(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】排水トラップ装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/28 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
E03C1/28 B
E03C1/28 Z
(21)【出願番号】P 2017155306
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】植田 勇輔
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253722(JP,A)
【文献】特開2014-031678(JP,A)
【文献】特開2005-171483(JP,A)
【文献】特開2015-163751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
を備えた排水トラップ装置において、
前記排水連通手段は、
前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
前記第1排水トラップ体の通水孔および前記第2排水トラップ体の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
前記第1排水トラップ体および前記第2排水トラップ体にそれぞれ設けた前記配管継ぎ手の前記連結口同士を中空の可撓性連結体で接続し、
前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体
の理想的な配置から
、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記配管継ぎ手の前記連結口同士の離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項2】
浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
を備えた排水トラップ装置において、
前記排水連通手段は、
前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の何れか一方の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
前記配管継ぎ手を設けない他方の前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体には、前記通水孔から外方に突出する連結管を設け、
前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の一方に設けた前記配管継ぎ手の前記連結口と前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の他方に設けた前記連結管の開口端と、を中空の可撓性連結体で接続し、
前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体
の理想的な配置から
、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記連結管の開口端と前記配管継ぎ手の前記連通口との離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項3】
前記第1排水トラップ体および/または前記第2排水トラップ体は、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側から前記排水用貫通孔周辺に当着する所要幅の環状当着面を備える本体側フランジ部と、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの上面側から前記本体側フランジ部へ取り付けて固定する固定フランジ部材と、を備え、
前記本体側フランジ部の環状当着面と前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面との間に、所要厚さのスペーサを介在させることで、前記浴槽側パンに取り付けた前記第1排水トラップ本体の貯水空部と前記洗い場側パンに取り付けた前記第2排水トラップ本体の貯水空部との相対的高さを調整できるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水トラップ装置。
【請求項4】
前記スペーサは、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側に押し当たる上面および/または前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる下面に、密封構造を設けたことを特徴とする請求項3に記載の排水トラップ装置。
【請求項5】
前記スペーサには、前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる前記下面の外側から下方に延出するホールド部を設け、
