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特許7034491マニホールド及びこれを用いた多段式金型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】マニホールド及びこれを用いた多段式金型装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20220307BHJP
   B29C 45/32 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019045800
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146903
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508314294
【氏名又は名称】三恵金型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】山田 清
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3158992(JP,U)
【文献】特開昭55-140537(JP,A)
【文献】特開2016-210153(JP,A)
【文献】特開平05-345335(JP,A)
【文献】特開2002-144379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ三次元座標系を定義したとき、
第1の金型が有する雄型及び雌型が閉じて形成された第1のキャビティに対し、前記第1の金型のZ軸負方向側の側面に設けられた第1のランナを通じて溶融樹脂を注入する第1のゲート部と、
第2の金型が有する雄型及び雌型が閉じて形成された第2のキャビティに対し、前記第2の金型のZ軸正方向側の側面に設けられた第2のランナを通じて溶融樹脂を注入する第2のゲート部と、
前記第1のゲート部と前記第2のゲート部の両方に前記溶融樹脂を送り込む樹脂流通路とを備え、前記第2のゲート部が前記第1のゲート部のZ軸負方向側の側方に設置されたマニホールドにおいて、
前記第1のゲート部は、Z軸方向に移動可能な可動体であって、前記樹脂流通路から送り込まれた前記溶融樹脂を流す第1の流路が内側に形成され、この流路の終端である第1のゲート孔がZ軸正方向側の側面に形成された第1のノズルと、前記第1のノズルの内側に設置された可動体であって、Z軸方向に移動して前記第1のゲート孔を開閉する第1のバルブピンと、前記第1のバルブピンを、前記第1のゲート孔を閉じる方向に付勢する第1のピン付勢手段と、前記第1のノズルをZ軸正方向に付勢する第1のノズル付勢手段とを備え、
前記第2のゲート部は、Z軸方向に移動可能な可動体であって、前記樹脂流通路から送り込まれた前記溶融樹脂を流す第2の流路が内側に形成され、この流路の終端である第2のゲート孔がZ軸負方向側の側面に形成された第2のノズルと、前記第2のノズルの内側に設置された可動体であって、Z軸方向に移動して前記第2のゲート孔を開閉する第2のバルブピンと、前記第2のバルブピンを、前記第2のゲート孔を閉じる方向に付勢する第2のピン付勢手段と、前記第2のノズルをZ軸負方向に付勢する第2のノズル付勢手段とを備え、
前記第1及び前記第2のゲート部は、Z軸方向に同軸に設置され、前記第1及び第2のノズル付勢手段は、前記第1及び第2のノズルを相互に離間させるように付勢する1つのノズル付勢手段により構成され、
前記第1のバルブピンには、前記第1の流路に送り込まれた前記溶融樹脂の圧力を、前記第1のピン付勢手段の付勢に抗する方向に受ける第1の受圧面が形成され、
前記第2のバルブピンには、前記第2の流路に送り込まれた前記溶融樹脂の圧力を、前記第2のピン付勢手段の付勢に抗する方向に受ける第2の受圧面が形成され、
前記第1のノズルは、前記1つのノズル付勢手段の付勢力によって前記第1のゲート孔の周縁部が前記第1のランナの開口周縁部に密接し、
前記第2のノズルも、前記1つのノズル付勢手段の付勢力によって前記第2のゲート孔の周縁部が前記第2のランナの開口周縁部に密接し、
