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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】塗料用バインダー樹脂および塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220307BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220307BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/61
C08F220/28
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017225382
(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2019094437
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-291618(JP,A)
【文献】特開平08-092455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00104283(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/033079(WO,A1)
【文献】特開平10-158336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 201/10
C09C 1/00 - 3/12
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)のモル比が10モル%~90モル%であり、モノマー(A)と共重合可能なその他のモノマー(B)のモル比が10~90モル%であり、重量平均分子量が10,000~1,000,000である重合体からなる、塗料用バインダー樹脂
有機溶媒および
顔料を含有する塗料組成物(分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物の少なくとも一種を含んでなるエポキシ樹脂に存在するエポキシ基の一部を不飽和カルボン酸によってエステル化してなる樹脂を除く)であって、
前記顔料100質量部に対し、前記塗料用バインダー樹脂の質量比が1~50質量部であり、前記有機溶媒の質量比が10~200質量部であり、前記モノマー(B)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物またはアクリルアミド化合物であることを特徴とする、塗料組成物。

【化1】
(式(1)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基またはエチル基を示し、
は炭素数1~18のアルキル基を示し、
XおよびYは、それぞれ独立して、NHまたはOを示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散性およびチキソトロピー性に優れるため、静置保管時の経時安定性に優れるとともに、塗工性が良好で、表面の平滑性に優れた塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂塗料は、アクリル樹脂、顔料、添加剤、および溶剤などから構成される。この中でアクリル樹脂はバインダーとして塗膜の硬度や耐候性などの物性を付与することが主な役割である。さらに、アクリル樹脂は顔料を分散させ、凝集を防ぐことにより、表面の平滑性や保管安定性の向上や塗料へ粘性やチキソトロピー性を付与できる。具体的には、静置保管時は増粘することで経時安定性を向上させ、一方で、塗工時は攪拌などのせん断力により低粘度化することで塗工性の向上や表面の平滑性向上といった機能も求められる。
【0003】
しかしながら、従来のアクリル樹脂は、顔料分散性やチキソトロピー性に乏しい。特にチキソトロピー性については、高重合度のポリマーは増粘するものの、塗工時も粘度が高く、塗工性の悪化やレベリング性の低下による表面平滑性の低下が起き、低重合度のポリマーは粘度が低く、経時安定性の低下や塗工時のたれといった課題があった。
【0004】
特許文献1では、アミド縮合物をチキソトロピー性向上を目的とし、アクリル樹脂塗料に後添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-328174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アミド縮合物などの添加剤は、アクリル樹脂や溶剤と相溶性が低いことによる相分離や顔料分散性を悪化させることにより平滑性が低下し、表面の曇りの原因となる場合があった。
【0007】
このような問題を解決するべく、顔料分散性およびチキソトロピー性に優れ、静置保管時の経時安定性や表面平滑性の高い塗料用バインダー樹脂が求められる。
【0008】
本発明の課題は、顔料分散性およびチキソトロピー性に優れ、静置保管時の経時安定性や表面平滑性の高い塗料用バインダー樹脂、およびこれを用いた塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、ウレア構造やウレタン構造を有する特定構造の重合体からなる塗料用バインダー樹脂が上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のものである。
[1] 下記一般式(1)で示されるモノマー(A)のモル比が10モル%~90モル%であり、モノマー(A)と共重合可能なその他のモノマー(B)のモル比が10~90モル%であり、重量平均分子量が10,000~1,000,000である重合体からなる、塗料用バインダー樹脂
有機溶媒および
顔料を含有する塗料組成物(分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物の少なくとも一種を含んでなるエポキシ樹脂に存在するエポキシ基の一部を不飽和カルボン酸によってエステル化してなる樹脂を除く)であって、
前記顔料100質量部に対し、前記塗料用バインダー樹脂の質量比が1~50質量部であり、前記有機溶媒の質量比が10~200質量部であり、前記モノマー(B)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物またはアクリルアミド化合物であることを特徴とする、塗料組成物。

【化1】
(式(1)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基またはエチル基を示し、
は炭素数1~18のアルキル基を示し、
XおよびYは、それぞれ独立して、NHまたはOを示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗料用バインダー樹脂は、顔料分散性およびチキソトロピー性に優れ、静置保管時の経時安定性や表面平滑性が高い。この結果として、本発明の塗料用バインダー樹脂を使用した塗料組成物は、静置保管時の経時安定性や表面平滑性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
