(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20220304BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220304BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220304BHJP
C40B 50/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N15/11 Z
C40B50/00
(21)【出願番号】P 2020537274
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2018101878
(87)【国際公開番号】W WO2019052322
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-04-01
(31)【優先権主張番号】201710840332.4
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520095304
【氏名又は名称】蘇州吉賽基因測序科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520095315
【氏名又は名称】蘇州吉瑪基因股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU GENEPHARMA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】199 Dongping Street, Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】郭良譲
(72)【発明者】
【氏名】張佩琢
(72)【発明者】
【氏名】於雷
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105463585(CN,A)
【文献】国際公開第2015/111209(WO,A1)
【文献】特開2006-166907(JP,A)
【文献】Nature Protocols, 2013, Vol. 8, No. 4, pp. 737-748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68-1/70
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーの構築方法であって、
検査対象のオリゴヌクレオチド配列の3’末端にpolyテールを付加して、polyテールが付加された生成物を得るステップ1)
であって、
前記polyテールは、poly Aテール、poly Gテール、poly Cテール又はpoly Tテールである、生成物を得るステップ1)と、
前記polyテールが付加された生成物に対して逆方向伸長・増幅を行い、逆方向伸長・増幅生成物を得るステップ2)であって、
前記逆方向伸長・増幅に使用されるプライマーは、前記検査対象のオリゴヌクレオチドと伸長用プライマーとからなり、
前記伸長用プライマー配列は、
5’側から順次に、配列
番号2の第1-22位に示されるDNA分子と、N個の塩基A、
N個の塩基T、
N個の塩基C又は
N個の塩基G
の何れか一種と
、からなり、前記Nは6以上の整数である、ステップ2)と、
前記逆方向伸長・増幅生成物を沈降させ、沈殿生成物を得るステップ3)と、
前記沈殿生成物に対して末端修復、Aテール付加、リンガー接続及びPCR増幅を順次に行い、ハイスループットシークエンシングライブラリーを得るステップ4)とを含む、
方法。
【請求項2】
前記伸長用プライマー配列が配列
番号1、配列
番号2、配列
番号3又は配列
番号4に示されるDNA分子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記伸長用プライマー配列が配列
番号1に示されるDNA分子であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが一本鎖DNA又は二本鎖DNAであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが一本鎖DNAであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドの長さが8-120bpであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
a1)請求項1に記載の伸長用プライマー
a2)a1)の前記伸長用プライマーを含むPCR試薬
a3)a1)の前記伸長用プライマー又はa2)の前記PCR試薬を含むキット、のうちのいずれか1つである、
製品。
【請求項8】
