(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】クランプセンサおよびクランプメータ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/22 20060101AFI20220307BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G01R1/22 A
G01R15/18 B
(21)【出願番号】P 2018110243
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390025623
【氏名又は名称】共立電気計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】河本 理
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-155133(JP,A)
【文献】特開平11-295348(JP,A)
【文献】特開平9-311143(JP,A)
【文献】実開昭62-42070(JP,U)
【文献】特開2004-14897(JP,A)
【文献】特開2017-191018(JP,A)
【文献】「交流電流測定用クランプメータ[共立電気計器] | 日本電計株式会社が運営する計測機器、試験機器の総合展示会」,2014年07月04日,https://www.keisokuten.jp/products/1040.html
【文献】「フレキシブルクランプメータ KEW 2210R」,2014年07月04日,https://www.keisokuten.jp/file.php?id=3325
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 15/00-15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を連結することで被検出線を非接触で囲む環状鉄心となる連結コアと、該連結コアの外周にコイルを配置可能なコイル体と、から成るクランプセンサであって、
前記連結コアは、高透磁率軟磁性材料で形成され、最も離隔する一対の端部にそれぞれ第1連結部と第2連結部を形成した連結素体を複数用い、互いの
前記第1連結部と
前記第2連結部が回動可能な1軸性関節となるように連結することで両端が開いた数珠つなぎ状の連結構造と成し、一方端の
前記連結素体における連結されていない
前記第1連結部を第1着脱端部とし、他方端の
前記連結素体における連結されていない
前記第2連結部を第2着脱端部とし、
前記第1着脱端部と
前記第2着脱端部とを連結することで、全ての
前記連結素体が環状に閉じた
前記環状鉄心を構成可能とし、
前記コイル体は、前記連結コアを内挿可能な内空部を有すると共に、各端部から前記連結コアの
前記第1着脱端部と
前記第2着脱端部をそれぞれ露出させ得る長さで、前記連結コアの変形に追随して無理なく変形し得る可撓性を有する内層チューブと、該内層チューブの外表面にマグネットワイヤを巻回して成るコイルと、を備え、
前記コイル体の外面側を絶縁性の外層チューブで覆うと共に、
前記コイル体の
前記内空部に
前記連結コアを内挿し
、
前記連結コアの各連結素体は、高透磁率軟磁性材料の板材であるベース材を複数枚積層して所要の厚さとなるように構成し、
前記ベース材は、長手方向の二辺である外側弧状縁部と内側弧状縁部、短手方向の二辺である凸状端縁部と凹状端縁部を備える弧状の長尺板材であり、前記外側弧状縁部は、仮想の原点Oから第1距離だけ離れた仮想中心円弧の外側へ第2距離だけ離れた円弧と重なり、前記内側弧状縁部は、前記仮想中心円弧の内側へ前記第2距離だけ離れた円弧と重なり、前記凸状端縁部は、前記1軸性関節となるように連結される軸位置から等距離となる円弧状に突出し、前記凹状端縁部は、前記凸状端縁部と同等程度の曲率で円弧状に窪み、前記仮想中心円弧上の前記凸状端縁部側に開設した第1固着孔と、前記仮想中心円弧上の中央に開設した第2固着孔と、前記仮想中心円弧上の前記凹状端縁部側に開設した第3固着孔と、を備えるものとし、
前記凸状端縁部を前記第1連結部側に配置した前記ベース材と、前記凸状端縁部を前記第2連結部側に配置した前記ベース材とを重ねたときに、前記第1~第3固着孔である3箇所の孔が全て一致するように、前記原点Oから前記第2固着孔の中心を通る仮想線に対して、前記原点Oから前記第1固着孔の中心へ至る角度と、前記原点Oから前記第3固着孔の中心へ至る角度が同じになるように、前記第1~第3固着孔の開設位置を設定し、
前記ベース材の前記凸状端縁部と前記凹状端縁部を交互に積層し、積層した全ての前記ベース材を前記第1~第3固着孔を介して一体に固定して前記連結素体を構成することで、前記第1連結部と前記第2連結部は互いに前記凸状端縁部と前記凹状端縁部とが噛み合う嵌合構造とし、且つ、前記1軸性関節で連結される各連結素体の各ベース材は互いの前記凸状端縁部と前記凹状端縁部とが阻害し合うこと無く所要範囲で回動できるようにしたことを特徴とするクランプセンサ。
【請求項2】
前記第1着脱端部と前記第2着脱端部とを所要の嵌合位置へ導くための導入ガイド部を、両端部にそれぞれ設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクランプセンサ。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載のクランプセンサを備え、
前記クランプセンサの前記コイルより得られた検出信号から計測対象の電流値を演算する計測装置を設けるようにしたことを特徴とする
クランプメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出線を含む大面積構造物にも対応できるクランプセンサと、このクランプセンサを用いて電流検出を行えるクランプメータに関する。
【背景技術】
【0002】
回路電源を落とさずに被検出線の電流測定(或いは、回路中の漏れ電流測定)を行う場合、被検出線をクランプセンサでクランプし、被検出線を流れる電流(或いは、回路中の漏れ電流)により生ずる磁界から電流値を求めるクランプメータが知られている。交流回路を検出対象とするのであれば、測定電流をコイルの巻数比に応じた二次電流に変換するCT(Current Transformer)方式のクランプメータが広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。また、被検出線を含んだ大型の構造物(柱など)ではクランプ箇所の断面が大面積となる。このような大面積構造物の電流測定を行う場合、構造物ごとクランプして電流検出を行えるロゴスキーコイル方式のクランプメータを用いることができる(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-031608号公報
【文献】特開2011-174769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のCT式クランプセンサは、mAレベルの微小電流の測定が可能であるものの、標準的な市販品では70mm程度のクランプ径しかなく、被検出線を含む大面積構造物ごと大口径でクランプすることはできない。対して、特許文献2に記載のロゴスキーコイル(空芯コイル)は、被検出線を含む大面積構造物ごと大口径でクランプできるものの、10A以下の低電流(微小な漏れ電流など)の測定ができない。
【0005】
電気の保守点検では、絶縁状態の良否判定に微小な漏れ電流(或いは接地電流)を測定することが必要であり、対象が大面積構造物であっても、その絶縁状態の判別には微小電流の測定を可能にする必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、被検出線を含む大面積構造物に流れる微小電流を検知できるクランプセンサとクランプメータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、両端部を連結することで被検出線を非接触で囲む環状鉄心となる連結コアと、該連結コアの外周にコイルを配置可能なコイル体と、から成るクランプセンサであって、前記連結コアは、高透磁率軟磁性材料で形成され、最も離隔する一対の端部にそれぞれ第1連結部と第2連結部を形成した連結素体を複数用い、互いの第1連結部と第2連結部が回動可能な1軸性関節となるように連結することで両端が開いた数珠つなぎ状の連結構造と成し、一方端の連結素体における連結されていない第1連結部を第1着脱端部とし、他方端の連結素体における連結されていない第2連結部を第2着脱端部とし、これら第1着脱端部と第2着脱端部とを連結することで、全ての連結素体が環状に閉じた環状鉄心を構成可能とし、前記コイル体は、前記連結コアを内挿可能な内空部を有すると共に、各端部から前記連結コアの第1着脱端部と第2着脱端部をそれぞれ露出させ得る長さで、前記連結コアの変形に追随して無理なく変形し得る可撓性を有する内層チューブと、該内層チューブの外表面にマグネットワイヤを巻回して成るコイルと、を備え、前記コイル体の外面側を絶縁性の外層チューブで覆うと共に、コイル体の内空部に連結コアを内挿したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載のクランプセンサにおいて、前記連結コアの連結素体は、高透磁率軟磁性材料の板材であるベース材を複数枚積層して所要の厚さとなるように構成し、前記ベース材は、一軸性関節となるように連結される軸位置から等距離となる円弧状に突出する凸状端縁部を一端側に、該突状端縁部と同等程度の曲率で円弧状に窪む凹状端縁部を他端側に、それぞれ備えるものとし、前記ベース材の凸状端縁部と凹状端縁部を交互に積層して連結素体を構成することで、第1連結部と第2連結部は互いに凸状端縁部と凹状端縁部とが噛み合う嵌合構造とし、且つ、1軸性関節で連結される各連結素体のベース材は互いの凸状端縁部と凹状端縁部とが阻害し合うこと無く所要範囲で回動できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のクランプセンサにおいて、前記第1着脱端部と第2着脱端部とを所要の嵌合位置へ導くための導入ガイド部を、両端部にそれぞれ設けるようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項4に係るクランプメータは、前記請求項1~請求項3の何れか1項に記載のクランプセンサを備え、前記クランプセンサのコイルより得られた検出信号から計測対象の電流値を演算する計測装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクランプセンサによれば、計測対象の被検出線を含む大面積構造物に応じて、連結素体を適数連結した連結コアによって必要十分な径の環状鉄心を構成することができる。そして、連結コアの第1着脱部と第2着脱部を開いた状態で大面積構造物を囲み、第1着脱部と第2着脱部を連結して環状鉄心となったその外周には、コイル体によりコイルが配置された状態となる。よって、大面積構造物をクランプセンサでクランプすれば、検出対象の交流電流により生ずる磁界変化から、コイルの巻数比に応じた二次電流を取得できるので、微小電流の検出および測定を行えるクランプメータとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るクランプメータの概略構成図である。
