(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】システム障害時にコントロールされた応答を実現するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20220304BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20220304BHJP
B60T 15/18 20060101ALI20220304BHJP
B60T 8/1763 20060101ALI20220304BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20220304BHJP
B60T 8/94 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T15/36 Z
B60T15/18 A
B60T8/1763
B60T8/17 Z
B60T8/94
(21)【出願番号】P 2020538717
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2019050298
(87)【国際公開番号】W WO2019137892
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】102018200487.0
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80,D-80809 Muenchen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ロウカ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー リーディガー
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル アンスティ
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009051019(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12-8/1769
8/32-8/96
15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための制御装置(20)であって、
・前記制御装置(20)は、通常の動作のためにパイロット圧力VSD1を調整するように構成されている圧力レギュレータ(21)を有しており、前記VSD1は、前記車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して事前に決定され、
・前記制御装置(20)は、システム障害時に安全パイロット圧力SVSDを制御するように構成されている調整装置を有しており、
・前記制御装置(20)は、増圧器(1)を有しており、前記増圧器(1)は、
・空気圧式
の圧力供
給に対する圧力入力口と、
・少なくとも1つのパイロット圧力に対する少なくとも1つの圧力入力口と、
・緊急ブレーキ圧力に対する圧力出力口と、
を有しており、
前記増圧器(1)は、前記パイロット圧力VSD1またはSVSDの圧力供給の供給圧力を制御して、その後、前記緊急ブレーキ圧力として出力するように構成されており、
前記制御装置(20)は、通常の動作では前記供給圧力を制御するために前記VSD1のみが前記増圧器(1)に供給され、システム障害時には前記供給圧力を制御するために前記SVSDのみが前記増圧器(1)に供給されるように構成されており、
システム障害時に前記緊急ブレーキ圧力が公称圧力を下回って保たれることが保証される、
制御装置(20)。
【請求項2】
前記制御装置(20)は、前記VSD1を通常の動作において通し、システム障害時には通さないようにするために、前記増圧器(1)の前かつ前記圧力レギュレータ(21)の後に配置および構成されている電磁弁(7)をさらに有している、
請求項1記載の制御装置(20)。
【請求項3】
前記制御装置(20)は、前記SVSDを通常の動作において遮断し、システム障害時には前記増圧器(1)に通すために、前記増圧器(1)の前に配置および構成されている電磁弁(8)をさらに有している、
請求項1または2記載の制御装置(20)。
【請求項4】
前記圧力レギュレータ(21)は、2つの電磁弁(4,5)を有して
いる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項5】
前記圧力レギュレータ(21)は、圧力センサ(6)を有している、
請求項1から4までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項6】
前記制御装置(20)は、最大許容パイロット圧力を調整し、これをさらに前記圧力レギュレータ(21)に出力するために、前記圧力レギュレータ(21)の前に配置されている減圧弁(2)をさらに有している、
請求項1から5までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項7】
