(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】慣性ポンプを備える内部冷却バルブ
(51)【国際特許分類】
F01L 3/14 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
F01L3/14 A
(21)【出願番号】P 2020544537
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2018056388
(87)【国際公開番号】W WO2019174724
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】518073055
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル バルブトレイン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL VALVETRAIN GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ マロー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ポアロ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック コリン
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02188248(US,A)
【文献】実開平06-049744(JP,U)
【文献】実開昭59-131524(JP,U)
【文献】独国特許発明第843039(DE,C2)
【文献】特表2013-522513(JP,A)
【文献】特開2007-040309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/14
F01L 3/12
F01P 1/08
F16K 1/00
F16K 1/14
F16K 17/36
F16K 39/00-51/02
F04B 1/00- 7/06
F04B 9/00
F04B 23/00-23/14
F04B 53/00-53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブ(2)であって、バルブヘッド(22)及びバルブステム(24)を有するバルブ本体(20)を備え、該バルブ本体(20)が、冷却流体(28)が配置された閉鎖キャビティ(26)を有し、前記バルブ本体(20)内に、前記冷却流体(28)を作動時に前記キャビティ内で移動させる慣性ポンプ(4)が更に配置され、前記慣性ポンプ(4)が、少なくとも1個のポンプ本体(6)及び該少なくとも1個のポンプ本体(6)への又は該少なくとも1個のポンプ本体(6)からの冷却流体(28)の吸入又は吐出を制御する少なくとも1個の制御体(8)を更に有し、前記少なくとも1個のポンプ本体(6)及び前記少なくとも1個の制御体(8)が、前記キャビティ(26)内で移動可能である内部冷却ポペットバルブにおいて、
前記少なくとも1個のポンプ本体(6)が、前記少なくとも1個の制御体(8)の作動ストローク(AS)よりも大きな作動ストローク(AP)を有することを特徴とする内部冷却ポペットバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記キャビティ(26)により、少なくとも1つの閉回路(30)が形成されている内部冷却ポペットバルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記冷却流体(28)が、圧縮性である内部冷却ポペットバルブ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記冷却流体(28)が、非圧縮性である内部冷却ポペットバルブ。
【請求項5】
請求項1に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記少なくとも1個のポンプ本体(6)が、前記少なくとも1個の制御体(8)内に配置されている内部冷却ポペットバルブ。
【請求項6】
請求項5に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記慣性ポンプ(4)に、摩擦係合要素(10)が更に配置され、該摩擦係合要素(10)が、少なくとも1個のポンプ本体(6)と前記少なくとも1個の制御体(8)とを摩擦係合させる内部冷却ポペットバルブ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、バルブ本体(20)、及び/又は、前記少なくとも1個のポンプ本体(6)、及び/又は、前記少なくとも1個の制御体(8)に、バルブ、好適には逆止弁が設けられている内部冷却ポペットバルブ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記バルブ本体(20)が、ステム(24)に孔(40)を有し、ガイド体
(14)が、前記孔に差し込まれ、これにより冷却回路(30)が前記バルブヘッド(22)からバルブステム端(42)まで延在すると共に、再び戻るよう延在している内部冷却ポペットバルブ。
【請求項9】
請求項
1~
7の何れか一項に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、2つの軸線方向開口が、前記バルブ本体内にて、前記バルブヘッド(22)から
バルブステム端(42)の方向に延在し、前記2つの軸線方向開口が、その端部にて相互接続され、これにより冷却回路(30)が前記バルブヘッド(22)から
前記バルブステム端(42)まで延在すると共に、再び戻るよう延在している内部冷却ポペットバルブ
