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特許7034495TLR9活性化の阻害及び/又は抑制のために使用されるアプタマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】TLR9活性化の阻害及び/又は抑制のために使用されるアプタマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20220307BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220307BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20220307BHJP
【FI】
A61K31/711 ZNA
A61P37/06
A61P29/00
A61P25/00
A61P5/38
A61P37/08
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/14
A61P9/10 101
A61P7/06
A61P1/16
A61P11/00
A61P33/00
A61P17/00
A61P3/10
A61P9/00
A61P15/00
A61P7/04
A61P1/04
A61P13/10
A61P25/18
A61P25/04
A61P21/04
A61P21/00
A61P25/30
A61P35/00
A61K48/00
A61P43/00 111
C12N15/115 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019528456
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2017077675
(87)【国際公開番号】W WO2018095697
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】16200190.3
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519184745
【氏名又は名称】ベルリン キュアーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーバーラント アンネカトリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル カトリン
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第92/014843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制することによる治療剤であって、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも0%同一である核酸配列を含かつ細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制するアプタマーを含む、治療剤
【請求項2】
治療対象の被験体は、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示している、請求項1に記載の治療剤
【請求項3】
治療対象の被験体は、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性の試験で陽性である、請求項1又は2に記載の治療剤
【請求項4】
治療対象の被験体が、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示していることは、TLR9媒介性のTNFα産生が、参照値である健康な被験体の値よりも高められることである、請求項3に記載の治療剤
【請求項5】
治療対象の被験体についての前記値は
-TLR9を保有する末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程;
-100μlの培地中の2×10 個の前記PBMCを、40μgのODN 2216/mLを含む100μLの培地に添加し、前記PBMCをODN 2216存在下、5%のCO で37℃において24時間にわたりインキュベートする工程;及び
-ODN 2216で誘発されたPBMCにより形成されたTNFαの量を、TNFα特異的ELISA技術により決定する工程
を含む方法を使用して測定され、少なくとも50pg/mlである、請求項4に記載の治療剤
【請求項6】
治療対象の被験体は、自己免疫障害、炎症性障害、自己免疫結合組織疾患(ACTD)、及び/又は神経変性障害から選択される障害を患っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療剤
【請求項7】
治療対象の被験体は、乾癬、関節リウマチ、汎発性脱毛症、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、アレルギー、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、皮膚エリテマトーデス(CLE)、皮膚筋炎、糖尿病、拡張型心筋症(DCM)、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、心筋炎、ナルコレプシー、神経ミオトニー、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ(RA)、統合失調症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、側頭動脈炎、脈管炎、白斑、外陰部痛、ウェゲナー肉芽腫症、外傷痛、神経因性疼痛、及びアセトアミノフェン中毒から選択される障害を患っているか、
或いは前記被験体は、腫瘍/癌を患っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療剤
【請求項8】
治療対象の被験体は、乳癌、子宮頸部扁平上皮癌、胃癌、神経膠腫、肝細胞癌、肺癌、メラノーマ、前立腺癌、再発性神経膠芽腫、再発性非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌からなる群から選択される腫瘍/癌を患っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療剤
【請求項9】
TLR9を発現する細胞とアプタマーとを接触させることを含む、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制する方法であって、該方法は、in vitro/ex vivoで実施され、かつ前記アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつ細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制するものであり、かつ、
前記ex vivoの阻害又は抑制がヒトの体内から取り出された検体において起こる場合は、当該検体を当該ヒトの体内に治療のために戻す工程を含まない、方法。
【請求項10】
前記方法は、前記細胞をTLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性に関して試験する先行工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に定義されるアプタマーと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制することによる治療用の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に定義されるアプタマーと、容器とを含む、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制することによる治療用のキット。
【請求項13】
TLR9活性化を阻害又は抑制するための、請求項1に定義されるアプタマーの使用であって、前記アプタマーは、in vitro/ex vivoで使用される、使用(ただし、前記ex vivoの阻害又は抑制がヒトの体内から取り出された検体において起こる場合に、当該検体を当該ヒトの体内に治療のために戻すことを含む方法のための使用を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞におけるTLR9の活性化の阻害又は抑制による被験体の治療のために使用される新たなアプタマー分子、そのようなアプタマー分子を使用する細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制する方法、そのようなアプタマー分子を含む医薬組成物及びキット、並びにTLR9活性化を阻害又は抑制するためのアプタマー分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体(TLR)は、免疫系の多くの細胞上に存在し、自然免疫応答に関与することが分かっている(非特許文献1)。脊椎動物又は哺乳動物において、このファミリーは、細菌、菌類、寄生生物、及びウイルスに由来する病原体関連分子パターン(PAMP)を認識することが知られるTLR1~TLR10と呼ばれるタンパク質からなる(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。
【0003】
TLRは、哺乳動物が異種分子を認識して、それに対する免疫応答を増大するための主要な手段であり、そして自然免疫応答と適応免疫応答とを結び付ける手段も提供する(非特許文献13、非特許文献14)。TLRはまた、自己免疫、感染性疾患、及び炎症を含む多くの疾患の病因において役割を担うことが分かっており(非特許文献15)、適切な作用物質を使用するTLR媒介性活性化の調節は、疾患介入のための手段を提供し得る。さらに、自己核酸による形質細胞様樹状細胞前駆細胞(PDC)及びB細胞におけるTLR9の誘発作用は、全身性エリテマトーデス(SLE)の病因において大きな役割を担う。
【0004】
細胞外病原体及び細胞内病原体に対する防御の一環として、TLRは、細胞表面に位置しているが、細胞内部にも位置している。TLR2、TLR4、TLR5、及びTLR6は、細胞外病原体から細胞を防御する細胞表面に位置する受容体であり、TLR3、TLR7、TLR8、及びTLR9は、細胞内病原体からの防御を支援するために、概して細胞内に位置している((Dowling and Dellacasagrande, 2016) 非特許文献16、非特許文献11、非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。
【0005】
細菌DNA及び合成DNA中に存在する或る特定の非メチル化CpGモチーフは、免疫系を活性化し、TLR9により抗腫瘍活性を誘導することが分かっている(非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24)。その一方で、哺乳動物のDNAは、CG配列の頻度が低く、かつ殆どのCG配列がメチル化シトシンを有すると見られるため、一般的に免疫刺激活性を有しない。このように哺乳動物の免疫系は、TLR9受容体によって細菌DNAと自己DNAとを区別すると考えられる。
【0006】
CpGジヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するその他の研究では、免疫応答を刺激することが示された(非特許文献25)。その後の研究では、TLR9は、細菌DNA及び合成DNA中に存在する非メチル化CpGモチーフを認識することが裏付けられた(非特許文献26)。
【0007】
CpG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのその他の修飾は、オリゴヌクレオチドがTLR9による免疫応答のモジュレーターとして作用する能力に影響を及ぼすこともある(例えば、非特許文献27、非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30、非特許文献31、非特許文献32、非特許文献33、及び非特許文献34を参照)。
【0008】
さらに、構造活性相関の研究により、非メチル化CpGジヌクレオチドに起因する免疫応答プロファイルとは異なる特異的な免疫応答プロファイルを誘導する合成モチーフ及び新規のDNAベースの化合物の同定が可能となった(非特許文献35、非特許文献36、非特許文献37、非特許文献38、非特許文献39、非特許文献40、非特許文献41、非特許文献42、非特許文献43、非特許文献44、非特許文献45、非特許文献46、非特許文献47、非特許文献48、非特許文献49、非特許文献50、非特許文献51)。
【0009】
TLRの活性化は、免疫応答の増大に関与しているが、TLRによる免疫系の不制御の刺激は、例えば免疫低下被験体において或る特定の疾患を悪化させ得る。こうして、TLR9活性化により引き起こされる全体的に又は特異的に高められた免疫応答の場合に、TLR9アンタゴニストの適用が望ましい場合がある。
【0010】
近年では、幾つかのグループにより、炎症性サイトカインのインヒビターとして作用する合成オリゴデオキシオリゴヌクレオチド(ODN)の使用が示された(非特許文献52)。
【0011】
或る特定の合成ODNを使用して、Lenertらは、阻害性ODNを製造することができることを報告している(非特許文献52)。これらの阻害性ODNは、近位「CCT」トリプレット及び遠位「GGG」トリプレットの2つのトリプレット配列を必要とする。これらのトリプレットを含む阻害性ODN以外に、幾つかのグループによってCpG含有ODNによりTLR9媒介性活性化を阻害し得るその他の特異的なDNA配列が報告された。これらの「阻害性」又は「抑制性」モチーフは、ポリ「G」(例えば、「GGGG」)又は「GC」配列に富み、メチル化される傾向にあり、そして哺乳動物及び或る特定のウイルスのDNAにおいて存在する(例えば、非特許文献53、非特許文献54を参照)。
【0012】
非特許文献55及び米国特許出願の特許文献1は、配列内にGGGGモチーフを含む阻害性DNAオリゴヌクレオチドについての構造を記載している。Patoleらは、GGGG含有ODNが、全身性狼瘡を抑制することを実証している(非特許文献56)。さらに、非特許文献57は、哺乳動物のテロメア中に高頻度で存在し、CpGに誘導される免疫活性化を下方調節する繰り返しTTAGGGエレメントを記載している。非特許文献58は、TTAGGGエレメントを含む合成オリゴヌクレオチドがこの活性を模擬し、或る特定のTh1依存性自己免疫疾患の予防/治療に有効であり得ることを実証している。
【0013】
米国特許出願の特許文献2は、ポリG配列を必要としない新規のクラスのTLRアンタゴニストを開示している。Kandimallaらはまた、様々な疾患及び障害の治療及び予防のためのこれらの新規組成物の適用を記載している(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
【0014】
しかしながら、ポリG配列を必要としない更なるTLRアンタゴニストを開発することは未だに課題のままである。TLR9アンタゴニストの数には、まだかなり限りがあり、それらのヒト又は動物における適用に関する有効性及び無害性はまだ確認されていない。したがって、有利な阻害プロファイルを示す更なるTLR9アンタゴニストを利用可能であることが望まれる。
【0015】
そのような新しい特別な化合物及び組成物は、例えば免疫刺激性成分による疾患及び障害、並びに疼痛及び炎症の治療及び予防を含む、多くの臨床的に意義のある用途において使用されることとなる。そのような化合物及び組成物は、現在、喘息及びアレルギー性鼻炎又はその他のアレルギー状態における効力について試験されている(非特許文献59)。
【0016】
更に多くの疾患が、患者におけるTLR9の不所望又は異常な活性化と関連している。また、心臓線維芽細胞がTLR9受容体を保有し、かつ心臓線維芽細胞TLR9受容体の活性化が、病的状態を裏付ける心筋炎等の病理学的な心臓の異常に関与するらしいことも知られている(非特許文献60)。
【0017】
TLR9活性化の遮断、抑制、又は阻害は、そのような場合に、実験的な狼瘡においてDynavax社製のIRS 954で既に観察された治療効果を示し得る(非特許文献61)。
【0018】
例えば、自己免疫疾患においてTLR9活性化を調節するために使用され得る非常に限られた数のアプタマーだけが現在では利用可能であるに過ぎず、それらのヒト患者における適用に関する有効性及び無害性はまだ確認されていない。したがって、TLR9活性化を阻害又は抑制する更なるオリゴヌクレオチド配列を利用可能であることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許出願公開第2005/0239733号
【文献】米国特許出願公開第11/549,048号
【文献】米国特許出願公開第11/743,876号
【文献】米国特許出願公開第12/140,334号
【文献】米国特許出願公開第12/140,338号
【文献】米国特許出願公開第12/244,199号
【非特許文献】
【0020】
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【文献】Gursel, I., et al., J. Immunol., 171: 1393-1400 (2003)
【文献】Shirota, H., et al., J. Immunol., 173: 5002-5007 (2004)
【文献】Basith S, Manavalan B, Lee G, Kim SG, Choi S. "Toll-like receptor modulators: a patent review (2006-2010)." Expert Opin Ther Pat. Jun 2011: 927-944
【文献】Ohm IK, Alfsnes K, Belland Olsen M, Ranheim T, Sandanger O, Dahl TB, Aukrust P, Finsen AV, Yndestad A, Vinge LE. "Toll-like receptor 9 mediated responses in cardiac fibroblasts." PLoS One. No date: e104398
【文献】Pawar RD1, Ramanjaneyulu A, Kulkarni OP, Lech M, Segerer S, Anders HJ. "Inhibition of Toll-like receptor-7 (TLR-7) or TLR-7 plus TLR-9 attenuates glomerulonephritis and lung injury in experimental lupus." J Am Soc Nephrol. Jun 2007: 1721-1731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の課題は、細胞におけるTLR9の活性化の阻害又は抑制による被験体の治療のために使用される新たなアンタゴニストを提供することである。
【0022】
さらに、本発明のもう1つの課題は、新たなTLR9アンタゴニストを使用してTLR9活性化を阻害又は抑制する方法を提供することである。
【0023】
また、本発明の課題は、新たなTLR9アンタゴニストを含む医薬組成物及びキットを提供することである。
【0024】
本発明の更なる課題は、TLR9活性化を阻害又は抑制するための、新規のTLR9アンタゴニストの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題は、以下で特定される本発明の態様により解決される。
【0026】
本発明の第1の態様によれば、細胞におけるTLR9の活性化の阻害又は抑制による被験体の治療のために使用されるアプタマーが提供される。
【0027】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態においては、上記被験体は哺乳動物であり、好ましくは、上記被験体はヒトである。
【0028】
本発明の第1の態様のもう1つの好ましい実施の形態においては、接触させられるべき細胞、及び/又は治療されるべき被験体は、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示している。
【0029】
本発明の第1の態様の更なるもう1つの好ましい実施の形態においては、治療されるべき細胞及び/又は被験体は、該細胞及び/又は該被験体におけるTLR9の活性化を阻害する前に、TLR9過剰発現及び/又はTLR9介在性シグナル伝達の過剰活性について試験される。
【0030】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態においては、上記細胞は、グリア細胞、ミクログリア細胞、アストロサイト、マクロファージ、B細胞、及び/又は樹状細胞、好ましくは形質細胞様樹状細胞である。
【0031】
本発明の第1の態様のもう1つの好ましい実施の形態においては、上記被験体は、自己免疫障害、炎症性障害、自己免疫結合組織疾患(ACTD)、及び/又は神経変性障害から選択される障害を患っており、好ましくは、上記障害は、限定されるものではないが、乾癬、関節リウマチ、汎発性脱毛症、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、アレルギー、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、皮膚エリテマトーデス(CLE)、皮膚筋炎、糖尿病、拡張型心筋症(DCM)、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、心筋炎、ナルコレプシー、神経ミオトニー、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ(RA)、統合失調症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、側頭動脈炎、脈管炎、白斑、外陰部痛、ウェゲナー肉芽腫症、外傷痛、神経因性疼痛、及びアセトアミノフェン中毒から選択される。
【0032】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態においては、上記被験体は、腫瘍/癌を患っており、好ましくは、上記腫瘍/癌は、乳癌、子宮頸部扁平上皮癌、胃癌、神経膠腫、肝細胞癌、肺癌、メラノーマ、前立腺癌、再発性神経膠芽腫、再発性非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌からなる群から選択される。
【0033】
本発明の第1の態様の好ましい1つの実施の形態においては、上記アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、TLR9を発現する細胞とアプタマーとを接触させることを含む、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制する方法が提供される。
【0035】
本発明の第2の態様の好ましい実施の形態においては、上記方法は、in vitro/ex vivoで行われる。
【0036】
本発明の第2の態様のもう1つの好ましい実施の形態においては、上記方法は、前記細胞をTLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性に関して試験する先行工程を更に含む。
【0037】
本発明の第2の態様の好ましい実施の形態においては、細胞は哺乳動物細胞であり、好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0038】
本発明の第2の態様の好ましい1つの実施の形態においては、アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による使用のためのアプタマーと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による使用のための少なくとも1種のアプタマーと、容器とを含むキットが提供される。
【0041】
本発明の第5の態様によれば、TLR9活性化の阻害又は抑制のための、本明細書に規定されるアプタマーの使用が提供される。
【0042】
本発明の第5の態様の好ましい実施の形態においては、アプタマーは、in vitro/ex vivoで使用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】漸増濃度(μM)の配列番号1のアプタマーを添加することによる、ODN 2006(TLR9アゴニスト)で刺激されたHEK-Blue(商標)hTLR9細胞におけるTLR9活性化の阻害を示している(灰色のカラム)。TLR9アゴニストODN 2006(配列番号2)による刺激の不存在下での、TLR9活性化に対する漸増濃度の配列番号1のアプタマーの潜在的な固有の効果が調査され、黒色の棒として示される。光学密度の変化は、アルカリホスファターゼのTLR9活性化発現により引き起こされる。
図2】100ngのTNF-αで刺激された(灰色のカラム)、及びTNF-αによる刺激の不存在下での(黒色のカラム)、HEK-Blue(商標)TNF-α細胞に対する漸増濃度(μM)の配列番号1のアプタマーの効果を示している。光学密度の変化は、アルカリホスファターゼのTNF-α活性化発現により引き起こされる。
図3】漸増濃度(μM)の配列番号3のアプタマーを添加することによる、ODN 2006(TLR9アゴニスト)で刺激されたHEK-Blue(商標)hTLR9細胞におけるTLR9活性化の阻害を示している(灰色のカラム)。TLR9アゴニストODN 2006(配列番号2)による刺激の不存在下での、TLR9活性化に対する漸増濃度の配列番号3のアプタマーの潜在的な固有の効果が調査され、黒色の棒として示される。光学密度の変化は、アルカリホスファターゼのTLR9活性化発現により引き起こされる。
図4】100ngのTNF-αで刺激された(灰色のカラム)、及びTNF-αによる刺激の不存在下での(黒色のカラム)、HEK-Blue(商標)TNF-α細胞に対する漸増濃度(μM)の配列番号3のアプタマーの効果を示している。光学密度の変化は、アルカリホスファターゼのTNF-α活性化発現により引き起こされる。
図5】漸増濃度(ng)のTLR9アンタゴニストCpG ODN TTAGGG(配列番号4、灰色のカラムとして示される)を添加することによる、ODN 2006(TLR9アゴニスト)で刺激されたHEK-Blue(商標)hTLR9細胞におけるTLR9活性化の阻害を示している。TLR9アゴニストODN 2006(配列番号2)による刺激の不存在下での、TLR9活性化に対する漸増濃度のCpG ODN TTAGGG(配列番号4)の潜在的な固有の効果が調査され、黒色の棒として示される。光学密度の変化は、アルカリホスファターゼのTLR9活性化発現により引き起こされる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、真核細胞におけるTLR9受容体の活性化と相互作用し、それを阻害及び抑制することが可能な予想外の構造及びヌクレオチド組成の新規オリゴヌクレオチドの同定に基づくものである。
【0045】
これまで、TLR9受容体との拮抗作用を有すると考えられるアプタマーは、当該技術分野では非常に限られた数しか知られていなかった。今までに知られた拮抗性オリゴヌクレオチドに基づく共通の構造モチーフはほとんどない。しかしながら、これらの共通の構造は、幾つかの場合に、例えばヒト患者の治療におけるアプタマーの医薬用途に関する厳格な要件を考慮すると、バイオアベイラビリティーの低下及び/又はその他の問題の一因となる場合がある。このために、TLR9活性化の標的化された調節において使用するための構造的に異なる更なるアプタマーを提供することが非常に望まれていた。
【0046】
本発明者らは目下、TLR9受容体に対して拮抗的に作用することが通常知られるオリゴヌクレオチドの構造モチーフとは異なるTLR9アンタゴニストとして、特許請求の範囲に記載されるアプタマーを初めて同定した。こうして目下、構造的に新規のオリゴヌクレオチドをTLR9アンタゴニストとして提供することが可能となった。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、TLR9活性化が阻害又は抑制されるべき被験体は脊椎動物であり、より好ましくは、該被験体は哺乳動物である。本発明の意味の範囲内では、哺乳動物の群には、限定されるものではないが、ラット、マウス、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、畜牛、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、及びヒトが含まれる。最も好ましくは、上記被験体は、ヒトである。
【0048】
本発明の文脈の範囲内では、「被験体」についてしか言及していないどの開示も、当業者がそのような開示を何ら技術的な意味をなさないと考えない限りは、さらに「細胞」に関する同じ開示として解釈され得て、その逆も然りであると理解されるべきである。
【0049】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーと接触させられるべき少なくとも1つの細胞は、TLR9過剰発現を示している。このように、本発明のアプタマーで治療されるべき被験体は、この被験体の少なくとも幾つかの細胞においてTLR9過剰発現を示している。より好ましくは、治療されるべき被験体は、その被験体の少なくとも幾つかの細胞におけるTLR9過剰発現により引き起こされる障害及び/又は症状に罹患している。
【0050】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーと接触させられるべき少なくとも1つの細胞は、TLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を呈している。これは、本発明のアプタマーで治療されるべき被験体が、この被験体の少なくとも幾つかの細胞においてTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示していることを意味し得る。より好ましくは、治療されるべき被験体は、その被験体の少なくとも幾つかの細胞におけるTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性により引き起こされる障害及び/又は症状に罹患している。
【0051】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、治療されるべき細胞及び/又は被験体は、該細胞及び/又は該被験体におけるTLR9の活性化を阻害する前に、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性について試験される。このように、本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、治療されるべき細胞及び/又は被験体は、本発明のアプタマーと接触する前に、又は本発明のアプタマーで治療される前に、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示すとみなされている。
【0052】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、治療されるべき被験体は、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性の試験で陽性である。
【0053】
細胞又は被験体がTLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性を示すかどうかを確実に試験及び測定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。この文脈において、Deering and Orange, Clin Vaccine Immunol. 2006Jan;13(1):68-76の開示が例として参照される。そこでは、TLR9発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の活性の評価方法が発表されている。技術水準の一部をなすTLR9発現/活性の評価のための更なる裏付けは、Invivogen(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)によるTLR9 Test Strip 2216の顕色から得ることができる。
【0054】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、TLR9媒介性のTNFα産生が健康な被験体に関する参照値よりも高められるのであれば、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性が推定される。好ましい実施形態によれば、治療されるべき被験体に関する値は、以下の通りに測定される。
【0055】
代理パラメーターとしてTLR9媒介性のTNFα産生を使用することによる、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性の測定
TLR9を保有する末梢血単核細胞(PBMC)の単離
患者のTLR9状態を推定するために、TLR9受容体を保有する患者のPBMCを、ヘパリン化血液の試料からFicoll-Paque Plus密度勾配分離(Amersham Biosciences社、スウェーデン、ウプサラ)を使用して単離する。単離されたPBMCを、10%の熱失活されたウシ胎児血清(FBS、HyClone社、ユタ州、ローガン)、0.1mMの非必須アミノ酸、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、50U/mlのペニシリンG、50μg/mlの硫酸ストレプトマイシン、及び2mMのL-グルタミン(GIBCO/BRL社、ニューヨーク州、グランドアイランド)を含有するRPMI(GIBCO/BRL社)(全体でR10-FBSと呼ばれる)中に再懸濁させる。