前記PCR試薬における前記伸長用プライマーの最終濃度が0.1-100μMであることを特徴とする、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
オリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法であって、
請求項1-6のいずれか1項に記載の方法により、オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーを構築するステップ(1)と、
前記ハイスループットシークエンシングライブラリーに対してハイスループットシークエンシングを行い、シークエンシング結果に基づいてオリゴヌクレオチド配列成分を分析するステップ(2)とを含む、
方法。
【請求項10】
人工的に合成される遺伝子治療用のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド配列成分の分析における、請求項9に記載の方法の使用。
【請求項11】
人工的に合成される遺伝子治療用のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド配列中の各成分の純度及び/又は含有量の分析における、請求項9に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に属し、具体的には、ハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国の国内外のますます多くの製薬会社が遺伝子医薬品に取り組んできて、さまざまな疾患を治療するための新規遺伝子医薬品の研究・開発に多くの投資を行っている。アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド技術は、RNAに相補可能な、人工的に合成又は生物合成されたDNA又はRNAを使用して、疾患の発生に関連する遺伝子の発現をブロック及び阻害する治療法であり、遺伝子変異によって引き起こされる腫瘍や遺伝病の治療に使用できる。
【0003】
アンチセンス技術は新しい医薬品開発方法であり、この技術を使用して研究・開発された医薬品はアンチセンス医薬品と呼ばれ、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA及びリボザイム(ribozyme)に係る。核酸ハイブリダイゼーションの原理によれば、アンチセンス医薬品は、特定の遺伝子とハイブリダイズし、遺伝子レベルで病原性タンパク質の産生を妨害し、つまり、核酸からタンパク質への遺伝情報の伝達を妨害する。従来の医薬品は、主に病原性タンパク質自体に直接作用するのに対して、アンチセンス医薬品は、タンパク質を産生する遺伝子に作用する。従来の医薬品と比較して、アンチセンス医薬品は、より高い選択性と効率を有し、感染症、炎症、心血管疾患や腫瘍などの多くの疾患の治療に広く使用できる。
【0004】
遺伝子治療とは、標的細胞に外来の正常な遺伝子を導入することで、遺伝子の欠陥や異常によって引き起こされる疾患を修正又は補償し、治療の目的を達成することである。大まかに言って、遺伝子治療には、DNAレベルで使用されるある疾患を治療するための手段及び新しい技術を含めることもできる。
【0005】
アンチセンスDNAは、主にアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(antisense oligodeoxynucleotide、AS-ODN)を指し、AS-ODNは、標的遺伝子mRNAの1つ又は複数の部位(相補領域)に相補的な、人工的に合成される短配列一本鎖DNAフラグメントであり、標的遺伝子の発現を抑制又は減少させることができる。AS-ODNは、二本鎖DNAに結合して転写を調節すること、mRNA前駆体又はスプライスジャンクションに結合してmRNA前駆体のスプライシングを抑制し、スプライスされたmRNAの核から細胞質への輸送に影響すること、細胞質のmRNAに結合して翻訳をブロックすること、特異的タンパク質に結合して遺伝子発現を調節することなど、さまざまな標的に作用することができる。
【0006】
アンチセンスDNAは人工的に合成された配列であるため、合成プロセス中に塩基の挿入と欠損が起り、その結果、合成DNAに大量の不純物が生じ、合成された配列を精製した後に製薬に用いるため、精製された各配列成分を分析及び確認する必要がある。しかし、現在、一本鎖オリゴヌクレオチド配列の分析に好適な解決手段はない。
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、人工的に合成されるオリゴヌクレオチド配列における各成分配列の組成並びにその純度及び/又は含有量を迅速、正確且つ網羅的に分析することである。
【0008】
上記技術的課題を解決するために、まず、本発明は、オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーの構築方法を提供する。