前記スペーサの前記ホールド部を前記本体側フランジ部の外周上部に嵌め込むことで、前記スペーサが前記本体側フランジ部から脱落することを防止するようにしたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の排水トラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内の浴槽と洗い場にそれぞれ設ける排水口から配水管へ排水を流すと共に、配水管から浴室への臭気や小動物等の侵入を阻止するトラップ構造を備える排水トラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴室では、浴槽内から排水を流す排水路と、洗い場から排水を流す排水路とを、パンの下方に埋設した排水トラップ装置で合流させ、建物の排水管に流す構造となっている。また、建物の配水管から臭気や小動物等が浴室内へ侵入できないように、配水管から浴室内の排水口までの間に水を溜めて封をするトラップ構造を実現できる排水トラップ装置が用いられている。
【0003】
排水トラップ装置の一例として、浴槽側の第1排水トラップ体と、洗い場側の第2排水トラップ体と、これらを連通する連通経路とで構成したものがある。連通経路は、第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部とを向かい合わせて近接させ、短い離隔区間を蛇腹状の可撓性を有する連通管で接続する構造である(例えば、特許文献1の段落[0015][0031][0032]、
図1、
図2等を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の排水トラップ装置によれば、浴槽側の排水口または洗い場側の排水口から流入した排水が第1排水トラップ体および第2排水トラップ体の内部に設けられた貯水空部に溜まり、配水管に接続されている排水導出口の下端に至る基準水位を越えると、オーバーフローして排水導出口から配水管へと排出されてゆく。そして、通常は、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の貯水空部内および連通管内が、基準水位となる量の封水で満たされているので、配水管から臭気や小動物等が浴室内へ侵入することを阻止するトラップ構造が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部とを向かい合わせて直線状に配置することができないズレが生じている場合、そのズレを連通管の可撓性によって吸収できず、排水トラップ装置を取り付けることができなくなる可能性がある。例えば、浴室側パンに排水口を設ける部位の高さや洗い場側パンに排水口を設ける部位の高さ、浴室側パンに設ける排水口と洗い場側パンに設ける排水口との位置関係や離隔距離などは、統一規格が厳格に定められている訳では無いので、取り付け対象のパンによって様々であり、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体とを理想の状態に取り付けられるとは限らない。
【0007】
第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部とを向かい合わせて直線状に配置することができず、しかも、第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部との離隔距離が短い場合、ゴムホースのような軟質材料を連通管に用いたとしても、十分な流水断面を保持しつつ第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部を接続することは困難である。ましてや、ステンレス管に波形加工を施して可撓性を持たせたフレキシブルホースを連通管として用いる場合には、第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部とに相応の離隔距離が確保されていなければ、第1排水トラップ体の流出部と第2排水トラップ体の流入部とのズレを吸収して連結することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体との取付位置が許容範囲内でズレている場合には、可撓性連結体でそのズレを吸収し、第1排出トラップ体と第2排出トラップ体とを接続できる排水トラップ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、前記第1排水トラップ体の貯水空部と第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、を備えた排水トラップ装置において、前記排水連通手段は、前記第1排水トラップ体および/または第2排水トラップ体の貯水空部に、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、前記第1排水トラップ体および/または第2排水トラップ体の通水孔に連通し、外方に突出して近接方向へ向かう配管継ぎ手を設け、前記配管継ぎ手同士の離隔距離または前記貯水空部に設けた通水孔から外方に突出する連結管と前記配管継ぎ手との離隔距離が、中空の可撓性連結体で接続可能な長さとなるようにした、ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の排水トラップ装置において、前記第1排水トラップ体および/または第2排水トラップ体は、パンの下面側から排水用貫通孔周辺に当着する所要幅の環状当着面を備える本体側フランジ部と、パンの上面側から前記本体側フランジ部へ取り付けて固定する固定フランジ部材と、を備え、前記本体側フランジ部の環状当着面とパンの下面との間に、所要厚さのスペーサを介在させることで、浴槽側パンに取り付けた第1排水トラップ本体の貯水空部と洗い場側パンに取り付けた第2排水トラップ本体の貯水空部との相対的高さを調整できるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載の排水トラップ装置において、前記スペーサは、パンの下面側に押し当たる上面および/または本体側フランジ部