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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】放熱素子
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20220304BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20220304BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20220304BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220304BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220304BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220304BHJP
   H01M 10/659 20140101ALI20220304BHJP
【FI】
B60R16/04 Y
C09K5/06 Z
C09K5/06 M
C09K5/06 L
C09K5/14 E
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/651
H01M10/659
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020514755
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018074600
(87)【国際公開番号】W WO2019053059
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】102017216105.1
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514194886
【氏名又は名称】エスジーエル・カーボン・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケック
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ランガー
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0001440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0135984(US,A1)
【文献】特開平06-293099(JP,A)
【文献】特開2014-231885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
F28D20/00-20/02
H01M10/52-10/667
B60R16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止中の自動車、トラック又は電動アシスト自転車の冷却中においてLiイオン電池の温度を安定化するためのグラファイトとマイクロカプセル化相変化物質とを備える少なくとも一つの放熱素子の使用であって、前記マイクロカプセル化相変化物質が、冷却中のLiイオン電池の温度が安定化されるように選択されている、少なくとも一つの放熱素子の使用
【請求項2】
前記マイクロカプセル化相変化物質が、冷却中のLiイオン電池の温度が6℃に安定化されるように選択されている、請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項3】
前記グラファイトが、天然グラファイトと、人造グラファイトと、膨張グラファイトと、それらの混合物とから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項4】
前記マイクロカプセル化相変化物質の相変化物質が、糖アルコールと、パラフィンと、ワックスと、含水塩と、脂肪酸と、それらの混合物とから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項5】
前記マイクロカプセル化相変化物質が5mm以下のサイズを有することを特徴とする請求項に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項6】
前記少なくとも一つの放熱素子がプレート又は箔として形成されるか、又は、前記少なくとも一つの放熱素子が、マイクロカプセル化相変化物質を備える少なくとも一つの層が適用されたプレート又は箔として形成されることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項7】
前記少なくとも一つの放熱素子が、少なくとも一つのマイクロカプセル化相変化物質層が適用されたグラファイト箔又はグラファイトプレートとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項8】
グラファイトとマイクロカプセル化相変化物質とを備えるプレート又は箔に適用されるマイクロカプセル化相変化物質と追加的なバインダとを備える層中におけるマイクロカプセル化相変化物質の含量が10重量%から98重量%であることを特徴とする請求項6に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項9】
