(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20220304BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2020531209
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025941
(87)【国際公開番号】W WO2020017280
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018135890
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】松下 徹也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博之
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166774(WO,A1)
【文献】特開2009-029182(JP,A)
【文献】特開2009-012661(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017007885(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第104228746(CN,A)
【文献】特開2013-082338(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、
当該乗員拘束装置は、
前記座席のシートバック内に収納されていて該座席に着座した乗員の両側方それぞれに膨張展開する一対のエアバッグと、
前記収納されている一対のエアバッグの膨張展開時に、当該エアバッグのそれぞれの前記乗員とは反対側の表面を通って展開するように、前記座席のシートバック内から前記シートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、
膨張展開時の上面視において、前記一対のエアバッグの前記乗員側の表面同士の間隔は前方に向かうにしたがって狭くなり、
膨張展開時の上面視において、前記一対のエアバッグの乗員側の表面は、前方に向かうにしたがって乗員に近づくように傾斜し、且つ、前記一対のエアバッグは、それぞれ、後方に向かうにしたがって先細りになるテーパ形状であり、前方に向かうにしたがって左右方向の幅が広がる形状を有し、
前記一対の張力布は、前記一対のエアバッグの膨張展開によって前記座席の側部に展開し、前記シートバックから前記シートクッションまで張り渡されて該一対のエアバッグそれぞれの前記乗員とは反対側の面を支持する
ことによって、前記一対のエアバッグが前記乗員に対して左右方向から付勢されるように構成されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記一対の張力布は、前記座席の表皮を開裂することにより該座席の側部に展開することを特徴とする請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
当該乗員拘束装置は、少なくとも前記座席の側部に配置された前記一対のエアバッグまたは前記一対の張力布を収容するケースを備え、
前記一対の張力布は、前記ケースから前記座席の側部に展開することを特徴とする請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、
当該乗員拘束装置は、
前記座席のシートバック内に収納されていて該座席に着座した乗員の両側方それぞれに膨張展開する一対のエアバッグと、
前記収納されている一対のエアバッグの膨張展開時に、当該エアバッグのそれぞれの前記乗員とは反対側の表面を通って展開するように、前記座席のシートバック内から前記シートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、
膨張展開時の上面視において、前記一対のエアバッグの前記乗員側の表面同士の間隔は前方に向かうにしたがって狭くなり、
前記一対の張力布は、前記一対のエアバッグの膨張展開によって前記座席の側部に展開し、前記シートバックから前記シートクッションまで張り渡されて該一対のエアバッグそれぞれの前記乗員とは反対側の面を支持し、
当該乗員拘束装置は、前記一対のエアバッグの前部に接続され該一対のエアバッグとそれぞれ連通していて前記乗員の前方で膨張展開する一対のサブバッグを備え、
前記一対のサブバッグは、膨張展開時に前記一対のエアバッグそれぞれによって閉じられ閉状態になる一対のアウタベントを有し、
前記乗員の頭部の進入によって前記一対のサブバッグが前方に向かって移動すると前記一対のアウタベントが開状態となることを特徴とす
る乗員拘束装置。
【請求項5】
前記一対のサブバッグは、前記一対のエアバッグよりも遅れて膨張展開することを特徴とする請求項
4に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記一対のサブバッグは、膨張展開時に前記一対のエアバッグよりも前方側に位置することを特徴とする請求項
4または5に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧で膨張展開して乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば特許文献1の乗員拘束装置では、座席の両側の側部に乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグが設けられている。
【0003】