の環状当着面に押し当たる下面に、密封構造を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項2又は請求項3に記載の排水トラップ装置において、前記スペーサには、本体側フランジ部の環状当着面に押し当たる下面の外側から下方に延出するホールド部を設け、前記スペーサのホールド部を本体側フランジ部の外周上部に嵌め込むことで、スペーサが本体側フランジ部から脱落することを防止するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る排水トラップ装置によれば、第1排水トラップ体および/または第2排水トラップ体に配管継ぎ手を設け、配管継ぎ手同士の離隔距離または前記貯水空部に設けた通水孔から外方に突出する連結管と前記配管継ぎ手との離隔距離が、中空の可撓性連結体で接続可能な長さとなるようにしたので、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体との取付位置が許容範囲内でズレている場合には、可撓性連結体でそのズレを吸収し、第1排出トラップ体と第2排出トラップ体とを接続できる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る排水トラップ装置の実施形態を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1におけるII-II矢視線による概略縦断面図を示し、(a)はパンに取り付ける前の分離状態断面図、(b)はパンに取り付けた状態の断面図である。
【
図3】本実施形態に係る排水トラップ装置のズレ吸収機能の説明図であり、(a)は第1排水トラップ体と第2排水トラップ体が理想の取り付け状態(ズレなし)に配置されたときの平面図、(b)は第1排水トラップ体と第2排水トラップ体が+αだけズレて配置されたときの平面図、(c)は第1排水トラップ体と第2排水トラップ体が-αだけズレて配置されたときの平面図である。
【
図4】本実施形態に係る排水トラップ装置でαよりも大きなズレβ1を吸収できるようにした第1改変例の説明図であり、(a)は第1改変例の外観斜視図で、(b)は第1改変例の平面図である。
【
図5】本実施形態に係る排水トラップ装置でβ1よりも大きなズレβ2を吸収できるようにした第2改変例の説明図であり、(a)は第2改変例の外観斜視図で、(b)は第2改変例の平面図である。
【
図6】(a)はスペーサパッキンの外観斜視図である。(b)は
図6(a)におけるVIb-VIb矢視線による拡大断面図である。(c)は
図6(b)におけるVIc領域の部分拡大図である。
【
図7】スペーサパッキンの機能を説明する図であり、(a)は第1排水トラップ体に対して第2排水トラップ体が高位置に取り付けられた状態の概略縦断面図、(b)は第2排水トラップ体にスペーサパッキンを用いて位置補正した状態の概略縦断面図である。
【
図8】(a)はホールド環部の無いスペーサパッキンを介して第2排水トラップ体をパンへ取り付けるときの工程説明図である。(b)はホールド環部を備えたスペーサパッキンを介して第2排水トラップ体をパンへ取り付けるときの工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る排水トラップ装置の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1および
図2は、排水トラップ装置1の概略構成を示すもので、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20を中空の可撓性連結体であるフレキシブルホース30(第1排出トラップ体10への連結部31および第2排出トップ体20への連結部32のみ描き、その間は二点鎖線にて簡易に示す)にて連結したものである。
【0017】
第1排水トラップ体10は、浴槽側パン41の最低部に設けた排水用貫通孔41aに取り付けるもので、トラップ本体11と固定フランジ部材12とに分離可能である。なお、第1排水トラップ体10を浴槽側パン41に取り付けるとき、その密封性を高めるために、シーリング材としてのゴムパッキン13を排水用貫通孔41aの開口縁に嵌め込んでおく。
【0018】
第1排水トラップ体10のトラップ本体11は、排水を溜めることができる貯水空部111aが内部に形成されたお椀状の有底半球体である貯水部111と、この貯水部111の円形上端から横方向に延出する円環鍔状の本体側フランジ部112と、貯水部111の適所に設けた通水孔111bに連通して外方に突出する連結管113を備える。なお、貯水部111の上部内周面には、例えば、雌ネジ部111cを形成してある。また、本体側フランジ部112の上面は、排水用貫通孔41aの下面側周辺に当着する所要幅の環状当着面となる。
【0019】
第1排水トラップ体10の固定フランジ部材12は、トラップ本体11の雌ネジ部111cに螺合する雄ネジ部121aが外周面に形成された螺合円筒部121と、この螺合円筒部121の円形上端から横方向に延出する円環鍔状の固定側フランジ部122を備える。なお、固定側フランジ部122の下面は、排水用貫通孔41aの上面側周辺に当着する所要幅の環状当着面となる。また、固定フランジ部材12の内空部12aには、着脱可能な排水蓋123を取り付け、この排水蓋123に開設された孔より浴槽内の水または湯を排水する。
【0020】
