IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タイカの特許一覧

特許7034431紫外線硬化性シリコーンゲル組成物及びダンピング材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】紫外線硬化性シリコーンゲル組成物及びダンピング材
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220307BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20220307BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20220307BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/08
C08K5/3435
F16F1/36 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019074425
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172581
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(72)【発明者】
【氏名】伊地知 翔太
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/136170(WO,A1)
【文献】特開2016-060782(JP,A)
【文献】特開2009-192989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 75/00- 75/32
C08G 79/00- 79/14
F16F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル基を少なくとも1個以上有するポリオルガノシロキサン:100質量部、
(B)メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン:メルカプトアルキル基のモル数が前記(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部、
(C)光重合開始剤:(A)成分100質量部に対し、0.1~5質量部、
(D)下記一般式(1)
【化1】
(式中のR~Rは、水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)
で示される基を有するヒンダードアミン系化合物:(A)成分100質量部に対し、1~10質量部
を含有してなることを特徴とする紫外線硬化性シリコーンゲル組成物。
【請求項2】
(A)ビニル基を少なくとも1個以上有するポリオルガノシロキサン:100質量部、
(B)メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン:メルカプトアルキル基のモル数が前記(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部、
(C)光重合開始剤:(A)成分100質量部に対し、0.1~5質量部、
(D)下記一般式(2)
【化2】
(式中のR10~R13は、少なくともいずれかがエステル基であり、エステル基でない場合は水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)
で示される基を有するヒンダードアミン系化合物:(A)成分100質量部に対し、1~10質量部
を含有してなることを特徴とする紫外線硬化性シリコーンゲル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物からなるダンピング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性のシリコーンゲル組成物およびその硬化物からなるダンピング材に関し、詳しくは、表面部と内部の硬化の均一性に優れた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物およびその硬化物からなるダンピング材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゲルは、ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを付加反応触媒のもと架橋剤で架橋させた粘弾性材料であり、複素弾性率が小さく損失係数(tanδ)が大きいため、柔軟で衝撃や振動の吸収性に優れるとともに、機械的強度、耐熱性、耐寒性などにも優れるため、例えば接着剤、シール剤、ポッティング材、コーティング材、光ピックアップ装置等の精密な制御を要する駆動装置などに用いられるダンピング材として広い分野で使用されている。特に光ピックアップ装置等の駆動部の防振や制振には、シリコーンゲルの組込作業性の観点から、防振や制振を講じる箇所に未硬化状態(液状)のシリコーンゲルを供給し紫外線で硬化させることができる紫外線硬化性シリコーンゲルが適用されている。
【0003】
紫外線硬化性シリコーンゲルとしては、酸素による硬化阻害を回避するため、一分子中に少なくとも2個のメルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンからなる架橋剤と一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなる主剤を含んだエン-チオール反応系のシリコーンゲル組成物の硬化物が用いられているが、特定の紫外線を照射して硬化させると、表面部が内部より硬質になって粘着性が少なくなることが開示されており、その一方で紫外線の照射条件によっては表面部が硬質化せずに表面部と内部とが均一になることが知られている(特許文献1)。
【0004】
近年、電気・電子機器の小型化に伴って、それらに用いられる駆動装置も小型化し、ダンピング材として用いられるシリコーンゲルの体積が小さく、厚さも薄くなってきた。そのため、使用されるシリコーンゲルの表面部と内部とが不均一な状態で硬化した場合には、その不均一な硬化状態がダンピング性能に影響を及ぼすため、駆動装置を高い精度で制御するには、シリコーンゲルの硬化状態を均一にすることが重要となる。しかし、紫外線が入射したシリコーンゲルの表面近傍に内部よりも硬化が進んだ皮膜状の表層が形成されることがあり、シリコーンゲルの体積が小さい場合には、この表層形成に伴う不均一な硬化状態がダンピング性能に影響を及ぼす場合があった。この影響を解消する手段として、特許文献1のように、紫外線の照射条件による表層形成を抑制する方法は検討されていたが、ダンピング材が適用される生産工程においては、照射条件の調整や紫外線光源の変更は生産性に影響するため、硬化の均一性に優れる紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の適用が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-231732公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、紫外線照射により迅速且つ、表面部と内部が均一に硬化し、小型の駆動装置の防振や制振に有効なエン-チオール反応系の紫外線硬化性シリコーン組成物及びその硬化物からなるダンピング材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の第一の実施形態は、
(A)ビニル基を少なくとも1個以上有するポリオルガノシロキサン:100質量部、
(B)メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン:メルカプトアルキル基のモル数が前記(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部、
(C)光重合開始剤:(A)成分100質量部に対し、0.1~5質量部
(D)下記一般式(1)
【化1】
(式中のR~Rは、水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物:(A)成分100質量部に対し、1~10質量部
を含有する紫外線硬化性シリコーンゲル組成物が提供される。
【0008】
本発明の第二の実施形態は、
(A)ビニル基を少なくとも1個以上有するポリオルガノシロキサン:100質量部、
(B)メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン:メルカプトアルキル基のモル数が前記(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部、
(C)光重合開始剤:(A)成分100質量部に対し、0.1~5質量部
(D)下記一般式(2)
【化2】
(式中のR10~R13は、少なくともいずれかがエステル基であり、エステル基でない場合は水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物:(A)成分100質量部に対し、1~10部
を含有する紫外線硬化性シリコーンゲル組成物が提供される。