。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記慣性ポンプ(4)が、第1及び第2ポンプ本体(6,6`)及び1個又は2個の制御体(8,8`)を有し、第1ポンプ本体(6)が、バルブ閉鎖工程中に作動ストロークを実行し、前記第2ポンプ本体(6`)が、バルブ開放工程中に作動ストロークを実行する内部冷却ポペットバルブ。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の慣性ポンプ(4)を備える内部冷却ポペットバルブであって、前記少なくとも1個のポンプ本体(6,6`)が、軸線方向凹部を有する円筒又は半円筒を形成し、前記少なくとも1個の制御体(8,8`)が、コイル状又は半コイル状である内部冷却ポペットバルブ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブであって、バルブベース(56)により、前記バルブに、慣性ポンプハウジング(54)、周方向冷却経路(50)、並びに前記慣性ポンプハウジング(54)を前記周方向冷却経路(50)に接続する半径方向孔(52)が設けられている内部冷却ポペットバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステム部とヘッド部との間で冷却流体を圧送する慣性ポンプを備える内部冷却バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
現在までのところ、慣性ポンプは、振とうポンプ又は撹拌ポンプとしてのみ知られている。振とうポンプは、液体に浸漬されたホースの一端に取り付けられ、軸線方向に素早く往復運動する逆止弁によって実質的に形成される。液体の慣性により、前進又は浸漬移動中に液体が弁を介してホース内に駆動され、逆止弁により、後退移動中に液体の逆流が回避される。これらポンプは、レバー又はサイフォンの原理に従って、ホースを使用した燃料の補給に用いられる。この場合、例えば口で燃料を吸引する必要はない。しかしながら、これらポンプは、回路を形成するために閉じられたホース内の流体を圧送するのには適していない。
【0003】
特許文献1(米国特許出願公開第2188248号明細書)には、前後にスライド可能な管が内蔵された中空ステムを備えるキノコ型バルブが開示され、管の前後へのスライドは、管の慣性に起因する。管の両端には、2つの小さな開口及び2個のガイドリングが設けられており、管の一端には、冷却流体における方向性流れを促進する形状とした接続部品が設けられている。特許文献2(独国特許第843039号明細書)は、変位体が移動可能に内蔵された中空ステムを備えるキノコ型バルブに関する。特許文献3(特開昭58-185917号公報)には、管が移動可能に内蔵された中空ステムを備えるキノコ型バルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2188248号明細書
【文献】独国特許第843039号明細書
【文献】特開昭58-185917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の分野においては、内部冷却バルブの冷却特性を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブにより解決される。好適な実施形態は、従属請求項に記載した通りである。
【0007】
本発明は、慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブに関する。本発明に係るバルブは、バルブヘッド及びバルブステムを有するバルブ本体を備える。バルブ本体は、内部に冷却流体が配置された閉鎖又は包囲キャビティを有する。バルブ本体内又はキャビティ内に慣性ポンプが更に配置され、その慣性ポンプは、バルブの作動時にキャビティ内の冷却流体を移動させるか、又はキャビティを通るよう冷却流体を圧送する。慣性ポンプは、軸線方向へのポペットバルブの移動によって作動する。この場合、ポンプは、バルブ本体とポンプとの間の運動量伝達によって移動する。本発明に係る慣性ポンプにおいては、慣性ポンプにエネルギーを供給するために別箇の要素を設ける必要はない。ただし、慣性ポンプは、バルブの作動経路に適合されていなければならない。過度に小さな作動経路を有するバルブを動作させるエンジンで使用した場合、慣性ポンプが完全に故障する可能性がある。従って、バルブを設計する際には、各種のパラメータに加えて、バルブストロークを最重要な設計パラメータとして知る必要がある。
【0008】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの一実施形態においては、キャビティにより、少なくとも1つの閉回路が形成されている。この場合、キャビティにより、二重に相互接続された空間が形成され、その空間内で冷却流体が循環するよう圧送されるのが好適である。本明細書における冷却流体という表現は、バルブの少なくとも作動温度で液体状態となる冷却剤を意味する。冷却流体は、通常の条件下又は室温で固体であるナトリウムであってもよい。
【0009】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態において、冷却流体は、圧縮性である。この場合、冷却流体は、バルブの作動条件下において、気体であると共に圧縮性の冷却流体である。
【0010】
付加的な実施形態において、冷却流体は、非圧縮性又は液体の冷却流体である。この場合、例えば、作動温度の液体ナトリウムが使用される。融点が低く、導電率が大きい他の金属を使用してもよい。
【0011】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態において、慣性ポンプは、冷却流体の密度に比べてより大きな密度を有する少なくとも1個のポンプ本体を含む。この場合に重要なことは、ポンプ本体が冷却流体の密度に比べて大幅に大きな密度を有することである。なぜなら、ポンプ本体の密度が冷却流体の密度に比べて大幅に大きくなければ、ポンプ本体は冷却流体中に浮遊し、その運動量によって冷却流体を移動させることができないからである。本発明の慣性ポンプは、搬送すべき流体の密度に比べてより大きな密度を有するポンプ本体が流体を前方に押すと共に、その体積に対応する量の流体を運動量方向に逆らって搬送することも可能であることに基づいている。