【0056】
全ての培地を、調製後に使い捨て0.2μmフィルター(Millipore社、マサチューセッツ州、ビレリカ)を通して濾過する。PBMCは、ネオプレン製ガスケットを含む1ml容のポリプロピレン製バイアル(Corning社、ニューヨーク州、コーニング)中で10%のジメチルスルホキシド(DMSO、Fisher Scientific社、ニュージャージー州、フェアローン)を含有する0.2μmのフィルターで滅菌されたFBS中に細胞を再懸濁させることにより凍結保存することができる。バイアルを、-80℃の冷凍機中でメタノールを収容している非機械的な凍結保存ユニット(Nalgene社、ニューヨーク州、ロチェスター)を使用して約1℃/分ずつ徐々に温度低下させる。実験で使用するために急速解凍するまで、細胞は液体窒素中で貯蔵される。
【0057】
解凍時に、細胞生存率をトリパンブルー排除法(GIBCO/BRL社)により測定し、95%未満の生存率を有する全ての試料を破棄する。
【0058】
PBMCにおけるアゴニスト(リガンド)媒介性のTLR9応答の誘発
TLR9活性は、TLR9受容体を有するPBMCを特定のアゴニスト/リガンドODN 2216と一緒にインキュベートした場合に推定することができる。TLR9応答の誘発のために、100μlのR10-FBS中の2×10個のPBMCを、2連のリガンド含有ウェル(40μgのODN 2216/mL、100μL/ウェル)又はコントロールのために培地含有ウェルのそれぞれに添加し、5%のCOで37℃において24時間にわたりインキュベートする。リガンド不含の培地を使用して、TNFαのベースライン産生を測定する。
【0059】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による形成されたTNFαの量の推定
ODN 2216で誘発された患者の血液又はコントロール被験体の血液のPBMCにより形成されたTNFαの量を、TNFα特異的ELISA技術により推定する。
【0060】
このために、Immulonマイクロタイタープレート(ThermoLabSystems社、マサチューセッツ州、フランクリン)を、コーティングバッファー(0.1Mの炭酸ナトリウム、pH9.5)中の100μlのモノクローナル抗ヒトTNFα捕捉抗体(BD Biosciences社)と一緒に4℃で一晩インキュベートする。上清を破棄した後に、該プレートを、0.05%のTween 20を有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBST)(pH7.4)で3回洗浄し、その後に10%のウシ血清アルブミンを含有するPBS(pH7.0)で室温にて1時間にわたりブロッキングする。
【0061】
TLR9リガンドで刺激されたPBMCの個別のウェルからの上清を、個別の抗体被覆されたウェルに移す。
【0062】
測定されるTNFαの量が、いずれの場合にもTNFα標準曲線の範囲内に入るように、上清を抗体被覆されたウェル中で直接2倍希釈することが好ましい。TNFαの連続希釈された標準調製物は、標準曲線の役割を果たす(R&D Systems社、ミネソタ州、ミネアポリス)。
【0063】
試料及び標準曲線の負荷後に、プレートを室温にて2時間にわたりインキュベートし、引き続きPBSTを使用して5回洗浄する。捕捉されたTNFαを検出するために、100μlのビオチン化抗ヒトTNFαサンドイッチモノクローナル抗体(BD Biosciences社)を、アビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(BD Biosciences社)と一緒に各ウェルに加える必要があり、該プレートは、室温にて1時間にわたりインキュベートする必要がある。
【0064】
PBSTで5回洗浄し、そして100μlのテトラメチルベンジジンに加えて過酸化水素基質溶液と一緒に室温にて30分間にわたりインキュベートした後に、50μlの1Mの硫酸を添加することにより、比色反応を止める。吸光度を、マイクロタイタープレート分光測光器(Biotek社、バーモント州、ウィヌースキ)を使用して450nmで読み取る。
【0065】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、治療されるべき被験体に関して上記された方法により測定されるTNFαの値は、少なくとも50pg/ml、好ましくは少なくとも60pg/ml、より好ましくは少なくとも75pg/ml、更により好ましくは少なくとも90pg/ml、更により好ましくは少なくとも100pg/ml、更により好ましくは少なくとも110pg/ml、更により好ましくは少なくとも125pg/ml、更により好ましくは少なくとも150pg/ml、最も好ましくは少なくとも175pg/mlである。
【0066】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のアプタマーと接触させられるべき細胞は、グリア細胞、ミクログリア細胞、アストロサイト、マクロファージ、B細胞、及び/又は樹状細胞、より好ましくは形質細胞様樹状細胞である。もう1つのより好ましい実施形態によれば、上記接触させられるべき細胞は、中枢神経系におけるグリア細胞である。
【0067】
本発明の好ましい1つの実施形態においては、上記被験体は、自己免疫障害、炎症性障害、自己免疫結合組織疾患(ACTD)、及び/又は神経変性障害から選択される障害を患っており、より好ましくは、前記障害は、限定されるものではないが、乾癬、関節リウマチ、汎発性脱毛症、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、アレルギー、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、皮膚エリテマトーデス(CLE)、皮膚筋炎、糖尿病、拡張型心筋症(DCM)、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、心筋炎、ナルコレプシー、神経ミオトニー、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ(RA)、統合失調症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、側頭動脈炎、脈管炎、白斑、外陰部痛、ウェゲナー肉芽腫症、外傷痛、神経因性疼痛、及びアセトアミノフェン中毒から選択される。
【0068】
より好ましい実施形態においては、上記被験体は、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、動脈硬化症、炎症性腸疾患、糖尿病、アレルギー、及び癌、特に自己免疫性糖尿病を含む群から選択される自己免疫障害を患っている。
【0069】
もう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、GPCR自己抗体の存在と関連している自己免疫障害を患っており、更により好ましくは、上記自己免疫障害は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、虚血性心筋症(iCM)、周産期心筋症(PPCM)、特発性心筋症、シャーガス心筋症、化学療法誘発性心筋症、シャーガス巨大結腸症、シャーガス巨大食道症、シャーガス神経障害、良性前立腺肥大症、強皮症、レイノー症候群、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、妊娠高血圧腎症、腎同種異系移植片拒絶反応、心筋炎、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、メタボリックシンドローム、脱毛症、円形脱毛症、片頭痛、パーキンソン病、癲癇、群発頭痛、多発性硬化症、鬱病、局所痛症候群、不安定狭心症、全身性エリテマトーデス(SLE)、統合失調症、シェーグレン症候群、歯周炎、心房細動、白斑、溶血性尿毒症症候群、スティッフパーソン症候群、先天性心ブロック、1型糖尿病、乾癬、アルツハイマー病、疲労、神経皮膚炎、腎疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON症候群)、アレルギー性喘息、不整脈、治療抵抗性高血圧症、2型糖尿病、血管性認知症、非シャーガス巨大結腸症、及び/又は起立性高血圧症を含む群から選択される。
【0070】
もう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、病理学的な心臓の異常、特に拡張型心筋症、及び/又は心筋炎に罹患している。
【0071】
本発明のもう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、糖尿病若しくは化学療法薬により冒された神経、外傷、外科的処置、関節炎、AIDS、熱傷、脳疾患若しくは腰椎疾患、線維筋痛症、虚血後疼痛、腫瘍、ウイルス性神経痛、反射交感神経ジストロフィー症候群、幻想肢痛及び切断後疼痛、帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群、又は中枢性疼痛症候群に起因する神経因性疼痛を患っている。
【0072】
本発明のもう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、又は若年性関節炎等の炎症障害を患っている。本発明のもう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔疾患、気管支炎、結核、急性膵炎、敗血症、感染性疾患、月経痙攣、早期分娩、腱炎、滑液嚢炎、皮膚関連状態、例えば乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、皮膚炎、接触性皮膚炎、及び熱傷、又は白内障手術及び屈折矯正手術等の眼科手術を含む術後炎症、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、1型糖尿病、重症筋無力症を含む神経筋接合部疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏症、損傷後に生ずる腫脹、心筋虚血、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、全身性炎症反応症候群(SIRS)、癌関連炎症、腫瘍関連血管新生の低下、エンドトキシンショック症候群、アテローム性動脈硬化症、眼性疾患、例えば網膜炎、網膜症、ぶどう膜炎、眼の羞明 、又は眼組織への急性損傷、肺炎症、例えばウイルス感染症若しくは嚢胞性線維症に関連するような肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、又は急性呼吸窮迫症候群、組織拒絶反応、移植片対宿主病、遅延型過敏症、並びにアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症等の中枢神経系疾患の免疫媒介性要素及び炎症性要素に関連した炎症を患っている。
【0073】