特に特許文献1の乗員拘束装置では、エアバッグの膨張展開時に張力を与えられてエアバッグとシートクッションの両側面との間に広がる張力布を設けている。これにより、張力布によってエアバッグの移動を規制することができる。したがって、エアバッグによる乗員拘束性能を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乗員拘束装置によれば、乗員から離れる方向、特に左右方向へのエアバッグの移動を張力布によって好適に規制することができ、エアバッグによる乗員拘束性能が飛躍的に高まった。しかしながら、乗員拘束装置には、乗員拘束性能の向上が常に求められている。このため、発明者らは特許文献1の技術の更なる改良について検討した。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、エアバッグの膨張展開時に座席の側部に展開する張力布を備える構成において乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能な乗員拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる乗員拘束装置の代表的な構成は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、当該乗員拘束装置は、座席のシートバック内に収納されていて座席に着座した乗員の両側方それぞれに膨張展開する一対のエアバッグと、収納されている一対のエアバッグの膨張展開時に、当該エアバッグのそれぞれの乗員とは反対側の表面を通って展開するように、座席のシートバック内からシートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、膨張展開時の上面視において、一対のエアバッグの乗員側の表面同士の間隔は前方に向かうにしたがって狭くなり、一対の張力布は、一対のエアバッグの膨張展開によって座席の側部に展開し、シートバックからシートクッションまで張り渡されて一対のエアバッグそれぞれの乗員とは反対側の面を支持することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、膨張展開した一対のエアバッグが一対の張力布によって乗員に対して付勢される。これにより、エアバッグの乗員拘束性能を高めることができる。特に上記構成では、膨張展開時の上面視において、一対のエアバッグの乗員側の表面同士が前方に向かうにしたがって狭くなる。これにより、一対のエアバッグにおいて、前方に向かうにしたがって高い拘束力が得られる。以下、説明の便宜上、エアバッグの前後方向の長さの中心よりも前側を「エアバッグの前部」と称し、エアバッグの前後方向の長さの中心よりの後側を「エアバッグの後部」と称する。
【0009】
衝突時の衝撃が大きい場合、乗員にかかる荷重および乗員の前方への移動量が大きくなる。このため、乗員のエアバッグへの進入量が大きくなり、エアバッグにかかる荷重も大きくなる。エアバッグの前部では、乗員側の表面同士の間隔が狭くなっているため、拘束力が高い。したがって、大きい衝撃によって移動した乗員を強く拘束することができる。
【0010】
衝突時の衝撃が小さい場合、乗員にかかる荷重および乗員の前方への移動量は小さくなる。このため、乗員のエアバッグへの進入量は小さく、エアバッグにかかる荷重も小さい。エアバッグの後部では、乗員側の表面同士の間隔が前部より広くなっているため、拘束力も前部より低くなる。このため、乗員を緩く拘束することができる。したがって、乗員に過剰な負荷がかかることがなく、安全性を高めることが可能となる。
【0011】
上記一対の張力布は、座席の表皮を開裂することにより座席の側部に展開するとよい。または当該乗員拘束装置は、少なくとも座席の側部に配置された一対のエアバッグまたは一対の張力布を収容するケースを備え、一対の張力布は、ケースから座席の側部に展開するとよい。いずれの構成によっても、上述した効果を良好に得ることが可能である。
【0012】
膨張展開時の上面視において、上記一対のエアバッグの乗員側の表面は、前方に向かうにしたがって乗員に近づくように傾斜しているとよい。このように一対のエアバッグの乗員側の表面が前方に向かうにしたがって乗員に近づいていることにより、膨張展開時の上面視における一対のエアバッグの乗員側の表面同士を、確実に前方に向かうにしたがって狭くすることができる。
【0013】
膨張展開時の上面視において、上記一対のエアバッグは、それぞれ、後方に向かうにしたがって先細りになるテーパ形状であるとよい。これにより、一対のエアバッグは、膨張展開時に前方に向かうにしたがって左右方向の幅が広くなる。したがって、膨張展開時の上面視における一対のエアバッグの乗員側の表面同士の間隔を、確実に前方に向かうにしたがって狭くすることが可能となる。
【0014】
当該乗員拘束装置は、一対のエアバッグの前部に接続され一対のエアバッグとそれぞれ連通していて乗員の前方で膨張展開する一対のサブバッグを備えるとよい。これにより、一対のエアバッグによって乗員の胴部を拘束し、一対のサブバッグによって乗員の頭部を拘束することができる。したがって、乗員拘束性能を更に高めることが可能となる。
【0015】
特に、サブバッグは、曲率や、エアバッグとサブバッグとの連通孔であるインナベントの径を調整することにより、内圧ひいては硬さが調節される。したがって、質量が大きい乗員の胴部を強く拘束する必要があるエアバッグは内圧を高くし、乗員の頭部を拘束するサブバッグはエアバッグよりも内圧を低くすることが可能となる。これにより、乗員の胴部を好適に拘束しつつ、乗員の頭部の障害値を低下させることができる。
【0016】
