(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/10 20060101AFI20220307BHJP
A41C 3/12 20060101ALI20220307BHJP
A41C 5/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
A41C3/10 A
A41C3/12 A
A41C5/00 B
(21)【出願番号】P 2020098536
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2020-06-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月13日~6月5日に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】510029689
【氏名又は名称】株式会社クライム
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】中村 功
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-183906(JP,A)
【文献】特開2015-166500(JP,A)
【文献】特開平11-350209(JP,A)
【文献】登録実用新案第3114959(JP,U)
【文献】特開2019-031760(JP,A)
【文献】特開2018-162541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/10
A41C 3/12
A41C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性用の衣類
を製造する方法であって、
乳房全体を包み込む隆起した形状を維持可能なフルカップ仕様の左右一対のカップと、これらカップの間に形成されたフロント部と、各カップの脇下にそれぞれ形成された脇下部とが一体的に連続しているモールドカップ部を、あらかじめ準備しておくモールドカップ部製造工程と、
丸編機によって製造された周方向に連続した筒状の編地からなり、他の生地と縫着された縫着ラインが存在しない本体部を編成する本体部編成工程と、
前記本体部の正面側の編地が前記モールドカップ部の上縁部の形状に沿うように前記本体部の編地を切断し、前記本体部にカット領域を設ける切断工程と、
前記本体部への前記モールドカップ部の取り付けは、前記本体部の前記カット領域に前記モールドカップ部の上縁部を縫着することのみによって行う縫着工程と、を有し、
前記モールドカップ部製造工程では、ポリウレタンフォームを熱プレス形成することで前記カップ、前記フロント部、前記脇下部を形成し、前記熱プレス形成時に前記フロント部は他の部位よりも圧力または温度を高く設定することで前記フロント部の伸縮性を他の部位よりも低くし、
前記縫着工程では、前記上縁部の生地端と前記カット領域の生地端を被包するマイクロテープを使用し、前記マイクロテープと共に前記上縁部と前記カット領域を複数本の縫い糸によって縫着する、衣類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばブラジャー、キャミソール、タンクトップ等の、乳房を被覆するカップを備えた女性用の衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
織地をベースとしたブラジャーは、例えばカップ部、フロント部、フロント脇部、バックベルト部の型を設計し、各部に適した材質の織地を選んで型に合わせて裁断し、裁断した各織地を縫合し、これにストラップ、アンダーベルト、アジャスター、ホック等を取付けて製造される。
【0003】
しかし、上記のようなブラジャーは、織地同士を縫い合わせた縫合部が多く存在するので、肌あたりが悪いという欠点が指摘されている。また、ブラジャーを外した後、肌に縫合部の跡が残りやすいという課題もある。
【0004】
そこで、複数の織地を縫い合わせるのではなく、例えば丸編機によって連続編成された基本的には周方向にシームレスな編地をベースとしたカップ付き衣類が提案されている(特許文献1、2)。
【0005】
例えば、特許文献1のトップ下着100は、丸編地からなり、
図12(a)に示すように、表地の裾口下端縁より折返して裏地を連続編成し、バストに対応する位置に一対の二重構造のカップ101を設けたものである。
【0006】
また、特許文献2には、成型編み機を使用した筒編みによる生地を連続的に製作し、その後、該筒編み生地を切り開き、不要な生地部分を切除するブラジャーの製造方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記した従来の女性用衣類は、編地をベースとしているものの、以下の課題が未解決であった。
