(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】巻取り機
(51)【国際特許分類】
B65H 57/14 20060101AFI20220304BHJP
B65H 67/04 20060101ALI20220304BHJP
B65H 54/22 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B65H57/14
B65H67/04 B
B65H54/22
(21)【出願番号】P 2020501309
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2018068783
(87)【国際公開番号】W WO2019011983
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】102017006689.2
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】マーク-アンドレ ヘアンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/138827(WO,A2)
【文献】特開昭55-098059(JP,A)
【文献】特開2012-188784(JP,A)
【文献】特開昭61-188370(JP,A)
【文献】特開2008-297078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00-54/553
B65H 57/00-57/28
B65H 67/00-67/08
B65H 65/00
D01D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸をボビンに巻き取るための巻取り機であって、片持ち式に保持された少なくとも1つの巻取りスピンドル(6.1)に沿って互いに並んで配置されている複数の巻取り箇所(1.1~1.4)と、糸走路において前記巻取り箇所(1.1~1.4)の上流に配置された複数のヘッド糸ガイド(3.1~3.4)であって、機械フレーム(10)において可動に形成された保持体(14)に保持されているヘッド糸ガイド(3.1~3.4)と、前記巻取り箇所(1.1~1.4)のそばで側部に配置されている少なくとも1つのゴデット(11)であって、前記巻取りスピンドル(6.1)に対して横方向に方向付けられていてかつ前記糸走路において前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の上流に配置されたゴデット(11)と、を備えており、前記保持体(14)は前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)を、前記糸を挿通するために、前記巻取り箇所(1.1~1.4)の外側における仕掛け位置から、前記巻取り箇所(1.1~1.4)の作動位置に案内する、
巻取り機において、
前記保持体(14)の下において前記機械フレーム(10)に、回転可能に支持された補助ローラ(17)が配置されていて、該補助ローラ(17)によって、前記挿通前に、糸収束点が形成されている
ことを特徴とする、巻取り機。
【請求項2】
前記補助ローラ(17)は、前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)に
軸平行に方向付けられていて、かつ環状のガイド溝(17.1)を有している、
請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
前記補助ローラ(17)は、前記ゴデット(11)と共に糸走行平面を形成していて、該糸走行平面は、前記保持体(14)の移動時に前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)によって貫通される、
請求項2記載の巻取り機。
【請求項4】
前記補助ローラ(17)は、前記機械フレーム(10)に、前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の下方に設定された高さ間隔(A)をおいて配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項5】
前記補助ローラ(17)は、供給側に沈静ピン(18)を有していて、該沈静ピン(18)に沿って前記糸は、接触状態で案内されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項6】
