(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ニッケル-クロム-鉄-アルミニウム合金の使用
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20220304BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20220304BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20220304BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220304BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20220304BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20220304BHJP
C22F 1/10 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C22C19/05 G
B22F3/105
B22F3/16
B22F1/00 M
B22F9/08 A
C22F1/00 621
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 640B
C22F1/00 650A
C22F1/00 641B
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 687
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 692A
C22F1/00 694Z
C22F1/10 H
(21)【出願番号】P 2020551909
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 DE2019100229
(87)【国際公開番号】W WO2019185082
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】102018107248.1
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516236078
【氏名又は名称】ファオデーエム メタルズ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDM Metals International GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2, D-58791 Werdohl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ハッテンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ シュミット
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036485(JP,A)
【文献】特表2002-531709(JP,A)
【文献】特表2015-524023(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105149603(CN,A)
【文献】特開2019-044209(JP,A)
【文献】国際公開第2015/112730(WO,A1)
【文献】特開2013-046928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/05
B22F 1/00-8/00
B22F 10/00-12/90
B22F 9/08
C22F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造用の粉末としてのニッケル-クロム-アルミニウム合金の使用であって、前記粉末は、5~250μmのサイズの球状粒子からなり、かつこの合金は、クロム24~33%、アルミニウム1.8~4.0%、鉄0.10~7.0%、ケイ素0.001~0.50%、マンガン0.005~2.0%、チタン0.00~0.60%、
マグネシウム0.0002~0.05%、カルシウム0.0~0.05%、炭素0.005~0.12%、窒素0.001~0.050%、酸素0.00001~0.100%、リン0.001~0.030%、硫黄 最大0.010%、モリブデン 最大2.0%、タングステン 最大2.0%、残部 ニッケル及び方法に制約される通常の不純物(単位:重量%)からなり、その際に、前記粉末が、気孔径1μm超で気孔面積0.0~4%の全介在物を有する、前記使用。
【請求項2】
前記粉末が、真空不活性ガス噴霧設備(VIGA)によって製造されたものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
24~32%未満のクロム含有率を有する、請求項1から2までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
0.0~0.20%のイットリウム含有率を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
0.0~0.20%のランタン含有率を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
0.0~0.20%のセリウム含有率を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
0.0~1.1%のニオブの含有率を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
0.0~0.20%のジルコニウムの含有率を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
0.0001~0.008%のホウ素の含有率を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
さらにコバルト0.0~5.0%を含有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
さらに銅 最大0.5%を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記不純物が、Pb 最大0.002%、Zn 最大0.002%、Sn 最大0.002%の含有率で調節されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記粒子が、5~150μ
mのサイズを有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記粉末が、2g/cm
3から最大8g/cm
3の前記合金の密度までのかさ密度を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
次の関係が満たされていなければならない:
Fp≦39.9 (3a)、ここで
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4a)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である、請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
付加製造により製造される構成要素又は部材もしくは構成要素又は部材上の層のための、請求項1から15までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
石油化学工業における部材又は構成要素もしくは構成要素又は部材上の層としての、請求項1から16までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
築炉における請求項1から16までのいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた高温耐食性、良好な耐クリープ性及び改善された加工性を有する、ニッケル-クロム-鉄-アルミニウム鍛造合金の使用に関する。
【0002】
多様なニッケル、クロム及びアルミニウム含有率を有するオーステナイト系ニッケル-クロム-鉄-アルミニウム合金は、久しい以前から、築炉において及び化学工業及び石油化学工業において使用される。この使用のためには、浸炭性雰囲気中でも良好な高温耐食性及び良好な熱間強度/耐クリープ性が必要である。
