(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20220307BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220307BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220307BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20220307BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
F04D29/66 D
F04B39/00 102T
F16F15/08 E
F16F15/04 P
F16F1/36 Y
(21)【出願番号】P 2017119711
(22)【出願日】2017-06-19
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 静
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 信彦
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001655(JP,A)
【文献】特開平06-101643(JP,A)
【文献】特開昭58-187589(JP,A)
【文献】特開2014-043810(JP,A)
【文献】特開平04-307141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04B 39/00
F16F 15/08
F16F 15/04
F16F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプのケーシングにポンプ駆動用の電動機の一端が固定されているポンプであって、
前記ポンプのケーシングを据え付けるベースと、
前記ベースから上方に伸びて前記電動機の他端を支える支持部材と、
前記支持部材と前記電動機との間に設けた減衰部材と、を備え、
前記減衰部材は、
その自重方向である上下方向のばね定数が
自重方向に垂直な水平方向のばね定数より小さく、
前記減衰部材は、上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材は、上下方向の共振周波数が水平方向の共振周波数よりも小さいことを特徴とするポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材の上下方向および水平方向の共振周波数は、それぞれ片持ち支持された前記電動機の上下方向および水平方向の共振周波数の1/√2以下であることを特徴とするポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材が、上下方向のばね定数が水平方向のばね定数より小さい単一部材からなることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材が、ばね定数の異なる複数の減衰部材を積層した積層部材からなり、減衰部材全体の上下方向のばね定数が水平方向のばね定数より小さいことを特徴とするポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材が、前記電動機に接するように配置されていることを特徴とするポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材は、前記支持部材に取り付けた保持部材により保持されていることを特徴とするポンプ。
【請求項8】
請求項7に記載のポンプにおいて、
前記保持部材は、前記電動機の回転軸方向から見て部分円形或いはV字状であることを特徴とするポンプ。
【請求項9】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材と前記電動機の間に電動機の保持部を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項10】
請求項9に記載のポンプにおいて、
前記電動機の保持部は、前記電動機の回転軸方向から見て部分円形或いはV字状であることを特徴とするポンプ。
【請求項11】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記減衰部材が、複数個、前記電動機の回転軸に対して左右に配置されていることを特徴とするポンプ。
【請求項12】
請求項11に記載のポンプにおいて、
左右に配置された前記減衰部材の電動機接触部が、略V字状を形成していることを特徴とするポンプ。
【請求項13】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記電動機に制御機器が一体に取り付けられていることを特徴とするポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの振動振幅を減少させる制振技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースの上に据え付けられたポンプ羽根車を内包するケーシングに羽根車を駆動する電動機がフランジやブラケット等を介して固定され、固定側とは反対側の電動機他端が固定されていない電動機片持ち支持構造のポンプの場合、ケーシングを固定端とした電動機他端の振動振幅が問題となる。従来の電動機の運転周波数は電源周波数の50Hzまたは60Hzと極数により決定して運転されており、電動機他端の振動の共振周波数が運転周波数を避けた周波数になるように構造設計されてきた。
