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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】多層絵付け方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20220307BHJP
   A47G 19/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C04B41/89 D
A47G19/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018060084
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019172482
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592134583
【氏名又は名称】愛媛県
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】中村 健治
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-252683(JP,A)
【文献】特開平6-171296(JP,A)
【文献】特開平8-133870(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012014(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/088974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/80-41/91
A47G 19/00-19/34
C03C 17/00-17/44
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
B44B 1/00-11/04
B44C 1/00-1/14
B44C 1/18-7/08
B44D 2/00-7/00
B44F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバー分散流動体と顔料とを混合した絵具を用いて第一ガラス層の表面に第一図柄を描画して乾燥させる第一描画工程と、
前記第一図柄の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで前記第一図柄を覆う第二ガラス層を形成する第二ガラス層形成工程と、
前記第二ガラス層の表面に前記絵具を用いて第二図柄を描画して乾燥させる第二描画工程と、
前記第二図柄の上に前記釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第二図柄を覆う第三ガラス層を形成する第三ガラス層形成工程と、
を備えることを特徴とする陶磁器及びガラス製品への多層絵付け方法。
【請求項2】
前記第一ガラス層は、素地の上に形成された釉薬層であることを特徴とする請求項1記載の陶磁器への多層絵付け方法。
【請求項3】
前記第一ガラス層は、ガラス製品本体の上に形成された釉薬層であることを特徴とする請求項1記載のガラス製品への多層絵付け方法。
【請求項4】
素地の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第一ガラス層を形成する第一ガラス層形成工程と、
第一ガラス層の表面にセルロースナノファイバー分散流動体と顔料とを混合した絵具を用いて第一図柄を描画して乾燥させる第一描画工程と、
前記第一図柄の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで前記第一図柄を覆う第二ガラス層を形成する第二ガラス層形成工程と、
前記第二ガラス層の表面に前記絵具を用いて第二図柄を描画して乾燥させる第二描画工程と、
前記第二図柄の上に前記釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第二図柄を覆う第三ガラス層を形成する第三ガラス層形成工程と、
を備えることを特徴とする陶磁器製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか1項に使用される絵具であって、セルロースナノファイバー分散流動体と、顔料と、糊とを混合したことを特徴とする絵具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器やガラス製品等に図柄を描く絵付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器への絵付け方法としては、従来から、上絵付けと下絵付けとが広く知られている。上絵付けは、釉薬をかけて高温で本焼成した後に、釉薬層上に顔料で図柄を描画し、再度低温で焼成する方法であり、多彩な色を使って鮮やかな表現ができる反面、釉薬層の上に顔料があるため、耐久性に欠ける。
【0003】
一方、下絵付けは、素地の上に顔料で図柄を描画してから釉薬をかけて高温で本焼成する方法であり、顔料が釉薬層の下に位置するため、耐久性に優れる反面、顔料が高温で焼成されるため、鮮やかさに欠ける。
【0004】
従来の陶磁器への絵付け方法は、例えば、下記特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平7-25608号公報
【文献】特開2004-345882号公報