【0003】
概して、第1表に示された合金の高温耐食性は、クロム含有率が増加するにつれて上昇することを述べることができる。これら全ての合金は、酸化クロム層(Cr2O3)を形成し、その下には、多かれ少なかれ連続したAl2O3層を有する。酸素強親和性元素、例えばY又はCeの少しの添加は、その耐酸化性を改善する。そのクロム含有率は、その適用分野における使用の過程で、保護層の形成のためにゆっくりと消費される。したがって、より高いクロム含有率によって、その材料の寿命が高められる、それというのも、該保護層を形成する元素クロムのより高い含有率が、そのCr含有率が臨界限度を下回り、かつCr2O3以外の酸化物、例えば鉄含有及びニッケル含有酸化物が形成される時点を先に延ばすからである。該高温耐食性のさらなる増大は、アルミニウム及びケイ素の添加によって達成されうる。特定の最低含有率から、これらの元素は、連続した層を該酸化クロム層の下に形成し、こうしてクロムの消費を低下させる。
【0004】
浸炭性雰囲気(CO、H2、CH4、CO2、H2O混合物)では、炭素はその材料中へ浸透することができるので、内部炭化物の形成となることがある。これらはノッチ付衝撃強さの損失を引き起こす。また、その融点は極めて低い値(350℃まで)に低下することがあり、かつそのマトリックスのクロム枯渇による転移過程となることがある。
【0005】
浸炭に対する高い耐性は、炭素の溶解度が低く、かつ該炭素の拡散速度が低い材料によって達成される。したがって、ニッケル合金は一般に、鉄基合金よりも浸炭に対して耐性である、それというのも、ニッケル中では炭素拡散並びに炭素溶解度は、鉄中でよりも低いからである。該クロム含有率の増加は、保護性酸化クロム層の形成によってより高い耐浸炭性を生じさせるが、ただし、そのガス中の酸素分圧がこの保護性酸化クロム層の形成のために十分ではない場合を除く。よりいっそう低い酸素分圧では、酸化ケイ素もしくはよりいっそう安定な酸化アルミニウムからなる層を形成し、双方ともさらに、明らかにより低い酸素含有率で保護性酸化物層を形成することができる、材料を使用することができる。
【0006】
その炭素活性が1より大きい場合には、ニッケル、鉄又はコバルト基合金は、“メタルダスティング”となることがある。過飽和ガスと接触すると、該合金は、大量の炭素を吸収することがある。炭素が過飽和の合金中で起こる偏折過程は、材料破壊をまねく。その際に、該合金は、金属粒子、黒鉛、炭化物及び/又は酸化物からなる混合物へと分解する。この種類の材料破壊は、500℃~750℃の温度範囲内で生じる。
メタルダスティングが生じる典型的な条件は、強浸炭性CO、H2又はCH4ガス混合物であり、例えばこれらはアンモニア合成において、メタノールプラント中で、冶金学的プロセスにおいて、しかし硬化設備炉中でも生じる。
【0007】
傾向的に、メタルダスティングに対する耐性は、該合金のニッケル含有率が増加するにつれて増大する(Grabke, H.J., Krajak, R., Mueller-Lorenz, E.M., Strauss, S.: Materials and Corrosion 47 (1996), p. 495)が、しかしながらニッケル合金も、メタルダスティングに対して抵抗性ではない。
【0008】
メタルダスティング条件下での耐食性に明らかな影響を及ぼすのは、そのクロム及びアルミニウム含有率である(
図1参照)。低いクロム含有率を有するニッケル合金(例えば合金Alloy 600、第1表参照)は、メタルダスティング条件下で比較的高い腐食率を示す。明らかにより抵抗性があるのは、25%のクロム含有率及び2.3%のアルミニウム含有率を有するニッケル合金Alloy 602 CA(N06025)並びに30%のクロム含有率を有するAlloy 690(N06690)である(Hermse, C.G.M. and van Wortel, J.C.: Metal dusting: relationship between alloy composition and degradation rate. Corrosion Engineering, Science and Technology 44 (2009), p. 182 - 185)。メタルダスティングに対する抵抗力は、Cr+Alの合計と共に増大する。
【0009】
示された温度での熱間強度もしくはクリープ強度は、とりわけ、高い炭素含有率によって改善される。しかし、高い含有率の固溶強化性元素、例えばクロム、アルミニウム、ケイ素、モリブデン及びタングステンも、その熱間強度を改善する。500℃~900℃の範囲内で、アルミニウム、チタン及び/又はニオブの添加が、その強度をそのγ′及び/又はγ″相の析出によって改善することができる。
【0010】
これらの合金についての従来技術による例は、第1表に列挙されている。
【0011】
合金、例えばAlloy 602 CA(N06025)、Alloy 693(N06693)又はAlloy 603(N06603)は、Alloy 600(N06600)又はAlloy 601(N06601)に比べて、1.8%より多い高いアルミニウム含有率に基づいて、それらの優れた耐食性について公知である。Alloy 602 CA(N06025)、Alloy 693(N06693)、Alloy 603(N06603)、及びAlloy 690(N06690)は、それらの高いクロム及び/又はアルミニウム含有率に基づいて、優れた耐浸炭性もしくは耐メタルダスティング性を示す。同時に、合金、例えばAlloy 602 CA(N06025)、Alloy 693(N06693)又はAlloy 603(N06603)は、その高い炭素含有率もしくはアルミニウム含有率に基づいて、メタルダスティングが生じる温度範囲内で優れた熱間強度もしくはクリープ強度を示す。Alloy 602 CA(N06025)及びAlloy 603(N06603)は、1000℃を上回る温度でさえもなお、優れた熱間強度もしくはクリープ強度を有する。しかしながら、例えば、その高いアルミニウム含有率によって、その加工性が損なわれ、その際に、そのアルミニウム含有率が高ければ高いほど、ますます強く損なわれることになる(Alloy 693-N06693)。同じことは高められた範囲で、ニッケルを有する低融点の金属間相を形成するケイ素に当てはまる。Alloy 602 CA(N06025)又はAlloy 603(N06603)において、殊に、その冷間成形性は、高い割合の一次炭化物によって限定されている。
【0012】
米国特許第6623869号明細書(US 6623869B1)には、C 0.2%以下、Si 0.01~4%、Mn 0.05~2.0%、P 0.04%以下、S 0.015%以下、Cr 10~35%、Ni 30~78%、Al 0.005~4.5%、N 0.005~0.2%、及びCu 0.015~3%及びCo 0.015~3%のうち1種又は2種の元素、100%までの残部が鉄からなる、金属材料が開示されていた。その際に、40Si+Ni+5Al+40N+10(Cu+Co)の値は、50未満ではなく、その際に、その元素の記号は、相応する元素の含有率を意味する。該材料は、メタルダスティングが起こりうる環境中で傑出した耐食性を有し、したがって、石油精製所又は石油化学プラントにおける煙突、パイプ系、熱交換器管等に使用することができ、かつ該プラントの寿命及び安全性をかなり改善することができる。
【0013】
欧州特許出願公開第0508058号明細書(EP 0 508 058 A1)には、C 0.12~0.3%、Cr 23~30%、Fe 8~11%、Al 1.8~2.4%、Y 0.01~0.15%、Ti 0.01~1.0%、Nb 0.01~1.0%、Zr 0.01~0.2%、Mg 0.001~0.015%、Ca 0.001~0.01%、N 最大0.03%、Si 最大0.5%、Mn 最大0.25%、P 最大0.02%、S 最大0.01%、Ni 残部(溶融に制約された不可避の不純物を含む)(単位:重量%)からなる、オーステナイト系ニッケル-クロム-鉄合金が開示されている。
【0014】
