(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20220307BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G02B3/08
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2018568606
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2018005287
(87)【国際公開番号】W WO2018151221
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂上 典久
(72)【発明者】
【氏名】関 大介
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第4775674(JP,B2)
【文献】特許第4798529(JP,B2)
【文献】特許第4649572(JP,B2)
【文献】特開2013-11909(JP,A)
【文献】特開2017-26787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
G02B 5/18
G02B 5/32
G02B 13/00-15/28
F21S41/275
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投光するために光源とともに
車両用ランプに使用される投光用レンズであって、一つの面に回折構造を備え、該回折構造の位相関数は、rは該レンズの中心軸からの距離、βは定数、N及びiは自然数であるとして、
【数1】
で表され、該レンズの有効半径をRとして、
【数2】
を満たし、該一つの面の、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域において、該位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有し、0≦r≦Rの任意の位置に対応する可視光域の波長の光の球面収差の最大値と最小値との差が、軸上色収差以下となるように構成され、該回折構造は、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域の少なくとも一部に備わる投光用レンズ。
【請求項2】
該位相関数は、rが該レンズの有効半径の50%よりも大きな領域において、該位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有するように構成され、該回折構造は、rが該レンズの有効半径の50%よりも大きな領域の少なくとも一部に備わる請求項1に記載の投光用レンズ。
【請求項3】
【数3】
を満たす請求項1または2に記載の投光用レンズ。
【請求項4】
β
4及びβ
8が負であり、β
6が正である請求項1から3のいずれかに記載の投光用レンズ
【請求項5】
該回折構造の深さがrにしたがって補正された請求項1から4のいずれかに記載の投光用レンズ。
【請求項6】
両面が凸である、請求項1から5のいずれかに記載の投光用レンズ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の
投光用レンズを使用した車両用ランプ。
【請求項8】
光源と一つの面に回折構造を備えたレンズとを使用する
車両用ランプの投光方法であって、
該レンズの中心軸からの距離をrとして、該光源の中心から発した光線の、該回折構造を備えた面への入射角がrの関数で表されるように該光源及び該レンズを配置するステップと、
該光源からの光を、該レンズを介して投光するステップと、を含む投光方法であって、
該レンズは一つの面に回折構造を備え、該回折構造の位相関数は、rは該レンズの中心軸からの距離、βは定数、N及びiは自然数であるとして、
【数4】
で表され、該レンズの有効半径をRとして、
【数5】
を満たし、該一つの面の、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域において、該位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有し、0≦r≦Rの任意の位置に対応する可視光域の波長の光の球面収差の最大値と最小値との差が、軸上色収差以下となるように構成され、該回折構造は、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域の少なくとも一部に備わる投光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のヘッドランプなどに使用されるレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のヘッドランプなどに使用されるレンズにおいては、レンズの色収差に起因して、配光パターンの周縁の明暗境界線の近傍に色にじみが生じるという問題点がある。このような色にじみを減少させるには、レンズの色収差を補正する必要がある。そこで、レンズの色収差を補正するために、一つの面に回折構造を備えたレンズが開発されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
しかし、回折構造を備えたレンズには、以下の問題がある。第一に、レンズ面上の位置及びレンズへの光線の入射角によって回折効率が変化するため、想定している回折次数以外の回折光にエネルギーが移動してしまい想定している回折次数以外の回折光による、いわゆるグレアが生じる。第二に、回折構造によって透過率が低下する。
【0004】
このように、グレアの発生及び透過率の低下を十分に減少させた、色収差を補正するための回折構造を備えたレンズは開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、グレアの発生及び透過率の低下を十分に減少させた、色収差を補正するための回折構造を備えたレンズに対するニーズがある。本発明の課題は、グレアの発生及び透過率の低下を十分に減少させた、色収差を補正するための回折構造を備えたレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズは、一つの面に回折構造を備えたレンズであって、該回折構造の位相関数は、rは該レンズの中心軸からの距離、βは定数、N及びiは自然数であるとして、
