(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】気水分離器の洗浄装置及びその洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G21C 15/16 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
G21C15/16
(21)【出願番号】P 2021018323
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 博充
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-129391(JP,A)
【文献】特開2009-250941(JP,A)
【文献】特開2011-86450(JP,A)
【文献】特開2015-21185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/16
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気水分離器の構成ユニットの下端開口を着脱自在に密閉する第1フランジと、
前記第1フランジに接続され、前記構成ユニットの内部に充填させる洗浄液を供給する第1供給管と、を備える気水分離器の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気水分離器の洗浄装置において、
前記第1供給管において、前記第1フランジに接続する上端の反対側の下端は、高さ調整可能な支持部材の先端に当接する気水分離器の洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の気水分離器の洗浄装置において、
前記構成ユニットの上端開口に着脱自在に設置される第2フランジと、
前記第2フランジに接続され、前記構成ユニットの内周面に付着する異物を吹き飛ばすガスを供給する第2供給管と、を備える気水分離器の洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の気水分離器の洗浄装置において、
前記第2供給管は、前記第2フランジに対し回転自在に接続され、作業員により回転操作されるハンドルが固定される気水分離器の洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気水分離器の洗浄装置において、
前記第2供給管は、前記ガスの噴射端が、前記構成ユニットの外筒よりも内側に位置する内筒の終端位置を直接噴射する方向を向いている気水分離器の洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載の気水分離器の洗浄装置において、
前記第2供給管は、前記構成ユニットの長手方向に複数存在する前記終端位置にあわせて、前記ガスの前記噴射端の位置が調整される気水分離器の洗浄装置。
【請求項7】
気水分離器の構成ユニットの下端開口を着脱自在な第1フランジで密閉する工程と、
前記第1フランジに接続する第1供給管から洗浄液を供給し、前記構成ユニットの内部に充填する工程と、
前記構成ユニットに充填した前記洗浄液を排出した後に、着脱自在な第2フランジを、前記構成ユニットの上端開口に設置する工程と、
前記第2フランジに接続する第2供給管からガスを供給し、前記構成ユニットの内周面に付着する異物を吹き飛ばす工程と、を含む、気水分離器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、沸騰水型原子炉で用いられる気水分離器の洗浄技術に関する。
【背景技術】
【0002】
気水分離器は、液滴を含む蒸気から液滴を除く機器である。液滴を含む蒸気がタービンに入るとタービン効率が著しく低下する。そこで沸騰水型原子炉は、炉心から出た気水混合蒸気を気水分離器に導き通過させ旋回流を与えることで、遠心分離作用によって液滴を外側に蒸気を内側に分離する。液滴が除かれた蒸気はさらに蒸気乾燥器を通過してタービンへ導かれ、分離された液滴は炉心上部の水中へ還流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所の建設工事や運転休止期間に、気水分離器が気中保管され、その内部にゴミや粉塵等が溜まる懸念がある場合、これらを除去するための洗浄が行われる。しかし、気水分離器は、内部構造が複雑であり、さら長手方向5m程度と長い。このために、気水分離器の内部にゴミや粉塵等が入り込んだ場合、これらを確実に除去することが困難であった。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、内部に滞留するゴミや粉塵等を確実に除去することができる気水分離器の洗浄技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る気水分離器の洗浄装置において、気水分離器の構成ユニットの下端開口を着脱自在に密閉する第1フランジと、前記第1フランジに接続され、前記構成ユニットの内部に充填させる洗浄液を供給する第1供給管と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、内部に滞留するゴミや粉塵等を確実に除去することができる気水分離器の洗浄技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(A)気水分離器の縦断面図、(B)気水分離器の水平断面図。
