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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】作業設備システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/62 20160101AFI20220304BHJP
【FI】
H02P29/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020192039
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2021114892
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】62/961,910
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/898,103
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.252,ShanYing Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan, R.O.C.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鐘啓聞
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-112188(JP,A)
【文献】特開2014-093832(JP,A)
【文献】特開2007-026700(JP,A)
【文献】特開2014-147193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0118866(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103802883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業設備と温度センサーと制御器と備える作業設備システムであって、
前記作業設備は、モーター装置を備え、前記モーター装置は、負荷装置に動力を提供し、
前記温度センサーは、前記モーター装置のモーター温度を測定するように用いられ、
前記制御器は、プリセット温度、前記モーター装置のモーター抵抗、前記作業設備システムの熱抵抗、及び電気的パラメーターを有し、
前記制御器が動力要求コマンドを受信すると、前記制御器は、
前記動力要求コマンド及び前記電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算し、
前記モーター温度と前記プリセット温度との温度差を計算し、
前記温度差及び前記熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算し、
前記熱エネルギー及び前記モーター抵抗に基づいて第2電流を計算し、
前記第2電流と前記第1電流との実効値を比較し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいかどうかを判断し、前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流より小さいことを確認した場合、前記制御器は、前記動力を減少するように前記モーター装置を制御し、
前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流以上であることを確認した後、前記制御器は、
前記実効値と前記第2電流との比値に基づいて電流位相差を計算し、
前記動力要求コマンドに含まれる位相角及び前記電流位相差に基づいて目標電流位相を計算し、
前記第2電流、前記目標電流位相、及び前記電気的パラメーターに基づいて目標動力を計算し、
前記動力が誤差範囲内で前記目標動力に近づくように、前記モーター装置を制御して前記動力を調整し、
前記誤差範囲が0~10%である、ことを特徴とする作業設備システム。
【請求項2】
前記電気的パラメーターは、前記モーター装置の磁場強度数値、前記モーター装置の磁石の位相角を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の作業設備システム。
【請求項3】
前記第1電流の前記実効値は、前記第1電流の2乗平均平方根値、第1電流の絶対値、又は第1電流の平均値である、ことを特徴する請求項1に記載の作業設備システム。
【請求項4】
前記作業設備及び前記制御器に電気的に接続される冷却装置を更に備え、前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流より小さいことを確認した後、前記制御器は、前記冷却装置を始動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の作業設備システム。
【請求項5】
