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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】機能性顆粒を含む洗濯用シート
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/00 20060101AFI20220307BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20220307BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C11D17/00
C11D3/386
C11D3/395
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018530115
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2016014803
(87)【国際公開番号】W WO2017105131
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2015-0180978
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0067653
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ソク・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ムン-ソン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】キョン-オン・チャ
(72)【発明者】
【氏名】チェ-ヒョン・キム
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/086692(WO,A1)
【文献】米国特許第04176079(US,A)
【文献】米国特許第04115292(US,A)
【文献】独国特許出願公開第10053329(DE,A1)
【文献】国際公開第03/031637(WO,A1)
【文献】特開2000-096095(JP,A)
【文献】特開2000-169896(JP,A)
【文献】米国特許第04532063(US,A)
【文献】特表2015-520701(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0090122(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0127175(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらの2種以上の混合からなる群から選択される洗濯用洗剤成分と、ポリビニルアルコール(PVA)であるフィルム形成水溶性高分子とが混合されて形成された高分子マトリクスに、酵素を含み、ビルダー、漂白剤及び漂白活性化剤をそれぞれ含むか又は含まない洗濯用有効成分が、いずれも顆粒で含まれてそのシート内に分布していることを特徴とする洗濯用シート。
【請求項2】
前記ビルダーは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルカリケイ酸ナトリウム、中性ケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ゼオライト、セスキ炭酸ナトリウム、MEA(モノエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)からなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項3】
前記酵素は、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、炭水化物分解酵素、セルロース分解酵素、マンナン分解酵素、ペクチン分解酵素からなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項4】
前記漂白剤は、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩、過ケイ酸塩、ジアシル及びテトラアシルペルオキシドからなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項5】
前記漂白活性化剤は、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、ベンゾイルカプロラクタム(BzCL)、4-ニトロベンゾイルカプロラクタム、3-クロロベンゾイルカプロラクタム、ベンゾイルオキシベンゼンスルホネート(BOBS)、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)、フェニルベンゾエート(PhBz)、デカノイルオキシベンゼンスルホネート(C10-OBS)、ベンゾイルバレロラクタム(BZVL)、オクタノイルオキシベンゼンスルホネート(C-OBS)及び過加水分解性エステルからなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項6】
洗濯用フィルムが積層されて多層構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項7】
前記洗濯用シートの一面または両面にフィルム形成水溶性高分子を用いて製造されたフィルムがさらに積層されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項8】
(S1)ポリビニルアルコール(PVA)であるフィルム形成水溶性高分子と、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらの2種以上の混合からなる群から選択される洗濯用洗剤成分を溶解して洗濯用フィルム製造用溶液を製造する段階と、
(S2)前記(S1)段階で製造された溶液を離型フィルム上に載せて洗濯用シートの形態にする段階と、
(S3)前記離型フィルム上に載せられた洗濯用フィルム製造用溶液に、酵素を含み、ビルダー、漂白剤及び漂白活性化剤をそれぞれ含むか又は含まない洗濯用有効成分を、いずれも顆粒状で添加する段階と、