前記樹脂流通路から前記第1の流路と前記第2の流路に前記溶融樹脂が送り込まれると、前記第1の受圧面に受けた圧力によって前記第1のバルブピンがZ軸方向に移動して前記第1のゲート孔が開放し、前記溶融樹脂が前記第1のランナに流れ込むとともに、前記第2の受圧面に受けた圧力によって前記第2のバルブピンがZ軸方向に移動して前記第2のゲート孔が開放し、前記溶融樹脂が前記第2のランナに流れ込むことを特徴とするマニホールド。
【請求項2】
前記第1及び第2のピン付勢手段は、前記第1及び第2のバルブピンを相互に離間させるように付勢する1つのピン付勢手段により構成されている請求項1記載のマニホールド。
【請求項3】
複数組の前記第1及び第2のゲート部がY軸方向に並設され、前記樹脂流通路は、前記複数組の第1及び第2のゲート部に前記溶融樹脂を送り込むように設けられている請求項1又は2記載のマニホールド。
【請求項4】
前記請求項3記載のマニホールドと複数組の前記第1及び第2の金型とを備え、前記第1及び第2の金型は、雄型及び雌型がY軸方向に閉じて前記第1及び第2のキャビティを形成することを特徴とする多段式金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の射出成形装置に使用されるマニホールド及びこれを用いた多段式金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の図1に開示されているように、複数組の雄金型及び雌金型を上下方向に並設し、これらの金型の側方に、複数のゲート部を上下方向に並設したマニホールドブロックを配置し、雄金型と雌金型によって形成された各キャビティに対し、金型側面のランナから溶融樹脂を注入する多段式金型装置があった。この多段式金型装置は、型閉じした状態でマニホールドブロック下端の傾斜面が当接ブロック上端の傾斜面に当接し、マニホールドブロックが金型の方向に押圧され、この押圧力によってゲート部のゲート孔周縁部を金型のランナの開口周縁部に密接させ、樹脂漏れを防止する構造になっている(樹脂漏れ防止手段)。
【0003】
また、特許文献2には、相対向する位置にキャビティを形成する左右一対のキャビティプレート間に配置され、キャビティに射出成形機からの溶融樹脂を供給するスタックモールド型成形金型と、この金型に使用されるノズル及びマニホールド構造の一例が開示されている。このノズル及びマニホールド構造は、ブロック体状のマニホールドと、マニホールドに保持され左右の前記キャビティと対峙して配置されるノズルアッセンブリとで構成される。ノズルアッセンブリは、射出成形機側に連通する湯口と、キャビティと対峙する位置に形成されるゲートと、ゲートと湯口間とを連結する溶融樹脂通路とを形成するノズルボディを有し、ノズルボディの内側に、ゲートに開閉自在に係合し同一軸線上で互いに逆向きに配置されるバルブピンと、ゲート側にバルブピンを押圧するスプリングとが設置されている。
【0004】
特許文献2に開示されたノズル及びマニホールド構造では、溶融樹脂が湯口からノズルボディの中に導入されると、溶融樹脂は、溶融樹脂通路を通ってゲート側に送られる。そして、溶融樹脂が流れる圧力によってバルブピンがゲートを開放する方向に移動し、キャビティ内に溶融樹脂が注入される。注入が終了すると、スプリングによってバルブピンがゲート側に押圧され、ゲートが自動的に閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-210153号公報
【文献】実用新案登録第3158992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の多段式金型装置の樹脂漏れ防止手段は、複数のゲート部をひとまとめにして金型の方向に付勢する構造であり、しかも、付勢力を発生させる部分(マニホールドブロック下端の傾斜面と当接ブロック上端の傾斜面とが当接する部分)が各ゲート部からかなり離れた位置にあるので、すべてのゲート孔周縁部をランナの開口周縁部に密接させるのは容易ではない。したがって、確実に樹脂漏れを防止するためには、ゲート部や金型の位置関係を高い精度で調整しなければならず、段取り替え等を行う時の調整に時間が掛かっていた。この問題は、特許文献2のノズルアッセンブリの構造を適用したとしても解決できない。