〔モノマー(A)〕
本発明で用いるモノマー(A)は、下記一般式(1)で示される。

【化1】
【0013】
式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、重合のしやすさの観点からメチル基が特に好ましい。
【0014】
は水素原子、メチル基またはエチル基を示すが、アミンまたはアルコールとの反応性の観点からは、水素原子が特に好ましい。
【0015】
は、炭素数1~18のアルキル基である。炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基などが挙げられる。合成のしやすさとチキソトロピー性の観点から、Rの炭素数は2~12が好ましく、3~6がより好ましい。
【0016】
XとYは、酸素原子(-O-)あるいはNH基であり、チキソトロピー性の観点から、XとYとの少なくとも一方がNH基であることが好ましく、XおよびYが両方ともNH基であることが更に好ましい。
【0017】
モノマー(A)は一種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
[モノマー(B)]
モノマー(B)は、モノマー(A)と共重合可能なビニル系モノマーであり、(メタ)アクリル酸エステル化合物や芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド化合物を挙げることができる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0020】
芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどを挙げることができる。
【0021】
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
アクリルアミド化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0022】
モノマー(B)は、一種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。その中でも、溶媒溶解性の観点からメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0023】
モノマー混合物においては、モノマー(A)とモノマー(B)の合計量を100モル%とする。ゆえに、モノマー(A)のモル比は、10~90モル%とする。このため、モノマー(B)のモル比は10~90モル%となる。
【0024】
重合体を構成するモノマーにおいて、モノマー(A)とモノマー(B)のモル比率(A)/(B)は、10/90~90/10である。モノマー(A)のモル比が低すぎると、チキソトロピー性が低下するおそれがあるので、この観点からは、(A)/(B)は10/90以上であるが、15/85以上が好ましく、20/80以上が更に好ましい。
また、モノマー(A)のモル比が高すぎると、溶剤溶解性が低下するおそれがあるので、この観点からは、(A)/(B)は90/10以下であるが、60/40以下が好ましく、40/60以下が更に好ましい。
【0025】
[塗料用バインダー樹脂]
本発明の塗料用バインダー樹脂を構成する重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができ、10,000~1,000,000であり、好ましくは10,000~800,000、より好ましくは30,000~300,000である。重合体の重量平均分子量が低すぎると、塗膜強度や粘度が不足し、重量平均分子量が高すぎると、溶媒溶解性や塗工性の低下が生じるおそれがある。
【0026】
〔モノマー(A)の製造方法〕
モノマー(A)は、ウレア結合もしくはウレタン結合を有するモノマーである。
上記モノマー(A)は、例えば、イソシアネート基含有モノマーとアミン化合物もしくはアルコール化合物の反応や、ヒドロキシ基含有モノマーとアルキルイソシアネートの反応によって得ることができる。
【0027】
前記イソシアネート基含有モノマーとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましく、重合安定性の観点から、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。
【0028】
前記アミン化合物は、1級アミン化合物又は2級アミン化合物であることが好ましく、1級アミン化合物であることがさらに好ましい。
【0029】
上記1級アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、バインダー樹脂組成物のチキソトロピー性の観点から、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミンが好ましく、n-ブチルアミンがさらに好ましい。
【0030】
また、前記2級アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジオクチルアミン(ジ-n-オクチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミ、ピペリジン、モルホリン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
また、前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、反応時の安定性の観点から、上記アルコール化合物が、炭素数2~8のアルコールであることが好ましい。該炭素数2~8のアルカノールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられ、なかでもエタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。
【0032】
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物が挙げられる。その中でも、イソシアネート基との反応性の観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0033】
前記アルキルイソシアネートとしては、例えば、エチルイソシアネート、n-ブチルイソシアネート、iso-ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、n-オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられるが、共重合体のチキソトロピー性の観点から、n-ブチルイソシアネートが好ましい。
【0034】
前記イソシアネート基含有モノマーとアミン化合物もしくはアルコール化合物との反応および、ヒドロキシ基含有モノマーとアルキルイソシアネートの反応は、両者を混合し、所望により温度を上げ、公知の方法で実施することができる。また必要に応じて、触媒を添加してもよく、例えば、スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ系触媒、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒など公知の触媒を用いることができる。この反応は5~100℃、好ましくは20~80℃の温度で行うことが望ましい。また、上記反応は溶剤を使用してもよく、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等の存在下で行うことができる。
