(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】香料組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20220307BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220307BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20220307BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20220307BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220307BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C11B9/00 U
A61K8/37
A61Q13/00 101
A23L27/20 E
A23L2/52
A23L2/00 Z
(21)【出願番号】P 2018539611
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2017030796
(87)【国際公開番号】W WO2018051776
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2016180434
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016180435
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016180436
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 光晴
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-008757(JP,A)
【文献】米国特許第04649214(US,A)
【文献】特開昭60-190738(JP,A)
【文献】特開昭62-149643(JP,A)
【文献】特開昭62-277963(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146876(WO,A1)
【文献】PODLEJSKI, J. et al.,Synthesis of odoriferous compounds by Diels-Alder reaction,Pollena: Tluszcze, Srodki Piorace, Kosmetyki,(1986), vol.30, No.5-8,pp.166-169,CAplus [online], US: American Chemical Society,[retrieved on 2021.08.12], Retrieved from: STN, Accession No.1987:195935
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
C07C69/753
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
A23L 2/00- 2/40
A61K47/00-47/69
A23L27/00-27/60
C11D 3/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
以下の式(1-1)~式(1-3);
【化3】
(式(1-1)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【化4】
(式(1-2)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【化5】
(式(1-3)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基であり、
R
4及びR
5のいずれか一方は、水素であり、もう一方は、-CHO基である。)
からなる群より選択される1種以上を含有する、香料組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の香料組成物を含有する、香粧品、健康衛生材料、雑貨、飲料、食品、医薬部外品又は医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル類には香料として有用な化合物があることが知られている。例えば、非特許文献1には、ローズ様香気を持つ酢酸ゲラニル、ジャスミン様の甘い香気を持つジャスモン酸メチル、フルーティな香気をもつフルテート、強くドライフルーティな香気をもつ安息香酸メチル等が調合香料素材として有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中島基貴 編、「香料と調香の基礎知識」、1995年、215ページ、235ページ、244~246ページ、産業図書株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、調合香料原料として有用な、優れた香気及び香気持続性を有する香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、テルペン類の中で、多環構造を有する化合物に優れた香気を有するものが多いことに興味を持ち、多環構造を有する化合物を種々合成し、その香気を評価したところ、ノルボルナン-2-カルボン酸エステル化合物類が優れた香気を有し、調合香料として極めて優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
式(1)で表される化合物;
【化1】
(式中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基であり、
R
4及びR
5は、独立して、水素、又は-CHO基であり、
【化2】
