(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電気機械を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20220304BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20220304BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2020536803
(86)(22)【出願日】2018-12-31
(86)【国際出願番号】 US2018068110
(87)【国際公開番号】W WO2019133955
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-28
(32)【優先日】2017-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チェリフ グール
(72)【発明者】
【氏名】ダレン トレメリング
(72)【発明者】
【氏名】シェン ヂォン
(72)【発明者】
【氏名】パラグ ウパディアイ
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070037(JP,A)
【文献】特開2016-178784(JP,A)
【文献】特開2015-089305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0049663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械を製造するための方法であって、
(a)複数の回転子層を積み重ねて軸線方向の回転子セグメントを形成することであって、前記回転子セグメントが、少なくとも2つの層で形成されており、各回転子層が、内部に複数の曲線状スロットを有しており、前記曲線状スロットが、前記回転子セグメント内に複数の回転子極を形成しており、各極が、前記曲線状スロットから形成された複数の曲線状通路を有している、ことと、
(b)前記回転子セグメントを回転させて前記複数の極のうちの第1の極を整列位置に配置することと、
(c)前記第1の極の前記曲線状通路内に溶融状態のポリマーボンド永久磁石材料を射出することであって、前記ポリマーボンド永久磁石材料が、ポリマーマトリクス内に懸濁された磁性粒子を含む、ことと、
(d)前記ポリマーボンド永久磁石材料を固化させる前に、前記第1の極を所望の磁場に曝して前記磁性粒子を所望の配向に整列させることと、
(e)前記ポリマーボンド永久磁石材料を固化させて前記第1の極の前記曲線状通路内に永久磁石を形成することと、
(f)前記第1の極に対して(e)を実施した後に、前記複数の極のうちの残りの各極に対して(b)、(c)、(d)、(e)を実施することと、
を含む、方法。
【請求項2】
(a)~(f)を繰り返して少なくとも2つの回転子セグメントを形成することと、前記少なくとも2つの回転子セグメントを組み合わせて前記電気機械用の回転子を形成することと、をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の回転子セグメントが、第2の回転子セグメントに対して回転方向でずらされている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの層が、別の層に対して回転方向でずらされている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記所望の磁場が、少なくとも1つの永久磁石によって発生する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーマトリクスが、ナイロン、ポリプロピレン、およびポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記磁性粒子が、NdFeB、Sm-Fe-N、およびフェライト粉末のうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記電気機械が、永久磁石支援同期リラクタンスモータおよび/または発電機である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子が、異方性磁性粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