【
図2】クランプメータに用いるクランプセンサを示し、(a)は一部欠截平面図、(b)は一部欠截側面図である。
【
図3】連結コアを構成する基本リンクの俯瞰斜視図である。
【
図4】基本リンクを構成するベース材の平面図である。
【
図5】ベース材を用いた基本リンクの組立説明図である。
【
図6】(a)は基本リンクの背面図である。(b)は
図6(a)のVIb-VIb線矢視方向の拡大概略端面図である。
【
図7】(a)は連結された第1基本リンクと第2基本リンクの平面図である。(b)は
図7(a)のVIIb-VIIb線矢視方向の拡大概略端面図である。
【
図9】クランプセンサの組み立て工程説明図である。
【
図10】クランプセンサの第1連結ガイドと第2連結ガイドの連結過程説明図である。
【
図11】(a)はクランプセンサの第1連結ガイドと第2連結ガイドの連結前における概略横断面図である。(b)はクランプセンサの第1連結ガイドと第2連結ガイドの連結後における概略横断面図である。
【
図12】(a)はクランプセンサの第1連結ガイドと第2連結ガイドの連結前における概略縦断面図である。(b)はクランプセンサの第1連結ガイドと第2連結ガイドの連結後における概略縦断面図である。(c)は
図12(a)におけるXIIc-XIIc線矢視方向の拡大概略断面図である。(d)は
図12(b)におけるXIId-XIId線矢視方向の拡大概略断面図である。
【
図13】本実施形態に係るクランプメータにより電柱の接地電流(或いは漏れ電流)を計測するときの使用方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、クランプメータ1の概略構成を示し、このクランプメータ1は、被測定線をクランプするクランプセンサ2と、クランプセンサ2の検知電流に基づいて所定の演算を行い、計測結果をデジタル値(或いはアナログ値)で表示する計測装置3とで構成される。
【0014】
クランプセンサ2は、両端部を連結することで被検出線を非接触で囲む環状鉄心となる連結コア4と、連結コア4の外周にコイルを配置した状態を保持するコイル保持チューブ5とから成る。なお、連結コア4は、後述するように、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを外すことで曲げ伸ばしができる。よって、被検出線を含む大面積構造物(例えば、電柱)をクランプセンサ2で囲み、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを連結すると、電柱の周面を囲む環状鉄心とすることができる。環状鉄心となった連結コア4は、被検出線を流れる電流により生じた磁束を効率良く通す閉磁路として機能する。
【0015】
更に、コイル保持チューブ5は、連結コア4の変形に追随して無理なく変形し得る可撓性と絶縁性を備える。よって、連結コア4を閉じて環状鉄心としたときには、コイル保持チューブ5内のコイルも環状に配置されることとなり、被検出線を電流が流れることで環状鉄心に磁束が集中すると、この磁束を打ち消すようにコイル保持チューブ5のコイルに二次電流が流れる。この二次電流は、被検出線を流れる一次電流に対して、コイル保持チューブ5内コイルの巻数比に応じた大きさとして得ることができるので、数mA程度の微小電流を検出可能な検出感度に設定することが容易である。
【0016】
また、クランプセンサ2により大面積構造物をクランプする作業が繁雑とならないよう、本実施形態のクランプセンサ2における連結コア4の第1着脱端部4a側には第1連結ガイド6を、第2着脱端部4b側には第2連結ガイド7を設ける。これら第1,第2連結ガイド6,7は、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bの着脱を簡易に行える構造(後に詳述する)としてある。なお、クランプセンサ2における第1連結ガイド6から接続ケーブル8を延出させ、計測装置3と接続する。この接続ケーブル8を介してコイル保持チューブ5内のコイルから検出信号を受ける計測装置3は、電流検出用のシャント抵抗を備えており、クランプセンサ2の検出電流から被測定線を流れる電流値を演算して求め、表示部に表示する機能等を備える。
【0017】
上述したクランプセンサ2の概略構造を
図2に示す。なお、クランプセンサ2は被検出線の向きに応じて使用できるが、以下の説明においては、便宜上、クランプセンサ2によってクランプできる断面方向を横方向(或いは水平方向)、これに直交する方向を縦方向(或いは上下方向)として説明する。よって、
図2(a)はクランプセンサ2の一部を横方向に切り欠いて内部を示したもので、
図2(b)はクランプセンサ2の一部を縦方向に切り欠いて内部を示したものである。
【0018】
連結コア4は、例えば、14個の連結素体である第1基本リンク40-1、第2基本リンク40-2、…、第12基本リンク40-12、第13基本リンク40-13、第14基本リンク40-14を連結したものである。なお、第1~第14基本リンク40-1~40-14は、全て同一形状であり、特に区別する必要が無い場合は、単に基本リンク40という。これら第1~第14基本リンク40-1~40-14は、後述するベース材41を積層してリベット42で固定したものであり、最も離隔する一対の端部にそれぞれ第1連結部14aと第2連結部14bを形成する。