米国特許第4882125号明細書(US 4882125 B1)には、高クロム含有ニッケル合金が開示されており、該合金は、1093℃を超える温度での硫化及び酸化に対する傑出した耐性、983℃を上回る温度及び2000PSIの応力で200時間を超える傑出した耐クリープ性、双方とも室温及び高められた温度での良好な引張強度及び良好な伸びによって特徴付けられており、Cr 27~35%、Al 2.5~5%、Fe 2.5~6%、Nb 0.5~2.5%、C 0.1まで、Ti及びZr それぞれ1%まで、Ce 0.05%まで、Y 0.05%まで、Si 1%まで、Mn 1%まで及び残部 Niからなる(単位:重量%)。
【0015】
欧州特許出願公開第0549286号明細書(EP 0 549 286 A1)には、Ni 55~65%、Cr 19~25%、Al 1~4.5%、Y 0.045~0.3%、Ti 0.15~1%、C 0.005~0.5%、Si 0.1~1.5%、Mn 0~1%及びMg、Ca、Ceを含む群の元素のうち少なくとも1種 合計で少なくとも0.005%、Mg+Ca 合計で<0.5%、Ce <1%、B 0.0001~0.1%、Zr 0~0.5%、N 0.0001~0.2%、Co 0~10%、残部 鉄及び不純物を含む、耐高温性Ni-Cr合金が開示されている。
【0016】
独国特許発明第60004737号明細書(DE 600 04 737 T2)により、C≦0.1%、Si 0.01~2%、Mn≦2%、S≦0.005%、Cr 10~25%、Al 2.1~<4.5%、N≦0.055%、元素B、Zr、Hfのうち少なくとも1種 全部で0.001~1%を含む耐熱性ニッケル基合金が公知になっており、その際に、挙げられた元素は、次の含有率で存在していてよい:B≦0.03%、Zr≦0.2%、Hf<0.8%。Mo 0.01~15%、W 0.01~9%、その際に、2.5~15%のMo+W全含有率が与えられていてよい、Ti 0~3%、Mg 0~0.01%、Ca 0~0.01%、Fe 0~10%、Nb 0~1%、V 0~1%、Y 0~0.1%、La 0~0.1%、Ce 0~0.01%、Nd 0~0.1%、Cu 0~5%、Co 0~5%、残部ニッケル。Mo及びWについては、次の式が満たされていなければならない:
2.5≦Mo+W≦15 (1)
【0017】
西独国特許出願公開第2417186号明細書(DE 2417186)には、金属炭化物15~40%と、モリブデン0.5~3.5%、アルミニウム0.5~2.5%、クロム13.5~33.0%、残部 ニッケルを有するニッケル合金60~85%とからなる(単位:重量%)、金属炭化物含有の鉄不含オーステナイト系焼結合金の、高い塩化物濃度を有する水性媒体に対して耐食性でなければならず、切削加工後に時効処理によってより高い硬さ及び耐摩耗性に硬化可能な物品用の材料としての使用が記載されている。
【0018】
欧州特許出願公開第1505166号明細書(EP 1505166 A1)には、Cr 32~44質量%、Al 2.3~6質量%、残部 Ni、不純物、及び付加的な微量元素を含有するNi-Cr合金からなる切削要素が記載されており、その際に、≧52のロックウェルC硬さを有する。
【0019】
本発明の基礎をなす課題は、十分に高いクロム及びアルミニウム含有率を有することで、高腐食性条件における優れた耐食性、例えば優れた耐メタルダスティング性が保証されており、しかし同時に
・良好な相安定性
・良好な加工性
・Alloy 602 CA(N06025)に類似した、空気中での良好な耐食性
・良好な熱間強度/クリープ強度
を有する、ニッケル合金の使用を考案することにある。
【0020】
この課題は、付加製造用の粉末としてのニッケル-クロム-アルミニウム合金の使用によって解決され、その際に、該粉末は、5~250μmのサイズの球状粒子からなり、かつこの合金は、クロム24~33%、アルミニウム1.8~4.0%、鉄0.10~7.0%、ケイ素0.001~0.50%、マンガン0.005~2.0%、チタン0.00~0.60%、マグネシウム及び/又はカルシウム それぞれ0.0~0.05%、炭素0.005~0.12%、窒素0.001~0.050%、酸素0.00001~0.100%、リン0.001~0.030%、硫黄 最大0.010%、モリブデン 最大2.0%、タングステン 最大2.0%、残部 ニッケル及び方法に制約される通常の不純物(単位:重量%)からなり、その際に、該粉末は、気孔径>1μmで、 気孔面積0.0~4%の全介在物を有する。
【0021】
本発明の対象の有利なさらなる展開は、付随する従属請求項から読み取ることができる。
【0022】
その粒子サイズの分布範囲は、5~250μmであり、その際に、好ましい範囲は、5~150μm、もしくは10~150μmである。
【0023】
該粉末は、評価される対象の全面積に比較して、気孔面積0.0~4%(気孔>1μm)のガス介在物を有し、その際に、好ましい範囲は、次のとおりである:
- 0.0~2%
- 0.0~0.5%
- 0.0~0.2%
- 0.0~0.1%
- 0.0~0.05%
【0024】
該粉末は、2g/cm3から約8g/cm3の該合金の密度までのかさ密度を有し、その際に、好ましい範囲は次の値であってよい:
- 4~5g/cm3
- 2~8g/cm3
- 2~7g/cm3
- 3~6g/cm3
【0025】
該粉末のガス介在物の量は、製造される部品の低い残留気孔率を可能にする。
【0026】
元素クロムの分布範囲は24~33%であり、その際に、好ましい範囲は、次のとおり調節することができる:
- 24~<32%
- 25~<32%
- 26~<32%
- 27~<32%
- 28~<32%
- 28~<32%
- 28~31%
- 28~30%
- 29~31%
【0027】
そのアルミニウム含有率は1.8~4.0%であり、その際に、ここでも、該合金の使用分野に応じて、好ましいアルミニウム含有率は、次のとおり与えられて調節することができる:
- 1.8~3.2%
- 2.0~3.2%
- 2.0~<3.0%
- 2.0~2.8%
- 2.2~2.8%
- 2.2~2.6%
【0028】
その鉄含有率は0.1~7.0%であり、その際に、適用分野に応じて、好ましい含有率は次の分布範囲内で調節することができる:
- 0.1~4.0%
- 0.1~3.0%
- 0.1~<2.5%
- 0.1~2.0%
- 0.1~1.0%
【0029】
そのケイ素含有率は0.001~0.50%である。好ましくは、Siは、その分布範囲内で、次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.001~0.20%
- 0.001~<0.10%
- 0.001~<0.05%
【0030】
同じことは、元素マンガンに当てはまり、この元素は0.005~2.0%で該合金中に含まれていてよい。あるいは、次の分布範囲も考えられる:
- 0.005~0.50%
- 0.005~0.20%
- 0.005~0.10%
- 0.005~<0.05%
【0031】
そのチタン含有率は0.0~0.60%である。好ましくは、Tiは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.001~0.60%
- 0.001~0.50%
- 0.001~0.30%
- 0.01~0.30%
- 0.01~0.25%
【0032】
マグネシウム及び/又はカルシウムも、0.00~0.05%の含有率で含まれている。好ましくは、これらの元素を次のとおり該合金中で調節する可能性がある:
- >0.00~0.03%
- >0.00~0.02%
- >0.00~0.02%
【0033】
該合金は炭素0.005~0.12%を含有する。好ましくは、炭素は、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.01~0.10%
- 0.02~0.10%
- 0.03~0.10%
【0034】
このことは、同じように元素窒素に当てはまり、この元素は0.0005~0.05%の含有率で含まれている。好ましい含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- 0.001~0.04%
【0035】
該合金は、さらに、リンを0.001~0.030%の含有率で含有する。好ましい含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- 0.001~0.020%
【0036】
該合金は、さらに、酸素を0.00001~0.100%の含有率で含有する。好ましい含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- 0.00001~0.1
- 0.00002~0.1
- 0.00005~0.1
- 0.00008~0.1
