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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20220307BHJP
   F16H 55/08 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16H55/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021515673
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2020000326
(87)【国際公開番号】W WO2021140592
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】城越 教夫
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122362(WO,A1)
【文献】実開平02-091238(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯歯車、この内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車、および、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器を備えている波動歯車装置において、
前記外歯歯車の外歯は、前記内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯部分、および、前記内歯に対して歯筋方向に外れた位置に形成した外歯延長部分を備えており、
前記外歯部分および前記外歯延長部分は、前記歯筋方向に沿って、その歯形形状が変化している三次元歯形であり、
前記外歯延長部分は、前記外歯部分の歯筋方向の少なくとも一方の端である第1の端に連続して、前記歯筋方向に延びており、
前記外歯延長部分が前記外歯を前記内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径が、前記外歯部分の前記第1の端から前記外歯延長部分の先端に至るまで漸減していることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波動歯車装置において、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の内方あるいは外方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備えており、
前記外歯延長部分は、前記外歯部分の前記開口端の側の前記第1の端から前記開口端まで延びている波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1に記載の波動歯車装置において、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の内方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備えており、
前記外歯延長部分として、前記外歯部分の前記開口端の側に位置する前記第1の端に連続して前記開口端まで延びている第1外歯延長部分と、前記外歯部分の前記ダイヤフラムの側に位置する第2の端に連続して延びている第2外歯延長部分とを備えており、
前記第1外歯延長部分における少なくとも歯先円直径は、前記外歯部分の前記第1の端から前記開口端に至るまで漸減しており、
前記第2外歯延長部分における少なくとも歯先円直径は、前記外歯部分の前記第2の端から当該第2外歯延長部分の前記ダイヤフラムの側の端に至るまで漸減している波動歯車装置。
【請求項4】
剛性の第1内歯歯車および剛性の第2内歯歯車と、前記第1、第2内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器とを有し、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の外周面に形成された外歯とを備えた波動歯車装置において、
前記外歯は、
前記第1内歯歯車の第1内歯にかみ合い可能な第1外歯部分と、
前記第2内歯歯車の第2内歯にかみ合い可能な第2外歯部分と、
前記第1、第2外歯部分の間を繋ぐ外歯連結部分と、
前記第1外歯部分の端から、歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の一方の第1開口端まで延びている第1外歯延長部分と、
前記第2外歯部分の端から、前記歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の他方の第2開口端まで延びている第2外歯延長部分と
を備えており、
前記外歯連結部分は、前記第1、第2内歯に対して歯筋方向に外れた位置にあり、前記第1外歯延長部分は前記第1内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にあり、前記第2外歯延長部分は前記第2内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にあり、
前記外歯における前記第1外歯部分から前記第1外歯延長部分の端までは、前記外歯の歯形が徐々に変化しており、
前記外歯における前記第2外歯部分から前記第2外歯延長部分の端までは、前記外歯の歯形が徐々に変化しており、
前記第1外歯延長部分が前記第1外歯部分を前記第1内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第1外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径は、前記第1開口端に向けて漸減しており、
前記第2外歯延長部分が前記第2外歯部分を前記第2内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第2外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径は、前記第2開口端に向けて漸減していることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項5】