は、単結合又は二重結合である。)
を含有する、香料組成物。
[2]
式(1)で表される化合物が、以下の式(1-1)~式(1-3);
【化3】
(式(1-1)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【化4】
(式(1-2)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【化5】
(式(1-3)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基であり、
R
4及びR
5のいずれか一方は、水素であり、もう一方は、-CHO基である。)
からなる群より選択される1種以上である、[1]に記載の香料組成物。
[3]
[1]又は[2]に記載の香料組成物を含有する、香粧品、健康衛生材料、雑貨、飲料、食品、医薬部外品又は医薬品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のノルボルナン-2-カルボン酸エステル化合物類を含有する香料組成物は、優れた香気を有し、優れた香気持続性を有するため、トイレタリー用品や石鹸、衣料用洗剤等の幅広い製品への賦香成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0009】
[香料組成物]
本実施形態の香料組成物は、ノルボルナン-2-カルボン酸エステル化合物類、すなわち、式(1)で表される化合物を含有する。
本実施形態の香料組成物とは、式(1)で表される化合物単独又は2種以上を主成分とする香料組成物であってもよく、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料に、式(1)で表される化合物を単独で又は2種以上を混合した香料組成物であってもよい。
式(1)で表される化合物単独又は2種以上を主成分とするとは、式(1)で表される化合物を、該香料組成物全量に対し通常85質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上含むことを指す。
【0010】
【0011】
式(1)中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基であり、
R
4及びR
5は、独立して、水素、又は-CHO基であり、
【化7】
は、単結合又は二重結合である。
【0012】
本実施形態における式(1)で表される化合物は、好ましくは以下の式(1-1)~式(1-3)で表される化合物である。式(1-1)~式(1-3)で表される化合物は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0013】
【0014】
式(1-1)中、R1
、R2
、R3及びXは、式(1)におけるR1
、R2
、R3及びXと同義である。
すなわち、R1
、R2
、R3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。
【0015】
【0016】
式(1-2)中、R
1
、R
2
、R
3及びXは、式(1)におけるR
1
、R
2
、R
3及びXと同義である。
すなわち、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。
【化10】
【0017】
式(1-3)中、R1
、R2
、R3
、及びXは、式(1)におけるR1
、R2
、R3、及びXと同義である。
すなわち、式(1-3)中、R1
、R2
、R3は、独立して、水素又はメチル基であり、
Xは、炭素数1~4のアルキル基である。
R4及びR5のいずれか一方は、水素であり、もう一方は、-CHO基である。
【0018】
式(1)、式(1-1)~式(1-3)におけるR1
、R2
、R3は、独立して、水素又はメチル基である。
R2及びR3は、好ましくは水素である。
また、式(1)、式(1-1)~式(1-3)におけるXは、炭素数1~4のアルキル基である。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。Xは、好ましくはメチル基及びエチル基である。
【0019】
式(1)及び式(1-1)~式(1~3)で表される化合物は、立体配置が示されていない不斉炭素についての光学異性体のいずれか1種の単一物であっても、これらが任意の割合で含まれる混合物であってもよい。
【0020】
式(1-1)で表される化合物としては、好ましくはノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルネン-2-カルボン酸エチルエステル、ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸エチルエステルのいずれかであり、より好ましくはノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステルのいずれかである。
本実施形態における式(1-1)で表される化合物は、強い完熟バナナとメロン様のフルーティさと、オゾン様のマリンノートを合わせ持つ香気、ないしはフレッシュなフローラルグリーン調の香りとフルーティさを合わせ持った香気を有し、かつ持続性にも優れる。
【0021】
式(1-2)で表されるとしては、好ましくはノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルナン-2-カルボン酸エチルエステル、ノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸エチルエステルのいずれかであり、より好ましくはノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル、ノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステルのいずれかである。
本実施形態における式(1-2)で表される化合物は、フルーティ感のあるハーバルグリーン様の香気を有し、かつ持続性にも優れる。