(S4)前記顆粒が添加された洗濯用フィルム製造用溶液を乾燥する段階と、を含む洗濯用シートの製造方法。
【請求項9】
(S5)フィルム形成水溶性高分子でフィルムを製造して用意する段階と、
(S6)前記(S5)段階のフィルムを前記洗濯用シートに密着させる段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の洗濯用シートの製造方法。
【請求項10】
前記(S5)段階のフィルムは、洗濯用洗剤成分をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の洗濯用シートの製造方法。
【請求項11】
前記(S6)段階は、
(S4)段階で形成された乾燥された洗濯用シートと、(S5)段階で形成されたフィルムとを密着させることを特徴とする請求項9に記載の洗濯用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯用シート及びその製造方法に関する。特に、洗濯用シートに含まれた成分の効果をさらに高め、安定化できる洗濯用シート及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2015年12月17日出願の韓国特許出願第10-2015-0180978号、及び2016年5月31日出願の韓国特許出願第10-2016-0067653号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
現在、高分子フィルムは、精密化学、電子材料などの産業分野だけでなく、医薬品、化粧品などのパーソナルケア製品及び生活用品などの家廷用品にも広く用いられている。医薬または化粧品に高分子フィルムを用いる場合の例としては、基材上に水不溶性高分子フィルムとともに薬剤を積層した湿布剤シートまたは粘着性肌貼りシートなどがあり、このとき、高分子フィルムはマトリクスを形成して徐放型特性を呈する。また、生活用品における高分子フィルムは、通常、特定物質及び有効成分を分画包装して、使用上の便宜を図る包装材として広く用いられている。例えば、粉末状または液状の洗剤のような洗剤組成物を分画包装する材質として高分子フィルムが用いられている。韓国特許公開第10-1999-0030414号公報では、粉末洗剤の飛散を防止し、適正使用量を誘導して水質を保護するため、水溶解性に優れたポリビニルアルコールフィルム、ゼラチンフィルム、澱粉フィルム、セルロースフィルムを標準使用量袋として使用している。米国特許第4,605,509号公報、特開昭58-135794号公報及び韓国特許公開第10-2004-0676668号公報には、液体洗剤及び繊維柔軟剤を水溶性フィルムで包装する技術が開示されている。
【0004】
しかし、水溶性高分子フィルムを用いて分画包装する場合、分画包装した製品の保管または運搬時に封止が破れて内容物が漏れることがあり、フィルムの表面に有効成分が染み出るなど製品の保管安定性が非常に低かった。また、包装材として使用する水溶性フィルムの場合、大気中の水分に対する安定性及び内容物に対する耐久性を有するように設計されるが、そのため低温では溶解に相当な時間がかかり、完全に溶解せずフィルムの残留物が残る問題が生じた。
【0005】
このような問題を解決するため、韓国特許公開第10-2013-0124261号公報では、水溶性高分子フィルム形成組成物に洗剤のような洗濯用有効成分を混入してフィルムを形成した洗濯用シートを提供している。しかし、フィルム形成水溶性高分子、洗濯用有効成分、及び水のような溶媒を含む溶液から前記溶媒を除去して固形化する場合、製造時に洗濯用シートに含まれた洗濯用有効成分のうち酵素や漂白剤成分などが水で活性化して安定性が低下し、洗浄力を効果的に発現できない問題が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗濯用有効成分のうち、ビルダー(builder)、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分の効果を効果的に発揮できる洗濯用シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、洗濯用洗剤成分及びフィルム形成水溶性高分子を用いて製造される洗濯用シートにおいて、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が顆粒で含まれていることを特徴とする洗濯用シートを提供する。
【0008】
本発明において、前記ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分は、望ましくは水とともに活性化して効果を発現する成分であり得る。
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
本発明は、フィルム形成水溶性高分子及び溶媒を含む溶液から乾燥などの方法で溶媒を除去し固形化して製造する洗濯用フィルムを用いて製造した洗濯用シートである。溶解されていない形態の洗濯用有効成分が洗濯用シートの最終的な製造形態に含まれ、シート内に顆粒状の洗濯用有効成分が分布している洗濯用シートを提供する。前記洗濯用シートは一定形態を維持したまま、固形化した形態を有し得る。
【0011】
本発明者らは、洗濯用有効成分が洗濯用シートの製造時に活性化して、実際使用時には完全な効果を発揮できないという従来の問題を解決しようとして、製造された洗濯用シートに洗濯用有効成分がシート内に溶解されていない顆粒状で含まれる場合、洗濯効果がさらに優れることを確認し、本発明の完成に至った。
【0012】
用語の定義
本明細書で使われる用語「フィルム」は、薄くて柔軟な膜または層を意味すると理解できる。厚さは特に制限されない。前記フィルムの形態は特に制限されない。
【0013】
本明細書で使われる用語「洗濯用フィルム」は、前記フィルム内にi)洗濯用洗剤成分、ii)洗濯用柔軟成分、iii)香料、またはiv)これらのうち2種以上を含むものであると理解できる。以下、洗濯用洗剤成分は、洗濯用洗剤成分の外に、洗濯用柔軟成分、香料、またはこれらの混合物を含む意味で理解できる。
【0014】