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、ゲート孔とランナの開口との隙間からの樹脂漏れを容易かつ確実に防止することができるマニホールド及びこれを用いた多段式金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、XYZ三次元座標系を定義したとき、第1の金型が有する雄型及び雌型が閉じて形成された第1のキャビティに対し、前記第1の金型のZ軸負方向側の側面に設けられた第1のランナを通じて溶融樹脂を注入する第1のゲート部と、第2の金型が有する雄型及び雌型が閉じて形成された第2のキャビティに対し、前記第2の金型のZ軸正方向側の側面に設けられた第2のランナを通じて溶融樹脂を注入する第2のゲート部と、前記第1のゲート部と前記第2のゲート部の両方に前記溶融樹脂を送り込む樹脂流通路とを備えたマニホールドであって、
前記第1のゲート部は、Z軸方向に移動可能な可動体であって、前記樹脂流通路から送り込まれた前記溶融樹脂を流す第1の流路が内側に形成され、この流路の終端である第1のゲート孔がZ軸正方向側の側面に形成された第1のノズルと、前記第1のノズルの内側に設置された可動体であって、Z軸方向に移動して前記第1のゲート孔を開閉する第1のバルブピンと、前記第1のバルブピンを、前記第1のゲート孔を閉じる方向に付勢する第1のピン付勢手段と、前記第1のノズルをZ軸正方向に付勢する第1のノズル付勢手段とを備え、
前記第1のバルブピンには、前記第1の流路に送り込まれた前記溶融樹脂の圧力を、前記第1のピン付勢手段の付勢に抗する方向に受ける第1の受圧面が形成され、前記第1のノズルは、前記第1のノズル付勢手段の付勢力によって前記第1のゲート孔の周縁部が前記第1のランナの開口周縁部に密接し、前記第1の流路に前記溶融樹脂が送り込まれると、前記第1の受圧面に受けた圧力によって前記第1のバルブピンがZ軸方向に移動して前記第1のゲート孔が開放し、前記溶融樹脂が前記第1のランナに流れ込むマニホールドである。
【0009】
前記第2のゲート部は、前記第1のゲート部に対してZ軸方向に同軸に設置されているものである。
【0010】
さらに、前記第2のゲート部は、Z軸方向に移動可能な可動体であって、前記樹脂流通路から送り込まれた前記溶融樹脂を流す第2の流路が内側に形成され、この流路の終端である第2のゲート孔がZ軸負方向側の側面に形成された第2のノズルと、前記第2のノズルの内側に設置された可動体であって、Z軸方向に移動して前記第2のゲート孔を開閉する第2のバルブピンと、前記第2のバルブピンを、前記第2のゲート孔を閉じる方向に付勢する第2のピン付勢手段と、前記第2のノズルをZ軸負方向に付勢する第2のノズル付勢手段とを備え、
前記第2のバルブピンには、前記第2の流路に送り込まれた前記溶融樹脂の圧力を、前記第2のピン付勢手段の付勢に抗する方向に受ける第2の受圧面が形成され、
前記第2のノズルは、前記第2のノズル付勢手段の付勢力によって前記第2のゲート孔の周縁部が前記第2のランナの開口周縁部に密接し、
前記第2の流路に前記溶融樹脂が送り込まれると、前記第2の受圧面に受けた圧力によって前記第2のバルブピンがZ軸正方向に移動して前記第2のゲート孔が開放し、前記溶融樹脂が前記第2のランナに流れ込む。前記第1及び第2のノズル付勢手段は、前記第1及び第2のノズル間に配置され、前記第1及び第2のノズルを相互に離間させるように均等に付勢する1つのノズル付勢手段により構成されている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1及び第2のピン付勢手段は、前記第1及び第2のバルブピンを相互に離間させるように付勢する1つのピン付勢手段により構成されているものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、複数組の前記第1及び第2のゲート部がY軸方向に並設され、前記樹脂流通路は、前記複数組の第1及び第2のゲート部に前記溶融樹脂を送り込むように設けられているものである。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項記載のマニホールドを使用した多段式金型装置である。