【0009】
また、本発明の第三の実施形態は、第一及び第二のいずれかの実施形態の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物からなるダンピング材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、ビニル基を少なくとも1個以上有するポリオルガノシロキサン(A)とメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)と光重合開始剤(C)をベースとして、特定の構造を有するヒンダードアミン系化合物(D)を含むことによって、紫外線照射により迅速且つ表面と内部が均一に硬化するため、精密な駆動制御を要する駆動装置の防振や制振において、ダンピング材が小体積で適用された場合でも安定したダンピング性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る紫外線硬化性シリコーンゲル組成物並びにその硬化物からなるダンピング材について詳細を説明する。
【0012】
本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、(A)ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサンと(B)メルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンと(C)光重合開始剤と(D)ヒンダードアミン系化合物を含んでなる。
【0013】
(A)成分のビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサンは、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の主成分である。(A)成分中のビニル基の結合位置は限定されず、分子鎖末端でも分子鎖側鎖でもよいし、両方に結合していてもよい。また、(A)成分中のビニル基以外の珪素原子結合有機基としてはメチル基あるいはフェニル基で置換されている。また、(A)成分の分子構造は実質的に直線状(直鎖状)が好ましいが、一部に分岐構造があってもよい。具体的な(A)成分としては、例えば分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体などが挙げられる。これらは単独または2種以上併用されて適用できる。
【0014】
(B)成分であるメルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンは、メルカプトアルキル基が(A)成分のビニル基とエン-チオール反応して(A)成分を架橋させるための架橋剤成分であり、例えば分子鎖の末端又は側鎖にメルカプトアルキル基が置換したオルガノポリシロキサンである。より具体的には、(CHSiO1/2単位、(CH)(HS(CH)SiO2/2単位(nは2~20の整数)および(CHSiO2/2単位からなるメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましく、実用的な硬化性を確保する観点から、HS(CH(nは2~20の整数)基は1分子中に平均3を超える数存在することがより好ましい。メルカプトアルキル基としてはメルカプトエチル、メルカプトプロピル、メルカプトヘキシル基などが例示される。
【0015】
(B)成分の配合量は、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化性の観点から、(B)成分中のメルカプトアルキル基のモル数が(A)成分中のビニル基1モルに対し0.1~1.0モルとなる量である。(B)成分の配合量が0.1モルより少ないと紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化性が低下し、1.0モルより多いと架橋点が多すぎて紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化後の硬度が高くなり過ぎて、本発明の防振や制振の効果が得られない。
【0016】
(C)成分の光重合開始剤は、(A)成分中のビニル基と(B)成分のメルカプトアルキル基との紫外線照射下における架橋反応を促進させるためのものであり、公知のものを使用できる。具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;Omnirad184、369、651、500、907、1173、TPO H(以上、BASF社製)等が挙げられ、架橋反応の促進性の観点からアセトフェノン系が好ましい。(C)成分は単独または2種以上併用して適用できる。(C)成分の配合量は紫外線反応開始に有効な量として、(A)成分100質量部に対し、0.1~5質量部である。
【0017】
(D)成分であるヒンダードアミン系化合物は、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を均一に硬化させるための成分であり、一般式(1)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物と一般式(2)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物から選択され、何れか一方または併用して適用できる。また、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物への分散性の観点から(D)成分は液状であることが好ましい。
【化3】