【数1】
で表され、該レンズの有効半径をRとして、
【数2】
を満たし、該一つの面の、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域において、該位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有し、0≦r≦Rの任意の位置に対応する可視光域の波長の光の球面収差の最大値と最小値との差が、軸上色収差以下となるように構成され、該回折構造は、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域の少なくとも一部に備わる。
【0008】
本発明のレンズにおいては、位相関数のrの2次の項の係数β2を相対的に小さくし、rの2次の項に対応する球面成分を小さくことによって、想定している回折次数以外の回折光による、グレアの発生を抑えることができる。また、本発明のレンズは、rが該レンズの有効半径Rの30%よりも大きな領域の少なくとも一部に回折構造を備え、該領域において、該位相関数のrの二階微分は、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有するように構成されているので、レンズの透過率の低下を抑えながら、該領域において色収差を小さくすることができる。
【0009】
本発明の第1の実施形態のレンズにおいて、該位相関数は、rが該レンズの有効半径の50%よりも大きな領域において、該位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有するように構成され、該回折構造は、rが該レンズの有効半径の50%よりも大きな領域の少なくとも一部に備わる。
【0010】
本発明の第2の実施形態のレンズは、
【数3】
を満たす。
【0011】
本発明の第3の実施形態のレンズは、β4及びβ8が負であり、β6が正である。
【0012】
本発明の第4の実施形態のレンズは、該回折構造の深さがrにしたがって補正されている。
【0013】
本発明の第5の実施形態のレンズは、両面が凸である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の本発明のレンズを説明するための図である。
【
図2】レンズ面の接線角を説明するための図である。
【
図3】回折構造の光軸方向の深さD(r)を説明するための概念図である。
【
図4】実施例1のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
【
図5】実施例1のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
【
図6】実施例1のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さとの関係を示す図である。
【
図7】実施例1のレンズの球面収差を示す図である。
【
図8】実施例1の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
【
図9】実施例1の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
【
図10】実施例1の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
【
図11】実施例2のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
【
図12】実施例2のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
【
図13】実施例2のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さとの関係を示す図である。
【
図14】実施例2のレンズの鏡面収差を示す図である。
【
図15】実施例2の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
【
図16】実施例2の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
【
図17】実施例2の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
【
図18】実施例3のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
【
図19】実施例3のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
【
図20】実施例3のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さとの関係を示す図である。
【
図21】実施例3のレンズの球面収差を示す図である。
【
図22】実施例3の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
【
図23】実施例3の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
【
図24】実施例3の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の本発明のレンズ100を説明するための図である。光源200からの光は、レンズ100を介して投光される。レンズ100の光源側の面をS2で表し、光源と反対側の面をS1で表す。面S1及びS2は、以下の偶数次非球面関数で表される。
【数4】
【0016】