上記一対のサブバッグは、膨張展開時に一対のエアバッグそれぞれによって閉じられ閉状態になる一対のアウタベントを有し、乗員の頭部の進入によって一対のサブバッグが前方に向かって移動すると一対のアウタベントが開状態となるとよい。これにより、膨張展開直後に乗員の前方への移動が生じる前は、エアバッグのアウタベントはサブバックによって閉状態となっている。したがって、膨張展開直後はエアバッグにおいて高い内圧が維持される。これにより、エアバッグにおいて乗員の胴部を強く拘束することが可能となる。
【0017】
その後、乗員が前方に移動すると、乗員の頭部の進入によってサブバッグが前方に移動する。すると、アウタベントが開状態となり、エアバッグ内のガスがエアバッグ外に流れる。これにより、エアバッグの内圧が低下する。したがって、乗員は、膨張展開直後は強く拘束され、その後は緩く拘束される。したがって、乗員への障害値が低下し、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0018】
上記一対のサブバッグは、一対のエアバッグよりも遅れて膨張展開するとよい。これにより、エアバッグによって膨張展開直後のエアバッグの内圧を高く維持した状態で乗員の胴部を好適に拘束した後に、サブバッグによって乗員の頭部を拘束することができる。
【0019】
上記一対のサブバッグは、膨張展開時に一対のエアバッグよりも前方側に位置するとよい。これにより、サブバッグによって乗員の頭部をより確実に拘束することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エアバッグの膨張展開時に座席の側部に展開する張力布を備える構成において乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能な乗員拘束装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態にかかる乗員拘束装置を例示する図である。
【
図2】
図1のエアバッグの膨張展開時の形状を例示する図である。
【
図3】第2実施形態にかかる乗員拘束装置を説明する図である。
【
図4】
図3のエアバッグおよびサブバッグの膨張展開時の形状を例示する図である。
【
図5】第3実施形態にかかる乗員拘束装置を説明する図である。
【
図6】
図5のエアバッグおよびサブバッグの膨張展開時の形状を例示する図である。
【
図7】本実施形態の乗員拘束装置の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
なお、本実施形態においては、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を前方、その反対方向を後方と称する。また乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を右方向、乗員の左側を左方向と称する。更に、乗員が正規の姿勢で着座した際に、乗員の頭部方向を上方、乗員の腰部方向を下方と称する。そして、以下の説明において用いる図面では、必要に応じて、上述した乗員を基準とした前後左右上下方向を、Fr、Rr、L、R、Up、Downと示す。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる乗員拘束装置100を例示する図である。理解を容易にするために、
図1では、座席110の内部に収納されている部材を仮想線にて示している。また
図1では、エアバッグが非膨張展開時の座席を例示している。
【0025】
本実施形態の乗員拘束装置100は、座席110に着座した乗員を拘束するための装置である。
図1に例示するように、本実施形態の乗員拘束装置100は、車両(全体は不図示)の座席110、一対のエアバッグ120a・120b、および一対の張力布である左側張力布130a・右側張力布130bを備える。座席110は、乗員の上半身を支持するシートバック112を備える。シートバック112の下方には乗員が着座するシートクッション114が設けられている。シートバックの上方には乗員の頭部を支持するヘッドレスト116が設けられている。
【0026】
エアバッグ120a・120b(サイドエアバッグ)は、
図1に例示するように座席110のシートバック112の左右両側の内部にそれぞれ収納されている。左右両側の一対のエアバッグ120a・120bは、車両の衝突時等に、座席110に着座した乗員の両側方に膨張展開する。
【0027】
左側張力布130a・右側張力布130bは、本実施形態では一対のエアバッグ120a・120bそれぞれに対して設けられる。左側張力布130a・右側張力布130bは、収納されている一対のエアバッグ120a・120bの膨張展開時に、それぞれの乗員とは反対側の表面を通って展開するように、座席110のシートバック112内からシートクッション114内にわたって収納されている。
【0028】
図2は、
図1のエアバッグ120a・120bの膨張展開時の形状を例示する図である。
図2(a)および(b)では、
図1に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120a・120bが膨張展開した状態を上方から観察した状態を例示している。
【0029】
図2(a)および(b)に例示するように、一対のエアバッグ120a・120bが膨張展開すると、一対の張力布(左側張力布130a・右側張力布130b)は、座席110の表皮を開裂することにより座席110の側部に展開し、シートバック112からシートクッション114まで張り渡される。これにより、一対のエアバッグ120a・120bそれぞれの乗員Pとは反対側の表面124が、一対の張力布それぞれによって支持される。これにより、張力布によってエアバッグ120a・120bが乗員Pに対して付勢される。したがって、エアバッグ120a・120bの乗員拘束性能を高めることが可能となる。