前記補助ローラ(17)は、前記機械フレーム(10)において、綾振り装置(4)の上側の領域で、互いに隣接した巻取り箇所(1.1~1.4)の間に配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項7】
前記保持体(14)に、駆動手段(15,16)が対応配置されていて、該駆動手段(15,16)によって前記保持体(14)の往復動する推進運動が制御可能である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項8】
前記駆動手段は、リニア駆動装置(15)によって構成されていて、該リニア駆動装置(15)は、キャリッジガイド(16)上で前記保持体(14)に連結されている、
請求項7記載の巻取り機。
【請求項9】
前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)は、回転可能に支持された変向ローラ(13.1~13.4)によって形成されていて、該変向ローラ(13.1~13.4)は、前記糸を案内するために周囲に、それぞれ1つの開放した糸走行溝(20)を有している、
請求項1から8までのいずれか1項記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、複数の糸をボビンに巻き取るための巻取り機に関する。
【0002】
溶融紡糸プロセスにおいて、糸群として製造された糸は、プロセスの最後において互いに平行にボビンに巻き取られる。そのために、複数の巻取り箇所を備えた巻取り機が使用され、巻取り箇所は、機械フレームにおいて片持ち式に保持された巻取りスピンドルに沿って形成されている。巻取りスピンドルは、複数のボビンを収容するために働き、これによって、これらのボビンが同時に巻成される。糸の巻重ねは、いわゆる綾巻きにおいて行われるので、巻取り箇所内においてそれぞれ糸は個々に、綾振りユニットを用いて、ボビン表面への乗上げ前に往復案内される。巻取り箇所における糸群の供給および分離は、複数のいわゆるヘッド糸ガイドを介して行われる。これらのヘッド糸ガイドは、巻取り箇所においてそれぞれ綾振りユニットの上流に配置されている。このとき、糸群は、通常、ゴデットを介してヘッド糸ガイドに供給される。
【0003】
プロセス開始時に糸群の糸を、巻取り機の巻取り箇所に挿通できるようにするために、通常、糸群は可動のサクションインジェクタを介して案内され、これによって糸をヘッド糸ガイド内に挿通するために準備することができる。このとき基本的に、巻取り機の2つの変化形態が区別される。第1の変化形態では、可動の補助装置が、ヘッド糸ガイド内への糸の糸案内および挿通のために使用される。このような巻取り機は、例えば国際公開第98/28217号または欧州特許出願公開第2497732号明細書に基づいて公知である。これらの公知の巻取り機では、補助装置は、互いに並んで配置された複数のガイド溝を備えた可動の挿通糸ガイドによって形成されている。挿通糸ガイドは、プロセス開始時にサクションインジェクタによって案内された糸群を収容し、ガイド軌道に沿った移動によって個別化し、かつヘッド糸ガイドに引き渡すために使用される。このとき、糸群の分離および挿通を達成するためには、比較的高価なガイド軌道および駆動装置が必要である。したがってこのような補助装置は、特に故障しやすい。
【0004】
巻取り機の第2の変化形態では、糸を分離および挿通するための追加的な可動の補助装置を必要としない。このような巻取り機は、例えば国際公開第2008/138827号に基づいて公知である。この巻取り機では、巻取り機の糸ガイドエレメントまたはゴデット自体が、糸を仕掛けかつ分配するための相対移動を実施するために使用される。本発明は、巻取り機のこの変化形態から出発している。しかしながらこのとき糸ガイドは、主としてサクションインジェクタおよびサクションインジェクタの位置によって影響される。
【0005】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の巻取り機を改良して、糸をヘッド糸ガイドの単純な移動推移によって分離可能でありかつ挿通可能である巻取り機を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、冒頭に述べた形式の巻取り機を改良して、プロセス開始時に糸の挿通および仕掛けを自動化して実施することができる巻取り機を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、保持体の下において機械フレームに、回転可能に支持された補助ローラが配置されていて、該補助ローラによって、挿通前に、糸収束点が形成されていることによって解決される。