ここで、S(r)は面の頂点を原点とする中心軸方向の座標、rはレンズの中心軸からの距離、cは面の中心曲率、kは円錐定数、αは係数、N及びiは自然数である。レンズの中心軸を光軸とする。S(r)の座標は、
図1において、面の頂点の右側を正の範囲とする。また、
図1において光源200の中心をOで示す。面S1及びS2は、光軸に関して軸対称である。
【0017】
図2は、レンズ面の接線角を説明するための図である。接線角θは、光軸を含むレンズ100の断面において、レンズ面の接線と光軸に垂直な方向とがなす角度であり、以下の式で表せる。
【数5】
【0018】
本発明のレンズは、面S1または面S2上に回折構造を備える。
【0019】
一般的に、透過型の回折構造のピッチP、入射角θin、回折角θout、回折次数m、光線の波長λ、入射側の媒質の屈折率n
in、出射側の媒質の屈折率n
outの間には以下の関係が成立する。
【数6】
そこで、所定の回折次数mの回折光の回折角θoutは、ピッチPを変化させることによって変化させることができる。
【0020】
回折構造の1次回折光の位相関数は、以下のようにrの偶数次多項式で表せる。
【数7】
ここで、φ(r)は位相関数、rはレンズの中心軸からの距離、βは係数、N及びiは自然数である。
【0021】
位相関数は、以下の関係を満たす。
【数8】
このように、位相関数のrに関する微分は回折角に相当する。
【0022】
回折構造の形状について以下に説明する。光軸方向に進行する光線が回折構造を通過する場合に、回折構造の光軸方向の深さd(r)は以下の式で表せる。
【数9】
式(3)におけるΔは以下の式で表せる。
【数10】
ここで、λは回折効率が最大となる光線の波長を表し、nは回折構造のその波長における屈折率を表す。また、式(4)におけるη(r)は床関数を使用して以下の式で表せる。
【数11】
【0023】
回折構造はレンズ面に設置されるので、レンズ面上の位置及び回折構造への光線入射角にしたがってd(r)を補正する。レンズ面上の位置の補正係数は、接線角θを使用して以下の式で表せる。
【数12】
この場合に、光線入射角とは、光源の中心から発した光線の、回折構造を備えた面への入射角である。
図1に、面S1に回折構造が備わる場合の光線入射角Π(r)を示す。光線入射角Π(r)は、rの関数として以下の式で表せる。
【数13】
ここで、γは係数、N及びiは自然数である。
光線入射角Π(r)に関する補正係数I(r)は以下の式で表せる。
【数14】
ここで、n
in及びn
outは入射側及び出射側の媒質の屈折率を表し、
【数15】
は回折角に相当する。
【0024】
回折構造の光軸方向の深さD(r)は、式(4)、(6)及び(8)を使用して、以下の式で表せる。
【数16】
【0025】
図3は、回折構造の光軸方向の深さD(r)を説明するための概念図である。
【0026】
回折構造の溝の底面に相当するサグ量の絶対値|Sag(r)|は、式(1)及び(7)を使用して以下の式で表せる。
【数17】
【0027】
回折構造の色消し機能を以下に説明する。回折構造のアッベ数は、-3.453である。
【0028】
回折構造を備えない1枚構成のレンズにおいて、球面収差はレンズの球面成分によって決まる。したがって、収差図において、それぞれの波長を示す曲線は、像高に対してほぼ同様に変化する。アッベ数は、各波長の球面収差の差に対応する色収差を表す。レンズのアッベ数の値は正である。
【0029】
そこで、正のアッベ数を有するレンズと負のアッベ数を有する回折構造を適切に組み合わせることによって、色消し、すなわち、各波長の球面収差の差を小さくすることができる。
【0030】
上述のように、球面収差はレンズの球面成分によって決まり、収差図において、それぞれの波長を示す曲線は、像高に対してほぼ同様に変化するので、回折構造による色消しを実施する際に、通常は、位相関数の球面成分に相当するrの2次の項を使用する。たとえば、軸上色収差は、rの2次の項を使用することによって小さくすることができる。
【0031】
しかし、位相関数の、rの2次の項に対応する球面成分が大きいと、想定している1次の回折光と1次以外の回折光との焦点距離の差が大きくなり、1次以外の回折光の倍率が極端に変わってしまう。通常、回折構造によって想定している回折次数と異なる次数の回折光は想定している回折光に対して数パーセントのオーダーで現れるものであり、1次以外の回折光の倍率が想定している1次の回折光と異なるとき1次以外の回折光によるグレア、色割れが目立ってしまう。
【0032】
そこで、本発明においては、位相関数のrの2次の項の係数β
2を相対的に小さくする。具体的に、該レンズの有効半径をRとして、
【数18】
を満たすようにβ
2及びβ
4を定める。
【0033】
β4、β6及びβ8の符号は、少なくとも一つの正の符号と少なくとも一つの負の符号とを含むようにするのが好ましい。また、β4及びβ8の符号は同じであり、β6の符号と異なるのが好ましい。
【0034】
【0035】
たとえば、ヘッドランプ用の投光レンズでは、主光線に近い高さでの色収差の補正はあまり重要ではなく、照射領域と被照射領域との境界に生じる色割れに対する色収差の補正、すなわち、主光線から離れた位置での色収差の補正が重要である。したがって、位相関数の球面成分に相当するrの2次の項の係数を相対的に小さくしても、照射領域と被照射領域との境界に生じる色割れに対する色収差の補正を十分に実施することができる。
【0036】
上述のように、位相関数の一階微分
【数20】
は、回折角に相当する。したがって、位相関数の二階微分
【数21】
は、回折角の変化に相当する。
【0037】
位相関数の二階微分の極値または変曲点は回折角の変化が大きくなる部分である。実際に、収差図の球面収差を示す曲線の特徴点の位置、すなわちrの値は、二階微分の極値または変曲点のrの値とほぼ一致する。より、具体的に、位相関数の二階微分の極値に対応するrの近傍で各波長の球面収差に極値が現れ、位相関数の二階微分の変曲点に対応するrの近傍で球面収差の絶対値が小さくなる。
【0038】
したがって、主光線から離れた位置での色収差の補正を効率的に実施するには、rがレンズの有効半径Rの30%、または50%よりも大きな領域において、位相関数のrの二階微分が、少なくとも一つの極値と少なくとも一つの変曲点とを有するように位相関数を定めるのが好ましい。