剛性の内歯歯車、この内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車、および、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器を有し、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の内方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備え、
前記外歯歯車が、成形型を用いて、前記円筒状胴部に前記外歯が一体形成されている成形品である波動歯車装置において、
前記外歯歯車の前記外歯は、前記内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯部分と、前記内歯に対して歯筋方向に外れた位置に形成した第1外歯延長部分および第2外歯延長部分とを備えており、
前記第1外歯延長部分は、前記外歯部分の前記ダイヤフラムの側の端に連続して前記歯筋方向に延びており、
前記第2外歯延長部分は、前記第1外歯延長部分における前記ダイヤフラムの側の端に連続して前記歯筋方向に延びており、
前記第1外歯延長部分と前記第2外歯延長部分との間の境界位置に、前記成形型のパーティングライン跡が位置しており、
前記外歯に、前記歯筋方向に沿って型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、前記パーティングライン跡の位置から前記外歯部分における前記開口端の側の端まで、前記外歯の歯形が連続して徐々に変化しており、
前記第2外歯延長部分が前記外歯を前記内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第2外歯延長部分における少なくとも歯先円直径が、前記パーティングライン跡から前記ダイヤフラムの側の端まで漸減していることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項6】
剛性の内歯歯車、この内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車、および、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器を有し、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の外方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備え、
前記外歯歯車が、成形型を用いて、前記円筒状胴部に前記外歯が一体形成されている成形品である波動歯車装置において、
前記外歯歯車の前記外歯は、前記内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯部分と、前記内歯に対して歯筋方向に外れた位置に形成した第1外歯延長部分および第2外歯延長部分とを備えており、
前記第1外歯延長部分は、前記外歯部分の前記ダイヤフラムの側の端に連続して前記歯筋方向に延びており、
前記第2外歯延長部分は、前記外歯部分の前記開口端の側の端から前記開口端まで延びており、
前記円筒状胴部における前記第1外歯延長部分の前記ダイヤフラムの側の端の部位に、前記成形型のパーティングライン跡が位置しており、
前記外歯に、前記歯筋方向に沿って型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、前記外歯には、前記ダイヤフラムの側の端から前記開口端の側の端まで、前記外歯の歯形が連続して徐々に変化しており、
前記第2外歯延長部分が前記外歯を前記内歯に挿入する際のガイドとなるように、第2外歯延長部分における少なくとも歯先円直径が、前記開口端に向けて漸減していることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項7】
剛性の第1内歯歯車および剛性の第2内歯歯車と、前記第1、第2内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器とを有し、
前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の外周面に形成された外歯とを備え、
前記外歯歯車が、成形型を用いて、前記円筒状胴部の外周面に前記外歯が一体形成されている成形品である波動歯車装置において、
前記外歯は、
前記第1内歯歯車の第1内歯にかみ合い可能な第1外歯部分と、
前記第2内歯歯車の第2内歯にかみ合い可能な第2外歯部分と、
前記第1、第2外歯部分の間を繋ぐ外歯連結部分と、
前記第1外歯部分の端から、歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の第1開口端まで延びている第1外歯延長部分と、
前記第2外歯部分の端から、前記歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の第2開口端まで延びている第2外歯延長部分と
を備えており、
前記外歯連結部分は、前記第1、第2内歯に対して歯筋方向に外れた位置にあり、前記第1外歯延長部分は前記第1内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にあり、前記第2外歯延長部分は前記第2内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にあり、
前記外歯連結部分に、前記成形型のパーティングライン跡が位置しており、
前記外歯における前記パーティングライン跡から前記第1外歯延長部分の端までは、第1の抜き勾配が形成されるように、前記外歯の歯形が徐々に変化しており、
前記外歯における前記パーティングライン跡から前記第2外歯延長部分の端までは、前記第1の抜き勾配とは逆の第2の抜き勾配が形成されるように、前記外歯の歯形が徐々に変化しており、
前記第1外歯延長部分が前記第1外歯部分を前記第1内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第1外歯延長部分における少なくとも歯先円直径は、前記第1開口端に向けて漸減しており、