【0008】
本発明の好適な改良形態は、従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0009】
本発明は、糸群の放射状の案内に基づいて、1つの糸収束点を使用することができ、これによって糸収束点に対する間隔において確定された、糸の間における間隔を得ることができるという認識に基づいている。これによって糸群を、糸収束点に対して間隔をおいて、簡単に分離することができる。そのためにヘッド糸ガイドの保持体の下において機械フレームに、回転可能に支持された補助ローラが配置される。このように構成されていると、仕掛け時にサクションインジェクタを用いて案内されている糸群を、糸収束点を形成するために補助ローラの周囲に接触させることができる。これにより糸群は、放射状に糸収束点内に延びる。
【0010】
本発明の別の利点としては、巻取り機における挿通工程および仕掛け工程が、サクションインジェクタの位置および案内とは無関係であるということがある。したがってそれぞれのプロセス開始時に、巻取り箇所における糸の挿通および仕掛けを、高い再現性をもって実施することができる。形成された糸収束点は、位置固定であり、かつサクションインジェクタの案内とは無関係である。
【0011】
糸群の糸が集合する糸ローラの周囲に形成された確定された糸収束点を、可能な限り得るために、本発明の好適な改良形態では、補助ローラは、ヘッド糸ガイドにほぼ軸平行に方向付けられていて、かつ環状のガイド溝を有している。このように構成されていると、ヘッド糸ガイドと補助ローラとの間における簡単な相対移動によって、糸の選択を実施することができる。
【0012】
この工程はさらに、補助ローラが、ゴデットと共に糸走行平面を形成していて、該糸走行平面が、保持体の移動時にヘッド糸ガイドによって貫通されることによって、改善することができる。
【0013】
ヘッド糸ガイドの領域における糸の間において、糸の間における十分な糸間隔を得るために、補助ローラは、機械フレームに、好ましくはヘッド糸ガイドの下方に設定された高さ間隔をおいて配置されている。このように構成されていると、ヘッド糸ガイドと補助ローラとの間における高さ間隔を、糸が仕掛け位置から作動位置へのヘッド糸ガイドのシフト時に自動的にヘッド糸ガイドによって捕捉されるように設定することができる。
【0014】
糸群の内部における糸が多数である場合に、本発明の、好適であることが判明している改良形態では、補助ローラは、供給側に沈静ピンを有していて、該沈静ピンに沿って糸は、接触状態で案内されている。このように構成されていると、糸群における、サクションインジェクタからの反作用を回避することができる。沈静ピンにおける糸接触は、糸群の静かな糸走行を保証する。
【0015】
巻取り箇所における巻取り作動を阻止しないために、補助ローラは、機械フレームにおいて、好ましくは綾振り装置の上側の領域で、互いに隣接した巻取り箇所の間に配置されている。
【0016】
基本的には、巻取り箇所における糸の挿通および仕掛けを、操作員によって手動で実施することが可能である。このような場合には、ヘッド糸ガイドの保持体は、手動でシフトさせることができる。しかしながら本発明の、特に好ましい改良形態では、保持体に、駆動手段が対応配置されていて、該駆動手段によって保持体の往復動する推進運動が制御可能である。このように構成されていると、糸群の分離および挿通のための、保持体における正確な移動推移を実施することができる。
【0017】
このとき駆動手段は、好ましくはリニア駆動装置によって構成されていて、該リニア駆動装置は、キャリッジガイドを介してキャリッジガイド上で保持体に連結されている。
【0018】
極めてコンパクトな巻取り機を実現するために、さらに、ヘッド糸ガイドが、回転可能に支持された変向ローラによって形成されていて、該変向ローラが、糸を案内するために周囲に、それぞれ1つの開放した糸走行溝を有していることが提案されている。このように構成されていると、さらにヘッド糸ガイド内への糸の挿通が簡単になり、かつゴデットとヘッド糸ガイドとの間におけるほぼ水平に方向付けられた分配平面が得られる。さらに、自由回転可能に支持された変向ローラによって、仕掛け工程中における糸摩擦が最小になり、その結果サクションインジェクタは、比較的低い作動圧で糸群を収容することができる。
【0019】
次に添付の図面を参照しながら本発明に係る巻取り機について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る巻取り機の1実施形態を概略的に示す側面図である。