【0019】
第1基本リンク40-1と第2基本リンク40-2を連結する場合、第1基本リンク40-1における第2連結部40b(これを第1基本リンク第2連結部40-1bという。以下、同様)と第2基本リンク第1連結部40-2aを1軸性関節連結部43によって、回動可能な1軸性関節となるように連結する。第2基本リンク40-2と第3基本リンク40-3を連結する場合、第2基本リンク第2連結部40-2bと第3基本リンク第1連結部40-3aを1軸性関節連結部43によって連結する。第3基本リンク40-3~第12基本リンク40-12を連結する場合も同様であるから、省略する。第12基本リンク40-12と第13基本リンク40-13を連結する場合、第12基本リンク第2連結部40-12bと第13基本リンク第1連結部40-13aを1軸性関節連結部43によって連結する。第13基本リンク40-13と第14基本リンク40-14を連結する場合、第13基本リンク第2連結部40-13bと第14基本リンク第1連結部40-14aを、1軸性関節連結部43によって連結する。斯くすることで、連結コア4は、両端が開いた数珠つなぎ状の連結構造と成る。このとき、一方端の連結素体である第1基本リンク40-1には連結されていない第1基本リンク第1連結部40-1aが残り、他方端の連結素体である第14基本リンク40-14には連結されていない第14基本リンク第2連結部40-14bが残る。
【0020】
従って、第1基本リンク第1連結部40-1aを第1着脱端部4aとすることができ、第14基本リンク第2連結部40-14bを第2着脱端部4bとすることができる。そして、これら第1着脱端部4aと第2着脱端部4bとを連結することで、第1~第14基本リンク40-1~40-14が環状に閉じた環状鉄心を構成できる。なお、第1基本リンク40-1~第14基本リンク40-14は、全て1軸性関節の向きを上下方向に統一して連結することにより、第1基本リンク40-1~第14基本リンク40-14の回動方向を水平方向に規制することができる。このように、第1基本リンク40-1~第14基本リンク40-14の回動方向が水平方向に規制されていれば、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bとの連結もほぼ水平面内で行うことができる。
【0021】
一方、コイル保持チューブ5は、内層チューブ51の外周面51aにマグネットワイヤ521を巻回してコイル52を形成したコイル体53の外面側を外層チューブ54で覆ったものである。内層チューブ51と外層チューブ54は、連結コア4の変形に追随して無理なく変形し得る可撓性および絶縁性を有する。内層チューブ51は、上記連結コア4を内挿可能な内空部51bを有すると共に、各端部から連結コア4の第1着脱端部4aと第2着脱端部4bをそれぞれ露出させ得る長さで、外層チューブ54も同等程度の長さに設定しておき、各端部を絶縁カバー55にて覆う。なお、コイル保持チューブ5の一方からは、マグネットワイヤ521の巻き始め部分あるいは巻き終わり部分である第1引出線521aおよび第2引出線521bを引き出しておく。
【0022】
次に、連結コア4を構成する基本リンク40の詳細構造について説明する。
図3は、連結素体である基本リンク40の外観を示すものである。この基本リンク40は、高透磁率軟磁性材料(例えば、パーマロイ)の板材(例えば、厚さ1〔mm〕)である第1ベース材41-1、第2ベース材41-2、…、第6ベース材41-6、第7ベース材41-7を積層した構造である。第1ベース材41-1~第7ベース材41-7を重ねた状態で、かしめ固定方式のリベット42で一体に固定する。なお、第1~第7ベース材41-1~41-7は、全て同一形状であり、特に区別する必要が無い場合は、単にベース材41という。
【0023】
ベース材41の平面(例えば、上面41aが臨む面)を
図4に示す。ベース材41は、緩やかな弧状の長尺板材であり、概略、長手方向の二辺である外側弧状縁部411と内側弧状縁部412、短手方向の二辺である凸状端縁部413と凹状端縁部414を備える。例えば、仮想の原点OからR160〔mm〕の円弧(以下、仮想中心円弧という)を想定し、仮想中心円弧の外側へ3.5〔mm〕程度離れた円弧(例えば、原点OからR163.5〔mm〕の円弧)と重なるように形成したのが外側弧状縁部411である。また、仮想中心円弧の内側へ3.5〔mm〕程度離れた円弧(例えば、原点OからR156.5〔mm〕の円弧)と重なるように形成したのが内側弧状縁部412である。また、ベース材41における一方の短手側(例えば、上面41aから見て左側、或いは下面41bから見て右側)に設けたのが凸状端縁部413である。また、ベース材における他方の短手側(例えば、上面41aから見て右側、或いは下面41bから見て左側)に設けたのが凹状端縁部414である。なお、外側弧状縁部411と内側弧状縁部412との離隔距離は約7〔mm〕(3.5〔mm〕×2)とし、第1~第7ベース材41-1~41-7を重ねた厚さも約7〔mm〕であるから、基本リンク40の短手方向の縦断面は略正方形となる。
【0024】
ベース材41における仮想中心円弧上には、各々φ2〔mm〕の第1固着孔415a、第2固着孔415b、第3固着孔415cを設けてある。例えば、原点Oから第2固着孔415bの中心を通る仮想線に対して、原点Oから第1固着孔415aの中心へ至る角度と、原点Oから第3固着孔415cの中心へ至る角度が同じになるように、第1~第3固着孔415a~415cの開設位置を定める。斯くすれば、2枚のベース材41を、その上面41aと下面41bとが向き合うように重ねたとき(凸状端縁部413と凹状端縁部414の向きが逆になるように重ねたとき)、重ねた2枚のベース材41における3箇所の孔を全て一致させることができる。すなわち、2枚のベース材41を、それぞれの第2固着孔415bが連通するように位置合わせすると、一方のベース材41における第1固着孔415aと第3固着孔415cが、他方のベース材41における第3固着孔415cと第1固着孔415aに重なる。このとき、重ねた2枚のベース材41は、外側弧状縁部411と内側弧状縁部412も一致した状態を保てる。