(c)が(d)を実施する前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーボンド永久磁石材料が固化するまで、前記所望の磁場に曝されている間、前記第1の極を前記整列位置に維持することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
電気機械用の回転子を製造するための方法であって、
マンドレルに複数の回転子層を積み重ねて、前記マンドレルに対して平行な軸線方向に延在する回転子セグメントを作製することであって、前記マンドレルが、前記回転子層を互いに対して所望の回転方向位置に整列させるように構成されており、前記層が、内部に複数の開口部を有しており、前記積み重ねられた回転子層が、回転子セグメントを形成しており、前記複数の開口部が、前記回転子セグメントを通って延在する複数の通路を形成しており、前記回転子セグメントが、複数の極を有している、ことと、
内部に永久磁石を形成するための1つの極を選択することと、
前記極に溶融状態のポリマーボンド永久磁石材料を射出することであって、前記ポリマーボンド永久磁石材料が、ポリマーマトリクス内に懸濁された磁性粒子を含む、ことと、
所望の磁場を使用して、前記ポリマーマトリクス内の前記磁性粒子を所望の配向に整列させることと、
前記ポリマーボンド永久磁石材料を固化させて固体の永久磁石を形成することと、
前記固化させた後に、前記複数の極の各極に対して、前記選択、前記射出、前記整列、および前記固化を繰り返すことと、
を含む、方法。
【請求項13】
第1の回転子セグメントが、第2の回転子セグメントに対して回転方向でずらされている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの層が、別の層に対して回転方向でずらされている、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記所望の磁場が、少なくとも1つの永久磁石によって発生する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーマトリクスが、ナイロン、ポリプロピレン、およびポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含み、前記磁性粒子が異方性であり、前記磁性粒子が、NdFeB、Sm-Fe-N、およびフェライト粉末のうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記マンドレルにキーが配置されており、前記回転子層のそれぞれが、前記キーと係合するように構成された整列スロットを有しており、各回転子層の前記整列スロットを前記キーと係合させることをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記マンドレルが、前記キーを保持するように構成されたスロットを有しており、前記スロットおよび前記キーが、前記各回転子層間のずれを制御するように構成されており、前記スロットおよび前記キーを使用して前記各回転子層間のずれを制御することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記電気機械が、永久磁石支援同期リラクタンスモータおよび/または発電機である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
少なくとも2つの回転子セグメントを形成することと、前記少なくとも2つの回転子セグメントを組み合わせて前記電気機械用の前記回転子を形成することと、をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
電気機械を製造するための方法であって、
(a)複数の回転子層を積み重ねて軸線方向の回転子セグメントを形成することであって、前記回転子セグメントが、少なくとも2つの層で形成されており、各回転子層が、内部に複数の曲線状スロットを有しており、前記曲線状スロットが、前記回転子セグメント内に複数の回転子極を形成しており、各極が、前記曲線状スロットから形成された複数の曲線状通路を有している、ことと、
(b)前記回転子セグメントを回転させて前記複数の極のうちの第1の極を整列位置に配置することと、
(c)前記第1の極の前記曲線状通路にポリマーボンド永久磁石材料を充填することであって、前記ポリマーボンド永久磁石材料が、ポリマーマトリクス内に懸濁された磁性粒子を含む、ことと、
(d)前記ポリマーボンド永久磁石材料を固化させる前に、前記第1の極を所望の磁場に曝して前記磁性粒子を所望の配向に整列させることと、
(e)前記ポリマーボンド永久磁石材料を固化させて前記第1の極の前記曲線状通路内に永久磁石を形成することと、