前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流以上であることを確認した後、前記制御器は、前記冷却装置を停止させる、ことを特徴とする請求項4に記載の作業設備システム。
【請求項6】
作業設備システムに適用する制御方法であって、前記作業設備システムは、モーター装置と温度センサーと制御器とを備え、前記モーター装置は、負荷装置に動力を供給し、前記温度センサーは前記モーター装置のモーター温度を測定し、前記制御器はプリセット温度と前記モーター装置のモーター抵抗と前記作業設備システムの熱抵抗と電気的パラメーターとを有し、前記制御器が動力要求コマンドを受信すると、前記制御器は、制御方法を実行し、前記制御方法は、
前記動力要求コマンド及び前記電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算するステップ(a)と、
前記モーター温度と前記プリセット温度との温度差を計算するステップ(b)と、
前記温度差及び前記熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算するステップ(c)と、
前記熱エネルギー及び前記モーター抵抗に基づいて第2電流を計算するステップ(d)と、
前記第2電流と前記第1電流との実効値を比較し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいかどうかを判断するステップ(e)と、を含み、
前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流以上である場合を確認した後、前記制御器によって実行される制御方法は、
前記実効値と前記第2電流との比値に基づいて電流位相差を計算するステップ(f)と、
前記動力要求コマンドの位相角及び前記電流位相差に基づいて目標電流位相を計算するステップ(g)と、
前記第2電流、前記目標電流位相、及び前記電気的パラメーターに基づいて目標動力を計算するステップ(h)と、
前記動力が誤差範囲内で前記目標動力に近づくように、前記モーター装置を制御して前記動力を調整するステップ(i)とを、さらに含む、ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流より小さいことを確認した後、前記制御器は、前記動力を減少するように前記モーター装置を制御する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業設備システム及びその制御方法に関し、特に、目標動力及び目標温度を提供できる作業設備システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モーターは通常、作業設備に設置され、作業設備の操作のための主動力を提供するために使用される。発電過程で熱損失が発生するため、電気モーターの電気エネルギーと運動エネルギーの変換効率は100%に達することができない。また、使用する機構部品の動きも摩擦による熱損失の原因の一つである。前述した熱損失は熱エネルギーであり、これにより作業設備の温度が上昇し、作業設備を破損する恐れも与える。さらに、自動化の発展に伴い、機械的精度の要件はますます高まっているが、作業設備の温度が大きく変化すると、熱膨張・収縮の影響を受けて機械的精度が低下する問題も生じる。したがって、作業設備の温度を一定の使用温度範囲内に維持する方法が重要である。
【0003】
従来技術において、冷却装置(水冷、油冷または空冷装置など)は、作業設備システムを冷却するための構成として使用され、それにより、作業設備の温度を制御することができる。しかし、作業設備に必要な電力や稼働速度が変化すると、それに応じて発生する熱も変化する。つまり、電気モーターによって生成される熱エネルギーは固定値ではなく、冷却装置だけでは作業設備の動作温度を安定させることが難しい。また、製造コストを削減して作業スペースを節約するために、多くの作業設備には冷却装置が設計されない傾向がある。作業設備の温度が設定温度よりも低い場合(例えば、電気モーターの発熱量が減少したり、冷却液の温度が低すぎたり、周囲温度が下がったりした場合)、冷却装置を備えた作業設備の動作は、温度変化により、不安定となる場合もある。また、作業設備を最初に起動するときは、作業設備はウォームアップ動作を実行する必要があり、ウォームアップ動作中は作業設備を生産に使用することはできない。特に、周囲温度が低い場合、ウォームアップ動作時間は長くなり、作業設備の作業効率が低下し、長時間ウォームアップによる過度の摩耗で作業設備の耐用年数も短くなる問題が生じる。
【0004】
したがって、上記の従来技術を改善することができる作業設備システムおよびその適用可能な制御方法をどのように改良するかは、検討すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、作業設備システム及びその制御方法を提供することを目的とする。作業設備のモーター装置の電流を制御することによって、作業設備は、動力及び温度の要件を同時に満たすことができる。また、作業設備の温度を安定して制御することもでき、作業設備の機械精度を維持することができる。また、ウォームアップに必要な時間を短縮することもでき、作業設備の作動効率を向上し、耐用年数を延ばすことができる。