【0022】
式(1-3)で表される化合物としては、好ましくはホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル、ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸エチルエステル、ホルミルノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステル、ホルミルノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸エチルエステルのいずれかであり、より好ましくはホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル、ホルミルノルボルナン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステルのいずれかである。
本実施形態における式(1-3)で表される化合物は、強いメロンやキウイ様フルーティさとフレッシュなマリンノート、及びローズ様フローラルを合わせ持つ新規な香気であり、かつ持続性にも優れる。
【0023】
以上のように式(1)で表される化合物は、フルーティさ等の優れた香気を有し且つ持続性にも優れることから、単独で又は他の成分と組み合わせて香粧品類、健康衛生材料、雑貨、飲料、食品、医薬部外品、医薬品等の各種製品の香気成分として使用できる。具体的には、石鹸、シャンプー、リンス、洗剤、化粧品、スプレー製品、芳香剤、香水、又は入浴剤等の賦香成分として使用できる。
【0024】
[式(1)で表される化合物の製造方法]
本実施形態における式(1)で表される化合物は、例えば、オレフィンとジシクロペンタジエンとを加熱反応するディールス-アルダー反応を鍵工程とする合成法により製造することができる。
具体的には、式(1-1)で表される化合物は、以下のとおりオレフィンとジシクロペンタジエンとを加熱反応するディールス-アルダー反応により製造することができる。
【0025】
【化11】
(式中、R
1
、R
2
、R
3及びXは、式(1)におけるR
1
、R
2
、R
3及びXと同義である。すなわち、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【0026】
前記オレフィンとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸ブチル、3-メチルクロトン酸メチル、3-メチルクロトン酸エチル、3-メチルクロトン酸プロピル、3-メチルクロトン酸ブチル等が挙げられる。これらのオレフィンの中でも好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、3-メチルクロトン酸メチル、3-メチルクロトン酸エチルであり、より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルである。
【0027】
また、前記ジシクロペンタジエンは、その純度が高いものが好ましく、ブタジエン、イソプレン等の含有量は極力避けることが望ましい。ジシクロペンタジエンの純度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。また、ジシクロペンタジエンは加熱条件下で解重合しシクロペンタジエンになることが知られていることから、ジシクロペンタジエンの代わりにシクロペンタジエンを使用することも可能である。
【0028】
ディールス-アルダー反応を効率的に進行させるためには反応系内にシクロペンタジエンが存在することが重要であるため、反応温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。
一方、高沸物質の副生を抑えるために、反応温度は、好ましくは250℃以下の温度である。
また、反応溶媒として炭化水素類やアルコール類、エステル類等を使用することも可能であり、炭素数6以上の脂肪族炭化水素類、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、プロパノール、ブタノール等が好適である。
【0029】
本実施形態のディールス-アルダー反応の反応方式としては、槽型反応器等による回分式、反応条件下の槽型反応器に基質や基質溶液を供給する半回分式、管型反応器に反応条件下で基質類を流通させる連続流通式等、多様な反応方式を採ることが可能である。
【0030】
上記反応で得られた生成物は、式(1)で表される化合物を含有する香料組成物として用いてもよく、次の反応の原料として用いてもよく、蒸留、抽出、晶析等の方法によって精製した後、香料組成物や次の反応の原料としてもよい。
得られた生成物、すなわち、式(1-1)で表される化合物は、次の反応の原料とすることができ、式(1-2)で表される化合物及び式(1-3)で表される化合物を合成するための原料とすることができる。
【0031】
具体的には、式(1-2)で表される化合物は、以下のとおり式(1-1)で表される化合物を触媒存在下で水素化反応することにより製造することができる。
【0032】
【化12】
(式中、R
1
、R
2
、R
3及びXは、式(1)におけるR
1
、R
2
、R
3及びXと同義である。すなわち、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、Xは、炭素数1~4のアルキル基である。)
【0033】
前記水素化反応に使用する触媒は、通常不飽和結合の水素化に用いられる触媒であれば特に限定されないが、周期表第8~11属金属から選ばれる少なくとも1種を含有する触媒が好ましい。具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金のうち少なくとも1種を含有する触媒が挙げられる。
【0034】
前記水素化触媒は、固体触媒でも均一系触媒でもよく、反応物との分離性の観点から、固体触媒が好ましい。固体触媒としては、非担持型金属触媒や担持金属触媒等が例示される。