【0025】
従って、基本リンク40は、複数枚(例えば、7枚)のベース材41を重ねた構造とするとき、
図5に示すように、ベース材41の向きを交互に変えて重ねることができる。先ず、上面41aを上向きにした第1ベース材41-1の下に、下面41bを上向きにした第2ベース材41-2を重ねる。その下に、上面41aを上向きにした第3ベース材41-3を重ねる。その下に、下面41bを上向きにした第4ベース材41-4を重ねる。その下に、上面41aを上向きにした第5ベース材41-5を重ねる。その下に、下面41bを上向きにした第6ベース材41-6を重ねる。その下に、上面41aを上向きにした第7ベース材41-7を重ねる。このように重ねた第1ベース材41-1から第7ベース材41-7まで貫通する第1~第3固着孔415cに、リベット42を挿通させ、かしめて固定する。なお、リベット42は、
図6に示すように、第1ベース材41-1の上面41a側に頭部42aを位置させて、第1~第3固着孔415a~415cに軸部42bを挿通し、第7ベース材41-7の下面41b側にかしめ部42cを形成する。
【0026】
上記のように第1~第7ベース材41-1~41-7を積層して形成した基本リンク40における第1,第2連結部40a,40bは、何れも凸状端縁部413と凹状端縁部414が交互に重なったものである。第1連結部40aは、第1ベース材41-1から第7ベース材41-7に向かって「凹凸凹凸凹凸凹」の構造となり、第2連結部40bは、第1ベース材41-1から第7ベース材41-7に向かって「凸凹凸凹凸凹凸」の構造となる。すなわち、基本リンク40の第1連結部40aと第2連結部40bは、互いに噛み合う嵌合構造となるのである。
【0027】
しかも、基本リンク40の第1連結部40aと第2連結部40bは、1軸性関節連結部43によって連結することで、円滑に回動できる1軸性関節となるように、凸状端縁部413の突出形状および凹状端縁部414の窪み形状を以下のように設定してある。
【0028】
ベース材41の凸状端縁部413側には、1軸性関節連結部43によって連結するための連通孔416を設ける。この連通孔416の中心から半径r1の円弧が凸状端縁部413の膨出縁とほぼ重なるような、連通孔416の位置を定める(
図5の各凸状端縁部413を参照)。また、2枚の基本リンク40を逆向きに重ねたとき、凹状端縁部414と近接する連通孔416の中心から半径r2の円弧が凹状端縁部414の窪み縁と重なるようにする(例えば、
図5の各凹状端縁部414を参照)。このとき、「r1≦r2」に設定しておけば、一対の基本リンク40における一方の第1連結部40aと他方の第2連結部40bとを噛み合わせた状態で、全ての連通孔416の開口位置を合わせることができる。
【0029】
上述したベース材41の設計に際して、凸状端縁部413と凹状端縁部414が共に180゜近い弧状範囲を備えたものにすると、一対の基本リンク40の第1連結部40aと第2連結部40bとが噛み合ったまま回動不能になってしまう。そこで、許容する回動範囲に応じて、凸状端縁部413と凹状端縁部414の弧状範囲を適宜に設定しておくことが望ましい。なお、凸状端縁部413と凹状端縁部414は、それぞれ外側弧状縁部411および内側弧状縁部412と滑らかに接続される外縁形状とすることが望ましい。凸状端縁部413および凹状端縁部414と外側弧状縁部411および内側弧状縁部412との接続部分に段差や鋭角が生じていると、連結コア4をコイル保持チューブ5内へ内挿したとき、内層チューブ51の内面を傷つけてしまう危険性がある。
【0030】
しかし、本実施形態のクランプセンサ2で用いる連結コア4のベース材41においては、短手方向の幅(外側弧状縁部411と内側弧状縁部412との離隔距離)が概ねr1〔mm〕×2である。よって、凸状端縁部413の弧状範囲を概ね180゜にすると、凸状端縁部413の一方端と外側弧状縁部411との接続部分および凸状端縁部413の他方端と内側弧状縁部412との接続部分は滑らかとなり、段差等は生じない。一方、凹状端縁部414の一方端と外側弧状縁部411との接続部分および凹状端縁部414の他方端と内側弧状縁部412との接続部分には、面取り(例えば、R1)を施して、角が生じないよう滑らかに接続する形状とした。
【0031】
また、凸状端縁部413を決定する半径r1と凹状端縁部414を決定する半径r2を等しくすると、一対の基本リンク40の第1連結部40aと第2連結部40bを連結したとき、加工精度によっては、連結口416の開口位置を合わせられない可能性がある。仮に、加工精度が良く、「r1=r2」としも連結口416の開口位置がぴったり合ったとしても、凸状端縁部413と凹状端縁部414は長い範囲で面接触することとなる。凸状端縁部413と凹状端縁部414が面接触していると、それだけ摺動抵抗が高くなるので、連結コア4の変形作業を困難にしてしまう可能性がある。かといって、極端に凸状端縁部413の半径r1を凹状端縁部414の半径r2よりも小さくしてしまうと、第1連結部40aと第2連結部40bとを噛み合わせたときの対向面積が少なくなってしまう。第1連結部40aと第2連結部40bとの対向面積が減ると、ベース材41同士の連結部における磁気抵抗を高めてしまう可能性があるし、ベース材41同士の連結部における強度低下という問題も懸念される。そこで、一対の基本リンク40の第1連結部40aと第2連結部40bとを噛み合わせたとき、凸状端縁部413と凹状端縁部414が点接触するかしないか程度に設定しておくことが望ましい。例えば、