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、作業設備システムを提供している。前記作業設備システムは、作業設備と温度センサーと制御器と備える。前記作業設備は、モーター装置を備え、前記モーター装置は、負荷装置に動力を提供する。前記温度センサーは、前記モーター装置のモーター温度を測定するように用いられる。前記制御器は、プリセット温度、前記モーター装置のモーター抵抗、前記作業設備システムの熱抵抗、及び電気的パラメーターを有する。前記制御器が動力要求コマンドを受信すると、前記制御器は、前記動力要求コマンド及び前記電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算し、前記モーター温度と前記プリセット温度との温度差を計算し、前記温度差及び前記熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算し、前記熱エネルギー及び前記モーター抵抗に基づいて第2電流を計算し、前記第2電流と前記第1電流との実効値を比較し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいかどうかを判断し、前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流より小さいことを確認した場合、前記制御器は、前記動力を減少するように前記モーター装置を制御する。
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、作業設備システムに適用する制御方法を提供している。前記作業設備システムは、モーター装置と温度センサーと制御器とを備え、前記モーター装置は、負荷装置に動力を供給し、前記温度センサーは前記モーター装置のモーター温度を測定し、前記制御器はプリセット温度と前記モーター装置のモーター抵抗と前記作業設備システムの熱抵抗と電気的パラメーターとを有し、前記制御器が動力要求コマンドを受信すると、前記制御器は、制御方法を実行し、前記制御方法は、前記動力要求コマンド及び前記電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算するステップ(a)と、前記モーター温度と前記プリセット温度との温度差を計算するステップ(b)と、前記温度差及び前記熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算するステップ(c)と、前記熱エネルギー及び前記モーター抵抗に基づいて第2電流を計算するステップ(d)と、前記第2電流と前記第1電流との実効値を比較し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいかどうかを判断するステップ(e)と、を含み、前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流以上である場合を確認した後、前記制御器によって実行される制御方法は、前記実効値と前記第2電流との比値に基づいて電流位相差を計算するステップ(f)と、前記動力要求コマンドの位相角及び前記電流位相差に基づいて目標電流位相を計算するステップ(g)と、前記第2電流、前記目標電流位相、及び前記電気的パラメーターに基づいて目標動力を計算するステップ(h)と、前記動力が誤差範囲内で前記目標動力に近づくように、前記モーター装置を制御して前記動力を調整するステップ(i)とを、さらに含む。
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、モーター装置と温度センサーと制御器と冷却装置とを備える作業設備システムを提供している。前記モーター装置は、負荷装置に動力を提供し、前記温度センサー、前記モーター装置のモーター温度を測定するように用いられる。前記制御器、プリセット温度、前記モーター装置のモーター抵抗、前記作業設備システムの熱抵抗、及び電気的パラメーターを有する(ここは、上記情報を含むことを意味している)。前記冷却装置は、前記モーター装置と前記制御器に電気的に接続され、前記制御器は、動力要求コマンドを受信すると、前記制御器は、前記動力要求コマンド及び前記電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算し、前記モーター温度と前記プリセット温度との温度差を計算し、前記温度差及び前記熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算し、前記熱エネルギー及び前記モーター抵抗に基づいて第2電流を計算し、前記第2電流と前記第1電流との実効値を比較して、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいかどうかを判断し、前記制御器は、前記第2電流が前記第1電流より小さいことを確認した場合、前記制御器は、前記冷却装置を始動させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好適な実施形態における作業設備システムのブロック図である。