(f)前記第1の極に対して(e)を実施した後に、前記複数の極のうちの残りの各極に対して(b)、(c)、(d)、(e)を実施することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に電気機械に関し、より詳細には、電気機械を製造するための方法に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの電気機械、例えば、永久磁石支援同期リラクタンス機械などの永久磁石を含む電気機械は、依然として重要な分野である。いくつかの既存システムには、特定の用途に対して様々な短所、欠点、および不利がある。例えば、いくつかの電気機械では、永久磁石の最適な磁気整列が達成されていない。したがって、この技術分野では、更なる貢献の必要性が残存している。
【0003】
本明細書における説明は、添付の図面を参照しており、図面では、いくつかの図を通じて同様の参照番号は同様の部分を指している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明の実施形態による、電気機械の非限定的な例のいくつかの態様の概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、回転子セグメントの非限定的な例のいくつかの態様を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、回転子層を積み重ねかつ整列させて回転子セグメントを作製するためのマンドレルの非限定的な例のいくつかの態様を示す図である。
【
図4】4A,4Bは、本発明の実施形態による、層を整列させるためのキーの側面図および上面図のいくつかの態様を示す図である。
【
図5】PBM(ポリマーボンド永久磁石)材料を回転子セグメントに射出成形し、永久磁石を作製するPBMを固化させる前にPBM内の磁性粒子または磁性粉末を整列させるための金型の非限定的な例のいくつかの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の原理の理解を促進する目的のために、図面に示されている実施形態がここで参照され、それを説明するために特定の言語が使用される。それにもかかわらず、それによって本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるであろう。説明される実施形態における任意の変更および更なる修正、ならびに本明細書に説明される本発明の原理の更なる適用は、本発明が関連する当業者が通常行い得るように企図されている。
【0006】
図面、特に
図1を参照すると、本発明の実施形態による、電気機械10の非限定的な例のいくつかの態様が概略的に示されている。一形態では、電気機械10は、三相機械である。他の実施形態では、電気機械10は、単相機械であってもよく、または任意の数の相を有していてもよい。一形態では、電気機械10は、永久磁石支援同期リラクタンスモータである。他の実施形態では、電気機械10は、モータおよび/または発電機であってもよく、永久磁石を含む任意のタイプのモータ、発電機、またはモータ/発電機であってもよい。様々な実施形態では、電気機械10は、半径方向磁束機械、軸線方向磁束機械、または三次元(3D)磁束経路を有する機械であってよい。電気機械10は、軸12、永久磁石18を備える極16を有する回転子14、固定子巻線22を有する固定子20、ハウジング24、および軸受26を備えている。軸12および回転子14は、軸線方向30を規定する回転軸線28を中心として回転する。
【0007】
軸12は、回転子14を支持し、回転子14からの半径方向荷重および軸線方向またはスラスト荷重に対応するように構成されている。一形態では、軸12は、電気機械10からの機械的動力を電気機械10の出力として伝達するように動作可能である。他の実施形態では、軸12は、機械的動力を電気機械10にかつ/または電気機械10から伝達するように動作可能であってよい。軸12は、軸受26によって軸線方向および半径方向に位置決めされる。軸12および軸受26は、回転軸線28および対応する軸線方向30を規定する。
【0008】
回転子14および固定子20は、互いに磁気的に連通している。回転子14/極16および固定子20のそれぞれは、磁束を互いに近づく方向にかつ互いに離れる方向に導くように動作可能な構造を有している。いくつかの実施形態では、回転子14は、永久磁石18と併せて、他の動作可能な磁束源、例えば、バスバー、巻線、またはその両方を備えていてもよい。
【0009】
