(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】流体圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/46 20060101AFI20220307BHJP
G01L 15/00 20060101ALI20220307BHJP
G01P 5/165 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G01F1/46
G01L15/00
G01P5/165
(21)【出願番号】P 2018089153
(22)【出願日】2018-05-07
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】508332416
【氏名又は名称】株式会社芝田技研
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】芝 吉治郎
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9075075(US,B2)
【文献】米国特許第5736651(US,A)
【文献】特許第5859860(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F
G01L
G01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風管と、前記送風管内の流体の流れ軸方向に対して長手方向が交差するように該送風管に配置されるとともに、前記長手方向に配列されて開口する複数の測定孔を有する多孔ピトー管とを備えた流体圧力検出装置であって、
前記多孔ピトー管は、前記複数の測定孔が形成された長尺のセンサ管と、前記センサ管の一端に設けられた圧力出力プラグと、前記センサ管の他端を封止する封止プラグとで構成され、前記多孔ピトー管の前記封止プラグ側が前記送風管の壁面を貫通するように該多孔ピトー管が前記送風管に取り付けられ
、
前記送風管内の前記多孔ピトー管の上流側に整流格子を備え、
前記整流格子は、前記送風管の軸線と平行な2枚の整流プレートを前記軸線から放射状となるように互いに直角に配置して設けられ、
前記整流プレートの外周端部が前記送風管の内面に当接されて固着されていることを特徴とする流体圧力検出装置。
【請求項2】
前記測定孔を前記流体の流れ軸の上流側に開口した第1の多孔ピトー管と、前記測定孔を前記流体の流れ軸の下流側に開口した第2の多孔ピトー管とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の流体圧力検出装置。
【請求項3】
前記
2枚の整流プレート同士の交差部分は、スリット同士を差し込むことで組み付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風管内を流れる気体の速度や流量を測定するために流体の圧力を検出する多孔ピトー管を備えた流体圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体圧力検出装置として、例えば特開2011-232316号公報(特許文献1)に開示された風道がある。この従来の流体圧力検出装置(風道)は、送風管(ダクト等)内において、上流側に整流格子を備えるとともに、その下流側に複数の測定孔を有する多孔ピトー管(多孔管)を備えて構成されている。そして、整流格子によって流れの状態を整え、多孔管ピトー管で流体の圧力を検出するものである。
【0003】
また、送風管内の風速分布が、フラットになることは希で、圧力検出装置の前後に接続される配管の組み合わせ等により、多種多様な風速分布が生じる。
図5は、本発明が対象とする送風管内の空気の速度分布の一例を説明する図である。図示のように、層流における管内の速度分布は管の中央が高速で管壁に近くなるにしたがって略二次関数的に低速になる傾向にある。また、乱流における管内の速度分布は層流に比べて扁平であり、管の中央から管壁の近くまで略平坦な分布となり、管壁に近くなるにしたがって略べき乗関数的に低速になる傾向にある。そのため、送風管の流路断面を横断するように位置する多くの点での圧力により、図示の平均流速(風量)を検出できるようにしている。すなわち、長尺のセンサ管に、その長手方向に多数の測定孔を設けた多孔ピトー管を用い、この多孔ピトー管を流線と交差(直交)するように配置し、多数の測定孔で圧力を検出している。なお、この圧力検出点についても、流路断面を等断面積となるように多数の領域に分割し、各領域の断面の中心に測定孔を配置するようにして圧力を検出する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように送風管内の風速分布がフラットになることは希で、この風速は、送風管の壁面近傍になるほど減速し、その減速率も壁面に近くなるほど大きくなる。このため、送風管の壁面近傍での圧力検出が風量等の正確な測定に欠かせない。しかしながら、多孔ピトー管のセンサ管の端部は封止する必要があるため、封止構造との干渉を避けるために、この壁面近傍に測定孔を設けることが困難である。また、送風管が円筒状の場合、流路断面を等断面積となる多数の領域に分割する場合、壁面に近い領域ほど径方向の幅が小さくなるため、この壁面に近い部分では、測定孔を近接させる必要があり、上記の問題が顕著になる。
【0006】