【
図2.1】ヘッド糸ガイドの図示と共に、
図1に示された実施形態の一部を、1つの作動位置において概略的に示す側面図である。
【
図2.2】ヘッド糸ガイドの図示と共に、
図1に示された実施形態の一部を、別の作動位置において概略的に示す側面図である。
【
図3.1】ヘッド糸ガイドと共に、
図2.1に示された1つの作動位置を示す平面図である。
【
図3.2】ヘッド糸ガイドと共に、
図2.2に示された別の作動位置を示す平面図である。
【0021】
図1には、本発明に係る巻取り機の1実施形態が概略的に側面図で示されている。本発明に係る巻取り機は、本実施形態では、機械フレーム10に互いに並んで形成されている全部で4つの巻取り箇所1.1~1.4を有している。これらの巻取り箇所1.1~1.4は、片持ち式に保持された巻取りスピンドル6.1に沿って配置されている。巻取り箇所1.1~1.4のそれぞれにおいて、糸群2のそれぞれ1つの糸が供給され、ボビン8に巻き取られる。このとき、巻取り箇所1.1~1.4の数および糸群の糸2.1~2.4の数は、一例である。基本的にこのような巻取り機は、16までの巻取り箇所を相並んで有することができる。
【0022】
巻取り箇所1.1~1.4には、綾振り装置4が対応配置されており、この綾振り装置4は、巻取り箇所1.1~1.4毎に、糸2.1~2.4のうちの1つの糸を往復案内するためのそれぞれ1つの綾振りユニットを有している。綾振り装置4の綾振りユニットは、例えば綾巻き溝付きドラム式綾振り装置(Kehrgewindewellenchangierung)によって、またはベーン式綾振り装置(Fluegelchangierung)によって形成されていてよい。
【0023】
糸2.1~2.4を平行に巻き取るために、巻取り箇所1.1~1.4のそれぞれの巻取り箇所には、駆動される巻取りスピンドル6.1の周囲における巻管9が対応配置されている。そのために巻管9は、巻取りスピンドル6.1の周囲に緊締されている。このとき巻取りスピンドル6.1は、すべての巻取り箇所1.1~1.4にわたって延びているので、ボビン8は、巻取り箇所1.1~1.4において平行に巻成される。
【0024】
ボビン8の表面に糸2.1~2.4を巻き重ねるために、巻取り箇所1.1~1.4には圧着ローラ5が対応配置されている。圧着ローラ5は、綾振り装置4と巻取りスピンドル6.1との間の領域に形成されている。このとき圧着ローラ5は、巻取り箇所1.1~1.4の全長にわたって延びている。糸2.1~2.4は、圧着ローラ5の周囲における部分巻掛け後に、ボビン8の表面に巻き重ねられる。
【0025】
機械フレーム10は、綾振り装置4、圧着ローラ5、および巻取りスピンドル6.1を収容しかつ固定するために役立つ。そのために巻取りスピンドル6.1は、ボビンタレット7において片持ち式に支持されており、このボビンタレット7は、機械フレーム10に回転可能に保持されている。ボビンタレット7は、巻取りスピンドル6.1に対して180°ずらされて配置された第2の巻取りスピンドル6.2を保持している。巻取りスピンドル6.1,6.2は、ボビンタレット7の回転によって交互に、巻取り領域と交換領域とに案内されることができ、これによって糸2.1~2.4は、巻取り箇所1.1~1.4において連続的にボビンに巻成されることができる。
図1において巻取りスピンドル6.1は巻取り領域に、かつ巻取りスピンドル6.2は交換領域に保持されている。巻取りスピンドル6.1,6.2のそれぞれの巻取りスピンドルは、別体の駆動装置(ここでは図示せず)を介して駆動される。
【0026】
巻取り箇所1.1~1.4に糸群2を収容しかつ分離するために、機械フレーム10の上側領域には複数のヘッド糸ガイド3.1~3.4が配置されている。このようにして、巻取り箇所1.1~1.4のそれぞれの巻取り箇所は、ヘッド糸ガイド3.1~3.4のうちの1つのヘッド糸ガイドに対応配置されている。これによってヘッド糸ガイド3.1~3.4は、それぞれの巻取り箇所1.1~1.4内への走入部を形成する。
【0027】
ヘッド糸ガイド3.1~3.4は、可動の保持体14に配置されており、この保持体14は、往復動を実施するための駆動手段に連結されている。そのために保持体14は、キャリッジガイド16に保持されていて、リニア駆動装置15によって作動位置と仕掛け位置との間において往復案内されることができる。
図1には、ヘッド糸ガイド3.1~3.4を備えた保持体14がその作動位置において示されている。
【0028】