【0035】
非担持型金属触媒としては、好ましくはラネーニッケル、ラネーコバルト、及びラネー銅等のラネー触媒;白金、パラジウム、ロジウム、及びルテニウム等の酸化物;コロイド触媒;等が挙げられる。
【0036】
担持金属触媒としては、例えば、マグネシア、ジルコニア、セリア、ケイソウ土、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、及びチタニア等の担体に、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金のうち少なくとも1種を担持あるいは混合したものが挙げられる。
担持金属触媒としては、具体的には、銅-クロム触媒(Adkins触媒)、銅-亜鉛触媒、銅-鉄等の銅触媒を担体に担持した担持銅触媒、Pt/CやPt/アルミナ等の担持白金触媒、Pd/CやPd/アルミナ等の担持パラジウム触媒、Ru/CやRu/アルミナ等の担持ルテニウム触媒、Rh/CやRh/アルミナ等の担持ロジウム触媒等が好適に挙げられる。
これらの触媒の中でも、反応活性及び選択性の点で、より好ましくは銅を含有する触媒である。
【0037】
水素化触媒の使用量は、触媒の種類によって適宜調整すればよく、原料であるノルボルネン-2-カルボン酸エステル化合物に対して、0.001~100質量%、好ましくは0.01~30質量%、さらに好ましくは0.1~20質量%である。
【0038】
水素化反応の水素圧力は、常圧、加圧下のいずれであってもよく、通常、常圧~4.0MPaであり、好ましくは0.1~3.0MPa、より好ましくは0.1~2.0MPaである。
【0039】
水素化反応は、無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用して行ってもよい。
溶媒としては、水、ギ酸、及び酢酸等の有機酸類;酢酸エチル、及び酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族化合物類;ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、及びジグライム等のエーテル類;等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
水素化反応で溶媒を使用する際の溶媒の量は、原料であるノルボルネン-2-カルボン酸エステル化合物に対し、通常0.1~30質量倍であり、好ましくは0.2~20質量倍である。
【0040】
水素化反応の反応温度は、通常-90℃~200℃で行うことができる。反応温度は、好ましくは20℃~150℃であり、より好ましくは50℃~120℃である。
【0041】
水素化反応の形式は、接触水素化反応が可能であれば特に限定されるものでなく、通常用いられる公知の形式でよい。水素化反応の形式としては、例えば、触媒を流体で流動化させて接触水素化反応を行う懸濁床反応器、触媒を充填固定化し流体を供給することで接触水素化反応を行う固定床反応器を用いる形式等が挙げられる。
【0042】
水素化反応で得られた反応生成物は、エバポレーター等により低沸物等を除去した後、蒸留塔を用いて精留を行うことにより、式(1-2)で表される化合物を含有する香料組成物として用いることができる。
【0043】
式(1-3)で表される化合物は、以下のとおり式(1-1)で表される化合物に対し、一酸化炭素及び水素ガスを、ロジウム化合物、有機リン化合物の存在下でヒドロホルミル化反応することによって合成することができる。
【0044】
【化13】
(式中、R
1
、R
2
、R
3、及びXは、式(1)におけるR
1
、R
2
、R
3、及びXと同義である。すなわち、式中、R
1
、R
2
、R
3は、独立して、水素又はメチル基であり、Xは、炭素数1~4のアルキル基である。R
4及びR
5のいずれか一方は、水素であり、もう一方は、-CHO基である。)
【0045】
ヒドロホルミル化反応で使用されるロジウム化合物は、有機リン化合物と錯体を形成し、一酸化炭素と水素との存在下でヒドロホルミル化活性を示す化合物であればその前駆体の形態に制約は無い。ロジウムアセチルアセトナートジカルボニル(以下、Rh(acac)(CO)2と記す)、Rh2O3、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(NO3)3等の触媒前駆物質を有機リン化合物と共に反応混合物中に導入し、反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、予めロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を調製して、それを反応器内に導入してもよい。ヒドロホルミル化反応で使用されるロジウム化合物の好ましい製造方法としては、具体例には、Rh(acac)(CO)2を溶媒の存在下で有機リン化合物と反応させた後、過剰の有機リン化合物と共に反応器に導入し、触媒活性を有するロジウム-有機リン錯体とする方法が挙げられる。
【0046】
ヒドロホルミル化反応におけるロジウム化合物の使用量は、ヒドロホルミル化反応の基質であるオレフィン1モルに対して、好ましくは0.1~30マイクロモルであり、より好ましくは0.2~20マイクロモルであり、さらに好ましくは0.5~10マイクロモルである。ロジウム化合物の使用量をオレフィン1モルに対して30マイクロモルより少なくすることにより、ロジウム錯体の回収リサイクル設備を設けなくてもロジウム触媒費を軽減することが可能なため、回収リサイクル設備に関わる経済的負担を減らすことができる。また、ロジウム化合物の使用量をオレフィン1モルに対して0.1マイクロモルより多くすることで、高い収率でヒドロホルミル化反応生成物を得ることができる。
【0047】
ヒドロホルミル化反応において、ロジウム化合物とヒドロホルミル化反応の触媒を形成する有機リン化合物としては、例えば一般式P(-R6)(-R7)(-R8)で表されるホスフィン又はP(-OR6)(-OR7)(-OR8)で表されるホスファイト等が挙げられる。