【0012】
本発明の付加的な実施形態において、内部冷却ポペットバルブの慣性ポンプは、ポンプ本体への又はそのポンプ本体からの冷却流体の吸入又は吐出を制御する少なくとも1個の制御体を更に有する。制御体は、好適には、冷却剤又は冷却流体の密度に比べてやはりより大きな密度を有する。制御体は、冷却流体中に浮いた状態で作動するか又は冷却流体中に浸漬した状態で作動することができる。制御体は、ポンプ本体が上向きの圧送を行うか、下向きの圧送を行うか、又は空の作動を行うかを制御する役割を有する。この場合、制御体は、蒸気機における蒸気スライダから基本的に知られているように、ポンプ本体と協働し、冷却流体が円形キャビティを一方向にのみ通るよう圧送が行われることを保証する。制御体は、ポンプ本体に接続することができるが、ポンプ本体とは完全に独立してキャビティ内を自由に移動可能に配置してもよい。
【0013】
本明細書におけるポンプ本体及び制御体という用語は、慣性ポンプにおける移動可能な構成要素を意味する。慣性ポンプは更に、ポンプ本体及び/又は制御体が内部で移動可能なポンプハウジングを有することができる。ただし、バルブ本体が慣性ポンプハウジングとして機能し、ポンプ本体及び/又は制御体が、バルブ本体において対応する凹部内で移動可能としてもよい。
【0014】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの更なる実施形態において、少なくとも1個のポンプ本体は、少なくとも1個の制御体内に配置されている。この場合、制御体は、(端面を有する)管として構成可能であり、ポンプ本体は、円筒状に構成可能である。この構成により、ポンプ本体は、制御体内に配置することができる。ハウジングは、円筒形状の孔を有することができる。制御体及びハウジングの開口は、ポンプ本体が実際に冷却流体を搬送するか否か、並びにいつ搬送するかを制御するために使用される。
【0015】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の例示的な実施形態においては、慣性ポンプに、摩擦係合要素が更に配置され、その摩擦係合要素は、少なくとも1個のポンプ本体と少なくとも1個の制御体とを摩擦係合させる。これにより、ポンプ本体及び制御体は、作動ストローク内において一緒に移動する。制御体は、ポンプ本体に比べて作動ストロークが小さい。この場合、ポンプ本体及び制御体は、制御体におけるより小さな作動ストロークが終了するまで一緒に移動し、その後にポンプ本体が制御体に対する摩擦に抗しつつ更に移動する。
【0016】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態において、ポンプ本体は、少なくとも1個の制御体の作動ストロークに比べてより大きな作動ストロークを有する。少なくとも1個のポンプ本体及び少なくとも1個の制御体の作動ストロークが、作動時におけるポペットバルブの作動ストロークに比べてより小さければ有利である。ただし、この点は必ずしも必要ではない。なぜなら、少なくとも1個のポンプ本体及び少なくとも1個の制御体がバルブの開放又は閉鎖時に冷却回路を通して冷却剤を圧送できるよう、単にバルブの作動ストローク中においても十分に大きな運動量がポンプ本体及び制御体に伝達されなければならないからである。従ってこの場合、慣性ポンプを適切に構成可能とするために、バルブの作動ストロークを正確に知ることも必要な場合がある。バルブに関して重要な更なる設計パラメータは、開放時間、並びに作動時のバルブが開放されている間の時間である。二重慣性ポンプであれば、バルブの開放時間、即ちバルブが開放位置に留まる時間の間に圧送工程が生じるよう構成されなければならない。また、異なる個別ポンプを有する二重慣性ポンプを構成することも可能である。
【0017】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの付加的な実施形態においては、バルブ本体、及び/又は、少なくとも1個のポンプ本体、及び/又は、少なくとも1個の制御体に、少なくとも1個のバルブ又は逆止弁が配置されている。少なくとも1個のバルブは、バルブ本体の一部として見なされるポンプハウジングに配置してもよい。この構成は、1個、2個、又はそれ以上の個数の逆止弁により、冷却流体がポンプ方向に対して逆流するのが回避されるやや古典的なポンプに対応している。これにより、冷却回路は、一方向にのみ流れる冷却流体を有することが保証される。この構成における付加的な利点は、冷却流体経路及びポンプ本体のそれぞれに逆止弁を配置することが可能であり、制御体が完全に不要であってもよいことである。
【0018】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態においては、ステムに孔を有するバルブ本体が設けられている。この場合、ガイド体が孔に差し込まれ、又は、2つの軸線方向開口が、バルブ本体内にて、バルブヘッドからバルブステム端方向に延在し、2つの軸線方向開口が、その端部にて相互接続されている。これら実施形態においては、バルブヘッドからバルブステム端まで延在すると共に、再び戻るよう延在する冷却チャネルが形成されており、そのバルブチャネル内では、冷却流体がバルブヘッドからステム端方向にステムを通って流れると共に、異なる経路でバルブヘッドまで再び戻るよう流れることができる。この場合に冷却流体は、特に、2つの異なる経路で、ステム端にガイドされた後にそのステム端から再びバルブヘッドに戻るようガイドされる。この実施形態において、冷却されたバルブステムからバルブヘッドに逆流する冷却流体は、より高温の冷却流体と混合しないことが保証され得る。これにより、冷却流体又は内部冷却の冷却能力が改善される。
【0019】