固定子巻線22は、固定子20の通路32内に配置される。一形態では、固定子巻線22は銅導体である。他の実施形態では、銅に加えてまたは銅の代わりに、アルミニウムおよび/または他の導体材料を使用してもよい。巻線22は、極16との磁気連通のために構成される。一形態では、通路32は直線状であり、軸線方向30に固定子20の長さ全体にわたって延在する。他の実施形態では、通路32は傾けられていてもよく、半径方向の通路であってもよく、または固定子20の全体もしくは一部を通って軸線方向、半径方向、および円周方向のうちの任意の2つ以上に延在する中心線を有する通路であってもよい。いくつかの実施形態では、固定子20は、通路32に加えて、他の通路、例えば冷却通路または他の通路を有していてもよい。いくつかの実施形態では、通路32はまた、そこを通る冷却媒体の流れを可能にするように構成されてもよい。
【0010】
一形態では、軸受26は、ハウジング24の端部プレート34に取り付けられて支持される。いくつかの実施形態では、一方または両方の端部プレート34は、ハウジング24と一体化されていてもよい。いくつかの実施形態では、軸受26は、1つ以上の他の構造および/またはハウジング24の一体的な特徴を介して、ハウジング24に取り付けられて結合されていてもよい。軸受26は、軸12および回転子14の軸線方向または方向30のスラスト荷重に対応し、かつ軸12および回転子14の回転軸線28に対して垂直な半径方向の荷重に対応するように構成されている。ハウジング24は、固定子20を取り囲み、固定子20に関連する荷重、例えば、固定子20と回転子14との間の磁気的相互作用によって発生する荷重に対応するように構成されている。電気機械10は、固定子巻線22に流れる電流を制御するように動作可能な駆動装置36を含む。一形態では、駆動装置36は、ハウジング24に取り付けられる。他の実施形態では、駆動装置36は、別の位置に配置されてもよい。
【0011】
一形態では、永久磁石18は、ポリマーボンド永久磁石(PBM)である。他の実施形態では、他のタイプの磁石または磁性材料を使用してもよい。一形態では、永久磁石18は、ポリマー/エポキシ樹脂マトリクスを使用して、磁性粉末、例えば、粉末形態の磁性粒子を結合する。他の実施形態では、他のマトリクス材料を使用してもよい。PBMの磁気特性は、磁性粉末または磁性粒子、その含有量、およびマトリクスとの相互作用によって決定される。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーが射出成形されて、永久磁石18が形成されてもよい。例えば、一形態では、PBMは、回転子14の空洞、例えば、回転子の空洞または通路に直接射出されて、永久磁石18を形成する。このプロセスにより、磁石の焼結およびその後の組み立てプロセスが不要になり、いくつかの実施形態では、製造コストおよびリードタイムが低減される。また、PBMは、ユーザの要求に応じて調整することができる。磁性粉末または磁性粒子の選択には、Nd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)、Sm-Fe-N(サマリウム-鉄-窒素)、フェライト粉末、およびそれらの混合物を含んでもよい。他の実施形態では、他の磁性粉末または磁性粒子材料が使用されてもよい。一形態では、ポリマーマトリクスは、ナイロン、ポリプロピレン、および/またはポリフェニレンスルフィドであってもよく、またはそれらを含んでもよい。他の実施形態では、他のポリマーマトリクス材料が使用されてもよい。
【0012】
一形態では、PBMは、回転子の空洞または通路(通路48、以下で説明されて
図2に示されている)内に直接射出されて、永久磁石18を形成する。他の実施形態では、他の技術を使用して、回転子の空洞または通路の内部に永久磁石18が形成されてもよい。例えば、空洞に永久磁石材料が充填される圧縮成形が使用されてもよい。永久磁石材料はその後、(以下で説明する)飽和および/または整列後に、例えば硬化によって固化されて、永久磁石18を形成する。一形態では、回転子14は、磁化器に配置されて磁石の飽和を達成する。一形態では、永久磁石18を形成するために使用される磁性粉末または磁性粒子は異方性である。一形態では、例えば、永久磁石18から所望の磁場配向を達成するために、磁性粉末または磁性粒子を整列させる。整列は、PBM溶融物が低粘度を呈し、整列の影響を受けやすいとき、例えばPBM材料が溶融しているときに、所望の方向に所望の磁場を印加することによって実施される。一形態では、各極16は、一度に1つずつ磁化される。例えば、第1の極16にPBMが射出されて、第1の極16を整列させ、引き続き、第2の極16にPBMが射出されて、第2の極16を整列させ、最終的には、全ての極に射出が行われ、全ての極を整列させる。いくつかの実施形態では、同時に2つ以上の極16にPBMを射出してもよいが、一度には1つの極16のみを整列させることができる。他の実施形態では、2つ以上の極16、例えば、互いに離間した極16に同時に射出が行われ、かつ/または2つ以上の極16を整列させてもよい。一形態では、整列磁石、すなわち、磁性粒子または磁性粉末を整列させる所望の磁場を発生させる磁石は、永久磁石である。他の実施形態では、整列磁石はまた、電磁石を含んでもよく、または代わりに電磁石であってもよい。