【0039】
また、収差図において、0≦r≦Rの任意の位置に対応する可視光域の波長の光の球面収差の最大値と最小値との差が、軸上色収差、すなわち、r=0の位置に対応する可視光域の波長の光の球面収差の最大値と最小値との差以下となるように位相関数を定めるのが好ましい。
【0040】
また、レンズは、回折構造を備えていない状態で、軸上色収差が好ましくは2ミリメータ以下さらに好ましくは1.2ミリメータ以下となるように形成する。
【0041】
本発明の実施例について以下に説明する。実施例のレンズは両凸レンズである。レンズの中心軸上の厚さは33.0ミリメータ、レンズ径は64ミリメータ(有効半径は32ミリメータ)、屈折率は1.4973である。
【0042】
実施例1
実施例1のレンズは、S1面に回折構造を備える。
【0043】
面S1及びS2は、以下の偶数次非球面関数で表される。
【数22】
【0044】
表1は、式(1)の定数及び係数のデータを示す。
【表1】
【0045】
S1面の回折構造の位相関数は、以下のrの偶数次多項式で表せる。
【数23】
【0046】
表2は、式(3)の係数のデータ及び式(5)のデータを示す。
【表2】
【0047】
表2からβ
2は0であるので、以下の関係が満たされる。
【数24】
また、表2から以下の数値が得られる。
【数25】
したがって、以下の関係が満たされる。
【数26】
【0048】
S1面への光線入射角Π(r)は、以下のrの関数の式で表せる。
【数27】
【0049】
【0050】
図4は、実施例1のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
図4の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図4の縦軸は式(2)で表せる接線角θを表し、単位は度である。
【0051】
図5は、実施例1のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
図5の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図5の縦軸は式(7)で表せる光線入射角Π(r)を表し、単位は度である。
【0052】
図6は、実施例1のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さ(溝の深さ)との関係を示す図である。
図6の横軸は溝の番号を表す。
図6の縦軸は該溝に対応する格子深さを表し、単位はマイクロメータである。
【0053】
図7は、実施例1の回折構造を備えたレンズの球面収差を示す図である。
図7の横軸は、光軸上の結像位置を表し、単位はミリメータである。
図7の縦軸は、像高、すなわち、レンズに入射する光軸に平行な光線の光軸からの距離を表し、単位はミリメータである。
図7によれば、軸上色収差は1.7ミリメータである。像高の全範囲の値において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差以下である。また、有効半径Rは32ミリメータであるので、縦軸のr/R≧0.3の範囲において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差の30%よりも小さい。
【0054】
図8は、実施例1の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
図8の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図8の縦軸は二階微分を表す。
【0055】
図9は、実施例1の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
図9の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図9の縦軸は三階微分を表す。
【0056】
図10は、実施例1の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
図10の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図10の縦軸は四階微分を表す。
【0057】
図8-
図10によれば、位相関数のrに関する二階微分は、r=15、r=27において極値を有し、r=8、r=22において変曲点を有する。有効半径Rは32ミリメータであるので、位相関数のrに関する二階微分は、r/R≧0.3の領域に2個の極値と1個の変曲点を有し、r/R≧0.5の領域に1個の極値と1個の変曲点を有する。
【0058】
実施例2
実施例2のレンズは、S2面に回折構造を備える。
【0059】
面S1及びS2は、以下の偶数次非球面関数で表される。
【数28】
【0060】
表4は、式(1)の定数及び係数のデータを示す。
【表4】
【0061】
S2面の回折構造の位相関数は、以下のrの偶数次多項式で表せる。
【数29】
【0062】
表5は、式(3)の係数のデータ及び式(5)のデータを示す。
【表5】
【0063】
表5からβ
2は0であるので、以下の関係が満たされる。
【数30】
また、表5から以下の数値が得られる。
【数31】
したがって、以下の関係が満たされる。
【数32】
【0064】
S2面への光線入射角Π(r)は、以下のrの関数の式で表せる。
【数33】
【0065】
【0066】
図11は、実施例2のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
図11の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図11の縦軸は式(2)で表せる接線角θを表し、単位は度である。
【0067】
図12は、実施例2のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