図4に示すように、凸状端縁部413を決定する半径r1を3.5〔mm〕、凹状端縁部414を決定する半径r2を3.6〔mm〕に設定すると、連結コア4の変形作業に支障はないし、連結部で極端に磁気抵抗が高まることも無い。
【0032】
上記のように構成した第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを備える一対の基本リンク40を連結する1軸性関節連結部43の一構成例を
図7に示す。第1連結部40aと第2連結部40bとを噛み合わせて、全ての凸状端縁部413における連通孔416の開口位置を一致させ、この状態で連結ネジ431を挿入する。連結ネジ431の頭部が第1ベース材41-1の上面41aに押し当たったとき、431のネジ先が第7ベース材41-7の下面41bより適宜突出するので、平座金432およびスプリングワッシャ433を介挿してナット434で締結する。
【0033】
このとき、ナット434をきつく締め付け過ぎると基本リンク40同士の円滑な回動が阻害されてしまうし、逆に、締め付けが弱過ぎると連結コア4自身の形状保持が困難になるので、クランプセンサ2で被検出線をクランプするときの作業が繁雑となる。したがって、1軸性関節連結部43の機能としては、適切な締結状態を保持することも重要である。例えば、連結ネジ431に対してナット434を所定の締め付けトルク(例えば、1.8〔kgf・cm〕)で締め付けた後、ナット434を90゜戻すことで一定量だけ緩め、ナット434にネジロック剤435を塗布して、この締め付け状態に固定する。斯くすれば、基本リンク40同士の円滑な回動を阻害することも、連結コア4自身の形状保持を困難にすることも無いので、計測作業における連結コア4の取り扱いが良くなり、作業性の向上にも寄与できる。
【0034】
上述した連結コア4の外周にコイル52を配置可能なコイル体53の製造工程の一例を、
図8に基づいて説明する。まず、円筒状の外周面51aを有する可撓性・絶縁性の内層チューブ51を用意する。内層チューブ51は、連結コア4を内挿するのに必要十分な口径の内空部51bを備えると共に、連結コア4の第1連結部40aと第2着脱端部4bが両端開口から突出する程度の長さである。また内層チューブ51の内空部51bに直線状の金属棒56を貫通させることで、内層チューブ51を直線状に固定する。かくすれば、剛性のある金属棒56を回転軸として軸回転式の巻線機にセットすることができるので、巻線機によってマグネットワイヤ521を内層チューブ51の外周面51aに単層もしくは複層に効率よく巻回してゆき、コイル52を形成できる。その後、コイル52が形成された内層チューブ51を巻線機から外して金属棒56を抜き取る(
図8(a)~(c)を参照)。こうして、内層チューブ51の外表面にマグネットワイヤ521を巻回してコイル52を形成したコイル体53が形成される(
図8(d)を参照)。なお、マグネットワイヤ521の巻き始め部分と巻き終わり部分は、第1引出線521aおよび第2引出線521bとして用いることができる。
【0035】
上記のようにして形成したコイル体53は、可撓性・絶縁性の外層チューブ54のコイル体内挿空部54aに内挿することで(
図9(a)を参照)、コイル52の外表面を外層チューブ54で覆うことができる。なお、外層チューブ54はコイル体53と同程度の長さで、コイル体内挿空部54aはコイル体53を内挿するのに必要十分な口径である。外層チューブ54にコイル体53を内挿した後、その両端には、沿面距離を確保するための絶縁キャップ55をそれぞれ取り付けてコイル保持チューブ5を構成する(
図9(b)を参照)。次いで、コイル保持チューブ5の最内部となる内層チューブ51の内空部51bへ連結コア4を内挿し、コイル保持チューブ5の両端部より第1着脱端部4aおよび第2着脱端部4bをそれぞれ露出させることで、クランプセンサ2とする(
図9(c)を参照)。
【0036】
図9(c)に示すように、クランプセンサ2の両端には、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bがそれぞれ適宜長さ露出している。したがって、被検出線をクランプセンサ2で囲むように曲げて、第1着脱端部4aである第1連結部40aと第2着脱端部4bである第2連結部40bとを嵌合させ、連結コア4を環状鉄心にする作業を使用者が行うようにしても良い。しかしながら、第1連結部40aと第2連結部40bとの正確な位置合わせを使用者が目視で行うのは、とても効率的な作業とはいえない。そこで、本実施形態に係るクランプセンサ2では、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bとを効率良く嵌合させたり、取り外したりできるように、第1着脱端部4a側には第1連結ガイド6を、第2着脱端部4b側には第2連結ガイド7をそれぞれ設ける。第1連結ガイド6と第2連結ガイド7の詳細構造を、
図10~
図12に基づいて説明する。
【0037】
連結コア4は、各基本リンク40を1軸性関節連結部43によって連結してあるので、連結コア4を閉じるように第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを近づければ、第1着脱端部4aと第2着脱端部4bは自ずと近傍位置にて対向する。このとき、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7も近傍位置にて対向する(