先ず、特許文献1のトップ下着は、
図12(b)に示すように、カップの周縁の表地と裏地を縫着して袋部102を設け、この袋部102に円盤状のパッド103を挿入している。そのため、特許文献1のトップ下着100は、カップ101の周縁の少なくとも下側半分に袋部102を形成するための縫合部104が存在するので、この縫合部104によってゴワツキ感が生じていた。
【0008】
また、特許文献2のブラジャーは、一例として、筒編みによる編地からカップ相当部分を切除し、別生地により製作したカップ布を切除部分に縫合している。この場合、特許文献2のブラジャーは、カップの周縁の全周に亘ってカップ布を縫い合わせるための縫合部が存在することになり、この縫合部によって肌あたりが悪くなる。
【0009】
一般に、「織地」は、経糸と緯糸の2系列の糸を直角に交錯させて製造される生地であるのに対し、「編地」は、ループ(編環)の連綴によって製造される生地で、織地と比較すると生地自体の強度が低く、編地を構成する糸が一箇所でも切断されると、切断箇所から綻びが広がり易い。
【0010】
従来の女性用衣類には、上述の編地の弱点に関連した課題もある。すなわち、特許文献1ではカップの周縁の少なくとも下側半分に縫合部が存在し、特許文献2の一例ではカップの周縁の全周に亘って縫合部が存在するが、これらの位置にある縫合部は着用中の動作によって乳房が動いて負荷がかかるため、縫合部の編地にダメージが生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-193302号公報
【文献】特開2003-129305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、従来の女性用衣類は、編地をベースとするものであっても、カップの周縁の少なくとも下側半分にパッドを挿入する袋部を形成するための縫合部が存在し、あるいは、カップの周縁の全周に亘ってカップ布と縫い合わせるための縫合部が存在するために、いずれにしても柔らかな着用感が得られない点である。また、従来の女性用衣類は、着用中に上記縫合部に負荷がかかり易く、編地にダメージが生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題を解決し、柔らかな着用感が得られると共に、編地と縫着している部位に負荷がかかることもない衣類を提供することを目的とし、以下に列記する構成を主要な特徴点としている。
【0014】
第1発明は、
女性用の衣類であって、
隆起した形状を維持可能なカップを有し、前記カップで乳房を被覆するモールドカップ部と、
成型編み機による筒編みにより連続的に編成された編地からなる本体部と、
を備え、
前記本体部の編地は、前記モールドカップ部の上縁部の形状に沿うことができるように切断されたカット領域を有しており、前記上縁部と前記カット領域が縫着されている。
【0015】
第2発明は、第1発明において、前記上縁部の生地端と前記カット領域の生地端を被包するマイクロテープを更に備え、前記マイクロテープと共に、前記上縁部と前記カット領域が縫着されている。
【0016】
第3発明は、第1又は第2発明において、前記モールドカップ部の側縁部は、前記本体部と縫着しない構成としている。
【0017】
第4発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、前記モールドカップ部は、一対のカップと、これらカップの間に形成されたフロント部と、各カップの脇下にそれぞれ形成された脇下部を有し、前記フロント部は、前記脇下部よりも伸縮性が低くなる構成としている。
【0018】
ここで、本明細書において、上・下の方向は、本発明の衣類を立位状態の着用者に着用させた場合の姿勢を基準とし、着用者の頭部側を上とする。また、本明細書において、「女性用の衣類」とは、出生時の身体の性別が女性である人向けの衣類が含まれることは言うまでもないが、出生時の身体の性別は男性であるが女性の衣類を着用するLGBTの人向けに開発された衣類も含むものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、隆起した形状を維持可能なカップを有し、このカップで乳房を被覆するモールドカップ部を使用する。そして、成型編み機による筒編みにより連続的に編成された編地からなる本体部には、モールドカップ部の上縁部の形状に沿うことができるように切断されたカット領域を形成し、モールドカップ部の上縁部を、本体部のカット領域に縫着して取り付ける。
【0020】