【文献】特開2014-15372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の陶磁器への絵付けは、図柄が単層で平面的であり、立体感に欠ける。これは、釉薬層の上に描画でき、且つ、図柄の上に釉薬層を形成することのできる絵具が提供されていないからである。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、陶磁器やガラス製品等に図柄を多層に形成することのできる多層絵付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る陶磁器及びガラス製品への多層絵付け方法は、セルロースナノファイバー分散流動体と顔料とを混合した絵具を用いて第一ガラス層の表面に第一図柄を描画して乾燥させる第一描画工程と、前記第一図柄の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで前記第一図柄を覆う第二ガラス層を形成する第二ガラス層形成工程と、前記第二ガラス層の表面に前記絵具を用いて第二図柄を描画して乾燥させる第二描画工程と、前記第二図柄の上に前記釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第二図柄を覆う第三ガラス層を形成する第三ガラス層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る陶磁器製造方法は、素地の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第一ガラス層を形成する第一ガラス層形成工程と、第一ガラス層の表面にセルロースナノファイバー分散流動体と顔料とを混合した絵具を用いて第一図柄を描画して乾燥させる第一描画工程と、前記第一図柄の上に釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで前記第一図柄を覆う第二ガラス層を形成する第二ガラス層形成工程と、前記第二ガラス層の表面に前記絵具を用いて第二図柄を描画して乾燥させる第二描画工程と、前記第二図柄の上に前記釉薬をかけて乾燥させ、所定の温度で焼成することで第二図柄を覆う第三ガラス層を形成する第三ガラス層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る絵具は、上記方法に使用される絵具であって、セルロースナノファイバー分散流動体と、顔料と、糊とを混合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る多層絵付け方法によれば、陶磁器やガラス製品の表面に多層の図柄を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る多層絵付け陶磁器の構成を示す一部断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る多層絵付け方法の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態の変形例1に係るガラス製品の構成を示す一部断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態の変形例1に係る多層絵付け方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、上絵付けの方式の陶磁器の表面に図柄を多層に重ねる場合の多層絵付け方法について説明する。図1は、本実施形態に係る多層絵付け陶磁器の構成を示す一部断面図である。
【0014】
本実施形態では、セルロースナノファイバー(CNF)を水に分散したセルロースナノファイバー分散水と、顔料とを混合した絵具を使用していることを特徴とする。これにより、ガラス層(釉薬層)20の表面上への図柄30の形成が可能となり、多層化したガラス層20間に図柄30を形成することで、図柄の多層化を実現した。
【0015】
図1に示すように、多層図柄付きの陶磁器10は、下層側から順に、素地11、第一ガラス層20a、第一図柄30a、第二ガラス層20b、第二図柄30b、第三ガラス層20c、第三図柄30c、第四ガラス層20dを有している。
【0016】
このように、図柄30を多層に形成することで、表面側(第四釉薬層20D側)から見る観者にとって、図柄30が立体的に見え、陶磁器10の作者は、多様なデザインの焼き物を製作することができる。
【0017】
絵具Aは、以下の材料を混合したものを使用した。
(絵具A)
顔料(グリーンM-142 日陶顔料工業(株)) 0.3001g
CNF(機械パルプ漂白品 大王製紙(株)) 0.9376g(重量比2%のCNF分散水)
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0108g
【0018】
本実施形態では、顔料を親水性のセルロースナノファイバーの分散水に混ぜることで、顔料がセルロースナノファイバーの繊維に絡みつき、セルロースナノファイバーの繊維が分散水内で分散することで、顔料もセルロースナノファイバーと共に分散水内で分散する。
【0019】
本実施形態では、親水性のセルロースナノファイバーを用いており、絵具Aが乾燥した後に、分散水である釉薬をかけてもはじくことがない。また、セルロースナノファイバーは、密着性が高く、ガラス層20上に付着した絵具Aが乾燥しても、ガラス層20から剥がれたりしない。
【0020】
CMCは、水溶性の糊であり、CMCを加えることで、顔料とセルロースナノファイバーとの密着性が増し、セルロースナノファイバーの分散に伴って、顔料も分散水内で良好に分散する。珪石粉は、乾燥、焼成に伴う絵具の縮みを抑えるように機能する。また、有機物であるCMCは、焼成により消失し、セルロースナノファイバーも少量の無機物以外は有機物であり、ほとんどが焼成により消失する。このため、今回のような透明釉薬を使用する場合でも図柄30の邪魔にならない。
【0021】