【0003】
共振振動をしていなくても運転時の電動機他端の振動振幅は固定端との距離が長い程大きくなるので問題となることもあり、振動振幅を抑制するのに電動機他端の下側をボルトやその他の部材のような支持部材で支持し、運転時の上下方向の振動振幅を抑えることにしている。支持部材での支持は上下1方向で、支持部材と電動機は固定されずにある押しつけ力をもって接触させ、支持部材の強度に合わせた拘束構造となっている。
【0004】
共振を避けるための手段として共振周波数を運転周波数よりも高くすることがあるが、構成部品のポンプベース、ポンプケーシング、電動機を取り付けるフランジ等の接続部位、電動機のハウジング、の剛性を上げて各々の固有振動数を上げる必要があり、それにより全体質量の増加、全体形状の大型化、製作コストの増加となる上に、質量増加により固有振動数が下がるという短所もある。電動機自身に取付脚を設けて片持ち支持型を止める方法もあるが、その際にはポンプケーシングとの精密な位置調整やベースの大型化という問題も発生し、製作コストやメンテナンス性の低下となる。
【0005】
また、共振周波数に特に大きな影響があるのは電動機の質量で、あるポンプで共振周波数が運転周波数を上回っていても、電動機出力を大きくし質量が増すと他端の固有振動数が低下して運転周波数に近くなると共振振動を引き起こす。これは、ポンプには流量が多くなると出力も大きくなる特性を利用して、同じベース、羽根車、ケーシングを用いて電動機のみの変更で広い範囲の流量に対応するように標準化しているためである。しかし、上記のような電動機質量に対して固有振動数変化が発生すると、共振振動を起こす流量、出力の電動機の場合には大幅な製品構造変更が必要となる。新規製品以外でも電動機更新の場合、電動機のモデルチェンジにより質量や剛性が変わり電動機他端の固有振動数が変わっており、運転周波数に近づくと共振振動が発生する。
【0006】
高効率電動機の採用により、同じ出力でも電動機の質量が重くなり共振周波数が下がって、電動機更新時や新製品開発時に共振を引き起こす場合もある。高効率電動機は高効率化の実現のため、回転子や固定子のコアを大型化して内部損失の低減を図り、コイル巻線のサイズを太くして電気抵抗を減らしているので、質量が増加している。
【0007】
さらに、近年の省エネルギーの要求からポンプには水の使用量に合わせて水量を変える最適運転を求められ、水量の増減は回転速度に比例するため、運転周波数の制御で行われるようになり、今までの単一回転周波数運転から広範囲の回転周波数変化をする運転をするので、共振周波数を回避した運転が難しくなっている。そして、ポンプのコンパクト化を目的に、前記運転周波数を変化させる制御機器を電動機と一体型にすることになり、電動機の質量がさらに増大し共振周波数が低下している。
【0008】
特許文献1には、片持ち支持部に無理な力を与えることなく、振動を抑制することができる圧縮機の提供を課題として、「電動機本体11の軸方向における一端部13Aを固定し他端部13Bを自由にして支持する片持ち支持部21及び電動機本体11の他端部13Bを支持する支持面24を有する台座部22を備える基台20と、電動機本体11と台座部22との支持面24に平行で且つ軸方向と直交する直交方向への相対移動を拘束し、電動機本体11と台座部22との支持面24に対し垂直な垂直方向への相対移動を可能とするサポート部材30と、を有する、電動機の支持構造Aを採用する。」(要約参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記「背景技術」で述べたように、従来の電動機片持ち支持型のポンプでは共振周波数は、電源周波数により決まる運転周波数を回避した構造とすればよかったが、ポンプ標準化によるモータ質量の多様化、電動機更新時の電動機モデルチェンジによる質量、剛性変化、電動機の高効率化による質量増加、広範囲の運転周波数の要求、制御機器一体化による質量増加、と共振振動を回避した電動機片持ち支持型のポンプの開発が難しくなっている。
【0011】
特許文献1の電動機の支持構造は、電動機本体の水平方向の相対移動を拘束し、垂直方向の相対移動を可能として、片持ち支持部に無理な力を与えることなく振動を抑制するものであり、共振振動を抑制することは考慮されていない。
【0012】
本発明は、安価でコンパクトな構造で、電動機片持ち支持型ポンプの振動振幅を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための、本発明のポンプの一例を挙げれば、ポンプのケーシングにポンプ駆動用の電動機の一端が固定されているポンプであって、前記ポンプのケーシングを据え付けるベースと、前記ベースから上方に伸びて前記電動機の他端を支える支持部材と、前記支持部材と前記電動機との間に設けた減衰部材と、を備え、前記減衰部材は、その自重方向である上下方向のばね定数が自重方向に垂直な水平方向のばね定数より小さく、前記減衰部材は、上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価でコンパクトな構造で、電動機片持ち支持型ポンプの振動振幅を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】電動機の下半分に大型で剛性の高い支持部材を設けた、従来