(式中のR~Rは、水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)

【化4】

(式中のR10~R13は、少なくともいずれかがエステル基であり、エステル基でない場合は水素又は炭素数1~20のアルキル基である。)
【0018】
一般式(1)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物としては、1-フェニルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-1-フェニルピペリジン等が挙げられ、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物への分散性の観点から、液状の1-フェニルピペリジンが好ましい。これらは単独または2種以上で併用されてもよい。
【0019】
一般式(2)で示される基を有するヒンダードアミン系化合物としては、1-メチルピペコリン酸エチル、1-メチル-2,6-ピペリジンジカルボン酸ジエチル等が挙げられ、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物への分散性の観点から、液状の1-メチルピペコリン酸エチルが好ましい。これらは単独または2種以上で併用されてもよい。
【0020】
分子内に一般式(1)で示される基と一般式(2)で示される基をいずれも有しないヒンダードアミン系化合物を用いる場合には、紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を均一に硬化させる効果が乏しく、本発明には適用できない。
【0021】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、1~10質量部であり、好ましくは1~5重量部であり、より好ましくは1.5~3質量部である。1質量部より少ないと紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を均一に硬化させる効果が不十分であり、10質量部より大きいと紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物からのブリードアウトが顕著になるため、上記範囲で配合される。
【0022】
本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の成分を配合してもよい。その他の成分としては、例えば、チクソ性付与剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、顔料、染料等が挙げられ、それらは公知のものを適用できる。
【0023】
本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、樹脂組成物の製造で用いられる公知の方法により製造される。具体的には、一例として、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー又はロールミル等を用いて混合することにより、製造することができる。
【0024】
本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、紫外線を照射することにより硬化して硬化物となる。紫外線の光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置など公知のものを適用できる。紫外線の照射量は、本発明の効果が得られる硬化状態とするために、積算光量で10kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは15kJ/m以上である。
【0025】
本発明のダンピング材は、上記の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物からなり、表面部と内部とが均一に硬化することによって優れたダンピング特性を有し、小体積で適用された場合においても安定したダンピング性能が得られる。ダンピング材は、例えば防振や制振させたい箇所に紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を供給し、供給と同時または供給後に紫外線を照射して硬化させて形成できる。また、ダンピング材のダンピング特性等は上記の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の各成分の配合割合を上記の範囲内で変えることで調整される。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例において使用した成分は下記の通りである。
(A)成分
オルガノポリシロキサンベース:分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン:DMS-V33(Gelest社製)
(B)成分
メルカプトプロピル基含有オルガノポリシロキサン:分子鎖末端がトリメチルシロキサンで封鎖されたジメチルシロキサン・メルカプトプロピルメチルシロキサン共重合体:SMS-042(Gelest社製)
(C)成分
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン:Omnirad1173(BASF社製)
(D)成分
(d1)1-フェニルピペリジン
【化5】