そのため、本発明では、従来の編地をベースとした女性用衣類においてゴワツキ感の原因となっていた、カップの周縁の少なくとも下側半分もしくは全周に亘る縫合部は存在しない。本発明の新規な構成によれば、乳房を包むカップを有したモールドカップ部の上縁部と編地からなる本体部のカット領域が縫着されるので、肌あたりが良好になる。
【0021】
また、モールドカップ部と本体部が縫着されている部位は、それぞれの部材の上縁部同士であって、着用者が動作してもその影響を受けにくく負荷がかかりにくいため、本発明では、縫着部位の編地に綻びが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】モールドカップ部の成形過程を示す図で、(a)は熱プレス前の平板状のポリウレタンフォームを、(b)は熱プレスによってカップが形成された状態のポリウレタンフォームと切断予定線を示す図である。
【
図3】第1実施例の製造過程(成型編み機により連続的に編成された筒状の編地)を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図4】第1実施例の製造過程(筒状の編地をモールドカップ部の上縁部の形状に沿うように切断した状態)を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図5】第1実施例のブラジャーを裏返した状態で、モールドカップ部を取り付けた側から見た図である。
【
図7】第2実施例の製造過程(成型編み機により連続的に編成された筒状の編地)を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図8】第2実施例の製造過程(筒状の編地をモールドカップ部の上縁部の形状に沿うように切断した状態)を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図9】第2実施例のブラジャーを裏返した状態で、モールドカップ部を取り付けた側から見た図である。
【
図10】
図9のA-A’線における部分断面図である。
【
図12】袋部にパッドを挿入する従来のブラジャーを示す図であり、(a)は正面図、(b)はB-B’線における断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本発明、その適用物、その用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
本実施形態は、本発明の構成をブラジャーに適用したものである。本実施形態のブラジャー30,50の本体部31,51は、成型編み機の一種である丸編機を使用し、丸編機による筒編みにより連続的に編成された編地を用いる。一般に、成型編みは、製品の形に編んでいくことを意味する語であり、「成型編み機」は、成型編みによる製品を生産するための、目増し、目減らし、目移しの機能を持つ機械の総称である。
以下では、第1実施例のブラジャー30、第2実施例のブラジャー50の各構成について説明する前に、先ず、両実施例で共通して用いるモールドカップ部10について説明する。
【0025】
[モールドカップ部について]
モールドカップ部10の原材料は、所要の厚みを有した平板状のポリウレタンフォーム20である(
図1(a))。このポリウレタンフォーム20を、乳房の形状に合致する雄型及び雌型のモールドの間に配置する。そして、雄型及び雌型のモールドを閉じ合せてプレスし、所定時間経過後にモールドを開くと、ポリウレタンフォーム20上にカップ11a,11bが形成される(
図1(b))。カップ11(11a,11b)は、中央が隆起した椀形状であり、その隆起した形状を維持可能である。その後、切断予定線21に沿って切断し、不要部分を切除することにより、左右のカップ11a,11bを備えたモールドカップ部10を得る(
図2)。
【0026】
符号12aは本実施例におけるモールドカップ部10の上縁を示している。モールドカップ部10の上縁部12は、上縁12aから下向きに一定幅の範囲(例えば上縁12aから下向きに数ミリメートル、もしくは十数ミリメートルの範囲)の部位である。
【0027】
ポリウレタンフォーム20にカップ11を形成する手段としては、例えば、熱プレス成形、真空成形、コールド成形、インジェクション成形を用いることができるが、本実施例では、熱プレス成形を用いた。熱プレスの実施条件の一例は、ポリウレタンフォーム1枚当たり圧力6.2Kg、温度190度、時間160秒である。
【0028】
カップ11は、フルカップ仕様とし、乳房全体をしっかり包み込んで安定させる形状とすることが望ましい。また、カップ11の厚みは、例えばカップ下側の周縁付近において厚みを増すなど、必要に応じて厚みを変化させても良い。
