(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ポケットコイル処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220307BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220307BHJP
【FI】
B09B3/00 303G
B09B3/00 ZAB
(21)【出願番号】P 2021010042
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520001246
【氏名又は名称】飛鳥興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205626
【氏名又は名称】村上 博
(72)【発明者】
【氏名】青木 英長
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255885(JP,A)
【文献】特開昭49-22381(JP,A)
【文献】特開昭48-86773(JP,A)
【文献】特開2007-298251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B01D 29/00,39/00,53/00
B68G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケットコイルの包装体を加熱溶融させるヒータを備える加熱処理部と、
前記加熱処理部に連通し、排気を水によって冷却洗浄するシャワーを有するシャワー室、及び前記シャワー室に連通し、フィルタとして使用する廃棄マットレスを収容する空間を有するフィルタ室を備える排気処理部と、
を備えるポケットコイル処理装置。
【請求項2】
前記加熱処理部は、
前記ポケットコイルを前記ヒータの方向に昇降させるリフトをさらに備える請求項1に記載のポケットコイル処理装置。
【請求項3】
前記加熱処理部は、
内部に着脱可能な網体を有し、前記ポケットコイルを載置するトレイをさらに備える請求項1に記載のポケットコイル処理装置。
【請求項4】
前記加熱処理部は、
前記包装体が溶融される際に飛び出すコイルバネから前記ヒータを保護するガード部をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポケットコイル処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットコイル処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今般廃棄物の資源化は社会的な注目を集めている。中でも、金属と、樹脂とが混在している廃棄物から、有用物を分離することは社会的な要請が高い。
【0003】
特に、熱可塑性樹脂素材と、金属素材とが用いられているポケットコイル廃棄物を、樹脂と金属とに分離し、分離した素材をそれぞれ再利用する循環型社会の構築に向けて、上記廃棄物を効率よく、望ましくは連続的に処理できる装置の需要は高いものがある。
【0004】
ここで、マットレスは、金属、樹脂、セルロースなどの天然素材などを含む。中でも、樹脂の不織布によって形成される包装体の中にコイルバネを個別に包んだポケットコイルを含むマットレスの処理は、工数がかかっていた。
【0005】
従って、廃棄されたマットレスの処理に際してできるだけ環境に悪影響をもたらさないように、かつ、工数をかけずに、金属などの有用物を分離する装置が求められてきた。
【0006】
この点に関し、ポケットコイルを収容する収容空間と、ポケットコイルの包装体を溶融する温度に加熱する加熱手段と、を含む解体装置が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【0007】
しかし、この従来技術によっては、ポケットコイルを処理する際に発生する有害な排気を無害化するために加熱処理を行うため、多大なエネルギーが必要である。
【0008】
さらに、このエネルギーを節約するために、排気に水を噴霧し、さらにフィルタによって有害物質をフィルタリングする湿式スクラバを備える廃棄物熱処理装置が提案されている(例えば、特許文献2。)。
【0009】
しかし、この従来技術によっては、フィルタに専用素材を使用する必要があり、使用後にはこのフィルタがさらに廃棄物となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6032957号公報