グラファイト箔又はグラファイトプレートに適用されるマイクロカプセル化相変化物質と追加的なバインダとを備える層中におけるマイクロカプセル化相変化物質の含量が10重量%から98重量%であることを特徴とする請求項7に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項10】
マイクロカプセル化相変化物質を備える少なくとも一つの層の厚さが5mm未満であることを特徴とする請求項6又は7に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項11】
マイクロカプセル化相変化物質PCMを備えるプレート又はグラファイトプレートが、1mmを超え5mmまでの厚さを有することを特徴とする請求項6又は7に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項12】
箔又はグラファイト箔が10μmから1mmの厚さを有することを特徴とする請求項6又は7に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項13】
150W/(m・K)を超える熱伝導率を有することを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つの放熱素子の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の使用のための放熱素子であって、該放熱素子がグラファイトとマイクロカプセル化相変化物質を備え、該放熱素子が、マイクロカプセル化相変化物質を備える少なくとも一つの層が適用されたプレート又は箔として形成されていることを特徴とする放熱素子。
【請求項15】
除冷中において、相変化物質の相転移の少なくとも一部が20℃から0℃の温度範囲で生じる、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用又は請求項14に記載の放熱素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱素子と、自動車やトラックや電動アシスト自転車のLiイオン電池の温度を制御するための放熱素子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やトラックや電動アシスト自転車のLiイオン電池では、放熱素子が用いられているが、冬等に生じる低温下では、始動前にLiイオン電池を予熱する一つ以上の加熱素子が常に必要とされるという問題がある。また、低温ではLiイオン電池のキャパシタンスが低下し、充電時間が長くなる。しかしながら、車内の温度を制御するためと、旅程自体のためとの両方にとって多量のエネルギーが必要とされるのは、まさに旅程の初めにおいてである。現状の放熱素子は、アルミニウムやグラファイト物質製であって、温度を維持することができず、結果として、構造全体と共に冷たくなる。一般論として、放熱素子を用いて冷却については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第2825611号明細書
【文献】独国特許出願公開第10003927号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】Amy L. Lytle, “Angstrom’s Method of Measuring Thermal Conductivity”、米国ウースター大学(The College of Wooster)、物理学科(Physics Department)、学位論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、Liイオン電池を設定温度で安定化させることができ、上記従来技術の欠点を解決することができるLiイオン電池用放熱素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、自動車、トラック又は電動アシスト自転車のLiイオン電池の温度を制御するためのグラファイト(黒鉛)とマイクロカプセル化相変化物質(PCM,phase‐change material)とを備える少なくとも一つの放熱素子の使用によって達成される。
【0007】
放熱素子はLiイオン電池のパウチセル同士の間に配置され、Liイオン電池の構造に応じて、一つ以上の放熱素子が使用される。
【0008】
有利には、グラファイトは、天然グラファイトと、人造グラファイトと、膨張グラファイトと、それらの混合物とから成る群から選択される。
【0009】
従来では、蠕虫状の構造を有する膨張グラファイトを生成するため、天然グラファイト等のグラファイトを硝酸や硫酸等のインターカレーション剤と混合し、例えば600℃から1200℃の高温で熱処理する(特許文献2)。
【0010】
膨張グラファイトは、天然グラファイトと比較して六角炭素層の面に垂直に膨張した、例えば80倍以上膨張したグラファイトである。膨張の結果として、膨張グラファイトは、顕著な展延性と良好な係合性を特徴とする。膨張グラファイトは箔の形状で使用され得て、好ましくは、0.7から1.8g/cmの密度を有する箔が使用される。この密度範囲の箔は150W/(m・K)から500W/(m・K)の熱伝導率を有する。熱伝導率はオングストローム法によって決定される(非特許文献1)。
【0011】
本発明に関して、相変化物質(PCM)とは、熱が供給されたり放出されたりする際に相転移する物質として理解される。これは、例えば、固相から液相への転移、又はその逆となり得る。PCMに対する熱供給又は放熱中においては、相転移点に達すると、物質が完全に変換するまで温度が一定となる。物質の温度変化を生じさせない相転移中に供給又は散逸される熱は潜熱と称される。
【0012】