【0030】
図2(a)および(b)に例示するように、特に本実施形態の乗員拘束装置100では、膨張展開時の上面視において、一対のエアバッグ120a・120bの乗員側の表面122同士の間隔Dは前方に向かうにしたがって狭くなる。これにより、エアバッグ120a・120bの拘束力は、前方に向かうにしたがって強くなる。以下、説明の便宜上、エアバッグ120a・120bの前後方向の長さの中心Cよりも前側を「エアバッグの前部126」と称し、エアバッグの前後方向の長さの中心よりの後側を「エアバッグの後部128」と称する。
【0031】
衝突時の衝撃が大きい場合、乗員Pには大きな荷重がかかり、乗員Pの前方への移動量が大きくなる。このため、
図2(a)に例示するように、乗員Pのエアバッグ120a・120bへの進入量が大きくなり、エアバッグ120a・120bにかかる荷重も大きくなる。このとき、エアバッグの前部126は、乗員側の表面122同士の間隔Dが狭くなっているため、拘束力が高い。したがって、大きい衝撃によって移動した乗員Pを強く拘束することができる。
【0032】
衝突時の衝撃が小さい場合、乗員Pにかかる荷重は小さく、乗員Pの前方への移動量は小さくなる。このため、
図2(b)に例示するように、乗員Pのエアバッグ120a・120bへの進入量は小さく、エアバッグ120a・120bにかかる荷重も小さい。このとき、エアバッグの後部128は、乗員側の表面122同士の間隔Dが前部126より広くなっているため、拘束力は前部126よりは低い。したがって、乗員Pを緩く拘束することができ、過剰な負荷が乗員にかかることを防ぎ、安全性を高めることが可能となる。
【0033】
また本実施形態の乗員拘束装置100では、膨張展開時の上面視において、一対のエアバッグ120a・120bの乗員側の表面122は、前方に向かうにしたがって乗員に近づくように傾斜している。これにより、膨張展開時の上面視における一対のエアバッグ120a・120bの乗員側の表面122同士は、必然的に前方に向かうにしたがって狭くなる。したがって、上述した効果が確実に得られる。
【0034】
更に本実施形態の乗員拘束装置100では、膨張展開時の上面視において、一対のエアバッグ120a・120bは、それぞれ、後方に向かうにしたがって先細りになるテーパ形状である。これにより、一対のエアバッグ120a・120bは、膨張展開時に前方に向かうにしたがって左右方向の幅が広くなる。したがって、膨張展開時の上面視における一対のエアバッグ120a・120bの乗員側の表面122同士の間隔を、確実に前方に向かうにしたがって狭くすることが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態にかかる乗員拘束装置200を説明する図である。
図4は、
図3のエアバッグ120a・120bおよびサブバッグ220a・220bの膨張展開時の形状を例示する図である。
図4(a)および(b)では、
図3に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120a・120bおよびサブバッグ220a・220bが膨張展開した状態を上方から観察した状態を例示している。以下の実施形態では、先の実施形態の乗員拘束装置と共通する構成要素については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0036】
図3に例示するように、第2実施形態の乗員拘束装置200は、一対のエアバッグ120a・120bに加え、一対のサブバッグ220a・220bを更に備える。一対のサブバッグ220a・220bは、一対のエアバッグ120a・120bの前部126(
図4(a)参照)に接続され、一対のエアバッグ120a・120bそれぞれと連通している。
図4(a)に例示するように、一対のサブバッグ220a・220bは、一対のエアバッグ120a・120bが座席110の側部に展開すると、一対のエアバッグ120a・120bとともに座席110の側部に展開する。
【0037】
図4(a)に例示するように、本実施形態の乗員拘束装置200では、まず一対のエアバッグ120a・120bが膨張展開し、乗員Pの胴部P1が一対のエアバッグ120a・120bに拘束される。その後、
図4(b)に例示するように、一対のエアバッグ120a・120bを介してガスの供給を受けた一対のサブバッグ220a・220bが乗員Pの前方に膨張展開し、乗員Pの頭部P2がサブバッグ220a・220bに拘束される。これにより、乗員拘束装置200において更に高い乗員拘束性能が得られる。また膨張展開時に一対のサブバッグ220a・220bが一対のエアバッグ120a・120bよりも前方側に位置することにより、サブバッグ220a・220bによって乗員Pの頭部P2をより確実に拘束することが可能となる。
【0038】
上述したサブバッグ220a・220bは、曲率や、エアバッグ120a・120bとサブバッグ220a・220bとの連通孔であるインナベント222の径を調整することにより、内圧ひいては硬さを調節することができる。したがって、エアバッグ120a・120bに加えてサブバッグ220a・220bを有することにより、乗員Pの胴部P1を強く拘束する必要があるエアバッグ120a・120bは内圧を高くし、乗員Pの頭部P2を拘束するサブバッグ220a・220bはエアバッグ120a・120bよりも内圧を低くするというように、それぞれの内圧を別々に設定可能である。これにより、乗員Pの胴部P1を好適に拘束しつつ、乗員Pの頭部P2の障害値を低下させる効果が得られる。
【0039】