【0009】
本発明に係るオリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーの構築方法は、
検査対象のオリゴヌクレオチド配列の3’末端にpolyテールを付加して、polyテールが付加された生成物を得るステップ1)と、
前記polyテールが付加された生成物に対して逆方向伸長・増幅を行い、逆方向伸長・増幅生成物を得るステップ2)であって、
前記逆方向伸長・増幅に使用されるプライマーは、前記検査対象のオリゴヌクレオチドと伸長用プライマーからなり、
前記伸長用プライマー配列は、順次に配列2の第1-22位に示されるDNA分子と、N個の塩基A、塩基T、塩基C又は塩基Gとからなり、前記Nは6以上の整数であるステップ2)と、
前記逆方向伸長・増幅生成物を沈降させ、沈殿生成物を得るステップ3)と、
前記沈殿生成物に対して、末端修復、Aテール付加、リンガー接続及びPCR増幅を順次に行い、ハイスループットシークエンシングライブラリーを得るステップ4)と、を含む。
【0010】
上記方法では、前記オリゴヌクレオチドの長さが8-120bpであってもよい。前記オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA又は二本鎖DNAであってもよい。本発明の具体的な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNAであり、そのヌクレオチド配列は配列5であり、大きさが21bpである。
【0011】
上記方法では、ステップ1)において、前記polyテールは、poly Aテール、poly Gテール、poly Cテール又はpoly Tテールであってもよく、本発明の具体的な実施形態では、前記polyテールはpoly Aテールであり、
検査対象のオリゴヌクレオチド配列の3’末端にpolyテールを付加する前記方法は、具体的には、以下のとおりである。ターミナルトランスフェラーゼ 1.5μL、検査対象のオリゴヌクレオチド 1μL、dATP(又はdTTP、dCTP又はdGTP)(25μM) 0.5μL、5×TdT Buffer 4μL及びヌクレアーゼフリー水を均一に混合して、反応系(全体積20μL)を得る。反応系における前記検査対象のオリゴヌクレオチドの最終濃度は5μMである。
【0012】
上記方法では、ステップ2)において、前記Nは6以上の任意の整数であってもよい。本発明の具体的な実施形態では、具体的には、前記Nは20である。Nが20である場合、前記伸長用プライマー配列は、配列1に示されるDNA分子、配列2に示されるDNA分子、配列3に示されるDNA分子、又は配列4に示されるDNA分子である。本発明の具体的な実施形態では、前記伸長用プライマー配列は、配列1に示されるDNA分子である。
【0013】
前記逆方向伸長・増幅反応系(全体積50μL)は、2×Phata Max Buffer 25μL、dNTPs(10mM) 2μL、伸長用プライマー 2μL、検査対象のオリゴヌクレオチド 1μL、DNAポリメラーゼ I 1μL及びヌクレアーゼフリー水からなる。逆方向系における前記伸長用プライマーの最終濃度は4μMであり、逆方向系における前記検査対象のオリゴヌクレオチドの最終濃度は2μMである。
【0014】
上記方法では、ステップ3)において、前記沈降物には、酢酸ナトリウムによる沈降方法が使用され、逆方向伸長・増幅生成物に対して酢酸ナトリウムによる沈降を行う方法は、具体的には、以下のとおりである。
3a)逆方向伸長・増幅生成物に酢酸ナトリウム、無水エタノール及びグリコーゲンを加える。
3b)遠心分離して、上澄み液を捨てて、沈降物を収集する。
3c)前記沈降物にエタノールを加え、遠心分離して、上澄み液を捨てて、沈降物を収集する。
前記ステップ3a)では、逆方向伸長・増幅生成物に1/10体積の酢酸ナトリウム、2.5倍体積の無水エタノール及びグリコーゲン1μLを加え、前記酢酸ナトリウムのpHは5.2であり、前記グリコーゲンの濃度は20mg/mLであり、
前記ステップ3b)では、前記遠心分離の条件として、12000rpm、4℃で30分間遠心分離し、
前記ステップ3c)では、前記遠心分離条件として、12000rpm、4℃で5分間遠心分離し、前記エタノールは、80体積%のエタノールであり、
前記ステップ3a)と前記ステップ3b)との間には、-80℃で30分間放置するステップをさらに含み、前記ステップ3c)は1回繰り返される。
上記方法では、ステップ4)において、前記沈殿生成物に対して末端修復、Aテール付加、リンガー接続及びPCR増幅を順次に行う方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0015】
4a)前記沈殿生成物に対して末端修復とAテール付加を行って、修復生成物を得る。
4b)前記修復生成物にリンガーを付加して、リンガーが付加された生成物を得る。