内部冷却ポペットバルブの付加的な実施形態においては、慣性ポンプが設けられ、その慣性ポンプは、第1及び第2ポンプ本体及び1個又は2個の制御体を有し、第1ポンプ本体が、バルブ閉鎖工程中に作動ストロークを実行し、第2ポンプ本体が、バルブ開放工程中に作動ストロークを実行する。この実施形態においては、冷却流体をそれぞれ異なる工程で圧送する2個の慣性ポンプが設けられている。第1ポンプ本体は、バルブ開放時に冷却チャネルを通して冷却流体を圧送することができるのに対して、第2ポンプ本体は、バルブ閉鎖時に冷却チャネルを通して冷却流体を搬送又は圧送することができる。4ストロークエンジンにおいて、2つの圧送工程は、4ストロークの間に行われるか、又は2回のクランクシャフト回転の間に行われるか、又は1回のカムシャフト回転の間に行われる。この場合の主目的は、冷却チャネルを通る冷却流体の動きを可及的に均一にすることである。
【0020】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態において、少なくとも1個のポンプ本体は、軸線方向凹部が設けられた円筒又は半円筒を形成し、少なくとも1個の制御体は、コイル状又は半コイル状である。この場合、コイル状とは、実質的により大きな直径を有する端部ディスクによって両側が閉鎖された、実質的に管状又は半管状の中央部分の形状を意味する。半コイル状とは、軸線方向に分割されたコイル状の形状を意味する。ポンプ本体は、コイル状又は半コイル状の端部ディスクの間に位置している。端部ディスクには、ポンプ本体の長手方向凹部に整列するか、又はその長手方向凹部に対してオフセットされた開口を設けることができる。端部ディスクにおける1つの開口がポンプ本体の長手方向凹部に整列している場合、この接続部は、その側で常に開放されている。端部ディスクの1つの開口がポンプ本体の長手方向凹部に対してオフセットされている場合、この接続部は、ポンプ本体が当該端部ディスクに当接していないときにのみその側で開放されている。制御体を有する慣性ポンプは、開放又は閉鎖工程時に、ポンプ本体が通路を閉鎖することによって圧送又は作動ストロークを行うことができ、反対方向への運動が生じた場合には冷却流体がポンプ本体及び制御体を通って流れることができるよう構成されている。このように、バルブの往復運動の間、冷却流体は常に一方向にしか搬送されず、冷却回路を通る流れは一方向にしか生じない。
【0021】
慣性ポンプを備える内部冷却ポペットバルブの他の実施形態は、2個の部分で構成されている。この場合、バルブ本体は、バルブベースで下方から閉鎖され、バルブベースは、慣性ポンプハウジング、周方向冷却経路、並びに慣性ポンプハウジングを周方向冷却経路に接続する半径方向孔を有する。この場合、周方向冷却経路は、ポペットバルブのシール面を冷却するために、バルブシート又はバルブディスクのエッジ近傍に配置されている。
【0022】
半径方向孔は、互いに近接して配置することができる。この場合、好適には分離要素が半径方向孔の間に設けられており、これにより冷却流体がバルブディスクのエッジにて時計回り方向又は反時計回り方向に流れることができる。
【0023】
半径方向孔は、互いに正反対に配置してもよく、その場合は分離要素が不要である。この実施形態において、冷却流体は、バルブのエッジ又はバルブシートに沿って時計回り方向及び反時計回り方向に180°同時に流れる。この二部分による冷却回路には、冷却剤に起因する大きな温度差が生じないという利点がある。なぜなら、冷却剤は、バルブディスクの一方の側から他方の側に向けて両側で反対方向に流れるからである。この場合、一方の側から他方の側に向けては僅かな温度勾配が生じるが、上述した実施形態における分離要素で生じる大きな温度勾配を回避することができる。
【0024】
以下、本発明を、慣性ポンプ及び慣性ポンプが内蔵されたポペットバルブの様々な実施形態を参照しつつ説明する。図示の物体は縮尺通りではなく、本発明を概略的に示すに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1A~
図1Dは、ポンプ本体及び制御体、並びにそれらの相互作用を示す斜視図である。
【
図2】
図2A~
図2Dは、単純な慣性ポンプにおける最重要な構成要素、並びにそれら構成要素が如何に構成されているかを示す断面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、
図2Aにおける構成に対応すると共に、互いに関連して作動する2個の慣性ポンプを示す説明図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、冷却回路内で協働する2個の慣性ポンプを示す説明図である。
【
図6】冷却回路内で作動する慣性ポンプの組み合わせを示す説明図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、冷却回路内で一緒に作動する2個の組み合わされた慣性ポンプを示す説明図である。
【
図8】
図8A~
図8Hは、複動慣性ポンプにおける個々の部品を示す斜視図、並びに対応の慣性ポンプを備えるポペットバルブを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下においては、同一又は類似の構成要素及び要素を表すために、同一又は類似の参照符号が説明及び図の両方で使用されている。
【0027】
図1A~
図1Dは、ポンプ本体及び制御体、並びにそれらの相互作用の斜視図を示す。
【0028】
以下、周期的な往復運動が生じる閉回路内で作動する慣性ポンプについて記載する。バルブの開閉の開始時及び終了時に加速度及び慣性力が発生し、閉回路内で冷却剤が圧送されることが想定されているため、ポンプ本体又は制御体の密度が圧送される冷却剤の密度に比べて可及的に大きく異なることが極めて重要である。密度が大きく異ならない場合、ポンプ本体は、単に冷却剤中に浮遊しているか又は浮いているだけであり、開閉工程の開始時又は終了時の加速力に反応することができない。
【0029】
図1Aは、一方の側において、長手方向に延在する凹部を有する長方形の構成でポンプ本体6を示す。ポンプ本体6の質量は、可及的に大きく選択するのが好適であり、従って可及的に高密度で安定した材料が使用されるのが好適である。例えば、タングステン、オスミウム、イリジウムの合金は、ナトリウムなどの金属冷却剤を確実に圧送することも可能な理想的な特性を有する。冷却剤との質量差及び密度差が大きいほど、慣性ポンプによって実現可能なポンプ能力が大きい。ポンプ本体の一方の側には長手方向凹部が配置され、その凹部が前側又は後側で閉鎖されていないときに冷却剤が凹部内を流れることができる。