図2】従来の作業設備及び図1に示す作業設備がウォームアップ期間の温度変化曲線を示す概念図である。
図3図1の作業設備システムの変化例を示す概念図である。
図4】作業設備システムの斜視図及び平面図であり、示されている作業設備システムの作業設備は可動載置部材である。
図5図4に示す作業設備システムの変化例の斜視図である。
図6A】本発明の好適な実施形態における作業設備システムに適用する制御方法のフローチャート図である。
図6B】本発明の好適な実施形態における作業設備システムに適用する制御方法のフローチャート図である。
図7A図6Aの制御方法の変化例のフローチャート図である。
図7B図6Bの制御方法の変化例のフローチャート図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の特徴および利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態を詳細に説明する。本発明は、各種の変更を加える事が可能であるが、そのすべてが本発明請求の範囲から逸脱するものではない。また、明細書の記載及び図面は、本発明を制限するものではなく、説明を目的としたものであることを理解されたい。
【0011】
図1は、本発明の好適な実施形態における作業設備システムのブロック図である。図1に示すように、本発明の作業設備システムは、作業設備1と、制御器2と、温度センサー3とを備える。作業設備1は、モーター装置11を備え、前記モーター装置11は、負荷装置12に動力F2を提供することに用いられている。他の実施形態では、負荷装置12の設置位置は限定されず、負荷装置12は、作業設備1の内部又は外部に設置することができ、本発明はこれに限定されない。温度センサー3は、作業設備1に電気的に接続され、前記温度センサー3は、モーター装置11のモーター温度T1を検知するために用いられている。ある実施形態では、主に熱エネルギーはモーター装置11によって生成されるので、モーター温度T1は、作業設備1の現時点(動作しているときのリアルタイム温度)の動作温度に相当するが、本願発明はこれに限定されない。制御器2は、作業設備1のモーター装置11及び温度センサー3に電気的に接続されている。図1では、制御器2は、物理的なパラメーター及び電気的パラメーターを含み、電気的パラメーターは、モーター装置11の磁場強度数値とモーター装置11の磁石の位相角を含むが、これに限定されない。また、物理的なパラメーターは、プリセット温度と、モーター装置11のモーター抵抗、及び作業設備システムの熱抵抗を含むが、これにも限定されない。
【0012】
ある実施形態では、制御器2は、コンピューターに電気的に接続されており、前記コンピューターは、動力要求コマンドF1を送信することに用いられている。制御器2が動力要求コマンドF1を受信すると、制御器2は、動力要求コマンドF1及び電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算するステップと、モーター温度T1とプリセット温度との温度差を計算するステップと、前記温度差及び作業設備システムの熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算するステップと、熱エネルギーとモーター抵抗とに基づいて第2電流を計算するステップと、第2電流と第1電流との実効値を比較して(なお、ここでの実効値は、第1電流の2乗平均平方根値(root-mean-square value)、第1電流の絶対値、又は第1電流の平均値のいずれでも良いが、これらに限定されない)第2電流が第1電流よりも小さいかどうかを判断するステップを実行させる。第2電流が第1電流の実効値よりも小さい場合、第2電流が第1電流より小さいことを表示させる。第2電流が第1電流の実効値以上である場合、第2電流が第1電流以上であることを表示させる。
【0013】
制御器2は第2電流が第1電流よりも小さいことを確認した場合、前記制御器2は、出力される動力F2を低減するようにモーター装置11を制御する。一方で、制御器2は第2電流が第1電流以上であることを確認した場合、前記制御器2は、第1電流の実効値及び第2電流の比値(ratio value)に従って電流の位相差を計算し、動力要求コマンドF1の位相角及び電流位相差に基づいて目標電流位相を計算し、第2電流、目標電流位相及び電気的パラメーターに基づいて目標動力を計算し、動力F2が誤差範囲内に近づくようにモーター装置11を制御して電力を調整することを実行させる。なお、ここでの誤差範囲は、約0~10%であるが、本願発明はこれに限定されない。
【0014】