【0029】
ポリウレタンフォーム20は、伸縮性に富む、軟質ポリウレタンフォームを使用することが望ましい。モールドカップ部10の柔軟性が向上し、乳房との密着性が高くなる。また、モールドカップ部10の表裏面はメッシュ状に加工することが望ましい。メッシュ部分から汗を吸収して熱を放出しやすくなり、通気性が良好となって蒸れを防ぐことができる。
【0030】
本実施形態のモールドカップ部10は、
図2に示すように、左右のカップ11a,11bが分離しておらず、フロント部13を介して連続しているため、着用中に左右のカップ11a,11bの位置がずれるのを防止できる。
【0031】
更に、モールドカップ部10は、一対のカップ11a,11bと、このカップ11a,11bの間に形成されたフロント部13と、各カップ11a,11bの脇下にそれぞれ形成された脇下部14を有するところ、フロント部13は、脇下部14よりも伸縮性を低くすることが好ましい。
【0032】
フロント部13の伸縮性を低くする方が良い理由は、着用中の動作によって乳房が動くところ、胸のシルエットを美しく見せるためには、カップ11a,11bは、できるだけ左右方向に開かない方が良いからである。例えばフロント部13のみ、熱プレスの圧力または温度を部分的に高くするなど、熱プレス成形の条件を強く設定することで、フロント部13の伸縮性を、他の部位よりも低く設定できる。
【0033】
[第1実施例]
1.本体部について
第1実施例のブラジャー30の本体部31の編地は、丸編機によって編成される。丸編機は、例えば針釜と呼ばれる円筒状のシリンダーの円周上に一定数の編針が植え込まれており、シリンダーを回転させながら編針に上下運動を与え、編目を構成していく編み機の総称である。なお、カムと呼ばれる針に上下動を与える装置の方を回転させ、シリンダーは固定されているタイプの丸編機もある。
【0034】
丸編機は、あらかじめプログラミングしておくことにより、所望のレイアウトで編組織を切り替えながら編むことができる。ブラジャー30の場合、
図3に示すように、本体部31として使用する部分の編組織はリブ編32とし、本体部31として使用しない切除部分の編組織は平編33としている。そして、リブ編32の領域と平編33の領域の境界のうち正面側の境界をカット線34a,背面側の境界をカット線34bとして、これらカット線34a,34bに沿って筒状の編地を全周に亘ってカットし、本体部31の編地を得る(
図4)。
【0035】
ここで本発明において重要な点は、丸編機に対し、カット線34a,34bのレイアウトをプログラミングする際に、モールドカップ部10を取り付ける本体部31の正面側のカット線34aについては、モールドカップ部10の上縁12aの外形線と一致させておくことである。このようにすることで、カット後の本体部31の編地の正面側には、先に説明したモールドカップ部10の上縁部12の形状に沿うことができるように切断されたカット領域34を設けることができる。カット領域34は、正面側のカット線34aから下向きに一定幅の範囲(例えばカット線34aから下向きに数ミリメートル、もしくは十数ミリメートルの範囲)の領域である。
【0036】
2.本体部とモールドカップ部の縫着
図5に示すように、本体部31の正面側の編地の裏側に、モールドカップ部10を縫着して取り付ける。この縫着は、モールドカップ部10の上縁部12と、本体部31のカット領域34を、1本または複数本の縫い糸で縫い合わせることにより行う。
図5では、符号35の太い点線が、モールドカップ部10の上縁部12と本体部31のカット領域34の縫着ライン示している。
【0037】
ブラジャー30では、モールドカップ部10を本体部31に縫着する際、レース36を併せて縫合することにより装飾性を高めている。また、モールドカップ部10の下端は、モールドカップ部10を本体部31に縫着する前に、あらかじめパイピングテープ15を取り付けている。
【0038】
ストラップ37は、ブラジャー30を肩から吊るすために用いる吊りひもである。ストラップ37は、カップ11a,11bの上方に接続されると共に、着用者の肩を超えて本体部31の編地の背面側と接続される。ストラップ37は、肩の稜線からカップ11a,11bを引き上げることにより、バスト位置を高く維持する。
【0039】
ブラジャー30では、モールドカップ部10の上縁部12と、本体部31のカット領域34を縫着している。着用者の乳房は、ポリウレタンフォームからなるモールドカップ部10のカップ11a,11bに包まれており、カップの下側半分もしくは全周に縫着部位は存在しないので、肌あたりが良好になる。
【0040】
加えて、ブラジャー30では、着用者が動作して乳房が動いても乳房の上側に位置する縫着部位には影響が少なく負荷がかかりにくい。従って、本体部31の縫着ライン35の周辺の編地に綻び生じることもない。