【0030】
図1Bは、中空直方体の形状を有すると共に、上面及び底面にそれぞれ1つの開口を有する制御体を示す。制御体8は、ポンプ本体6を制御体8内により容易に嵌め込むことができるよう、一方の側又は両側において横方向に開口していてもよい。制御体8の前側開口又は後側開口は、ポンプ本体6の長手方向凹部に整列されているのに対して、他方の開口は、ポンプ本体の長手方向凹部と重なっていない。ポンプ本体6が嵌め込まれていなければ、冷却流体は、前側開口からキャビティ及び後側開口を通るよう制御体を流れることができる。
【0031】
図1Cは、制御体8内に嵌め込まれ、かつ制御体8の前壁に当接した状態のポンプ本体8を示す。ポンプ本体の長手方向凹部は、制御体の前壁によって覆い隠され、制御体8の前側開口は、ポンプ本体によって閉鎖されている。この構成において、ポンプ本体6は、制御体と一緒に前後に移動する際、ポンプ本体6の前方の流体を押したり送ったりすることができる。
【0032】
図1Dは、制御体8内に嵌め込まれ、かつ制御体8の後壁に当接した状態のポンプ本体8を示す。ポンプ本体の長手方向凹部は、制御体の後側開口に整列されている。この構成において、冷却剤は、前側の下部開口から制御体に流入し、ポンプ本体6の長手方向凹部を通るよう上方に流れ、制御体における後壁の上部開口から再び流出することができる。ポンプ本体6が制御体8と一緒に前後に移動する際、冷却流体は、ポンプ本体及び制御体を通るよう流れることが可能であり、ポンプ本体又は制御体によって移動されるか又は送られることはない。
【0033】
図2A~
図2Dは、単純な慣性ポンプにおける最重要な構成要素、並びにそれら構成要素が如何に組み合わされているかの断面図を示す。
【0034】
図2Aは、ポンプハウジング及び冷却チャネル又は冷却流体回路として機能するキャビティを示す。図示の2本のダッシュは、バルブ移動の2つの終点を表している。
図2A~
図2Fは、バルブの観点から示されている。
【0035】
閉回路30は、制御体及びポンプ本体を収容するよう構成されたより幅広部分を有する。冷却流体は、回路の冷却回路30内に送ることができる。更に、キャビティ26により、制御体8及びポンプ本体6が移動する一種のポンプハウジングが形成されている。
【0036】
図2Bは、
図1Bにおける制御体8の横断面図を示す(開口は破線で示す)。
【0037】
図2Cは、
図1Aにおけるポンプ本体6をやはり横断面図で示す。長手方向又は軸線方向凹部は、ポンプ本体6の上側に配置されている。
【0038】
図2Dは、
図2A~
図2Cにおける構成要素が組み合わされて形成された慣性ポンプを、閉冷却回路30と共に示す。キャビティ26内には、やはりポンプ本体6が収容された制御体8が配置されている。制御体内におけるポンプ本体6の位置は、冷却液が軸線方向凹部16を通ることを可能にするか又は可能にし得る。この状態において、冷却流体(図示せず)は、冷却回路30内を自由に流れることができる。冷却流体が図示されていないのは、キャビティ26全体又は冷却回路30全体を満たしているためである。
【0039】
【0040】
図3Aにおいては、
図2Dの慣性ポンプがバルブの閉鎖移動の開始位置にあり、冷却回路30、制御体8、並びにポンプ本体6を有する慣性ポンプ2全体が右側に向けて移動を開始する。ポンプ本体6及び制御体8は、
図1Dに示すように配置されている。この場合、冷却流体は移動せず、制御体8及びポンプ本体6の両方がキャビティ26の左側に対して当接し、これにより運動量又は運動エネルギーを受け取る。
図3Aにおいて、二重矢印AVは、バルブの作動ストロークを示す。二重矢印ASは、制御体8の作動ストロークを示し、二重矢印APは、ポンプ本体の作動ストロークを示す。
【0041】
図3Bにおいては、
図2Dにおける慣性ポンプがバルブの閉鎖移動の中間位置にあり、冷却回路30、制御体8、並びにポンプ本体6を有する慣性ポンプ2全体がその最大速度又はその最大運動量に達する。この場合に冷却流体は、連通管の原理に従って依然として冷却回路30全体を満たしているため、依然として移動しない。
【0042】
図3Cにおいては、バルブの閉鎖移動が終了し、慣性ポンプ2の構成要素は、バルブ又はキャビティ26に対してまだ移動していない。ポペットバルブのエッジがバルブシートに衝突すると、キャビティ26が急激に塞がれる。
【0043】
図3Dにおいては、バルブの閉鎖移動が終了し、キャビティ26が塞がれている。ポンプ本体6及び制御体8は、ニュートンに従って運動状態を維持し、更に右側に向けて移動する。この移動の間、冷却流体は、制御体6の開口及びポンプ本体6の軸線方向凹部16からこれら構成要素を通るよう流れることが可能であり、その際に冷却流体が冷却回路を通るよう搬送されることは実質的にない。ただし、制御体8及びポンプ本体6の移動は、これら構成要素の密度が冷却流体の密度に比べて可及的に異なる場合にのみ可能である。なぜなら、密度が大きく異ならない場合、制御体8及びポンプ本体6は冷却流体中に浮遊し、キャビティに向けて移動しないからである。冷却流体は、主に点線矢印で示すように移動する。
【0044】
図3Eにおいては、ポンプ本体6及び制御体8の移動が継続しており、制御体がキャビティ26の右端に到達している。制御体がキャビティ26の右端に接触すると、制御体の動きが終了する。
図3Eにおいて、冷却流体は、依然として制御体8及びポンプ本体、特にポンプ本体6の軸線方向凹部16を通るよう流れることができる。ポンプ本体6は、運動状態を維持し、更に右側に向けて移動する。この移動の間、冷却流体は、制御体8の開口及びポンプ本体6の軸線方向凹部16からこれら構成要素を通るよう流れることができる。
図3Eにおいては、制御体8がその終了位置に既に到達しているため、ポンプ本体6だけが更に移動することができる。冷却流体は、主に点線矢印で示すように移動する。
【0045】