前記第2外歯延長部分が前記第2外歯部分を前記第2内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第2外歯延長部分における少なくとも歯先円直径は、前記第2開口端に向けて漸減していることを特徴とする波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性の外歯歯車を備えた波動歯車装置に関し、特に、内歯歯車に対する組立を容易に行うことのできる外歯形状を備えた外歯歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置として、カップ形状の外歯歯車を備えたカップ型波動歯車装置、シルクハット形状の外歯歯車を備えたシルクハット型波動歯車装置、円筒形状の外歯歯車を備えたフラット型波動歯車装置が知られている。このような波動歯車装置の構成部品である外歯歯車は、一般に切削加工により製造される。また、外歯歯車を、成形型を用いて製造することも知られている。特許文献1には、外歯歯車の外歯に対応するキャビティ部分を備えた金型を用いて外歯が一体形成された外歯歯車を製造することが記載されている(当該文献の請求項5等)。特許文献2には、フレクスプライン(外歯歯車)を樹脂の成形品とすることが記載されている。
【0003】
一方、波動歯車装置の外歯歯車においては、外歯歯車の歯筋方向の撓み状態を考慮して、内歯歯車の内歯との干渉を回避し、歯当たりを改善可能な歯形を備えたものが提案されている。例えば、特許文献3にはテーパー型の外歯歯形を備えた波動歯車装置が記載されており、特許文献4には、カップ形状の外歯歯車の開口端の側から歯筋に沿って歯厚が漸減する外歯歯形が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-62935号公報
【文献】実開平5-52404号公報
【文献】特開昭62-75153号公報
【文献】特開2017-44287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波動歯車装置の外歯歯車を、成形型を用いて成形品として製造する場合において、外歯歯車の外周面には、成形型のパーティングラインに対応する部位に段差等(パーティングライン跡)が形成される。したがって、パーティングラインの位置が、外歯歯車における外歯形成部分から外れた位置となるように金型の設計等を行う必要がある。また、外歯歯車を内歯歯車に挿入する際に、パーティングライン跡が挿入作業の障害とならないようにする必要がある。
【0006】
さらに、成形型から成形品を型抜きするために、成形品には抜き勾配が付けられる。例えば、カップ形状の外歯歯車の場合には、歯形サイズが歯筋に沿って型抜き方向に向けて徐々に小さくなるようにした外歯形状が採用される。このように歯筋に沿って歯形が変化している歯形(三次元歯形)を備えた外歯歯車の成形品の場合には、歯形のサイズが大きい側から、外歯歯車を内歯歯車に挿入して組み付けることが困難である。この課題は、機械加工によって製造される外歯歯車の場合にも生じる。
【0007】
従来においては、波動歯車装置の外歯歯車についての上記の課題あるいは問題点については着目されていない。また、このような課題あるいは問題点を解決するための提案もなされていない。
【0008】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、歯筋に沿って徐々に変化している歯形(三次元歯形)を備えた外歯歯車を内歯歯車に組み付ける作業を容易に行えるようにした波動歯車装置を提供することにある。また、本発明の目的は、外歯歯車が成形品の場合に成形品におけるパーティングライン跡に起因して外歯歯車を内歯歯車に組み付けることが困難になるという問題を解消できるようにした波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、剛性の内歯歯車、この内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車、および、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器を備えている波動歯車装置において、前記外歯歯車の外歯は、前記内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯部分、および、前記内歯に対して歯筋方向に外れた位置に形成した外歯延長部分を備えている。前記外歯部分および前記外歯延長部分は、前記歯筋方向に沿って、その歯形形状が変化している三次元歯形であり、前記外歯延長部分は、前記外歯部分の歯筋方向の少なくとも一方の端である第1の端に連続して、前記歯筋方向に延びている。前記外歯延長部分が前記外歯を前記内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径が、前記外歯部分の前記第1の端から前記外歯延長部分の先端に至るまで漸減している。
【0010】
外歯歯車において、外歯延長部分は内歯歯車の内歯にはかみ合わない部分である。また、外歯歯車の外歯の一方の端には、歯先円直径が漸減している先細り形状の外歯延長部分が形成されている。外歯歯車の外歯は、歯筋方向に沿って歯形が徐々に変化している。例えば、外歯は、歯厚、歯先円直径などが、外歯歯車の開口端の側に向かって漸減するテーパー型の歯形となっている。
【0011】
外歯部分の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の外歯延長部分が、外歯を内歯歯車の内歯に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車に対する外歯歯車の組立作業が容易になる。
【0012】
カップ形状の外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の内方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備えている。シルクハット形状の外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の一方の端から半径方向の外方に延びているダイヤフラムと、前記円筒状胴部の他方の端である開口端の側の外周面部分に形成された外歯とを備えている。
【0013】
この場合、例えば、前記外歯延長部分は、前記外歯部分の前記開口端の側の前記第1の端から前記開口端まで延びている。外歯延長部分をガイドとして用いることで、外歯歯車を、その開口端の側から内歯歯車に挿入して内歯にかみ合わせる組付け作業が容易になる。
【0014】
カップ形状の外歯歯車を、その円筒状胴部の側から内歯歯車に挿入して組み付ける場合がある。この組付け作業を容易に行えるように、外歯におけるダイヤフラム側の端部分に、挿入ガイド用の外歯延長部分を形成すればよい。なお、外歯における歯筋方向の両端部分に、挿入ガイド用の外歯延長部分を形成することもできる。
【0015】