前記SVSDの前記調整装置は、さらに、SVSDを制御するように構成されている圧力レギュレータ(22)を有している、
請求項1から6までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項8】
前記増圧器(1)は、複数のパイロット圧力に対する2つの入力ポートを有している、
請求項1から7までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項9】
前記増圧器(1)は、1つのパイロット圧力に対する1つの入力ポートのみを有しており、前記増圧器(1)の前にスイッチング機器(9)が設けられており、これによって、前記パイロット圧力のうちの1つのパイロット圧力だけが、さらに、前記増圧器(1)へ通される、
請求項1から7までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項10】
前記スイッチング機器(9)は、ダブルチェックバルブ(9)である、
請求項9記載の制御装置(20)。
【請求項11】
前記増圧器(1)は、リレーバルブ(1)である、
請求項1から10までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項12】
前記増圧器(1)は、ピストン(30)と少なくとも1つの圧力プレート(32a,32b)とを有している、
請求項1から11までのいずれか1項記載の制御装置(20)。
【請求項13】
車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための方法であって、空気圧式
の圧力供
給の緊急ブレーキ圧力は、増圧器(1)によって制御および提供され、
・前記方法は、圧力レギュレータ(21)によってパイロット圧力VSD1を調整するステップを有しており、前記VSD1を、前記車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して事前に決定し、
・前記方法は、調整装置によって安全パイロット圧力SVSDを調整するステップを有しており、
・前記方法は、通常の動作において、
・前記VSD1を通し、前記SVSDを遮断し、前記VSD1によってのみ前記圧力供給を制御するステップを有しており、
・前記方法は、システム障害時に、
・前記VSD1を通さず、前記SVSDを通し、前記SVSDによってのみ前記圧力供給を制御するステップを有しており、前記緊急ブレーキ圧力を、システム障害時に
前記緊急ブレーキ圧力が公称圧力を上回らないことによって保護する、
車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための方法。
【請求項14】
・前記VSD1および前記SVSDをはじめに、両者とも、
所定のパイロット圧力のレベルに調整し、
・通常の動作では、前記VSD1は、前記緊急ブレーキ圧力が前記VSD1よりも大きくなるように、前記増圧器(1)によっ
て供給圧力を制御し、
・システム障害時には、前記SVSDは、前記緊急ブレーキ圧力が前記SVSDよりも小さくなるように、前記増圧器(1)によって前記供給圧力を制御する、
請求項13記載の、車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための方法。
【請求項15】
・前記VSD1をはじめに、
所定のパイロット圧力
に所定値(UE)を加えたレベルに調整し、前記SVSDをはじめに、
前記所定のパイロット圧力のレベルに調整し、
・通常の動作では前記VSD1が、システム障害時には前記SVSDが
、供給
圧力を、前記増圧器(1)によって
、前記緊急ブレーキ圧力が
、通常の動作時およびシステム障害時において、前記VSD1または前記SVSDよりも小さくなるように制御する、
請求項13記載の、車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための方法。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項記載の制御装置(20)を少なくとも1つ備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための制御装置および方法ならびにそのような制御装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のシステムでは、緊急ブレーキの際に、車両の積載状態に適合した公称圧力のレベルの固定された緊急ブレーキ圧力がブレーキシリンダに導かれる。これは、ブレーキパッドと(ブレーキホイールの)ブレーキディスクとの間の摩擦動作が異なるため、速度に応じて異なる減速(もしくはブレーキ減速)を、速度に分散して生じさせる。
図1に示されているように、緊急ブレーキ圧力は一定であり、ここで摩擦係数はU字状の特性曲線を有している。低速範囲では、速度が上昇すると摩擦係数が減少し、高速範囲では、速度が上昇すると摩擦係数が増大する。減速は緊急ブレーキ圧力と摩擦係数とに関連し、この場合、速度に対する摩擦係数と類似の関係を有している。
【0003】