【0035】
〔重合体の製造方法〕
次に、本発明の塗料用バインダー樹脂を構成する重合体を製造する方法について説明する。
本発明における重合体は、モノマー(A)を少なくとも含有するモノマー混合物をラジカル重合させることにより得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合や懸濁重合が好ましい。
【0036】
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
【0037】
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、あるいは全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。
【0038】
溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0039】
重合溶媒に対するモノマー(合計量)の濃度は、10~60質量%が好ましく、特に好ましくは20~50質量%である。モノマー混合物の濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られる共重合体の分子量が低下するおそれがあり、モノマーの濃度が高すぎると、発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0040】
モノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
【0041】
重合温度は、重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを使用した場合、重合温度を70℃として重合すると、重合時間は6時間程度が適している。
【0042】
以上の重合反応を行なうことにより、本発明の塗料用バインダー樹脂を構成する重合体が得られる。得られた重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【0043】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、本発明の塗料用バインダー樹脂の他、顔料および有機溶媒を含有する。
【0044】
こうした顔料としては、通常塗料に用いられるたとえば酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、カーボンブラック、透明酸化鉄、アルミニウム粉などの無機顔料、アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料などの顔料が選ばれる。
【0045】
また、有機溶媒としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、1-ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶媒、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテートなどのターピネオール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒などを挙げることができ、これらを単体で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0046】
塗料用樹脂組成物中での重合体の含有量は、顔料の質量を100質量部としたとき、1~50質量部が好ましく、3~30質量部が更に好ましい。また、塗料用樹脂組成物中での溶媒の含有量は、顔料の質量を100質量部としたとき、10~200質量部が好ましく、50~150質量部が更に好ましい。また、この他に必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤等の他の成分を配合することができる。
【実施例
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
下記の表1に、モノマー(A)の構造と略号を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(合成例1:モノマーA1)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)51.2g、テトラヒドロフラン40g、メトキノン0.012gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を40℃に保持しながら、n-ブチルアミン24.1gを1時間かけて滴下した。その後、40℃で2時間熟成させたのち、テトラヒドロフランを60℃で減圧留去し、モノマーA1を得た(収率92%)。
【0050】
(合成例2:モノマーA2)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)51.2g、メトキノン0.012g、ジブチルスズジラウレート0.034gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を60℃に保持しながら、n-ブタノールを1時間かけて滴下した。その後、80℃に昇温し、6時間熟成させたのち、テトラヒドロフランを60℃で減圧留去し、モノマーA2を得た(収率95%)。
【0051】
(合成例3:モノマーA3)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーE」)、メトキノン0.012gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を60℃に保持しながら、n-ブチルイソシアネートを1時間かけて滴下した。その後、80℃に昇温し、6時間熟成させたのち、40℃まで冷却後、イオン交換水100mLを加え、撹拌、静置した。下層のモノマーA3層を抜き取り、80℃で減圧し、脱水し、モノマーA3を得た(収率70%)。
【0052】
(合成例4:モノマーA4)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズAOI」)46.6g、テトラヒドロフラン40g、メトキノン0.012gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を40℃に保持しながら、n-ブチルアミン24.1gを1時間かけて滴下した。その後、40℃で2時間熟成させたのち、テトラヒドロフランを60℃で減圧留去し、モノマーA4を得た(収率90%)。
【0053】
(合成例5:モノマーA5)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)46.6g、テトラヒドロフラン40g、メトキノン0.012gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を40℃に保持しながら、n-ドデシルアミン61.1gを1時間かけて滴下した。その後、40℃で2時間熟成させたのち、テトラヒドロフランを60℃で減圧留去し、モノマーA5を得た(収率90%)。