4c)前記リンガーが付加された生成物に対してPCR増幅を行い、増幅生成物として、オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するハイスループットシークエンシングライブラリーを得る。
【0016】
前記ステップ4a)では、前記沈殿生成物に対して末端修復とAテール付加を行う方法は、具体的には、以下のとおりである。沈殿生成物 15μL、10×末端修復緩衝液 3μL、T4 DNAポリメラーゼ 2μL、T4 Polynucleotide Kinase(T4 PNK) 2μL、Klenow DNA polymerase I 0.5μL、Bst DNA Pol I large Fragment 0.5μL及びヌクレアーゼフリー水7μLを均一に混合して反応させる。
【0017】
前記ステップ4b)では、前記修復生成物にリンガーを付加する方法は、具体的には、以下のとおりである。修復生成物 30μL、10×T4 DNA Ligase Buffer 15μL、T4 DNA Ligase 2μL、Y型リンガー 2μL及びヌクレアーゼフリー水 1μLを均一に混合して反応させる。
【0018】
前記ステップ4c)では、前記リンガーが付加された生成物に対してPCR増幅を行う方法は、具体的には、以下のとおりである。リンガーが付加された生成物 5μL、プライマーそれぞれ 2μL、dNTP mix(10mM) 1μL、2×Phanta Max Buffer 25μL、Phanta Max Super Fide DNA Polymerase 1μL及びヌクレアーゼフリー水 14μLを均一に混合して反応させる。反応系における前記プライマーの最終濃度は1μMである。
【0019】
前記ステップ4b)と前記ステップ4c)との間には、精製ステップをさらに含み、前記精製は磁気ビーズを用いて行われてもよい。
【0020】
前記ステップ4c)の後には、精製ステップをさらに備え、前記精製は、シリカゲルカラムを用いて行われてもよい。
【0021】
上記技術的課題を解決するために、本発明はさらに製品を提供する。
【0022】
本発明に係る製品は、a1)-a3)のうちのいずれか1つである。
a1)上記伸長用プライマー
a2)a1)の前記伸長用プライマーを含むPCR試薬
a3)a1)の前記伸長用プライマー又はa2)の前記PCR試薬を含むキット。
【0023】
上記製品では、前記PCR試薬における前記伸長用プライマーの最終濃度は0.1-100μMである。本発明の具体的な実施形態では、前記PCR試薬における前記伸長用プライマーの最終濃度は100μMである。
【0024】
オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するハイスループットシークエンシングライブラリーの構築における上記製品の使用も本発明の特許範囲に属する。
【0025】
オリゴヌクレオチド配列不純物の分析における上記製品の使用も本発明の特許範囲に属する。
【0026】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、オリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法をさらに提供する。
【0027】
本発明に係るオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法は、
上記方法によってオリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーを構築するステップ(1)と、
前記ハイスループットシークエンシングライブラリーに対してハイスループットシークエンシングを行い、シークエンシング結果に基づいてヌクレオチド配列成分を分析するステップ(2)と、を含む。
【0028】
上記技術的課題を解決するために、最後に、本発明は、上記方法の新用途を提供する。
【0029】
本発明は、人工的に合成される遺伝子治療用のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列成分の分析における上記方法の使用を提供する。
【0030】
本発明は、人工的に合成される遺伝子治療用のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列中の各成分の純度及び/又は含有量の分析における、上記方法の使用をさらに提供する。
【0031】
実験により証明されるように、本発明に係るハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法は、オリゴヌクレオチド配列における各成分の純度及び含有量を迅速、正確かつ網羅的に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法のフローチャートである。
【
図2】酢酸ナトリウムによる沈殿生成物の電気泳動検査結果である。
【
図3】PCR増幅生成物の電気泳動検査結果である。