特に本実施形態では、一対のサブバッグ220a・220bは、一対のエアバッグ120a・120bよりも遅れて膨張展開する、いわゆるディレーチャンバである。これにより、膨張展開直後のエアバッグ120a・120bの内圧を高く維持した状態で乗員Pの胴部P1を好適に拘束した後に、サブバッグ220a・220bによって乗員Pの頭部P2を拘束することが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態では、一対のサブバッグ220a・220bをディレーチャンバとする構成を例示したが、これに限定するものではない。したがって、一対のサブバッグ220a・220bを一対のエアバッグ120a・120bとほぼ同時に膨張展開する構成とすることも可能である。
【0041】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態にかかる乗員拘束装置を説明する図である。
図6は、
図5のエアバッグ120a・120bおよびサブバッグ220a・220bの膨張展開時の形状を例示する図である。
図5では、エアバッグ120bの膨張展開時に座席に着座している乗員Pを側方から観察した状態を例示している。
図6(a)および(b)では、
図5に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120a・120bが膨張展開した状態を上方から観察した状態を例示している。なお、一対のエアバッグ120a・120bは左右対称であるため、
図5では、右側のエアバッグ120bを例示している。
【0042】
図6(a)および(b)に例示するように、第3実施形態の乗員拘束装置300においても、一対のエアバッグ120a・120bに加えて一対のサブバッグが設けられる。第3実施形態の乗員拘束装置300では、
図5に例示するように、サブバッグ220bは、エアバッグ120bの前部のうち、乗員側の表面122(
図6(a)および(b)参照)に接続される。このとき、サブバッグ220bは、その周縁の全部ではなく一部においてエアバッグに縫いつけられている。サブバッグ220bは、連通孔であるインナベント222によって一対のサブバッグ220a・220bと連通していて、一対のエアバッグ120a・120bを介してガスの供給を受け、一対のエアバッグ120a・120bより遅れて膨張展開する。
【0043】
また
図5に例示するように、サブバッグ220bには、外部と連通するアウタベント302が形成されている。本実施形態の特徴として、
図6(a)に例示するように、膨張展開直後に乗員Pの前方への移動が生じる前には、アウタベント302は、一対のエアバッグ120a・120bによって覆われて閉じられていることにより閉状態となっている。
【0044】
その後、乗員Pの前方への移動が生じ、乗員Pの頭部P2が一対のサブバッグ220a・220bに進入すると、
図6(b)に例示するように、一対のサブバッグ220a・220bが乗員Pの頭部P2とともに移動する。これにより、アウタベント302が露出して開状態となる。
【0045】
上記構成によれば、アウタベント302が閉状態となっていることにより、膨張展開直後のエアバッグ120a・120bでは高い内圧が維持される。これにより、エアバッグ120a・120bにおいて乗員Pの胴部P1を強く拘束することが可能となる。そして、乗員Pの頭部P2の進入によってサブバッグ220a・220bが前方に移動してアウタベント302が開状態となると、エアバッグ120a・120b内のガスがサブバッグ220a・220bのアウタベント302を介して外に流れ、エアバッグ120a・120bの内圧が低下する。これにより、乗員Pは、膨張展開直後は強く拘束され、その後は緩く拘束される。したがって、乗員Pへの障害値が低下し、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0046】
なお、
図5では、右側張力布130bがシートクッション114の上面から座席110の外部に展開する構成を例示しているが、これに限定するものではない。例えば、右側張力布130bがシートクッション114の側面や、側面と上面との間の境界近傍から座席110の外部に展開する構成としても同様の効果を得ることが可能である。
【0047】
図7は、本実施形態の乗員拘束装置の他の例を説明する図である。
図7に例示する乗員拘束装置400は、座席110の側部に配置されるケース118a・118bを備える。ケース118aは、一対のエアバッグ120a・120bを収容するケースであり、ケース118bは、一対の張力布(左側張力布130a・右側張力布130b)を収容するケースである。
【0048】
図7に例示する乗員拘束装置400では、エアバッグ120a・120bの膨張展開時に、一対の張力布(左側張力布130a・右側張力布130b)は、ケース118bから座席110の側部に展開する。このような構成によっても、上述した乗員拘束装置100と同様の効果を得ることができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0050】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
P1…胴部、P2…頭部、100…乗員拘束装置、110…座席、112…シートバック、114…シートクッション、116…ヘッドレスト、120a…エアバッグ、120b…エアバッグ、122…乗員側の表面、124…反対側の表面、126…前部、128…後部、130a…左側張力布、130b…右側張力布、200…乗員拘束装置、220a…サブバッグ、220b…サブバッグ、300…乗員拘束装置、302…アウタベント、C…中心、D…間隔、P…乗員