R6、R7、R8の具体例としては、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基、及び炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよい脂環式アルキル基等が挙げられる。
有機リン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイトが好適に用いられる。
有機リン化合物の使用量は、好ましくはロジウム金属の500倍モル~10000倍モルであり、より好ましくは700倍モル~5000倍モルであり、さらに好ましくは900倍モル~2000倍モルである。有機リン化合物の使用量がロジウム金属の500倍モルよりも少ない場合、触媒活物質のロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体の安定性が損なわれ、反応の進行が遅くなる傾向にある。また、有機リン化合物の使用量がロジウム金属の10000倍モルよりも多い場合、有機リン化合物に掛かるコストが増える傾向にある。
【0048】
ヒドロホルミル化反応は、溶媒を使用せずに行うことも可能であり、反応に不活性な溶媒を使用することにより、一層好適に実施することもできる。溶媒としては、例えば、オレフィン、ジシクロペンタジエンあるいはシクロペンタジエン、及び、前記ロジウム化合物、並びに前記有機リン化合物を溶解するものであれば特に制限はない。
溶媒としては、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び芳香族炭化水素等の炭化水素類;脂肪族エステル、脂環式エステル、及び芳香族エステル等のエステル類;脂肪族アルコール、及び脂環式アルコール等のアルコール類;芳香族ハロゲン化物;等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、好ましくは炭化水素類であり、より好ましくは脂環式炭化水素、芳香族炭化水素である。
【0049】
ヒドロホルミル化反応を行う場合の温度としては、好ましくは40℃~160℃であり、より好ましくは80℃~140℃である。反応温度が40℃以上としることにより、十分な反応速度が得られ、原料であるオレフィンの残留を抑えられる。また、反応温度が160℃以下にすることにより、原料オレフィンや反応生成物由来の副生物の生成を抑え、反応成績の低下を防ぐことができる。
【0050】
ヒドロホルミル化反応を行う場合、一酸化炭素(CO)及び水素(H2)ガスによる加圧下で反応を行う必要がある。CO及びH2ガスは各々独立に反応系内に導入することも、また、予め調製された混合ガスとして反応系内に導入することも可能である。反応系内に導入されるCO及びH2ガスのモル比(=CO/H2)は、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.5~2であり、さらに好ましくは0.8~1.2である。CO及びH2ガスのモル比がこの範囲から逸脱すると、ヒドロホルミル化反応の反応活性や目的とするアルデヒドの選択率が低下することがある。反応系内に導入したCO及びH2ガスは反応の進行に伴い減少していくため、予め調製されたCOとH2の混合ガスを利用すると反応制御が簡便な場合がある。
【0051】
ヒドロホルミル化反応の反応圧力としては、好ましくは1~12MPaであり、より好ましくは1.2~9MPaであり、さらに好ましくは1.5~5MPaである。反応圧力を1MPa以上とすることにより、十分な反応速度が得られ、原料であるオレフィンが残留を抑えることができる。また、反応圧力を12MPa以下とすることにより、耐圧性能に優れる高価な設備を必要としなくなるため経済的に有利である。特に、回分式や半回分式で反応を行う場合、反応終了後にCO及びH2ガスを排出、落圧する必要があり、低圧になるほどCO及びH2ガスの損失が少なくなるため経済的に有利である。
【0052】
ヒドロホルミル化反応を行う場合の反応方式としては、回分式反応や半回分式反応が好適である。半回分式反応はロジウム化合物、有機リン化合物、前記溶媒を反応器に加え、CO/H2ガスによる加圧や加温等を行い、既述の反応条件とした後に原料であるオレフィン又はその溶液を反応器に供給することにより行うことが可能である。
【0053】
前記ヒドロホルミル化反応で得られた反応生成物は、エバポレーター等により低沸物等を除去した後、蒸留塔を用いて精留を行うことにより、式(1-3)で表される化合物を含有する香料組成物として用いることができる。
【0054】
本実施形態の香料組成物は、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料に、前述した式(1)で表される化合物を単独で又は2種以上を混合し、配合されていてもよい。
【0055】
本実施形態の香料組成物における式(1)で表される化合物の配合量は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により適宜調整すればよく、調合香料中に0.01~90質量%を加えることが好ましく、0.1~50質量%加えることがより好ましい。
【0056】