【0013】
極16を上述の方法で整列させることによって、例えば、同時に1つ(およびいくつかの実施形態では、2つ以上の選択された非隣接の極)を整列させることのみによって、整列磁場にわたってより多くの制御を得ることができる。例えば、全ての極または隣接する極を同時に整列させるスキームでは、1つの極を整列させるために使用される1組の整列磁石によって発生する磁場と、隣接する極を整列させるために使用される隣接する1組の整列磁石によって発生する磁場との間に、望ましくない干渉を経験する場合がある。本発明の実施形態では、整列磁石のアレイにより、ホールバッハアレイよりも効果的な磁場集中が可能になる。したがって、本発明の実施形態では、極16は、全ての極または隣接する極を同時に整列させた場合よりも、所望の磁場特性を達成することができる。また、本発明のいくつかの実施形態、例えば、一度に1つの極16のみに射出を行う実施形態により、射出されるPBM材料をいつでも低減することができ、それによって、より小さな射出成形機の使用が可能になる。
【0014】
図2を参照すると、本発明の実施形態による、軸線方向の回転子セグメント40の非限定的な例のいくつかの態様が示されている。一形態では、回転子14は、複数の回転子セグメント40で形成されている。
図1に示す例では、そのような3つの軸線方向の回転子セグメントが使用されている。任意の特定の回転子14における回転子セグメント40の数は、用途の必要性に応じて変化し得る。図示された例では、極16の数は4つである。任意の特定の回転子14における極16の数は、用途の必要性に応じて変化し得る。
【0015】
各回転子セグメント40は、軸線方向30に長さ42を有している。回転子セグメント40は、複数の回転子層44で形成されている。一形態では、回転子層44が互いに積み重ねられて、軸線方向の各回転子セグメント40を形成する。各回転子セグメント40は、少なくとも2つの層44で形成されている。長さ42は、例えば、(例えば、回転子セグメント40を形成するために使用し得る層44の最大数を決定する)永久磁石18を射出するために使用される金型キャビティの深さによって、また、いくつかの実施形態では、(例えば、全ての層を、整列磁石によって発生する整列磁場の所望の部分内に保持することが望ましいため)PBM磁性材料を整列させるために金型で使用される整列磁石の高さに基づいて、決定することができる。いくつかの実施形態では、金型にフィットし得る層44の最大数を変更し、したがって回転子セグメント40の長さを変更するために、金属インサートまたはスペーサを、例えば、回転子セグメント40の下方の金型キャビティ内に配置してもよい。
【0016】
各回転子層44は、内部に複数の開口部またはスロット46、例えば曲線状スロットを有しているが、他の実施形態では、他のスロット形状または構成を使用してもよい。スロット46は、回転子セグメント40内に複数の回転子極16を形成し、その各極16は、スロット46から形成された複数の通路48を有している。通路48は、回転子セグメント40の一方の端部から、反対側の端部まで延在する。
図2の描写では、1つの極16の通路48には、永久磁石18を形成するために、PBMが射出成形されているが、他の3つの極16には、スロット46および通路48の位置を明確にするために、まだ射出成形されていない。
【0017】
回転子層44は、それらがマンドレルにおける所望の回転位置に配置され、かつ回転子セグメント40の所望のスタック長さ42に積み重ねられることができるように、キー溝でインデックス付けされている。各回転子層44は、回転子層44を他の回転子層44と整列させるためのキー溝50を有している。いくつかの実施形態では、特定の回転子セグメント40内の各回転子層44は、同じ回転子セグメント40内の他の各回転子層44と整列する。他の実施形態では、回転子層44は、同じ回転子セグメント40内の他の回転子層44に対してずらされていてもよく、すなわち回転方向でずらされていてもよい。いくつかの実施形態では、特定の回転子14において、全ての回転子セグメント40を整列させてよいが、他の実施形態では、1つ以上の回転子セグメント40は、1つ以上の他の回転子セグメント40に対してずらされていてもよく、すなわち回転方向でずらされていてもよい。