本発明はフラット型の波動歯車装置にも適用できる。フラット型波動歯車装置は、剛性の第1内歯歯車および剛性の第2内歯歯車と、前記第1、第2内歯歯車の内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車の内側に嵌めた波動発生器とを有し、前記外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、前記円筒状胴部の外周面に形成された外歯とを備えている。
【0016】
この場合には、前記外歯は:前記第1内歯歯車の第1内歯にかみ合い可能な第1外歯部分と、前記第2内歯歯車の第2内歯にかみ合い可能な第2外歯部分と;前記第1、第2外歯部分の間を繋ぐ外歯連結部分と;前記第1外歯部分の端から、歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の一方の第1開口端まで延びている第1外歯延長部分と;前記第2外歯部分の端から、前記歯筋方向に沿って、前記円筒状胴部の他方の第2開口端まで延びている第2外歯延長部分と;を備えている。
【0017】
また、前記外歯連結部分は、前記第1、第2内歯に対して歯筋方向に外れた位置にあり、前記第1外歯延長部分は前記第1内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にあり、前記第2外歯延長部分は前記第2内歯に対して前記歯筋方向に外れた位置にある。前記外歯における前記第1外歯部分から前記第1外歯延長部分の端までは、前記外歯の歯形が徐々に変化しており、前記外歯における前記第2外歯部分から前記第2外歯延長部分の端までは、前記外歯の歯形が徐々に変化している。
【0018】
さらに、前記第1外歯延長部分が前記第1外歯を前記第1内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第1外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径は、前記第1開口端に向けて漸減している。前記第2外歯延長部分が前記第2外歯を前記第2内歯に挿入する際のガイドとなるように、前記第2外歯延長部分における歯厚、歯先円直径および歯底円直径は、前記第2開口端に向けて漸減している。
【0019】
このように、第1外歯部分の端に連続して第1外歯延長部分が形成され、第2外歯部分の端に連続して第2外歯延長部分が形成される。第1、第2外歯延長部分は、先端に向かって歯先円直径が漸減しているテーパー状輪郭をしている。外歯歯車の第1、第2外歯を、第1、第2内歯に挿入する際に、第1、第2外歯延長部分がガイドとして機能するので、外歯歯車に対して第1、第2内歯歯車を組み付ける作業が容易になる。
【0020】
次に、本発明は、成形型を用いて外歯が一体形成されている成形品であるカップ形状の外歯歯車を備えたカップ型波動歯車装置において、外歯歯車の外歯は、内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯部分と、内歯に対して歯筋方向に外れた位置に形成した第1外歯延長部分および第2外歯延長部分とを備えている。カップ形状の外歯歯車の開口端の側から、外歯の歯筋方向に沿って、外歯部分、第1外歯延長部分および第2外歯延長部分が、この順序で歯筋方向に連続している。内歯にかみ合わない第1外歯延長部分と第2外歯延長部分との間の境界に、成形型のパーティングライン跡が位置している。
【0021】
また、外歯には、歯筋方向に沿って型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、外歯のパーティングライン跡の位置から外歯部分における開口端の側の端まで、外歯の歯形が徐々に変化している。例えば、外歯は、歯厚、歯先円直径などが、外歯歯車の開口端の側に向かって漸減するテーパー型の歯形となっている。さらに、第2外歯延長部分が外歯歯車を内歯歯車に挿入する際のガイドとなるように、第2外歯延長部分における少なくとも歯先円直径が、パーティングライン跡の位置から、外歯歯車のダイヤフラムの側の端まで漸減している。
【0022】
カップ形状の外歯歯車において、第1外歯延長部分、第2外歯延長部分は、内歯歯車の内歯にはかみ合わない部分である。また、第1、第2外歯延長部分の境界位置にパーティングライン跡が形成される。パーティングライン跡の段差等の凹凸は、内歯歯車の内歯に対する外歯歯車の外歯のかみ合い状態に悪影響を及ぼすことがない。また、外歯歯車の外歯のダイヤフラム側の端に、ダイヤフラムの側に向けて歯先円直径が漸減している先細り形状の第2外歯延長部分が形成されている。外歯部分の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第2外歯延長部分が、外歯を内歯歯車の内歯に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車に対する外歯歯車の組立作業が容易になる。
【0023】
次に、成形型を用いて外歯が一体形成されている成形品であるシルクハット形状の外歯歯車を備えたシルクハット型波動歯車装置においては、外歯歯車が、その開口端の側から内歯歯車に挿入して組み付けられる。本発明を適用したシルクハット型波動歯車装置の外歯歯車においては、その外歯には、内歯にかみ合い可能な外歯部分のダイヤフラムの側の端に連続して第1外歯延長部分を形成し、外歯部分の開口端の側の端に連続して第2外歯延長部分を形成する。外歯歯車の円筒状胴部における第1外歯延長部分の端が位置する部位に、成形型のパーティングライン跡が形成されるようにする。
【0024】
また、外歯の歯筋方向の全体に亘って、開口端の側に向かう型抜き方向に抜き勾配が形成されるように、外歯の歯形を歯筋方向に沿って徐々に変化させればよい。開口端の側の第2外歯延長部分においては、その歯先円直径が開口端に向かって漸減するような先細りのテーパー状輪郭にする。これにより、内歯にかみ合う外歯の外歯部分が歯筋方向に沿って歯形が徐々に変化している三次元歯形であっても、第2外歯延長部分がガイドとして機能して、外歯歯車を内歯歯車に挿入する作業が容易になる。
【0025】
次に、本発明は、成形型を用いて外歯が一体形成されている成形品であるフラット形状(円筒形状)の外歯歯車を備えた波動歯車装置にも適用可能である。この場合には、外歯歯車の円筒状胴部の外周面に形成した外歯は、一方の第1内歯歯車の第1内歯にかみ合い可能な第1外歯部分と、他方の第2内歯歯車の第2内歯にかみ合い可能な第2外歯部分を備えている。双方の内歯の歯筋方向から外れている第1外歯部分と第2外歯部分の間の部分は、外歯連結部分によって繋げる。この外歯連結部分に、成形型のパーティングライン跡が位置するようにする。
【0026】