【0014】
さらに、請求項記載の発明は、請求項3記載のマニホールドと複数組の前記第1及び第2の金型とを備え、前記第1及び第2の金型は、雄型及び雌型がY軸方向に閉じて前記第1及び第2のキャビティを形成する多段式金型装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマニホールドによれば、個々のゲート部をシンプルかつコンパクトに構成することができる。また、バルブピンの受圧面及びピン付勢手段の動作により、ノズルのゲート孔がバルブピンによって適切に開閉されるので、型開きした時、ゲート孔から樹脂が漏れる不具合は発生しない。また、ランナに溶融樹脂を流し込む時、ノズル付勢手段の動作により、ノズルのゲート孔周縁部がランナの開口周縁部に確実に密接するので、溶融樹脂が金型の外に漏れる不具合も発生しない。
【0016】
また、本発明の多段式金型装置によれば、装置のサイズをそれほど大きくすることなく、樹脂成形製品の生産効率を格段に向上させることができる。また、各ゲート部に対してノズル付勢手段が個別に設けられているので、すべてのゲート孔周縁部を確実にランナの開口周縁部に密接させることができ、十分な樹脂漏れ防止の効果を得ることができる。したがって、ゲート部や金型の位置関係は通常の精度で調整すればよく、段取り替え等を行う時の調整を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の多段式金型装置の一実施形態をX軸負方向側から見た断面図である[型閉じ状態]。
図2】この実施形態の多段式金型装置をX軸負方向側から見た断面図である[型開き状態]。
図3】この実施形態のマニホールドをX軸負方向側から見た断面図である。
図4図3の第1及び第2のゲート部を示す拡大断面図であって、X軸負方向側から見た図(a)、Y軸正方向側から見た図(b)である。
図5】この実施形態の多段式金型装置の動作を示す拡大断面図であって、第1のゲート部及び第1のランナの部分をX軸負方向側から見た図(a)、Y軸正方向側から見た図(b)である[溶融樹脂を第1のランナに流し込む前]。
図6】この実施形態の多段式金型装置の動作を示す拡大断面図であって、第1のゲート部及び第1のランナの部分をX軸負方向側から見た図(a)、Y軸正方向側から見た図(b)である[溶融樹脂を第1のランナに流し込んでいる途中]。
図7図5(b)における、第1のゲート孔の周縁部と第1のランナの開口周縁部との位置関係を示すA-A断面図(a)、(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の多段式金型装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の多段式金型装置10は、図1図2に示すように、任意の方向の直交座標系であるXYZ三次元座標系を定義したとき、Y軸方向に長いマニホールド12と、マニホールド12の一側方(Z軸正方向側の側方)に配置された第1の金型14(1)~14(4)と、マニホールド12の反対側の側方(Z軸負方向側の側方)に配置された第2の金型16(1)~16(4)とを備えている。マニホールド12は、本発明のマニホールドの一実施形態である。
【0019】
第1の金型14(1)は、Y軸方向に開閉する雄型及び雌型を有し、雄型及び雌型が閉じると、内側にキャビティ18(1)が形成され、Z軸負方向側の側面に、第1のキャビティ18(1)に通じる第1のランナ20(1)が形成される。さらに雄型には、型開き状態で樹脂成形製品Wを取り外すための突出しピンを有した第1のエジェクタ装置22(1)が取り付けられている。
【0020】
第1の金型14(2)~14(4)も同様であり、型閉じ状態で、第1のキャビティ18(2)~18(4)と第1のランナ20(2)~20(4)が形成される。さらに、各雄型に、第1のエジェクタ装置22(2)~22(4)が取り付けられている。