上記の構成によって、負荷装置12に提供される動力F2を目標動力に近くなるように調整することにより、作業設備1の動力需要を満たすことができる。また、作業設備1の熱エネルギー需要を満たすことにより、作業設備1の温度制御を安定して制御することができ、作業設備1の温度要求を満たすこともできる。これにより、作業設備1の機械敵市江戸を高水準に維持することができる。
【0015】
図1及び図2を参照されたい。図2に示すウォームアップ期間の温度変化曲線により、従来の作業設備のウォームアップに必要な時間と比べ、本発明の作業設備1のウォームアップに必要な時間は大幅に短縮された。図2では、実線は、従来の作業設備の温度変化曲線を示しており、破線は、作業設備1の温度変化曲線を示している。本発明の作業設備1によって、ウォームアップに必要な時間をΔt減少することができ、同時に、作業設備1の作業効率及び耐用年数を延ばすことができる。
【0016】
図1を参照されたい。電気的パラメーター及び物理的なパラメーターは、制御器2のファームウェア又はソフトウェアプログラムに事前設定することができるが、本願発明はこれに限定されない。ある実施形態では、使用者がコンピューターを利用して制御器2に動力要求コマンドF1を送信することができる。また、ある実施形態では、作業設備1は、冷却装置4を更に備え、前記冷却装置4は、モーター温度T1を低減するように、作業設備1に電気的に接続されている。これによって、制御器2がモーター装置11を制御する際に、冷却装置4による影響を総合的に考慮し、一定のモーター温度T1を維持することができる。
【0017】
ある実施形態では、図3に示すように、冷却装置4も制御器2に電気的に接続される。制御器2は、温度制御コマンドを出力して、冷却装置4の始動及び停止を制御する。制御器2は第2電流が第1電流よりも小さいことを確認した場合、制御器2は冷却装置4を動作させる。この状況は、コンピューターが出力する動力要求コマンドF1では、モーター装置11が過剰な動力F2を供給していることを意味している。よって、モーター装置11の動作により大量の熱エネルギーが発生し、熱エネルギーを減少するために冷却装置4を起動する必要がある。冷却装置4が一定時間動作した後、モーター温度T1がプリセット温度よりも低くなり、且つ低下し続けると、モーター温度T1とプリセット温度との温度差が形成し、熱エネルギー及び第2電流の増加は必要となる。この場合では、制御器2は第2電流が第1電流以上であることを確認した後、制御器2は、冷却装置4を停止させる。制御器2は、モーター装置11及び冷却装置4の動作を制御してモーター温度T1を調整することができるので、モーター温度T1を正確に制御することができる。
【0018】
以下、制御器2によって実行される、前述した計算プロセスを説明する。
【0019】
制御器2は、式(1)を用いて、動力要求コマンドF1及び電気的パラメーターに基づいて第1電流iを計算する。
式(1)において、θi1は、動力要求コマンドF1に含まれる第1電流の位相角であり、Bは、モーター装置11の磁場強度数値であり、θは、モーター装置11の磁石の位相角であり、且つ位相角θi1が位相角θに等しい。
【0020】
制御器2は、モーター温度T1とプリセット温度との温度差を計算する。また、制御器2は、式(2)を用いて、前記温度差及び作業設備システムの熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算する。

式(2)において、Pthermalは、熱エネルギーであり、ΔTは、温度差であり、Rthは、作業設備システムの熱抵抗である。
【0021】
制御器2は、式(3)を用いて、熱エネルギーPthermal及びモーター抵抗に基づいて、第2電流iを計算する。
式(3)において、Rは、モーター装置11のモーター抵抗である。
【0022】
制御器2は、第2電流が第1電流以上であることを確認した後、制御器2は、式(4)を用いて、第1電流iの実効値i1eと第2電流iとの比値に基づいて、電流位相差θidを計算する。また、制御器2は、式(5)を用いて、位相角θi1及び電流位相差θidに基づいて目標電流位相θtargetを計算する。

制御器2は、式(6)を用いて、第2電流i、目標電流位相θtarget及び電気的パラメーターに基づいて、目標動力F3を計算する。
図1及び図3を参照されたい。制御器2は、式(6)に示す目標動力F3に基づいてモーター装置11に制御信号C1を出力し、制御器2は、これによって、モーター装置11を制御して動力F2を調整し、動力F2を誤差範囲内に目標動力F3に近くなるように調整することができる。これによって、制御器2は、第2電流i及び目標電流位相θtargetでモーター装置11を動作させ、動力要求を満たすことができる。また、モーター装置11によって生成された熱エネルギーは、熱エネルギーPthermalと同じであるため、熱エネルギーの需要を満たすこともできる。
【0023】