【
図4】精製後のPCR増幅生成物の電気泳動検査結果である。
【
図5】ハイスループットシークエンシングデータの分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特に断らない限り、下記実施例に使用される実験方法はすべて常法である。
【0034】
特に断らない限り、下記実施例に使用される材料、試薬などは、すべて市販品として入手できる。
【0035】
下記実施例におけるT4 DNAポリメラーゼは、NEB(北京)有限公司の製品であり、製品のカタログ番号がM0203Lである。DNA Polymerase I及びLarge(Klenow)Fragmentは、すべてNEB公司の製品であり、製品のカタログ番号がM0210Sであり、以下、DNA Polymerase I、Large(Klenow)FragmentはDNA ポリメラーゼIと呼ばれる。T4 Polynucleotide Kinaseは、NEB公司の製品であり、製品のカタログ番号がM0201である。Klenow DNA polymerase I及びBst DNA Pol I large Fragmentは、NEB公司の製品であり、製品のカタログ番号がM0275である。T4 DNA Ligaseは、NEB公司の製品であり、製品のカタログ番号がM0202Lである。ターミナルトランスフェラーゼは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(中国)の製品であり、製品のカタログ番号がEP0162である。デオキシアデノシン三リン酸は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(中国)の製品であり、製品のカタログ番号が10216018である。Phanta Max Super Fide DNA Polymeraseは、Vazyme Biotech Co.,Ltdの製品であり、製品のカタログ番号がP505である。
【0036】
下記実施例では、10×末端修復緩衝液の処方
溶質及びその濃度:900mM MgCl2、30mM DTT、10mM ATP、1μg/μL BSA及び4mM dNTPs
溶媒:pH8.3、Tris-HCl緩衝液500mM。
【0037】
実施例1
ハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法
一、オリゴヌクレオチドへのpolyテール付加
1、オリゴヌクレオチド配列の3’末端にpoly Aテールを付加する際に、表1に記載の各試薬及び添加量でテール付加反応系を調製した。オリゴヌクレオチド配列は、5’-CAGAGCAGCTTGTCTTTCTTC-3’(配列5)である。オリゴヌクレオチド配列は上海捷瑞生物工程有限公司により合成される。
2、37℃で25min反応させた。
3、70℃で10min反応させ、ターミナルトランスフェラーゼを不活性化させた。
【0038】
二、逆方向伸長・増幅
1、上記ステップ一で得られた反応生成物に表2に示される各試薬を加えて、逆方向伸長・増幅系を調製した。
伸長用プライマーextpT配列は、以下のとおりである。
5’-GAGACACGAATAGACGGCACGATTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3’(配列1)。
2、ステップ1で調製された逆方向伸長・増幅系をPCR装置に入れて、表3に示される反応プログラムを行った。
【0039】
三、酢酸ナトリウムによる沈降
1、ステップ二で得られた生成物に、1/10体積の酢酸ナトリウム(pH5.2)、2.5倍体積の無水エタノール及び濃度20mg/mLのグリコーゲン1μLを加えた。
2、-80℃で30分間放置した。
3、12000rpm、4℃で30分間遠心分離し、上澄みを捨てて、沈降物を収集した。
4、沈降物に80%エタノール1mLを加え、次に、12000rpm、4℃で5分間遠心分離し、上澄みを捨てて、沈降物を収集した。
5、ステップ4を1回繰り返した。
6、室温で乾燥し、TE 30μLを加えて溶解した。
7、沈殿生成物の品質を検査した。ステップは、具体的には、以下のとおりである。12%PAGEゲルを調製して、200V電気泳動を40分間行い、カセットにおいて10分間染色し、ゲルイメージングシステムにて結像して写真を撮る。電気泳動検査結果を
図2に示した。
【0040】
四、末端修復
1、表4における各試薬及び添加量で末端修復反応系を調製した。調製後、均一に混合して、瞬時遠心を行った。
2、ステップ1における末端修復反応系に対してPCR装置において表5に示されるプログラムを行った。
【0041】
五、リンガー接続
1、表6における各試薬及び添加量でリンガー接続反応系を調製した。調製後、均一に混合して、瞬時遠心を行った。
上記Y型リンガーは、UAFとAI5とからなり、その配列がそれぞれ以下のとおりである。