釉薬は、以下の材料を混合した釉薬A,Bを使用した。福島長石35.4wt%、石灰石18.6wt%、朝鮮カオリン17.0wt%、珪石29.0wt%に同量の水を加えてボールミルで撹拌したのち、ふるいを通して脱鉄し、水を加えて比重を調整したものを釉薬Aとした。この釉薬A297.0gに対して、3.0gのCMCを加えて溶解させたものを釉薬Bとした。
【0022】
続いて、本実施形態に係る多層絵付け方法について説明する。図2は、本実施形態に係る多層絵付け方法の手順を示すフローチャートである。まず、S1において、素地(素焼、粘土等)11を釉薬Aに浸漬し、乾燥させる。
【0023】
続いて、S2に進み、乾燥した素地を焼成し、素地11の上に釉薬層である第一ガラス層20aを形成する。この焼成は、最大1,250℃で行う。焼成条件は、例えば、950℃まで9時間30分かけて昇温させ、続いて、1,250℃まで5時間で昇温させる。その後、最大温度1,250℃を30分間維持し、自然冷却する。
【0024】
続いて、S5において、第一ガラス層20a上に絵具Aを用いて図柄を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。続いて、乾燥させたものを釉薬Bに浸漬させて、図柄の上に釉薬Bをかけ、再度、50℃で1時間乾燥させる(S6)。その後、S7に進み、この乾燥させたものを、再度、最大1,220℃で焼成し、第一ガラス層20a上に、第一図柄30aと第二ガラス層20bを形成する。
【0025】
セルロースナノファイバー及びCMCは、焼成工程を経ると、ほとんどが消失する。焼成条件は、例えば、950℃まで9時間30分かけて昇温させ、続いて、1,220℃まで4時間30分で昇温させる。その後、最大温度1,220℃を30分間維持し、自然冷却する。
【0026】
次に、S10において、第二ガラス層20bの上に同じく絵具Aを用いて二層目の図柄を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。乾燥後、乾燥させたものを釉薬Bに浸漬し、再度、50℃で1時間乾燥させる(S11)。その後、S12に進み、この再度乾燥させたものを再度最高温度1,220℃で焼成し、第二ガラス層20b上に、第二図柄30bと第三ガラス層20cを形成する。
【0027】
次に、S15において、第三ガラス層20cの上に同じく絵具Aを用いて三層目の図柄を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。乾燥させたものを釉薬Bに浸漬し、再度、50℃で1時間乾燥させる(S16)。その後、S17に進み、この再度乾燥させたものを再度1,220℃で焼成し、第三ガラス層20cの上に、第三図柄30cと第四ガラス層20dを形成する。
【0028】
以上の工程により、陶磁器に対して、透明なガラスの層であるガラス層20を間に挟んで、三層の図柄(第一図柄30a、第二図柄30b、第三図柄30c)が立体的に重なった、立体感のある図柄30を形成することができる。もちろん、立体的な図柄30は二層でも良いし、また、図柄を四層以上にしたい場合には、S15~S17を繰り返せば良い。
【0029】
通常、陶磁器用の絵具(顔料)を使って釉薬層等のガラス層の上に図柄を描くと、水性絵具の場合には、乾燥後であっても釉薬に浸漬すると図柄が流れてしまい、油性絵具の場合には、図柄が釉薬をはじいてしまって釉薬層を形成することができない。すなわち、ガラス層(釉薬層)とガラス層(釉薬層)の間に図柄を形成することは困難であった。
【0030】
これに対して、本実施形態においては、セルロースナノファイバーを水に分散させたセルロースナノファイバー分散水(セルロースナノファイバー分散流動体)と顔料とを混ぜた絵具Aを使用しており、セルロースナノファイバーの密着性により、セルロースナノファイバーを介して顔料が下層のガラス層20にしっかりと密着し、描いた図柄30が、釉薬をかけることで流れてしまうことがない。さらに、絵具Aは、乾燥後、親水性であるため、かけた釉薬をはじくことがなく、図柄30上に釉薬層(ガラス層)20を形成できる。
【0031】
なお、上記実施形態では、素地の上に釉薬層である第一ガラス層20aを最初に形成し、第一ガラス層20aの上に第一図柄30aを形成する、いわゆる上絵付けの場合の多層絵付けについて説明したが、素地の上に最初の図柄(ここでは、第0図柄とする)30を描画し、その上に第一ガラス層20aを形成する、いわゆる下絵付けの場合でも同様に多層絵付けを行うことができる。
【0032】
また、既存の陶磁器の表面にさらに図柄を追加したい場合にも本発明を適用することができる。この場合、既存の陶磁器の表面釉薬層(ガラス層)の上に、上記実施形態と同様に図柄30とガラス層(釉薬層)20を積層していくことで、後付けで立体的な図柄を形成することができる。
【0033】
また、本実施形態に使用される絵具は、上記絵具Aに限定されるものではなく、親水性のセルロースナノファイバーの分散水と顔料とを混合し、顔料が良好に分散された絵具であれば、適宜種々の絵具を用いることができる。例えば、本発明者らは、下記絵具B~Dを使用して良好に多層絵付けが行えることを確認した。
【0034】
(絵具B)
顔料(グリーンM-142 日陶顔料工業(株)) 0.3003g
CNF(針葉樹漂白品 大王製紙(株)) 0.9412g(重量比2%のCNF分散水)
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0104g
(絵具C)
顔料(グリーンM-142 日陶顔料工業(株)) 0.3000g
CNF(広葉樹漂白品 大王製紙(株)) 0.9296g(重量比2%のCNF分散水)
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0107g
【0035】
(絵具D)
顔料(グリーンM-142 日陶顔料工業(株)) 0.3007g