本発明は、この点に鑑み、送風管の壁面の近傍にも容易に測定孔を設けることができるようにした流体圧力検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、送風管と、前記送風管内の流体の流れ軸方向に対して長手方向が交差するように該送風管に配置されるとともに、前記長手方向に配列されて開口する複数の測定孔を有する多孔ピトー管とを備えた流体圧力検出装置であって、前記多孔ピトー管は、前記複数の測定孔が形成された長尺のセンサ管と、前記センサ管の一端に設けられた圧力出力プラグと、前記センサ管の他端を封止する封止プラグとで構成され、前記多孔ピトー管の前記封止プラグ側が前記送風管の壁面を貫通するように該多孔ピトー管が前記送風管に取り付けられ、前記送風管内の前記多孔ピトー管の上流側に整流格子を備え、前記整流格子は、前記送風管の軸線と平行な2枚の整流プレートを前記軸線から放射状となるように互いに直角に配置して設けられ、前記整流プレートの外周端部が前記送風管の内面に当接されて固着されていることを特徴とする流体圧力検出装置である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明であって、前記測定孔を前記流体の流れ軸の上流側に開口した第1の多孔ピトー管と、前記測定孔を前記流体の流れ軸の下流側に開口した第2の多孔ピトー管とを備えたことを特徴とする流体圧力検出装置である。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明であって、前記2枚の整流プレート同士の交差部分は、スリット同士を差し込むことで組み付けられていることを特徴とする流体圧力検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多孔ピトー管が、その封止プラグ側が送風管の壁面を貫通するようにして、この送風管に取り付けられているので、多孔ピトー管のセンサ管の端部である壁面の近傍に測定孔を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の流体圧力検出装置の一部破砕正面図である。
【
図2】本発明の実施形態の流体圧力検出装置の一部破砕側面図である。
【
図3】本発明の実施形態の流体圧力検出装置における封止プラグの部分と出力プラグの部分の拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の流体圧力検出装置における多孔ピトー管の組み付け手順と多孔ピトー管の送風管に対する取り付け手順を説明する図である。
【
図5】本発明が対象とする送風管内の空気の速度分布の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の流体圧力検出装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の流体圧力検出装置の一部破砕正面図、
図3は実施形態の流体圧力検出装置における封止プラグの部分と圧力出力プラグの部分の拡大断面図である。
【0013】
この実施形態の流体圧力検出装置は、「送風管」としての送風管10と、整流格子20と、圧力センサ部30とを備えて構成されている。
【0014】
送風管10は円筒形状の導管10aと導管10aの両端の外周に形成されたフランジ部10bとで構成されている。フランジ部10bは、当該圧力検出装置の前後に接続される他の配管との接続用に設けられており、その他の配管とでボルト止めするための止め孔10cが形成されている。そして、この送風管10内で流体である気体が
図2の矢印の方向に流れる。すなわち、気流の流れ軸方向(流体の流れ軸方向)は、送風管10の中心軸である軸線L方向である。
【0015】
整流格子20は、送風管10の軸線Lと平行な2枚の整流プレート20a,20aを軸線Lから放射状となるように互いに直角に配置し、この整流プレート20a,20a同士の交差部分は、スリット同士を差し込むことで組み付けられている。また、この整流プレート20a,20aの外周端部は送風管10の導管10aの内面に当接され、この当接部分と上記交差部分とは溶接により固着されている。
【0016】
圧力センサ部30は、第1の多孔ピトー管1Aと第2の多孔ピトー管1Bとを備えている。第1の多孔ピトー管1Aは気流の流れ軸方向の上流側に配置され、第2の多孔ピトー管1Bは、気流の流れ軸方向の下流側に配置されている。また、第1の多孔ピトー管1Aと第2の多孔ピトー管1Bは、互いに平行に配置されるとともに、その長手方向が送風管10の軸線Lと直角となるようにして送風管10を横切るように取り付けられている。なお、以下の説明でこの「第1」と「第2」を区別しないときは「多孔ピトー管1」として説明する。
【0017】
それぞれの多孔ピトー管1は、長尺の金属製の管からなるセンサ管11と、センサ管11の一方の端部に取り付けられた金属製の封止プラグ12と、センサ管11の他方の端部に取り付けられた金属製の圧力出力プラグ13とで構成されている。樹脂の管や樹脂のプラグでもよい。
【0018】
センサ管11は、その長手方向と直交する面(軸線L方向の面)で切断した断面形状が角型(矩形)となる形状であり、このセンサ管11には、その矩形の稜線のうちの一つの稜線の箇所に、複数(この実施形態では6つ)の測定孔11aが形成されている。そして、第1の多孔ピトー管1Aは、測定孔11aが気流の流れ軸方向の上流側に開口するように配置され、第2の多孔ピトー管1Bは、測定孔11aが気流の流れ軸方向の下流側に開口するように配置されている。
【0019】
