(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】電子トルクレンチの管体
(51)【国際特許分類】
B25B 23/16 20060101AFI20220307BHJP
B25B 23/142 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B25B23/16 Z
B25B23/142
(21)【出願番号】P 2019138326
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2019-07-26
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511314186
【氏名又は名称】優鋼機械股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝 智慶
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130820(JP,A)
【文献】特許第6258169(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3189162(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217757(JP,U)
【文献】登録実用新案第3056422(JP,U)
【文献】登録実用新案第3165962(JP,U)
【文献】特開2014-226776(JP,A)
【文献】特開昭62-136378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/16
B25B 23/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子トルクレンチの管体であって、前記管体は、一体成形された
中空構造であり、
前記管体は、小径部、架橋部及び大径部を含み、
前記管体の厚さはほぼ一致しており、
前記小径部、前記架橋部と前記大径部は、前記管体の縦向きに沿ってお互いに接続され、前記大径部の外径は前記小径部の外径より大きく、
前記架橋部は、前記大径部と前記小径部との間に位置し、その先端は、前記小径部の後端に接続され、その後端は、前記大径部の先端に接続され、
前記管体の長さは、前記大径部の長さの1.18~2.6倍であり、前記小径部の長さは、前記大径部の長さの0.18~1.6倍であることを特徴とする前記管体。
【請求項2】
前記架橋部の長さは、前記大径部の長さの0.085~0.32倍であることを特徴とする請求項1に記載の管体。
【請求項3】
前記小径部の外径は、前記大径部の外径の0.7~0.8倍であることを特徴とする請求項1に記載の管体。
【請求項4】
前記架橋部は、錐状を呈し、その先端は小径端であり、後端は大径端であることを特徴とする請求項1に記載の管体。
【請求項5】
更に、操作インターフェイスを設けるための凹部及び把持領域を含み、前記凹部は、前記大径部の周面に設けられ、前記把持領域は、前記凹部の後端と前記管体後端との間に設けられることを特徴とする請求項1~請求項4に記載の管体。
【請求項6】
前記凹部の長さは、前記大径部の長さの半分以下であることを特徴とする請求項5に記載の管体。
【請求項7】
前記管体の先端から前記凹部の後端まで設置長さを形成し、前記設置長さは、前記管体長さの0.67~0.86倍であり、前記把持領域の長さは、前記大径部の長さの0.45~0.51倍であることを特徴とする請求項5に記載の管体。
【請求項8】
前記管体の長さは、前記大径部の長さの1.18~1.65倍又は1.2~2.5倍であり、前記小径部の長さは、前記大径部の長さの0.55~0.62倍又は0.2~1.5倍であり、前記架橋部の長さは、前記大径部の長さの0.09~0.11倍又は0.2~0.3倍であることを特徴とする請求項2に記載の管体。
【請求項9】
前記設置長さは、前記管体の長さの0.69~0.85倍又は0.71~0.73倍であることを特徴とする請求項7に記載の管体。
【請求項10】
前記凹部の深さは、前記大径部の外径の約半分であることを特徴とする請求項5に記載の管体。
【請求項11】
更に、前記小径部に設けられる作動ヘッドと前記管体とを接続するための接続部材を含み、前記接続部材は、突出部及び棒部を含み、前記棒部は、前記小径部の先端から前記管体に插入されて前記小径部に接続され、前記突出部は、前記管体から突出することを特徴とする請求項1~請求項4に記載の管体。
【請求項12】