CNF(レオクリスタ 第一工業製薬) 0.2637g(ゼリー状のCNF分散流動体)
蒸留水 0.66ml
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0105g
但し、絵具Dの場合には、CNF分散流動体がゼリー状であるため、セルロースナノファイバーの分散性を高めるために、混合時に超音波振動を与えて混合するのが望ましい。
【0036】
続いて、本実施形態の変形例1について説明する。上記実施形態では、陶磁器(焼き物)に多層絵付けを行う場合について説明したが、本発明に係る多層絵付けは、陶磁器に限らず、ガラスを材料とするガラス製品にも適用することができる。
【0037】
図3は、本実施形態の変形例1に係るガラス製品の構成を示す一部断面図である。ガラス製品40の表面に多層絵付けを行う場合には、ガラス製品本体41の表面に第一ガラス層20aを形成し、順次、上記実施形態と同様に図柄30とガラス層20を積層していけば良い。
【0038】
本変形例1では、下記絵具Eを使用した。
(絵具E)
顔料(グリーンM-142 日陶顔料工業(株)) 0.3006g
CNF(機械パルプ漂白品 大王製紙(株)) 0.9420g(重量比2%のCNF分散水)
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0108g
珪石粉(#300) 0.1005g
【0039】
また、本変形例1では、通常の陶磁器とは異なり、素地となるガラス製品本体41のガラスの融点が低いことから、上記釉薬A,Bよりも融点の低い下記釉薬Cを使用した。
(釉薬C)
ガラス粉(日本琺瑯釉薬(株)4694) 0.8001g
CNF(機械パルプ漂白品 大王製紙(株)) 0.5076g(重量比2%のCNF分散水)
CMC(カルボキシルメチルセルロース) 0.0107g
蒸留水 0.5ml
【0040】
図3は、本実施形態の変形例1に係る多層絵付け方法の手順を示すフローチャートである。まず、S23において、下地となるガラス製品本体41の表面上に1%寒天水溶液を塗布し、105℃の環境下で1時間乾燥させる。このように、ガラス表面上に寒天層を形成しておくことで、ガラス表面とセルロースナノファイバーとの密着性をより向上させることができる。
【0041】
続いて、S24において、ガラス製品本体41の表面上に釉薬Cを塗布して乾燥させる。本変形例1では、釉薬Cにセルロースナノファイバーを加えており、その密着性により釉薬Cがガラス製品本体41の表面に良好に塗布される。
【0042】
そして、S25において、この乾燥した釉薬C(ここでは、第0ガラス層20zとなる)の上に絵具Eを用いて図柄(ここでは、焼成前の釉薬層の上に描画される図柄であるため、第0図柄30zとなる)を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。続いて、乾燥させた図柄の上に釉薬Cを塗布し、再度、50℃で1時間乾燥させる(S26)。その後、S27において、この乾燥させたものを、最高温度780℃で焼成し、ガラス製品本体41上に、第0ガラス層20zと、第0図柄30zと、第一ガラス層20aとを積層形成する。
【0043】
次に、S30において、第一ガラス層20aの上に同じく絵具Eを用いて図柄を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。乾燥後、乾燥させたものに釉薬Cを塗布し、再度50℃で1時間乾燥させる(S31)。その後、S32に進み、この再度乾燥させたものを再度最高温度780℃で焼成し、第一ガラス層20aの上に、第一図柄30aと、第二ガラス層20bを形成する。
【0044】
次に、S35において、第二ガラス層20bの上に同じく絵具Eを用いてガラス層20上に描画される二層目の図柄を描き、50℃の環境下で1時間乾燥させる。乾燥させたものに釉薬Cを塗布し、再度、50℃で1時間乾燥させる(S36)。その後、S37に進み、この再度乾燥させたものを再度最高温度780℃で焼成し、第二ガラス層20bの上に、第二図柄30bと第三ガラス層20cを形成する。
【0045】
以上の工程により、ガラス製品に対して、透明なガラスの層であるガラス層20を間に挟んで、三層の図柄(第0図柄30z、第一図柄30a、第二図柄30b)が立体的に重なった立体感のある図柄を形成することができる。
【0046】
以上、本変形例1によれば、セルロースナノファイバー分散水と顔料とを含む絵具Eを用いることで、ガラス層20の間に図柄30を形成することが可能となり、上記実施形態と同様に、ガラス製品の表面にガラス層20を挟んで多層の図柄30を形成することができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、絵具や釉薬の材料や配合割合は適宜変更可能である。
【0048】
また、絵具の材料であるセルロースナノファイバーも上述したセルロースナノファイバーに限定されるものではなく、親水性であり、密着性に優れたセルロースナノファイバーであれば、適宜採用することができる。
【0049】
また、セルロースナノファイバーの形態は、粉末、ペースト、スラリー等のどのような形態でも良く、また、セルロースナノファイバーを分散させる媒体は、水に限らず、様々な流動体を用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、絵具に混合する糊としてCMCを用いているが、加工デンプン等の半合成糊や、天然糊、合成糊など、適宜他の糊を使用することができる。但し、焼成により消失する糊を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0051】
10 陶磁器
11 素地
20 ガラス層
30 図柄
40 ガラス製品
41 ガラス製品本体
図1
図2
図3
図4