前記洗濯用フィルムは、フィルム形成用水溶性高分子と洗濯用洗剤成分とを混合して形成した溶液から製造できるが、製造方法によって制限されず、フィルム内に洗濯用洗剤成分が含まれた形態であれば良い。前記フィルムと同じ厚さになるか、それとも、前記フィルムの厚さよりも厚くなるか又は薄くなり得る。前記洗濯用フィルムの形態は特に制限されない。
【0015】
前記「フィルム」と「洗濯用フィルム」は、フィルムまたは洗濯用フィルムを製造するための溶液を完全に乾燥して形成しても良く、前記溶液が半乾燥された状態であっても良い。前記フィルムの半乾燥状態とは、フィルム内に水分をある程度含みながら、フィルムが膜の形態を維持している状態を意味し、例えば、前記フィルムまたは洗濯用フィルムを製造するための溶液の水分が70%以上、望ましくは80%以上、より望ましくは90%以上蒸発した状態を意味し得る。
【0016】
本明細書で使われる用語「シート」は、本発明の目的を達成するためにフィルムまたは洗濯用フィルムの両面及び/または一面に洗濯用有効成分が分布しているものを意味し、前記洗濯用有効成分としてはビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を含むことができる。前記洗濯用有効成分は、望ましくは、溶解されていない状態で分布することを意味する。すなわち、本明細書におけるシートは、前記フィルムまたは洗濯用フィルムと区別して使用される。本発明のシートは、洗濯用フィルムを1枚含んでも良く、2枚以上のフィルムが重なった形態であっても良い。本発明のシートが2枚以上のフィルムを含むときは、少なくとも1つのフィルムは洗濯用フィルムである。前記シートを製品として消費者に提供するとき、シートを加工して提供しても良く、消費者に提供される形態は特に制限されない。
【0017】
本明細書で使われた用語「分布」は、フィルム形成水溶性高分子が一定の引張強度を有するように形成された薄膜上に、顆粒状の特定洗濯用有効成分(例えば、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分)が規則的または不規則的に混在していることを意味する。
【0018】
本発明の一実施例によれば、洗濯用洗剤成分及びフィルム形成水溶性高分子を用いて製造される洗濯用フィルムに、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が顆粒で含まれていることを特徴とする洗濯用シートを提供する。
【0019】
本発明の望ましい一実施例による洗濯用シートは、(S1)フィルム形成水溶性高分子及び洗濯用洗剤成分を溶解して洗濯用フィルム製造用溶液を製造する段階;(S2)前記(S1)段階で製造された溶液で洗濯用フィルムを形成する段階;及び(S3)前記(S2)段階で製造された洗濯用フィルムに、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を溶解されていない形態で添加する段階を含んで製造することができる。
【0020】
前記(S1)段階で、フィルム形成水溶性高分子は塊で凝集していた高分子鎖が解け、(S3)段階で、高分子鎖の間に溶解されていない形態の洗濯用有効成分、例えば、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が分布する。
【0021】
前記(S3)段階のビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分は「溶解されていない状態」で添加され、「溶解されていない状態」とは、前記成分が100%完全に溶解されていない状態だけでなく、一部溶解された状態も含む用語である。ここで、「一部溶解された」とは、前記成分の10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下または1%以下が溶解されたことを意味し、望ましくは5%以下が溶解されたことを意味する。
【0022】
本発明者らは、前記ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を溶解されていない状態で添加するため、顆粒状で添加した。
【0023】
また、前記(S2)段階は、(S1)段階の溶液を用いて洗濯用フィルムを形成する段階である。前記洗濯用フィルムに、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を溶解されていない形態、例えば、顆粒状で添加でき、製造後の洗濯用シートに溶解されていない形態で含まれていれば、前記顆粒の形態は制限されない。
【0024】
本発明の他の実施例において、前記洗濯用シートは、前記(S2)段階で製造された洗濯用フィルムを付け加えて積層する段階をさらに含んで製造することができる。前記(S3)段階で、フィルムの一面または両面にビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を溶解されていない形態で分布させた後、洗濯用フィルムをさらに積層する段階を含むことができる。付け加えられて積層される洗濯用フィルムはフィルムに代替され得る。
【0025】
本発明者らは、前記洗濯用有効成分を含む顆粒がシート内部に完全に内包されずにシートの表面に留まる場合、使用、保管及び運搬時に顆粒がシートから脱落して、洗濯用シートの機能を阻害する可能性があることを初めて確認した。また、機能性顆粒が直接的な肌接触によって刺激を誘発する可能性がある成分である場合、使用者の身体の一部がそれに晒される恐れがあることも確認した。それを防止するため、本発明の洗濯用シートに付け加えてフィルムまたは洗濯用フィルムをさらに積層する段階を含むことができる。
【0026】
具体的に、(S4)フィルム形成水溶性高分子でフィルムを製造して用意する段階をさらに含むことができる。前記(S4)段階で製造されたフィルムは(S2)段階のフィルムと同じフィルム形成水溶性高分子を使用しても良く、他の種類のフィルム形成水溶性高分子を使用しても良い。前記(S4)段階のフィルムは洗濯用洗剤成分を含んでも良く、含まない形態のフィルムで提供されても良い。
【0027】
(S5)前記(S4)段階のフィルム(または洗濯用フィルム)と前記(S3)段階のビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が溶解されていない形態で添加されたフィルムを密着させる段階をさらに含むことができる。
【0028】