本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、上記被験体は、腫瘍/癌を患っており、好ましくは上記腫瘍/癌は、乳癌、子宮頸部扁平上皮癌、胃癌、神経膠腫、肝細胞癌、肺癌、メラノーマ、前立腺癌、再発性神経膠芽腫、再発性非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌からなる群から選択される。
【0074】
本発明のもう1つのより好ましい実施形態においては、上記被験体は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫(小児小脳又は大脳)、基底細胞癌腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視路神経膠腫、及び視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、胃腸)、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫(原発性)、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖障害、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍のユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児)、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌(眼内メラノーマ、網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、胃癌(gastric (stomach) cancer)、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、胚細胞腫瘍(小児頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(成人、小児脳幹、小児大脳星細胞腫、小児視路、及び視床下部)、胃カルチノイド、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部神経膠腫及び視路神経膠腫(小児)、眼内メラノーマ、島細胞癌、カポジ肉腫、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、ヘアリー細胞)、口唇癌、肝臓癌(原発性)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系)、マクログロブリン血症(ワルデンシュトレーム)、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽細胞腫(小児)、メラノーマ、眼内メラノーマ、メルケル細胞癌腫、中皮腫(成人悪性、小児)、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌、口癌、多発性内分泌腫瘍症(小児)、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(慢性)、骨髄性白血病(成人急性、小児急性)、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害(慢性)、鼻腔癌及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌(表面上皮-間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵臓癌(島細胞)、副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌腫(腎臓癌)、腎盂及び尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(小児)、唾液腺癌、肉腫(ユーイングファミリー腫瘍、カポジ、軟組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚癌(非メラノーマ、メラノーマ)、皮膚癌腫(メルケル細胞)、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮性癌腫、原発不明扁平上皮性頸部癌(転移性)、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、T細胞リンパ腫(皮膚)、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫(小児)、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、甲状腺癌(小児)、腎盂及び尿管移行上皮癌、栄養膜腫瘍(妊娠性)、未知の原発性部位(成人、小児)、尿管及び腎盂移行上皮癌、尿道癌、子宮癌(子宮内膜)、子宮肉腫、膣癌、視路神経膠腫及び視床下部神経膠腫(小児)、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍(小児)を患っている。
【0075】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、TLR9受容体に対して拮抗作用をもたらす本明細書に規定されるアプタマー配列は、シトシンヌクレオチドを含まない。TLR9に対して拮抗作用を有する配列を含む配列が、シトシンヌクレオチドを含む更なるヌクレオチド配列を含み得ることは明らかである。
【0076】
本発明のより好ましい実施形態においては、本明細書に開示及び記載された本発明のアプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む。もう1つのより好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)を有し、特に上記アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTGG)のみからなる。
【0077】
1つの好ましい実施形態においては、本明細書に開示及び記載された本発明のアプタマーは、配列番号5の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTG)を有し、好ましくは、上記アプタマーは、配列番号5の核酸配列(GGTTGGTGTGGTTG)のみからなる。
【0078】
2つの配列間の同一性のパーセントの決定は、本発明によればKarlin及びAltschulの数理アルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 5873-5877)を使用することにより達成される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら(J. Mol. Biol. (1990) 215: 403-410)のBLASTN及びBLASTPプログラムの原理である。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラムで行われる。比較する目的でギャップ付きアライメントを得るために、ギャップ付きBLASTが、Altschulら(Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389-3402)により記載されるように利用される。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合に、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメーターが使用される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に開示される個々のアプタマー配列と少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、更により好ましくは少なくとも95%同一である核酸配列のみからなる、又は該核酸配列を含むアプタマー配列は、本発明の一部をなす。
【0080】
本発明の目的上、用語「アプタマー」は、標的分子に特異的にかつ高い親和性で結合するオリゴヌクレオチドを指す。規定の条件下で、アプタマーは、特定の3次元構造へと折り畳まれ得る。本発明の1つの好ましい実施形態においては、特許請求の範囲に記載されるアプタマーは、標的受容体、より好ましくはTLR9受容体と特異的にかつ高い親和性で相互作用する。
【0081】
好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、複数のオリゴヌクレオチドと該複数のオリゴヌクレオチドに結合された複数のG4構造を形成する核酸との、最低でも2つの構成要素から構成されるナノ構造物の一部を形成せず、より好ましくは本発明のアプタマーは、最低でも2つの成分から構成されるナノ構造物の一部を形成しない。この好ましい実施形態の範囲内では、上記2つの構成要素は、好ましくは構造的に異なっている。さらに、この好ましい実施形態の範囲内では、この実施形態において放棄されたナノ構造物の範囲内の上記複数のオリゴヌクレオチドと該複数のオリゴヌクレオチドに結合された複数のG4構造を形成する核酸との間の結合は、共有結合又は非共有結合のいずれかであり、その際、該非共有結合は、より好ましくは、静電的相互作用、ファンデルワールス力、π効果、又は疎水的効果の1つ以上を基礎とする。
【0082】
もう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、それぞれのヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合ではない複数のオリゴヌクレオチドと、該複数のオリゴヌクレオチドに結合されたTAGGGTTではない複数のG4構造を形成する核酸と、該G4構造を形成する核酸に結合された複数のG4構造を安定化するドメインとを含み、上記オリゴヌクレオチドと、上記G4構造を形成する核酸と、上記G4構造を安定化するドメインとが複数のG4構造を形成する、安定な自己組織化する核酸ナノ構造物の一部を形成しない。
【0083】
もう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、複数のオリゴヌクレオチドと、該複数のオリゴヌクレオチドに結合されたTAGGGTTではない複数のG4構造を形成する核酸と、該G4構造を形成する核酸に結合された複数のG4構造を安定化するドメインとを含み、上記G4構造を形成する核酸の少なくとも1つがGG、GGG、又はGGGGを含むと共に上記オリゴヌクレオチドがCpGオリゴヌクレオチドである場合に、脂質はジアシル脂質ではなく、上記オリゴヌクレオチドと上記G4構造を形成する核酸と上記G4構造を安定化するドメインとが複数のG4構造を形成する、安定な自己組織化する核酸ナノ構造物の一部を形成しない。
【0084】
更にもう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、該本発明のアプタマーに結合されたG4構造を安定化するドメインを有する核酸ナノ構造物の一部を形成しない。
【0085】
本発明のアプタマーは、核酸分子、つまりヌクレオチドの配列を含む、又は該配列のみからなる。好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、本明細書に規定されるヌクレオチド配列のみからなる。
【0086】