UAF(下線で表記された塩基にチオ修飾を行う):5-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATC
T;
AI5(下線で表記された塩基にリン酸修飾を行う):5-
GATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCACACAGTGATCTCGTATGCCGTCTTCTGCTTG。
上記Y型リンガー配列は、すべて上海捷瑞生物工程有限公司により合成されものであえる。リンガー接続反応系におけるリンガーの濃度はすべて1.6μMである。
2、リンガー接続反応系をPCR装置に入れて16℃で2時間反応させ、リンガー接続生成物を得た。
【0042】
六、リンガー接続生成物の精製
1、Ampure XP磁気ビーズ(ベックマン・コールター株式会社製のAgencourt AMPure XP Kit、製品のカタログ番号A63880)を振とうさせて、十分に均一に混合した。
2、上記ステップ五で得られた連結生成物に1×のAmpure XP磁気ビーズを加え、ピペットを用いて10回均一に混合し、室温で1分間放置した。
3、マグネットスタンドに入れて5分間吸着させ、上澄みを捨てた。
4、磁気ビーズに調製されたばかりの80%エタノール200μLを加えて、室温で30s放置し、上澄みを捨てた。
5、上記ステップ4を1回繰り返した。
6、濃度10mM Tris-Hcl(pH8.0)を50μL加えて溶出し、上澄みを新しい遠心分離管に移した。
7、1倍体積の磁気ビーズを加えて、ピペットを用いて10回均一に混合し、室温で1分間放置した。
8、磁気ビーズに調製されたばかりの80%エタノール200μLを加えて、室温で30s放置し、上澄みを捨てた。
9、上記ステップ8を1回繰り返した。
10、蓋を開けて室温で10分間放置した。
11、濃度10mM Tris-Hcl(pH8.0)50μLを加え、ピペットを用いて均一に混合し、室温で1分間放置した。
12、マグネットスタンドで5分間放置し、上澄みを別の遠心分離管に移し、精製後のリンガー接続生成物を得た。
【0043】
七、リンガー接続生成物のPCR増幅
1、精製後のリンガー接続生成物に表7に記載の各試薬を加え、添加量を表7に示すようにし、PCR増幅系を調製した。
プライマーmPF配列は、以下のとおりである(上海捷瑞生物工程有限公司により合成される):AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT;
プライマーmRPI5配列は、以下のとおりである(上海捷瑞生物工程有限公司により合成される):CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATCACTGTGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATC
T。上記プライマー配列では、下線で表記される塩基にチオ修飾が行われた。
2、45μL/本でPCR管に分注し、次に連結生成物5μLを加えた。
3、PCR増幅系をPCR装置に入れて、表8に示されるPCR反応プログラムに従って増幅を行い、PCR増幅生成物を得た。PCR増幅生成物についてゲル電気泳動検査を行い、結果を
図3に示した。
【0044】
八、PCR増幅生成物の精製
1、上記電気泳動に必要なバンドを切り取り、上海捷瑞生物工程有限公司製のアガロースゲルDNA回収キット(遠心カラム型、GK2042-50)を用いてゲルを回収した。
2、ゲルにBinding Solution 400μLを加えて、50℃のウォーターバス に入れ、塊状ゲルを溶解した。
3、その間に2分間おきに1回振動させた。
4、溶解した塊状ゲルをシリカゲルカラムに移し替え、室温で2分間放置し、6000回転/分で1分間遠心分離し、廃液を捨てた。
5、シリカゲルカラムに Washing Solution 500μLを加えて、室温で3分間放置した。
6、12000回転/分で1分間遠心分離し、廃液を捨てた。
7、ステップ6を1回繰り返した。
8、12000回転/分で1分間遠心分離し、シリカゲルカラムを別の1.5mL遠心分離管に移し替えた。
9、シリカゲルカラムにヌクレアーゼフリー水30μLを加えて、室温で2分間放置した。
10、12000回転/分で1分間遠心分離し、上澄み液を収集して、精製後のPCR増幅生成物を得た。精製後のPCR増幅生成物に対して電気泳動検査を行い、結果を
図4に示し、M:20bp DNA Ladder;1:ライブラリーゲル回収生成物であり、図から明らかなように、ハイスループットシークエンシングライブラリーを得ることに成功した。
【0045】
九、ハイスループットシークエンシング及びデータ分析
1、ハイスループットシークエンシング
ステップ八で構築されたライブラリーに対して、Hiseq 3000プラットフォーム用の単一末端150bpシークエンシングモードでシークエンシングを行った。
2、ハイスループットシークエンシング結果分析