本発明の作業設備1の実施形態は、これに限定されず、作業設備1は任意形態の設備であっても良い。例えば、図4に示すように、作業設備1は、可動載置部材である。当該実施形態では、作業設備1は、モーター装置11と、負荷装置12と、取付面13とを備え、前記取付面13には、ガイドレール14が設けられている。負荷装置12は、作業プラットフォーム15と滑車18とに接続されている。滑車18とガイドレール14との接続によって、負荷装置12は、取付面13においてガイドレール14に沿って移動することができる。モーター装置11は、電気的に接続されたコイル群16と磁石固定子17とを備え、コイル群16は、作業プラットフォーム15上に設けられ、磁石固定子17は、取付面13においてガイドレール14に沿って配置されている。ある実施形態では、作業設備システムは、温度センサー3と冷却装置4とを更に備える。温度センサー3は、作業設備1と制御器2とに電気的に接続される。なお、温度センサー3は、作業設備1内に設置されても良いが、これには限定されない。冷却装置4は、作業設備1に電気的に接続されている。モーター装置11、負荷装置12、温度センサー3、冷却装置4、及び制御器2の動作及び接続は、前述した内容と同じであるため、ここでは詳細を省略する。また、ある実施形態では、図5に示すように、冷却装置4は、制御器2に接続されており、冷却装置4は、制御器2に出力された温度制御コマンドによって制御される。
【0024】
図6A及び図6Bは、本発明の好適な実施形態における作業設備システムに適用する制御方法のフローチャート図である。当該制御方法は、前述した実施形態に示された作業設備システムを制御するように用いられ、且つその制御方法は制御器2によって実行される。図6A及び図6Bに示すように、制御方法は以下のステップを含む。
【0025】
ステップS1では、動力要求コマンドF1及び電気的パラメーターに基づいて第1電流を計算する。
【0026】
ステップS2では、モーター温度T1とプリセット温度との温度差を計算する。
【0027】
ステップS3では、前記温度差及び作業設備システムの熱抵抗に基づいて熱エネルギーを計算する。
【0028】
ステップS4では、前記熱エネルギー及びモーター抵抗に基づいて第2電流を計算する。
【0029】
ステップS5では、第2電流と第1電流との実効値を比較し、第2電流が第1電流よりも小さいかどうかを判断する。第2電流が第1電流の実効値よりも小さい場合、第2電流が第1電流よりも小さいことを表示させる。第2電流が第1電流の実効値以上である場合、第2電流が第1電流以上であることを表示させる。
【0030】
制御器2は、第2電流が第1電流以上であることを確認した後、制御器によって実行される制御方法は、ステップS6とステップS7とステップS8とステップS9とを含む。ステップS6では、第2電流と第1電流との実効値同士の比値に基づいて電流の位相差を計算する。ステップS7では、動力要求コマンドF1に含まれる位相角及び電流位相差に基づいて目標電流位相を計算する。ステップS8では、第2電流、目標電流位相及び電気的パラメーターに基づいて目標動力を計算する。ステップS9では、動力F2が誤差範囲内で目標動力に近づくように、モーター装置を制御して動力F2を調整する。
【0031】
制御器2は、第2電流が第1電流よりも小さいことを確認した後、制御器2は、動力F2を低減するようにモーター装置11を制御する(ステップS10)。また、図7A及び図7Bに示すように、作業設備システムが作業設備1及び制御器2に接続される冷却装置4を備える場合、制御器2は、第2電流が第1電流よりも小さい場合を確認した後、制御器2によって冷却装置4を動作させる(ステップS11)。さらに、冷却装置4が一定時間作動した後、制御器2は、第2電流が第1電流以上であることを確認した後、制御器2によって冷却装置4を停止させる(ステップS12)。
【0032】
上述したように、本発明は、作業設備システム及びその制御方法を提供している。作業設備のモーター装置の電流を制御することによって、作業設備は、動力及び温度の要件を同時に満たすことができ、且つ、作業設備の温度を安定して制御することができるので、作業設備の機械制度を維持することができる。また、ウォームアップに必要な時間を短縮できるため、作業設備の作業効率及び耐用時間を延ばすこともできる。
【0033】
以上、本発明を説明することのみを目的とすることに留意されたい。本発明は、記載された実施形態に限定されない。また、本発明請求の範囲は、添付の特許請求の範囲である。さらに、本発明は、当業者の人々によって各種の変更をすることができ、その変更及び改良は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1:作業設備
2:制御器
3:温度センサー
4:冷却装置
11:モーター装置
2:負荷装置
13:取付面
14:ガイドレール
15:作業プラットフォーム
16:コイル群
17:磁石固定子
18:滑車
F1:動力要求コマンド
F2:動力
C1:制御信号
T1:モーター温度
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12:ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B