【
図3】気水分離器の構成ユニットにおける縦断面の概略図。
【
図4】実施形態に係る気水分離器の第1洗浄装置の側面図。
【
図5】第1洗浄装置による気水分離器の洗浄方法の説明図。
【
図6】(A)実施形態に係る気水分離器の第2洗浄装置の縦断面図、(B)第2洗浄装置の第2フランジの上面図。
【
図7】実施形態に係る気水分離器の洗浄方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る気水分離器の洗浄装置の説明に先立って、本実施形態が適用される気水分離器18及びその他の関連構造物を添付図面に基づいて説明する。
図1は、沸騰水型原子炉10の圧力容器12の縦断面図である。
【0010】
沸騰水型原子炉10(BWR)においては、給水ノズル11から圧力容器12に注入された冷却材は、炉心シュラウド13の外側と圧力容器12の内側に形成されるダウンカマー14を通過して炉心下部に入る。そこで冷却材は、流れ方向を反転させ、炉心シュラウド13の内部を上向きに流れ、燃料集合体15から熱を奪って気相と液相が混在する二相流となる。
【0011】
炉心シュラウド13の上部開口を閉塞するシュラウドヘッド16には、気水分離器18が、複数のスタンドパイプ17を介して立設されている。気水分離器18の上部には蒸気乾燥器19が配置され、この両者により蒸気中の液滴が除去される。
【0012】
水分の除去された蒸気は、蒸気ノズル40から出力され、タービン(図示略)に供給される。分離された液滴は、シュラウドヘッド16の外側を伝わって、ダウンカマー14に戻り、再び炉心下部から炉心シュラウド13の内部に供給される。
【0013】
図2(A)は気水分離器18の縦断面図(
図2(B)のA-A断面図)である。
図2(B)はその水平断面図(
図2(A)のB-B断面図)である。シュラウドヘッド16は、炉心シュラウド13(
図1)の上部開口から取り外され、気水分離器18と一体化した状態で移送される。気水分離器18は、複数の構成ユニット20からなり、
図2(B)に示すように、各々のスタンドパイプ17が、シュラウドヘッド16の上面に最密に立設している。
【0014】
図3は、気水分離器の構成ユニット20における縦断面の概略図である。図示される構成ユニット20は、スタンドパイプ17、第1ステージ21及び第2ステージ22から構成される。そして、構成ユニット20の下端開口28から入力した液滴を含む蒸気は、第1ステージ21と第2ステージ22の二段階で液滴が分離され、構成ユニット20の上端開口29から液滴を除去した蒸気が出力される。
【0015】
シュラウドヘッド16に設けられた下端開口28からスタンドパイプ17を上昇する蒸気(含む液滴)は、固定羽根23を通過すると旋回流となり、第1ステージ21に入る。旋回に伴う遠心力により液滴は、第1ステージ21の内筒25aの内周面に押し付けられさらに上昇し、終端位置26aに設けられた案内構造により、内筒25aの外周面と外筒27aの内周面との間隙に案内されて重力により下降し、構成ユニット20の外側に排出される。
【0016】
第1ステージ21を通過した蒸気(含む液滴)は、旋回流を維持した状態で、第2ステージ22に入る。そして、旋回に伴う遠心力により液滴は、第2ステージ22の内筒25bの内周面に押し付けられさらに上昇し、終端位置26bに設けられた案内構造により、内筒25bの外周面と外筒27bの内周面との間隙に案内されて重力により下降し、構成ユニット20の外側に排出される。第2ステージ22を通過した蒸気は、構成ユニット20の上端開口29から出力される。なお、第2ステージ22の上部に第3ステージが設けられる場合もある。
【0017】
図4は実施形態に係る気水分離器の第1洗浄装置31の側面図である。このように第1洗浄装置31は、気水分離器の構成ユニット20の下端開口28を着脱自在に密閉する第1フランジ41と、この第1フランジ41に接続され構成ユニット20の内部に充填させる洗浄液を供給する第1供給管51、を備えている。
【0018】
第1フランジ41の縁端には、スタンドパイプ17の内周面に密着し、充填した洗浄液が漏洩しないように密閉性を確保するOリング43が設けられている。構成ユニット20の下端開口28から供給される洗浄水は、その上端開口29(
図3)まで充填される場合がある。このため、スタンドパイプ17の下端開口28に設置される第1フランジ41は、そのような水頭圧に十分耐えられる密閉強度を持つ必要がある。
【0019】
第1供給管51は、上端が第1フランジ41に接続し、開閉弁54の配置された分岐53を有している。この分岐53の先には、洗浄液をする外部供給源(図示略)が接続されている。この分岐53には、構成ユニット20に充填された洗浄液を外部排出するための排出部(図示略)も設けられている。さらに第1供給管51の下端55は、高さ調整可能な支持部材35の先端に当接するように構成されている。
【0020】
図5は第1洗浄装置31による気水分離器18の洗浄方法の説明図である。
図5は
図2(A)において一点鎖線30で囲った部分を拡大したものである。このように洗浄対象となる気水分離器18は、台座36を介して作業フロア37に配置され、その内部に適切な作業空間が確保される。
【0021】
このように気水分離器18の下端開口28は、シュラウドヘッド16が湾曲しているために、スタンドパイプ17の接続位置によって、高さが異なっている。このために、第1洗浄装置31は支持部材35の高さを調節したうえで、それぞれの下端開口28に取り付けられる。なお、記載を省略しているが、この第1洗浄装置31や後述する第2洗浄装置32を取り付けるために、パイプや板で作業用の足場を組む場合もある。