例えば、走行の快適さと安全性とのために、減速は可能な限り一定に保たれるべきである。これに対する解決策は、システム内の適切なレギュレータを使用して、車両の積載状態だけでなく、減速、速度および/または摩擦係数にも関連して緊急ブレーキ圧力を制御することである。
図2に示されているように、緊急ブレーキ圧力は、低速範囲および高速範囲において中速範囲よりも低く、逆U字状に経過するように制御され、これによって減速が一定になる。減速が適切なレベル(通常、
図1の最低減速よりも大きい)で一定に留まるためには、
図2の緊急ブレーキ圧力を生成するための供給圧力が、
図1の一定の緊急ブレーキ圧力よりも高い必要がある。
【0004】
上記の解決策を備えたこのようなシステムは、ほとんどの場合「ロー・アクティブ」である。すなわち、
図3に示されているように、電圧の降下は、供給圧力を、調整されずにブレーキシリンダに通す。このような場合には、緊急ブレーキ圧力は供給圧力とまったく同じ大きさになり、これによって、減速がU字状の経過を有する。上述したように、供給圧力は
図1の一定の緊急ブレーキ圧力よりも大きいので、例えばシステム障害時、例えば停電時の減速は、最低速度範囲と最高速度範囲とにおいて過度に大きくなり、これによって、最大許容減速を上回る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して緊急ブレーキ圧力を制御することができ、また電圧損失後に、潜在的に危険な高い圧力レベルが阻止され、このような場合に、緊急ブレーキ圧力が安全な公称圧力レベルにされる制御装置および方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題は、本発明に相応に、請求項1に記載の車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための制御装置によって解決される。さらに、この課題は、請求項14に記載の方法によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明では、上述の課題は、車両の緊急ブレーキ圧力を制御するための制御装置において解決され、この制御装置は、通常の動作のためにパイロット圧力VSD1を調整するように構成されている圧力レギュレータを有しており、ここでVSD1は、車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して事前に決定される。制御装置はさらに調整装置を有しており、この調整装置は、システム障害時に(例えば、停電の場合、または特定の診断ケース、例えば圧力レギュレータの機能欠陥の場合に)安全パイロット圧力SVSDを制御するように構成されている。制御装置はさらに、増圧器(例えば、リレーバルブ)を有しており、この増圧器は空気圧式圧力供給または油圧式圧力供給に対する圧力入力口と、少なくとも1つのパイロット圧力に対する少なくとも1つの圧力入力口と、緊急ブレーキ圧力に対する圧力出力口とを有している。ここでこの増圧器は、パイロット圧力VSD1またはSVSDの圧力供給の供給圧力を制御して、その後、緊急ブレーキ圧力として出力するように構成されている。さらに、制御装置は、通常の動作では供給圧力を制御するためにVSD1のみが増圧器に供給され、システム障害時には供給圧力を制御するためにSVSDのみが増圧器に供給されるように構成されており、ここで、システム障害時には緊急ブレーキ圧力が公称圧力を下回って保たれることが保証される。
【0008】
例えば、VSD1を通常の動作において通し、システム障害時には通さないようにするために、電磁弁が増圧器の前、かつ圧力レギュレータの後に配置および構成されている。
【0009】
さらに、例えば、SVSDを通常の動作において遮断し、システム障害時には増圧器に通すために、第2の電磁弁が増圧器の前に配置および構成されている。
【0010】
ある実施例では、圧力レギュレータは2つの電磁弁を有しており、そのうちの一方は通気装置として機能し、そのうちの他方は排気装置として機能する。圧力レギュレータは、有利には、圧力センサも有し得る。
【0011】
有利には、最大許容パイロット圧力を調整し、これをさらに圧力レギュレータに出力するために、減圧弁を圧力レギュレータの前に配置することができる。これによって、エネルギーを節約するために、圧力レギュレータが過度に高い圧力レベルの供給された圧力を下げるように調整する必要がなくなる。
【0012】
有利な実施例では、SVSDの調整装置は、システム障害に関係なくSVSDが最小パイロット圧力より上に維持されることを保証するために減圧弁を有している。
【0013】
別の実施例では、SVSDの調整装置はさらに、SVSDを制御するために圧力レギュレータを有することができる。
【0014】
さらに、増圧器は、複数のパイロット圧力に対する2つの入力ポートを有することができる、または1つのパイロット圧力に対する1つの入力ポートのみを有することができ、この場合には、1つの入力ポートのみによって、スイッチング機器(例えばダブルチェックバルブ)が設けられており、これによって、1つのパイロット圧力だけがさらに、増圧器へ通される。
【0015】