(d2)1-メチルピペコリン酸エチル
【化6】

(d3)ピペコリン酸エチル
【化7】

(d4)1-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ピペリジンカルボン酸メチル
【化8】

(d5)デカン二酸ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル]:TINUVIN123(BASF社製)
【化9】
【0028】
以下の実施例及び比較例における紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の評価方法は、下記の通りである。
【0029】
(1)硬化性
紫外線硬化性シリコーンゲル組成物をガラス容器(内径45mm)に2mm高さまで注入した後、高圧水銀灯(ウシオ電機社製 型式UVL-1500M2-N1)にて積算光量3000mJ/cmとなるように紫外線を照射して厚さ2mmの硬化物を作製し、内部まで硬化しているかを目視観察して、未硬化の液状部分が目視確認されず硬化している場合を「○」(合格)、硬化物が完全に硬化せずに一部液状であった場合を「×」(不合格)とした。
【0030】
(2)硬化均一性
紫外線硬化性シリコーンゲル組成物をガラス容器(内径45mm)に2mm高さまで注入した後、高圧水銀灯(ウシオ電機社製 型式UVL-1500M2-N1)にて積算光量3000mJ/cmとなるように紫外線を照射して厚さ2mmの硬化物を作製し、硬化物の表面をスパチュラ(清水アキラ株式会社製 サンダイヤ ミクロスパーテル)で押した時に、表面に皺が寄って硬化被膜が確認されたものを「×」(不合格)とし、硬化被膜が確認されず表面に変化がなかった(皺が生じなかった)場合を「○」(合格)とした。
【0031】
[実施例1]
蓋つきプラスチック容器に、(A)成分を100質量部、(B)成分を6.5質量部、(C)成分を1質量部及び(D)成分として(d1)1-フェニルピペリジンを1質量部、を入れて予備混合し、この混合物を自転・公転ミキサー(製品名:あわとり錬太郎(登録商標)ARE-250、株式会社シンキー社製品)を用いて、2000rpmにて2分間の本混合、2200rpmにて1分間脱泡して、実施例1の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0032】
[実施例2~4]
(D)成分である(d1)1-フェニルピペリジンの配合量を表1の通り変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0033】
実施例1~4の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
[実施例5]
(D)成分を(d1)1-フェニルピペリジンに代えて(d2)1-メチルピペコリン酸エチルとして1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、実施例5の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0036】
[実施例6~8]
(D)成分である(d2)1-メチルピペコリン酸エチルの配合量を表の通り変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6~8の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0037】
実施例5~8の評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
[比較例1]
(D)成分を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0040】
[比較例2及び3]
(D)成分である(d1)1-フェニルピペリジンの配合量を表3の通り変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2及び3の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0041】
[比較例4及び5]
(D)成分を(d1)1-フェニルピペリジンに代えて(d2)1-メチルピペコリン酸エチルとし、(d2)1-メチルピペコリン酸エチルの配合量を表3の通り変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4及び5の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0042】
比較例1~5の評価結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
[比較例6]
(D)成分を(d1)1-フェニルピペリジンに代えて(d3)ピペコリン酸エチルとして2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、比較例6の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0045】
[比較例7]
(D)成分を(d1)1-フェニルピペリジンに代えて(d4)1-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ピペリジンカルボン酸メチルとして2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、比較例7の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0046】
[比較例8]
(D)成分を(d1)1-フェニルピペリジンに代えて(d5)デカン二酸ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル]:TINUVIN123(BASF社製)として2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして、比較例8の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得た。得られた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を紫外線硬化させて、硬化性と硬化均一性について評価を行った。
【0047】
比較例6~8の評価結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
表1に示した実施例1~4の評価結果から、(D)成分として上記一般式(1)に示した基を有するヒンダードアミン化合物を適用した本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、紫外線による硬化性と硬化均一性に優れていることがわかった。
【0050】
一方、表3に示した比較例1~3の評価結果から、(D)成分として上記一般式(1)に示した基を有するヒンダードアミン化合物の配合量が(A)成分100質量部に対して1~10質量部の範囲から外れると、硬化性と硬化均一性のいずれかが不合格となるため、1~10質量部の範囲とすることが重要であることがわかった。具体的には、比較例1及び2のように、一般式(1)に示した基を有するヒンダードアミン化合物の配合量が1質量部未満の場合には、硬化均一性が不合格となり、比較例3のように10質量部を超えると硬化性が不合格となることがわかった。また、表3の評価の欄には記載していないが、比較例3の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物はオイルブリードが顕著に生じていた。
【0051】
また、表2に示した実施例5~8の評価結果から、(D)成分として上記一般式(2)に示した基を有するヒンダードアミン化合物を適用して本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物も、紫外線による硬化性と硬化均一性に優れていることがわかった。
【0052】
一方、表3に示した比較例1、4、5の評価結果から、(D)成分として上記一般式(2)に示した基を有するヒンダードアミン化合物の配合量が(A)成分100質量部に対して1~10質量部の範囲から外れると、硬化性と硬化均一性のいずれかが不合格となるため、1~10質量部の範囲とすることが重要であることがわかった。具体的には、比較例1及び4のように、一般式(2)に示した基を有するヒンダードアミン化合物の配合量が1質量部未満の場合には、硬化均一性が不合格となり、比較例5のように10質量部を超えると硬化性が不合格となることがわかった。また、表3の評価の欄には記載していないが、比較例5の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物はオイルブリードが顕著に生じていた。
【0053】
また、表4に示した比較例6~8の評価結果から、(D)成分として上記一般式(1)に示した基と一般式(2)に示した基のいずれも有さないヒンダードアミン化合物を適用しても、硬化均一性に優れた紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を得ることができないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、紫外線により硬化し、表面部と内部の硬化の均一性に優れるため、小型の電気・電子機器や精密機械の駆動装置の防振や制振に用いるダンピング材として有用である。