【0054】
(重合例1:共重合体A)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、イソプロパノール250gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。イソブチルメタクリレート(IBMA:製品名:アクリエステルIB(三菱レイヨン(株)製))66.2gとモノマーA1
233.8gを混合したモノマー溶液、及びイソプロパノール50gと2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))0.6gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
【0055】
反応容器内を75℃まで昇温し、モノマー溶液及び重合開始剤溶液を同時にそれぞれ3時間かけて滴下した。その後、75℃で3時間反応させ共重合体Aのイソプロパノール溶液を得た。ついで、60℃減圧下で180分かけ脱溶剤し、共重合体Aを得た。
【0056】
(重合例2:共重合体B)
イソブチルメタクリレートの使用量を177.7g、モノマーA1の使用量を122.3gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Bを得た。
【0057】
(重合例3:共重合体C)
イソブチルメタクリレートの使用量を115.1g、モノマーA1の使用量を184.9gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Cを得た。
【0058】
(重合例4:共重合体D)
イソブチルメタクリレートの使用量を177.4g、モノマーA1をモノマーA2に変え、122.6g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Dを得た。
【0059】
(重合例5:共重合体E)
イソブチルメタクリレートの使用量を177.4g、モノマーA1をモノマーA3に変え、122.6g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Eを得た。
【0060】
(重合例6:共重合体F)
イソブチルメタクリレートの使用量を182.3g、モノマーA1をモノマーA4に変え、117.7g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Fを得た。
【0061】
(重合例7:共重合体G)
イソブチルメタクリレートの使用量を151.2g、モノマーA1をモノマーA5に変え、148.8g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Gを得た。
【0062】
(重合例8:共重合体H)
イソブチルメタクリレート(IBMA)の使用量を133.6g、モノマーA1の使用量を128.7gに変更し、メチルメタクリレート(MMA)を37.7g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Hを得た。
【0063】
(重合例9:共重合体I)
イソブチルメタクリレートの使用量を133.0g、モノマーA1の使用量を128.1gに変更し、スチレンを38.9g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Iを得た。
【0064】
(重合例10:共重合体J)
イソブチルメタクリレートの使用量を160.9g、モノマーA1の使用量を129.1gに変更し、アクリロニトリルを10.0g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Jを得た。
【0065】
(重合例11:共重合体K)
イソブチルメタクリレートの使用量を159.1g、モノマーA1の使用量を127.7gに変更し、アクリルアミドを13.2g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Kを得た。
【0066】
(重合例12:共重合体L)
イソブチルメタクリレートの使用量を276.6g、モノマーA1の使用量を23.4gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Lを得た。
【0067】
(重合例13:共重合体M)
イソブチルメタクリレート(IBMA)の使用量を215.5g、モノマーA1の代わりに2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を84.5g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Mを得た。
【0068】
(重合例14:共重合体N)
イソブチルメタクリレートの使用量を286.2g、モノマーA1の代わりに2-ヒドロキシエチルメタクリレートを13.8g使用したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Nを得た。
【0069】
〔重量平均分子量の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、共重合体A~Nの重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0070】
〔粘度比の評価〕
共重合体溶液10g、トルエン20gを混ぜ、60℃で加熱しながら2時間撹拌し完溶させた溶液を、レオメーターにて1s-1から1,000s-1の範囲で粘度のせん断速度依存性を測定した。1s-1と1,000s-1のときの粘度の値から粘度比を算出した。
【0071】
〔経時安定性の評価〕
共重合体溶液10g(固形分5g)、白色顔料としてルチル型酸化チタン(JR-603;テイカ社製)25g、トルエン50gを加え、自転・公転ミキサーにて攪拌混合した。混合した液を23℃で静置し、沈降の有無を確認した。静置後、72時間以内に明らかに沈降が見られたものを×、72時間以内にわずかに沈降が見られたものを○、72時間で沈降が見られなかったものを◎とした。
【0072】
〔平滑性の評価〕
共重合体溶液10g(固形分5g)、白色顔料としてルチル型酸化チタン(JR-603;テイカ社製)25g、トルエン50gを加え、自転・公転ミキサーにて攪拌混合した。混合した液をバーコーターNo.20にてガラス基板上に塗布し、80℃で10分間乾燥させた。塗膜の平滑性を触針式表面粗さ測定機(サーフコーダSE-600)にて測定した。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】
【0076】
表2~表4に示すように、実施例の塗料組成物では、静置保管時の経時安定性および表面平滑性に優れていた。
【0077】
比較例1では、本発明のモノマーAの質量比率が5質量%と低いため、塗料組成物の経時安定性が低かった。また、比較例2では、本発明のモノマーAを用いていないため、やはり塗料組成物の経時安定性が低かった。比較例3では、本発明のモノマーを用いておらず、かつイソブチルメタクリレートの量が多いが、塗膜の平滑性が劣化していた。