のポンプを示す図である。
【
図8】電動機の運転周波数と上下方向および水平方向の振動振幅の関係を示す図である。
【
図9】減衰部材を2層で構成した場合の、減衰部材全体のばね定数を示す説明図である。
【
図10】本発明による、上下方向および水平方向の振動振幅の低下を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を説明する前に、本発明を説明する。
【0017】
上記「背景技術」で述べた、広範囲に運転周波数を変化させる制御機器と電動機が一体型となりポンプケーシングに固定されている電動機片持ち支持型のポンプについて、ポンプケーシングを固定端として電動機他端に発生する共振振動の挙動を測定すると、ある周波数で上下方向の振動が現れ、次いでそれよりも高い周波数で回転軸に垂直な水平方向の振動振幅が発生していることが分かった。
【0018】
図8は、この運転周波数変化と振動振幅の関係を示す図である。
図8(a)に示す上下方向の振動振幅は上下方向共振周波数f1で共振し、
図8(b)に示す回転軸に垂直な水平方向の振動振幅は水平方向共振周波数f2で共振する。そして、上下方向共振周波数f1よりも水平方向共振周波数f2が大となる、f1<f2の関係にある。
【0019】
このような水平方向と上下方向の2方向での2つの共振周波数を運転周波数範囲より大きくして回避するためには、電動機他端の支持部材の剛性を上げ、上下方向と水平方向の2方向の固有振動数を上げるような構造にする必要があり、例えば
図7に示すような電動機下半分を支える構造となる。
【0020】
図7において、
図7(a)
はポンプの正面図、
図7(b)は右側面図である。ベース13の上に据え付けられた、ポンプ羽根車11を内包するケーシング12に羽根車11を駆動する電動機21がフランジやブラケット22等を介して、固定部またはポンプケーシング接触部24で固定されている。電動機21には端子箱23が一体に固定されており、電動機の他端25側は下半分が支持部材31の電動機接触部32で支持されている。支持部材31と電動機21を固定するとポンプケーシング12との精密な位置調整が必要になるため、支持部材31と電動機21の接触面は弾力性のある部材33とし、支持部材31は2方向の剛性を上げるために大型化している。そして、ケーシング12と支持部材31を載せるベース13も大型化し、設置面積も大きくなっている。このように2方向の共振振動を回避しようとすると支持部材31は大型かつ高価な構造となってしまう。
【0021】
共振振動が発生した時の解決方法としては、共振周波数での運転を避ける、共振時の振動振幅を減衰させて小さくする、加振源のエネルギーを小さくする、という方法が考えられる。上記の通り、共振周波数を避けた構造は非常に高価な複雑な構造となり、また、加振源のエネルギー低減は電動機やポンプのアンバランスやトルクに起因するため、低減するのは難しい。そこで、共振時の振動振幅の減衰が有効な手段となる。本発明では共振時の振動振幅を減衰させるために、片持ち支持型ポンプの電動機の他端を支える支持部材の固有振動数を共振周波数を減衰させる周波数に合わせたものにすることで実現する。
【0022】
一般的に振動振幅を減衰部材を使用して減衰させるメカニズムとしては、減衰させたい周波数fと減衰部材の振動方向の固有振動数foとの比f/foが√2以上とするときに振動振幅の減衰は大きくなる。減衰部材の固有振動数foは部材のばね定数または弾性係数と形状、電動機の質量により決まってくる。部材の固有振動数f0[Hz]は、ばね定数をK[N/m]、質量をM[kg]とすると、次式で表される。
【0023】
【0024】
上記のように、電動機の共振周波数は上下方向と水平方向の2方向の2種類の周波数で、上下方向の共振周波数f1が低く、水平方向の共振周波数f2がそれよりも高い周波数で出現する。そのため、支持部材のばね定数は2方向で異なり、上下方向よりも水平方向が高くなる材料が必要となる。このようなばね定数を実現するには、単一材料で上下方向と水平方向のばね定数の異なる材料を用いるか、ばね定数の異なる材料を積層して上記の2方向のばね定数の関係を満たす支持部材を構成する。
【0025】
単一材料で構成する場合には、例えば、ゴムや樹脂などの材質でできた直方体に一方向に貫通孔を形成してばね定数が上下と左右で異なるようにした部材を減衰部材として用いてもよいし、結晶構造によってばね定数が上下左右で異なる材質の部材を減衰部材として用いてもよい。
【0026】
2層以上に積層する場合には、例えば金属とゴム、あるいはゴムと樹脂などのように各層が異なるばね定数を持つ部材を積層すればよい。
図9に、ばね定数が異なる2つの減衰部材A341および減衰部材B342を積層した場合の、上下および水平の2方向の全体のばね定数を示す。図において、