- 0.0001~0.1
- 0.0002~0.1
- 0.0005~0.1
- 0.0008~0.1
- 0.001~0.1
- 0.002~0.1
- 0.005~0.1
- 0.008~0.1
- 0.010~0.1
- 0.00001~0.10
- 0.00001~0.08
- 0.00001~0.05
- 0.00001~0.03
- 0.00001~0.02
【0037】
元素硫黄は、次のとおり該合金中で与えられている:
- 硫黄 最大0.010%
【0038】
モリブデン及びタングステンは、個々にか又は組み合わせで、該合金中でそれぞれ最大2.0%の含有率で含まれている。好ましい含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- Mo 最大1.0%
- W 最大1.0%
- Mo 最大<1.0%
- W 最大<1.0%
- Mo 最大<0.50%
- W 最大<0.50%
- Mo 最大<0.05%
- W 最大<0.05%
【0039】
高腐食性条件については、しかし殊に、良好な耐メタルダスティング性については、CrとAlとの間で次の関係が満たされている場合に有利である:
Cr+Al≧28 (2a)
その際に、Cr及びAlは、質量%での当該元素の濃度である。
好ましい範囲は、
Cr+Al≧29 (2b)
Cr+Al≧30 (2c)
Cr+Al≧31 (2d)
で調節することができる。
【0040】
さらにまた、十分な相安定性が与えられているためには、次の関係が満たされていなければならない:
Fp≦39.9 (3a)、ここで
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4a)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0041】
好ましい範囲は、
Fp≦38.4 (3b)
Fp≦36.6 (3c)
で調節することができる。
【0042】
選択的に、該合金中で、元素イットリウムは、0.0~0.20%の含有率で調節することができる。好ましくは、Yは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.0~0.15%
- 0.0~0.10%
- 0.0~<0.10%
- >0.0~0.08%
- 0.001~<0.045%
【0043】
選択的に、該合金中で、元素ランタンは、0.0~0.20%の含有率で調節することができる。好ましくは、Laは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.0~0.15%
- 0.0~0.10%
- 0.0~<0.10%
- >0.0~0.08%
- 0.001~0.04%
【0044】
選択的に、該合金中で、元素Ceは、0.0~0.20%の含有率で調節することができる。好ましくは、Ceは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.0~0.15%
- 0.0~0.10%
- 0.0~<0.10%
- >0.0~0.08%
- 0.001~0.04%
【0045】
選択的に、Ce及びLaの同時の添加の場合に、セリウムミッシュメタルも、0.0~0.20%の含有率で、使用することができる。好ましくは、セリウムミッシュメタルは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.0~0.15%
- 0.0~0.10%
- 0.0~<0.10%
- >0.0~0.08%
- 0.001~0.04%
【0046】
選択的に、該合金中で、元素Nbは、0.0~1.10%の含有率で調節することができる。好ましくは、Nbは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.001~<1.10%
- 0.001~<1.0%
- 0.001~<0.70%
- 0.001~<0.50%
- 0.001~0.30%
- 0.01~0.3%
【0047】
Nbが該合金中に含まれている場合には、式4aは、次のとおり、Nbを有する項について補足されなければならない:
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+1.26×Nb+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4b)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Nb、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0048】
選択的に、そのジルコニウム含有率は0.00~0.20%であってよい。好ましくは、Zrは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- 0.0~0.15%
- >0.0~<0.10%
- 0.001~0.07%
- 0.001~0.04%
【0049】
選択的に、該合金中で、元素ハフニウムは、0.0~0.20%の含有率で調節することができる。好ましくは、Hfは、その分布範囲内で次のとおり該合金中で調節することができる:
- -0.0~0.15%
- >0.0~<0.10%
- 0.001~0.07%
- 0.001~0.04%
【0050】
選択的に、該合金中にタンタル0.001~0.60%も含まれていてよい。
【0051】
好ましいTa含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- 0.01~0.50%
- 0.01~0.40%
- 0.01~0.30%
- 0.01~0.20%
- 0.01~0.10%
- 0.01~<0.10%
【0052】
選択的に、元素ホウ素は次のとおり、該合金中に含まれていてよい:
- ホウ素 0.0001~0.008%
【0053】
好ましい含有率は、次のとおり与えられていてよい:
- ホウ素 0.0005~0.008%
- ホウ素 0.0005~0.004%
【0054】
さらに、該合金は、コバルト0.0~5.0%を含有することができ、これはさらにまた、なお次のとおり限定することができる:
- 0.01~5.0%
- 0.01~2.0%
- 0.1~2.0%
- 0.01~0.5%
- 0.01~<0.1%
【0055】
さらに、該合金中にCu最大0.5%が含まれていてよい。
【0056】
銅の含有率は、さらにまた次のとおり限定することができる:
- Cu 最大<0.20%又は0.20
- Cu 最大<0.10%又は0.10
- Cu 最大<0.05%又は0.05
- Cu 最大<0.015%
【0057】
Cuが該合金中に含まれている場合には、式4aは、次のとおり、Cuを有する項について補足されなければならない:
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+0.477×Cu+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4c)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Cu、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0058】
Nb及びCuが該合金中に含まれている場合には、式4aは、次のとおり、Nbを有する項及びCuを有する項について補足されなければならない:
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+1.26×Nb+0.477×Cu+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4d)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Nb、Cu、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0059】
さらに、該合金中に、バナジウム最大0.5%が含まれていてよい。
【0060】
バナジウムの含有率は、さらにまた次のとおり限定することができる:
- V 最大<0.10%
【0061】
最後に、不純物については、さらに元素鉛、亜鉛及びスズは含有率で次のとおり与えられていてよい:
- Pb 最大0.002%
- Zn 最大0.002%
- Sn 最大0.002%
【0062】