このとき、(S3)段階でビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分を溶解されていない形態で含むフィルム(または洗濯用フィルム)を第1フィルムと称し、前記第1フィルムに付け加えられる新たなフィルム(または洗濯用フィルム)を第2フィルムと称し得る。
【0029】
前記(S5)段階で付け加えられるフィルムは、前記(S2)段階で製造されたフィルムと同じ面積を有することが望ましいが、大きさに制限されることはない。
【0030】
前記(S5)段階でフィルムを密着させる段階は、2枚のフィルムを重ねて積層しても良く、重ねてから接着しても良い。接着は2枚のフィルム同士が付着している形態を意味し、接着剤を用いるか、または、熱や超音波などを用いて付着できるが、その方法に特に制限はない。フィルムとフィルムとの間にビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が溶解されていない形態で存在するようにフィルムを密着できれば、フィルム同士を付着する方法は特に制限されない。
【0031】
本発明の一実施例は、本発明の洗濯用シート製造方法で製造された洗濯用シートを提供する。
【0032】
本発明の他の実施例において、洗濯用シートは3枚のフィルム(または洗濯用フィルム)を積層し、前記フィルムとフィルムとの間に顆粒状の成分が溶解されていない形態で存在するように製造することができる。例えば、図4に示された洗濯用シートの形態で提供され得る。
【0033】
前記製造方法には乾燥段階が含まれることが望ましく、乾燥段階の反応条件は工程条件によって異なるが、乾燥炉の温度が40~120℃、乾燥時間が5~30分、乾燥速度が1~10m/minであり、望ましくは乾燥炉の温度が60~110℃、乾燥時間が5~20分、乾燥速度が1~10m/minであり得る。
【0034】
望ましくは、本発明において、前記ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が顆粒で添加される場合、フィルム(または洗濯用フィルム)に溶解されないためにはフィルム(または洗濯用フィルム)の水分含有量を一定水準以下に制限する必要がある。
【0035】
前記水分含有量は、フィルム(または洗濯用フィルム)の総重量対比30重量%以下であることが望ましいが、これに限定されることはない。
【0036】
したがって、前記ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分は顆粒で添加され、前記顆粒はフィルム(または洗濯用フィルム)を製造した後、溶解されないなら、乾燥前、乾燥中または乾燥後の何れの段階で添加され得る。
【0037】
本発明による洗濯用シートに使用されるフィルム形成水溶性高分子は、天然、半合成、合成高分子のうち1種以上を選択することができる。
【0038】
天然高分子としては、ゼラチン、ペクチン、デキストラン、ヒアルロン酸またはその塩、コラーゲン、寒天、アラビアガム、キサンタンガム(xanthan gum)、アカシアガム、カラヤガム(karaya gum)、グアーガムのようなガム類、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどが使用できる。
【0039】
また、半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、可溶性澱粉、デキストリン、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉などが使用できる。
【0040】
合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキサイド、カルボキシ基含有アクリル樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド、水溶性ポリウレタン、マルトデキストリン及びポリデキストロースのように周知された汎用合成高分子から選択でき、ラジカル重合性モノマーを用いて製造した水溶性合成高分子を選択することもできる。ラジカル重合性モノマーから合成された高分子には、イオン性モノマー及び非イオン性モノマーの単一重合体を使用でき、場合によってはこれらの共重合体を使用することもできる。
【0041】
フィルム形成水溶性高分子の望ましい例としては、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、PVA)が挙げられる。ポリビニルアルコールは、溶解性を確保するため、鹸化度が75~95%、平均重合度が100~3000であることが望ましい。鹸化度が75%未満または95%超過の場合は、溶解度が低くて水に溶解され難い。また、平均重合度が100未満の場合は、分子量が低く過ぎてフィルム形成が容易ではなく、フィルムの引張強度など物性が良くない。平均重合度が3000超過の場合は、分子量が高過ぎてフィルム形成後に水に対する溶解度が良くない。
【0042】
フィルム形成水溶性高分子は、乾燥後のフィルム(または洗濯用フィルム)総重量対比5~80重量%で含まれ得、望ましくは10~60重量%、より望ましくは20~50重量%である。水溶性高分子の含量が5重量%より少ない場合は洗濯用シートの引張強度が低過ぎてフィルム(または洗濯用フィルム)を形成し難く、80重量%より多い場合は、相対的に有効成分の含量が少なく、洗濯シートの機能が低下するか、又は、一定量の有効成分のために使用される水溶性高分子の含量が増加して経済的ではない。
【0043】
一方、本発明による洗濯用シートにおいて、フィルム形成水溶性高分子の「水溶性」は、以下のような測定条件で定義することができる。
【0044】
フィルム形成高分子で製造された一定量のフィルム(5g)を500mLの水に入れ、500rpmに設定されたマグネット式撹拌機上で10分間撹拌して製造したフィルム溶液を、最大孔10μmの濾過紙を濾過した後、回収した濾過液から水を乾燥させて残余物質の重量を測定する。その重量が初期フィルムの重量対比70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上であるとき、フィルム形成水溶性高分子と定義する。
【0045】
フィルム形成水分散性高分子も本発明におけるフィルム形成水溶性高分子の範疇に属する。
【0046】