【0021】
第1の金型14(1)~14(4)はY軸方向に順番に並設され、第1の金型14(1)の雄型が固定盤30に取り付けられ、第1の金型14(4)の雄型が可動盤32に取り付けられている。
【0022】
第2の金型16(1)は、Y軸方向に開閉する雄型及び雌型を有し、雄型及び雌型が閉じると、内側に第2のキャビティ24(1)が形成され、Z軸正方向側の側面に、第2のキャビティ24(1)に通じる第2のランナ26(1)が形成される。この第2のランナ26(1)は、第1のランナ20(1)に対し、Z軸方向に同軸の位置に形成される。さらに雄型には、型開き状態で樹脂成形製品Wを取り外すための突出しピンを有した第2のエジェクタ装置28(1)が取り付けられている。
【0023】
第2の金型16(2)~16(4)も同様であり、型閉じ状態で、第2のキャビティ24(2)~24(4)と第2のランナ26(2)~26(4)とが各々形成され、第2のランナ26(2)~26(4)は、第1のランナ20(2)~20(4)に対し、Z軸方向に同軸の位置に各々形成される。さらに、各雄型には、第2のエジェクタ装置28(2)~28(4)が取り付けられている。
【0024】
第2の金型16(1)~16(4)はY軸方向に順番に並設され、第2金型16(1)の雄型が固定盤30に取り付けられ、第2の金型16(4)の雄型が可動盤32に取り付けられている。
【0025】
8つの金型14(1)~14(4)、16(1)~16(2)は、油圧プランジャ等の駆動装置(図示せず)によって駆動され、図1図2に示すように、可動盤32がY軸正方向に移動した時に全ての金型が型閉じ状態になり、可動盤32がY軸負方向に移動した時に全ての金型が型開き状態になる。また、各金型には、温度制御用のヒータ装置(図示せず)が取り付けられている。
【0026】
マニホールド12は、図3に示すように、Y軸方向に長い略四角形の本体ブロック34を有し、本体ブロック34のY軸正方向側の端部が固定盤30の開口部30aに固定され、この端部の表面から内向きに、Y軸負方向に伸びる樹脂流通路36が形成されている。本体ブロック34の内部には、Z軸正方向側に配置された第1のゲート部38(1)~38(4)と、Z軸負方向側に配置された第2のゲート部40(1)~40(4)とが設けられており、樹脂流通路36は、固定盤30の上方に設置された射出ユニット(図示せず)から供給される溶融樹脂Jを、各ゲート部に送り込むための通路となる。
【0027】
図4(a)、(b)に示すように、第1のゲート部38(1)及び第2のゲート部40(1)は、Z軸方向に同軸の位置に背中合わせに配置されて一対に動作する構造になっている。
【0028】
第1のゲート部38(1)は、第1のノズル42(1)を有し、その内側に、樹脂流通路36から送り込まれた溶融樹脂Jを流す第1の流路42a(1)が設けられ、Z軸正方向側の側面に、第1の流路42a(1)の終端である第1のゲート孔42b(1)が形成されている。第1のノズル42(1)の内側には、Z軸方向に移動可能な第1のバルブピン44(1)が設けられている。第1のバルブピン44(1)は、細長い先端部44a(1)がZ軸正方向側に配置され、Z軸正方向に移動した時に先端部44a(1)で第1のゲート孔42b(1)を閉鎖し、Z軸負方向に移動した時に第1のゲート孔42b(1)を開放する。
【0029】
第2のゲート部40(1)は、第2のノズル46(1)を有し、その内側に、樹脂流通路36から送り込まれた溶融樹脂Jを流す第2の流路46a(1)が設けられ、Z軸負方向側の側面に、第2の流路46a(1)の終端である第2のゲート孔46b(1)が形成されている。第2のノズル46(1)の内側には、Z軸方向に移動可能な第2のバルブピン48(1)が設けられている。第2のバルブピン48(1)は、細長い先端部48a(1)がZ軸負方向側に配置され、Z軸負方向に移動した時に先端部48a(1)で第2のゲート孔46b(1)を閉鎖し、Z軸正方向に移動した時に第2のゲート孔46b(1)を開放する。
【0030】