【0018】
図3を参照すると、本発明の実施形態による、回転子層44を積み重ねて回転子セグメント40を達成または作製するためのマンドレル52の非限定的な例のいくつかの態様が示されている。回転子層44はマンドレル52に積み重ねられ、回転子層44の軸線方向の動きを制限するストップとして機能する肩部54によって、マンドレル52に軸線方向で位置決めされる。所望の量の回転子層44がマンドレル52に積み重ねられて、マンドレル52に対して平行な軸線方向28に延在する回転子セグメント40が作製される。マンドレル52は、キー58を保持するためのキー溝56を有しており、キーの側面図および上面図がそれぞれ、
図4Aおよび
図4Bに示されている。
【0019】
マンドレル52は、例えば、マンドレル52のキー溝56と回転子層44のキー溝50との両方に係合するキー58を使用して、回転子層44を互いに対して所望の回転方向位置で整列させるかまたはずらすように構成されている。他の実施形態では、回転子層44は、回転子層44を整列させるためにマンドレル52のキー溝56と係合するように構成された1つ以上の突起を有していてもよい。さらに他の実施形態では、マンドレル52は、回転子層44を整列させるために回転子層44内のキー溝50に係合するように構成された1つ以上の突起を有していてもよい。
【0020】
図示された実施形態では、キー溝56は直線状で、かつマンドレル52に対して平行であり、したがって、キー58と併せて、回転子層44間のずれなしに、回転子層44を互いに平行に整列させる。他の実施形態では、キー溝56およびキー58は、螺旋構成要素を有していてもよく、回転子セグメント40内の各回転子層44間にずれを提供する。
【0021】
図示された実施形態では、キー溝56は、キー58の平坦な底部60と係合するように構成された平坦な底部を有している。キー56は、回転子層44の卵形または楕円形のキー溝50と係合するように構成された卵形または楕円形の上部62を有している。キー溝50、キー溝56、およびキー58の幾何学的形状は、用途の必要性に応じて変化し得る。
【0022】
マンドレル52は、マンドレル52の底部68に回転位置決め機構64を備えている。図示された実施形態では、回転位置決め機構64は平坦である。他の実施形態では、回転位置決め機構64は、マンドレル52に対して回転位置決めを提供するために使用し得るキーもしくはキー溝、または任意の幾何学的特徴としてもよい。回転位置決め機構64は、極16を、PBM内の磁性粒子を整列させるための整列磁石および所望の磁場と回転方向で整列させるために使用される。
【0023】
回転子セグメント40の組み立て中、回転子層44は、回転子層44の中心にある内部にマンドレル52を受け入れる開口部66(
図2)を使用してマンドレル52上に積み重ねられる。回転子層44は、マンドレル52の上部70とは反対側の、マンドレル52の底部68に取り付けられる。キー58ならびにキー溝50および56は、回転子層44を整列させる。第1の回転子層44は、マンドレル52の肩部54に当接し、その後、取り付けられた回転子層44は、事前に取り付けられた回転子層44に当接する。回転子層44のスタック、すなわち、回転子セグメント40のスタックの長さ42(
図2)は、用途の必要性に応じて変化し得る。回転子14を形成するために使用される回転子セグメント40の数は、用途の必要性に応じて変化し得る。回転子14は、同じまたは異なる長さ42を有する回転子セグメント40で形成されてよい。
【0024】
図5を参照すると、回転子セグメント44の通路48内にPBM材料を射出成形し、かつ永久磁石18を作製するPBM材料の固化前にPBM材料を整列させるための、金型システム72の非限定的な例のいくつかの態様が示されている。回転子セグメント40は、底部金型部74内に挿入され、極16のうちの1つが整列磁石78に対して整列位置76に配置されるように回転される。整列位置は、マンドレル52の底部68の回転位置決め機構64が、底部金型部74に設けられた合致する回転機構(図示せず)と係合することによって達成することができる。次いで、上部金型部80が底部金型部74上の所定の位置に固定され、PBMが、整列位置にある極16の通路48内に射出成形される。いくつかの実施形態では、PBMは、極16を整列位置76に配置する前に、通路内に射出成形されてもよい。
【0025】