上記構造の第1排水トラップ体10を浴槽側パン41に取り付けるには、浴槽側パン41の下面側から排水用貫通孔41aの下面周辺(ゴムパッキン13の下面)に、トラップ本体11の本体側フランジ部112の環状当着面を当着し、浴槽側パン41の上面側から固定フランジ部材12の螺合円筒部121を排水用貫通孔41a(ゴムパッキン13の内空部)へ通して、トラップ本体11の雌ネジ部111cに固定フランジ部材12の雄ネジ部121aを螺合させ、浴槽側パン41の上面側から排水用貫通孔41aの上面周辺(ゴムパッキン13の上面)に固定フランジ部材12の固定側フランジ部122の環状当着面を当着させる。そして、ゴムパッキン13の密閉機能が十分働く圧力となるように、トラップ本体11に固定フランジ部材12を取り付けると、浴槽側パン41からの排水が全て第1排水トラップ体10の貯水部111に流れ込む浴槽側排水口が形成される。なお、ゴムパッキン13の上面と固定側フランジ部122の環状当着面との間には、固定側フランジ部122の材質に対して滑動性の良好なスベリリング14を介在させてある。かくすれば、固定側フランジ部122の環状当着面が接触抵抗の大きいゴムパッキン13に直接当たらないので、トラップ本体11に固定フランジ部材12を螺着してゆく作業を効率良く行うことが可能となる。
【0021】
一方、第2排水トラップ体20は、洗い場側パン42の最低部に設けた排水用貫通孔42aに取り付けるもので、トラップ本体21と固定フランジ部材22とに分離可能である。なお、第2排水トラップ体20を洗い場側パン42に取り付けるとき、その密封性を高めるために、シーリング材としてのゴムパッキン23を排水用貫通孔42aの開口縁に嵌め込んでおく。また、洗い場側パン42の排水用貫通孔42aは、浴槽側パン41の排水用貫通孔41aの近傍に設けられ、第1トラップ本体10は近接方向D1で第2トラップ本体20に近接することとなり、第2トラップ本体20は近接方向D2で第1トラップ本体10に近接することとなる。
【0022】
第2排水トラップ体20のトラップ本体21は、内部に排水を溜めることができる貯水空部211aを形成する貯水部211と、この貯水部211の上部適所よりも適宜上方に突出する縁形状の本体側フランジ部212と、貯水部211の適所を外方に突出させる膨出形状の連結体213を備え、例えば、この連結体213の突出側端面に通水孔211bを設ける。
【0023】
貯水部211は、上記第1排水トラップ体10の貯水空部11aよりも大きな貯水容量を確保できる貯水空部211aを形成するもので、例えば、貯水空部211aの横断面が略四角形になるような四側面を備える。具体的には、第1排水トラップ体10に臨む略鉛直方向の対向面211-1、通水孔211bを設けた略鉛直方向の第1側面211-2、第1側面211-2の反対側に位置する略鉛直方向の第2側面211-3、対向面211-1の反対側に位置し対向面211-1から遠ざかるように傾斜する排水テーパ面211-4からなる。
【0024】
排水テーパ面211-4の上端よりも上方側の空間は排水導出口211cとして機能し、配水管接続部214の排水導出路214aと連通する。配水管接続部214の排水導出路214aは、排水導出口211cから下降傾斜するもので、排水テーパ面211-4の上端に至る基準水位WLを越えた貯水空部211a内の水は、オーバーフローして排水導出路214aへ至り、配水管(図示省略)へと排出されてゆく。なお、通水孔211bは、その開口上縁が基準水位WLを越えない位置に設けることが望ましい。また、通水孔211bを予め複数箇所(例えば、対向面211-1や第2側面211-3)に設けておけば、配水管接続部214と配水管との接続位置に応じて使いやすい位置にある通水孔のみを残しておき、不要な通水孔は密封部材にて封止するようにしても良い。
【0025】
本体側フランジ部212は、貯水部211の天板部211-5よりも適宜上方へ突出する円環状の外周面212aを有する中空円筒体であり、その上端には、洗い場側パン42の排水用貫通孔42aの下面側周辺に当着する所要幅の環状当着面212bを設けてある。また、環状当着面212bの内縁に連なり下方に延出する内周面には、雌ネジ部212cを形成してある。なお、
図1においては、本体側フランジ部212にスペーサパッキン50(後に詳述)を取り付け、洗い場側パン42の排水用貫通孔42aの下面側周辺には、このスペーサパッキン50が当着するものとしたが、スペーサパッキン50を使用するか否かは、後述するように、取り付け時の状況に応じて適宜決定する。また、本体側フランジ部212の内周下部には、略円筒状のトラップ筒215を取り付け、貯水空部211a内に封水が所定水位以上溜まっていれば、トラップ筒215の下部が封水内に深く進入した状態となる。
【0026】
第2排水トラップ体20の固定フランジ部材22は、本体側フランジ部212の内周面に形成した雌ネジ部212cに螺合する雄ネジ部221aが外周面に形成された螺合円筒部221と、この螺合円筒部221の円形上端から横方向に延出する円環鍔状の固定側フランジ部222を備える。なお、固定側フランジ部222の下面は、排水用貫通孔42aの上面側周辺に当着する所要幅の環状当着面となる。また、固定フランジ部材22の内空部22aの上面開口を塞ぐように、着脱可能な排水蓋を取り付けても良い。
【0027】
上記構造の第2排水トラップ体20を洗い場側パン42に取り付けるには、洗い場側パン42の下面側から排水用貫通孔42aの下面周辺(ゴムパッキン23の下面)に、トラップ本体21の本体側フランジ部212の環状当着面を212b当着し、洗い場側パン42の上面側から固定フランジ部材22の螺合円筒部221を排水用貫通孔42a(ゴムパッキン23の内空部)へ通して、トラップ本体21の雌ネジ部212cに固定フランジ部材22の雄ネジ部221aを螺合させ、洗い場側パン42の上面側から排水用貫通孔42aの上面周辺(ゴムパッキン23の上面)に固定フランジ部材22の固定側フランジ部222の環状当着面を当着させる。そして、ゴムパッキン23の密閉機能が十分働く圧力となるように、トラップ本体21に固定フランジ部材22を取り付けると、洗い場側パン42からの排水が全て第2排水トラップ体20の貯水部211に流れ込む洗い場側排水口が形成される。なお、ゴムパッキン23の上面と固定側フランジ部222の環状当着面との間には、固定側フランジ部222の材質に対して滑動性の良好なスベリリング24を介在させてある。かくすれば、固定側フランジ部222の環状当着面が接触抵抗の大きいゴムパッキン23に直接当たらないので、トラップ本体21に固定フランジ部材22を螺着してゆく作業を効率良く行うことが可能となる。