図10(a)を参照)。しかしながら、第1着脱端部4aである第1連結部40aの凹凸形状と第2着脱端部4bである第2連結部40bの凹凸形状とを正確に噛み合わせるには、より細かい位置合わせが必要である。
【0038】
そこで、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7には、第1着脱端部4aの第1連結部40aと第2着脱端部4bの第2連結部40bが、ちょうど嵌合するような導入構造を設けた。第1連結ガイド6には、コイル保持チューブ5の一方端部を保持するチューブ端保持部61の先端側に、第1導入ガイド部62と操作リング63を設ける。第2連結ガイド7には、コイル保持チューブ5の他方端部を保持するチューブ端保持部71の先端側に、第2導入ガイド部72を設ける。そして、第1連結ガイド6における第1導入ガイド部62と操作リング63との間に形成した導入空間へ、第2連結ガイド7における第2導入ガイド部72が導入されるようにする。すなわち、第1連結ガイド6に設けた導入空間へ第2連結ガイド7の第2導入ガイド部を導入すると、第1着脱端部4aの第1連結部40aと第2着脱端部4bの第2連結部40bがちょうど嵌合するように、位置合わせできるのである。
【0039】
先ず、第1連結ガイド6における第1導入ガイド部62と操作リング63の詳細構造について説明する。第1導入ガイド部62は、チューブ端保持部61側に固定される固定基部621と、この固定基部621より先端側に突出する略四角枠状の内側連結導入部622を備える。第1導入ガイド部62には、固定基部621から内側連結導入部622へ貫通する第1着脱端部定置空部62aが形成され、この第1着脱端部定置空部62aに、連結コア4の第1着脱端部4a側が固定される。また、内側連結導入部622の先端側は、例えば、連結コア4の第1着脱端部4aを完全に覆うと共に、操作リング63の先端部よりも若干突出するので、この内側連結導入部622が最も早く第2連結ガイド7と接触することとなる。さらに、内側連結導入部622は、断面が略四角形である連結コア4の四側に近接する上下左右の四側壁構造である。内側連結導入部622における各側壁部の先端面には、内側(連結コア4に面している側)から外側(操作リング63に臨む側)に向かって傾斜する導入ガイド面62bをそれぞれ形成してある。
【0040】
操作リング63は、クランプメータ1の使用者が指先で操作し易い大きさの円筒状部材で、内側は空洞である。そして、操作リング63の内周面63aの適所(例えば、上方と下方の2箇所)にそれぞれ設けた係止片64,64が内周方向へ所定範囲だけで移動できるよう、第1導入ガイド部62の固定基部621に対して所定量だけ回動可能に保持される構造である。なお、常態においては、係止片64が所定の基準位置に止まるように、コイルスプリング等の付勢部材55(
図12(a),(b)を参照)により操作リング63を所定方向へ付勢してある。但し、付勢部材55の付勢力は、使用者が操作リング63を無理なく指で回せる程度に止めておく。また、操作リング63の先端側には、円環状端面の内縁を面取りした導入ガイド面63bを設けておく。
【0041】
次に、第2連結ガイド7における第2導入ガイド部72の詳細構造について説明する。第2導入ガイド部72は、チューブ端保持部71側に固定される固定基部721と、この固定基部721より先端側に突出する外側連結導入部722を備える。第2導入ガイド部72には、固定基部721から外側連結導入部722へ貫通する第2着脱端部定置空部72aが形成され、この第2着脱端部定置空部72aに、連結コア4の第2着脱端部4b側が固定される。但し、第2着脱端部定置空部72aは、上述した第1導入ガイド部62の内側連結導入部622を導入できるように、外側連結導入部722の内面である四側内壁と連結コア4の第2着脱端部4bとの間には、内側連結導入部622の壁厚に等しい空間が形成される。
【0042】
第2導入ガイド部72の外側面は、操作リング63の内周面63aに沿った周面状の嵌合周面部722aを側方2箇所に、係止構造用平面部722bを上下2箇所に設けた形状である。なお、係止構造用平面部722bは、操作リング63の内周面63aに設けた係止片64の所定範囲内移動を妨げないよう、適宜な空間を形成するものである。そして、係止構造用平面部722bの先端側には、一方の嵌合周面部722aに寄せてストッパ片73を設けてあり、このストッパ片73には基準位置にある係止片64が押し当たる。ストッパ片73は、操作リング63の内周面63aに当たらない範囲で係止構造用平面部722bから突出する突状体である。このストッパ片73には、ちょうど基準位置にある係止片64が当接し得るよう横に突出する誘導テーパ部73aと、この誘導テーパ部73aに連なって凹む係止段部73bを形成する。誘導テーパ部73aは、一方の嵌合周面部722aに寄っている先端側(第1連結ガイド6に臨む側)から奥側(固定基部721に向かう側)へ進むに従い、他方の嵌合周面部722a側に向かって膨らむ面形状である。係止段部73bは、誘導テーパ部73aが途切れる後方端から再び一方の嵌合周面部722a側へ一気に窪む面形状である。
【0043】