【文献】特表2015-512776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、廃棄されたマットレスのポケットコイルから環境への負荷を低減して金属などの有用物を分離するポケットコイル処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポケットコイルの包装体を加熱溶融させるヒータを備える加熱処理部と、前記加熱処理部に連通し、排気を水によって冷却洗浄するシャワーを有するシャワー室、及び前記シャワー室に連通し、フィルタとして使用する廃棄マットレスを収容する空間を有するフィルタ室を備える排気処理部と、を備えるポケットコイル処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、廃棄されたマットレスのポケットコイルから環境への負荷を低減して金属などの有用物を分離するポケットコイル処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ポケットコイル処理装置の外観斜視図である。
【
図2】ポケットコイル処理装置の要部を示す側面図である。
【
図3】ポケットコイル処理装置の使用状態を示す図である。
【
図4】マットレスから表装部を除去した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るポケットコイル処理装置を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のポケットコイル処理装置1の外観斜視図である。
図1に示すように、ポケットコイル処理装置1は、加熱処理部10と、排気処理部20と、を備える。
【0017】
加熱処理部10は、開閉可能な第1ドア101を前面に有する第1筐体100を備える。
【0018】
排気処理部20は、開閉可能な第2ドア208を側面に有する第2筐体200を備える。
【0019】
図2は、ポケットコイル処理装置1の要部を示す側面図である。
図2に示すように、加熱処理部10は、第1筐体100の内部に、断熱材102と、ヒータ103と、ファン104と、ガード部105と、載置台106と、リフト107と、通気口109と、を備える。
【0020】
断熱材102は、第1筐体100の内壁のうち、第1ドア101の部分を除いた内壁に沿って配置される。
【0021】
ヒータ103は、断熱材102の天井の内壁に配置され、ポケットコイルPを包む樹脂製の包装体303などの樹脂製部材を溶融するのに十分な熱を発生させる。
【0022】
ファン104は、第1筐体100の天井のヒータ103の下方に配置される。ファン104は、ヒータ103によって加熱された熱風をポケットコイルPの方向に送る。
【0023】
ガード部105は、ファン104の下方に、断熱材102の内壁に沿って配置される。ガード部105は、例えば網やメッシュのような、ファン104からの送風を通す穴を複数個有する板状の部材により形成される。ガード部105は、包装体303が溶融する際に飛び出す、ポケットコイルPの内部のコイルバネ304から断熱材102、ヒータ103、及びファン104を保護する。
【0024】
載置台106は、第1筐体100の底面付近に配置され、処理するポケットコイルPを載せるトレイ108を載置する。載置台106は、フォークリフトのフォークをトレイ108の下に差し込むのに十分な高さを有する。載置台106は、フォークリフトのフォークが差し込めるように、間隔をあけて2本設けられる。この2本の載置台106は、剛性を有する部材によって連結される。
【0025】
リフト107は、載置台106に設けられ、載置台106をヒータ103の方向に昇降させる。リフト107は、油圧式でも機械式でもよい。リフト107が載置台106をヒータ103の方向に上昇させると、載置台106にトレイ108を介して載せられたポケットコイルPとヒータ103との距離が短くなり、ヒータ103の熱がより効率よくポケットコイルPに伝わり、ポケットコイルPの包装体303を溶融する時間を短くでき、エネルギーを節約できるという効果が得られる。
【0026】
トレイ108は、内部に着脱可能な網体を有し、この網体の上にポケットコイルPが載置される。溶融された包装体303は、網体を通してトレイに落下する。従って、溶けた包装体303がポケットコイルPの金属部分に再付着することを防止できる。
【0027】
通気口109は、第1筐体100の下方に設けられ、第2筐体200と連通する。
【0028】
排気処理部20は、第2筐体200の内部に、隔壁201と、シャワー203と、フィルタ載置台205と、排気孔206と、排気ファン207と、を備える。
【0029】
隔壁201は、第2筐体200の内部を通気口109と連通するシャワー室202と、排気孔206を有するフィルタ室204と、を区画するように配置される。隔壁201の上端部にはシャワー室202とフィルタ室204とを連通する送気孔201Aを備える。
【0030】
シャワー203は、シャワー室202の内部の天井に配置される。シャワー203は、通気口109から流入する排気に向かって水Wを噴射し、この水Wによって排気を冷却洗浄する。噴射された水Wは、循環しても別途設けられる貯水部に排水してもよい。
【0031】
フィルタ室204はフィルタとして使用する廃棄マットレスM1を収容する空間を有する。
【0032】