第1のバルブピン44(1)の基端部44b(1)と第2のバルブピン48(1)の基端部48b(1)との間には、ピン付勢手段50(1)が設けられている。ピン付勢手段50(1)は、2つのバネ50a(1)、50b(1)と、これらを同軸に連結して保持する連結部材50c(1)とで構成され、バネ50a(1)及び50b(1)の弾発力により、第1のバルブピン44(1)をZ軸正方向に付勢すると同時に、第2のバルブピン48(1)をZ軸負方向に付勢する。
【0031】
また、第1のバルブピン44(1)には、先端部44a(1)の根元部分を曲面状にすることによって第1の受圧面44c(1)が形成されている。第1の受圧面44c(1)は、第1の流路42a(1)に送り込まれた溶融樹脂Jの圧力を、ピン付勢手段50(1)の付勢に抗する方向(Z軸負方向)に受ける面である。同様に、第2のバルブピン48(1)には、先端部48a(1)の根元部分を曲面状にすることによって第2の受圧面48c(1)が形成されている。第2の受圧面48c(1)は、第2の流路46a(1)に送り込まれた溶融樹脂Jの圧力を、ピン付勢手段50(1)の付勢に抗する方向(Z軸正方向)に受ける面である。
【0032】
さらに、第1のノズル42(1)の基端部42c(1)と第2のノズル46(1)の基端部46c(1)との間には、ノズル付勢手段52(1)が設けられている。ノズル付勢手段52(1)は、例えば1つのバネであり、このバネの弾発力により、第1のノズル42(1)をZ軸正方向に付勢すると同時に、第2のノズル46(1)をZ軸負方向に付勢する。ノズル付勢手段52(1)は、図4(a)、(b)に示すように、Z軸正負方向に移動可能なので、第1及び第2のノズル42(1),46(1)は常に均等に付勢される。
【0033】
以上のように、第1のゲート部38(1)と第2のゲート部40(1)は、互いに背中合わせに対称に配置されて一対の構造になっている。他のゲート部の構成も同様であり、第1のゲート部38(2)と第2のゲート部40(2)、第1のゲート部38(3)と第2のゲート部40(3)、第1のゲート部38(4)と第2のゲート部40(4)も、互いに背中合わせに対称に配置されて一対の構造になっている。
【0034】
次に、多段式金型装置10の動作を説明する。多段式金型装置10は、1回の樹脂成形を行う毎に、図2に示す型開き状態にして、第1及び第2のエジェクタ装置22(1)~22(4),28(1)~28(4)を用いて樹脂成形製品Wを取り外す。そして、次の樹脂成形を行う時は、射出ユニットからマニホールド12への溶融樹脂Jの供給を停止した状態で、図1に示すような型閉じ状態にする。以下、型閉じ状態からの動作を順に説明する。なお、各金型及び各ゲート部の動作は同様なので、説明を簡潔にするため、第1の金型14(1)及び第1のゲート部38(1)について詳しく説明する。
【0035】
第1の金型14(1)は、図5(a)に示すように、雄型14a(1)及び雌型14b(1)のZ軸負方向側の側面がY軸方向に対して僅かに傾斜している(図5において、時計回りに傾斜角θ)。また、第1のゲート部38(1)も同様に、第1のノズル42(1)のゲート孔周縁部42d(1)端面がY軸方向に対して傾斜している(図5において、時計回りに傾斜角θ)。さらに、第1のノズル42(1)のゲート孔周縁部42d(1)は、Z軸方向に向かって傾斜した円錐台状の斜面に形成されている。
【0036】
先ず、型閉じする時、第1の金型14(1)は、雄型14a(1)及び雌型14b(1)が閉じてZ軸負方向側の側面に第1のランナ20(1)を形成する。第1のランナ20(1)の開口周縁部20a(1)は、可動金型の移動時に固定部との干渉を避けるために、僅かなクリアランスを取って傾斜角θだけ傾斜した連続面に設定されている。また、第1の金型14(1)がY軸正方向に移動する過程で、第1のランナ20(1)の開口周縁部20a(1)は、ゲート孔周縁部42d(1)の円錐台状の斜面に沿って第1のノズル42(1)を押圧しながら移動し、さらに第1のゲート孔42b(1)と対面する位置では、ゲート孔周縁部42d(1)に接触しながら移動する。このY軸正方向の第1の金型14(1)の移動に伴い、第1のノズル42(1)は、Z軸負方向に押圧され、第1のノズル42(1)がノズル付勢手段52(1)の付勢に抗して僅かに後退する。そして、第1のゲート孔42b(1)と第1のランナ20(1)とがZ軸方向に同軸に配置されて型締めされ、図5(a)、(b)に示す状態になる。