また、第1外歯部分の端に連続して第1外歯延長部分を形成する。同様に、第2外歯部分の端に連続して第2外歯延長部分を形成する。第1、第2外歯延長部分は、先端に向かって歯先円直径が漸減しているテーパー状輪郭をしている。外歯歯車の第1、第2外歯を、第1、第2内歯に挿入する際に、第1、第2外歯延長部分がガイドとして機能するので、外歯歯車に対して第1、第2内歯歯車を組み付ける作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】カップ型の波動歯車装置の縦断面図である。
図1B】カップ型の波動歯車装置の正面図である。
図1C】カップ形状の外歯歯車を示す説明図である。
図1D】カップ形状の外歯歯車の別の例を示す説明図である。
図2A】シルクハット型の波動歯車装置の縦断面図である。
図2B】シルクハット形状の外歯歯車を示す説明図である。
図2C】シルクハット形状の外歯歯車の別の例を示す説明図である。
図3A】フラット型波動歯車装置の縦断面図である。
図3B】フラット形状(円筒形状)の外歯歯車を示す説明図である。
図3C】フラット形状の外歯歯車の別の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した波動歯車装置の実施の形態を説明する。以下に述べる実施の形態は、本発明の適用例を示し、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1Aは実施の形態1に係るカップ型波動歯車装置の縦断面図であり、図1Bはその正面図であり、図1Cはカップ形状の外歯歯車を示す説明図である。カップ型波動歯車装置1は、円環状の剛性の内歯歯車2と、その内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車3と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器4とを有している。内歯歯車2と外歯歯車3は同一モジュール(m)の平歯車である。また、両歯車の歯数差は2n(nは正の整数)であり、内歯歯車2の方が多い。外歯歯車3の外歯34は、楕円状輪郭の波動発生器4によって楕円状に撓められ、楕円状の長軸L1の方向の両端部分において内歯歯車2の内歯24にかみ合っている。波動発生器4を回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が周方向に移動し、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車2、3の間に発生する。
【0030】
カップ形状の外歯歯車3は、可撓性の円筒状胴部31と、その一端である後端31bに連続して半径方向の内方に延びるダイヤフラム32と、ダイヤフラム32の内周縁に連続している剛性の円環状のボス33と、円筒状胴部31の他端(前端)である開口端31aの側の外周面部分に形成した外歯34とを備えている。円筒状胴部31の外歯形成部分の内周面部分に嵌め込まれた楕円状輪郭の波動発生器4によって、円筒状胴部31は、そのダイヤフラム側の後端31bから開口端31aに向けて、半径方向の外側あるいは内側への撓み量が漸増している。
【0031】
カップ型波動歯車装置1の外歯歯車3は、成形型を用いて、少なくとも円筒状胴部31に外歯34が一体形成された成形品である。例えば、熱可塑性樹脂の射出成形品である。内歯歯車2も同様に成形品とすることができる。
【0032】
外歯歯車3の外歯34について説明する。外歯34は、内歯歯車2の内歯24にかみ合い可能な外歯部分34aと、内歯24に対して歯筋方向に外れた位置に形成した第1外歯延長部分34bおよび第2外歯延長部分34cとを備えている。外歯34における開口端31aの側の端から、歯筋方向に沿って、外歯部分34a、第1外歯延長部分34bおよび第2外歯延長部分34cが、この順序で連続して延びている。外歯歯車3を内歯歯車2に挿入して組み立てた状態において、外歯34の外歯部分34aは内歯24に対峙する。これに対して、第1、第2外歯延長部分34b、34cは、内歯24に対して歯筋方向に外れた位置にあり、内歯24とはかみ合わない。
【0033】
外歯歯車3の成形型5は、例えば、図1Cにおいて想像線で示すように、一対の開閉型51、52から構成される。開閉型51、52を閉じると、これらの間に、外歯歯車形成用のキャビティが形成される。開閉型51、52のパーティングライン53は、外歯形成用のキャビティ部分における第1外歯延長部分34bと第2外歯延長部分34cとの間の境界に位置するように設定される。これにより、型抜きされ、バリ取り後の外歯歯車3においては、外歯34の第1、第2外歯延長部分34b、34cの境界の部位に、パーティングライン跡34dが残る。
【0034】
外歯34の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、外歯34には、歯筋方向に沿って、型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、パーティングライン跡34dの位置から外歯部分34aにおける開口端31aの側の端まで、外歯34の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端31aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0035】
さらに、第2外歯延長部分34cの歯形も、パーティングライン跡34dからダイヤフラム32の側に向けて、歯形が連続して徐々に変化している三次元歯形となっている。本例では、パーティングライン跡34dからダイヤフラム側の端まで、歯たけが同一のまま、歯先円直径および歯底円直径が漸減しているテーパー型の歯形となっている。このように、外歯34は、パーティングライン跡34dを境にして、逆方向にテーパーが付いている。
【0036】
なお、外歯歯車3の円筒状胴部31の内周面形状は、例えば、開口端31aの側から同一内径の内周面部分31cと、この内周面部分31cに連続して、ダイヤフラム32に向けて内径が漸減している内周面部分31dとによって規定されている。
【0037】
この形状の外歯34の外歯部分34aにかみ合う内歯24を備えた内歯歯車2も成形品として製作できる。内歯歯車2の内歯24は、例えば、歯筋方向において同一の歯形とされる。歯筋方向に僅かに型抜き用の抜き勾配の付いた三次元歯形とすることもできる。
【0038】