フィルタ載置台205は、網やメッシュなどの通気性のある部材によって形成され、フィルタ室204の排気孔206の上部に設けられる。フィルタ載置台205には、布帛、綿、ウレタン製クッション材などの表装部M2を有する廃棄マットレスM1が載置される。廃棄マットレスM1とフィルタ載置台205との間や、廃棄マットレスM1と隔壁201及び第2筐体200の内壁との隙間には、廃棄マットレスM1からはがしとった表装部M2などを差し込んでもよい。
【0033】
排気孔206は、フィルタ室204と外部とを連通する。
【0034】
排気ファン207は、フィルタ室204の内部の排気を外部に排出する。
【0035】
図3は、ポケットコイル処理装置1の使用状態を示す図である。
図3に示しように、処理対象のポケットコイルPは、トレイ108に1枚または複数枚載置され、フォークリフトなどにより載置台106に乗せられる。
【0036】
第1ドア101を閉じた後に、リフト107はトレイ108に乗せられたポケットコイルPを、載置台106を上昇させることによりヒータ103の方向に持ち上げる。
【0037】
次いで、ファン104を回転させ、ヒータ103を駆動させて熱風をポケットコイルPの方向、すなわち矢印X1の方向に送風する。
【0038】
ポケットコイルPの包装体303などの樹脂材料が溶融する際には有害な排気が発生する。この排気は通気口109を通って排気処理部20のシャワー室202に、矢印X2に沿って排出される。
【0039】
シャワー室202のシャワー203からは水Wが上から下に向かって噴射される。この水Wによって、排気が冷却され、有害物質がある程度除去される。
【0040】
排気は矢印X3に沿って上昇し、送気孔201Aから矢印X4に沿って廃棄マットレスM1と、表装部M2と、を通過し、矢印X5に沿って排気孔206から排気ファン207によって外部に排出される。
【0041】
廃棄マットレスM1と表装部M2とは、有害物質を取り除くフィルタとして機能する。廃棄マットレスM1と表装部M2とは水などの溶媒を吸わせて使用してもよい。フィルタとして使用した廃棄マットレスM1は、表層部M2をはがしてポケットコイルPにし、ポケットコイル処理装置1によって処理できる。
【0042】
図4は、マットレスから布帛、綿、及びウレタン製クッション材などの表装部M2を除去した状態を示す図である。
図4に示しように、この状態において、ポケットコイルPの集合体301はボーダーワイヤ302によってマットレスの形状に整えられる。
【0043】
この状態からボーダーワイヤ302を取り除くと、ポケットコイルPの集合体301のみとなり、このポケットコイルPの集合体301がポケットコイル処理装置1に投入される。
【0044】
図5は、ポケットコイルPの集合体301を示す図である。ポケットコイルPは、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の不織布の包装体303の内部に金属製のコイルバネ304が封入されて形成される。ポケットコイルPはいくつか横方向に連続して集合体301が形成され、この集合体301同士が接着されてマットレスの形に成形される。
【0045】
以上述べたように、本実施形態によれば、ポケットコイルPの包装体303を加熱溶融させるヒータ103を備える加熱処理部10と、加熱処理部10に連通し、排気を水Wによって冷却洗浄するシャワー203を有するシャワー室202、及びシャワー室202に連通し、フィルタとして使用する廃棄マットレスM1を収容する空間を有するフィルタ室204を備える排気処理部20と、を備える。
【0046】
従って、廃棄マットレスM1をフィルタとして再利用することにより、新たな廃棄物を出さずに、廃棄されたマットレスのポケットコイルPから環境への負荷を低減して金属などの有用物を分離するポケットコイル処理装置1を提供することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0047】
1 ポケットコイル処理装置
10 加熱処理部
20 排気処理部
100 第1筐体
101 第1ドア
102 断熱材
103 ヒータ
104 ファン
105 ガード部
106 載置台
107 リフト
108 トレイ
109 通気口
200 第2筐体
201 隔壁
201A 送気孔
202 シャワー室
203 シャワー
204 フィルタ室
205 フィルタ載置台
206 排気孔
207 排気ファン
208 第2ドア
301 集合体
302 ボーダーワイヤ
303 包装体
304 コイルバネ
【要約】
【課題】廃棄されたマットレスのポケットコイルから環境への負荷を低減して金属などの有用物を分離するポケットコイル処理装置を提供する。
【解決手段】ポケットコイル処理装置1は、ポケットコイルPの包装体303を加熱溶融させるヒータ103を備える加熱処理部10と、加熱処理部10に連通し、排気を水Wによって冷却洗浄するシャワー203を有するシャワー室202、及びシャワー室202に連通し、フィルタとして使用する廃棄マットレスM1を収容する空間を有するフィルタ室204を備える排気処理部20と、を備える。
【選択図】
図2