K
HA…減衰部材Aの水平方向ばね定数、K
VA…減衰部材Aの上下方向ばね定数
K
HB…減衰部材Bの水平方向ばね定数、K
VB…減衰部材Bの上下方向ばね定数
K
H …減衰部材全体の水平方向ばね定数、K
V …減衰部材全体の上下方向ばね定数
とすると、減衰部材Aおよび減衰部材Bと全体のばね定数の関係は次式で表される。
【0027】
【0028】
減衰部材全体の上下方向のばね定数KVと水平方向のばね定数KHとが所望の値となるように、そして数式1の関係式から上下方向の共振周波数f01と水平方向の共振周波数f02とが所望の値となるように、減衰部材Aおよび減衰部材Bの材質を選定すればよい。
【0029】
なお、高減衰機能のある材料を使用すれば、振動数比による減衰効果にさらに加算した減衰効果となる。
【0030】
また、2方向での減衰効果を得るための支持として、上下方向は自重方向なので接触面となるが、水平方向の支持は材料の摩擦係数を利用する方法となる。また、支持部が電動機に水平方向でも当たるようにクサビ型や半円筒型にして、水平方向に電動機の保持ができるようにすることが考えられる。
【0031】
支持部材全体を減衰効果のある材料にすることもできるが、電動機と支持部材の間に上記ばね定数の減衰部材を配したり、電動機を2方向保持する架台の根本や下側に配することで、支持部材の形状をばね定数にこだわらないものにすることができる。
【0032】
以下に本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0033】
図1に本発明の実施例1のポンプを示し、
図1(a)は実施例1
のポンプの正面図、
図1(b)は右側面図である。
【0034】
ベース13の上に、ポンプ羽根車11を内包するケーシング12が据え付けられている。そして、羽根車11を駆動する電動機21が、フランジやブラケット22等を介して、ケーシング12の固定部24に取り付けられて、片持ち支持されている。電動機21には制御機器26が一体に固定されている。電動機を固定する固定部24と反対の他端側には、ベース13から上方に伸びて電動機21の他端25を支える支持部材31が設けられている。そして、支持部材31と電動機21の間には、上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ減衰部材34が配されている。減衰部材31のばね定数は、上下方向と水平方向とで異なり、上下方向のばね定数が水平方向のばね定数よりも小さいものである。
【0035】
ばね定数と共振周波数の関係は、一般に数式1で与えられるので、上下方向のばね定数KVが水平方向のばね定数KHより小さい減衰部材を電動機21と支持部材31の間に設けることにより、減衰部材の上下方向の共振周波数f01を水平方向の共振周波数f02よりも小さくできる。減衰部材の上下方向の共振周波数f01および水平方向の共振周波数f02は、それぞれ電動機の上下方向共振周波数f1および水平方向共振周波数f2から1/√2以下とするのが好ましい。これにより、片持ち支持型ポンプの電動機の上下方向共振周波数f1および水平方向共振周波数f2から減衰部材のそれぞれの共振周波数f01およびf02を離すことができ、共振時の振動振幅を良好に減衰させることができる。
【0036】
この関係を
図10に示す。上下方向の共振周波数f01および水平方向の共振周波数f02を有する減衰部材を取り付けることにより、片持ち支持型ポンプの電動機の上下方向共振周波数f1および水平方向共振周波数f2における振動振幅が図の点線に示すようにそれぞれ低下し、振動振幅を減衰させることができる。
【0037】
実施例1では、単一材料で上下方向および水平方向のばね定数の異なる減衰部材を用いており、減衰部材の材料としては、例えば、ゴムや樹脂などの材質でできた直方体に一方向に貫通孔を形成してばね定数が上下と左右で異なるようにした部材を用いてもよいし、結晶構造によってばね定数が上下と左右で異なる材質の部材を用いてもよい。
【0038】
本実施例では、2方向での減衰効果を得るための支持として、上下方向は自重方向なので接触面となるが、水平方向の支持は材料の摩擦係数を利用する方法となる。
【0039】
なお、
図1では、支持部材31の幅(径)よりも減衰部材34の幅(径)が大きくなるように記載しているが、同じ幅(径)であってもよい。
【0040】
本実施例によれば、電動機の他端を支える支持部材と電動機との間に減衰部材を設け、減衰部材は、上下方向のばね定数が水平方向のばね定数より小さいものとしたので、安価でコンパクトな構造で、電動機片持ち支持型ポンプの振動振幅を抑制することができる。
【実施例2】
【0041】
図2に本発明の実施例2のポンプを示し、
図2(a)は実施例2
のポンプの正面図、
図2(b)は右側面図である。実施例2は、減衰部材を、ばね定数の異なる材料を積層して構成したものである。
【0042】
図に示すように、減衰部材34をばね定数の異なる減衰部材A341と減衰部材B342とを積層して構成する。減衰部材全体の上下方向および水平方向のばね定数は、上述した数式2で与えられ、減衰部材34の上下方向および水平方向の共振周波数は、数式1で計算されるので、片持ち支持型ポンプの電動機の上下方向共振周波数f1および水平方向共振周波数f2から減衰部材34のそれぞれの共振周波数f01およびf02が離れるように減衰部材A341と減衰部材B342とを選択することにより、共振時の振動振幅を減衰させることができる。