増圧器は、有利には、圧力の比較およびピストン運動によって供給圧力を制御するために、ピストンおよび少なくとも1つの圧力プレートを有することができる。
【0016】
以降では、本発明を、3つの実施例に基づいて、図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】緊急ブレーキ圧力が公称圧力のレベルにおいて一定である場合の、速度および摩擦係数に関連する、ブレーキ過程時の減速の経過を示している。
【
図2】緊急ブレーキ圧力が相応に制御されている場合の、速度および摩擦係数に関連する、ブレーキ過程時の一定の減速を示している。
【
図3】緊急ブレーキ圧力が供給圧力のレベルにおいて一定である場合の、速度および摩擦係数に関連する、ブレーキ過程時の減速の経過を示している。
【
図4】本発明の第1の実施例に相応する制御装置の概略図を示している。
【
図6】本発明の第2の実施例に相応する制御装置の概略図を示している。
【
図7】本発明の第3の実施例に相応する制御装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図4は、システム障害状態における本発明の第1の実施例による制御装置20を示している。1つのリレーバルブ1と2つの減圧弁2および3が設けられており、ここで圧縮空気が圧力供給として、圧縮空気ポートfを介して、入力ポートdを介してリレーバルブ1および減圧弁2および3に供給される。
【0019】
図5は、リレーバルブ1の詳細図を示している。上述の入力ポートdに加えて、リレーバルブはさらに、2つの入力ポートaおよびbならびに2つの出力ポートcおよびeを有している。パイロット圧力VSD1およびVSD2はそれぞれ入力ポートaおよびbを介してリレーバルブに導入される。パイロット圧力VSD1は圧力プレート32aに作用し、パイロット圧力VSD2は圧力プレート32bに作用する。これら2つの圧力プレートはピストン30に軸方向に配置されており、これによって、圧力供給の供給圧力(VD)を制御し、その後、緊急ブレーキ圧力(NBD)として出力ポートcを介して出力するためにピストン30が動かされる。出力ポートeは、過剰な圧縮空気を周囲に排気するために設けられている。圧力プレート32aの直径は、圧力プレート32bの直径よりも大きい。これに相応に、2つの圧力プレートの圧力伝達比は異なっている。ピストン30の下端は、ばねによってチャンバ開口部を押圧して、チャンバ開口部を密閉する密閉ピストン要素で終了する。このようなチャンバは、供給圧力VDによって満たされている。VSD1またはVSD2によって制御されるピストン30のピストン運動に応じて、出口cへの開口部が開かれ、これによって緊急ブレーキ圧力NBDが出口cを通って導かれる。
【0020】
リレーバルブ1による制御では、VSD1とNBDとの間で伝達比yが生じ、VSD2とNBDとの間で伝達比xが生じる。NBDがVSD1よりも大きくなるように、すなわち
y=NBD/VSD1>1
になるように、VSD1がVDを制御するように設定されている。
【0021】
さらに、NBDがVSD2よりも小さくなるように、すなわち
x=NBD/VSD2<1
になるように、VSD2がVDを制御するように設定されている。
【0022】
圧力プレート32aおよび32bの大きさを適合させることによって、伝達比xおよびyを任意に調整することができる。
【0023】
さらに、減圧弁2は、
図4において、圧縮空気供給のVDを最大許容パイロット圧力(MVSD)に低減し、MVSDをさらに圧力レギュレータ21に通すように構成されている。ここでの利点は、圧力レギュレータ21が、エネルギーを節約するために、過度に高い圧力レベルの供給された圧力を下げるように調整する必要がないことである。
【0024】
圧力レギュレータ21は、2つの電磁弁4および5と圧力センサ6とを有しており、ここで電磁弁4および5は、供給された圧力を所定のレベルに調整するように構成されており、圧力センサ6は、調整された圧力を測定し、場合によっては信号を生成するように構成されており、これによって電磁弁4および5は、場合によって生じる偏差を修正することができる。
【0025】
このような実施形態では、圧力レギュレータ21は、減圧弁2のMVSDを、公称パイロット制御圧力(NMVSD)へ調整し、ここでNMVSDは、所定の計算ユニットによって、車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して計算され、圧力レギュレータ21に出力される。
【0026】
電磁弁7は圧力レギュレータ21の後に配置されており、ここでこれは通常の動作ではアクティブのままであり、NMVSDを圧力レギュレータ21からリレーバルブ1の入力ポートaへ通すように構成されている(VSD1=NMVSD)。次に、リレーバルブ1は、このVSD1を伝達比yでより高い圧力、すなわち
NBD(通常の動作時)=VSD1×y
に変換する。
【0027】