【0037】
図5(a)、(b)に示す状態になると、第1のノズル42(1)がノズル付勢手段52(1)によってZ軸正方向に付勢され、ゲート孔周縁部42d(1)が第1のランナ20(1)の開口周縁部20a(1)に強く密接する。なお、第1のゲート孔42b(1)と第1のランナ20(1)は、図7(a)に示すように、正確に同軸に連通するのが理想であるが、図7(b)に示すように、第1のランナ20(1)の開口が、ゲート孔周縁部42d(1)の内側に収まる範囲であれば、多少ずれた位置で連通しても構わない。この部分の位置制御は、樹脂成形時に発生する各部材の熱膨張や熱変形も考慮して行われる。
【0038】
また、図5(a)、(b)に示す状態では、射出ユニットからマニホールド12への溶融樹脂Jの供給が停止しているので、第1の受圧面44c(1)は溶融樹脂Jに押圧されない。したがって、第1のバルブピン44(1)がピン付勢手段50(1)によってZ軸正方向に付勢され、第1のバルブピン44(1)がZ軸正方向に移動し、第1のゲート孔42b(1)が自動的に閉鎖される。
【0039】
その後、射出ユニットからマニホールド12への溶融樹脂Jの供給が開始され、図6(a)、(b)に示すように、第1の受圧面44c(1)が溶融樹脂Jによって押圧される。そして、バルブピン44(1)がピン付勢手段50(1)の付勢に抗してZ軸負方向に移動し、第1のゲート孔42b(1)が自動的に開放し、溶融樹脂Jが第1のランナ20(1)に注入され、第1のキャビティ18(1)に流れ込む。このとき、ノズル付勢手段52(1)は、第1のノズル42(1)を付勢する動作を継続しており、ゲート孔周縁部42d(1)が第1のランナ20(1)の開口周縁部20a(1)に強く密接しているので、溶融樹脂Jが金型14(1)の外に漏れる不具合が確実に防止される。
【0040】
その後、射出ユニットからマニホールド12への溶融樹脂Jの供給を停止し、マニホールド12の温度を少し低下させる制御が行われる。すると、樹脂流通路36及び第1の流路42a(1)内に残留した溶融樹脂Jが収縮し、その収縮方向に吸引力が発生し、第1の受圧面44c(1)が溶融樹脂Jに押圧されなくなる。したがって、第1のバルブピン44(1)がピン付勢手段50(1)によってZ軸正方向に付勢され、第1のバルブピン44(1)がZ軸正方向に移動し、第1のゲート孔42b(1)が自動的に閉鎖される。
【0041】
その後、図2に示すように型開きを行い、第1のエジェクタ装置22(1)を用いて樹脂成形製品Wを取り外す。
【0042】
上述した第1の金型14(1)及び第1のゲート部38(1)の一連の動作は、他の金型14(2)~14(4)、第2の金型16(1)~16(4)、及びゲート部38(2)~38(4),40(1)~40(4)でも同様に並行して行われる。なお、対称に配置された第2の金型16(1)~16(4)及び第2のゲート部40(1)~40(4)は、上述の第1の金型14(1)及び第1のゲート部38(1)の方向とは逆に作動する。これにより、1回の樹脂成形で複数の樹脂成型製品Wが効率よく生産される。
【0043】
以上説明したように、この実施形態のマニホールド12よれば、個々のゲート部(38(1)等)をシンプルかつコンパクトに構成することができる。また、バルブピン(44(1)等)の受圧面(44c(1)等)及びピン付勢手段(50(1)等)の動作により、ノズル(42(1)等)のゲート孔(42b(1)等)がバルブピン(44(1)等)によって適切に開閉されるので、型開きした時、ゲート孔(42b(1)等)から樹脂が漏れる不具合は発生しない。また、ランナ(20(1)等)に溶融樹脂Jを流し込む時、ノズル付勢手段(52(1)等)の動作により、ノズル(42(1)等)のゲート孔周縁部(42d(1)等)がランナ(20(1)等)の開口周縁部(20a(1)等)に確実に密接するので、溶融樹脂Jが金型(14(1)等)の外に漏れる不具合も発生しない。
【0044】