さらに、選択的に、特に良好な加工性を説明する、次の関係が満たされていてよい:
Fa≦60 (5a)、ここで
Fa=Cr+20.4×Ti+201×C (6a)
その際に、Cr、Ti及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0063】
好ましい範囲は、
Fa≦54 (5b)
で調節することができる。
【0064】
Nbが該合金中に含まれている場合には、式6aは、次のとおり、Nbを有する項について補足されなければならない:
Fa=Cr+6.15×Nb+20.4×Ti+201×C (6b)
その際に、Cr、Nb、Ti及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0065】
さらに、選択的に、特に良好な熱間強度もしくはクリープ強度を説明する、次の関係が満たされていてよい:
Fk≧45 (7a)、ここで
Fk=Cr+19×Ti+10.2×Al+12.5×Si+98×C (8a)
その際に、Cr、Ti、Al、Si及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0066】
好ましい範囲は、
Fk≧49 (7b)
Fk≧53 (7c)
で調節することができる。
【0067】
Nb及び/又はBが該合金中に含まれている場合には、式8aは、次のとおり、Nb及び/又はBを有する項について補足されなければならない:
Fk=Cr+19×Ti+34.3×Nb+10.2×Al+12.5×Si+98×C+2245×B (8b)
その際に、Cr、Ti、Nb、Al、Si、C及びBは、質量%での当該元素の濃度である。
【0068】
本発明による粉末は、好ましくは、真空不活性ガス噴霧設備(VIGA)中で製造される。この設備中で、該合金は、真空誘導溶融炉(VIM)中で溶融され、ガスノズルへ導く湯口へ導かれ、該ノズル中で、溶融された金属が、5~100barの高い圧力下で不活性ガスと共に噴霧されて金属粒子になる。該溶融物は、溶融るつぼ中でその融点を5~400℃を上回り加熱される。該噴霧の際の金属流量は、0.5~80kg/分であり、かつそのガス流量は、2~150m3/分である。その急速冷却によって、該金属粒子は球形で凝固する(球状粒子)。該噴霧の際に使用される不活性ガスは、必要に応じて、窒素0.01~100%を含有していてよい。サイクロン中で、ついでその気相が該粉末から分離され、続いて該粉末が包装される。
【0069】
該粉末製造の際の不活性ガスは、選択的に、アルゴンもしくはアルゴンと窒素0.01~<100%との混合物であってよい。該窒素含有率の可能な限定は、
- 0.01~80%
- 0.01~50%
- 0.01~30%
- 0.01~20%
- 0.01~10%
- 0.01~10%
- 0.1~5%
- 0.5~10%
- 1~5%
- 2~3%
であってよい。
【0070】
あるいは、選択的に、該不活性ガスはヘリウムであってよい。
【0071】
該不活性ガスは、好ましくは、少なくとも99.996体積%の純度を有していてよい。殊に、0.0~10ppmvの窒素含有率、0.0~4ppmvの酸素含有率及び≦5ppmvのH2O含有率を有するべきである。
【0072】
殊に、該不活性ガスは、好ましくは、少なくとも99.999体積%の純度を有していてよい。殊に、0.0~5ppmvの窒素含有率、0.0~2ppmvの酸素含有率及び≦3ppmvのH2O含有率を有するべきである。
【0073】
該設備中の露点は、-10~-120℃の範囲内である。該露点は、好ましくは-30~-100℃の範囲内である。
【0074】
該粉末噴霧の際の圧力は、好ましくは10~80barであってよい。
【0075】
付加製造によって製造される部材及び構成要素もしくは部材及び構成要素上の層は、5~500μmの層厚から形成され、かつその製造直後に、2μm~1000μmの平均粒度の、造形方向に伸びた粒を有する集合組織を有する。その好ましい範囲は、5μm~500μmである。
【0076】
付加製造によって製造される部材及び構成要素もしくは部材及び構成要素上の層を、選択的に、700℃~1250℃の温度範囲内で、0.1分~70時間、場合により保護ガス、例えばアルゴン又は水素下で、溶体化処理し、続いて、空気中で、移動する焼きなまし雰囲気中又は水浴中で冷却することができる。その後、選択的に、該表面は、酸洗い、ブラスト処理、研削、旋削、皮むき、フライス削りによって清浄化又は機械加工することができる。そのような機械加工は、選択的に、部分的に又は完全にすでに該焼きなましの前にも行うことができる。
【0077】
付加製造によって製造される部材及び構成要素もしくは部材及び構成要素上の層は、焼きなまし後に、2μm~2000μmの平均粒度を有する。その好ましい範囲は20μm~500μmである。
【0078】
本発明により製造された粉末から付加製造によって製造される部材及び構成要素もしくは部材及び構成要素上の層は、好ましくは、高腐食性条件、例えば強浸炭性条件が優勢である範囲内で、例えば石油化学工業における部材の場合に、使用されるべきである。さらにまた、これは、築炉にも適している。
【0079】
付加製造は、例えば生産的製造(generative Fertigung)、ラピッドテクノロジー、ラピッドツーリング、ラピッドプロトタイピング等の概念でもあると理解される。
【0080】
一般に、ここでは:
粉末を用いる3D印刷、
選択的レーザー焼結及び
選択的レーザー溶融
レーザークラッディング
選択的電子ビーム溶接
が区別される。
【0081】
実施された試験:
平衡状態において生じる相を、その多様な合金変型について、ThermotechのプログラムJMatProを用いて計算した。該計算のためのデータベースとして、Thermotechのニッケル基合金用のデータバンクTTNI7を使用した。
【0082】
その成形性は、室温でのDIN EN ISO 6892-1による引張試験において決定される。その際に、耐力Rp0.2、引張強度Rm及び破断までの伸びAが決定される。伸びAは、破断された試料について、原標点距離L0の伸長から決定される:
A=(Lu-L0)/L0 100%=ΔL/L0 100%
ここで、Lu=破断後の標点距離。
【0083】
標点距離に応じて、破断伸びは添え字を備える:
例えば、A5については、標点距離L0=5・d0であり、ここで、d0=円形試料の原直径
【0084】
該試験を、測定範囲内で6mmの直径及び30mmの標点距離L0を有する円形試料で実施した。その試料採取を、その半製品の成形方向に対して横方向に行った。その成形速度は、Rp0.2の場合に10MPa/s及びRmの場合に6.7×10-3 1/s(40%/分)であった。
【0085】
室温での引張試験における伸びAの大きさは、その変形性の尺度としてみなすことができる。良好に加工できる材料は、少なくとも50%の伸びを有するべきである。
【0086】
該熱間強度は、DIN EN ISO 6892-2による高温引張試験において決定される。その際に、耐力Rp0.2、引張強度Rm及び破断までの伸びAが、室温での引張試験(DIN EN ISO 6892-1)に類似して、決定される。
【0087】
該試験を、測定範囲内で6mmの直径及び30mmの原標点距離L0を有する円形試料で実施した。その試料採取を、その半製品の成形方向に対して行った。その成形速度は、Rp0,2の場合に8.33×10-5 1/s(0.5%/分)及びRmの場合に8.33×10-4 1/s(5%/分)であった。
【0088】
該試料を、室温で引張試験機中へ取り付け、かつ引張力を伴う荷重なしで所望の温度に加熱する。その試験温度に達した後に、該試料を、荷重なしで、1時間(600℃)もしくは2時間(700℃~1100℃)、温度平衡化のために保持する。その後、該試料を、所望の伸び速度が守られるように引張力で荷重をかけ、かつ該試験が開始される。
【0089】
材料のクリープ強度は、熱間強度が増加するにつれて改善される。したがって、該熱間強度は、多様な材料のクリープ強度の評価にも利用される。
【0090】
より高い温度での耐食性は、空気中で1000℃での酸化試験において決定され、その際に、該試験を全て96時間で中断し、かつ該試料の酸化による質量変化を決定した。該試料を、該試験の際にセラミックるつぼ中に入れたので、場合によりはがれた酸化物が捕集され、かつ該酸化物を含有するるつぼの秤量によって、はがれた酸化物の質量を決定することができる。はがれた酸化物の質量及び該試料の質量変化の合計が、該試料の総体質量変化である。該比質量変化は、該試料の表面積を基準とした質量変化である。これらは、以下に、比正味質量変化についてはmNett、比総体質量変化についてはmBrutto、はがれた酸化物の比質量変化についてはmspallで表される。該実験を、厚さ約5mmを有する試料で実施した。各装入物のうち3つの試料を時効処理し、示された値は、これら3つの試料の平均値である。