PBM、例えば、内部に磁性粒子が懸濁されたポリマーマトリクスで形成されたポリマーボンド永久磁石材料は、整列磁石78との整列位置76にある極16用のスロットまたは開口部46によって形成された通路48内に射出される。PBMが溶融されていて、整列位置76にある間に、極16は、整列磁石78によって発生する所望の磁場に曝されて、ポリマーボンド永久磁石材料を固化させる前に、磁性粒子を所望の配向に整列させる。次に、PBMは、例えば冷却によって固化されて、整列位置76における極の通路48内に永久磁石18を形成する。整列された極16は、磁性粒子の整列が保持されるように、PBMが十分に固化するまで、整列位置に維持または保持される。次いで、このプロセスが、回転子14の残りの各極16に対して繰り返される。このプロセスが複数回繰り返されて、組み合わされて所望の長さの回転子14を構成し得る複数の回転子セグメント40を作製することができる。
【0026】
本発明の実施形態では、各極に個別に射出が行われ、各極を整列させる。例えば、いくつかの実施形態では、他の極に射出を行い、各極を整列させる前に、1つの極に射出が行われ、1つの極を整列させる。これにより、金型および射出成形機をより小さくすることが可能になる。加えて、金型内部の磁力を低減し、取り扱いを容易にすることができる。また、いくつかの実施形態では、ランナーレスシステムが使用される。いくつかの実施形態では、ゲートは、1つの極、例えば、射出が行われる極の通路48の真上または直上に配置され、使用されるPBM材料の量を低減し、溶融温度の損失を低減する。溶融温度の損失を低減することにより、金型への充填が容易になり、PBM溶融物の粘度が低いときに磁石を整列させる時間をより長くすることが可能になる。他の極、例えば隣接する極の通路48にPBMが流れ込むのを防ぐ2つの壁によって、他の極は、溶融材料から分離されている。金型のA側は、ゲートと金型キャビティとの間のスペースからの過剰なPBMを受容するように設計されている。A側に対して平行な金型キャビティの壁は、A側における過剰なPBMの形状のネガとして設計でき、スタックの簡単な組み立てを可能にする。
【0027】
本発明の実施形態は、電気機械を製造するための方法を含み、この方法は、(a)複数の回転子層を積み重ねて軸線方向の回転子セグメントを形成することであって、回転子セグメントは、少なくとも2つの層で形成されており、各回転子層は、内部に複数の曲線状スロットを有しており、曲線状スロットは、回転子セグメント内に複数の回転子極を形成しており、各極は、曲線状スロットから形成された複数の曲線状通路を有している、ことと、(b)回転子セグメントを回転させて複数の極のうちの第1の極を整列位置に配置することと、(c)第1の極の曲線状通路内に溶融状態のポリマーボンド永久磁石材料を射出することであって、ポリマーボンド永久磁石材料は、ポリマーマトリクス内に懸濁された磁性粒子を含む、ことと、(d)ポリマーボンド永久磁石材料を固化させる前に、第1の極を所望の磁場に曝して磁性粒子を所望の配向に整列させることと、(e)ポリマーボンド永久磁石材料を固化させて第1の極の曲線状通路内に永久磁石を形成することと、(f)第1の極に対して(e)を実施した後に、複数の極のうちの残りの各極に対して(b)、(c)、(d)、(e)を実施することと、を含む。
【0028】
改良形態では、方法は、(a)~(f)を繰り返して少なくとも2つの回転子セグメントを形成することと、少なくとも2つの回転子セグメントを組み合わせて電気機械用の回転子を形成することと、をさらに含む。
【0029】
別の改良形態では、第1の回転子セグメントは、第2の回転子セグメントに対して回転方向でずらされている。
【0030】
別の改良形態では、少なくとも1つの層は、別の層に対して回転方向でずらされている。
【0031】
さらに別の改良形態では、所望の磁場は、少なくとも1つの永久磁石によって発生する。
【0032】
さらに別の改良形態では、ポリマーマトリクスは、ナイロン、ポリプロピレン、およびポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む。
【0033】
なおもさらに別の改良形態では、磁性粒子は、NdFeB、Sm-Fe-N、およびフェライト粉末のうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む。
【0034】
更なる改良形態では、電気機械は、永久磁石支援同期リラクタンスモータおよび/または発電機である。
【0035】
なおも更なる改良形態では、磁性粒子は、異方性磁性粒子である。
【0036】
なおも更なる改良形態では、(c)は(d)を実施する前に実施される。