ヘッド糸ガイド3.1~3.4は、本実施形態では、それぞれ自由回転可能に支持された変向ローラ13.1~13.4によって形成されている。変向ローラ13.1~13.4は、その周囲にそれぞれ1つの開放した糸走行溝20を有しており、これらの糸走行溝20内において、糸2.1~2.4のそれぞれ1つが、部分巻掛けされて案内されている。
【0029】
糸走路においてヘッド糸ガイド3.1~3.4の上流には、ゴデット11が配置されている。ゴデット11は、ゴデット保持体12に保持され、ここで図示されていない駆動装置に連結されている。ゴデット保持体12は、巻取り箇所1.1~1.4のそばで側部において、巻取りスピンドル6.1の片持ち式の端部に保持されている。このとき、ゴデット保持体12は、機械フレーム10に支持されていてよい。
【0030】
本発明に係る巻取り機の、
図1に示された実施形態は、糸群2が連続的にボビン8に巻成される作動状態において示されている。しかしながらプロセス開始時またはプロセス中断時には、糸群2を巻取り箇所1.1~1.4に挿通することが必要である。この工程を実施できるようにするために、機械フレーム10には保持体14の下に、補助ローラ17が自由回転可能に支持されて配置されている。補助ローラ17は、巻取り箇所1.1,1.2の間の領域において綾振り装置4の上に配置されている。補助ローラ17の上流には、供給領域に沈静ピン18が配置されている。補助ローラ17および沈静ピン18は、巻取り箇所1.1~1.4への仕掛けおよび分離を可能にすることを目的として、もっぱら糸群を収容するために働く。さらなる説明のために、以下においては追加的に
図2.1、
図2.2、
図3.1、および
図3.2を参照する。
【0031】
図2.1および
図2.2には、
図1に示された実施形態の側面図の一部が異なった作動状態において示されていて、かつ
図3.1および
図3.2には、
図2.1および
図2.2に示された図面が平面図で示されている。
【0032】
図2.1および
図3.1に示された作動状態では、糸群2は、サクションインジェクタ19によって案内されていて、これによってヘッド糸ガイド3.1~3.4内への分離および挿通を可能にすることができる。そのためにヘッド糸ガイド3.1~3.4を備えた保持体14は、走出された仕掛け位置へと案内される。ヘッド糸ガイド3.1~3.4を備えた保持体14が仕掛け位置において保持されるや否や、糸群2は、サクションインジェクタ19によってゴデット11に、かつ補助ローラ17の周囲に仕掛けられる。補助ローラ17は、ゴデット11と共に糸走行平面を形成し、この糸走行平面は、仕掛け位置から作動位置への保持体14の移動時に、ヘッド糸ガイド3.1~3.4によって貫通される。そのために補助ローラ17は、変向ローラ13.1~13.4にほぼ軸平行に、機械フレーム10に保持されている。このとき補助ローラ17の周囲におけるガイド溝17.1は、糸収束点を形成している。この状況は、特に
図3.1から明らかである。このようにして糸は、ゴデット11の周囲から放射状に補助ローラ17へと延びている。補助ローラ17は、設定された間隔をもって、変向ローラ13.1~13.4の下に配置されている。この間隔は、
図2.1および
図2.2において符号Aで示されている。これによってヘッド糸ガイド3.1~3.4の領域における糸群において、相互に確定された糸間隔が生ぜしめられる。
【0033】
特に
図3.1および
図3.2から明らかなように、保持体14はキャリッジガイド16において斜めの平面に沿って案内され、ヘッド糸ガイド3.1~3.4がその仕掛け位置において作動位置に対してずれを有するようになっている。このずれは、その大きさにおいて、ヘッド糸ガイド3.1~3.4の領域における糸2.1~2.4の糸間隔に等しく、その結果、仕掛け位置から作動位置への保持体14の移動によって、ヘッド糸ガイド3.1~3.4のそれぞれのヘッド糸ガイドは、糸2.1~2.4のうちの1つの糸を引き受ける。この状況は、
図2.2および
図3.2に示されている。
【0034】
巻取り箇所1.1~1.4への糸2.1~2.4の分離および挿通中、糸群2はサクションインジェクタ19によって案内される。このときサクションインジェクタ19は、オートマチックオペレータによって案内されても、または操作員によって案内されてもよい。好ましくは、サクションインジェクタ19はオートマチックオペレータによって案内され、このとき糸群は、サクションインジェクタ19によって連続的に屑容器に搬送される。
【0035】
巻取り箇所1.1~1.4への糸群2の選択後に、糸群は巻取りスピンドル6.1,6.2のうちの1つの巻取りスピンドルに、巻管9における捕捉および巻付けのために、ここでは図示されていない別の補助装置によって引き渡される。糸2.1~2.4は、いまや連続的にボビンに巻成することができる。