【0043】
なお、
図2では、減衰部材34を減衰部材Aと減衰部材Bの2層を積層して構成したが、3つ以上の減衰部材を積層して構成してもよい。
【0044】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、減衰部材をばね定数の異なる材料を積層して構成したので、材料の組み合わせにより減衰部材を容易に構成することができる。
【実施例3】
【0045】
図3に本発明の実施例3のポンプを示し、
図3(a)は実施例3
のポンプの正面図、
図3(b)は右側面図である。実施例3は、実施例1のポンプにおいて部分円形の保持部を設け、保持部に減衰部材を配置したものである。
【0046】
図に示すように、支持部材31の上端に電動機21の外周に沿うような部分円形の保持部35を取り付ける。そして、片持ち支持型ポンプの電動機21と部分円形の保持部35との間に、実施例1と同様の上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ減衰部材34を配置する。
【0047】
なお、
図3では、保持部35を部分円形の保持部としたがV字状のくさび型で構成してもよい。
【0048】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、部分円形の保持部上に減衰部材を取り付け、電動機を配置したので、減衰部材が電動機の外周に水平方向で当たり、水平方向に位置を規制して電動機を保持することができる。
【実施例4】
【0049】
図4に本発明の実施例4のポンプを示し、
図4(a)は実施例4
のポンプの正面図、
図4(b)は右側面図である。実施例4は、実施例3のポンプにおいて、部分円形の保持部上に減衰部材を設けるに代えて、減衰部材を支持部材と部分円形の保持部との間に配置したものである。
【0050】
図に示すように、支持部材31の上方に上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ減衰部材34を取り付け、減衰部材34に電動機21の外周に沿うような部分円形の保持部35が配されている。そして、電動機21は部分円形の保持部35上に載置される。
【0051】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、減衰部材上に部分円形の保持部を取り付け、電動機を配置したので、保持部が電動機の外周に水平方向で当たり、水平方向に位置を規制して電動機を保持することができる。
【実施例5】
【0052】
図5に本発明の実施例5のポンプを示し、
図5(a)は実施例5
のポンプの正面図、
図5(b)は右側面図である。実施例5は、実施例4のポンプにおいて、部分円形の保持部に代えて、V字状のくさび型の保持部としたものである。
【0053】
図に示すように、支持部材31の上方に上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ減衰部材34を取り付け、減衰部材34に電動機の外周に2カ所で接するようなV字状のくさび形の保持部35が配されている。そして、電動機21はくさび形の保持部35上に載置される。
【0054】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、V字状のくさび形の保持部で電動機を保持するようにしたので、保持部が電動機に水平方向で当たり、電動機の水平方向の移動を押さえることができる。
【実施例6】
【0055】
図6に本発明の実施例6のポンプを示し、
図6(a)は実施例6
のポンプの正面図、
図6(b)は右側面図である。実施例6は、実施例2のポンプにおいて、電動機の回転軸に対して左右に対称に2つの支持部材を設け、それぞれの支持部材に減衰部材を設けたものである。
【0056】
図に示すように、ベース13上に、電動機21の回転軸に対して左右に対称に2つの支持部材31を設ける。そして、それぞれの支持部材31に、上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ減衰部材34を設ける。左右の減衰部材34は、それぞれの減衰部材34が電動機の回転軸を向くように、そして、左右の電動機接触部32が略V字状となるように2つの支持部材31に取り付けられている。
【0057】
本実施例によれば、上下方向と水平方向の共振周波数において減衰効果を持つ2つの減衰部材を設けることにより、共振時の振動振幅を減衰させることができるとともに、略V字状となるように配置された複数の減衰部材で電動機を保持するようにしたので、保持部が電動機に水平方向で当たり、電動機の水平方向の移動を押さえることができる。
【符号の説明】
【0058】
11…羽根車
12…ポンプケーシング
13…ベース
21…電動機
22…フランジまたはブラケット
23…端子箱
24…固定部またはポンプケーシング接触部
25…他端
26…制御機器
31…支持部材
32…電動機接触部
33…弾力性のある部材
34…減衰部材
341…減衰部材A
342…減衰部材B
35…保持部