また、この実施形態の多段式金型装置10によれば、装置のサイズをそれほど大きくすることなく、樹脂成形製品Wの生産効率を格段に向上させることができる。また、各ゲート部(38(1)等)に対してノズル付勢手段(52(1)等)が個別に設けられているので、すべてのゲート孔周縁部(42d(1)等)を確実にランナの開口周縁部(20a(1)等)に密接させることができ、十分な樹脂漏れ防止の効果を得ることができる。したがって、ゲート部(38(1)等)や金型(14(1)等)の位置関係は通常の精度で調整すればよく、段取り替え等を行う時の調整を短時間で行うことができる。
【0045】
なお、本発明のマニホールド及びこれを用いた多段式金型装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の多段式金型装置10の場合、第1及び第2の金型がZ軸方向に一対に設けられ、さらに複数組の前記第1及び第2の金型がY軸方向に4段に並設されており、これに合わせてマニホールド12にも8つのゲート部が設けられている。この構成は一例に過ぎず、さらに生産効率を向上させるため、例えばY軸方向の並設数を増やしてもよい。反対に、生産効率が十分であれば、装置のコストダウンを図るため、Y軸方向の並設数を減らしたり、Z軸方向に並設しない構造(第2の金型及び第2のゲート部を省略した構造)にしたりすることも可能である。
【0046】
上記のマニホールド12では、背中合わせに配置された2つのゲート部(38(1)と40(1)等)のノズル付勢手段を1つのノズル付勢手段(52(1)等)で兼用し、非常にシンプルな構成にしているが、1つのゲート部に対して1つのノズル付勢手段を設ける構成にしてもよい。ピン付勢手段(50(1)等)についても同様である。
【0047】
また、上記のマニホールド12では、ピン付勢手段(50(1)等)及びノズル付勢手段(52(1)等)にバネが使用されているが、油圧や空気圧等の流体圧を利用した付勢手段、又はカムやリンク機構等を使用した付勢手段に変更してよもよく、これによって付勢力を容易に可変調節することができる。その他、各ゲート部が金型に適正に接触しているかどうかを検出する近接センサを追加し、適正に接触していない時にアラーム信号を出力したり樹脂成形の動作を停止させたりする構成にしてもよい。
【0048】
上記のXYZ三次元座標系は、各部材の構造、位置関係、動作の方向等を相対的に定義したものであり、絶対的な方向を規定するものではない。したがって、マニホールド及び多段式金型装置を設置する時は、X軸、Y軸及びZ軸の中のどの軸を上下方向にしてもよく、各軸が斜め方向になるように設置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 多段式金型装置
12 マニホールド
14(1)~14(4) 第1の金型
14a(1) 雄型
14b(1) 雌型
16(1)~16(4) 第2の金型
18(1)~18(4) 第1のキャビティ
20(1)~20(4) 第1のランナ
20a(1) ランナの開口周縁部
22(1)~22(4) 第1のエジェクタ装置
24(1)~24(4) 第2のキャビティ
26(1)~26(4) 第2のランナ
28(1)~28(4) 第2のエジェクタ装置
30 固定盤
32 可動盤
34 本体ブロック
36 樹脂流通路
38(1)~38(4) 第1のゲート部
40(1)~40(4) 第2のゲート部
42(1)~42(4) 第1のノズル
42a(1) 第1の流路
42b(1) 第1のゲート孔
42c(1) 基端部
42d(1) ゲート孔周縁部
44(1)~44(4) 第1のバルブピン
44a(1) 先端部
44b(1) 基端部
44c(1) 第1の受圧面
46(1)~46(4) 第2のノズル
46a(1) 第2の流路
46b(1) 第2のゲート孔
46c(1) 基端部
48(1)~48(4) 第2のバルブピン
48a(1) 先端部
48b(1) 基端部
48c(1) 第2の受圧面
50(1)~50(4) ピン付勢手段
50a(1),50b(1) バネ
50c(1) 連結部材
52(1) ノズル付勢手段(バネ)
J 溶融樹脂
W 樹脂成型製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7