【0037】
加えてなおも更なる別の改良形態では、方法は、ポリマーボンド永久磁石材料が固化するまで、所望の磁場に曝されている間、第1の極を整列位置に維持することをさらに含む。
【0038】
本発明の実施形態は、電気機械用の回転子を製造するための方法を含み、この方法は、マンドレルに複数の回転子層を積み重ねて、マンドレルに対して平行な軸線方向に延在する回転子セグメントを作製することであって、マンドレルは、回転子層を互いに対して所望の回転方向位置に整列させるように構成されており、層は、内部に複数の開口部を有しており、積み重ねられた回転子層は、回転子セグメントを形成しており、複数の開口部は、回転子セグメントを通って延在する複数の通路を形成しており、回転子セグメントは、複数の極を有している、ことと、内部に永久磁石を形成するための1つの極を選択することと、極に溶融状態のポリマーボンド永久磁石材料を射出することであって、ポリマーボンド永久磁石材料は、ポリマーマトリクス内に懸濁された磁性粒子を含む、ことと、所望の磁場を使用して、ポリマーマトリクス内の磁性粒子を所望の配向に整列させることと、ポリマーボンド永久磁石材料を固化させて固体の永久磁石を形成することと、固化させた後に、複数の極の各極に対して、選択、射出、整列、および固化を繰り返すことと、を含む。
【0039】
改良形態では、第1の回転子セグメントは、第2の回転子セグメントに対して回転方向でずらされている。
【0040】
別の改良形態では、少なくとも1つの層は、別の層に対して回転方向でずらされている。
【0041】
さらに別の改良形態では、所望の磁場は、少なくとも1つの永久磁石によって発生する。
【0042】
さらに別の改良形態では、ポリマーマトリクスは、ナイロン、ポリプロピレン、およびポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含み、磁性粒子は異方性であり、磁性粒子は、NdFeB、Sm-Fe-N、およびフェライト粉末のうちの少なくとも1種であるかまたは少なくとも1種を含む。
【0043】
なおも更なる別の改良形態では、マンドレルにキーが配置されており、回転子層のそれぞれは、キーと係合するように構成された整列スロットを含み、方法は、各回転子層の整列スロットをキーと係合させることをさらに含む。
【0044】
更なる改良形態では、マンドレルは、キーを保持するように構成されたスロットを有しており、スロットおよびキーは、各回転子層間のずれを制御するように構成されており、方法は、スロットおよびキーを使用して各回転子層間のずれを制御することをさらに含む。
【0045】
なおも更なる改良形態では、電気機械は、永久磁石支援同期リラクタンスモータおよび/または発電機である。
【0046】
なおも更なる改良形態では、方法は、少なくとも2つの回転子セグメントを形成することと、少なくとも2つの回転子セグメントを組み合わせて電気機械用の回転子を形成することと、をさらに含む。
【0047】
本発明を図面および前述の説明において詳細に図示および説明してきたが、これらは例示的であって、特性を限定するものではないと見なされるべきであり、好ましい実施形態のみが示され、かつ説明されており、本発明の精神に含まれる全ての変更および修正が保護されるべきであると望まれることが理解されよう。上述の説明で利用される「好ましい」、「好ましくは」、「好まれる」、または「より好まれる」などの用語の使用は、そのように説明された特徴がより望ましい場合があることを示しているが、それにもかかわらず、それらは必要でなくてもよく、それらを欠く実施形態が本発明の範囲内であるものと考えられてもよく、その範囲は以下の請求項によって規定されることを理解されたい。請求項を読む際に、「a」、「an」、「少なくとも1つ」、または「少なくとも1つの部分」などの用語が使用されている場合、請求項において特に反対の記載がない限り、請求項を1つの項目のみに限定するつもりではないことを意図している。「少なくとも一部」および/または「一部」という用語が使用される場合、特に反対の記載がない限り、項目は、一部および/または項目全体を含むことができる。
【0048】
特に指定または限定されていない限り、「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」、および「結合された」という用語、ならびにそのバリエーションは広く使用され、直接的および間接的な両方の取り付け、接続、支持、および結合を包含する。さらに、「接続」および「結合」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。