本実施形態の香料組成物において、式(1)で表される化合物と組み合わせて用いることができる香料成分としては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エーテル等の界面活性剤;ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルミリステート、トリエチルシトレート等の溶媒;リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン等の炭化水素類;リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス-3-ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、β-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、2,2,6-トリメチルシクロヘキシル-3-ヘキサノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、イソカンフィルシクロヘキサノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール等のアルコール類;オイゲノール、チモール、バニリン等のフェノール類;リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、n-ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2-ノネノエート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチルアントラニレート、フルテート等のエステル類;n-オクタナール、n-デカナール、n-ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロソンナミックアルデヒド等のアルデヒド類;メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3-メチル-2-(シス-2-ペンテン-1-イル)-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ-メチルヨノン、α-ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン等のケトン類;アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタール類のアセタール類及びケタール類;アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキシド、ローズオキサイド、1,8-シネオール、ラセミ体又は光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン等のエーテル類;シトロネリルニトリル等のニトリル類;γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、σ-デカラクトン、γ-ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11-オキサヘキサデカノリド等のラクトン類;オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナム等の天然精油や天然抽出物等の他の香料物質等が挙げられる。当該他の香料物質は、単独又は複数配合しても良い。
【0057】
式(1)で表わされる化合物を含有する香料組成物は、香気付与のため、及び配合対象物の香気の改良を行うために、香粧品、健康衛生材料、雑貨、飲料、食品、医薬部外品、医薬品等の各種製品の香気成分として使用できる。
式(1)で表わされる化合物を含有する香料組成物は、例えば、香水、コロン類等のフレグランス製品;シャンプー、リンス類、ヘアートニック、ヘアークリーム類、ムース、ジェル、ポマード、スプレーその他毛髪用化粧料;化粧水、美容液、クリーム、乳液、パック、ファンデーション、おしろい、口紅、各種メークアップ類等の肌用化粧料;皿洗い洗剤、洗濯用洗剤、ソフトナー類、消毒用洗剤類、消臭洗剤類、室内芳香剤、ファーニチアケアー、ガラスクリーナー、家具クリーナー、床クリーナー、消毒剤、殺虫剤、漂白剤、その他の各種健康衛生用洗剤類;歯磨、マウスウォッシュ、入浴剤、制汗製品、パーマ液等の医薬部外品;トイレットペーパー、ティッシュペーパー等の雑貨;医薬品等;食品等の香気成分として使用することができる。
【0058】
また、本実施形態の香料あるいは香料組成物の上記製品への配合量は、式(1)で表されるホルミルノルボルナン-2-カルボン酸エステル化合物の量として、製品の全量に対し、好ましくは0.001~50質量%であり、より好ましくは0.01~20質量%である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を以って本発明の方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
以下の実施例における測定方法を示す。
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
・分析装置 :株式会社島津製作所製 キャピラリガスクロマトグラフGC-2010 Plus
・分析カラム :ジーエルサイエンス株式会社製、InertCap1(30m、0.32mmI.D.、膜厚0.25μm
・オーブン温度:60℃(0.5分間)-昇温速度15℃/分-280℃(4分間)
・検出器 :FID、温度280℃
【0061】
<カルボン酸エステル化合物収率、選択率>
ガスクロマトグラフィー分析により、生成物であるカルボン酸エステル化合物の面積割合(GC%)を求め、内部標準法によりノルボルネン-2-カルボン酸エステル、及びノルボルナン-2-カルボン酸エステル化合物の収率、選択率を下記式により算出した。
・オレフィン基準の収率(モル%)=ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/オレフィンの仕込み量(モル)×100
・ジシクロペンタジエン基準の収率(モル%)=ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/ジシクロペンタジエンの仕込み量(モル)×100/2
・オレフィン基準の選択率(モル%)=ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/オレフィンの反応量(モル)×100
・ジシクロペンタジエン基準の選択率(モル%)=ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/ジシクロペンタジエンの反応量(モル)×100/2