本発明のアプタマーは、好ましくは非修飾及び/又は修飾されたD-ヌクレオチド及び/又はL-ヌクレオチドを含む。核酸塩基の一般的な一文字表記によれば、ヌクレオチド配列がDNA配列であれば、「C」はシトシンを表し、「A」はアデニンを表し、「G」はグアニンを表し、そして「T」はチミンを表し、そしてヌクレオチド配列がRNA配列であれば、「T」はウラシルヌクレオチドを表す。以下でそれに反することが示されない限り、用語「ヌクレオチド」は、リボヌクレオチド及びデスオキシリボヌクレオチドを指すものとする。
【0087】
本発明のアプタマーは、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列を含み、又はそれらの配列からなり、したがってそれぞれDNAアプタマー又はRNAアプタマーと呼ばれ得る。本発明のアプタマーがRNAヌクレオチド配列を含む場合に、本発明全体を通じて指定された配列モチーフ内で、「T」はウラシルを表すと解される。
【0088】
本発明全体を通じて簡潔にする目的で、明示的なDNAヌクレオチド配列についてのみ述べられる。しかしながら、それぞれのRNAヌクレオチド配列も本発明により包含されると解される。
【0089】
1つの実施形態によれば、DNAアプタマーの使用が好ましい。DNAアプタマーは通常、血漿中でRNAアプタマーよりも安定である。しかしながら、代替的な実施形態によれば、RNAアプタマーが好ましい。もう1つの実施形態によれば、一本鎖ヌクレオチド配列が好ましい。もう1つの代替的な実施形態によれば、二本鎖ヌクレオチド配列が好ましい。
【0090】
本発明のアプタマーは、2’-修飾ヌクレオチド、例えば2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、及び/又は2’-アミノ修飾ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含み得る。本発明のアプタマーはまた、デスオキシリボヌクレオチド、修飾デスオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又は修飾リボヌクレオチドの混合物を含み得る。用語「2’-フルオロ修飾ヌクレオチド」、「2’-メトキシ修飾ヌクレオチド」、「2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド」、及び/又は「2-アミノ修飾ヌクレオチド」はそれぞれ、修飾リボヌクレオチド、及び修飾デスオキシリボヌクレオチドを指す。
【0091】
本発明のアプタマーは修飾を含み得る。そのような修飾は、例えば少なくとも1つのヌクレオチドのアルキル化、すなわちメチル化、アリール化、若しくはアセチル化、エナンチオマーの包有、及び/又はアプタマーと1つ以上のその他のヌクレオチド若しくは核酸配列との融合を含む。そのような修飾は、例えば5’-PEG修飾及び/又は3’-PEG修飾、又は5’-CAP修飾及び/又は3’-CAP修飾を含み得る。代替的に又は付加的に、本発明のアプタマーは、修飾ヌクレオチド、好ましくはロックド核酸、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド、及び/又は2’-アミノ修飾ヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0092】
ロックド核酸(LNA)は、それぞれのRNAヌクレオチドの立体配座が固定された類似体を表す。ロックド核酸のオリゴヌクレオチドは、1つ以上の二環式リボヌクレオシドを含み、その2’-OH基は、C-炭素原子とメチレン基を介して連結されている。ロックド核酸は、それぞれの非修飾RNAアプタマー相当物と比べて改善されたヌクレアーゼに対する安定性を示す。またハイブリダイゼーション特性も改善され、それによりアプタマーの親和性及び特異性の向上が可能となる。
【0093】
もう1つの好ましい修飾は、アプタマーの3’-末端及び/又は5’-末端への、いわゆる3’-CAP構造、5’-CAP構造、及び/又は修飾グアノシンヌクレオチド(例えば、7-メチル-グアノシン)の付加である。3’-末端及び/又は5’-末端のそのような修飾は、アプタマーがヌクレアーゼによる迅速な分解から保護されるという効果を有する。
【0094】
代替的に又は付加的に、本発明のアプタマーは、ペグ化された3’-末端又は5’-末端を示し得る。3’-PEG修飾又は5’-PEG修飾は、少なくとも1個のポリエチレングリコール(PEG)単位の付加を含み、好ましくは、該PEG基は、1個~900個のエチレン基、より好ましくは1個~450個のエチレン基を有する。好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、HO-(CHCHO)-H(式中、nは1~900の整数であり、好ましくは、nは1~450の整数である)を有する線状PEG単位を有する。
【0095】
本発明のアプタマーは、全体的に又は部分的にペプチド核酸(PNA)として構成され得る。本発明によるアプタマーはさらに、Keefe AD et al., Nat Rev Drug Discov. 2010 Jul;9(7):537-50、又はMayer G, Angew Chem Int Ed Engl. 2009;48(15):2672-89、又はMayer, G. and Famulok M., Pharmazie in unserer Zeit 2007; 36: 432-436に記載されるように修飾され得る。
【0096】
用語「オリゴヌクレオチド」は概して、複数の結合されたヌクレオシド単位を含むポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNA又はcDNAを含む既存の核酸源から得ることができるが、好ましくは合成法により製造される。好ましい実施形態においては、それぞれのヌクレオシド単位は、野生型オリゴヌクレオチドと比べて、限定されるものではないが、修飾ヌクレオシド塩基及び/又は修飾糖単位を含む様々な化学修飾及び置換基を含み得る。
【0097】
化学修飾の例は、当業者に既知であり、例えばUhlmann, E. et al. (1990) Chem. Rev. 90:543、"Protocols for Oligonucleotides and Analogs" Synthesis and Properties & Synthesis and Analytical Techniques, S. Agrawal, Ed, Humana Press, Totowa, USA 1993、及びHunziker, J. et al. (1995) Mod. Syn. Methods 7:331-417、及びCrooke, S. et al. (1996) Ann. Rev. Pharm. Tox. 36:107-129に記載されている。
【0098】
上記ヌクレオシド残基は、とりわけオリゴヌクレオチドの、例えばヌクレアーゼによる酵素的分解に対する安定性を改善するために、数多くの既知のヌクレオシド間結合のいずれかにより互いに結合され得る。そのようなヌクレオシド間結合としては、限定されるものではないが、ホスホジエステル型、ホスホロチオエート型、ホスホロジチオエート型、アルキルホスホネート型、アルキルホスホノチオエート型、ホスホトリエステル型、ホスホロアミデート型、シロキサン型、カーボネート型、カルボアルコキシ型、アセトアミデート型、カルバメート型、モルホリノ型、ボラノ型、チオエーテル型、架橋ホスホロアミデート型、架橋メチレンホスホネート型、架橋ホスホロチオエート型、及びスルホン型のヌクレオシド間結合が挙げられる。
【0099】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、1つ以上の立体特異的なヌクレオシド間結合(例えば、(Rr)-又は(Sr)-ホスホロチオエート型、アルキルホスホネート型、又はホスホトリエステル型の結合)を有するポリヌクレオシドも含む。本明細書で使用される場合に、用語「オリゴヌクレオチド」及び「ジヌクレオチド」は表現上、結合がリン酸基を含むか否かにかかわらず、任意のそのようなヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオシド及びジヌクレオシドを含むと解釈される。或る特定の好ましい実施形態においては、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル型、ホスホロチオエート型、若しくはホスホロジチオエート型の結合、又はそれらの組み合わせであり得て、より好ましくは、上記ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである。
【0100】
さらに、上記アプタマーは、それらの構造的完全性を保護するためだけでなく、それらを細胞内に送達するのを促進するために、適切なビヒクル中にカプセル化され得る。好ましいビヒクルには、リポソーム、脂質ベシクル、マイクロ粒子等が含まれる。
【0101】
脂質ベシクルは形質膜に似ており、それらを細胞膜と融合させることができる。殆どのリポソーム及び多重膜ベシクルは、主としてベシクルの曲率半径の貯蔵エネルギーが最小であるため容易に膜融合しない。好ましい脂質ベシクルには、小単層ベシクルが含まれる。本発明のアプタマーをカプセル化するために考えられる小単層ベシクルは、非常にきつい曲率半径を有するため、非常に膜融合性である。小単層ベシクルの平均直径は、5nm~500nm、好ましくは10nm~100nm、より好ましくは40nmを含む20nm~60nmである。このサイズは、ベシクルが内皮細胞間の間隙を通過することを可能にし、それにより静脈内投与後にアプタマー含有ベシクルの全身送達が可能となる。有用なベシクルは、サイズの点で大きな幅を有し得て、アプタマーに関する具体的な用途に従って選択される。
【0102】
小単層ベシクルは、in vitroで当該技術分野において利用可能な方法(例えば、国際公開第2005/037323号に開示される)を用いて容易に製造され得る。該ベシクルを形成するための組成物は、安定なベシクル形成物質であるリン脂質を、好ましくは別の極性脂質、並びに任意選択で1種以上の更なる極性脂質及び/又はラフト形成物質と一緒に含有する。安定なベシクル形成物質である好ましいリン脂質としては、1-パルミトイル-2-ドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが挙げられる。好ましい極性脂質としては、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-l-セリン]、典型的なスフィンゴミエリン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、及び1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが挙げられる。
【0103】
その他の好ましい極性脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、混合鎖ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノール、及びドコサヘキサエン酸を有するリン脂質が挙げられる。好ましいラフト形成物質の1つの例は、コレステロールである。
【0104】
上述の様式の1つにより本発明のアプタマーを修飾する1つの利点は、そのアプタマーが使用される環境に存在する、例えばヌクレアーゼのような有害な影響に対して、該アプタマーが安定化され得ることである。上記修飾はまた、アプタマーの薬理学的特性を適合させるためにも適している。上記修飾は、好ましくはアプタマーの親和性又は特異性を変更しない。