【0028】
次に、
図1~
図3を参照して、上述した第1排水トラップ体10の貯水空部11aと第2排水トラップ体20の貯水空部211aとを接続する排水連通手段を説明する。
【0029】
第1排水トラップ10のトラップ本体11は、近接方向D1に直交する向き(例えば、D1に向かって左側へ90゜回転させた向き)に通水孔111bを位置させる。斯くすれば、連結管113は近接方向D1に対してL90゜の方向(連結方向C1)に延出することとなり、この連結管113に第1エルボ61を取り付ける。なお、連結管113と第1エルボ61は、漏水が生じないように接続する。第1エルボ61は、第1連結口61aから第2連結口61bにかけて湾曲状に突出しながら向きが90゜変化する配管継ぎ手であり、第1連結口61a側をトラップ本体11の連結管113に接続すると、第2連結口61bは近接方向D1に向かって開口することとなる。なお、第1エルボ61は適宜な曲率で湾曲状に変化するため、第2連結口61bの位置は、第1連結口61aからC1方向に適宜離れた位置に開口することとなる。
【0030】
第2排水トラップ20のトラップ本体21は、近接方向D2に直交する向き(例えば、D2に向かって右側へ90゜回転させた向き)に通水孔211bを位置させる。斯くすれば、連結体213は近接方向D2に対してR90゜の方向(連結方向C2)に延出することとなり、この連結体213の突出側端面にエルボソケット70を設け、このエルボソケット70の連結部71を介して第2エルボ62を取り付ける。エルボソケット70は、トラップ本体21の通水孔211bから連結部71に至る通水路を形成するものであり、通水孔211bとの接続部で漏水が生じない密閉性を保持する。また、エルボソケット70の連結部71と第2エルボ62も、漏水が生じないように接続する。第2エルボ62は、第1連結口62aから第2連結口62bにかけて屈曲状に向きが90゜変化する配管継ぎ手であり、第1連結口62a側をエルボソケット70の連結部71に接続すると、第2連結口62bは近接方向D2に向かって開口することとなる。なお、第2エルボ62は比較的少ない突出量でD2方向に折れ曲がるため、第2連結口62bの位置は、第1連結口62aからC1方向に比較的近い位置に開口することとなる。
【0031】
上述した第2排水トラップ20では、連結方向C2側に位置する第1側面211-2からC2方向に膨出する連結体213を設け、更に、この連結体213の突出側端面にエルボソケット70を設けることにより、第1側面211-2から第2エルボ62を取り付ける部位までのC2方向突出距離を長くして、第1排水トラップ10に設けた第1エルボ61の第2連結口61bと、第2エルボ62の第2連結口62bとが、程良く相対するようにした。しかしながら、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bとの相対位置を調整する方法は、これに限定されない。例えば、フラットな第1側面211-2に通水孔211bを直接設け、この通水孔211bからC2方向に延出する長尺な連結管を形成し、この連結管の延出端側に第2エルボ62の第1連結口62aを取り付けるような構造(第1排水トラップ20の連結管113と同様な構造)としても良い。
【0032】
図3(a)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置である場合を示すもので、例えば、第1排水トラップ体10における12の開口中心を通る仮想中心線と、第2排水トラップ体20における22の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる理想的な取り付け状態にある。
【0033】
このように、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置であれば、従来の排水トラップ装置のように、D1方向へ突出させた仮想連結管101(
図3(a)~(c)において二点鎖線で示す)を第1排水トラップ体10に設け、D2方向へ突出させた仮想連結管201(
図3(a)~(c)において二点鎖線で示す)を第2排水トラップ体20に設けた場合でも、第1排水トラップ体10の仮想連結管101と第2排水トラップ体20の仮想連結管201とがほぼズレ無しで対向状に配置されるため、仮想連結管101と仮想連結管201との離隔距離が短くても、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る排水トラップ装置1のように、第1排水トラップ体10における内空部12aの略中心(近接側先端部より反近接方向へ適宜離れた位置)からC1方向へ突出させた連結管113に第1エルボ61を接続した第1排水トラップ体10と、第2排水トラップ体20における内空部22a中心よりも後方(対向面211-1から反近接方向である排水テーパ面211-4寄りに適宜離れた)位置からC2方向へ連結部71が突出するように設けたエルボソケット70に第2エルボ62を接続した排水トラップ体20とを連結する場合でも、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bがD1,D2方向に対向状に配置されているので、フレキシブルホース30を用いて第1エルボ61と第2エルボ62を無理なく接続することができる。しかも、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bとの離隔距離は十分な長さを確保できる。