圧力レギュレータ21からのNMVSDでVDを制御し、それを電磁弁8にさらに通すために、減圧弁3が設けられており、ここでこの減圧弁3は、VDをはじめに最小パイロット圧力に(機械的にかつ電圧とは無関係に)減圧し、その後、圧力レギュレータ21からのNMVSDで最小パイロット圧力を制御する(増大させる)ように構成されており、これによって安全パイロット圧力(SVSD)が生じる。通常の動作では、SVSD=NMVSDとなるように、これが調整されている。
【0028】
電磁弁8は、減圧弁3の後に配置されており、ここでこれは、通常の動作時にアクティブであり続け、減圧弁3からリレーバルブ1へのSVSDのさらなる供給を遮断するように構成されている。
【0029】
電流損失が発生すると、電磁弁7が外れて、圧力レギュレータ21からのNMVSDが排気されると同時に、電磁弁8も外れて、SVSDをリレーバルブ1の入力ポートbへ通す(VSD2=SVSD)。この排気によりVSD1が徐々に減少するため、VSD2はNMVSDのレベルから最小パイロット圧力のレベルまで減少する。
【0030】
このようにして、電磁弁7および8の構成は、システム障害時にVSDがVSD2によってのみ制御され、したがって(システム障害時に)NBDが保護されることを可能にし、ここで、上述のように、
NBD(システム障害時)=VSD2×x
である。システム障害の発生開始時には、VSD2=NMVSDであり、伝達比xは、
NBD(システム障害時)=NMVSD×x=公称圧力
すなわち、x=公称圧力/NMVSD
であるように調整されている。
【0031】
その後、VSD2は最小パイロット圧力の方向に低下するため、(システム障害時に)NBDも公称圧力から下限まで徐々に低下する。したがって、システム障害の場合には、公称圧力を超えず、かつ下限を下回らないNBDが提供される。
【0032】
図6は、システム障害状態における本発明の第2の実施例による制御装置20を示している。
図4と同様のリレーバルブ1が設けられている。ここで入力ポートbは省かれており、入力ポートaのみが設けられている。
図4と同様に、2つの減圧弁2、3と、2つの電磁弁4、5および圧力センサ6を含む圧力レギュレータ21と、2つの電磁弁7、8と、が設けられている。
図4の実施形態に加えて、
図6の実施形態は、リレーバルブ1の前にダブルチェックバルブ9を有しており、これによって、電磁弁7および8の後のパイロット圧力間の圧力比較が実行され、大きいほうのパイロット圧力のみをリレーバルブ1の入力ポートaにさらに通す。
【0033】
図4と同じ参照符号を有する
図6の構成要素は、
図4と全く同じように構成されている。違いは、圧力レギュレータ21によって調整されたパイロット圧力VSD1が、増大(Ueberhoehung)UEを伴った公称パイロット圧力のレベルにされることである。すなわち、
VSD1=NMVSD+UE
であり、ここで減圧弁3はさらに、
図4におけるVSD1のように、圧力レギュレータ21によってVDを制御し、SVSDを出力する。はじめは、SVSDはNMVSDのレベルに維持される(SVSD=NMVSD)。
【0034】
図4と同様に、
図6における構成も、VDが通常の動作ではVSD1によってのみ制御され、システム障害時にはVSD2によってのみ、リレーバルブ1を用いて制御されるように設計されている。どちらの場合にも、伝達比xのみが設けられている。すなわち、
NBD(システム障害時)=VSD2×x
である。
【0035】
システム障害の発生開始時はVSD2=NMVSDなので、この場合にはまた
図4のように、
NBD(システム障害時)=NMVSD×x=公称圧力
である。
【0036】
その後、通常の動作では、
NBD(通常の動作時)=VSD1×x=(NMVSD+UE)×x
である。
【0037】
伝達比xは公称圧力/NMVSDの値に固定して調整されているので、それに応じて、NBD(通常の動作時)が適切な値を有するように増大UEが決定されなければならない。
【0038】
図7は、本発明の第3の実施例による制御装置20を示しており、ここで制御装置20は基本的に、
図6の制御装置20と同じように機能する。
図6の実施例と比較して、
図7の制御装置20は、VSD2と無関係に、SVSDを圧力レギュレータ21によって制御するために、付加的に、圧力レギュレータ21と同様に2つの電磁弁
10および
11ならびに圧力センサ
12を含んでいる圧力レギュレータ22を有している。
図6のように、SVSDは、はじめは、NMVSDに維持される。通常の動作では、圧力レギュレータ21は上述のように、VSD1(VSD1=NMVSD+UE)を調整し、同様に、
NBD(通常の動作時)=VSD1×x=(NMVSD+UE)×x
であり、システム障害時には、
NBD(システム障害時)=VSD2×x
が当てはまる。
【0039】
上記の実施例は、事前に決定されたNMVSDに基づいて通常の動作において適切なNBDを取得することを可能にし、これによってNBDは、車両の積載状態、減速、速度および/または摩擦係数に関連して制御され、この結果、減速は可能な限り一定に保たれ、システム障害時には、公称圧力と下限との間のNBDが提供される。
【符号の説明】
【0040】
1 増圧器
2、3、7、8 減圧弁
4、5 電磁弁
6 圧力センサ
9 スイッチング機器/ダブルチェックバルブ
20 制御装置
21、22 圧力レギュレータ
30 ピストン
32a、32b 圧力プレート