本明細書で使われる用語「水分散性」の意味は次のようである。一定量のフィルム(5g)を500mLの水に入れ、500rpmに設定されたマグネット式撹拌機上で10分間撹拌し、前記フィルム溶液を100μm孔のフィルターに濾過した後、濾過したフィルターを乾燥して重量の変化を測定する。その重量の変化が初期フィルムの重量対比30%以下、望ましくは20%以下、さらに望ましくは10%以下であるとき、水分散性フィルム形成高分子と定義する。
【0047】
また、本発明で使われるフィルム形成水溶性高分子は、フィルムマトリクスを形成可能な成膜性を有するが、洗濯用シート内のフィルム形成水溶性高分子の絡み合った高分子鎖は洗濯時に溶媒によって再度解けるようになる。すなわち、前記フィルム形成水溶性高分子は、高分子鎖の形態であって、固形化するときは高分子鎖が絡み合って凝集し、溶媒に溶解されるときは高分子鎖が解けて第3の物質が高分子鎖の間に挿入できることを特徴とする。
【0048】
本発明による洗濯用シートの製造に使われる溶媒は、水溶性高分子を溶解するために水を使用することができる。親水性溶媒であるアルコール類などを使用できるが、水溶性高分子の溶解性が低下するため、水を使用することが望ましい。
【0049】
本発明において、前記「洗濯用洗剤成分」は、一般に広く使われている陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤であり得、これらのうち2種以上を混合した形態であっても良い。
【0050】
前記陰イオン性界面活性剤としては、せっけんのようなカルボン酸塩化合物、高級アルコール、高級アルキルエステル、オレフィンを硫酸化した硫酸エステル塩化合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩を含む硫酸塩化合物、高級アルコールをリン酸化したリン酸塩化合物を代表的に挙げられる。
【0051】
例えば、これらに限定されないが、ラウリルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エトキシル化ナトリウム(sodium lauryl ethoxylated sulfate)、sec-アルカンスルホン酸塩及びメチルエステルスルホン酸塩(methyl ester sulfonate)などが挙げられ、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。望ましくは、前記陰イオン性界面活性剤のうち、ラウリル硫酸ナトリウムを使用することができる。
【0052】
また、前記非イオン性界面活性剤としては、これらに限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、コカミドモノメチルアミン、コカミドジメチルアミン、コカミドモノエチルアミン、脂肪酸アルカノールアミン、アミンオキサイド、アルキルポリグルコシド、メチルポリエチレンアルキルエーテルまたは糖エーテルなどが挙げられ、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。特に、下記化学式1で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、または、下記化学式2で表されるポリオキシアルキレンアルキルフェニルエテルを使用することが望ましい。
【化1】
【化2】
【0053】
化学式1及び化学式2において、mは5~21の整数であり、nは1~20の整数である。
【0054】
また、前記両性界面活性剤は、これらに限定されないが、アミンオキサイド、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)などがあり、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。
【0055】
一方、ビルダー、酵素、漂白剤、漂白活性化剤などの洗濯用有効成分は、水と反応して活性を発現して効果を奏する成分であって、フィルム形成水溶性高分子と共に他の洗濯用洗剤成分と一緒に混合して適用すれば、製造過程で溶解されながらその活性を発現して、実際製品を使用するときはその性能を発現できないという問題がある。
【0056】
したがって、本発明は、水溶性高分子フィルムで水と反応して活性を発現し効果を奏する特定の洗濯有効成分の性能発現低下問題を解決するため、顆粒状に製造された洗濯用有効成分を洗濯用シート及び/または洗濯用シート製造用組成物に適用することを特徴とする。すなわち、本発明において、前記顆粒状に製造された洗濯用有効成分は洗濯用シートの高分子鎖の間に溶解されていない形態で混在していることを特徴とする。
【0057】
すなわち、本発明は、洗濯用洗剤成分及びフィルム形成水溶性高分子を用いて製造される洗濯用シートにおいて、ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が顆粒で添加されて製造されることを特徴とする洗濯用シートを提供する。
【0058】
本発明において、前記ビルダー、酵素、漂白剤及び漂白活性化剤からなる群より選択されたいずれか1つ以上の成分が顆粒で添加される場合、フィルム(または洗濯用フィルム)の水分含有量が一定水準以下であれば、添加される前記成分が溶解されず、洗濯前に活性化することがない。このような水分含有量は、これに限定されないが、フィルムの総重量対比30重量%以下であることが望ましい。
【0059】
本発明者らは、前記成分を洗濯用シートの製造時に水溶性高分子溶液に混合すれば、洗濯用シートの製造過程でその活性が発現して、製品を実際使用するときはその性能が発揮されないことから、前記成分を洗濯用シート及び/または洗濯用シート製造用組成物に溶解されていない形態で別途に添加する場合、前記成分の性能を完全に発揮できることを見出して、本発明を完成した。
【0060】
本発明において、前記顆粒はその形態が限定されず、すなわち、製造された洗濯用シートに前記成分が溶解された形態でなければ、如何なる形態であっても良く、その大きさにも特に制限はない。すなわち、前記顆粒は、通常、粒子、粉末、粒などと呼ばれる不規則な形態及び大きさを有するものを全て含む用語である。
【0061】
本発明において、前記顆粒は特定の形態が存在しない無定形(amorphous)粒子の集合であって、本明細書では異なる大きさを有する多数の顆粒を平均粒径で示した。
【0062】