【0035】
図3(b)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαだけズレが生じている場合を示すものである。この場合、従来の排水トラップ装置のように、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を接続するためには、フレキシブルホース30の可撓性によってC1,C2方向のズレαを吸収できる程度に仮想連結管101と仮想連結管201が離れている必要がある。しかしながら、仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。
【0036】
一方、本実施形態に係る排水トラップ装置1では、近接方向D1に直交するC1方向へ突出させた連結管113に第1エルボ61を接続した第1排水トラップ体10と、近接方向D2に直交するC2方向へ膨出する連結体213の突出側端面に取り付けたエルボソケット70からC2方向へ突出する連結部71に第2エルボ62を接続した排水トラップ体20とを連結するので、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bとの間に、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保できる。よって、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαだけズレていても、フレキシブルホース30を用いて第1エルボ61と第2エルボ62を無理なく接続することができる。なお、第1排水トラップ体10における第1エルボ61の取付位置と第2排水トラップ体20における第2エルボ62の取付位置とが離れていれば、それだけ第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bとの離隔距離を長くできるが、その反面、フレキシブルホース30による連結範囲が長くなってしまうので、吸収可能なズレ量に応じた必要十分な離隔距離に止めるように、第1排水トラップ体10における第1エルボ61の取付位置と第2排水トラップ体20における第2エルボ62の取付位置を設定しておくことが望ましい。
【0037】
図3(c)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へ-αだけズレが生じている場合を示すものである。この場合においても、従来の排水トラップ装置のように、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を接続するためには、フレキシブルホース30の可撓性によってC1,C2方向のズレ-αを吸収できる程度に仮想連結管101と仮想連結管201が離れている必要がある。しかしながら、仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。
【0038】
一方、本実施形態に係る排水トラップ装置1では、近接方向D1に直交するC1方向へ突出させた連結管113に第1エルボ61を接続した第1排水トラップ体10と、近接方向D2に直交するC2方向へ膨出する連結体213の突出側端面に取り付けたエルボソケット70からC2方向へ突出する連結部71に第2エルボ62を接続した排水トラップ体20とを連結するので、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bとの間に、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保できる。よって、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へ-αだけズレていても、フレキシブルホース30を用いて第1エルボ61と第2エルボ62を無理なく接続することができる。
【0039】
上述したように、本実施形態に係る排水トラップ装置1は、第1排水トラップ体10の貯水空部111aの通水孔111bと、第2排水トラップ体20の貯水空部211aの通水孔211bとを、近接方向D1,D2とは異なる向き(第1排水トラップ体10の通水孔111bは連結方向C1、第2排水トラップ体20の通水孔211bは連結方向C2)に設け、第1排水トラップ体10には通水孔111bと連通させた第1エルボ61(第1連結口61aからC1方向へ突出して湾曲しながらD1方向に第2連結口61bが開口する配管継ぎ手)を設け、第2排水トラップ体20には通水孔211bと連通させた第2エルボ62(第1連結口62aからC2方向へ突出してD2方向へ屈曲し、第2連結口62bが開口する配管継ぎ手)を設けることで、第1エルボ61の第2連結口61bと第2エルボ62の第2連結口62bが互いに向かい合うような配置に調整できる。
【0040】
加えて、本実施形態に係る排水トラップ装置1においては、第1排水トラップ体10に設けた第1エルボ61の第2連結口61bと、第2排水トラップ体20に設けた第2エルボ62の第2連結口62bとの間に、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保できるので、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へ±α程度ズレていても、フレキシブルホース30を用いて第1エルボ61と第2エルボ62を無理なく接続することが可能となる。