有利には、PCMは、糖アルコールと、パラフィンと、ワックスと、含水塩と、脂肪酸とから成る群から選択され、好ましくは、パラフィンと、含水塩と、ワックスとから成る群から選択される。糖アルコールとしては、例えば、ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ネオペンチルグリコールや、これらの所望の混合物が使用され得る。パラフィンとしては、一般式C2n+2の飽和炭化水素が使用され得て、ここで、整数nは18から32の間であり得る。従って、この種のパラフィンのモル質量は1モル当たり275から500グラムの間である。含水塩としては、例えば、塩化カルシウム六水和物、塩化マグネシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、酢酸ナトリウム三水和物が使用され得る。脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸や、これらの所望の混合物が使用され得る。PCMの選択は、使用中の温度範囲に依存する。
【0013】
有利には、PCMの融点の範囲は、-20から130℃の間、好ましくは-10から100℃の間、特に好ましくは0から70℃の間である。相変化物質を用いる場合、-20℃未満や130℃超の融点範囲における温度安定化は、過度の費用と重量によってのみ得ることができるものである。また、このような温度になることはほとんどなく、利用可能な物質はその機能性をほとんど有さなくなる。これを防ぐために、-20℃から130℃の間の温度範囲が選択される。適切なPCMを選択することによって、Liイオン電池の温度が安定化され、例えば、夜間の冷え込みの間においてその温度を6℃に安定化することができる。
【0014】
徐冷の間において、PCMの相転移の少なくとも一部(好ましくは相転移全体)が20から0℃の温度範囲で生じると特に好ましいものとなる。これは熱量分析で求めることができるものであって、熱量計において放熱素子を規定の温度の大気に晒し、その温度を、0.1K/分で、(最高の融点を有する)PCMの融点より20K高い温度から、(最低の融点を有する)PCMの融点より20K低い温度まで連続的に低下させながら、放熱素子の温度を測定及び表示することによって求められる。相転移(液体から固体)の開始と終了を熱量計で簡単に求めることができる。この温度範囲で相転移するマイクロカプセル化相変化物質(PCM)は、Mikrotek Laboratories社(米国、郵便番号43459、オハイオ州デイトン)から入手可能であり、MPCM6とMPCM18との番号で供給されている。この種のPCMを用いると、駐車した車両の電池の更なる冷却を明け方や早朝の方に向けて特に効果的に遅らせることができる。従って、大抵の冬の朝において、PCMは、加熱素子を用いた能動的な熱供給による始動の前にLiイオン電池に供給しなければならないエネルギーをちょうど供給するものとなる。
【0015】
これは、停止中に電池が冷え過ぎないという利点を有し、Liイオン電池のキャパシタンスを高レベルに保ち、より多くのエネルギーが例えば車内を暖めるために利用可能となる。更に、相変化物質の使用の結果として高温に保たれている電池は、より急速に充電可能である。従って、窮極的には、本発明の結果として、車両の始動状態が、そのために外部から追加のエネルギーを供給する必要なく、丸一年間にわたる特に高い旅の快適性と高い充電促進性と長い車両走行距離と共に得られる。
【0016】
典型的な冬の日においては、車両を日中作動させなくても、太陽放射のみでPCMの少なくとも部分的な融解が生じるので、PCMがその後の夜間における熱バッファとしても機能することができる。
【0017】
本発明に従った特に好ましい使用は、自動車やトラックや電動アシスト自転車がかなり冷えてしまった場合、例えば-5℃から5℃の範囲内の温度に冷えてしまった場合にLiイオン電池を予熱するのに必要なエネルギーの削減をもたらす。
【0018】
マイクロカプセル化相変化物質(PCM)は、融点や凝固点の範囲が異なる複数種のPCMを備え得る。従って、徐冷中においては、液体から固体への相転移(凝固)が、各PCMについて異なる温度で生じる。好ましくは、この場合、少なくとも二つの相転移がそれぞれ少なくとも部分的に、上記20から0℃の温度範囲で生じる。特に好ましくは、少なくとも二つの相転移が20から0℃の温度範囲で完全に生じる。好ましくは、或るPCMが凝固し始める温度は、より低温で凝固する他のPCMが完全に凝固する温度よりも少なくとも8K高い。これもサーモグラムから簡単に読み取ることができるものである。
【0019】
異なる複数のPCMは好ましくは互いに空間的に分離されていて、例えば、異なるマイクロカプセル中に存在する。
【0020】
必ずしも全てのPCMがマイクロカプセル化されていないことも想定される。
【0021】
異なる融点範囲のPCMを備える実施形態は、より広範な多様な大気温度について車両の始動状態の所望の改善を達成する。このことが望まれるのは、冬の夜間に達する最低温度が夜毎に大きく異なり得るからである。
【0022】
本発明によると、マイクロカプセル化PCMは≦5mm(5mm以下)、好ましくは≦1mm(1mm以下)、特に好ましくは≦100μm(100μm以下)のサイズを有する。
【0023】
粒子のサイズが5mmを超えると、カプセル自体への入熱が大幅に低下して、カプセル内部のPCMが極めて緩やかにのみ融解する。これは、熱容量を完全に活用することができない場合が多いことを意味する。カプセルが小さ過ぎる場合には、PCMと不活性なカプセルシェルの挙動が望ましくないものとなり、熱容量に悪影響を与える。
【0024】
有利には、少なくとも一つの放熱素子は、グラファイトとマイクロカプセル化PCMとを備えるプレート又は箔として形成され、又は、グラファイトとマイクロカプセル化PCMを備えるプレート又は箔として形成され且つそのプレート又は箔にマイクロカプセル化PCMを備える少なくとも一つの層が適用される。