・水素化反応の収率(モル%)=ノルボルナン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/(ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの仕込み量(モル)×100
・水素化反応の選択率(モル%)=ノルボルナン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの反応量(モル)×100
・ヒドロホルミル化反応の収率(モル%)=ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの仕込み量(モル)×100
・ヒドロホルミル化反応の選択率(モル%)=ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸エステルの取得量(モル)/ノルボルネン-2-カルボン酸エステルの反応量(モル)×100
【0062】
<GC-MS測定条件>
・分析装置 :株式会社島津製作所製、GCMS-QP2010 Plus
・イオン化電圧:70eV
・分析カラム :Agilent Technologies製、DB-1(30m、0.32mmI.D.、膜厚1.00μm)
・オーブン温度:60℃(0.5分間)-昇温速度15℃/分-280℃(4分間)
【0063】
[実施例1]
(ノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステルの合成法)
【0064】
【0065】
磁力誘導式攪拌機と上部に3個の入口ノズルを備えた内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いて合成を行った。
まず、オートクレーブにn-ドデカン(東京化成製試薬特級)101.2g仕込み、窒素ガス置換後、液温195℃とした。
反応温度を195℃に保持しながら、アクリル酸メチル96.4g(1.12モル)とジシクロペンタジエン105.7g(0.80モル)の混合液をオートクレーブ上部より1時間かけて供給した後、更に、2時間攪拌を継続した。
【0066】
前記反応液を冷却後、得られた液301.0gを内部標準法によりガスクロマトグラフィーで分析した結果、目的のノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル化合物133.2gが含有されていた。アクリル酸メチル基準の成績は収率78.2モル%、選択率79.0モル%であり、ジシクロペンタジエン基準の成績は収率54.7モル%、選択率59.3モル%であった。
得られた液を理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度88℃、真空度2.7kPa)、主留部分としてガスクロマトグラフィー分析で98.5GC%のものが120.5g(蒸留収率90.5モル%)で得られた。
得られた留分をGC-MSで分析した結果、目的物の分子量152を示した。
【0067】
得られた留分は、フルーティの香気のみを持つ公知のフルテート又はローズ様香気のみを持つ公知の酢酸ゲラニルと異なり、完熟バナナとメロン様のフルーティさとオゾン様のマリンノートを合わせ持つ新規な香気を有し、他の公知のエステル又は酢酸ゲラニルに比べ香気持続性が優れる、という特徴があった。
【0068】
(フローラル感を有するアプリコット様フルーティの香料組成物)
まず、表1に示す組成の香料組成物(コントロール品)を作製した。次に、このコントロール品90質量部に上記で調製したノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル10質量部を加えて香料組成物を作製した。
得られた香料組成物は、調香師による香り評価において、華やかなガーデニア様フローラル感を有するアプリコット様フルーティの香りであることが確認された。
【0069】
【0070】
[実施例2]
(ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステルの合成法)
【0071】
【0072】
オレフィンとして、メタクリル酸メチル112.1g(1.12モル)用いた以外は実施例1と同様にディールス-アルダー反応と処理を行った。
前記反応液を冷却後、得られた液316.9gを内部標準法によりガスクロマトグラフィーで分析した結果、目的のノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステル化合物140.0gが含有されていた。メタクリル酸メチル基準の成績は収率75.2モル%、選択率75.9モル%であり、ジシクロペンタジエン基準の成績は収率52.7モル%、選択率57.4モル%であった。
得られた液を理論段数40段の回転バンド蒸留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度90℃、真空度2.7kPa)、主留部分としてガスクロマトグラフィー分析で98.5GC%のものが127.5g(蒸留収率91.1モル%)で得られた。
得られた留分をGC-MSで分析した結果、目的物の分子量166を示した。
【0073】
得られた留分は、フルーティの香気のみを持つ公知のフルテート又はローズ様香気のみを持つ公知の酢酸ゲラニルと異なり、フレッシュなフローラルグリーン調の香りとフルーティさを合わせ持った新規の香気を有し、他の公知のエステル又は酢酸ゲラニルに比べ香気持続性が優れる、という特徴があった。
【0074】
(瑞々しい洋ナシを思わせる様なフルーツタイプの香料組成物)
まず、表2に示す組成の香料組成物(コントロール品)を作製した。次に、このコントロール品90質量部に上記で調製したノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸メチルエステル10質量部を加えて香料組成物を作製した。
得られた香料組成物は、調香師による香り評価において、瑞々しい洋ナシを思わせる様なフルーツタイプの香りであることが確認された。
【0075】
【0076】
[実施例3]
(ノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステルの合成法)
【0077】
【0078】
磁力誘導式攪拌機と上部に3個の入口ノズルを備えた内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いて水素化反応を行った。
前記オートクレーブに、Cu-Cr触媒(日揮製N-203S)を6.0g、イソプロピルアルコール(和光純薬工業製特級)を120.0g仕込み、170℃、水素圧2MPa下で1時間の活性化を行った。冷却後、上記で調製したノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステルを60.0g仕込み、120℃、水素圧2MPa、3時間攪拌して還元反応を行った。反応液を濾過して触媒を除き、ノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル57.6gを含有する反応液173.9g得た(転化率100%、収率96.2%)。ノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル基準の成績は収率96.2モル%、選択率100モル%であった。
【0079】
得られた液を理論段数40段の回転バンド蒸留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度89℃、真空度2.7kPa)、主留部分としてガスクロマトグラフィー分析で98.5GC%のものが53.5g(蒸留収率91.5モル%)で得られた。
得られた留分をGC-MSで分析した結果、目的物の分子量154を示した。
【0080】
得られた留分は、フルーティの香気のみを持つ公知のフルテート又はローズ様香気のみを持つ公知の酢酸ゲラニルと異なり、強いフルーティ感のあるハーバルグリーン様の新規な香気を有し、他の公知のエステル又は酢酸ゲラニルに比べ香気持続性が優れる、という特徴があった。
【0081】
(青リンゴのフレッシュ感を持つフルーツタイプの香料組成物)
まず、表3に示す組成の香料組成物(コントロール品)を作製した。次に、このコントロール品90質量部に上記で調製したノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル10質量部を加えて香料組成物を作製した。
得られた香料組成物は、調香師による香り評価において、青リンゴのフレッシュ感を持つフルーツタイプの香りであることが確認された。
【0082】
【0083】
[実施例4]
(ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステルの合成法)
【0084】
【0085】
磁力誘導式攪拌機と上部に3個の入口ノズルを備えた内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いてヒドロホルミル化反応を行った。
前記オートクレーブに、上記で調製したノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステルを60.0g、トルエン116.9g、亜リン酸トリフェニル0.37g、別途調製したRh(acac)(CO)2のトルエン溶液3.10g(濃度0.01wt%)を加えた。窒素及びCO/H2混合ガスによる置換を各々3回行った後、CO/H2混合ガスで系内を加圧し、100℃、2MPaにて5時間反応を行った。反応終了後、反応液のガスクロマトグラフィー分析を行い、ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル(5-ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル及び6-ホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステルの混合物)69.0gを含有する反応液186.9g得た。ノルボルネン-2-カルボン酸メチルエステル基準の成績は収率96.2モル%、選択率100モル%であった。
【0086】
得られた液を理論段数40段の回転バンド蒸留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度112℃、真空度0.19kPa)、主留部分としてガスクロマトグラフィー分析で98.4GC%のものが63.5g(蒸留収率90.7モル%)で得られた。
得られた留分をGC-MSで分析した結果、目的物の分子量182を示した。
【0087】
得られた留分は、フルーティの香気のみを持つ公知のフルテート又はローズ様香気のみを持つ公知の酢酸ゲラニルと異なり、強いメロンやキウイ様フルーティさとフレッシュなマリンノート、及びローズ様フローラルを合わせ持つ新規な香気であり、他の公知のエステル又は酢酸ゲラニルに比べ香気持続性が優れる、という特徴があった。
【0088】
(甘く華やかなガーデニアを思わせるフローラル感を持つフルーツタイプの香料組成物)
まず、表4に示す組成の香料組成物(コントロール品)を作製した。次に、このコントロール品90質量部に上記で調製したホルミルノルボルナン-2-カルボン酸メチルエステル10質量部を加えて香料組成物を作製した。
得られた香料組成物は、調香師による香り評価において、甘く華やかなガーデニアを思わせるフローラル感を持つフルーツタイプの香りであることが確認された。
【0089】
【0090】
本出願は、2016年9月15日出願の日本特許出願(特願2016-180434号)、2016年9月15日出願の日本特許出願(特願2016-180435号)、及び2016年9月15日出願の日本特許出願(特願2016-180436号)に基づくものであり、この内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のノルボルナン骨格を有するカルボン酸エステル化合物は、フルーティさのある香気を持ち、優れた香気持続性を有するため、トイレタリー用品や石鹸、衣料用洗剤等の幅広い製品への賦香成分として有用である。