【0041】
なお、第1排水トラップ体10は、お椀状の有底半球体である貯水部111に1つの通水孔111bを設けて、連結管113を外方に突出させたものであるから、連結管113をどの方向に向けた状態でも問題なく浴槽側パン41に取り付けることができる。よって、この第1排水トラップ体10では、近接方向D1に直交するC1方向に連結管113を突出させるように配置することで、近接方向D1に直交するC1方向に通水孔111bを設けたことになる。
【0042】
また、第2排水トラップ体20は、配水管と接続するための配水管接続部214を所定の方向に向けて配置しなければならないので、エルボソケット70が任意の方向を向くように配置を変えることができない。そのため、第2排水トラップ体20は、四側壁構造とした貯水部211の対向面211-1がD2方向へ向かうように配置した上で、D2方向とは異なる方向に通水孔211bを設ける必要がある。なお、第2排水トラップ体20の貯水部211の側部が曲面形状であったり5以上の側壁面で構成されたりしていれば、多様な方向の中から通水孔211bを設ける方向を選べるが、四側壁構造とした貯水部211において通水孔211bを設けることができるのは、D2方向に直交するC2方向に面した第1側面211-2または第2側面211-3となる。例えば、近接方向D2に対してL90゜の方向が連結方向C2である場合には、第2側面211-3側に通水孔211bを開設した連結体を設けた第2排水トラップ体を用い、エルボソケット70を介して第1エルボ61または第2エルボ62を取り付けるようにすれば良い。
【0043】
また、貯水部211の排水テーパ面211-4は反D2方向に臨む壁部(D2方向に臨んでいない壁部)であるから、この排水テーパ面211-4に通水孔211bを設けることも不可能ではない。しかしながら、排水テーパ面211-4に通水孔211bを設けた場合、反D2方向からD2方向へ屈曲あるいは湾曲する配管継ぎ手を用いて、第1排水トラップ体10に設けた第1エルボ61の第2連結孔61bと対向する状態に配置する必要があるため、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の連結経路を徒に長くすることとなり、非効率である上に、長尺な流水経路となって安定性も損なわれる。よって、貯水部211の排水テーパ面211-4は、通水孔211bを設ける対象から除外しておくことが望ましい。
【0044】
以上説明した実施形態に係る排水トラップ装置1においては、第1排水トラップ体10側に第1エルボ61を設け、第2排水トラップ体20側に第2エルボ62を設けることで、第1エルボ61の第2連結孔61bと第2エルボの第2連結孔62bとがちょうど対向する配置にすることができるものであったが、第1,第2排水トラップ体10,20あるいは第1,第2エルボ61,62の大きさや形状によっては、必ずしも、第1エルボ61の第2連結孔61bと第2エルボの第2連結孔62bとが対向状に配置できない場合もある。このような場合に備えて、第1連結孔から第2連結孔の開口位置までの突出量が異なるエルボを予め多種類用意しておき、フレキシブルホース30を用いて無理なく接続することができるエルボを選定して使うようにしても良い。
【0045】
また、湾曲状の第1エルボ61は、第1連結孔61aから第2連結孔61bの開口位置までの突出量が、屈曲状の第2エルボ62における第1連結孔62aから第2連結孔62bの開口位置までの突出量よりも大きいので、この突出量の差を利用して、第1排水トラップ体10側のエルボと第2排水トラップ体20側のエルボを無理なく接続できるように調整することも可能である。
【0046】
例えば、
図4に示す第1改変例の排水トラップ装置1′のように、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαよりも大きなβ1だけズレている場合、第1排水トラップ体10には屈曲状の第2エルボ62を取り付けて、第1連結孔62aから第2連結孔62bの開口位置までの突出量を小さくし、尚且つ、第2排水トラップ体20には湾曲状の第1エルボ61を取り付けて、第1連結孔61aから第2連結孔61bの開口位置までの突出量を大きくする。斯くすれば、第2エルボ62の第2連結孔62bと第1エルボ61の第2連結孔61bとのズレを微少範囲に抑えると共にフレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離をとることができ、フレキシブルホース30を用いて第2エルボ62の第2連結孔62bと第1エルボ61の第2連結孔61bとを無理なく接続することができる。
【0047】
また、上述した排水トラップ装置1,1′においては、第1排水トラップ体10および第2排水トラップ体20に、第1エルボ61もしくは第2エルボ62を設けるものとしたが、必ずしも、第1排水トラップ体10および第2排水トラップ体20の両方にエルボを設けるものに限定されない。少なくとも、第1排水トラップ体10は、連結管113の突出方向を任意の向きに設定できるので、エルボを設けて第2連結孔の向きを調整せずに利用できる場合がある。
【0048】
例えば、