【0091】
特性の説明
本発明による合金は、高腐食性条件における優れた耐食性に加えて、ここでは例えば、優れた、耐メタルダスティング性を、次の特性と同時に有するべきである:
・良好な相安定性
・良好な加工性
・Alloy 602CA(N06025)に類似した、空気中での良好な耐食性
・良好な熱間強度/クリープ強度
【0092】
相安定性
Ti及び/又はNbを添加した、ニッケル-クロム-アルミニウム-鉄の系において、合金含有率に応じて、多様な脆化TCP相、例えばラーベス相、σ相又はμ相あるいは脆化η相又はε相も形成されうる(例えばRalf Buergel, Handbuch der Hochtemperaturwerkstofftechnik, 第3版, Vieweg Verlag, Wiesbaden, 2006, p. 370 - 374参照)。例えばN06690について装入物111389の温度に依存した平衡相割合の計算(第2表 典型的な組成参照)は、計算によれば、大きな量割合の720℃(T
s
BCC)を下回るα-クロム(
図2中のBCC相)の形成を示す。しかし、この相は、これが分析上、ベース材料とは極めて異なっていることによって、困難にのみ形成される。しかしながら、この相の形成温度T
s
BCCが極めて高い場合には、この相は十分に、例えば“E. Slevolden, J.Z. Albertsen. U. Fink, “Tjeldbergodden Methanol Plant: Metal Dusting Investigations,” Corrosion/2011, paper no. 11144 (Houston, TX: NACE 2011), p. 15”には、Alloy 693 UNS 06693の変型について記載されているように、生じることがある。
図3及び
図4は、Alloy 693変型(米国特許第4882125号明細書、第1表から)、第2表からのAlloy 3もしくはAlloy 10の相図を示す。この相は脆く、かつ該材料の望ましくない脆化をまねく。Alloy 3は、1079、Alloy 10は、639の形成温度T
s
BCCを有する。“E. Slevolden, J.Z. Albertsen. U. Fink, Tjeldbergodden Methanol Plant: Metal Dusting Investigations," Corrosion/2011, paper no. 11144 (Houston, TX: NACE 2011), p. 15”には、α-クロム(BCC)が生じる該合金の正確な分析は記載されていない。しかし、第2表にAlloy 693について示された例の中では、計算によれば最も高い形成温度T
s
BCCを有する分析(例えばAlloy 10)の場合に、α-クロム(BCC相)が形成されうることから出発されうる。修正された分析(低下された形成温度T
s
BCCを有する)の場合に、“E. Slevolden, J.Z. Albertsen. U. Fink, Tjeldbergodden Methanol Plant: Metal Dusting Investigations,” Corrosion/2011, paper no. 11144 (Houston, TX: NACE 2011), p. 15”において、α-クロムがついで表面近傍においてしか観察されなかった。そのような脆化相が生じるのを回避するために、本発明による合金の場合に、該形成温度T
s
BCCは、939℃以下である―最も低い形成温度T
s
BCCは、第2表中のAlloy 693(米国特許第4882125号明細書、第1表から)の例を下回るべきである。
【0093】
これは殊に、次の式が満たされている場合がそうである:
Fp≦39.9 (3a)、ここで
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4a)
その際に、Cr、Al、Fe、Si、Ti、Nb、Cu、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。従来技術による合金を伴う第2表は、Fpが、Alloy 8、Alloy 3及びAlloy 2については39.9より大きく、かつAlloy 10についてはちょうど39.9であることを示す。939℃未満のTs
BCCを有する他の全ての合金については、Fp≦39.9である。
【0094】
加工性
例示的に、ここでは、その成形性はその加工性であるとみなされる。
【0095】
合金は、複数の機構によって硬化させることができるので、合金は、高い熱間強度もしくは耐クリープ性を有する。例えば、他の元素の合金化は、元素に応じて、該強度の多かれ少なかれ大きな増大を引き起こす(混晶硬化)。はるかにより効果的であるのは、微細な粒子又は析出による該強度の増大である(粒子硬化)。このことは、例えば、ニッケル合金へのAl及びさらなる元素、例えばTiの添加の際に形成されるγ′相によるか、又はクロム含有ニッケル合金への炭素の添加により形成される炭化物により、行うことができる(例えばRalf Buergel, Handbuch der Hochtemperaturwerkstofftechnik, 第3版, Vieweg Verlag, Wiesbaden, 2006, p. 358 - 369参照)。
【0096】
γ'相を形成する元素の含有率もしくはC含有率の増加は、確かにその熱間強度を高めるが、しかし、溶体化処理された状態でさえ、その変形性をますます損なう。
【0097】
極めて良好に成形できる材料については、50%以上、しかし少なくとも45%以上の室温での引張試験における伸びA5が目指される。
【0098】
このことは、殊に、炭化物を形成する元素Cr、Nb、Ti及びCの間で次の関係が満たされている場合に達成される:
Fa≦60 (5a)、ここで
Fa=Cr+6.15×Nb+20.4×Ti+201×C (6b)
その際に、Cr、Nb、Ti及びCは、質量%での当該元素の濃度である。
【0099】
熱間強度/クリープ強度
同時に、より高い温度でのその耐力もしくは引張強度は、Alloy 601の値を少なくとも達成すべきである(第4表参照):
600℃:耐力Rp0.2>150MPA;引張強度Rm>500MPA(9a、9b)
800℃:耐力Rp0.2>130MPA;引張強度Rm>135MPA(9c、9d)
【0100】
望ましいであろうことは、その耐力もしくは引張強度が、Alloy 602 CAの範囲内であることである(第4表参照)。次の4つの関係のうち少なくとも3つが満たされているべきである:
600℃:耐力Rp0.2>250MPA;引張強度Rm>570MPA(10a、10b)
800℃:耐力Rp0.2>180MPA;引張強度Rm>190MPA(10c、10d)
【0101】
このことは、殊に、主に硬化性の元素の間での次の関係が満たされている場合に達成される:
Fk≧45 (7a)、ここで
Fk=Cr+19×Ti+34.3×Nb+10.2×Al+12.5×Si+98×C+2245×B (8b)
その際に、Cr、Ti、Nb、Al、Si、C及びBは、質量%での当該元素の濃度である。
【0102】
耐食性:
本発明による合金は、Alloy 602CA(N06025)に類似した、空気中での良好な耐食性を有するべきである。
【実施例】
【0103】
製造:
該粉末から製造される部材及び構成要素の特性を確かめるために、実験室規模で真空炉中で溶融された合金が使用される。
【0104】
第3a表及び第3b表は、Alloy 602CA(N06025)、Alloy 690(N06690)、Alloy 601(N06601)の従来技術による、比較のために採用された、大規模に溶融されたいくつかの装入物と共に、実験室規模で溶融された装入物の分析を示す。従来技術による装入物は、Tの印を付けてあり、本発明によるものは、Eの印を付けてある。実験室規模で特徴付けられる装入物は、Lの印を付けてあり、大規模に溶融された装入物は、Gの印を付けてある。
【0105】