図12の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図12の縦軸は式(7)で表せる光線入射角Π(r)を表し、単位は度である。
【0068】
図13は、実施例2のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さ(溝の深さ)との関係を示す図である。
図13の横軸は溝の番号を表す。
図13の縦軸は該溝に対応する格子深さを表し、単位はマイクロメータである。
【0069】
図14は、実施例2の回折構造を備えたレンズの球面収差を示す図である。
図14の横軸は、光軸上の結像位置を表し、単位はミリメータである。
図14の縦軸は、像高、すなわち、レンズに入射する光軸に平行な光線の光軸からの距離を表し、単位はミリメータである。
図14によれば、軸上色収差は0.9ミリメータである。像高の値の全範囲において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差以下である。また、有効半径Rは32ミリメータであるので、縦軸のr/R≧0.3の範囲において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差の70%よりも小さい。
【0070】
図15は、実施例2の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
図15の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図15の縦軸は二階微分を表す。
【0071】
図16は、実施例2の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
図16の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図16の縦軸は三階微分を表す。
【0072】
図17は、実施例2の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
図17の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図17の縦軸は四階微分を表す。
【0073】
図15-
図17によれば、位相関数のrに関する二階微分は、r=27において極値を有し、r=11、r=23において変曲点を有する。有効半径Rは32ミリメータであるので、位相関数のrに関する二階微分は、r/R≧0.3の領域に1個の極値と2個の変曲点を有し、r/R≧0.5の領域に1個の極値と1個の変曲点を有する。
【0074】
実施例3
実施例3のレンズは、S1面に回折構造を備える。
【0075】
面S1及びS2は、以下の偶数次非球面関数で表される。
【数34】
【0076】
表7は、式(1)の定数及び係数のデータを示す。
【表7】
【0077】
S1面の回折構造の位相関数は、以下のrの偶数次多項式で表せる。
【数35】
【0078】
表8は、式(3)の係数のデータ及び式(5)のデータを示す。
【表8】
【0079】
表8からβ
2は0であるので、以下の関係が満たされる。
【数36】
また、表8から以下の数値が得られる。
【数37】
したがって、以下の関係が満たされる。
【数38】
【0080】
S1面への光線入射角Π(r)は、以下のrの関数の式で表せる。
【数39】
【0081】
【0082】
図18は、実施例3のレンズの回折構造を備えるS1面におけるrと接線角θとの関係を示す図である。
図18の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図18の縦軸は式(2)で表せる接線角θを表し、単位は度である。
【0083】
図19は、実施例3のレンズの回折構造を備えるS2面におけるrと光線入射角Π(r)との関係を示す図である。
図19の横軸は光軸からの距離rを表し、単位はミリメータである。
図19の縦軸は式(7)で表せる光線入射角Π(r)を表し、単位は度である。
【0084】
図20は、実施例3のレンズの回折構造において光軸からレンズの周縁へ向け割り当てた溝の番号と該溝に対応する格子深さ(溝の深さ)との関係を示す図である。
図20の横軸は溝の番号を表す。
図20の縦軸は該溝に対応する格子深さを表し、単位はマイクロメータである。
【0085】
図21は、実施例3の回折構造を備えたレンズの球面収差を示す図である。
図21の横軸は、光軸上の結像位置を表し、単位はミリメータである。
図21の縦軸は、像高、すなわち、レンズに入射する光軸に平行な光線の光軸からの距離を表し、単位はミリメータである。
図21によれば、軸上色収差は1.3ミリメータである。像高の全範囲の値において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差以下である。また、有効半径Rは32ミリメータであるので、縦軸のr/R≧0.3の範囲において、各波長の球面収差の最大値と最小値との差は軸上色収差の30%よりも小さい。
【0086】
図22は、実施例3の位相関数のrに関する二階微分を示す図である。
図22の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図22の縦軸は二階微分を表す。
【0087】
図23は、実施例3の位相関数のrに関する三階微分を示す図である。
図23の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図23の縦軸は三階微分を表す。
【0088】
図24は、実施例3の位相関数のrに関する四階微分を示す図である。
図24の横軸はrを表し、単位はミリメータである。
図24の縦軸は四階微分を表す。
【0089】
図22-
図24によれば、位相関数のrに関する二階微分は、r=14、r=20、r=28において極値を有し、r=7、r=18、r=25において変曲点を有する。有効半径Rは32ミリメータであるので、位相関数のrに関する二階微分は、r/R≧0.3の領域に3個の極値と2個の変曲点を有し、r/R≧0.5の領域に2個の極値と2個の変曲点を有する。