図3Fは、バルブ及び慣性ポンプ2の閉鎖移動の終了位置を示す。キャビティ26を有する冷却回路30は、右端に位置している。制御体8は、キャビティ26の右端に位置している。ポンプ本体6も、右端の端部位置に位置している。ポンプ本体6の軸線方向凹部16は、制御体の右側開口に対してオフセットされているため、右端位置にあるポンプ本体6によって制御体8の右側開口が閉鎖されている。ポンプ本体6及び制御体8は、
図1Cに示すように配置されている。この場合、冷却回路30が遮断され、冷却液が冷却回路30内に滞留する。
【0046】
以下、
図3G~3Lを参照しつつ慣性ポンプの作動又は圧送工程について記載する。
【0047】
図3Gにおいては、
図2Dの慣性ポンプがバルブの開放移動の開始位置にあり、冷却回路30、制御体8、並びにポンプ本体6を有する慣性ポンプ2全体が左側に向けて移動を開始する。ポンプ本体6及び制御体8は、
図1Cに示すように配置されており、冷却回路が遮断されている。この場合、冷却流体は移動せず、制御体8及びポンプ本体6の両方がキャビティ26の右側に対して当接し、これにより運動量又は運動エネルギーを受け取る。
【0048】
図3Hにおいては、慣性ポンプがバルブの開放移動の中間位置にあり、冷却回路30、制御体8、並びにポンプ本体6を有する慣性ポンプ2全体がその最大速度又はその最大運動量に達する。この場合に冷却流体は、ポンプ本体6及び制御体8が依然として冷却回路30全体を遮断しているため、依然として移動しない。
【0049】
図3Iにおいては、バルブの閉鎖移動は終了し、慣性ポンプ2の構成要素、即ちポンプ本体6及び制御体8は、バルブ又はキャビティ26に対してまだ移動していない。カムが最高位置に到達すると、キャビティ26が開放移動の終了時に急激に塞がれる。
【0050】
図3Jにおいては、バルブの開放移動が終了し、キャビティ26が塞がれている。ポンプ本体6及び制御体8は、ニュートンに従って運動状態を維持し、その運動量又は慣性に起因して更に左側に向けて移動する。制御体8の左側開口はポンプ本体6によって閉鎖されており、移動により、ポンプ本体6は、制御体8と一緒に、冷却回路を通して冷却流体を圧送することができる。制御体8及びポンプ本体6の移動は、これら構成要素の密度が冷却流体の密度に比べて可及的に異なる場合にのみ可能である。ポンプ能力は、バルブ速度、冷却媒体とポンプ本体又は制御体6,8との間の密度差、並びに冷却流体の総質量及びポンプ本体6の質量に依存する。制御体8及びポンプ本体6は、その前方に描かれた点線矢印にほぼ沿って冷却回路30を通るよう冷却流体を押す。
【0051】
図3Kにおいては、ポンプ本体6及び制御体8の移動が継続しており、制御体がキャビティ26の左端に到達している。制御体がキャビティ26の左端に接触すると、制御体の動きが終了する。
図3Kにおいて、冷却流体は、まだ制御体8及びポンプ本体、特にポンプ本体6の軸線方向凹部16を通るよう流れることができない。
図3Kの制御体8の移動が終了すると、ポンプ本体6は更に移動するが、この移動は制御体8内でのみ生じる。
【0052】
図3Lは、
図3Aと同様、バルブの開放移動の終了位置及び慣性ポンプ2の初期位置を示す。ポンプ本体6及び制御体8は、キャビティ26の右端に位置している。移動の最後の部分により、ポンプ本体6は、制御体の右側開口を再び解放し、冷却流体が冷却回路を通って更に流れることができる。このようにして、慣性ポンプの作動サイクルが終了する。制御体8は、キャビティ26の左端に再び位置している。ポンプ本体6も、左端の端部位置に位置している。ポンプ本体6の軸線方向凹部16及びそこから離間した右端により、冷却流体は、軸線方向凹部16及び制御体の右側開口を通って流れることができる。ポンプ本体6及び制御体8は、
図1Dに示すように再び配置されている。冷却回路30は連続しており、冷却流体はその慣性に応じて冷却回路を通るよう更に流れることができる。
【0053】
図3A~
図3Lの慣性ポンプは、作動又は圧送サイクル又は作動又圧送工程を一方の方向にのみ行い、他方の方向には圧送工程を行わず、また冷却回路30を開放して冷却回路30内における冷却流体の自由な流れを可能にする。
【0054】
図4A及び
図4Bは、
図2Dにおける構成に対応すると共に、互いに対向して作動する2個の慣性ポンプを示す。図示の二重ポンプは、一見すると対称的に見える2個のポンプで構成されている。キャビティ26、冷却回路30、制御体8、並びにポンプ本体6を有する上側又は第1慣性ポンプは、
図3Dに示すポンプに対応している。
【0055】
更に、第1上側ポンプの作動は、
図3A~
図3Lに示すステップに完全に対応している。第2下側慣性ポンプ2`は、第1上側慣性ポンプ2とほぼ対称的である。ポンプ本体6`のみ鏡面的ではなく、第1上側慣性ポンプと同じように整列されている。図示の僅かに異なる構造により、圧送及び充填又は抽出サイクルに関して、それぞれ入れ替えが生じる。
図4Aは、上側ポンプを充填工程で示し、これは
図3Dに対応している。この場合、ポンプ本体6及び制御体8が移動し、これにより冷却流体がこれら構成要素を通るよう流れることができる。一方、
図4Aの第2下側ポンプは、
図3Kに対応する圧送工程に位置している。この場合、ポンプ本体6及び制御体8を通る通路が閉鎖され、ポンプ本体6及び制御体8の移動により、冷却流体が下側冷却回路30`を通るよう圧送される。
【0056】
図4Bは、逆のケースを示す。この場合、上側第1慣性ポンプ2は、第1冷却回路を通るよう冷却流体を圧送するのに対して、下側第2慣性ポンプ2`は、圧送を生じることなく
図4Aの位置に戻る。この場合、上側慣性ポンプは、
図3Kに示す作動ステップにあるのに対して、
図4Aの下側第2ポンプは、第2ポンプ本体6`及び第2制御体6`が抽出又は充填ステップを行う工程にある。
【0057】
二重ポンプは、バルブを開放するとき及びバルブを閉鎖するときに、別々の冷却回路を通る冷却流体を交互に圧送する2個のポンプを有する。
【0058】
図5A及び
図5Bは、
図4A及び