【0105】
本発明のアプタマーを、担体分子及び/又はレポーター分子にコンジュゲートすることもできる。担体分子は、アプタマーにコンジュゲートされた場合に、例えば安定性を向上させる及び/又は排出速度に影響を及ぼすことによりコンジュゲートされたアプタマーのヒト血漿における血漿内半減期を延長するような分子を含む。適切な担体分子の1つの例は、PEGである。
【0106】
レポーター分子は、コンジュゲートされたアプタマーの検出を可能にする分子を含む。そのようなレポーター分子の例は、GFP、ビオチン、コレステロール、色素、例えば蛍光色素のような色素、電気化学的に活性なレポーター分子、及び/又は放射性残基、特にPET(陽電子放出断層撮影)検出のために適した放射性核種、例えば18F、11C、13N、15O、82Rb、若しくは68Gaのような放射性核種を含む化合物である。当業者は、適切な担体分子及びレポーター分子、並びに該分子を本発明のアプタマーにコンジュゲートさせる方法を熟知している。
【0107】
本発明のアプタマーは、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制することにより或る特定の疾患を治療するために有用である。本発明の文脈においては、上記アプタマーは、ヒト被験体だけでなく動物被験体にも有用であると考えられる。1つの実施形態によれば、上記アプタマーは、ヒト被験体において使用される。もう1つの実施形態によれば、上記アプタマーは、動物被験体において使用される。
【0108】
TLR9の活性化の阻害又は抑制が有効であり得る疾患は、TLR9活性化が、そのようなTLR9活性化を示す被験体において不所望な症状又は結果をもたらすような疾患である。好ましい実施形態によれば、上記障害及び/又は上記疾患は、治療されるべき被験体におけるTLR9活性化により引き起こされる。特に好ましい実施形態によれば、上記障害及び/又は上記疾患は、Gタンパク質共役型受容体に対する自己抗体に対して治療された被験体におけるTLR9活性化により引き起こされる。
【0109】
幾つかの疾患はTLR9活性化と関連していることが文献において既に報告されており、又は知られている。本発明者らは、そのような関連性の点で更なる調査を行ったところ、今までに報告されたよりも多くの疾患が、そのようなTLR9活性化又はTLR9過剰活性化と関連し得ることを発見した(データは示していない)。
【0110】
特許請求の範囲に記載されるアプタマーのTLR9に対する親和性、及び該アプタマーのTLR9に対する拮抗作用のため、TLR9の活性化又は過剰活性化と関連するいかなる疾患も、本明細書に示されると共に特許請求の範囲に記載されるアプタマーにより効果的に治療されると考えられる。したがって原則的に、TLR9(過剰)活性化と関連すると認識されている全ての疾患は、本発明によるアプタマーにより治療されるべき有望な標的疾患である。
【0111】
本発明のアプタマーは、TLR9受容体に対する作用、好ましくは該受容体に対する拮抗作用を引き起こすことが可能である。したがって好ましい実施形態においては、特許請求の範囲に記載されるアプタマーは、TLR9アンタゴニストとして作用する。好ましくは、特許請求の範囲に記載されるアプタマーは、TLR9活性化を阻害又は抑制することが可能である。1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、TLR7受容体に対して作用を示さず、より好ましくは本発明のアプタマーは、あらゆる他のTLR受容体分子に対して作用を示さない。異なる好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーはまた、TLR7受容体に対しても作用を示す。
【0112】
TLR9受容体の病理学的又は不所望な活性化又は過剰活性化を阻害することにより、TLR9活性化の潜在的に不利な効果は中和及び低減され、TLR9の永続的又は一時的な活性化を無くすことができるか、又は通常の水準にまで減らすことができる。結果として、TLR9活性化により引き起こされる又はTLR9活性化と関連する疾患の程度及び重さは大幅に軽減され得る。したがって、本発明は、TLR9活性化又は過剰活性化と関連する疾患の治療において使用するために適しているアプタマーを提供する。
【0113】
本発明のもう1つの実施形態によれば、TLR9を発現する細胞とアプタマーとを接触させることを含む、細胞におけるTLR9の活性化を阻害又は抑制する方法が提供される。
【0114】
本発明の好ましい実施形態においては、上記方法は、in vitro/ex vivoで行われる。より好ましくは、本発明の方法によるアプタマーと接触させられるべき細胞は、生きている生物全体の一部をなすものではない。1つの実施形態においては、接触させられるべき細胞は、細胞培養において培養され得る。個々の細胞又は細胞群のそのような培養は、当該技術分野において通常行われるように実施され得る。
【0115】
本発明の方法のもう1つの好ましい実施形態においては、上記方法は、in vivoで、及び/又は生きている生物全体の一部をなす細胞において実施され得る。この実施形態によれば、上記方法は、好ましくは、TLR9活性化のために接触させられるべき1個以上の細胞を試験する更なる先行工程を含み、より好ましくは上記1個以上の細胞は、TLR9過剰発現及び/又はTLR9媒介性シグナル伝達の過剰活性について試験される。
【0116】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態においては、上記細胞は哺乳動物細胞であり、好ましくは、上記細胞はヒト細胞である。
【0117】
本発明はまた、本発明の少なくとも1種のアプタマー、及び任意選択で少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、本発明の1種のアプタマー又は本発明の複数の異なるアプタマーの混合物と1種の薬学的に許容可能な賦形剤、例えば適切な担体又は希釈剤のような薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0118】
好ましくは、本発明のアプタマーは、上記医薬組成物の有効成分をなす、及び/又は有効量で存在する。用語「有効量」は、疾患又は病態に対して予防的、診断的、又は治療的に意義のある効果を有する本発明のアプタマーの量を示す。予防的効果は、疾患の発病を防止する。治療的に意義のある効果は、疾患の1つ以上の症状を或る程度まで軽減する、又は疾患若しくは病態と関連する若しくはそれらの原因となる1つ以上の生理学的パラメーター若しくは生化学的パラメーターを部分的に若しくは完全に通常に戻す。
【0119】
本発明のアプタマーを投与するためのそれぞれの量は、所望の予防的効果、診断的効果、又は治療的効果を達成するのに十分に高い。当業者によれば、任意の特定の哺乳動物への投与の具体的な用量レベル、頻度、及び期間は、使用される具体的な成分の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食生活、投与時間、投与経路、薬物の組み合わせ、及び具体的療法の強度を含む多種多様な要因に依存するものと理解されるであろう。よく知られた手段及び方法を用いて、当業者によれば通常の実験事項として正確な量を決定することができる。
【0120】
本発明の医薬組成物の1つの実施形態によれば、アプタマーの全含量の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%は、本発明のアプタマーで構成されている。
【0121】
治療のために使用される場合に、上記医薬組成物は一般的に、1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせた製剤として投与されることとなる。用語「賦形剤」は、本明細書では本発明のアプタマー以外のあらゆる成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、大体において特定の投与様式に依存することとなる。賦形剤は、適切な担体及び/又は希釈剤であり得る。
【0122】
本発明の医薬組成物は経口投与され得る。経口投与は、該組成物が胃腸管に入るように飲み込みを必要とし得る、又は該組成物が口から直接的に血流に入る頬側投与若しくは舌下投与が使用され得る。
【0123】
経口投与のために適切な製剤には、固形製剤、例えば錠剤、被覆錠剤、粒状物、液体、又は粉体を収容するカプセル剤、ロゼンジ剤(液体充填型を含む)、及び咀嚼剤、多粒子剤及びナノ粒子剤、ゲル剤、固溶体剤、リポソーム剤、フィルム剤、卵形剤(ovules)、スプレー剤、並びに液体製剤が含まれる。
【0124】
液体製剤には、懸濁液剤、液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が含まれる。そのような製剤は、軟質カプセル又は硬質カプセル中の充填物として使用され得て、一般的に担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適切なオイル、並びに1種以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含み得る。また液体製剤は、固体の再構成によって、例えばサシェ剤から調製され得る。
【0125】
錠剤剤形の場合には、用量に応じて、本発明のアプタマーは、該剤形の0.1重量%~80重量%、より一般的には該剤形の5重量%~60重量%を構成し得る。本発明のアプタマーに加えて、錠剤は一般的に崩壊剤を含有する。
【0126】
崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファー化デンプン、及びアルギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0127】
一般的に、上記崩壊剤は、上記剤形の1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%をなすこととなる。
【0128】
錠剤は、例えば結合剤、界面活性剤、滑沢剤のような更なる賦形剤、及び/又は例えば酸化防止剤、着色剤、フレーバリング剤、保存剤、及び/又は矯味剤のようなその他の考えられる成分を含み得る。
【0129】
錠剤配合物を、直接的に又はローラーによって圧縮することで錠剤が形成され得る。錠剤配合物、又は配合物の一部は代替的には、打錠の前に、湿式造粒、乾式造粒、若しくは溶融造粒され、溶融凝固され、又は押出され得る。最終的な製剤は、1つ以上の層を含み得て、被覆又は未被覆であり得て、それは更にカプセル化され得る。
【0130】
経口投与のための固形製剤は、速放性製剤及び/又は放出調節製剤となるように製剤化され得る。放出調節製剤には、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス薬物放出製剤、制御放出製剤、標的化放出製剤、及びプログラム放出製剤が含まれる。
【0131】
本発明の医薬組成物はまた、血流中、筋内、又は内臓中にも直接投与され得る。非経口投与のために適切な手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋内、及び皮下が含まれる。非経口投与のために適切な装置には、有針(マイクロニードルを含む)注射器、無針注射器、及び輸液技術が含まれる。