上記のように構成した第1連結ガイド6と第2連結ガイド7によって、クランプセンサ2の第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを連結する過程を説明する。上述したように、第1連結ガイド6における第1導入ガイド部62の最先端部である内側連結導入部622の四側壁先端面に導入ガイド面62bを設けてある。この導入ガイド面62bの効果で、内側連結導入部622は、第2連結ガイド7側の先端部である外側連結導入部722の第2着脱端部定置空部72aへ円滑に誘導される。更に、操作リング63の導入ガイド面63bによって、第2連結ガイド7側の外側連結導入部722が操作リング63の内周面63aへ円滑に誘導される。このとき、操作リング63の内周面63aから突出する係止片64は、第2導入ガイド部72に設けたストッパ片73の誘導テーパ部73aに押し当たることとなる(
図10(b)、
図11(a)、
図12(a)、
図12(c)を参照)。
【0044】
そして、操作リング63が自由回動できる状態であれば(使用者が手で押さえるなどしていなければ)、第1連結ガイド6に対して第2連結ガイド7を更に押し込んで行くことができる。これは、第2連結ガイド7側にあるストッパ片73の誘導テーパ部73aが係止片64に押し当たることで、係止片64が付勢部材55の付勢力に抗して、ストッパ片73の誘導テーパ部73aに沿って移動するためである。この係止片64の移動に伴って、操作リング63が一方(
図10(c)および
図12(c)に示すα方向)へ回転して行く。そして、係止片64がストッパ片73の誘導テーパ部73aの後端部(係止段部73bと接続する部位)に至ると、操作リング63はそれ以上回転せず、係止片64が誘導テーパ部73aの後端部に摺接したまま、更に進んで行く。そして、係止片64が完全にストッパ片73の誘導テーパ部73aの後端部を越えると、操作リング63は付勢部材55の付勢力により他方(
図10(d)および
図12(d)に示すβ方向)へ回転する。これにより、係止片64はストッパ片73の係止段部73bに沿って基準位置へ戻る。このとき、第1連結ガイド6における第1着脱端部4aと第2連結ガイド7における第2着脱端部4bとは、全ての連結口416がちょうど重なる連結状態となり、連結コア4によって好適な環状鉄心が形成される。
【0045】
なお、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7の連結状態においては、第1連結ガイド6における第1導入ガイド部62の先端は第2連結ガイド7における第2着脱端部定置空部72aの最奥部へほぼ達している。また、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7の連結状態においては、第2連結ガイド7における第2導入ガイド部72の先端が、第1連結ガイド6における固定基部621にほぼ達している。従って、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7の連結状態においては、それ以上、第1連結ガイド6に対して第2連結ガイド7を押し込むことはできない。しかも、このとき係止片64は基準位置へ戻っているので、その後ろ側(固定基部621に向かう側)には、第2連結ガイド7におけるストッパ片73の係止段部73bがあるため、そのまま第1連結ガイド6から第2連結ガイド7を引き抜くことはできない。すなわち、第1連結ガイド6における係止片64が第2連結ガイド7におけるストッパ片73の係止段部73bに係止され、そのままでは第1連結ガイド6と第2連結ガイド7を引き外せないのである。しかしながら、使用者が操作リング63をα方向へ回転させて、係止片64をストッパ片73の係止段部73bから離脱させれば、簡単に第1連結ガイド6と第2連結ガイド7を外すことができる。
【0046】
このように、連結コア4の第1着脱端部4aと第2着脱端部4bを着脱するために、第1連結ガイド6と第2連結ガイド7を用いることは有効である。第1連結ガイド6と第2連結ガイド7により実現できる位置合わせ機能と着脱機能を用いれば、ベース材41を積層することで極めて緻密な凹凸の嵌合構造となっている第1連結部40aと第2連結部40bを、簡単に連結したり取り外したりできる。
【0047】
上記のように構成した本実施形態に係るクランプメータ1の使用例を
図13に示す。クランプセンサ2の第1連結ガイド6と第2連結ガイド7を外し、電柱9を囲んだ状態で第1連結ガイド6と第2連結ガイド7を接続するだけで、電柱9を丸ごとクランプすることができ、電柱9の接地電流Ieや漏れ電流Irの測定を容易に行える。しかも、ロゴスキー方式のクランプセンサとは異なり、0.5mA~5mA程度の微小電流を測定することが可能である。また、3相3線式の回路における配電盤で、3本の電線が離れている場合でも、本実施形態に係るクランプメータ1によれば、離れた3本の電線をクランプセンサ2で一括してクランプできるので、当該回路における微小漏れ電流の測定が可能となる。更に、電柱に並行した3相3線の太い引き込み線であっても、本実施形態に係るクランプメータ1によれば、これらの引き込み線を一括クランプして、微小漏れ電流を測定することができる。
【0048】
以上、本発明に係るクランプセンサおよびこのクランプセンサを用いたクランプメータの実施形態を添付図面に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 クランプメータ
2 クランプセンサ
3 計測装置
4 連結コア
4a 第1着脱端部
4b 第2着脱端部
40 基本リンク
40a 第1連結部
40b 第2連結部
43 1軸性関節連結部
5 コイル保持チューブ
5a コア内挿空部
51 内層チューブ
52 コイル
521 マグネットワイヤ
53 コイル体
54 外層チューブ