112 可撓性ロッド
112a 先端部
112b (可撓性ロッドの)一端
113 装置本体
114 ドリルヘッド
115 角度調整部
120 可撓性排水管
120a 先端
120b 端部(基端)
120c 経糸
120c1 経糸折り込み部
120d 緯糸
120e 解れ止め部
121 斜方部
122 水平部
130 連結部材(トーイングヘッド)
130a 本体部
130b 先端
130c 凸部
132 拡径リーマ
140 排水口
141 補強管
150 U字型配管
151 導入用配管
152 連結用配管
153 導出用配管
154 排水用配管
G1、G2 地盤
H1 貫入坑
H2 到達坑
H3 削孔
L1 地下水位
【要約】 (修正有)
【課題】より少ない労力、コストで地下水位を容易に低下させる地下水位低下工法及び地下水位低下用設備敷設システムを提供する。
【解決手段】地盤内の地下水位を低下させる地下水位低下工法において、地盤G1に削孔H3を形成する可撓性ロッド112を到達坑H2に向けて地下水位よりも深い地盤領域を通過するように誘導掘削を行う工程と、可撓性ロッド112の一端に連結部材130を介して筒状織布からなる可撓性排水管120を取り付ける工程と、可撓性ロッド112を引き戻すことによって、可撓性排水管120を到達坑H2から削孔H3に引き込んで敷設する工程と、到達坑H2に位置する可撓性排水管120の端部に地下水の排水口を設ける工程と、地下水位よりも深く位置する可撓性排水管120の内部に筒状織布を通じて地下水を集水してから、可撓性排水管120の管内に集水した地下水を流して排水口から排出する工程と、を有する。
【選択図】
図2