【0022】
図6(A)は実施形態に係る気水分離器の第2洗浄装置32の縦断面図である。このように第2洗浄装置32は、構成ユニット20の上端開口29に着脱自在に設置される第2フランジ42と、この第2フランジ42に接続され構成ユニット20の内周面に付着する異物(液滴、ゴミ、粉塵等)を吹き飛ばすガスを供給する第2供給管52と、を備えている。
【0023】
第2フランジ42は、媒介部材46を介して構成ユニット20の上端開口29に着脱自在に設置される。第2フランジ42と上端開口29は、第1フランジ41と下端開口28のような密閉性は不要で、後述するように第2供給管52のガス噴射端56の位置精度を確保する機能を持つ。
【0024】
実施形態における第2供給管52の噴射端56は、構成ユニット20の外筒27よりも内側に位置する内筒25の終端位置26を直接噴射する方向を向いている。なお、このガス噴射端56の形状は、特に限定はなく、ガスを噴射して構成ユニット20の内周面に付着する異物を吹き飛ばす機能を発揮するものであれば適宜採用される。そして第2供給管52は、第2フランジ42の回転対称軸に沿って設けられた滑り軸受48に設けられている。さらにこの第2供給管52には、作業員が回転操作するハンドル45と、ストッパ47とが固定されている。
【0025】
これにより、作業員がハンドル45を下方向に押し付けて回転操作することで、内筒25の終端位置26の全周に、ガスを安定して噴射させることができる。これにより、内筒25の終端位置26から外筒27の内側に形成される間隙にかけて、残留しているゴミや粉塵等を構成ユニット20の外部に排出させることができる。
【0026】
また第2供給管52対し、ハンドル45やストッパ47の固定位置を変えることができる。これにより、構成ユニット20の長手方向に複数存在する終端位置26(26a,26b)(
図3参照)にあわせて、ガスの噴射端56の位置を調整することができる。また、ハンドル45やストッパ47の固定位置を変更せずに、それぞれの終端位置26(26a,26b)に対応する専用の第2供給管52を別々に用意することで、ガスの噴射端56の位置を調整してもよい。
【0027】
図6(B)は第2洗浄装置32の第2フランジ42の上面図である。このように第2フランジ42には、のぞき穴44が設けられており、ガスの噴射端56の位置を確認しながら、ハンドル45を操作することができる。
【0028】
図7の工程図に基づいて実施形態に係る気水分離器の洗浄方法を説明する(適宜、他の図面も参照する)。まず
図4に示すように、気水分離器の構成ユニット20の下端開口28を第1洗浄装置31の第1フランジ41で密閉する(S11)。そして、第1フランジ41に接続する第1供給管51から洗浄液を供給し構成ユニット20の内部に充填させる(S12)。
【0029】
次に、構成ユニット20に充填した洗浄液を排出し(S13)、その後に
図6(A)に示すように第2洗浄装置32の第2フランジ42を、構成ユニット20の上端開口29に設置する(S14)。そして、第2フランジ42に接続する第2供給管52からガスを供給し構成ユニット20の内周面に付着する異物を吹き飛ばす(S15)。そして、第2供給管52の噴射端56の位置を変更して、異物が付着し易いか留まり易い個所を集中してガス噴射する(END)。
【0030】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の気水分離器の洗浄装置によれば、気水分離器の構成ユニットの内部を洗浄液で充填することで、その内部に滞留するゴミや粉塵等を確実に除去することが可能となる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0032】
例えば、本実施形態では、第1洗浄装置31により構成ユニット20の内部を洗浄液で充填し、この洗浄液を排出してから、第2洗浄装置32により構成ユニット20の内周面をガス噴射する例を示した。他の実施形態として、第1洗浄装置31で洗浄液を充填・排出するのみで、第2洗浄装置32によるガス噴射を省略する例もある。
【符号の説明】
【0033】
10…沸騰水型原子炉、11…給水ノズル、12…圧力容器、13…炉心シュラウド、14…ダウンカマー、15…燃料集合体、16…シュラウドヘッド、17…スタンドパイプ、18…気水分離器、19…蒸気乾燥器、20…構成ユニット、21…第1ステージ、22…第2ステージ、23…固定羽根、25(25a,25b)…内筒、26(26a,26b)…終端位置、27(27a,27b)…外筒、28…下端開口、29…上端開口、31…第1洗浄装置(洗浄装置)、32…第2洗浄装置(洗浄装置)、35…支持部材、36…台座、37…作業フロア、40…蒸気ノズル、41…第1フランジ、42…第2フランジ、43…Oリング、44…穴、45…ハンドル、46…媒介部材、47…ストッパ、48…滑り軸受、51…第1供給管、52…第2供給管、53…分岐、54…開閉弁、55…下端、56…噴射端。
【要約】
【課題】内部に滞留するゴミや粉塵等を確実に除去することができる気水分離器の洗浄技術を提供する。
【解決手段】洗浄装置31は、気水分離器の構成ユニット20の下端開口28を着脱自在に密閉する第1フランジ41と、この第1フランジ41に接続され構成ユニット20の内部に充填させる洗浄液を供給する第1供給管51、を備える。
【選択図】
図4