第3a表及び第3b表中の実験室規模で真空中で溶融された合金のブロックを、900℃~1270℃で8時間焼きなましし、かつ熱間圧延及びさらなる中間焼きなましによって900℃~1270℃で0.1~1時間、13mmもしくは6mmの最終厚さに熱間圧延した。こうして製造された薄板を、900℃~1270℃で1時間、溶体化処理した。これらの薄板から、該測定に必要とされる試料を製造した。
【0106】
大規模に溶融された合金の場合に、大規模な製造から、企業により製造された適切な厚さを有する薄板からサンプルを採取した。これらの薄板から、該測定に必要とされる試料を製造した。
【0107】
全ての合金変型は、典型的には、70~300μmの粒度を有していた。
【0108】
第3a表及び第3b表中の例の装入物については、次の特性が比較される:
- 高腐食性雰囲気中での高い耐食性の例としての耐メタルダスティング性
- 相安定性
- 室温での引張試験に基づく成形性
- 高温引張実験を用いた熱間強度/耐クリープ性
- 酸化試験を用いた耐食性
【0109】
実験室規模で溶融された装入物2297~2308及び250060~250149、しかし殊に本発明による、Eの印を付けた装入物(2301、250129、250132、250133、250134、250137、240138、250147、250148)では、式(2a) Al+Cr≧28が満たされている。したがって、これらは、耐メタルダスティング性に課されている要件を満たす。
【0110】
第2表中の従来技術による選択された合金及び全ての実験室装入物(第3a表及び第3b表)については、その目的で相図が計算され、かつその形成温度Ts
BCCが、第2表及び第3a表へ記入された。第2表もしくは第3a表及び第3b表中の組成については、式4aによるFpの値も計算された。Fpは、その形成温度Ts
BCCが大きければ大きいほど、ますます大きくなる。Alloy 10よりも高い形成温度Ts
BCCを有するN06693の全ての例は、Fp>39.9を有する。要件Fp≦39.9(式3a)は、すなわち、合金の場合の十分な相安定性を得るための良好な基準である。第3a表及び第3b表中の全ての実験室装入物は、基準Fp≦39.9を満たす。
【0111】
第4表へは、室温(RT)及び600℃についての耐力Rp0.2、引張強度Rm及び伸びA5、さらに800℃についての引張強度Rmが記入されている。さらに、Fa及びFkの値が記入されている。
【0112】
従来技術による合金Alloy 602 CAの例の装入物156817及び160483は、第4表において、36もしくは42%の比較的小さい室温での伸びA5を有し、これらは良好な成形性の要件を下回る。Faは、60より大きく、ひいては良好な成形性を特徴付ける範囲を上回る。本発明による全ての合金(E)は、50%より大きい伸びを示す。したがって、これらは該要件を満たす。Faは、本発明による全ての合金については60より小さい。したがって、これらは、良好な成形性の範囲内にある。該伸びは、Faが比較的小さい場合に特に高い。
【0113】
第4表中の従来技術による合金Alloy 601の例の装入物156658は、600℃もしくは800℃での耐力及び引張強度への最低要件の一例であり、従来技術による合金Alloy 602 CAの例の装入物156817及び160483は、それに対して、600℃もしくは800℃での耐力及び引張強度の極めて良好な値の例である。Alloy 601は、関係9a~9dにおいて記載される、熱間強度もしくはクリープ強度への最低要件を示す材料を代表し、Alloy 602 CAは、関係10a~10dにおいて記載される、傑出した熱間強度もしくはクリープ強度を示す材料を代表する。Fkの値は、双方の合金については明らかに45よりも大きく、かつAlloy 602 CAについては付加的に、Alloy 601の値よりもいっそう明らかに大きく、このことは、Alloy 602 CAの高められた強度値を反映する。本発明による合金(E)は、全て、Alloy 601の範囲内又はそれを明らかに上回る600℃もしくは800℃での耐力及び引張強度を示し、すなわち、関係9a~9dを満たした。これらは、Alloy 602 CAの値の範囲内であり、かつ望ましい要件、すなわち、関係10a~10dの4つのうち3つも満たす。Fkも、第4表中の例における本発明による全ての合金については45より大きく、まさにそれどころか、たいてい54より大きく、ひいては良好な熱間強度もしくは耐クリープ性により特徴付けられている範囲内である。本発明によらない実験室装入物のうち、装入物2297及び2300は、関係9a~9dを満たさず、かつ45未満のFkも有する例である。
【0114】
第5表は、96時間のサイクル11回、すなわち全部で1056時間後の空気中で1100℃での酸化試験後の比質量変化を示す。第5表に示されているのは、1056時間後の比総体質量変化、比正味質量変化及びはがれた酸化物の比質量変化である。従来技術による合金Alloy 601及びAlloy 690の例の装入物は、Alloy 602 CAよりも明らかにより高い総体質量変化を示し、その際に、Alloy 601の総体質量変化は、Alloy 690よりも倍で明らかに大きい。双方とも、酸化アルミニウム層よりも速く成長する酸化クロム層を形成する。Alloy 601は、Al約1.3%をさらに含有する。この含有率は、部分的のみの場合でも連続した酸化アルミニウム層をすでに形成するには低すぎ、そのために該アルミニウムは、該酸化物層の下の該金属材料の内部で酸化し(内部酸化)、このことは、Alloy 690に比べて高められた質量増加を引き起こす。Alloy 602 CAは、アルミニウム約2.3%を有する。そのために、この合金の場合に、該酸化クロム層の下に、少なくとも部分的に連続した酸化アルミニウム層が形成されうる。このことは、該酸化物層の成長、ひいては該比質量増加も、かなり低下させる。本発明による全ての合金(E)は、アルミニウム少なくとも2%を含有し、そのために、Alloy 602 CAに類似して少ないもしくはより少ない総体質量増加を有する。また、本発明による全ての合金は、Alloy 602 CAの例の装入物に類似して、その測定精度の範囲内のはがれを示すのに対して、Alloy 601及びAlloy 690は、大きなはがれを示す。
【0115】
したがって、付加製造用の粉末としての合金“E”の本発明による使用のための請求の範囲に記載の限度は、次のとおり詳細に理由を挙げることができる:
5μmを下回る小さすぎる粒子サイズは、その流動挙動を悪化させ、したがって回避されるべきであり、250μmを上回る大きすぎる粒子サイズは、付加製造の際の挙動を悪化させる。
【0116】
2g/cm2の低すぎるかさ密度は、付加製造の際の挙動を悪化させる。約8g/cm3の最大限のかさ密度は、該合金の密度によって与えられている。
【0117】
低すぎるCr含有率は、該Cr濃度が、腐食性雰囲気中での該合金の使用の際に、極めて急速にその臨界限度未満に低下するので、もはや連続した酸化クロム層が形成されることができないことを意味する。この理由で、Cr 24%は、クロムの下限である。高すぎるCr含有率は、殊に≧1.8%の高いアルミニウム含有率で、該合金の相安定性を悪化させる。この理由で、Cr 33%を上限とみなすことができる。
【0118】
該酸化クロム層の下の酸化アルミニウム層の形成は、その酸化速度を低下させる。Al 1.8%を下回ると、該酸化アルミニウム層は、それらの作用を完全に発揮するには、隙間がありすぎる。高すぎるAl含有率は、該合金の加工性を損なう。この理由で、4.0%のAl含有率はその上限である。
【0119】
該合金のコストは、その鉄含有率の低下と共に上昇する。0.1%を下回ると、該コストは不釣り合いに大きく上昇する、それというのも、特別な予備材料が使用されなければならないからである。この理由で、Fe 0.1%はコストの理由から下限とみなすことができる。該鉄含有率の増大につれて、その相安定性(脆化相の形成)は、殊に高いクロム及びアルミニウム含有率で、低下される。この理由で、Fe 7%は、本発明による合金の相安定性を保証するための有意義な上限である。
【0120】
Siは、該合金の製造の際に必要とされる。この理由で、0.001%の最低含有率が必要である。高すぎる含有率はそしてまた、その加工性及び相安定性を、殊に高いアルミニウム及びクロム含有率で、損なう。この理由で、そのSi含有率は、0.50%に限定されている。
【0121】
Mn 0.005%の最低含有率がその加工性の改善のために必要である。マンガンは2.0%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を低下させるからである。