本例の外歯歯車3の外歯34において、第1、第2外歯延長部分34b、34cは、内歯歯車2の内歯24にはかみ合わない部分である。また、第1、第2外歯延長部分34b、34cの堺にパーティングライン跡34dが形成される。第1外歯延長部分34b、パーティングライン跡34dの段差等の凹凸、第2外歯延長部分34cは、内歯歯車2の内歯24に対する外歯歯車3の外歯34のかみ合い状態に悪影響を及ぼすことがない。また、外歯歯車3の外歯34のダイヤフラム側の端の側に、ダイヤフラムの側に向けて歯先円直径が漸減している先細り形状の第2外歯延長部分34cが形成されている。したがって、外歯部分34aの歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第2外歯延長部分34cが、外歯34を内歯歯車2の内歯24に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車2に対して、ダイヤフラム32の側から外歯歯車3を挿入する組立作業が容易になる。
【0039】
(カップ形状の外歯歯車の別の例)
上記のカップ形状の外歯歯車3は、成形型を用いて、少なくとも円筒状胴部31に外歯34が一体形成された成形品である。図1Dを参照して、外歯歯車3の代わりに用いることができる切削加工品の外歯歯車の一例を説明する。
【0040】
外歯歯車430は、可撓性の円筒状胴部431と、その一端である後端431bに連続して半径方向の内方に延びるダイヤフラム432と、ダイヤフラム432の内周縁に連続している剛性の円環状のボス433と、円筒状胴部431の他端(前端)である開口端431aの側の外周面部分に形成した外歯434とを備えている。
【0041】
外歯434は、内歯歯車2の内歯にかみ合い可能な外歯部分434aと、内歯24に対して歯筋方向に外れた位置に形成した外歯延長部分434bとを備えている。外歯434における開口端431aの側の端から、歯筋方向に沿って、外歯部分434a、外歯延長部分434bが、この順序で連続して形成されている。外歯歯車430を内歯歯車2に挿入して組み立てた状態において、外歯434の外歯部分434aは内歯24に対峙する。これに対して、外歯延長部分434bは、内歯24に対して歯筋方向に外れた位置にあり、内歯24とはかみ合わない。
【0042】
外歯434の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、歯筋方向に沿って、外歯部分434aにおけるダイヤフラム432の側の端から開口端431aの側の端まで、外歯434の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端431aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0043】
外歯延長部分434bの歯形も、外歯部分434aの側の端から、ダイヤフラム432の側に向けて、歯形が連続して徐々に変化している三次元歯形となっている。本例では、歯たけが同一のまま、歯先円直径および歯底円直径が漸減しているテーパー型の歯形となっている。このように、外歯434は、外歯部分434aと外歯延長部分434bとの境界位置から、逆方向にテーパーが付いている。
【0044】
本例の外歯歯車430の外歯434において、外歯延長部分434bは、内歯歯車2の内歯24にはかみ合わない部分である。また、外歯歯車430の外歯434のダイヤフラム432の側の端の側に、ダイヤフラム432の側に向けて歯先円直径が漸減している先細り形状の外歯延長部分434bが形成されている。外歯部分434aの歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の外歯延長部分434bが、外歯434を内歯歯車2の内歯24に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車2に対して、ダイヤフラム432の側から外歯歯車430を挿入する組立作業が容易になる。
【0045】
(実施の形態2)
図2Aは実施の形態2に係るシルクハット型波動歯車装置の縦断面図であり、図2Bはシルクハット形状の外歯歯車を示す説明図である。シルクハット型波動歯車装置100は、円環状の剛性の内歯歯車120と、その内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車130と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器140とを有している。内歯歯車120と外歯歯車130は同一モジュール(m)の平歯車である。また、両歯車の歯数差は2n(nは正の整数)であり、内歯歯車120の方が多い。外歯歯車130の外歯134は、楕円状輪郭の波動発生器140によって楕円状に撓められ、楕円状の長軸の方向の両端部分において内歯歯車120の内歯124にかみ合っている。波動発生器140を回転すると、両歯車120、130のかみ合い位置が周方向に移動し、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車120、130の間に発生する。
【0046】
シルクハット形状の外歯歯車130は、可撓性の円筒状胴部131と、その一端である後端131bに連続して半径方向の外方に延びるダイヤフラム132と、ダイヤフラム132の外周縁に連続している剛性の円環状のボス133と、円筒状胴部131の他端(前端)である開口端131aの側の外周面部分に形成した外歯134とを備えている。円筒状胴部131の外歯形成部分の内周面部分に嵌め込まれた楕円状輪郭の波動発生器140によって、円筒状胴部131は、そのダイヤフラム側の後端131bから開口端131aに向けて、半径方向の外側あるいは内側への撓み量が漸増している。
【0047】
シルクハット型波動歯車装置100の外歯歯車130は、成形型を用いて、少なくとも円筒状胴部131に外歯134が一体形成された成形品である。例えば、熱可塑性樹脂の射出成形品である。内歯歯車120も同様に成形品とすることができる。
【0048】
外歯歯車130の外歯134について説明する。外歯134は、内歯歯車120の内歯124にかみ合い可能な外歯部分134aと、内歯124に対して歯筋方向に外れた位置に形成した第1外歯延長部分134bおよび第2外歯延長部分134cとを備えている。外歯134における開口端131aの側の端から、歯筋方向に沿って、第2外歯延長部分134c、外歯部分134aおよび第1外歯延長部分134bが、この順序で形成されている。外歯歯車130を内歯歯車120に挿入して組み立てた状態において、外歯134の外歯部分134aは、内歯124に対峙する。これに対して、第1、第2外歯延長部分134b、134cは、内歯124に対して歯筋方向に外れた位置にあり、内歯124とはかみ合わない。
【0049】