前記突出部の幅は、前記小径部の外径より大きいことを特徴とする請求項11に記載の管体。
【請求項13】
前記棒部を有する前記接続部材が容易に前記管体に插入されるように構成される錐状環壁が前記小径部の先端の内周面に設けられ、前記環壁の内径は、外から内に向かって狭まることを特徴とする請求項11に記載の管体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク工具に関し、特に電子トルクレンチの管体に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクレンチは管体を有し、当該管体にはいくつかの部材が取り付けられるが、作動ヘッドは管体の先端に設けられる。電子式のトルクレンチは、電子部材によりトルク値に対して設定及び測定するため、電子式のトルクレンチにおいて、必要な部材の数及び体積は、機械式のトルクレンチより相対的に小さくなっている。必要な部材が相対的に少ないため、管体は大容積でなくてよいので、通常電子トルクレンチの管体は、単一の外径ではなく、作動ヘッドと接続する部分の管体を比較的小さい外径(以下では、「小径部」と称する)にすることで、重量を減少させ、体積及び材料を減少させ、且つ小径部の撓曲量、変形量が大きく、より精確にトルク値を測定することもできる。
【0003】
図1は従来の電子トルクレンチの管体10の断面図であり、従来技術において、管体10は、小管12及び大管14を嵌着してなり、いくつかの結合部品16(例えばピン)により前記小管12と大管14を嵌着して固定する。前記小管12は前記小径部を形成する。
【0004】
しかし、従来の電子トルクレンチを使用する時に、前述の管体10には諸々欠点が存在するということが分かった。まず、管体10は大管14、小管12を嵌着して構成しているため、大管14、小管12を嵌着している部分には隙間18が存在し、灰塵が前記隙間18から容易に管体10内に進入する。そのため、従来の管体においてては、灰塵の進入を防止することができず、管体内の電子部材に灰塵が溜まりやすいので、使用寿命及び精確度に影響を与えた。
【0005】
次に、従来の管体10は、異なる管径の管を嵌着して結合部品16により固定していたため、製造及び組立作業が経済的でなかった。そして、大管14と小管12の嵌着部分には、隙間が存在するため、密着ができず、管体の構造強度が比較的弱く、且つ前記嵌着部分も醜いという問題があった。よって、従来の電子トルクレンチの棒体には、多くの欠点があり、改善する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、主に電子トルクレンチの管体を提供することを目的とし、前記管体には、大径部及び小径部が形成され、本発明において、前記大径部と前記小径部との間への灰塵の進入を防止することができる。
【0007】
本発明の他の目的は、製造コストを削減できる電子トルクレンチの管体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、構造強度を高めることができる電子トルクレンチの管体を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、見栄えがよい電子トルクレンチの管体を提供することである。
【0010】
本発明により提供される電子トルクレンチの管体において、前記管体は、一体構造であり、
前記管体は、小径部、架橋部及び大径部を含み、前記小径部、前記架橋部と前記大径部は、前記管体の縦向きに沿ってお互いに接続し、前記大径部の外径は前記小径部の外径より大きく、前記架橋部は、前記大径部と前記小径部との間に位置し、その先端は、前記小径部の後端に接続され、その後端は、前記大径部の先端に接続され、前記管体の長さは、前記大径部の長さの1.18~2.6倍であり、前記小径部の長さは、前記大径部の長さの0.18~1.6倍である。
従って、前記管体の大径部と小径部との接続部分には隙間が存在しないので、灰塵防止効果を果たし、且つ管体は一体構造であり、2つの外径の異なる管体がお互いに嵌着してなるものでないため、製造コストを削減し、構造強度を高めるとともにレンチの見栄えを良くすることができる。
【0011】
好ましくは、前記架橋部の長さは、前記大径部の長さの0.085~0.32倍である。
【0012】
前記管体は、更に前記大径部の周面に設けられる凹部を有する。
【0013】
好ましくは、前記凹部の長さは、前記大径部の長さの半分であり、前記凹部の深さは、前記大径部の外径の約半分である。
【0014】