【0122】
チタンは、その高温強度を上昇させる。0.60%から、その酸化挙動は悪化されうる、そのために0.60%が最大値である。
【0123】
すでに極めて低いMg含有率及び/又はCa含有率は、その加工を硫黄の結合により改善し、それにより、低融点NiS共晶の発生が回避される。この理由で、Mg及び/又はCaについては、0.0002%の最低含有率が必要である。高すぎる含有率では、その加工性も明らかに悪化させる金属間Ni-Mg相もしくはNi-Ca相が生じうる。この理由で、そのMg含有率及び/又はCa含有率は、最大0.05%に限定される。
【0124】
C 0.005%の最低含有率が良好な耐クリープ性のために必要である。Cは最大0.12%に限定される、それというのも、この元素は、この含有率から、その加工性を、一次炭化物の過度の形成によって低下させるからである。
【0125】
N 0.001%の最低含有率が必要であり、それにより、該材料の加工性は改善される。Nは最大0.05%に限定される、それというのも、この元素は、粗大な炭窒化物の形成によってその加工性を低下させるからである。
【0126】
その酸素含有率は、該合金の製造性及び利用性を保証するために、0.100%以下でなければならない。低すぎる酸素含有率は、そのコストを高める。この理由で、該酸素含有率は≧0.0001%である。
【0127】
リンの含有率は、0.030%以下であるべきである、それというのも、この界面活性元素は、その耐酸化性を損なうからである。低すぎるP含有率は、そのコストを高める。この理由で、該P含有率は≧0.001%である。
【0128】
硫黄の含有率は、できる限り低く調節されるべきである、それというのも、この界面活性元素は、その耐酸化性を損なうからである。この理由で、S 最大0.010%が定められる。
【0129】
モリブデンは最大2.0%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を低下させるからである。
【0130】
タングステンは最大2.0%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を同様に低下させるからである。
【0131】
高腐食性条件について、しかし殊に、良好な耐メタルダスティング性については、CrとAlとの間で次の関係が満たされている場合に有利である:
Cr+Al≧28 (2a)
その際に、Cr及びAlは、質量%での当該元素の濃度である。酸化物を形成する元素の含有率が、十分な耐メタルダスティング性を保証するのに十分に高いときのみである。
【0132】
さらにまた、十分な相安定性が与えられているためには、次の関係が満たされていなければならない:
Fp≦39.9 (3a)、ここで
Fp=Cr+0.272×Fe+2.36×Al+2.22×Si+2.48×Ti+0.374×Mo+0.538×W-11.8×C (4a)
その際に、Cr、Fe、Al、Si、Ti、Mo、W及びCは、質量%での当該元素の濃度である。Fpの限度及びさらなる元素の可能な算入は、前出の文において詳細に理由が挙げられている。
【0133】
必要に応じて、酸素親和性元素を添加して、その耐酸化性をさらに改善することができる。これらの元素はこの耐酸化性を、これらの元素が該酸化物層へ一緒に組み込まれ、そこでその粒界上で該酸素の拡散経路を遮断することによって果たす。
【0134】
Y 0.01%の最低含有率が、該Yのその耐酸化性を増大させる作用を得るために必要である。その上限は、コストの理由から、0.20%である。
【0135】
La 0.001%の最低含有率が、該Laのその耐酸化性を増大させる作用を得るために必要である。その上限は、コストの理由から、0.20%である。
【0136】
Ce 0.001%の最低含有率が、該Ceのその耐酸化性を増大させる作用を得るために必要である。その上限は、コストの理由から、0.20%である。
【0137】
Ceミッシュメタル 0.001%の最低含有率が、該Ceミッシュメタルのその耐酸化性を増大させる作用を得るために必要である。その上限は、コストの理由から、0.20%である。
【0138】
必要に応じて、ニオブを添加することができる、それというのも、ニオブも、その高温強度を増大させるからである。より高い含有率は、そのコストを極めて著しく高める。この理由で、その上限は、1.10%に定められる。
【0139】
必要に応じて、該合金はタンタルも含有することができる、それというのも、タンタルも、その高温強度を増大させるからである。より高い含有率は、そのコストを極めて著しく高める。この理由で、その上限は、0.60%に定められる。0.001%の最低含有率が、作用を達成するために必要である。
【0140】
必要に応じて、該合金は、Zrも含有していてよい。Zr 0.01%の最低含有率が、該Zrのその高温強度及び耐酸化性を増大させる作用を得るために必要である。その上限は、コストの理由から、Zr 0.20%である。
【0141】
Zrは、必要に応じて、全部又は一部をHfにより置換することができる、それというのも、この元素も、Zrのように、その高温強度及び耐酸化性を増大させるからである。該置換は、0.001%の含有率から可能である。その上限は、コストの理由から、Hf 0.20%である。
【0142】
必要に応じて、該合金にホウ素を添加することができる、それというのも、ホウ素は、その耐クリープ性を改善するからである。この理由で、少なくとも0.0001%の含有率が存在しているべきである。同時に、この界面活性元素は、その耐酸化性を悪化させる。この理由で、ホウ素 最大0.008%が定められる。
【0143】
コバルトは、この合金中に5.0%まで含まれていてよい。より高い含有率は、その耐酸化性をかなり低下させる。
【0144】
銅は最大0.5%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を低下させるからである。
【0145】
バナジウムは最大0.5%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を低下させるからである。
【0146】
Pbは最大0.002%に限定される、それというのも、この元素は、その耐酸化性を低下させるからである。同じことはZn及びSnに当てはまる。
【0147】
さらに、選択的に、特に良好な加工性を説明する、炭化物を形成する元素Cr、Ti及びCの次の関係が満たされていてよい:
Fa≦60 (5a)、ここで
Fa=Cr+20.4×Ti+201×C (6a)
その際に、Cr、Ti及びCは、質量%での当該元素の濃度である。Faの限度及びさらなる元素の可能な算入は、前出の文において詳細に理由が挙げられている。
【0148】
さらに、選択的に、特に良好な熱間強度/もしくはクリープ強度を説明する、強度を増大させる元素の間で次の関係が満たされていてよい:
Fk≧45 (7a)、ここで
Fk=Cr+19×Ti+10.2×Al+12.5×Si+98×C (8a)
その際に、Cr、Ti、Al、Si及びCは、質量%での当該元素の濃度である。Faの限度及びさらなる元素の可能な算入は、前出の文において詳細に理由が挙げられている。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【
図1】CO 37%、H
2O 9%、CO
2 7%、H
2 46%を有し、a
c=163及びp(O
2)=2.5×10
-27を有する強浸炭性ガス中での、アルミニウム及びクロム含有率の関数としてのメタルダスティングによる金属損失。(Hermse, C.G.M. and van Wortel, J.C.: Metal dusting: relationship between alloy composition and degradation rate. Corrosion Engineering, Science and Technology 44 (2009), p. 182 - 185から)
【
図2】典型的な装入物111389の例での、Alloy 690(N06690)の、温度に依存した、熱力学的平衡における相の量割合
【
図3】第2表からのAlloy 3の例での、Alloy 693(N06693)の、温度に依存した、熱力学的平衡における相の量割合
【
図4】第2表からのAlloy 10の例での、Alloy 693(N06693)の、温度に依存した、熱力学的平衡における相の量割合
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】