図3(A)に示すように、封止プラグ12は、円柱形状の円柱部12aと、円柱部12aの中央に形成された突起12bとを有している。そして、突起12bがセンサ管11の内部に挿入され、封止プラグ12は、円柱部12aの端面をセンサ管11の端面に突き当てた状態で、このセンサ管11の端部に取り付けられている。これにより、センサ管11の内部が封止されている。
【0020】
図3(B)に示すように、圧力出力プラグ13は、薄型円柱形状の円柱部13aと、円柱部13aの中央に形成された突起13bと、円柱部13aの他方に形成されたフレアナット部13cとを有している。また、圧力出力プラグ13は、円柱部13aと突起13bとを貫通するように中心に導通孔13dを有しており、この導通孔13dは突起13bの端部をフレアナット部13cの内部に導通している。そして、突起13bがセンサ管11の内部に挿入され、圧力出力プラグ13は、円柱部13aの端面をセンサ管11の端面に突き当てた状態で、このセンサ管11の端部に取り付けられている。これにより、センサ管11の内部は導通孔13dを介してフレアナット部13cの内部に連通されている。フレアナット部13cは内側に雌ねじ部13eを有しており、図示しない計測メータに連通する配管がフレアナット部13cに接続される。
【0021】
以上の構成により、この実施形態の流体圧力検出装置は、送風管10内を流れる気流に対して、気流の流れ軸方向の上流側に配置された第1の多孔ピトー管1Aにより気流の全圧を検出し、気流の流れ軸方向の下流側に配置された第2の多孔ピトー管1Bにより気流の見かけの静圧(実際の静圧とは異なる圧力であり、以下「見かけの静圧」という。)を検出する。そして、この全圧と見かけの静圧は、第1及び第2の多孔ピトー管1A,1Bの圧力出力プラグ13から図示しない計測メータに出力され、この計測メータにおいて、全圧と見かけの静圧の圧力差を流体の流速あるいは流量に換算して測定が行われる。
【0022】
次に、多孔ピトー管1の組み付け手順と多孔ピトー管1の送風管10に対する取り付け手順についてさらに詳細に説明する。まず、
図4(A)に示すように、測定孔11aが形成されたセンサ管11に対して、その片側端部に封止プラグ12を嵌め込み、封止プラグ12の円柱部12aの端面とセンサ管11の端面とを溶接により固着する。また、センサ管11の他方の端部に圧力出力プラグ13を嵌め込み、圧力出力プラグ13の円柱部13aの端とセンサ管11の端面とを溶接により固着する。これにより多孔ピトー管1が構成される。
【0023】
図4(B)に示すように、送風管10の導管10aには、センサ管11の外周形状に整合する形状の第1及び第2の貫通孔10H1,10H2が形成されており、上記のように構成した多孔ピトー管1を、その封止プラグ12側の端部から第1の貫通孔10H1に挿通し、反対側の第2の貫通孔10H2に対して封止プラグ12を貫通させる。また、同時に第1の貫通孔10H1に圧力出力プラグ13の円柱部13aの一部を貫通させる。そして、第1の貫通孔10H1と圧力出力プラグ13との周囲を溶接により固着し、第2の貫通孔10H2と封止プラグ12との周囲を溶接により固着する。これにより、多孔ピトー管1の内部が封止されて、送風管10に取り付けられる。
【0024】
以上のように、実施形態の流体圧力検出装置は、送風管10と、送風管10内の気流の流れ軸方向に対して長手方向が交差するように送風管10に配置された多孔ピトー管1を備えている。また、多孔ピトー管1は、長手方向に配列されて開口する複数の測定孔11aを有している。多孔ピトー管1は、複数の測定孔11aが形成された長尺のセンサ管11と、センサ管11の一端に設けられた圧力出力プラグ13と、センサ管11の他端を封止する封止プラグ12とで構成されている。そして、多孔ピトー管1の封止プラグ12側が送風管10の導管10aの壁面を貫通するように、この多孔ピトー管1が送風管10に取り付けられている。したがって、多孔ピトー管1のセンサ管11の端部である壁面の近傍に、測定孔11aを容易に設けることができる。
【0025】
また、実施形態の流体圧力検出装置は、測定孔11aを気流の流れ軸の上流側に開口した第1の多孔ピトー管1Aと、測定孔11aを気流の流れ軸の下流側に開口した第2の多孔ピトー管1Bとを備えているので、気流の全圧と気流の見かけの静圧とを検出して、気流の流速や流量等を測定する計測メータに適用できる。
【0026】
また、実施形態の流体圧力検出装置は、送風管10内の多孔ピトー管1の上流側に整流格子20を備えているので、この整流格子20が送風管10内での気流の旋回流を防止することができ、圧力センサ部30(多孔ピトー管1)側に流れる気流を整流することができる。したがって、気流圧力を精度良く検出することができる。
【0027】
実施形態では、センサ管11がその断面形状が角型(矩形)となる形状のものを例に説明したが、このセンサ管の形状は、その長手方向と直交する面で切断した断面形状が、丸型、菱型、砲弾型であるような形状など、いずれの形状のものでもよい。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10 送風管
10a 導管
10b フランジ部
10H1 第1の貫通孔
10H2 第2の貫通孔
20 整流格子
20a 整流プレート
30 圧力センサ部
1 多孔ピトー管
1A 第1の多孔ピトー管
1B 第2の多孔ピトー管
11 センサ管
11a 測定孔
12 封止プラグ
12a 円柱部
12b 突起
13 圧力出力プラグ
13a 円柱部
13b 突起
13c フレアナット部
13d 導通孔
13e 雌ねじ部
L 軸線