前記管体の先端から前記凹部の後端まで設置長さを形成し、前記設置長さは、前記管体長さの0.67~0.86倍である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本考案の目的、特徴及び達成できる効果をより明確にするために、以下、本考案の2つの好ましい実施例を挙げ、図面を参照しながら詳しく説明する。
【
図1】従来の電子トルクレンチの管体を示す縦向きの局部断面図である。
【
図2】本発明の一つの好ましい実施例の管体からなる電子トルクレンチの平面図である。
【
図4】本発明一つの好ましい実施例の管体の縦向き断面図である。
【
図7】
図4に類似しており、本発明の他の好ましい実施例の管体の縦向き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2及び
図3は、本発明の第一好ましい実施例に係る管体20からなる電子トルクレンチ50の平面図及び前から見た縱向断面図である。前記管体20は縦向きにおいてお互いに接続される小径部22及び大径部24を有する。作動ヘッド52は管体20の小径部22の先端に設けられる。本実施例で示される作動ヘッドは例示であるが、これに限らない。操作インターフェイス55は、前記大径部24に設けられ、少なくとも一つの表示スクリーン56、いくつかのボタン57、少なくとも一つのアラーム部材58(灯光及び/又はアラーム警告を含む)、回路基板(未図示)及びプログラムを有し、前記インターフェイス55は、装置のインターフェイスとして、各種の必要な設定値又はパラメータを入力し、アラーム作用を果すために用いられる。
【0017】
図4を参照すると、前記管体20は、前記小径部22、大径部24、及び及前記小径部22と前記大径部24との間に接続される架橋部25を含む。前記小径部22の管径は、前記大径部24の管径より小さい。前記架橋部25は、前記大径部と前記小径部との間に位置され、その前後の両端はそれぞれ前記小径部の後端及び前記大径部の先端に接続され、前記管体20が一体構造になる。本実施例の前記架橋部25は、テーパ状を呈し、その先端は小径端であり、前記小径部22の後端に接続され、その後端は、大径端であり、前記大径部24の先端に接続される。前記管体20は、ロール又は押出製法により形成され、前記小径部22、架橋部25及び前記大径部24は一体構造になる。
【0018】
図4を参照すると、本発明の好ましい実施例において、前記管体20は、長さLを有し、前記小径部22、大径部24及び架橋部25も、それぞれ小径部の長さM、大径部の長さN、及び架橋部の長さOを有する。各部位の長さは、比例関係を有する。本好ましい実施例においては、大径部の長さNを基準として、他の部位と大径部の長さNの比例を規定するが、前記管体20の長さLと大径部24の長さNとの比は1.18~1.65:1であり、管体の長さLは、大径部の長さNの1.18~1.65倍であり、好ましくは、1.2~1.6倍である。前記小径部22の長さMは、大径部24の長さNの0.55~0.62倍であり、好ましくは、0.56~0.6倍である。前記架橋部25の長さOは、大径部24の長さNの0.085~0.12倍であり、好ましくは、0.09~0.11倍の範囲内である。
【0019】
前記小径部22の外径はD1であり、前記大径部の外径はD2であり、前記小径部D1は、大径部D2の0.7~0.8倍であり、好ましくは、0.75~0.78倍である。前述の長さ及び外径の比例は、構造強度及び操作利便性を両立するための前記管体20の好ましい構造比例である。
【0020】
凹部26は、前記管体20を切り欠けて形成されて前記大径部24の周面の前段に位置され、その長さPは、前記大径部の長さの半分以下であることが好ましく、例えば、前記凹部26の長さPは、大径部24の長さNの0.35~0.48倍であり、好ましくは、前記長さPは、前記長さNの0.44~0.47倍である。前記凹部26の後方に位置する大径部24の後段は、使用者把持のための前記管体20の把持領域28を形成する。前記管体20の先端から前記凹部26の後端まで設置長さR を形成し、凹部の後端の境界として、前記設置長さRは、管体長さLの0.69~0.74倍であり、好ましくは、0.71~0.73倍の範囲である。前記把持領域28は、把持領域の長さSを有し、前記凹部26の後端と前記管体20の後端との間に設けられ、前記把持領域長さSは、管体20の長さLの0.26~0.31倍であり、好ましくは、0.27~0.29倍の範囲であり、前記把持領域の長さSは、前記大径部24の長さNの0.45~0.51倍であり、好ましくは、0.46~0.5倍である。