図5に示す第2改変例の排水トラップ装置1″のように、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へβ1よりも大きなβ2だけズレている場合、第2排水トラップ体20には屈曲状の第2エルボ62を取り付けて、第1連結孔62aから第2連結孔62bの開口位置までの突出量を小さくし、第1排水トラップ体10にはエルボを取り付けず、連結管113を近接方向D1に対してL30゜の方向(第2エルボ62の第2連結孔62bに向かう連結方向C1)に配置する。斯くすれば、第1排水トラップ体10における連結管113の開口端と第2エルボ62の第2連結孔62bとのズレを微少範囲に抑えると共にフレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離をとることができ、フレキシブルホース30を用いて第1排水トラップ体10の連結管113と第2エルボ62の第2連結孔62bとを無理なく接続することができる。
【0049】
上述した排水トラップ装置1,1′,1″は、何れも第1排水トラップ体10および第2排水トラップ体20の近接方向D1,D2に直交する向きに生じたズレを補正して、第1排水トラップ体10内の貯水空部111aと第2排水トラップ体20内の貯水空部211aとを無理なく接続する排水連通手段として、第1エルボ61あるいは第2エルボ62といった配管継ぎ手を用いるものである。しかしながら、排水トラップ装置1,1′,1″を浴槽側パン71および洗い場側パン42に取り付ける場合、その設置高さが異なるために調整が必要な場合もある。このような高さ調整のために、スペーサパッキン50を用いることができる。
【0050】
図6に示すように、弾性素材で形成されるスペーサパッキン50は、円環状で所要厚さのスペーサ部51と、スペーサ部51の外縁部から下方に突出するホールド部52と、スペーサ部51の上面51aおよび下面51bにそれぞれ環状のシーリング突起53を所要数(例えば、上面51aに2環、下面51bに2環)設けたものである。スペーサ部51の下面51bは本体側フランジ部212の環状当着面212bに当着し、上面51bは洗い場側パン42の排水用貫通孔42aの下面側周辺(ゴムパッキン23を用いる場合は、ゴムパッキン23の下面)に当着する。すなわち、スペーサ部51の上面51aと下面51bが、洗い場側パン42の下面と本体側フランジ部212の環状当着面212bに挟まれて適宜な押圧力を受けると、各シーリング突起53が押しつぶされて、洗い場側パン42の下面と本体側フランジ部212の環状当着面212bとの間を密封構造にすることができる。また、ホールド部52の内周面52aは、ちょうど本体側フランジ部212の外周面212aに嵌まり込む内径の環状壁体である。
【0051】
一般に、浴槽の底面は洗い場よりも深くなるため、浴槽側パン41の排水用貫通孔41aが設けられる高さよりも、洗い場側パン42の排水用貫通孔42aが設けられる高さの方が高くなっているが、
図7(a)に示すように、洗い場側パン42における排水用貫通孔42aの位置が第2排水トラップ体20の理想的な取付位置よりも高かった場合、貯水空部211a内に溜まった封水の基準水位WLが高くなり、これと連動して第1排水トラップ体10の貯水空部111a内に溜まった封水の基準水位WLが高くなる。このため、第1排水トラップ体10の貯水空部111a内に溜まった封水の基準水位WLが許容範囲を超えて排水口の開口面付近まで上がるようでは、施工不良となってしまう。
【0052】
そこで、
図7(b)に示すように、スペーサパッキン50を用いることで、第2排水トラップ体20のトラップ本体21が理想的な取り付け位置となるように調整すると、貯水空部211a内に溜まった封水の基準水位WLが理想の高さとなり、これと連動して第1排水トラップ体10の貯水空部111a内に溜まった封水の基準水位WLも理想の高さに調整されることとなる。このように、スペーサパッキン50を用いれば、洗い場側パン42における排水用貫通孔42aの位置が第2排水トラップ体20の理想的な取付位置よりも高かった場合でも、第2排水トラップ体20のトラップ本体21を理想的な取り付け位置へ調整できる。なお、状況によって調整した高さは様々であるから、予め、スペーサ部51の厚さ(高さ)が異なるスペーサパッキン50を複数種類用意しておき、その中から好適な厚さのスペーサ部51を備えたスペーサパッキン50を選んで使えるようにしても良い。
【0053】
なお、洗い場側パン42における排水用貫通孔42aの高さ異常を解消するためには、適切なスペーサ部51を備えたスペーサパッキン50を用いれば良いのであるが、例えば、
図8(a)に示すように、ホールド部52を設けていないスペーサパッキン50′を用いる場合、スペーサ部51の下面51bを本体側フランジ部212の環状当着面212bに上手く載せたまま、洗い場側パン42の適正位置へ持って行くことが困難で、位置ズレしたり落下したりしてしまい、作業性が悪い。
【0054】
一方、
図8(b)に示すように、ホールド部52を備えるスペーサパッキン50を用いる場合には、ホールド部52が本体側フランジ部212の外周面212a上部に嵌め込まれているので、スペーサパッキン50が位置ズレしたり落下したりすることは無く、作業性を高めることができる。なお、ホールド部52はスペーサパッキン50が本体側フランジ部212の適正位置から外れることを抑制できれば良いので、必ずしも円環状とする必要は無く、例えば、適宜なホールド片を3箇所以上に設ける構造としても良い。
【0055】
以上、本発明に係る排水トラップ装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1 排水トラップ装置
10 第1排水トラップ体
111a 貯水空部
111b 通水孔
113 連結管
20 第2排水トラップ体
211a 貯水空部
211b 通水孔
30 フレキシブルホース
41 浴槽側パン
42 洗い場側パン
50 スペーサパッキン
61 第1エルボ
62 第2エルボ
70 エルボソケット