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特許7034573速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220307BHJP
   C04B 7/345 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B7/345
C04B20/00 B
C04B22/06 Z
C04B22/14 B
C04B24/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021083605
(22)【出願日】2021-05-18
(62)【分割の表示】P 2017050931の分割
【原出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2021119115
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 紳也
(72)【発明者】
【氏名】内田 智
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023103(JP,A)
【文献】特開2013-234489(JP,A)
【文献】特開2012-140274(JP,A)
【文献】特開2014-129211(JP,A)
【文献】特開2006-182568(JP,A)
【文献】特開2012-121774(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208277(WO,A1)
【文献】特開2013-095624(JP,A)
【文献】特開2016-223066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速硬性セメントと、石膏類と、生石灰と、セメント用ポリマーと、粒径0.6mm以上である細骨材A及び粒径0.09mm以上0.3mm未満である細骨材Bを含む細骨材と、を含む速硬性ポリマーセメント組成物であって、
前記石膏類及び前記生石灰の質量比([石膏類の質量]/[生石灰の質量])が1.1以上であり、
前記細骨材A及び前記細骨材Bの合計の含有量が、前記細骨材の全質量を100質量部として75質量部以上であり、
前記細骨材A及び前記細骨材Bの質量比([細骨材Aの質量]/[細骨材Bの質量])が1.8~2.5である、組成物。
【請求項2】
前記石膏類及び前記生石灰の合計の含有量が、前記速硬性セメント、前記石膏類及び前記生石灰の合計の質量を100質量部として、2.5~20質量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記石膏類及び前記生石灰の質量比が1.8~4である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記速硬性セメント、前記石膏類及び前記生石灰の合計の質量を100質量部として、
前記セメント用ポリマーを10~50質量部、前記細骨材を200~350質量部含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
更に減水剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物と、水と、を含み、
前記速硬性セメント、前記石膏類及び前記生石灰の合計の質量を100質量部として、前記水を20~45質量部含む、速硬性ポリマーセメントモルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物のひび割れや剥離といった問題に対し、セメント水和物に起因する乾燥収縮性、耐薬品性、強度等に関する課題を解決することを目的として、モルタルに各種ポリマーを混和したポリマーセメントモルタルが建設材料として広く用いられている。しかしながら、従来のポリマーセメントモルタルではセメントが硬化するまでに長時間かかり、その傾向は特に低温でより顕著であった。そのため、従来のポリマーセメントモルタルは、現場での施工に関しては必ずしも十分とはいえるものではなかった。
【0003】
このような現状に対し、近年、セメントの硬化を早くするために、硬化速度の早い急硬性セメントを用いたポリマーセメントモルタルが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-234489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポリマーセメントモルタルは補修・補強材料として用いられていることから、硬化速度だけでなく良好な流動性及び圧縮強度を両立させることも求められている。ポリマーセメントの圧縮強度をより一層高める場合、水セメント比を低減させることでセメント硬化体の緻密化が図られている。しかしながら、水セメント比を低減させると流動性が悪くなる傾向にあり、良好な流動性と圧縮強度を両立することは困難であった。
【0006】
本発明は、流動性に優れ、且つ、初期強度発現性及び初期以降の強度発現性にも優れる速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、速硬性セメント、石膏類及び生石灰を組み合わせ、更に特定の粒度を持つ細骨材を特定量配合することで、良好な流動性及び強度発現性を両立させることができることを見出した。すなわち、本発明は、例えば以下の[1]~[6]の速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタルである。
[1]速硬性セメントと、石膏類と、生石灰と、セメント用ポリマーと、粒径0.6mm以上である細骨材A及び粒径0.09mm以上0.3mm未満である細骨材Bを含む細骨材と、を含む速硬性ポリマーセメント組成物であって、石膏類及び生石灰の質量比([石膏類の質量]/[生石灰の質量])が1.1以上であり、細骨材A及び細骨材Bの合計の含有量が、細骨材の全質量を100質量部として75質量部以上であり、細骨材A及び細骨材Bの質量比([細骨材Aの質量]/[細骨材Bの質量])が1.8~2.5である、組成物。