【0025】
有利には、少なくとも一つの放熱素子は、グラファイト箔又はグラファイトプレートとして形成され、それに適用されたマイクロカプセル化PCMの少なくとも一つの層を備える。
【0026】
Liイオン電池の温度を制御するために異なる複数の実施形態の放熱素子が所望の組み合わせで使用され得る。
【0027】
有利には、グラファイトとマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備えるプレート又は箔中におけるマイクロカプセル化PCM含量は、10重量%から98重量%まで、好ましくは20重量%から80重量%まで、特に好ましくは45重量%から70重量%までである。
【0028】
10重量%未満のマイクロカプセル化PCMの含量では、相変化によるLiイオン電池の温度の安定化は得られたとしても僅かである。98重量%を超えると、放熱素子中のグラファイト含有により得られる熱伝導性の効果が極めて低くなる。
【0029】
本発明によると、グラファイトとマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備えるプレート中におけるバインダ含量は、2から30重量%、好ましくは5から20重量%である。バインダ含有の結果として、複合材の強度を上昇させることができ、熱容量は僅かしか影響を受けない。好ましい場合には、熱容量は10%しか低下しない。
【0030】
本発明によると、バインダは、エポキシ樹脂(Araldite 2000(2014)等)と、フェノール樹脂と、シリコーン樹脂と、アクリル樹脂と、ゴム(例えば、Litex SX 1014)と、熱可塑性物質とから成る群から選択され得る。
【0031】
有利には、グラファイトとマイクロカプセル化PCMとを備えるプレート又は箔に適用されるマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備える層中におけるマイクロカプセル化PCM含量は、10から98重量%、好ましくは15から95重量%、特に好ましくは30から88重量%である。
【0032】
有利には、グラファイト箔又はグラファイトプレートに適用されるマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備える層中におけるマイクロカプセル化PCM含量は、10重量%から98重量%までである。
【0033】
上記層中における10重量%未満のマイクロカプセル化PCM含量では、相変化によるLiイオン電池の温度の安定化は得られたとしても僅かである。層中のマイクロカプセル化PCMの含量が98重量%を超えると、層の安定性を確保することができない。
【0034】
有利には、グラファイトとマイクロカプセル化PCMとを備えるプレート又は箔に適用されるマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備える層のバインダ含量は、1から40重量%、好ましくは2から30重量%、特に好ましくは5から20重量%である。
【0035】
有利には、グラファイト箔又はグラファイトプレートに適用されるマイクロカプセル化PCMと追加的なバインダとを備える層のバインダ含量は、1から40重量%、好ましくは2から30重量%、特に好ましくは5から20重量%である。
【0036】
1重量%未満のバインダでは、バインダ含量は、十分な強度にとって最早十分なものではなく、40重量%を超えるバインダでは、バインダ含量が多過ぎて、マイクロカプセルPCMによる層の熱容量が悪影響を受ける。
【0037】
プレート、箔又は層について上記した成分に加えて、分散剤が更に含まれ得て、その含量は0から5重量%の間である。分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)が使用され得る。
【0038】
本発明に係る層の特性が得られるように層の成分のあらゆる組み合わせが選択され得る。バインダの含有は固形の圧密化された層を保証し、一方で、高い融解エンタルピーが望まれる場合には、それに応じて、高いマイクロカプセル化PCM含量が選択される。
【0039】
要求される応用とプロファイルに応じて、プレートや箔や層の生成中に高熱伝導性添加物を更に混合する必要が生じ得る。こうした熱伝導性添加物は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、酸化グラフェン、又は六方晶窒化ホウ素から成るものであり得る。
【0040】
プレート、箔、グラファイトプレート、又はグラファイト箔に適用される層は、そのプレート、箔、グラファイトプレート、又はグラファイト箔の一つの面や複数の面に均等に適用され得る。
【0041】
有利には、マイクロカプセル化PCMを備える少なくとも一つの層の厚さは、<5mm(5mm未満)、好ましくは1から3mm、特に好ましくは100から500μmである。5mmを超える層厚では、その層厚が複合材の柔軟性に著しい悪影響を与える。更に、キャリア基板に対するコーティングの接着に関する問題が生じる。
【0042】
本発明によると、箔又はグラファイト箔の厚さは、10μmから1mm、好ましくは25から500μm、特に好ましくは25から100μmである。10μm未満では、グラファイト箔による顕著な効果が最早得られない。
【0043】
有利には、プレート又はグラファイトプレートの厚さは>1mm(1mm超)から5mmまで、好ましくは2から4mm、特に好ましくは2から3mmである。5mmを超えると、本発明に従った効果が得られない。
【0044】
本発明によると、少なくとも一つの放熱素子の熱伝導率は150W/(m・K)を超える。