本発明で前記顆粒の形態は限定されないが、例えば、球(sphere)型、シリンダー(cylinder)型、破片(splinter)型、またはこれらの2以上の形態を混合して含むことができる。
【0063】
ここで、「球型」が完璧な球の形態でない形態も含む用語であることは、当業界の通常の技術者にとって自明である。すなわち、前記球型の横断面及び/または縦断面が完璧な円ではなく、楕円であるものも含み、外郭の滑らかな曲面ではなく、規則的または不規則的にデコボコした形態も含む。
【0064】
本明細書で使われる用語「平均粒径」は、レーザー粒度分析機を用いて測定された粒子の大きさを意味する。参考までに、粒度分布を測定するとき、粒子の直径は仮想の等価直径(equivalent diameter)である。測定された粒子の物理的特性のうちの1つが特定の直径を有する球体のそれと類似するとき、その直径を測定された粒子の等価直径と言う。レーザー粒度分析機は等価対照のため散乱性質を用いて、測定された直径は等価散乱直径である。すなわち、実際粒子の大きさを示すため、測定された直径と同じ散乱特性を有する球体の直径を用いる。
【0065】
本発明において、前記顆粒の平均粒径は0.1~5mmであり、0.3~3mmであることが望ましく、0.5~2mmであることがより望ましい。
【0066】
本発明において顆粒状で適用できる成分としては、これらに限定されないが、ビルダー、酵素、漂白剤、漂白活性化剤、殺菌/消毒剤、香料などが挙げられる。
【0067】
本明細書で使われる用語「ビルダー」は、軽水軟化剤を意味する。ビルダーは、これらに限定されないが、軽水中のカルシウムやマグネシウムなどを沈澱させるか、イオン交換で除去するか、または、キレートを形成してイオンの作用を封鎖するなどの作用をする物質を言う。すなわち、ビルダーは水と反応して活性化してこのような効果を発現する。
【0068】
従来のように、洗濯用シートの製造過程でビルダーを粉末の形態で水溶性高分子溶液に添加する場合、水溶性高分子溶液に含まれた水によってビルダーがシート製造過程中に活性化して、実際洗濯するときは完全な効果を発揮できず、PVAのような場合には反応によるゲル化、塩析現象によってシート剤形化が困難であり、溶解性が低下する問題が生じ得る。これを解決するため、本発明ではビルダーを溶解されていない形態で洗濯用シートに添加することで、添加されたビルダーの殆どが洗濯時に活性化し、水溶性高分子溶液に添加した場合と比べて洗浄力が著しく優れる。これは後述する実施例で確認することができる(後述の表3参照)。また、シート剤形性に優れ、表面にビルダーが染み出ないことを後述する実施例で確認することができる(後述の表2参照)。
【0069】
本発明で使用可能なビルダーは、アルカリビルダーが望ましく、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルカリケイ酸ナトリウム、中性ケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)、セスキ炭酸ナトリウム、MEA(モノエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)からなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であり得る。
【0070】
本明細書で使われる用語「酵素」は、洗濯酵素として使用可能な非限定的な酵素を意味し、例えば、蛋白質分解酵素(例えば、プロテアーゼなど)、脂質分解酵素(例えば、リパーゼなど)、炭水化物分解酵素(例えば、アミラーゼなど)、セルロース分解酵素(例えば、セルラーゼなど)、マンナン分解酵素(例えば、マンナーゼ)及びペクチン分解酵素(例えば、ペクチナーゼ)からなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物であり得る。
【0071】
一般に、酵素を洗濯用シートの製造過程中に粉末形態で水溶性高分子溶液に添加する場合、洗濯用シートの製造過程で必須的である高温乾燥過程により、シート内に含まれた酵素の変性(denaturation)が引き起こされ、結果的に酵素の活性が弱くなって、洗濯用シートの洗浄力、特に酵素による洗浄力が減少する問題が生じ得る。
【0072】
本発明はこのような問題を解決するため、酵素を顆粒状に製造して添加することで、一定時間の高温乾燥過程を経てもシート使用時の酵素の活性が弱化しない。これは後述する実施例で確認することができる(後述の表3参照)。また、シート剤形性に優れ、表面に酵素が染み出ないことを後述する実施例で確認することができる(後述の表2参照)。
【0073】
本発明において「漂白剤」は、洗濯時に一般に使用可能な漂白剤を使用でき、これらに限定されないが、無機漂白剤として過ホウ酸塩、過炭酸塩(例えば、過炭酸ソーダ)、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩などを含む過水和物塩、有機漂白剤としてジアシル及びテトラアシルペルオキシドなどを含む有機過酸化酸を使用することができる。
【0074】
また、本発明において「漂白活性化剤」は、洗濯時に一般に使用可能な漂白活性化剤を使用でき、これらに限定されないが、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、ベンゾイルカプロラクタム(BzCL)、4-ニトロベンゾイルカプロラクタム、3-クロロベンゾイルカプロラクタム、ベンゾイルオキシベンゼンスルホネート(BOBS)、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)、フェニルベンゾエート(PhBz)、デカノイルオキシベンゼンスルホネート(C10-OBS)、ベンゾイルバレロラクタム(BZVL)、オクタノイルオキシベンゼンスルホネート(C-OBS)及び過加水分解性エステルからなる群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の混合物を使用することができる。
【0075】