[2]石膏類及び生石灰の合計の含有量が、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、2.5~20質量部である、[1]に記載の組成物。
[3]石膏類及び生石灰の質量比が1.8~4である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、セメント用ポリマーを10~50質量部、細骨材を200~350質量部含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]更に減水剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の組成物と、水と、を含み、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、水を20~45質量部含む、速硬性ポリマーセメントモルタル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性に優れ、且つ、初期強度発現性及び初期以降の強度発現性にも優れる速硬性ポリマーセメント組成物及び速硬性ポリマーセメントモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、速硬性セメントと、石膏類と、生石灰と、セメント用ポリマーと、粒径0.6mm以上である細骨材A及び粒径0.09mm以上0.3mm未満である細骨材Bを含む細骨材と、を含む。
【0011】
速硬性セメントは、カルシウムアルミネート類を有効成分として含有するものが好ましく、11CaO・7Al・CaX(Xはハロゲン原子を示す)又は3CaO・3Al・CaSO(アウイン)を有効成分として含有するものがより好ましい。11CaO・7Al・CaXは、いわゆるカルシウムアルミネートハロゲン化物系セメントである。ハロゲン原子はフッ素原子が好ましい。アウインは、カルシウムサルホアルミネート系セメント(アウイン系セメント)とも称されるものである。これらは超速硬セメントと呼ばれるものであり、商品名ジェットセメント若しくはスーパージェットセメントとして市販されている。速硬性セメントとしてはアウイン系セメントが最も好ましい。
カルシウムアルミネート類としては、この他にもCaOをC、AlをA、FeをFで表示した場合、CA、CA、C12、C、CA、C又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、CAF、CAF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、アルミナセメント、並びにこれらにSiO、KO、Fe、TiO等が固溶又は化合したもの等が含まれる。カルシウムアルミネート類は結晶質、非晶質のいずれであってもよい。速硬性セメントとしては、これらのカルシウムアルミネート類と石膏等の無機塩類とを配合して調製された速硬性混和材を、ポルトランドセメントに添加したものを用いることもできる。速硬性セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0012】
速硬性セメントは、速硬性セメントの一部をポルトランドセメントに置換えたものであってもよい。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が使用できる。ポルトランドセメントの含有量は、より良好な可使時間の確保、早期強度発現性、繰返し載荷に対する耐久性の観点から、速硬性セメント100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0013】
石膏類は特に限定されるものではなく、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。また、石膏類は、原料履歴も特に限定されるものではなく、例えば各種の化学石膏でもよい。石膏類としては、より一層中長期の強度発現性が増進しやすいという観点から、II型無水石膏であってもよい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。石膏類の粒度は特に限定されないが、より制御しやすい反応活性を得るという観点から、ブレーン比表面積で3000~10000cm/gが好ましい。
【0014】
生石灰は、水和反応活性を有しているものであれば特に限定されるものではなく、いずれの生石灰であってもよい。本実施形態に係る生石灰としては、酸化カルシウム単体物であってもよく、遊離酸化カルシウムを主成分とする生石灰焼成物であってもよい。生石灰としては、例えば、軟焼生石灰、中焼生石灰、硬焼生石灰、極硬焼生石灰等の生石灰が挙げられる。生石灰は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。生石灰の粒度は特に限定されないが、より制御しやすい反応活性を得るという観点から、ブレーン比表面積で2000~6000cm/gが好ましい。
【0015】
石膏類及び生石灰の合計の含有量は、より良好な初期強度発現性が得られるという観点から、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、2.5~20質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましく、5~10質量部が更に好ましい。
【0016】
石膏類及び生石灰の質量比([石膏類の質量]/[生石灰の質量])は1.1以上であり、20以下が好ましい。石膏類及び生石灰の質量比は、例えば、1.1~15が好ましく、1.5~5がより好ましく、1.8~4が更に好ましく、1.8~3.5が特に好ましい。石膏類及び生石灰の質量比が上記範囲内であれば、良好な流動性が確保しやすく、初期からの強度発現性にも一層優れるものとなる。
【0017】