図4Bにおける二重ポンプの更なる構成を示す。上側第1慣性ポンプ及び下側第2慣性ポンプ4,4`は、共通の冷却回路内で作動する。更に、制御体8,8`には、全長をより小さく又は全高をより小さくするために、僅かに修正が加えられている。制御体8,8`は更に、U字形接続部の代わりに、第1キャビティ26と第2キャビティ26`との直接的な直線状接続部を得るために横方向開口を有する。これにより、以前に必要とされたU字形接続部の全高が減少可能である。
図5A及び
図5Bの慣性ポンプは、上述したよりコンパクトな構成以外は、
図4A及び
図4Bの慣性ポンプに対応している。充填サイクル中に開放接続部を提供する慣性ポンプの独自の特徴により、一方のポンプから他方のポンプを通るよう冷却流体を圧送することが可能である。この場合、
図1A~
図4Bを参照しつつ記載したポンプに比べて、大幅に大きなポンプ能力が実現される。
図5A及び
図5Bに係る二重ポンプは、
図4Aのポンプに比べて、冷却流体をバルブステム内に2倍の効率で圧送することを可能にする。
図5A及び
図5Bにおける2個のポンプは協働することにより、単一のストロークにおいて、単一のポンプで搬送可能な量の2倍のポンプ容量の冷却流体を搬送することができる。
図4におけるポンプは、確かに同じ容量の冷却流体を圧送できるが、2つの異なるチャネルを通るために冷却能力が大幅に低下する。図示の実施形態においては、右側のU字形接続部の代わりに、バルブステム内に延在する冷却チャネルを接続して冷却特性を改善することができる。
【0059】
図6は、
図5A及び
図5Bにおける二重ポンプの更なる構成を示す。上側第1慣性ポンプ及び下側第2慣性ポンプ4,4`は、共通の冷却回路内で作動する。制御体は、以下において例えば
図8Bに示すように互いに接続することも可能である。この場合、分離又はガイド要素によって、2つの液体経路又はポンプ部分を互いに分離することができる。それ以外の点に関しては、上述したのと同じポンプ本体を使用することができる。慣性ポンプ4,4`の機能は、
図3A~
図5Bで記載した慣性ポンプに対応している。図示の実施形態において、制御体8,8`は、図の平面の上又は下における1つの平面内で互いに接続することができる。
図6に係る二重ポンプは、2個の部分ポンプ又は第1及び第2慣性ポンプ4,4`の機能が互いに結合されているという利点を有する。この場合も、作動モードは、
図3A~
図5Bを参照しつつ上述したのと同じである。
図7A及び
図7Bは、
図5A及び
図5Bにおける二重ポンプの実現可能な更なる構成を示す。上側第1及び下側第2慣性ポンプは、共通の冷却回路内で作動する。個々のポンプ間の分離要素は、結合凹部44を含む。この場合、結合凹部は、第1及び第2ポンプにおける2つのキャビティ26,26`を互いに接続する単なるスリット状開口である。更に、制御体8,8`は、結合要素46によって互いに接続されている。この場合、第1及び第2制御体8,8`の代わりに、単一の複合又は二重制御体が使用されているのみである。図示の二重制御体は、引き続き8,8`で表されている。二重制御体により、両方の制御体は互いに同期的に移動し、二重ポンプの機能改善が生じ得る。また、ポンプ本体6,6`を同様に結合することも想定可能ではあるが、これは幾分複雑な構造を必要とする。この場合、制御体及びポンプ本体の作動ストローク、並びにポンプハウジングの長さに関して更なる境界条件が必要である。
【0060】
図8A~
図8Hは、複動慣性ポンプにおける個々の部品を示す斜視図、並びに対応の慣性ポンプを備えるポペットバルブの部分断面図を示す。
【0061】
図8Aは、2個のポンプ本体6,6`の斜視図を示す。ポンプ本体6,6`は、半円筒として構成され、軸線方向凹部16を有する。ポンプ本体6,6`には更に、制御体8に対してポンプ本体6,6`の動きを調整するよう機能する摩擦係合要素10が設けられている。原則的に、図示のポンプ本体6,6`は、他の図に示すものに対応している。
【0062】
図8Bは、二重制御体8の斜視図を示す。この制御体は、中央平面によって接続された2個の端部ディスクを有する。二重制御体8の形状は、コイル又は二重T形キャリアの円形断面に対応している。二重制御体8は、
図8Aにおけるポンプ本体のために2つの受け領域を有する。端部ディスクには、受け領域毎に開口が設けられている。この場合、各開口の一方は、各軸線方向凹部の一方に整列し、各開口の他方は、各ポンプ本体6の一方によって閉鎖することができる。二重制御体は、回転対称的で点対称的である。制御体は更に、ガイドプレートを受けるための長手方向凹部を有する。
【0063】
図8Cは、二重慣性ポンプ用の円筒状ハウジングを示す。ハウジングは、下側に脚部が設けられた管によって形成されている。ポンプ本体6,6`は、二重制御体の受け領域に設けることが可能であり、その後にこれらアセンブリを管又はハウジング内に差し込むことができる。ポンプは、何れの場合にも、冷却流体を、一方の側から他方の側へ管状ハウジングを通して圧送する。
【0064】
図8Dは、ガイドプレート又はガイド体の斜視図を示す。このガイドプレート又はガイド体は、一方の側において慣性ポンプ内にガイドされ、より正確には、ハウジング及び制御体における対応の凹部を通してガイドされる。ガイド体は、ポンプハウジングから遠くまで突出するよう延在すると共に、上端に凹部を有する。ガイド体は、好適には、バルブステム内の軸線方向孔に差し込まれると共に、単一孔を別個の流れチャネル及び戻りチャネルに分割する。上端の凹部により、冷却流体が入口から戻り口に流れることが可能である。
【0065】
図8Eは、
図8A~
図8Dにおける部品で構成された二重慣性ポンプ4を備える内部冷却バルブ2の部分断面図を示す。図示の慣性ポンプの機能は、
図5A及び
図5Bに示すものに対応している。
【0066】