trimmomatic-0.33ソフトウェア(trimmomatic-0.33ソフトウェアのウェブサイト:https://www.usadellab.org/cms/index.php?page=trimmomatic)を使用して、リード3’末端の低品質の塩基を除去し、自作されるperスクリプトExtractValid.plによりリンガーを含有する順方向シークエンシングのリードを抽出し、cutadapt1.2.1ソフトウェア(cutadapt1.2.1ソフトウェアのウェブサイト:https://github.com/marcelm/cutadapt/releases/tag/v1.2.1)を用いてリードにおけるPolyAリンガーを除去し、自作されるperスクリプトFilterTN.plによりN及びPolyTリンガーを含有するリードを除去し、自作されるperlスクリプトtrim_polytail.plにより、末端ではdNTPの不純さにより加えられるエラー塩基を含むPolyテールを除去し、自作されるperlスクリプトFastQ_ReadFilterByLength.plにより長すぎる又は短すぎるリードを濾過により除去し、FASTX Toolkit 0.0.13ソフトウェア(FASTX Toolkit 0.0.13ソフトウェアのウェブサイト:https://hannonlab.cshl.edu/fastx_toolkit/)におけるfastx_collapserモジュールを用いて反復配列をマージし、1つだけあるリードを除去した。下記式によりオリゴヌクレオチドの各成分の純度を算出した。各成分割合(%)=この成分のリード数/各成分のリード数の和×100%。
結果を表9及び
図5に示した。結果から分かるように、得られた9664589本のオリゴヌクレオチド配列のうち、オリゴヌクレオチド配列(CAGAGCAGCTTGTCTTTCTTC)と完全にマッチするオリゴヌクレオチド配列は合計7830352本であり、その割合が81.02%である。オリゴヌクレオチド配列に比べて、5’末端で配列の一部が欠損したオリゴヌクレオチド配列は、合計1331990本であり、その割合が13.78%であり、オリゴヌクレオチド配列に比べて、3’末端では配列の一部が欠損したオリゴヌクレオチド配列は、合計144439本であり、その割合が1.49%であり、オリゴヌクレオチド配列に比べて、5’末端及び3’末端ともに配列の一部が欠損したオリゴヌクレオチド配列は、合計18697本であり、その割合が0.19%であり、いくつかの(たとえば、挿入、欠損、エラー塩基の混入など)のオリゴヌクレオチド配列では、合計339111本であり、その割合が3.51%である。上記結果から明らかなように、本発明に係る方法は、オリゴヌクレオチド配列における各成分の含有量及びその割合を正確かつ網羅的に分析できた。
注:オリゴヌクレオチド配列はCAGAGCAGCTTGTCTTTCTTCである。
3、データ分析
まず、ncbi-blast-2.2.28+ソフトウェア(ncbi-blast-2.2.28+ソフトウェアのウェブサイト:https://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/blast/executables/blast+/2.2.28/)を使用して、オリゴヌクレオチド基準配列と比較し、自作されるスクリプトにより比較結果を解析し、解析的結果を標準化し、次に標準化した結果を分類し、最後に、分類した結果を統計した。
含有量が0.1%より大きい成分及び含有量の分析結果を表10に示した。N-1のリード数とN+1のリード数の分析結果を表11及び表12に示した。表には、含有量が0.1%よりも大きい各成分のオリゴヌクレオチド配列及びその含有量、N-1のリード数及びN+1のリード数における各成分の含有量及び割合が示されている。
注:オリゴヌクレオチド配列はCAGAGCAGCTTGTCTTTCTTCである。
注:オリゴヌクレオチド配列はCAGAGCAGCTTGTCTTTCTTCである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法を提供する。本発明に係る方法は、オリゴヌクレオチド配列不純物を分析するためのハイスループットシークエンシングライブラリーを構築するステップと、前記ハイスループットシークエンシングライブラリーに対してハイスループットシークエンシングを行い、シークエンシング結果に基づいてオリゴヌクレオチド配列成分を分析するステップと、を含み、前記ハイスループットシークエンシングライブラリーの構築に使用される伸長用プライマー配列は、順次に配列2の第1-22位に示されるDNA分子と、N個の塩基A、塩基T、塩基C又は塩基Gとからなり、前記Nは6以上の整数である。実験により証明されるように、本発明に係るハイスループットシークエンシングに基づくオリゴヌクレオチド配列不純物の分析方法は、オリゴヌクレオチド配列における各成分の純度及び含有量を迅速、正確かつ網羅的に分析できる。
【配列表】