セメント用ポリマーは、JIS A 6203:2015「セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂」に規定されるポリマーが好ましい。このようなセメント用ポリマーとしては、ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂等が挙げられる。ポリマーディスパージョンとしては、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴム系;天然ゴム系;ゴムアスファルト系;エチレン酢酸ビニル系;アクリル酸エステル系;樹脂アスファルト系等が挙げられる。ポリマーディスパージョンは、中でも、合成ゴム系、エチレン酢酸ビニル系及びアクリル酸エステル系が好ましく、具体的には、合成ゴムラテックス、ポリアクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニルがより好ましい。再乳化形粉末樹脂としては、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴム系;アクリル酸エステル系;エチレン酢酸ビニル系;酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル;酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル等が挙げられる。セメント用ポリマーとしては、ポリマーディスパージョンを用いてもよく、再乳化形粉末樹脂を用いてもよく、ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂を併用してもよい。
上記セメント用ポリマーの中でも、コンクリートとの接着性がより向上するという観点から、スチレンブタジエンゴムのポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂が好ましい。スチレンブタジエンゴムは、スチレン及びブタジエンを共重合した合成ゴムの一種であり、スチレン含有量や加硫量により品質を適宜調整することができる。セメント混和用としては、結合スチレン量が50~70質量%のものが多く、安定性や接着性を向上させて使用されている。セメント用ポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0018】
セメント用ポリマーの含有量は、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、固形分換算で10~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましく、10~35質量部が更に好ましく、12.5~30質量部が更により好ましく、15~25質量部が特に好ましい。セメント用ポリマーの含有量が上記範囲内であれば、コンクリートとの付着強度を十分に確保しやすく、強度発現性も低下しにくい傾向にある。
【0019】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材が挙げられる。これらの細骨材の中では、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度調整した珪砂や石灰石砂等の細骨材を用いることが好ましい。細骨材は、通常用いられる粒径5mm未満のもの(5mmふるい通過分)である。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0020】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、粒径0.6mm以上である細骨材A及び粒径0.09mm以上0.3mm未満の細骨材Bを含む。細骨材Aの粒径は、5mm未満が好ましい。細骨材Aは、目開き5mmふるいを通過し、目開き0.6mmのふるいに留まるものであり、細骨材Bは、目開き0.3mmのふるいを通過し、目開き0.09mmのふるいに留まるものである。
【0021】
細骨材A及び細骨材Bの合計の含有量は、細骨材の全質量を100質量部として50質量部以上であり、75質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましい。細骨材A及び細骨材Bの合計の含有量の上限は、細骨材の全質量を100質量部として、100質量部であってもよく、90質量部以下であってもよい。細骨材A及び細骨材Bの合計の含有量が上記範囲内であれば、より良好な流動性を確保しやすい。
【0022】
細骨材A及び細骨材Bの質量比([細骨材Aの質量]/[細骨材Bの質量])は、1.5~5であり、1.5~3が好ましく、1.8~2.5がより好ましい。細骨材A及び細骨材Bの質量比が上記範囲内であれば、より良好な流動性及び長期的な強度発現性を確保しやすい。
【0023】
細骨材の含有量は、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、200~350質量部が好ましく、225~325質量部がより好ましく、250~310質量部が更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を確保しやすく、より良好な強度発現性が得られやすい。
【0024】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、ナフタレンスルホン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0025】
減水剤の含有量は、流動性を確保しやすく、初期強度発現性に一層優れるという観点から、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、0.5~5質量部が好ましく、1~3.5質量部がより好ましい。
【0026】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、凝結遅延剤を含んでもよい。凝結遅延剤を含むことで、夏場等ポリマーセメントモルタルの練り上り温度が高くなる場合においても、可使時間を確保しやすい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