外歯歯車130の成形型(図示せず)は、例えば、一対の開閉型から構成される。開閉型を閉じると、これらの間に、外歯歯車形成用のキャビティが形成される。成形型のパーティングラインは、外歯形成用のキャビティ部分において、円筒状胴部131に対応する部位の第1外歯延長部分134bのダイヤフラム側の端に位置するように設定される。これにより、型抜き後の外歯歯車130においては、外歯134の第1外歯延長部分134bの端に、パーティングライン跡134dが残る。
【0050】
外歯134の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、外歯134には、歯筋方向に沿って、型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、外歯134において、パーティングライン跡134dの位置から第2外歯延長部分134cの端(開口端131a)まで、外歯134の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端131aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0051】
この形状の外歯134の外歯部分134aにかみ合う内歯124を備えた内歯歯車120も成形品として製作できる。内歯歯車120の内歯124は、例えば、歯筋方向において同一の歯形とされる。歯筋方向に僅かに型抜き用の抜き勾配の付いた三次元歯形とすることもできる。
【0052】
本例の外歯歯車130の外歯134において、第1外歯延長部分134b、パーティングライン跡134dの段差等の凹凸、第2外歯延長部分134cは、内歯歯車120の内歯124に対する外歯歯車130の外歯134のかみ合い状態に悪影響を及ぼすことがない。また、外歯歯車130の外歯134の開口端131aの側には、先細り形状の第2外歯延長部分134cが形成されている。外歯部分134aの歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第2外歯延長部分134cが、外歯部分134aを内歯歯車120の内歯124に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車120に対して、外歯歯車130をその開口端131aの側から挿入する組立作業が容易になる。
【0053】
(外歯歯車の別の例)
上記のシルクハット形状の外歯歯車130は、成形型を用いて、少なくとも円筒状胴部131に外歯134が一体形成された成形品である。図2Cを参照して、外歯歯車130の代わりに用いることができる切削加工品の外歯歯車の一例を説明する。
【0054】
外歯歯車530は、可撓性の円筒状胴部531と、その一端である後端531bに連続して半径方向の外方に延びるダイヤフラム532と、ダイヤフラム532の内周縁に連続している剛性の円環状のボス533と、円筒状胴部531の他端(前端)である開口端531aの側の外周面部分に形成した外歯534とを備えている。
【0055】
外歯534は、内歯歯車120の内歯124にかみ合い可能な外歯部分534aと、内歯124に対して歯筋方向に外れた位置に形成した外歯延長部分534cとを備えている。外歯534における開口端531aの側の端から、歯筋方向に沿って、外歯延長部分534cおよび外歯部分534aが、この順序で連続して延びている。外歯歯車530を内歯歯車120に挿入して組み立てた状態において、外歯534の外歯部分534aは、内歯124に対峙する。これに対して、外歯延長部分534cは、内歯124に対して歯筋方向に外れた位置にあり、内歯124とはかみ合わない。
【0056】
外歯534の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、外歯534において、ダイヤフラム側の端から第2外歯延長部分534cの端(開口端531a)まで、外歯534の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端531aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0057】
本例の外歯歯車530の外歯534において、その開口端531aの側には、先細り形状の外歯延長部分534cが形成されている。外歯部分534aの歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の外歯延長部分534cが、外歯部分534aを内歯歯車の内歯に挿入する際のガイドとして機能する。よって、内歯歯車120に対して、外歯歯車530をその開口端531aの側から挿入する組立作業が容易になる。
【0058】
(実施の形態3)
図3Aは実施の形態3に係るフラット型波動歯車装置の縦断面図であり、図3Bはフラット形状(円筒形状)の外歯歯車を示す説明図である。フラット型波動歯車装置200は、円環状の剛性の第1内歯歯車221および第2内歯歯車222と、これらの内側に同軸状に配置された可撓性の外歯歯車230と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器240とを有している。第1、第2内歯歯車221、222と、外歯歯車230は同一モジュール(m)の平歯車である。第1内歯歯車221と外歯歯車230の歯数差は2n(nは正の整数)であり、第1内歯歯車221の方が多い。第2内歯歯車222と外歯歯車230の歯数は同一であり、一体となって回転する。
【0059】
外歯歯車230の外歯234は、楕円状輪郭の波動発生器240によって楕円状に撓められ、楕円状の長軸の方向の両端部分において第1、第2内歯歯車221、222の第1内歯223、第2内歯224にかみ合っている。波動発生器240を回転すると、第1内歯歯車221に対する外歯歯車230のかみ合い位置が周方向に移動し、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車221、230の間に発生する。第1内歯歯車221は回転しないように固定される。この場合には、外歯歯車230が回転し、これと一体回転する第2内歯歯車222から減速回転が出力される。
【0060】
フラット型波動歯車装置200の外歯歯車230は、成形型を用いて、円筒状胴部231に外歯234が一体形成された成形品である。例えば、熱可塑性樹脂の射出成形品である。第1、第2内歯歯車221、222も同様に成形品とすることができる。
【0061】