【0132】
非経口製剤は、一般的に塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは3~9のpHへの)等の賦形剤を含有し得る水溶液であるが、幾つかの用途のためには、非経口製剤は、滅菌非水性溶液として、又は滅菌パイロジェンフリー水等の適切なビヒクルと一緒に使用されるべき乾燥形としてより適切に製剤化され得る。
【0133】
滅菌条件下での、例えば凍結乾燥による非経口製剤の製造は、当業者によく知られた標準的な製薬技術を使用して容易に達成され得る。
【0134】
非経口液剤の製造において使用される本発明の医薬組成物の溶解性は、溶解性向上剤の導入等の適切な製剤化技術の使用により高められ得る。
【0135】
非経口投与のための製剤は、速放性製剤及び/又は放出調節製剤となるように製剤化され得る。放出調節製剤には、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス薬物放出製剤、制御放出製剤、標的化放出製剤、及びプログラム放出製剤が含まれる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の放出調節をもたらす埋め込みデポー剤として投与するために固体、半固体、又はチキソトロピー液体として製剤化され得る。そのような製剤の例としては、薬物被覆ステント、及びポリ(dl-乳酸-co-グリコール酸)(PGLA)マイクロスフェアが挙げられる。
【0136】
本発明の医薬組成物はまた、皮膚又は粘膜に局所的に投与され、すなわち皮膚投与又は経皮投与され得る。この目的のために典型的な製剤としては、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、ドレッシング、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウェハ剤、インプラント、スポンジ、繊維、包帯、及びマイクロエマルジョン剤が挙げられる。
【0137】
リポソームも使用され得る。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤が導入され得る。局所投与のその他の手段としては、エレクトロポレーション、イオントフォレシス、フォノフォレシス、ソノフォレシス、及びマイクロニードル注射又は無針注射(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)等)による送達が挙げられる。局所投与のための製剤は、速放性製剤及び/又は放出調節製剤となるように製剤化され得る。放出調節製剤には、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス薬物放出製剤、制御放出製剤、標的化放出製剤、及びプログラム放出製剤が含まれる。
【0138】
ヒト患者への投与のためには、本発明のアプタマー及び/又は本発明の医薬組成物の総日用量は一般的に、当然ながら投与様式に応じて0.001mg~5000mgの範囲内である。例えば、静脈内の日用量は、0.001mg~40mgしか必要とし得ない。総日用量は、単回投与又は分割投与で投与され得て、医師の判断で本明細書に示される典型的な範囲から外れてもよい。
【0139】
これらの投薬量は、約75kg~80kgの体重を有する平均的なヒト被験体に基づいている。医師であれば、体重がこの範囲外である被験体、例えば小児及び高齢者のための用量を容易に決定し得るであろう。
【0140】
本発明の文脈においては、上記アプタマーは、好ましくは1種以上のワクチン、抗原、抗体、細胞毒性剤、アレルゲン、抗生物質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質、遺伝子療法ベクター、DNAワクチン、アジュバント、又はキナーゼ阻害薬との併用で投与され得る。
【0141】
本発明はまた、本発明のアプタマー、容器、並びに任意選択で使用のための指示書を、及び/又は投与のための手段と一緒に含むキットを包含する。
【0142】
疾患の治療及び/又は診断のためには、投与経路にかかわらず、本発明のアプタマーは、1治療サイクル当たり20mg/kg(体重)以下の、好ましくは10mg/kg(体重)以下の、より好ましくは1μg/kg(体重)~20mg/kg(体重)の範囲から選択される、最も好ましくは0.01mg/kg(体重)~10mg/kg(体重)の範囲から選択される日用量で投与される。
【0143】
本発明の好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、in vitro/ex vivoで使用され得る。代替的な好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、in vivoで使用され得る。
【0144】
本発明のアプタマーの製造又は大量生産は、当該技術分野においてよく知られており、単なる通常業務であるに過ぎない。
【0145】
本明細書に記載される本発明の全ての実施形態は、あらゆる組み合わせで、当業者がそのような組み合わせを何ら技術的な意味をなさないと考えない限りは組み合わせることができると見なされる。
【実施例
【0146】
TLR9受容体に対する本発明のアプタマーの拮抗作用の推定のための機能的アッセイ
TLR9に対するオリゴヌクレオチドの拮抗作用を突き止めることが可能な機能的アッセイを、TLR9活性化を阻害又は抑制する能力の推定のために確立した。
【0147】
この機能的アッセイは、組み換えHEK-293細胞系統と、確立されたTLR9アゴニスト/アンタゴニストアッセイ(InvivoGen社(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)製のHEK-Blue(商標)hTLR9)とを使用する。使用される細胞系統は、NFκB誘導性プロモーターによるシグナリングに際して分泌されるアルカリホスファターゼであるレポーター遺伝子に結合された機能的に過剰発現されるヒトTLR9受容体を保有する。TLR9活性化のしるしは、光学密度値(OD)の増加である。
【0148】
上記レポーター遺伝子を保有するが、TLR9受容体を保有しない組み換えHEK-293細胞は、コントロールとしての役割を果たす(InvivoGen社(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)製のHEK-Blue(商標)TNF-α細胞)。ここで該レポーター遺伝子は、TNFαを介して活性化される。このコントロール細胞を使用すると、作用がTLR9受容体に特異的であるかどうか、又は作用がシグナルカスケードとの干渉により引き起こされるかどうかを識別することができる。
【0149】
実施例1:
この実施例においては、配列番号1(GGTTGGTGTGGTTGG)のTLR9に対する阻害作用が試験される。HEK-Blue(商標)hTLR9細胞を、種々の濃度の配列番号1のアプタマー(0μM、0.37μM、1.1μM、3.3μM、10μM、及び20μMのアプタマー)と一緒に60分間にわたりプレインキュベートしてから、300ng/ml(38.86nM)のよく知られるTLR9アゴニストODN 2006(配列番号2:TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT)を添加し、細胞を更に18時間にわたりインキュベートした。引き続き、光学密度を、標準的なアルカリホスファターゼアッセイを使用して測定した。このアッセイの結果は、図1において灰色のカラムとして示される。TLR9に関するシグナルカスケードに対する配列番号1の潜在的な固有の効果も、アゴニストODN 2006の不存在下で試験され、それは図1において黒色のカラムとして示される。
【0150】
コントロールとして、上記のようにコントロールとしてHEK-Blue(商標)TNF-α細胞を使用した同じ実験構成を使用した。これらのTNF-α感受性細胞を、種々の濃度の配列番号1のアプタマー(0μM、0.37μM、1.1μM、3.3μM、10μM、及び20μMのアプタマー)と一緒に60分間にわたりプレインキュベートしてから、100ng/mlのTNF-α(17484ダルトンのMWを有する;TNF-αの最終濃度:5.7nM)及び細胞を更に18時間にわたりインキュベートした。引き続き、光学密度を測定した。このアッセイの結果は、図2において灰色のカラムとして示される。TNF-αに関するシグナルカスケードに対する配列番号1の潜在的な固有の効果も、刺激性分子TNF-αの不存在下で試験され、それは図2において黒色のカラムとして示される。
【0151】
これらの実験並びに図1及び図2に示される結果から、配列番号1(GGTTGGTGTGGTTGG)のアプタマーは、アゴニスト/アンタゴニストアッセイ又はレポーター発現に対して固有の効果又は非特異的な効果を有しないが、その代わりにTLR9活性化の明らかな阻害及び抑制を示すことを理解することができる。
【0152】
実施例2:
更なるコントロール実験として、上記の実施例1に記載されるアッセイを使用することで、種々のオリゴヌクレオチド配列の潜在的な阻害作用を測定した。このために、実施例1に説明されるようにコントロールを含む同じ実験を、比較のために配列番号1の代わりに配列番号3(TGGAGGTGGA)を使用して実施した。
【0153】
それぞれODN 2006で刺激されたHEK-Blue(商標)hTLR9細胞において配列番号3を用いて得られた結果は、図3に示されており、TNF-αで刺激されたHEK-Blue(商標)TNF-α細胞において配列番号3を用いて得られた結果は、図4に示されている。
【0154】
このコントロール実験の構成から、配列番号3の試験された10量体は、TLR9阻害作用を示さないが、むしろアゴニストODN 2006の不存在(図3中の黒色の棒を参照)又は存在(図3中の灰色の棒を参照)でのTLR9に対する独立した相加的な刺激作用を示すことを理解することができる。改めて、配列番号3のアプタマーではシグナルカスケードに対する影響は観察されない(図4を参照)。
【0155】
実施例3:
上記の実施例1及び実施例2で使用されるアッセイの値及び妥当性のためのコントロールとして、実施例1又は実施例2のアプタマーの代わりに、確立されたTLR9アンタゴニストCpG ODN TTAGGG(配列番号4:TTAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGG;7575DaのMW)を漸増濃度(0ng、30ng、100ng、300ng、1000ng、及び3000ngのTLR9アンタゴニスト;それぞれ0nM、3.96nM、13.2nM、39.6nM、132nM、及び396nMに相当する)で使用するアッセイのコントロールを、上記のように実施した。
【0156】
ODN 2006で刺激されたHEK-Blue(商標)hTLR9細胞においてコントロールアンタゴニストを用いて得られた結果は、図5に示されている。予想されるように、確立されたTLR9アンタゴニストは、TLR9活性化を阻害及び/又は抑制することができ(図5中の灰色の棒を参照)、TLR9アゴニストODN 2006の不存在下では大きな固有の効果をもたらさなかった(図5中の黒色の棒を参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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