従来のように、洗濯用シートの製造過程で漂白剤及び/または漂白活性化剤を粉末の形態で水溶性高分子溶液に添加する場合、これらが水溶性高分子溶液に含まれた水によってシート製造過程中に活性化して、実際洗濯するときは完全な効果を発揮し難い。これを解決するため、本発明では漂白剤及び/または漂白活性化剤を溶解されていない形態で添加することで、漂白剤及び/または漂白活性化剤の殆どが洗濯時に活性化し、水溶性高分子溶液に添加した場合と比べて漂白力が著しく優れる。これは後述する実施例で確認することができる(後述の表3参照)。また、シート剤形性に優れ、表面に漂白成分が染み出ないことを後述する実施例で確認することができる(後述の表2参照)。
【0076】
本発明において「殺菌/消毒剤」は、洗濯時に一般に使用可能な成分を使用でき、これらに限定されないが、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化尿素、二塩化イソシアン酸ナトリウム(NaCl(CON))、硫酸カリウム((KHSO・KHSO・KSO)、過酸化カルシウム、トリポリリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウムなどを使用することができる。
【0077】
前記成分を顆粒状に製造する場合、単独の成分または2以上の成分を混合して顆粒状に製造することができる。
【0078】
また、本発明による洗濯用シートには、前記成分の外に、繊維柔軟剤、分散剤、乳化剤などをさらに含むことができる。
【0079】
より詳しくは、本発明による洗濯用シートは、繊維柔軟剤として第四級アンモニウム塩系の陽イオン性界面活性剤を使用することができる。例えば、下記化学式3で表されるジアルキルジメチル塩化アンモニウム、下記化学式4で表されるアルキルイミダゾリウム塩、下記化学式5で表されるジアルキルアミド第四級アンモニウム塩(dialkylamido quaternary ammonium salt)及びエステルクワット型(ester quat type)などがあり、これらから1つ以上を選択して使用することができる。
【化3】
【化4】
【化5】
【0080】
化学式3~化学式5において、それぞれのRは相互独立して、炭素数1~30の線状または分枝状、飽和または不飽和アルキル炭化水素からなる群より選択される。
【0081】
また、前記繊維柔軟剤の成分として、天然または合成の陽イオン性ポリマーを使用することができる。例えば、これらに限定されないが、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライドなどの陽イオングアー、セルロース(ポリクオタニウム-10)、ポリクオタニウムシリーズ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドポリマー、アクリルアミド-ジメチルジアリルアンモニウムコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)-ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アクリル酸-ジメチルジアリルアンモニウムクロライドコポリマー、アクリルアミド-ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライドコポリマー、トリメチルアミノエチルメタクリレートポリマーなどを単独または2以上の混合物で使用することができる。
【0082】
また、本発明の洗濯用シートには分散剤を含むことができる。例えば、乳化剤は、水溶性高分子と陽イオン性界面活性剤のような洗濯用有効成分とを均一に混合させ、フィルムの溶解時に洗濯用有効成分の水分散性を補助する。
【0083】
本発明による洗濯用シートは、乳化剤として非イオン性界面活性剤を使用でき、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはこれらの2以上の混合物などを使用することができる。
【0084】
前記乳化剤の含量は、乾燥後フィルムの総重量対比0~40重量%であり、望ましくは1~20重量%、より望ましくは1~10重量%である。前記乳化剤の含量が40重量%を超えれば、繊維柔軟剤などが衣類に吸着する量が格段に低下して柔軟性が低下する恐れがある。
【0085】
望ましい乳化剤はHLBが2~18であり、前記乳化剤はシート製造を容易にし、洗濯時に製造されたシートに含有された有効成分を洗濯水に全て脱離、分散させるようにできる。このような面からHLBが8~12の乳化剤を含むことがより望ましい。ここで、HLBとは、親水性-親油性平衡(Hydrophile-Lipophile Balance)を意味する。
【0086】
本発明による洗濯用シートは、前記成分の外に、香料、防腐剤、安定化剤、色素または抗菌制をさらに添加して使用することができる。
【0087】
本発明による洗濯用シートの引張強度は、0.5~15kgf/cmであることが望ましく、より望ましくは1~12kgf/cmである。洗濯用シートの引張強度が0.5kgf/cmより低ければ、流通過程中又は使用中に破れ易くて流通及び使用が困難であり、15kgf/cmより高ければ、速溶解性が低下する恐れがある。
【0088】
本発明による洗濯用シートの厚さは、1μm~1cmであることが望ましく、5μm~0.5cmであることがより望ましい。乾燥した洗濯用シートの厚さが1μm未満であれば、有効成分の担持が不十分であり、シートの強度が弱く、所望の性能が得られない。乾燥した洗濯用シートの厚さが1cmを超えれば、速崩壊性及び速溶解性が良くなく、均一な性相の水溶性フィルムが得難い。
【0089】
本発明による洗濯用シートは、使用完了後には水に完全に溶解されて、別途の洗濯用シートの除去過程がなくても良い。すなわち、シートのマトリクスを形成する水溶性高分子は水に溶解されて除去され、含まれた成分は洗濯水に溶解又は分散して効果を発揮する。
【0090】
本発明の一実施例は、1つ以上のフィルムまたは洗濯用フィルムが積層されて多層構造を形成する多層構造の洗濯用シートを提供する。
【0091】
他の実施例において、前記洗濯用シートの一面または両面に、フィルム形成水溶性高分子を用いて製造したフィルムまたは洗濯用フィルムをさらに積層した洗濯用シートを提供する。
【0092】
また、本発明は、本発明による洗濯用シートを含む洗濯用製品を提供する。前記洗濯用製品は、本発明による洗濯用シート自体、本発明による洗濯用シートを含む洗濯用パウチ、洗濯用網、洗濯用袋などを含むことができる。前記洗濯用パウチ、洗濯用網、洗濯用袋などは、本発明による洗濯用シートを2以上含み内部に空間を形成し、所望の物質を内部空間に入れて、シートが溶解されながらまたは溶解後に発現できるように製造することができる。