外歯歯車230は、可撓性の円筒状胴部231と、その外周面に形成した外歯234とを備えている。外歯234は、第1内歯歯車221の第1内歯223にかみ合い可能な第1外歯部分235と、他方の第2内歯歯車222の第2内歯224にかみ合い可能な第2外歯部分236を備えている。双方の内歯の歯筋方向から外れている第1、2外歯部分235、236の間は、外歯連結部分237によって繋がっている。外歯連結部分237は、第1、第2内歯223、224の双方から歯筋方向に外れた位置にある。この外歯連結部分237には、成形型のパーティングライン跡234dが位置している。
【0062】
また、第1外歯部分235の端に連続して第1外歯延長部分238が形成されている。第1外歯延長部分238は、第1内歯223に対して歯筋方向に外れた位置に形成されている。同様に、第2外歯部分236の端に連続して第2外歯延長部分239が形成されている。第2外歯延長部分239は、第2内歯224に対して歯筋方向に外れた位置に形成されている。
【0063】
外歯歯車230の成形型(図示せず)は、例えば、一対の開閉型から構成される。成形型のパーティングラインは、外歯形成用のキャビティ部分における外歯連結部分237に位置するように設定される。これにより、成形後の外歯歯車230においては、外歯234の外歯連結部分237にパーティングライン跡234dが残る。
【0064】
外歯234の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、外歯234には、歯筋方向に沿って、型抜きのための所定の抜き勾配が形成されるように、パーティングライン跡234dの位置から、円筒状胴部の一方の開口端231aの側の第1外歯延長部分238の端まで、外歯234の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端231aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。同様に、パーティングライン跡234dの位置から、円筒状胴部231の他方の開口端231bの側の第2外歯延長部分239の端まで、外歯234の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端231bに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0065】
この形状の外歯234の第1外歯部分235にかみ合う第1内歯223を備えた第1内歯歯車221を成形品として製作できる。また、外歯234の第2外歯部分236にかみ合う第2内歯224を備えた第2内歯歯車222を成形品として製作できる。
【0066】
本例の外歯歯車230の外歯234において、外歯連結部分237、パーティングライン跡234dの段差等の凹凸、第1、第2外歯延長部分238、239は、第1、第2内歯歯車221、222に対する外歯歯車230のかみ合い状態に悪影響を及ぼすことがない。また、外歯歯車230の外歯234における一方の開口端231aの側には、先細り形状の第1外歯延長部分238が形成されている。第1外歯部分235の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第1外歯延長部分238が、第1外歯部分235を第1内歯歯車221の第1内歯223に挿入する際のガイドとして機能する。同様に、第2外歯部分236の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第2外歯延長部分239が、第2外歯部分236を第2内歯歯車222の第2内歯224に挿入する際のガイドとして機能する。よって、第1、第2内歯歯車221、222に、外歯歯車230を挿入する組立作業が容易になる。
【0067】
(外歯歯車の別の例)
上記の外歯歯車230は、成形型を用いて、円筒状胴部231に外歯234が一体形成された成形品である。図3Cを参照して、外歯歯車230の代わりに用いることができる切削加工品の外歯歯車の一例を説明する。
【0068】
外歯歯車630は、可撓性の円筒状胴部631と、その外周面に形成した外歯634とを備えている。外歯634は、第1内歯歯車221の第1内歯223にかみ合い可能な第1外歯部分635と、他方の第2内歯歯車222の第2内歯224にかみ合い可能な第2外歯部分636を備えている。双方の内歯の歯筋方向から外れている第1、2外歯部分635、636の間は、外歯連結部分637によって繋がっている。外歯連結部分637は、第1、第2内歯223、224の双方から歯筋方向に外れた位置にある。
【0069】
また、第1外歯部分635の端に連続して第1外歯延長部分638が形成されている。第1外歯延長部分638は、第1内歯223に対して歯筋方向に外れた位置に形成されている。同様に、第2外歯部分636の端に連続して第2外歯延長部分639が形成されている。第2外歯延長部分639は、第2内歯224に対して歯筋方向に外れた位置に形成されている。
【0070】
外歯634の歯形は、その歯筋方向に沿って徐々に変化する三次元歯形である。本例では、外歯634には、外歯連結部分637の歯筋方向の中央の位置634dから、円筒状胴部の一方の開口端631aの側の第1外歯延長部分638の端まで、外歯634の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端631aに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。同様に、外歯連結部分637の歯筋方向の中央の位置から、円筒状胴部631の他方の開口端631bの側の第2外歯延長部分639の端まで、外歯634の歯形が連続して徐々に変化している。例えば、歯厚、歯先円直径、歯底円直径が開口端631bに向かって漸減しているテーパー型の歯形となっている。
【0071】
本例の外歯歯車630の外歯634において、一方の開口端631aの側には、先細り形状の第1外歯延長部分638が形成されている。第1外歯部分635の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第1外歯延長部分638が、第1外歯部分635を第1内歯歯車221の第1内歯223に挿入する際のガイドとして機能する。同様に、第2外歯部分636の歯形が歯筋方向に沿って歯形が変化している三次元歯形であっても、小径の第2外歯延長部分639が、第2外歯部分636を第2内歯歯車222の第2内歯224に挿入する際のガイドとして機能する。よって、第1、第2内歯歯車221、222に、外歯歯車630を挿入する組立作業が容易になる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C