ポペットバルブ2は、バルブヘッド22を有するバルブ本体20を備える。バルブ本体には、バルブヘッド22からバルブステム端42内に延在するキャビティが設けられている。キャビティは、別箇のバルブベース32によって閉鎖されている。キャビティは、バルブシャフトに延在する孔を有する。更に、慣性ポンプ4又はハウジング12が嵌め込まれた円筒状凹部が設けられている。制御体8は、ハウジング内に配置されており、その2個の制御体8には、第1及び第2ポンプ本体が嵌め込まれた2つの受け領域が設けられている。ポンプ本体には、摩擦係合要素が付加的に設けられているため、通常のモータ振動が生じた場合にポンプ本体の作動が回避される。摩擦係合要素10は、板ばねとして構成することができる。摩擦係合要素10は、ポンプ本体6及び制御体8において、対応する相互移動を保証するために設けられている。更に、ガイド体が制御体8を通ってステム孔内に延在し、そのガイド体は、慣性ポンプによってステム端まで搬送又は圧送される冷却流体をガイドすると共に、他方の側の凹部を通して再び戻す。従って、冷却流体は、再びバルブヘッド内に圧送される前に最小温度に達することが保証される。ポンプハウジングは、冷却流体をバルブヘッド内にガイドするために、下端が開放されている。
図8Eは、慣性ポンプを備える内部冷却バルブの実現可能な実施形態の1つだけを示す。
【0067】
図8F~
図8Hは、バルブディスクのシール面又はバルブシートを特別に冷却する二重慣性ポンプを備える内部冷却バルブに関連する。この場合、周方向に延在する冷却チャネルがバルブディスクのエッジ領域に配置されている。
図8Fは、図示の実施形態で使用可能なバルブベースの斜視図を示す。
図8Gは、図示の実施形態に使用可能な
図8Fにおけるバルブベースの部分断面図を示す。
図8Hは、
図8Fにおけるバルブベースが使用されたバルブの断面図を示す。
【0068】
図8Fは、バルブヘッドからバルブステム端まで延在するバルブ本体のキャビティを閉鎖するバルブベース56を示す。図示のバルブベース56は、二重慣性ポンプ用のポンプハウジング又はハウジング54を有する。この場合、先行する図に示すように、適切な二重慣性ポンプがキャビティ28,28`内に嵌め込まれている。ハウジング54のキャビティ28,28`には、半径方向孔52が設けられている。半径方向孔は、二重ポンプの下端を、エッジの周方向冷却経路50(図示の実施形態では冷却チャネルとして構成)に接続している。この場合、上部で開放されたチャネルは、バルブ本体内のキャビティ26における対応の内面によって上方から覆われているか又は閉鎖されている。半径方向孔52の半径方向開口は、互いに比較的近接して配置されている。冷却剤の短絡を回避するために、半径方向孔52の半径方向開口の間には分離要素が配置されており、これにより冷却剤がバルブディスク全体周りの長い経路上に押しやられる。構造及び作動モードについては、
図8Gの断面図からより明確になるであろう。
【0069】
図8Gは、
図8Fにおけるバルブベースの断面図を示す。断面においては、半径方向孔52の経路を明確に特定することができる。更に、ガイド体又はガイドプレート14の他の部分を特定することが可能であり、その部分により、ハウジング内における二重慣性ポンプの吸入側と圧送側とが分離される。点線矢印は、周方向冷却経路50における冷却剤の流れ方向を表している。
【0070】
バルブベース56は、2つの半径方向孔52が互いに180°オフセットするよう構成してもよい。この場合、冷却経路はもはや分離要素を必要とせず、冷却剤は、各ケースにおいて、バルブディスクのエッジにて、第1半径方向孔52から第2半径方向孔52に時計回り方向又は反時計回り方向に180°流れることができる。
【0071】
図8Hは、
図8A、
図8B、
図8D、
図8Fなどにおける部品で構成された二重慣性ポンプ4を備える内部冷却バルブ2の部分断面図を示す。
図8Hにおけるポペットバルブ2は、バルブヘッド22を有するバルブ本体20を備える。バルブ本体には、バルブヘッド22からバルブステム24内まで延在するキャビティが設けられている。キャビティは、別箇のバルブベース56によって閉鎖されている。キャビティは、バルブステムに延在する孔を有する。図示の実施形態において、キャビティは、バルブベース56によって閉鎖され、そのバルブベース56は、二重慣性ポンプ4用のハウジング54及び周方向冷却チャネル50を有する。
【0072】
制御体8は、バルブベース56のハウジング内に配置されており、その2個の制御体8には、第1及び第2ポンプ本体6,6`が嵌め込まれた2つの受け領域が設けられている。ポンプ本体6,6`には、摩擦係合要素が付加的に設けられているため、通常のモータ振動が生じた場合にこれらポンプ本体6,6`の始動が回避される。摩擦係合要素10は、板ばねとして構成することができる。更に、ガイド体が制御体8を通ってステム孔内に延在し、そのガイド体は、慣性ポンプによってステム端まで搬送又は圧送される冷却流体をガイドすると共に、他方の側の凹部を通して再び戻す。ガイド体14は更に、流れの短絡を回避するために、第1慣性ポンプと第2慣性ポンプとを分離するのが好適である。バルブステム端42まで延在する長い第1流体回路30により、冷却流体が再びバルブヘッド内に圧送される前に最小温度に達することが保証される。ポンプハウジング54は、冷却流体をバルブヘッド22のエッジにおける周方向冷却経路50にガイドするために、下端に2つの半径方向孔52を有する。
図8Hは、半径方向孔が互いに180°オフセットされた実施形態を示す。このオフセットにより、冷却流体28の一部が周方向冷却経路50を通って時計回り方向に圧送され、冷却流体の他の一部が周方向冷却経路50を通って反時計回り方向に圧送される。図示の慣性ポンプの機能も、
図3A~
図5Bに示すものに対応している。
【符号の説明】
【0073】
2 ポペットバルブ
4 慣性ポンプ
6 ポンプ本体/第1ポンプ本体
6` 第2ポンプ本体
8 制御体/第1制御体
8` 第2制御体
10 摩擦係合要素
10` 第2摩擦係合要素
12 慣性ポンプハウジング
14 ガイド体
20 バルブ本体
22 バルブヘッド
24 バルブステム
26 キャビティ
28 冷却流体
30 閉冷却回路/第1閉冷却回路
30` 第2閉冷却回路
32 バルブベース
40 孔
42 バルブステム端
44 結合凹部
46 結合ウェブ
50 周方向冷却経路
52 半径方向孔
56 バルブベースにおける慣性ポンプ用のハウジング
58 慣性ポンプ用のハウジング、半径方向孔、並びに周方向冷却経路を有するバルブベース
AP ポンプ本体の作動ストローク
AS 制御体の作動ストローク
AV バルブの作動ストローク