【0045】
本発明の更なる主題は、グラファイトとマイクロカプセル化PCMとを備える放熱素子であり、その放熱素子はプレート又は箔として形成され、マイクロカプセル化PCMを備える少なくとも一つの層がそのプレート又は箔に適用されている。
【0046】
以下、単に例示目的として、有利な実施形態を用い、添付図面を参照して、本発明を説明する。本発明は図面によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】放熱素子の断面図である。
図2】放熱素子の断面図である。
図3】放熱素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、グラファイト箔(1)と、それに適用されたバインダ(2)を備えるマイクロカプセル化PCM(3)の層とから成る放熱素子を示す。
【0049】
図2は、グラファイト(4)とマイクロカプセル化PCM(3)とバインダ(2)とから成るプレート状の放熱素子を示す。
【0050】
図3は、グラファイト(4)とマイクロカプセル化PCM(3)とバインダ(2)とから成るプレートと、それに適用されたマイクロカプセル化PCM(3)とバインダ(2)とから成る層で構成された放熱素子を示す。
【0051】
以下、実施形態を用いて本発明を説明するが、実施形態は本発明を何ら制限するものではない。
【0052】
実施形態1:
150μmの厚さと1.3g/cmの密度を有するグラファイト箔(SGLカーボン社から市販されている)の片面に、マイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)とゴムバインダと分散剤の混合物をコーティングする。
【0053】
その混合物の組成は、24.5gの水、1.5gのLitex SX 1014、10.4gのマイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)、及び0.1gのポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0054】
その混合物を超音波浴で分散させ、ドクターブレード(ブレード高さ500μm)を用いてコーティングシステムに適用する。乾燥後の結果物はグラファイト箔上の200μmの薄層である。
【0055】
実施形態2:
150μmの厚さと1.3g/cmの密度を有するグラファイト箔(SGLカーボン社から市販されている)の両面に、マイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)と5μmグラファイト微粉末とゴムバインダと分散剤の混合物をコーティングする。
【0056】
その混合物の組成は、31.5gの水、2gのLitex SX 1014、20gのグラファイト粉末、10.4gのマイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)、及び0.1gのポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0057】
その混合物を超音波浴で分散させ、ドクターブレード(ブレード高さ600μm)を用いて55℃でコーティングシステムに適用する。乾燥後の結果物はグラファイト箔上の400μmの薄層である。
【0058】
実施形態3:
マイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)を備えるプレートを放熱素子として用いる。プレートの組成は以下のとおりである。135gのグラファイト粉末(50μm)、67.5gのグラファイト粉末(150μm)、810gのマイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)、337.5gのElastosil M4642A(バインダとして)及びElastosil M4642B(硬化剤として)。
【0059】
各混合物成分をアイリッヒミキサーに順次投入し、合計10分間にわたって混合する。
【0060】
次いで、その原料をプレス機で厚さ5mmのプレートにプレス加工する。
【0061】
実施形態4:
マイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)を備えるプレートを放熱素子として用いる。プレートの組成は以下のとおりである。135gのグラファイト粉末(50μm)、67.5gのグラファイト粉末(150μm)、810gのマイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)、337.5gのElastosil M4642A(バインダとして)及びElastosil M4642B(硬化剤として)。
【0062】
各混合物成分をアイリッヒミキサーに順次投入し、合計10分間にわたって混合し、厚さ5mmのプレートにプレス加工する。
【0063】
次いで、プレートの片面に、マイクロカプセル化PCM(BASF社のMIcronal 28)とゴムバインダと分散剤の混合物をコーティングする。
【0064】
その混合物の組成は、24.5gの水、1.5gのLitex SX 1014、10.4gのマイクロカプセル化PCM(BASF社のMicronal 28)、及び0.1gのポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0065】
その混合物を超音波浴で分散させ、ドクターブレード(ブレード高さ500μm)を用いてコーティングシステムに適用する。乾燥後の結果物は200μmの薄層である。
【符号の説明】
【0066】
1 グラファイト箔
2 バインダ
3 マイクロカプセル化PCM
4 グラファイト
5 放熱素子
図1
図2
図3