【発明の効果】
【0093】
本発明は、水に完全に溶解されて、洗濯後に除去する必要のない洗濯用シートを提供する。
【0094】
本発明の洗濯用シートは、洗浄性能に優れ、使用が簡便である。また、洗濯用シートの保存安定性に優れる。簡便に使用できるため、洗濯時に便利に使用することができる。
【0095】
本発明の洗濯用シートは、水と反応して効果を発現する成分を顆粒状で含み、洗濯時により優れた洗濯効果を発揮することができる。
【0096】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】溶解されていない形態(顆粒状)で洗濯用有効成分を含む洗濯用シートの一例を示した図である。
図2】溶解されていない形態(顆粒状)で洗濯用有効成分を含む洗濯用シートの一例であって、前記顆粒が洗濯用シートの表面に突出した形態を示した図である。
図3】本発明の一実施例によって製造された、2枚のフィルムを積層した洗濯用シートの一例を示した図である。具体的に、第1フィルム10に溶解されていない形態(顆粒状)の洗濯用有効成分が分布された洗濯用シートに、フィルムがさらに付着された洗濯用シート2を示した図である。該洗濯用シート2は、フィルムとフィルムとの間に洗濯用有効成分が溶解されていない形態で存在する。前記シート2を構成するフィルムの1枚以上は洗濯用フィルムであり得る。
図4】本発明の一実施例によって製造された、3枚のフィルムを積層した洗濯用シート3の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0099】
製造例
<比較例1~3>
PVA(鹸化度:86.5%、平均重合度:500)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解させて20重量%のPVA溶液を製造した。製造したPVA溶液に、下記表1に示された組成比に従って有効成分を添加した後、撹拌機を用いて混合し溶解した。製造したPVA溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造した後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、洗濯用シート(厚さ:0.01cm)を製造した。
【0100】
<実施例1~3>
PVA(鹸化度:86.5%、平均重合度:500)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解させて20重量%のPVA溶液を製造した。混合した溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造し、顆粒状の有効成分を適用するために各成分の顆粒をシート上に振り撤いた後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、最終有効成分を含む洗濯用シート(厚さ:0.01cm)を製造した。
【0101】
【表1】
【0102】
<実験例>シート剤形性及び性能評価実験
実施例1~3及び比較例1~3で製造した洗濯用シートに対し、下記方法によってシート剤形性及び性能を評価した。性能評価項目は日本洗濯科学協会の汚染布に対する洗浄力、タンパク質汚染布に対する洗浄力、そして茶汚染布に対する漂白力に分けて実施した。
【0103】
(シート剤形性の評価)
実施例1~3及び比較例1~3で製造したPVAフィルムシートの剤形性を、目視観察などを通じて以下の基準によって評価し、その結果を下記表2に示した。
◎:シート剤形が柔軟であって、染み出る現象が全くなく優れる。
○:シート剤形が柔軟であるが、液状成分が少し染み出る。
△:シートの柔軟性が不十分であり、少し染み出る現象が生じる。
×:シート剤形にならず、液状成分が多く染み出る。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示されたように、実施例1~3のシート剤形性が優れ、比較例1~3のようにシートに溶解された有効成分が増加すれば、シート剤形性が低下することが確認できた。特に、比較例1のようにビルダー成分を液状で混合すれば、剤形を形成しないことが確認できた。
【0106】
(洗浄力の評価)
洗浄力は同じ条件の洗濯機を使用して評価し、洗濯水としては一般水道水を使用した。また、洗濯時の温度は一般家庭で使用する条件と同じ冷水を使用し、洗浄力評価のための汚染布は日本洗濯科学協会で製造した湿式人工汚染布、タンパク質汚染布であるEMPA 116、及び漂白力を確認する茶汚染布であるBC3を使用した。また、前記汚染布は実際の綿ティーシャツに付着して評価した。また、大きさ5cm×5cmの汚染布を16枚使用して統計的な方法で比較評価した。このとき、汚染布の白色度を表す値であるWB値は洗濯前後に色差計を用いて測定した。上記の実施例で製造した洗濯用シートを20cm×15cmの大きさで裁断し、裁断された洗剤2枚を使用した。洗濯初期に洗濯用シートと洗剤をそれぞれ汚染布とともに投入し、洗濯機の標準コース(洗濯20分、濯ぎ2回)、中水位の洗濯条件で実施し、脱水された汚染布を恒温恒湿室(25℃、20%RH)で1日間乾燥し、アイロンをかけて同一色差計でWB値を測定した。得られた結果を下記数式1で表されるクベルカ-ムンク式に代入して洗浄力を計算し、その結果を下記表3に示した。
【0107】
【数1】
数式1において、Rは汚染布の表面反射率を示し、Rは洗濯工程後の汚染布の表面反射率を示し、Rは白色綿布の表面反射率を示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示されたように、顆粒状の有効成分を適用した実施例1~3で洗浄性能が優れた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、水に完全に溶解されて、洗濯後に除去する必要のない洗濯用シートを提供する。本発明は洗浄性能に優れ、使用が簡便であり、保存安定性に優れた洗濯用シートを提供する。
【符号の説明】
【0111】
1:洗濯用シート
2:洗濯用シートの一具現例であって、2枚のフィルムが積層された洗濯用シート
3:洗濯用シートの一具現例であって、3枚のフィルムが積層された洗濯用シート
10:水溶性高分子を含むフィルム
20:洗濯用有効成分
図1
図2
図3
図4