凝結遅延剤の含有量は、凝結遅延剤中の有効成分(固形成分)換算で、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、0.5~5質量部であることが好ましく、1~3質量部であることがより好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間が確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0028】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤を使用してもよい。混和剤としては,例えば、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水、白華防止剤、繊維が挙げられる。
【0029】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、粗骨材を使用してコンクリート組成物とすることもできる。粗骨材としては、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材等が挙げられる。粗骨材は、粒径が5mm以上のもの(5mmふるい残留分)であり、25mm以下が好ましい。粗骨材の含有量は、通常コンクリートの調製に用いる量の範囲内で適宜設定することができる。
【0030】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、通常の用いられる混練器具により混合することで調製でき、その器具は特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、ホバートミキサ、ハンドミキサ、傾胴ミキサ、2軸ミキサ等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物は、水と混合してモルタル又はコンクリートとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、20~50質量部が好ましく、22.5~40質量部がより好ましく、25~40質量部が更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加及び初期強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0032】
本実施形態の速硬性ポリマーセメントモルタルの調製は、通常のポリマーセメントモルタルと同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば上述したものを用いることができる。
【0033】
本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物及びこれを用いた速硬性ポリマーセメントモルタルは、良好な流動性を有し、また、初期の強度発現性が優れており、更に初期以降にも安定した強度発現性を発揮することができるため、施工性及び耐久性に優れるものである。また、本実施形態の速硬性ポリマーセメント組成物及びこれを用いた速硬性ポリマーセメントモルタルは、速硬性セメントを用いているため、硬化速度も速く、作業時間を短縮することができる。そのため、このような速硬性ポリマーセメント組成物及びこれを用いた速硬性ポリマーセメントモルタルは、例えば、コンクリート構造体、道路等の補修・補強材料として用いることもできる。
【実施例
【0034】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
表1に使用した材料を示し、表2に粒度調整した細骨材を示す。細骨材は、各種ふるいを用いてふるい分けることにより、それぞれの粒度分布のものに調整した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
[配合設計]
速硬性セメント、石膏類及び生石灰の合計の質量を100質量部として、生石灰、石膏類、及び細骨材を表3となるように配合設計し、減水剤及び凝結遅延剤を1質量部ずつ添加して調製した。表3に示す量の水で調製したセメント用ポリマー(固形分換算)に上記粉体を投入し、ハンドミキサで90秒間練り混ぜることで各種ポリマーセメントモルタルを調製した。
【0039】
【表3】
【0040】
[評価方法]
・コンシステンシー
ポリマーセメントモルタルの流動性は、コンシステンシーを測定することで評価した。コンシステンシーは、JIS R 5201:2015の[「セメントの物理試験方法」12.フロー試験]に準じて、20℃環境下で測定した。コンシステンシーは、15打フロー/引抜きフローが1.35以上のものを良好(○)とし、1.35未満のものを不良(×)として評価した。
【0041】
・圧縮強度
ポリマーセメントモルタルの強度発現性は、硬化体の圧縮強度を測定することで評価した。圧縮強度は、土木学会基準JSCE-G 505-2010「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準じて、材齢2時間及び28日における硬化体を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。また、養生は、初めに20℃の恒温槽内で行い、翌日に脱型した後、材齢日まで20℃で気中養生した。材齢2時間で10N/mm以上、材齢28日で45N/mm以上であれば強度発現性が良好と判断した。
【0042】
[結果]
各試験結果を表4に示す。実施例のポリマーセメントモルタルであれば、流動性に優れ、且つ、初期強度発現性及び初期以降の強度発現性にも優れ、これらの性質を両立できることが示された。一方、石膏類及び生石灰の比率、細骨材の粒度又は含有量が適切でないポリマーセメントモルタルでは、流動性と強度発現性を両立することができなかった。また、早強セメントを用いたポリマーセメントモルタルでは、材齢2時間の時点では硬化していなかった。
【0043】
【表4】