【0041】
なお、第1実施例のブラジャー30については、モールドカップ部10の上縁部12との縫着ライン35とは別に、モールドカップ部10の側縁部16における第2縫着ライン38も補助的に存在する。その理由は、第1実施例のブラジャー30は、
図6に示すように全体がリブ編32で編成されており、本体部31の生地が良く伸びるので、取り付けたモールドカップ部10を安定させる必要上、側縁部16についても補助的に縫着しているのである。
【0042】
[第2実施例]
第2実施例のブラジャー50の製法並びに構成は、第1実施例と基本的には同じであるので、以下の説明では、第1実施例と異なる点を中心に説明する。
【0043】
1.本体部について
ブラジャー50の場合、
図7に示すように、本体部51として使用する領域と使用しない領域の編組織は同じであり、いずれも天竺編52,53としている。そして、両領域の境界のうち正面側の境界をカット線54a,背面側の境界をカット線54bとし、これらカット線54a,54bに沿って筒状の編地を全周に亘ってカットし、本体部51の編地を得る(
図8)。
【0044】
カット後の本体部51の編地の正面側に、モールドカップ部10の上縁部の形状に沿うことができるように切断されたカット領域54が存在する点、及び、このカット領域54を設けるために丸編機にモールドカップ部10の上縁12aの外形線と一致したカット線54aの形状をあらかじめプログラミングしておく点は、第1実施例と同じである。第2実施例においても、カット領域54は、正面側のカット線54aから下向きに一定幅の範囲(例えばカット線54aから下向きに数ミリメートル、もしくは十数ミリメートルの範囲)の領域である。
【0045】
2.本体部とモールドカップ部の縫着
図9に示すように、本体部51の正面側の編地の裏側に、モールドカップ部10を縫着して取り付ける。この縫着は、モールドカップ部10の上縁部12と、本体部51のカット領域54を、1本または複数本の縫い糸で縫い合わせることにより行う。
図9では、符号55の太い点線が、モールドカップ部10の上縁部12と本体部51のカット領域54の縫着ライン示している。なお、モールドカップ部10の下端および側縁端には、モールドカップ部10を本体部51に縫着する前に、あらかじめパイピングテープ15を取り付けている。
【0046】
ブラジャー50では、モールドカップ部10を本体部51に縫着する際、マイクロテープ56を併せて縫合することにより、縫着部位の強度を高めている。マイクロテープ55は、
図10に示すように、モールドカップ部10の上縁部12の生地端と、本体部51のカット領域54の生地端の全域を被包するテープである。被包した状態で、マイクロテープ55の外側から、モールドカップ部10の上縁部12と本体部51のカット領域54を縫着することで、裁断されたままの裁ち端が露出している場合と比較すると、縫着部位の耐久性が向上する。
【0047】
ストラップ57は、ブラジャー50を肩から吊るすために用いる吊りひもである。ストラップ57は、マイクロテープ56と連続しており、着用者の肩を超えて本体部51の編地の背面側と接続される。ストラップ57は、肩の稜線からカップ11a,11bを引き上げることにより、バスト位置を高く維持する。ストラップ57は、アジャスター59により長さの調節が可能となっている。
【0048】
ブラジャー50は、カット領域54における縫着ライン55が、モールドカップ部10との唯一の縫着ラインであり、モールドカップ部10の側縁部は、本体部51とは縫着されていない。その理由は、
図10に示すように、ブラジャー50は全体が天竺編52で編成されており、本体部51の生地は左程伸びないので、カット領域54の縫着ライン55のみであっても、取り付けたモールドカップ部10は十分に安定しているからである。つまり、第2実施例の構成とすれば、補助的な縫着ラインについても無くすことができ、縫着ラインがより少ない衣類を提供できる。
【0049】
本発明は、前記の実施例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0050】
例えば、上記では、本発明をブラジャーに適用する場合の例を示したが、本発明はカップ付キャミソール、カップ付タンクトップ等にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 モールドカップ部
11(11a,11b) カップ
12 上縁部
12a 上縁
13 フロント部
14 脇下部
16 側縁部
30,50 ブラジャー
31,51 本体部
34,54 カット領域
34a,54a カット線
35,55 縫着ライン
56 マイクロテープ