図5を参照すると、前記凹部26の深さQは、前記大径部24の外径D2の約半分であり0.48~0.51倍の範囲であり、好ましくは0.49倍である。前記操作インターフェイス55は、前記凹部26に設けられ、前記インターフェイス55の外殻551は、前記凹部26を完全に覆う。
【0021】
図4、
図6を参照すると、テーパ状環壁23は、小径部22の先端の内周面に設けられ、その内径は、外から内に向かって次第に狭まる。接続部材60は、突出部62及び棒部64を有し、前記棒部64は、前記小径部22の先端から前記管体20插入され、螺接部品66により前記棒部64及び前記小径部22を螺着する。前記環壁23は、前記棒部64が容易に管体20に插入されるよう設けられる。
図2を参照すると、前記突出部62は、前記管体20外に突出され、且つその幅は、前記小径部22の外径より大きくなっている。前記作動ヘッド52の枢結端521は、回転可能に前記突出部62に枢結される。前記突出部62を相対的に広い幅にすることで、前記作動ヘッド52の構造強度を高めることができる。
【0022】
前記電子トルクレンチ50を用いて螺接部品(ボルト、ナット等)を回転させる時に、前記小径部22の撓曲状態を検測することで、前記電子トルクレンチ50の操作トルクを測定することができる。本好ましい実施例の大径部24と小径部22との長さの比例及び管径比例は、前記電子トルクレンチ50が最適な強度を有するとともに小径部22が最適な撓曲状況を有するようにすることで、精確なトルク値の測定及び良好な使用寿命を達成する。最適な把持領域28を形成するように、前記設置長さR と管体の長さLの比例関係を、凹部26の後端の設置限界にすることで、操作者が便利に管体20を把持して前記レンチを操作するようになる。
【0023】
前述の利点以外に、本発明の管体20は一体成型され、その大径部24と小径部22との接続部分には隙間が存在しないため、前記管体が灰塵防止作用を有するので、雑物の管体への進入を防止する。
【0024】
前記管体20は単一部材であり、異なる部材の大径部と小径部とを嵌着して結合部品により固定してなるものでないため、製作工程を簡略化し、組立時間を節約し、生産コストを削減する。
【0025】
前記管体20は一体成型であるため、良好な結構強度を有し、比較的に大きい操作力を耐えることができ、且つ前記大径部24と小径部22との間を、錐状の架橋部25により繋げ、嵌着部分を有しため、見栄えが良くなる。
【0026】
図7は、本発明の第二の好ましい実施例に係る管体20'の縱向断面図であり、同様に、縦向きにおいてお互いに接続する小径部22及び大径部24、前記小径部22と大径部24との間に接続される架橋部25、凹部26、及び前記大径部24の周面に設けられる前段を含むが、重複する説明を省略するために、同一部材には、第一の好ましい実施例との同じ符号を付与する。
【0027】
管体20'の各部位も第一の好ましい実施例のように長さを有し、且つ各部位の長さも、対応する比例関係を有する。同様に、大径部24の長さNを基準とすると、前記管長20'の長さLは、大径部長さNの1.18~2.6倍であり、好ましくは、1.2~2.5倍である。前記架橋部25の長さOは、大径部24の長さNの0.085~0.32倍であり、好ましくは、0.2~0.3倍である。前記小径部22の長さMは、大径部24の長さNの0.18~1.6倍であり、好ましくは、0.2~1.5倍であり、この範囲内において、小径部22の長さは大幅に変化可能であり、その長さMを大径部24の長さNよりずっと短くすることができ、又は、大径部の長さNの1.5倍以上にすることができる。前記設置長さR は、管体の長さLの0.67~0.86倍であり、好ましくは、0.69~0.85倍である。
【0028】
本実施例は、
図4に示す第一好ましい実施例の効果を有するので、説明を省略する。
【0029】
上記の実施例は、本考案を説明するためのものであり、本考案を限定するものでない。本考案の範囲内で変更や修正を加えることができ、いずれも特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
20、20' 管体 22 小径部 23環壁
24大径部 25架橋部 26 凹部
28 把持領域
50 電子トルクレンチ 52 作動ヘッド 521 枢結端
55操作インターフェイス 551 外殻 56 表示スクリーン
57 ボタン 58 アラーム部材
60 接続部材 62 突出部 64 棒部
L 管体長さ M小径部長さ N 大径部長さ
O 架橋部長さ P 凹部長さ R 設置長さ
S 把持領域長さ Q 凹部の深さ
D1 小径部外径 D2 大径部外径